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唇の役目(モブハン)87祭
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- 1 : 2015/05/23(土) 19:36:26 :
- ハンジがモブリットに唇の役目について、問います。
Twitterのモブハンキスの日に上げた短編です。
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- 2 : 2015/05/23(土) 19:37:09 :
- 唇ってなんの為にあるかって聞かれて、即答出来る人なんかいるか?
もしいるとしたら、きっとその人は良い関係の人が側にいる、リア充という人種に違いない。
だから俺には答えられない。
目の前で執務机に両肘で頬杖をつき、試すようなこの人の唐突な質問に。
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- 3 : 2015/05/23(土) 19:38:01 :
「すみません、今何とおっしゃいましたか?」
きっちり質問の内容を理解してはいたが、答える術を持たない俺は、そう問い返してみた。
この人がまた質問を投げ掛けるであろう、僅かな間で答えを見つけ出す努力をするために。
「モブリット……君、聞こえてただろ? だから、唇って何でついてるのかな? 何のためにあるんだろ? って言った」
少し不服そうに口を尖らせながら言葉を発する、ハンジ分隊長。
眼鏡の奥に輝く瞳は好奇心に溢れてぎらぎらと輝いていて、俺からその目を離そうとはしない。
何度この目に心を奪われたか……数知れない。
だが今は、ある種の切迫感に苛まれて、分隊長の視線から何とか逃れる術を模索してしまう。
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- 4 : 2015/05/23(土) 19:38:35 :
「あ、の……恐らくは物を食べるためにあるかと」
「ふむ、それだけ?」
「後は……あっ、そうです。言葉を発するために使いますね!」
俺はやっと導き出した答えに、自信を持って発言した。
だけど分隊長は首を傾げる。
「食べるため、話すため。それだけかい?」
「…………すみません、俺にはそれくらいしか思い付きません」
もう1つ、思い当たる答えがあるといえばあるけれど、そんなものを要求されているとは思えない……だからそれ以上は口をつぐんだ。
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- 5 : 2015/05/23(土) 19:39:31 :
「本当に、思い付かないの? 君、実はもう、思い付いてるだろ?」
分隊長は艶やかな視線を俺に投げ掛けて、頬杖を付いていた手を俺に伸ばす。
その指先が、俺の唇をなぞる。
しっかり結ばれていたはずの唇が、その感覚に意図せず弛む。
分隊長は弛んだ唇の隙間に指先を差し入れてくる。
何も言えない、動けない。
俺は体を硬直させる……目を瞑りたいのに瞑れない。
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- 6 : 2015/05/23(土) 19:40:12 :
- 「ここはね、凄く敏感なんだよ? 今だって触れられて感じてるだろ? ねぇ何でだと思う? 私はね、これは、雌が雄を、雄が雌を誘うためについてるものだと思ってるんだ。だからさ……」
分隊長が立ち上がる。
俺の唇に触れている手とは逆の手が、俺の後頭を撫でる。
唇に伸びていた指は頬から耳朶へ。
何かが背筋を這うように、体が震える。
それがある種の快感だと言うことに気がついたその時──
甘い吐息が顔にかかる。
そして
そっと擦り合わせる様に、分隊長の唇が俺のそれに触れた。
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- 7 : 2015/05/23(土) 19:40:53 :
「どう? 唇、感じるだろ?」
熱っぽい眼差しに射抜かれて、俺は返事も出来やしない。
ただ、こくこくと頷いた。
「そっか、よかった。じゃあ私の仮説に加えておくよ。唇は異性を誘うためのセックスアピールの1つだってね」
分隊長がニッコリ笑う。
可愛い。
ん? あれ、何かおかしい……今まで尊敬してはいたものの、可愛いだなんて一度も思ったことなんかなかったはずなのに……
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- 8 : 2015/05/23(土) 19:42:01 :
見飽きた筈の分隊長の顔を、もう一度よく見る。
ぼさぼさの髪、薄汚れた眼鏡、少々目尻が上がっている理知的な瞳、すっと筋のとおった鼻梁、薄いが形のよい柔らかな唇。
唇……
その唇に、もう一度触れたい。
漠然とそう思った。
俺は分隊長のそれに手を伸ばす。
親指の腹でそれをなぞれば、分隊長は目を見開いた。
そして細められる目。
かかった獲物にまるで嬉々とする様に。
そうだ、俺は捕らわれた。
分隊長の唇によって、誘われ墜ちた。
その束縛は永遠。
俺は彼女の誘惑に抗うこと無く、唇を触れ合わせながら得られる快楽を享受する。
─完─
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