このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
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リヴァイ「王の帰還」 ② 進撃×ロード・オブ・ザ・リング
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- 1 : 2015/06/24(水) 01:01:18 :
- 進撃×ロード・オブ・ザ・リング、王の帰還の第3話、第4話、第5話です。
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2015/06/24(水) 01:09:13 :
その昔、まだ世界に太陽と月の昇る前のこと・・・・・・。
大魔王モルゴスにシルマリルを奪われたエルフのノルドール族は、神々に反抗してまで至福の国を飛び出し、その上同族殺害まで犯したために、マンドスの呪いをかけられた。
600年の後、シルマリルを携えて至福の国へと渡った航海者アルミンが神々に赦しを乞い、呪いは停止され、至福の国への帰還を許されたのだが、それでも中つ国を去りがたく思うエルフは多かった。
ところが、第三紀に入るとエルフは次第に衰退し、次々と至福の国へと引き上げ始めた。
キアダンの治めるリンドンにある灰色港から、灰色の船に乗り、世に倦んだエルフたちは故郷へと帰っていく。
その中に、リヴァイとの別れを決意したペトラもまた、灰色港へと向かう行列の中に加わっていた。
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- 3 : 2015/06/24(水) 01:10:23 :
―――――森の中を、ふと子供が走っているのが見える。
これは幻覚なのだろうか? こんな森の中で子供が走りまわるはずがない・・・・・・。
すると、その子供は突然現れた窓辺に走っていき、待っていた父親に抱き上げられた。
ペトラ「・・・・・・・・・・・・リヴァイ?」
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- 4 : 2015/06/24(水) 01:11:01 :
抱き上げた父親は・・・・・・・・・・・・リヴァイ・アッカーマン。
そして、その子供の胸元には、私がリヴァイにあげたネックレスが光っている。
―――――お父様は言った。
この世にもう、希望は残っておらず、リヴァイが死ねば、絶望に閉ざされると・・・・・・。
でも・・・・・・・・・・・・私の見た光景は・・・・・・・・・・・・
希望。
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- 5 : 2015/06/24(水) 01:12:05 :
「ペトラ様?」
お供のエルフに話しかけられたペトラは、しかし、馬を引き返し始めた。
お供が制止するのも構わず、裂け谷へと戻っていった。
第3話
ペトラの選択
裂け谷に到着し、馬から降りたペトラは、父親の部屋へと急いだ。
ペトラ「お父様。」
エルヴィン「ペトラ? なぜだ・・・・・・なぜ戻ってきた!?」
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- 6 : 2015/06/24(水) 01:12:47 :
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思わず尋ねるエルヴィンに、ペトラは詰め寄った。
ペトラ「お父様はその予言の力で、一体何を見られたのです?」
エルヴィン「・・・・・・暗い・・・・・・未来だ。」
ペトラ「嘘・・・・・・・・・・・・見えたはずです。一筋の・・・・・・希望が!」
暗い表情をして、エルヴィンは言った。
エルヴィン「・・・・・・その未来は消えかかっている。」
ペトラ「いいえ、お父様―――――・・・・・・・・・・・・
折れたる剣は鍛え直され、無冠の者が再び王となります。」
強い決意を瞳に宿し、ペトラはエルヴィンに懇願した。
ペトラ「ナルシルの剣を鍛え直してください。」
ナルシルの剣―――――かつてアルノール王国国王エレンディルが身に帯び、息子のイシルドゥアがサウロンの指を切り取った名剣。
そしてそれは、リヴァイがイシルドゥアの末裔であり、ゴンドールの王位継承権を証明するものであった。
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- 7 : 2015/06/24(水) 01:13:32 :
娘の言葉を聞いたエルヴィンは、しかし、ペトラから顔を背けた。
ペトラ「お父様!」
エルヴィンに近づこうとするペトラ。
ペトラ「あっ・・・・・・。」
そのときふと、ペトラの体から力が抜けた。
そのままソファーに座り込み、両手を眺めるペトラ。
そっと、エルヴィンは愛娘の手を取った。
エルヴィン「・・・・・・・・・・・・冷たい。」
冷たさに驚きながら、同時に耐え難い悲しみに、エルヴィンは包まれた。
エルヴィン「エルダールの命が・・・・・・エルフに約束された不老の力が・・・・・・・・・・・・薄れていく。」
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- 8 : 2015/06/24(水) 01:14:07 :
なぜペトラの手が冷たくなったか?
答えはもう分かっている。
ただ、今まで割り切ることが出来なかった。
ペトラ「これが・・・・・・私の選択なのです。」
―――――ペトラの選択。
エルフの不死の命を棄て、現世の苦悩を背負ったとしても・・・・・・・・・・・・
ペトラ「私は、リヴァイのそばに寄り添います。お父様の意志が何であれ、私をこの世界から運び去る船は、もう・・・・・・ないのです。」
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- 9 : 2015/06/24(水) 01:14:41 :
それは―――――エルヴィンにとって、愛する娘との永遠の別れを意味していた。
自分が至福の国へと去り、ペトラがこの世のを去った時、父と娘は永遠に決別する。
―――――私は星になった航海者アルミンとヒストリアの間に生まれた。
多くの敗北と、虚しい勝利をこの目で見てきた。
そして今日、娘と永遠に別れることが・・・・・・決まった。
私の希望は、私の手元から永遠に離れたのだ―――――だから私は、それをふさわしいものに託す。
エルフの鍛冶たちによって、折れたる剣ナルシルが鍛え直されていく。
赤々と燃える竈の中から、一度は輝きを失った剣が、新たな焔を纏って蘇っていく―――――西方の焔 という名前も纏って。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 10 : 2015/06/24(水) 01:44:43 :
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太陽の輝く真昼から、星々瞬き月の出る夜まで、飛蔭は目にもとまらぬ軽やかな速さで駆け抜けていく。
ガンダルフ「たった今ゴンドールの領内に入った。」
メリング川を渡ったガンダルフがマルコに到着の近きを告げた。
やがて夜が明けて、再び日の光が差したころ、壮麗な都市が姿を現した。
ガンダルフ「ミナス・ティリス・・・・・・・・・・・・ゴンドールの王の都じゃ。」
第4話
ミナス・ティリス―――――守護の塔
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- 11 : 2015/06/24(水) 01:47:11 :
マルコ「ここが、ベルトルトの故郷なの!?」
そのあまりの壮麗さに目を見張るマルコ。
白の山脈の尽きるところに、切り出した丘の上にあるこの都市は、七重の白い城壁に守られた中つ国最強の城塞都市。
まるで山脈がその骨を剥き出しにしたようなここは、中つ国の自由の民における最後の砦であった。
都市の中央には巨大な丘がせり出し、それを囲むように七重の城壁が築かれている。
それぞれの環状区には白い石で出来た家が立ち並び、古来より続くこの王国の繁栄の歴史を伝えている。
ガンダルフ「道を開けよッ!!!」
ガンダルフとマルコは環状区を、飛蔭に乗って一気に駆け上がった。
そしてついに、到着した。
―――――第七環状区。
巨大な丘の上にある庭園と、白い石で出来た王宮、空に突き刺さんばかりに聳える白の塔―――――エクセリオンの塔の前に。
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- 12 : 2015/06/24(水) 19:04:37 :
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マルコ「見て、ガンダルフ。あの白の木だ。」
ガンダルフ「ああそうじゃ。ゴンドールの白の木じゃ。」
庭の中央にある噴水のそばに、その白い木は生えていた―――――最も、既に枯れていて、花も葉もつけていない。
かつて神罰により海に沈められたヌメノールに生えていた白の木の子孫。
そして、アッカーマン王家と密接な運命で結び付けられている木。
ガンダルフ「レイス家は王家ではない。王家を守る執政の家にすぎぬ。」
おもむろに話し始めるガンダルフ。
ガンダルフ「そして気を付けろ。ロッド・レイスはベルトルトの父親じゃ。息子の死を知らせるのは賢明ではない。」
マルコの目をしっかり見据え、警告するガンダルフ。
ガンダルフ「リヴァイとイシルドゥアの末裔の話も止せ。
・・・・・・エレンと指輪の話もじゃ。
・・・・・・・・・・・・つまりお前は何もしゃべるな。」
マルコはゆっくりと頷き、二人は王宮の前の入り口に立った。
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- 13 : 2015/06/24(水) 19:26:00 :
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ギイイイイ・・・・・・
ゆっくりと王宮の扉が開いた。
ガンダルフは杖を突き、マルコを伴ってゆっくりと玉座へと進んでいく。
広間の両脇には、白い石で出来た歴代の王の彫刻が立ち並び、床も白い石で磨き上げられている。
そして、部屋の一番奥には階段があり、そこには白い玉座があった。
玉座には当然座るべき王が座っていなかった。
代わりに、階段の右下に黒くて質素な椅子があり、そこに鎖帷子を着込んだ男が一人、下を向いて座っていた。
ガンダルフは御前に進み、その男に声をかけた。
ガンダルフ「エクセリオン・レイスの息子、ロッド・レイス殿。この苦難の時代に当たり、忠告と助言を携えて参りましたぞ。」
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- 14 : 2015/06/24(水) 21:12:42 :
- 期待です!
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- 15 : 2015/06/25(木) 04:53:42 :
- いつも期待ありがとうございます!
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- 16 : 2015/06/25(木) 04:54:11 :
すると、ロッドは弱弱しい声で尋ねた。
ロッド「これを・・・・・・説明するためか?」
―――――あれはッ!?
マルコの目に飛び込んできたものは、二つに割れた、角笛だった。
ベルトルトが、僕らをかばったあの時、二つに割れた、あの―――――・・・・・・・・・・・・
ロッド「私の息子がなぜ死んだのか? それを説明するために来たのか?」
一体幾日、悲しみに沈んだ日々を過ごしたのだろうか。
彼もまた、リヴァイと同じくドゥネダインの末裔であり、悲しみに曇ってはいたものの、高潔な聡明さをまだ幾分かはその顔に留めていた。
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- 17 : 2015/06/25(木) 04:54:57 :
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ヒュン!
ドスッ! ベルトルト『ああぁあぁぁ・・・・・・・・・・・・』
マルコの頭の中に蘇るのは、ベルトルトがその胸に、三本もの矢を受けた、あの光景。
――――――――――あの時の償いを、俺はしなくちゃならないんだ。
マルコ「ベルトルト・レイスは・・・・・・」
前に進み出て跪くマルコ。
マルコ「敵の矢から私をかばい、壮絶な戦死を遂げましたッ!
今こそその恩に報いる―――――「お前如きに何が出来るというのだ?」
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- 18 : 2015/06/25(木) 04:55:38 :
威厳のある声が鋭く響く。
その声に威圧されるのを感じながらも、マルコは言葉を続けた。
マルコ「私は・・・・・・この身をあなたのために捧げますッ!!!」
大声ではっきりと言い切った。
ロッド「ならばその身、私のために捧げるがよかろう。」
マルコの真っ直ぐな言葉は、頑迷なレイス候の心を僅かばかり動かし、召し抱えることを認めさせたのだった。
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- 19 : 2015/06/25(木) 04:56:09 :
ややあって、ガンダルフが口を開いた。
ガンダルフ「御子息の死を嘆かれるのは、今しばらくお留まり頂きたい。
見たところ、ゴンドールの防御は行き届いておられる。じゃが、それだけではモルドールの軍に太刀打ちは出来ますまい。ローハンに救援を要請するのです。」
すると、ロッドは実に冷ややかな目でガンダルフを見た。
ロッド「そなたは賢いつもりだろう、ミスランディア。白の塔にも目 はある。
その右手で私を使ってモルドールの軍を防ぎ、その左手で王を据えようとしている。」
ガンダルフ「そなたに王の帰還を拒む権限はありませぬぞッ! 執政殿ッ!」
執政は立ち上がった。
戦士として鎖帷子を着込み、兵士と同じ物を食べて戦争に備えるなど、合理的で誇り高い、しかし傲慢な執政は言った。
ロッド「私は北方の野伏などに頭は下げぬ。ゴンドールは私のものだ。誰にも渡しはしないッ!」
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- 20 : 2015/06/25(木) 04:56:54 :
ガンダルフ「立つのじゃ、マルコッ!」
背を向けて御前から立ち去っていくガンダルフ。
ガンダルフ「何と虚しい自尊心ッ! 悲しみすら策略に利用する奴めッ!」
王宮から出ていく際に、ガンダルフは毒づいた。
ガンダルフ「三千年続いたゴンドールも、あの執政の元に滅びるじゃろうッ!」
王宮から出ると、ガンダルフとマルコは第七環状区の丘の先へと歩き出した。
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- 21 : 2015/06/25(木) 04:57:32 :
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ゴンドールには王がいなかった。
兄王イシルドゥアは父王エレンディルのアルノール王国国王となるために、弟王アナリオンの息子にゴンドールの王位を譲った。
それ以降、アナリオンの子孫が代々王としてゴンドールを治めてきた。
アルノール王国は後に3国に分裂し、それぞれアングマールの魔王によって滅ぼされた。
そして魔王は、ゴンドールの王を再三にわたって挑発し、王は魔王との一騎打ちのためにミナス・モルグルに馬を進めてついに還らなかった。
王家の血筋は、ここに途絶えた。
それに合わせるかのように、白の木も枯れた。
それ以降、執政の家であるレイス家が代々ゴンドールを治めてきたのである。
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- 22 : 2015/06/25(木) 04:58:07 :
マルコ「あれが、モルドールなんだね。」
都の正面には影の山脈が並び、その奥には朦々とした赤黒い煙が上がっているのを、マルコは見つめていった。
ガンダルフ「そうじゃ、この都からはかの影がいつでも見える。」
マルコ「火山の煙がこっちに流れてきてるね。」
ガンダルフ「自然現象ではない。サウロンの策略じゃ。」
マルコ「策略?」
ガンダルフ「オークは日の光を嫌う。それ故サウロンは先に煙を送って進軍を助けようとする。あの煙がこちらに到着すれば、いよいよいくさの始まりじゃ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 23 : 2015/06/25(木) 04:58:45 :
やがて日が暮れ、マルコは都の衛兵の装備一式を与えられた。
新米の兵士として、明日からはサシャの部隊に編入することが決まった。
同期となるミリウスやナック、トーマスやミーナとの挨拶を済ませてきたマルコは、ガンダルフのいる宿の一室に戻ってきた。
マルコ「部隊長のサシャさんは変な人でした。人一倍食い意地の張っている人で、ナナバさんやゲルガーさん、それにナイルさんに何度も注意されていたんです。あぁ、ハンジさんは大爆笑していましたけど。」
ガンダルフはパイプを吸いながら毒づいた。
ガンダルフ「お前も変わっておるじゃろう。自ら衛兵となるとは・・・・・・滑稽な話じゃ・・・・・・ゲホッ!」
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- 24 : 2015/06/25(木) 04:59:18 :
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マルコは咳をしているガンダルフに水を差し出した後、ベランダに出た。
マルコ「・・・・・・・・・・・・エレンは、大丈夫かな?」
ガンダルフ「元より望みのない旅。」
ガンダルフもベランダに出て、手すりに手を置いた。
マルコの顔を見ると、少し微笑んでいった。
ガンダルフ「愚か者の望みじゃ。」
少し自嘲的なガンダルフを見て、マルコも合わせて笑った。
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- 25 : 2015/06/25(木) 05:00:02 :
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マルコ「何だかとっても静かだ。」
再びモルドールのほうを見やって、マルコが呟いた。
ガンダルフ「嵐の前の静けさじゃよ。」
マルコ「俺、戦いは嫌ですけど、この静けさは・・・・・・・・・・・・もっと嫌です。」
ガンダルフ「敵はモルドールだけではない。
南方のハラドリム。
そして、ウンバールの海賊どももサウロンの召し出しに応じる。
オスギリアスの守備隊が破れ、大河アンドゥインが敵の手に落ちれば、この都も落ちる。
――――――どこよりも巨大な鉄槌が、ここに下される。」
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- 26 : 2015/06/25(木) 05:00:41 :
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マルコ「でも、白の魔法使いがいるでしょ?」
その言葉に、ガンダルフは表情を曇らせた。
マルコ「・・・・・・ガンダルフ?」
――――――――敵にはまだ、恐るべき配下がおる。
人間の男には殺せないとされているもの――――――・・・・・・・・・・・・
ガンダルフ「・・・・・・・・・・・・アングマールの魔王じゃ。」
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- 27 : 2015/06/25(木) 05:02:34 :
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マルコ「アングマールの・・・・・・魔王?」
ガンダルフ「お前は奴に会ったことがあるはずじゃ。」
マルコ「えっ!?」
ガンダルフ「エレンを刺したナズグルじゃ。」
マルコ「!!!」
マルコの背筋に寒気が走った。
風見が丘での恐怖は、忘れたくても、忘れられない。
必殺の短剣で刺され、冷気に苦しんだエレンの表情が思い出された。
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- 28 : 2015/06/25(木) 05:03:48 :
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――――九人の中で最強の王。
ミナス・モルグルが、彼らの居城じゃ。
第5話
ミナス・モルグル――――――呪魔の塔
スメアゴル「ここが、死の都よ。敵がうようよいる嫌なところよ。」
エレンたち一行は、遂にモルグル谷に到達した。
モルグル谷の奥には、ナズグルたちの巣食う城――――――ミナス・モルグルが見える。
かつてはミナス・イシルと呼ばれ、兄王イシルドゥアの居城であった。
だが、中から光が美しく漏れ出していたころとは違い、今は月食に病む光よりも、もっとおぼろげな緑の光に照らされていた。
ミナス・ティリスと同じく、白い石で出来た都市ではあったが、その城壁という城壁には鉄の歯が取り付けられ、堕落して忌々しかった。
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- 29 : 2015/06/25(木) 13:00:16 :
城の目の前には橋が架かっており、その下には川が音もなく流れている。
そこから発される匂いは、まるでこの世のものとも思えないほど酷いものであった。
アルミン「・・・・・・酷い腐敗臭だ。死者の沼地よりひどいよ。」
スメアゴル「我慢するのよ、チビのホビットさん。急がないと見つかっちゃうよ!」
二人をせかすスメアゴルは、モルグル谷の崖を見上げていった。
スメアゴル「ここよ、わしらが見つけた・・・・・・・・・・・・モルドールへの、秘密の入り口よ。」
アルミン「これ・・・・・・階段というより、崖じゃないか。」
アルミンは上を見上げて呆然とした。
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- 30 : 2015/06/25(木) 13:01:23 :
切り立った崖に、蛇がうねるように蛇行した階段が果てしなく続いている。
これこそが、キリス・ウンゴルへと続く秘密の階段であった。
スメアゴル「登るのよ。」
スメアゴルとアルミンは覚悟を決め、階段に足をかけた。
エレン「・・・・・・。」
先ほどから、エレンは焦点の合わない虚ろな目をして、一言もしゃべっていなかった。
アルミン「エレン?」
エレンはその虚ろな目で、ミナス・モルグルを見つめた。
そして、服の上から首に鎖でかけた指輪を押さえ、呪魔の塔へ歩き始めた。
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- 31 : 2015/06/25(木) 13:02:14 :
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アルミン「エレンッ!!!」
スメアゴル「道が違うよぉッ!!!」
急いで階段を降り、エレンを取り押さえる二人。
エレン「俺を呼んでんだよッ!」
ナズグルの魔力に当てられて正気を失い、指輪にいいように操られるエレン。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
ドゴオオォオオォォォオオンッ!!!
その時、影の山脈の向こうで滅びの山が噴火し、モルグル谷も赤く染まった。
その拍子にエレンは漸く正気を取り戻した。
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- 32 : 2015/06/25(木) 13:06:30 :
刹那、ミナス・モルグルから反応があった。
・・・・・・・・・・・・ゴゴ・・・・・・ドオオォオオォオオォォンッ!!!
一瞬の静寂。
そこから、天に向かって禍々しい緑の光が放たれた。
アルミン「く・・・・・・。」
エレン「何だよ、何が起こってんだよ!」
まるで悲鳴のような地鳴りが、モルグル谷に谺する。
咄嗟に隠れた岩陰で、エレンとアルミンは言いようのない恐怖にうずくまった。
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- 33 : 2015/06/25(木) 13:07:01 :
その光は、オスギリアスにいるエルドたちにも確認できた。
オルオ「おい・・・・・・ありゃ一体何の冗談だ?」
思わぬ出来事に、不安を募らせるオルオ。
エルド「・・・・・・ミナス・モルグルからだ。」
グンタ「・・・・・・嫌な予感がするな。」
歴戦の強者である彼らの心にも、強い恐怖心が植えつけられていた。
そして、オスギリアスを挟み、ミナス・モルグルと反対側に位置するミナス・ティリスにおいても、大勢の兵士がこの光を確認した。
マルコ「ガンダルフ?」
ガンダルフ「・・・・・・。」
マルコの問いに、ガンダルフはしばし呆然として答えなかった。
ハンジ「ナイル、サシャ・・・・・・これは。」
ナイル「あの方角、ミナス・モルグルだ。」
サシャ「敵が・・・・・・来るのでしょうか?」
都の防衛を取り仕切る指揮官たちも、他の兵士と同様に不安と恐怖を募らせる。
―――――――その不吉な光は、ゴンドール中を恐怖で包み込んだ。
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- 34 : 2015/06/25(木) 13:07:42 :
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ドオォオン・・・・・・・・・・・・
場所は再びミナス・モルグル。
放たれた光がようやく尽き、エレンとアルミンは岩陰から城を覗き込んだ。
すると、翼を持ったおぞましい獣が城の中から飛び上がり、城壁の上に止まった。
その上に乗るのは、黒いフードの上に、まるで王冠のような兜をかぶった者。
サウロン最強の召使い―――――――アングマールの魔王であった。
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- 35 : 2015/06/25(木) 13:08:17 :
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雄叫びのような、耳をつんざく悲鳴のような金切り声を上げる魔王。
アルミン「うわあぁあぁぁぁッ!」
エレン「ぐうぉおおぉッ!」
スメアゴル「うわああぁああぁぁッ!」
冷気を伴ったナズグル固有の金切り声に、思わず悲鳴を上げて耳を塞ぐ三人。
ドクンッ! エレン「がはッ!!!」
突如としてエレンは、左肩の古傷を押さえた。
アルミン「エ・・・・・・エレン・・・・・・。」
エレン「あいつの・・・・・・あいつの・・・・・・刃が・・・・・・・・・・・・。」
突然戻ってきた冷気に苦しむエレン。
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- 36 : 2015/06/25(木) 13:08:49 :
グオオォオォォッ!!!
おぞましい獣が声を上げると、ミナス・モルグルの城門が開いた。
エレンたちは、アングマールの魔王の出陣に、折悪く居合わせてしまったのだ。
城門からは次々とオークの軍団が出撃していく。
この城からこれ程の軍勢が出陣したのは、イシルドゥアがモルドールへ出陣したとき以来であり、かつてこの城から、これ程凶悪な軍が出撃したことは、これまでなかった。
ただし、この軍はあくまでナズグルの軍であり、モルドールの本隊ではなかった。
モルドールの本隊は、影の山脈の向こう、モルドールの不毛の大地にまだたむろしているのである。
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- 37 : 2015/06/25(木) 13:09:30 :
ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!
太鼓が打ち鳴らされ、整列したオークの大軍が、橋を渡ってエレンたちが隠れている岩陰のそばを通過していく。
グオオォオォォッ!!!
おぞましい獣が飛び立ち、エレンたちの頭の上を通過した。
アングマールの魔王は軍勢を率い、ミナス・ティリスの侵略に動き出したのであった。
スメアゴル「さて、登るよ、旦那。」
エレンとアルミンは、オークに気取られないよう細心の注意を払いながら、秘密の階段を登りはじめた。
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- 38 : 2015/06/25(木) 13:10:04 :
ミナス・ティリスの宿のベランダにおいて、しばらく呆然としていたガンダルフがようやく口を開いた。
ガンダルフ「チェスのボードの上を、駒が動き出した。」
ミナス・モルグルから出撃したオークたち――――――およそ20万もの大軍が、ミナス・ティリスに向けて進撃を開始した。
―――――――いよいよ決戦が始まる。
静けさは破られ、嵐はすぐそこにまで迫っていた。
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- 39 : 2015/06/25(木) 21:35:18 :
- サシャだ!!期待です!
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- 40 : 2015/06/26(金) 13:06:03 :
- ゴンドールの兵士として、サシャ登場です!
指揮官クラスとしてサシャには頑張ってもらう予定です!
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- 41 : 2015/08/06(木) 01:09:32 :
- 勝手に設定を追加してみた
ハンジ・ゾエ:ゴンドールの沿岸地方ベルファラスを統治するドル・アムロスの大公
ゴンドール随一の精鋭部隊、白鳥の騎士団を率いているが、闇の勢力の
研究に心血を注ぐ変わり者。
サシャ・ブラウス:城塞の近衛隊長。イシリアンの山間地方出身。ゴンドールで最も
食い意地が張っている。エルドを深く敬愛する
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