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アニ「献花を、敬愛を。死にゆく貴方に捧げよう」エレアニ
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- 1 : 2015/10/18(日) 13:09:41 :
- エレアニ。
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- 2 : 2015/10/18(日) 13:13:51 :
- 「…」
パサリと音を立てて、謙虚な花束は倒れた。
その姿は、まるで人類の未来。
希望がガラガラと崩れ去っていくかのようだ。
…こんなことを考えるなんて、私も変わったのかな。
「……綺麗な夕陽」
…そういえば、この世から生物がいなくなったら、太陽はどのような色をしているだろうか。
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- 3 : 2015/10/18(日) 13:21:06 :
- 人間から見たら、太陽は眩しく、明るい色をしているもの。
けど、人間がいなくなったら?
明るい色を、暗い色として認識する生物しかいなかったら。
太陽の色を認識できない生物しかいなかったら。
きっと、太陽は今の色を無くしてしまうのだろう。
…そして、アイツはこう答えた。
「他の生物が太陽を何色として見るかなんて俺には関係ないからな。太陽は俺にとってはとても眩しいだけだ」
「それに太陽ってあんまり好きじゃねえんだよな。太陽が出てたら巨人は活発になっちまうから。あーそう考えたら太陽はなくなった方が良いなー」
…そういうことじゃないんだけど。
尋ねたことに答えてないし。
やっぱりアイツは駆逐脳すぎた…。
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- 4 : 2015/10/18(日) 13:24:27 :
- …それでも、アイツらしいと納得している自分がいる。
アイツは巨人のことしか考えてなかった。
ジャンじゃないけど、巨人が大好きだったんだよね、アイツ。
…そう考えると、私はアイツの好みそのままだったのか。
…まずい、本気で頭がイッてる気がしてきた。
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- 5 : 2015/10/18(日) 13:31:18 :
- 「…」
…けど、これからの太陽の色は既に分かりきっている。
…赤だ。
今は鮮血の赤だけど、そのうち黒血の赤へと変わるだろう。
もはや、今となっては太陽を橙色と感じる生物はいない。
殺し過ぎた戦士たちには、もう何物も赤にしか見えないのだろう。
…私も、この場所以外では、視界は赤へと染められてしまっている。
ここだけが、私をかつての私へと連れ戻してくれる。
…それが既に意味のないことだとわかっていながらも、私はここへと足を運んでしまう。
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- 6 : 2015/10/18(日) 13:35:15 :
- 「…アニ」
「…何の用だい」
「これからの方針を皆で話し合うそうだ。お前も来い」
「…風が、止んだね」
「…何?」
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- 7 : 2015/10/18(日) 13:41:01 :
- 「あんたが来た途端、風が止んだ」
「あんたは来るなって言われているのさ」
「…お前、風使いにでもなったつもりか?」
「…」
「…皆に伝えて。私はここに残る。それが、それだけが私の要望だと」
「はあ!?ここなんて、エレンの墓があるだけだぞ!」
「川も森もある。草木も獣もいて…何よりアイツがいる。それだけ…いや。それだけが私の望みさ」
「…親父さんとも、一緒に住まないのか?」
「そうさ。私の一生は、ここで終える」
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- 8 : 2015/10/18(日) 13:45:03 :
- 「…やれやれ。聞きそうにないな」
「たまには顔を出せよ。ベルトルトも淋しがっているぞ」
「…あんたたちの顔を見るなんてまっぴらゴメンさ。だからこうしてあんたからも顔を背けて話してるんだから」
「…じゃあお前は、一生鏡や水面を見れんぞ」
「…」
「…そうだろう?」
「…失せな」
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- 9 : 2015/10/18(日) 13:51:11 :
- 「ああ。またな」
「…」
「…わかってるよ。そんなことは」
「私があんたたちと同類だってことくらい…」
「…何でかなぁ」
膝が自然と折れる。
同時に、私の顔が醜く崩れてゆく。
「なんで、壁の外に生まれたんだろう…」
私も、アイツと一緒で、壁の中に生まれたなら…。
アイツと共に、戦えた。
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- 10 : 2015/10/18(日) 13:53:36 :
- 「…」
「ライナー!」
「…ベルトルト」
「どうだった?アニは…!」
「取り付く島もないな。あれを動かせるのはエレンくらいだろう」
「…!じゃあ、僕が…!」
「止めとけ。お前が行ったら殺されるぞ」
「…」
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- 11 : 2015/10/18(日) 13:58:00 :
- 「…それは…」
「やっぱり、僕がエレンを殺したからかな…」
「それはそうだろう。アニはエレンだけを生かすつもりだった。たとえどれだけ憎まれようと、アニはエレンとともに暮らすつもりだったんだ」
「…」
「更に言うと、アニはエレンの交渉次第では、王政中枢に関わっていない人類を全員助けるつもりでもあったんだ」
「俺達の憎しみの理由を説明すれば、エレンたちもわかってくれる筈だと。そう言っていた」
「…エレンを殺せば」
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- 12 : 2015/10/18(日) 14:07:02 :
- 「エレンを殺せば、アニも、ライナーも…!二人とも元に戻ってくれると思っていたんだ…!」
「…確かに俺は元に戻った。戻ったというよりは、冷静になったと言った感じだが」
「だが、アニは…お前から見たら元には戻らなかったな」
「…何だよ、僕から見たらって」
「お前から見たら、戦士のアニが‘元’でもな、ベルトルト。アニにとっては、今のアニが‘元’…いや、あるべき望みの姿なんだよ」
「嘘だ!!」
「嘘ではないさ。現に、エレンが殺される前のアニの今後の方針は、“エレンに事情を説明して謝り、エレンたちとともに壁外の探検に赴く”、だった」
「…だからそれは、アニが変わってしまったから…!」
「その通りだベルトルト」
「え?」
「アニは………変われたんだ」
「…あ…」
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- 13 : 2015/10/18(日) 14:13:04 :
- 「…そんな…」
「…変わってしまった人間が不幸とは限らない。幸せになった人間なんていくらでもいた」
「…エレンは…」
「?」
「死んでる今ですら、アニを抱き締めて離さないのか…!」
「…お前の敗けだ、ベルトルト」
「…殺した相手に敗けるなんて、妙な気分だよ」
「…まあ、確かにエレンの死のきっかけはお前だが、エレンの介錯をしたのはアニだからなぁ」
「…『せめて、私の腕の中で』、か」
「女にあんな顔させる男は罪だよな」
「…本当に、エレンには死んでも敵わないよ」
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- 14 : 2015/10/18(日) 14:18:10 :
- 『よ』
『…』
『なんであんたが居るわけ』
『細かいことは気にするな。気にしたら敗けだ』
『…』
『…私を殺しに来たのかい』
『そして殺したら俺の所に来てくれるのか?』
『冗談!私があんたと同じ所に行ける筈もないだろう』
『それなら問題ねえ。俺も一緒に地獄に堕ちてやるからな』
『…』
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- 15 : 2015/10/18(日) 14:20:19 :
- 『…何か用があるならさっさと言いな。私は疲れてるんだ』
『泣きつかれて、か?』
『…見てたの?』
『見てなくても、その面見ればわかるよ』
『…』
『それに、用があるのはお前の方だろ』
『…何だって?』
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- 16 : 2015/10/18(日) 14:28:00 :
- 『欲しかったんだろ、言葉が』
『…!』
『お前の今後に、希望なんて全くないことくらい、お前だってわかっているんだ』
『だからこそお前は、俺に会いに来たんだ』
『っ…!』
本当に、どうしてコイツは…!
『…けど、それは許しなんかじゃない』
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- 17 : 2015/10/18(日) 14:33:48 :
- 『アニ、お前は許されたいんじゃない。謝りたいわけでもない』
『…助けられたいんだろ』
『…どうして』
『さあ?何となく?』
『それにお前は俺に許されようとも、自分の行いを思い出すんだ。そして、自分で自分を許せなくなるんだ』
『謝ることも変わらねえ。たとえその謝罪を俺が受け入れても、お前はずっと謝り続けるだろう』
『だからこそ、お前は俺に助けられたくて、俺に今後のお前の未来に道を示して欲しいんだ』
『…どうして』
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- 18 : 2015/10/18(日) 14:44:44 :
- 『どうして、あんたは…!そこまで……!』
『…壁外へ行け、アニ』
『…え?』
『こんな俺の墓と緑しかない所で燻ってんじゃねえ。ここは別に俺とお前の家で良い。けど、お前程の人間がこんなところで腐ってるのは勿体ねえ』
『…あんたは、私のことを人間と思ってくれるんだね』
『…実験されて壁外に置いてきぼりにされた人間の末裔が、俺達壁内の人間に復讐を果たした。それだけだろ』
『…よく納得できるね』
『納得はしてねえ。けど、仕方ないとは思う』
『…とにかく、何もやることがないなら夢を与えてやる。俺も、アルミンからもらった夢だ』
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- 19 : 2015/10/18(日) 14:48:56 :
- 『行け、アニ。俺からお前へ、俺達の夢を。託したぞ』
『…!待ちなよ…!』
『~!なんだよ、まだ餞別でも欲しいのか!?』
『え………んむっ』
…気づいた時には、アイツの眼と鼻が、目の前にあった。
咄嗟のことで、一瞬何が起きたかわからなかった…。
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- 20 : 2015/10/18(日) 14:52:21 :
『ん…ぷはっ』
『…甘い』
『……はっ。ちょっと待てあんた今の』
『冥土の土産の、104のクールビューティ、アニ・レオンハートの冒険譚!待ってるぜ』
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- 21 : 2015/10/18(日) 14:53:46 :
- >>20 訂正
『ん…ぷはっ』
『…甘い』
『……はっ。ちょっと待てあんた今の』
『冥土の土産の、104期のクールビューティ、アニ・レオンハートの冒険譚!待ってるぜ』
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- 22 : 2015/10/18(日) 15:00:03 :
- 『…!待って、待ってよ…!エレン!!』
『冥土の土産を持ってきてくれた暁には、さっきも言ったように、一緒に地獄へ堕ちてやるよ』
『ああ、それと…』
『お前の腕の中と、お前の唇。良かったぜ………アニ』
『…!エレン!!!』
…その時には、暖かい光が、私を覆っていた。
目の前が白くなる時、アイツの笑っている姿を見た。
先に逝った連中と、笑い合っている…。
私には、決して入れぬ、『 』の宴。
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- 23 : 2015/10/18(日) 15:04:57 :
- 「…んっ」
…朝?
夢…だったのかな。
どうやら外で、アイツの墓を枕に寝てしまったらしい。
私の献花は、他に倒れていたお陰で潰れてはいなかった。
「…」
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- 24 : 2015/10/18(日) 15:13:04 :
- …まだ、唇に感触が残っている。
かさついた、アイツの唇の感触が。
「…」
…もう、私の心は決まっていた。
献花を墓の上に正し、墓に名を刻む。
Eren=Yeager
Annie=Leonhart
…その石で掘った二つの名に、少し微笑みを浮かべた。
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- 25 : 2015/10/18(日) 15:18:28 :
- まずはライナーたちに旅に出る旨を伝えなければ。
それと、旅先での自生方法の確保。
海を渡る為に、舟の作り方も、覚えよう。
ここから、私達の夢が始まるんだ。
アニ「…行くよ、エレン。待っててね」
『おう!』
冥土の土産を作りにゆこう。
献花をもう一度携えて、死にゆく貴方に敬愛を。
きっと、旅先では…。
太陽も明るいだろうと、信じて。
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- 26 : 2015/10/18(日) 15:24:10 :
- これで終わりです。ありがとうございました。
進撃の短編集を立ち上げる為のリハビリSSのつもりで書き上げました。
ちなみにこのSS、要するに『アニも救いだされて人類は外側の人類に敗れた』未来です。
ある意味、これも原作への挑戦のつもりです。
エレアニのエレン死ネタ。
エレアニというよりは、
エレン➡⬅アニ⬅ベルトルト
になってしまいましたが。
恐らく、
エレアニ⬅ベルトルト
ではないです。
閲覧ありがとうございました。
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- 27 : 2015/10/19(月) 23:04:58 :
- 面白かったです♪
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- 28 : 2015/11/25(水) 21:58:03 :
- いいはなしですね!
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- 29 : 2022/05/07(土) 16:50:30 :
- なける
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- 30 : 2022/05/07(土) 16:50:39 :
- なかすな
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- 31 : 2022/05/07(土) 16:50:42 :
- はらたつ
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