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 幻の憲兵団 【マルコ誕】

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  1. 1 : : 2015/06/16(火) 00:00:41
    37作目です。

    マルコに関するお話。

    お誕生日おめでとう!


    誤字や脱字などあればご指摘お願いします。
  2. 4 : : 2015/06/16(火) 13:12:41


    『君たちは新兵にして憲兵に入った、優秀な兵士だ。これからの活躍を期待する。心臓を捧げよ!』



    「アニ・レオンハート」

    「……はい」

    「ジャン・キルシュタイン」

    「はい」

    「マルコ・ボット」

    「はい!」

    「以上3名は、訓練兵から憲兵になることを許可する」
  3. 5 : : 2015/06/16(火) 14:06:35


    「10人中3人しか憲兵を志望しなかったのか? えっと訓練所は……」


    ヒゲの生えた上官は、資料にある“南方訓練兵団”という文字を見てバツが悪そうに顔をしかめた。


    「あ……すまん」


    南方といえば、5年ぶりに壁が壊されたとき……訓練兵に限らず、地獄へと駆り出された。

    あのとき、死者は皆無だったそうだ。

    ……兵士を除いて。


  4. 6 : : 2015/06/16(火) 14:48:04


    「いえ、僕ら以外の7人は調査兵団へ行きました」

    「……つまり、全員生きて帰還した、のか?」

    「はい。もちろん……同期はたくさん亡くなりましたが……」

    「ああ……それにしても、7人が調査兵に……やっぱり戦場を経験するとそうなるもんなのか」


    高めで、少しかすれた声の上官は、どこか宙を眺めてそう呟いた。


    「……俺には、理解できないですけどね」

    「こら、ジャン!」

    「ああ、いいよ。俺も、理解できねえから……マリーより巨人を選ぶなんて、本当にどうかしてる……」

    「おっと、話に付き合わせて悪いな。制服の支給が――」


    少し話をしたあと、3人は指定された部屋へと向かった。


  5. 7 : : 2015/06/16(火) 17:05:01


    「これからよろしくね、ジャン、アニ!」

    「あー? なんだ改まって」

    「訓練兵は3年間だったけど、これからはずっと憲兵でしょ? 長い付き合いになるなぁと思って」

    「……生きてれば、の話じゃないの」

    「憲兵だぞ。死ぬ機会なんて早々ないだろ。それとも、誰かに殺されるってか?」

    「別に……ただ、内地(ここ)が絶対に安全だなんて思ってないだけ」

    「これは驚いた。お前が死に急ぎ野郎みたいなこと言うなんてな。あいつと一緒に訓練してほだされたか?」

    「前にも言ったけど、あんたと一緒だとは思われたくないわ」

  6. 8 : : 2015/06/16(火) 17:31:17


    「おい、新兵ー。制服が届いたぞ」


    パリっとした真新しい制服に袖を通し、3人はほぅ、と息をついた。


    「本当に憲兵になったんだな、俺ら」

    「うん。ようやく、王政のことを知れるよ」

    「……あんた、王に仕えるんじゃなかったの」

    「そう思って憲兵を目指してきたけど、5年ぶりに壁を壊されて考えが変わったんだ」

    「僕は、王政……いや、この世界のことを知りたいんだ。そのために憲兵団に入った」

    「そりゃまた、お前も死に急ぎ野郎みたいなこと言うな」

    「あはは、ほだされたのは僕かもね」

    「でもね、エレンたちが外に行ってこの世界のことを調べてくれるなら、僕は中から調査していけばいいんだと思ったんだ」


    マルコはしっかりと前を向いて、その瞳を輝かせていた。

    いつかの通過儀礼のときのように。

  7. 11 : : 2015/06/16(火) 19:04:21


    「なあマルコ」

    「どうしたの?」

    「俺はこの世界のことを知りたいと思わねえし、この世界をくだらないとも思ってない」

    「でも、もしあいつらが海とかいうやつを見つけたら……全員で、見てみたい気もしなくもないな」

    「何気に私を入れるのやめてくれる」

    「悪いな、俺は正直者なんでね」

    「……あっそ」

    「2人とも、相変わらず素直じゃないんだから」

  8. 12 : : 2015/06/16(火) 20:01:49
    『母ちゃんへ



    久しぶりだな。前に言ったとおり、俺は今憲兵で働いてる。

    新兵は仕事を押し付けられて思ったより大変だけど、まあ楽しくやってる方だと思う。

    同じ訓練所からはいつも話してるマルコと、体術がすごいって話をしたアニが一緒だ。

    どっちも頭の回転が速いから会話が楽で良い。


    それと、別の訓練所からきたマルロってやつがいるんだが、こいつがとにかくクソ真面目でな……。

    マルコとは気が合うみたいでよく憲兵団組織や王政の話をしてる。

    あとヒッチっていう女の意見は、結構賛同出来ることが多くてよく話す。

    話すっていうより、よくからかう。

    ボリスっつー銀髪のやつは何かとアニを気にかけてて、最近はそのことをヒッチとからかうのが一種の楽しみだ。

    この間もアニにだけ手伝ってやる、とか言って資料を整理してて

    「こんなのの何処がいいの?」

    ってヒッチがいじってたらマジギレしてた。

    ありゃあ絶対好きだな。


    まあ、こんな感じで平和な日々を過ごしてる。

    この日常がどんなに大切であるか、いやでも考えちまうようになった。

    あんな地獄はもう二度と見たくねえ。


    けど、もし壁外に自由な世界があるんだとしたら、少しだけ見てみたい。

    その時は母ちゃんも、な。


    少しだけだけど、この手紙と一緒に仕送りもいれといたから確認してくれ。

    憲兵になってからの初任給だから大切に使えよ。

    しばらく家には帰れないと思うが、俺の部屋はノックしてから入ってくれ。

    また、何かあったら連絡する。

    体には気をつけろよ!


     ジャンボより』
  9. 13 : : 2015/06/16(火) 20:56:00


    「マルロ、それどうしたの?」

    「……マルコか。ジャン宛の手紙だ」

    「ああ、この間お母さんに手紙出したって言ってたからその返事かな?」

    「あいつと同室だよな。これ、渡しておいてくれないか」

    「わかった」

    「悪いな、それじゃあ俺は先に」

    「うん、僕は部屋に寄ってからそっちに行くよ」


    「マルロから伝達だ。ヒッチ、準備はいいな」

    「ようやく~? 任せて」

    ジャンとヒッチは、巨大なクラッカーを手にする。


    「アニ、大丈夫か」

    「ん」

    ボリスとアニは、また別のものを両手に持っていた。

  10. 16 : : 2015/06/16(火) 21:16:10


    「ごめん、みんなお待たせ……ってあれ?」


    待っていたのは班員ではなく、破裂音だ。


    「ぱんぱかぱーん! お誕生日おめでとぉ~!」

    「マルコ、おめでとさん」

    「わぁ、ジャン、ヒッチ……ありがとう! まさかこんなサプライズがあるなんて……嬉しいよ」

    「サプライズはこれだけじゃないぜ?」

    「え……まさか、ケーキ!?」


    こう見えてもマルコは大の甘党だ。

    砂糖や卵など高価だが、憲兵ともなればいくら新兵でも買えなくはない。


    「アニ、ボリスやっちゃって~!」

    「やっ……? え、うわちょっとまっっっ!!!!」


    そしてケーキは顔面にぶちまけられた。

  11. 17 : : 2015/06/16(火) 21:31:23


    「おめでとう」

    「……おめでと」

    「ははっ……皆、覚悟はできてるよね?」


    マルコは顔にケーキをつけたまま、ジャン、ヒッチ、アニ、ボリスの順で頭突きをかましていった。


    「くそ、おまえ、やったな!」

    「最初にやったのはジャンたちだよ」

    「しかも俺を一番に狙いやがって……誰よりも生クリームべったりじゃねえか」

    「スポンジあっただけいいだろ……俺なんて最後だぞ、ほとんど顔についてなくてキスするかと思ったぜ……」

    「わ、このケーキ美味しくない? これなら全部食べれば良かったぁ~」

    「あんた顔についたケーキを食べるのはどうなの……」


    全員、笑っている。

    このシーンだけ切り取れば、年相応の少年少女が遊んでいるだけだ。

  12. 22 : : 2015/06/16(火) 21:52:44


    「お前ら楽しそうだな」


    そんな新兵だけでの作戦会議に突然現れたのは


    「師団長……!!」


    憲兵団師団長のナイル・ドーク(とマルロ・フロイデンベルク)だった。


    「え、っとあの、すみません、これは……」

    「俺も混ぜろ」


    『!?』

  13. 23 : : 2015/06/16(火) 22:01:01


    「おいマルロ、これはどういう……」

    「師団長がそこら辺で酒呑んでたからいけると思って連れてきた」

    「憲兵団を正しくする話はどうしたんだよお前」

    「まあ、今日くらいはいいだろ?」

    「そうそう、たまには息抜きしないと早死するぞ~」

    「うわぁ、師団長、珍しく酔っ払ってる……」


    酒も入り、賑やかになっていくのに気がついた他の兵士も続々とやってきた。

    そして、ストヘス区憲兵団支部は宴会場になった。

  14. 24 : : 2015/06/16(火) 22:05:11


    「ぉえ……気持ち悪……」

    「あはは、ジャンはお酒弱いもんね。少し外で休む?」

    「おう……」

    「私も行く」

    「アニも? 強いのに珍しいね」

    「さすがにヒッチとボリスには叶わなかった……」

    「ああ……あの2人は化物だ」

    「うわ、今マルロが犠牲になってるね」


    例の2人に目をやると、手当たり次第に飲ませて新兵から上官まで次々と潰していた。

  15. 25 : : 2015/06/16(火) 22:09:39


    「はい、お水」

    「さんきゅ……」

    「どうも……」


    本当に気持ち悪そうなジャンとアニに苦笑しながら、マルコは2人を介抱した。


    「マルコ……」

    「ん、どうしたのジャン。水でもいる?」

    「いや……お前は今、幸せか?」


    先程まで酔っていて赤く、焦点もあっていなかった目が嘘のよう。

    悪人面とも称される彼の切れ長の目は、マルコをしっかりと貫いていた。

  16. 26 : : 2015/06/16(火) 22:16:10


    「うん、とっても幸せだよ」


    その目に応えるように、マルコも顔一杯に笑いを広げる。


    「こんなに楽しい誕生日。来年も再来年も、ずっとこんな感じだったらいいなぁ」


    「……そいつ、もうお亡くなりになってるけど」

    「え……!?」


    ジャンはようやく酷い酔いが落ち着いたのか、安心しきった顔で目を瞑っていた。

  17. 27 : : 2015/06/16(火) 22:19:36


    「全く……でも、これからもこんな風に見守っていたいな」

    「お母さん?」

    「ひどいなぁ、アニ。せめてお兄ちゃんだよ。……あ!」

    「……?」

    「しばらく、アニよりも僕の方がお兄ちゃんだね!」

    「ああ……私は3月だからね。一応あんたと同い年だけど、4月生まれのジャンの方が歳は近いよ」

    「そっかー。甘えていいんだよ?」

    「遠慮しとくよ。同じ年に生まれたのは変わりないから。それに……」

    「それに?」

    「私も、お姉ちゃんとして弟を見守ってみたいから」

    「へぇ、お兄ちゃんとかいたの?」

    「んー、まあ、そんなところ」

  18. 28 : : 2015/06/16(火) 22:22:42


    親友だけど戦友でもあった、優しい笑顔のマルコ。

    普段は無口だけど、酒が入っていつもより饒舌なアニ。

    そんな2人がずっと見守りたいという……。

    そこでジャンの記憶は途絶えた。

  19. 29 : : 2015/06/16(火) 22:29:43


    「はっ……は……」

    「おい、ジャン大丈夫か?」


    訓練所の男子寮。

    広い……いや、広くなってしまったこの場所で、皆の兄貴分、ライナーに声をかけられた。


    「ああ……俺、いつの間にか寝ちまって……マルコが……夢、か……?」

    「……そうか。もうすぐ火葬が始まる、お前も早く準備しとけよ」

    「おう……すまねえな」


    まだ夢を見ている気分の中、火葬場へ向かった。

  20. 30 : : 2015/06/16(火) 22:33:00


    『お前は戦術の発達を放棄してまで大人しく巨人の飯になりたいのか? 冗談だろ?』


    「てめぇに教えてもらわなくてもわかってんだよ、戦わなきゃいけねぇってことぐらい……」

    「でも……誰しもお前みたいに……強くないんだ……」


    ふと、先程話したライナーが目に入る。

    その隣には、アニ。


    そして、夢を思い出した。


    同時に、あの時のことも。

  21. 31 : : 2015/06/16(火) 22:37:59



    『怒らずに聞いてほしいんだけど……ジャンは、強い人ではないから』



    「今、何をするべきか……」

    「おい……お前ら……所属兵科は何にするか、決めたか?」


    他の誰かに向けたものではなく、自分に向けた問い。

  22. 32 : : 2015/06/16(火) 22:39:03



    アニ……お前はきっと、憲兵団に入るんだろうな。

    マルコ……お前はきっと、ずっと傍にいてくれるんだろうな。


    お願いだ……どうか、どうか見守っててくれよ……。



    俺が、もう迷わないように





    「俺は決めたぞ、俺は……俺は……」



    「調査兵団になる」



    -fin-
  23. 33 : : 2015/06/16(火) 22:43:50
    温かくいい話で最後は原作に繋がるいいSSでした!俺もマルコ誕生日SS書きました!
  24. 34 : : 2015/06/16(火) 23:01:59
    マルコお誕生会おめでとう!原作に上手く繋がってて凄い~!
  25. 35 : : 2015/06/17(水) 22:17:11
    原作感が失われていないSS大好きです。
  26. 36 : : 2015/06/18(木) 00:43:47
    感動しました…!
  27. 37 : : 2015/06/18(木) 16:15:33
    >>33
    ジャン最高さん

    ありがとうございます!
    拝見しましたが、終わり方が似ていて意思疎通した感じでした(*´∀`)w
  28. 38 : : 2015/06/18(木) 16:21:12
    >>34
    りお

    当日に終わらせられてよかった~!
    ありがとうっ!
  29. 39 : : 2015/06/18(木) 16:21:42
    >>35
    佐美未散さん

    それを目指していたので嬉しいです。

    ありがとうございます!
  30. 40 : : 2015/06/18(木) 16:22:06
    >>36
    Bertoltさん

    感動だなんて・・・!
    そこまでいっていただけて嬉しいです。
    ありがとうございます。
  31. 41 : : 2015/06/18(木) 19:14:06
    >>37 終わり方は確かに似てましたねw
  32. 42 : : 2015/06/18(木) 21:19:30
    >>41
    ジャン最高さん

    やっぱりジャンとマルコといえばここのシーンですもんねw
  33. 43 : : 2015/06/18(木) 22:22:13
    ものすごい感動しました。
    そして、これが夢じゃないことを、心から願いました。
    マルコ、もう少し生きてて欲しかったです。
    お疲れ様でした。
    素敵な作品、ありがとうございました。
  34. 44 : : 2015/06/18(木) 22:22:51
    >>42 その通りです!
  35. 45 : : 2015/06/18(木) 22:58:06
    >>43
    FLY◦いんこさん

    そう言っていただけるのは、やはり嬉しいものですね。
    マルコの死に方や立体機動など、謎はまだ残っているのでぜひ本誌でも出てきて欲しいです。
    読んでいただき、ありがとうございました!
  36. 46 : : 2015/06/18(木) 23:06:06
    漫画では、マルコの死についてほとんど触れられないってのも、あとから関係あったり、して?
    マルコ、優しいキャラだよね~!もっと登場(回想とかでも)したらいいのにねw
  37. 47 : : 2015/06/19(金) 20:57:41
    >>46
    りお

    あともう1回くらいは出てきそうだよねー!
    特にアニがもってた立体機動との関係を聞きたいですね・・・
  38. 48 : : 2015/06/27(土) 15:17:05
    原作の外伝の様でジャンのあの決意の裏にはこのような思いが合ったのかなと考えさせられました!
    お疲れ様です!
  39. 49 : : 2015/06/27(土) 22:54:32
    >>48
    蒼電さん

    原作の外伝だなんて、一番嬉しいお言葉です……!
    本当にありがとうございます!!

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Liebeschon1104

咲*

@Liebeschon1104

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