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密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの青天』
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- 1 : 2015/05/15(金) 11:46:16 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『エルヴィン・スミス暗殺計画』
(http://www.ssnote.net/archives/2247)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスとの1週間』
(http://www.ssnote.net/archives/4960)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの苦悩』
(http://www.ssnote.net/archives/6022)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの審判』
(http://www.ssnote.net/archives/7972)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの否応』
(http://www.ssnote.net/archives/10210)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの溜飲』
(http://www.ssnote.net/archives/11948)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの流転』
(http://www.ssnote.net/archives/14678)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの渇望』
(http://www.ssnote.net/archives/16657)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの血涙』
(http://www.ssnote.net/archives/18334)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの証明』
(http://www.ssnote.net/archives/19889)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慕情』
(http://www.ssnote.net/archives/21842)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの天命』
(http://www.ssnote.net/archives/23673)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの微睡』
(http://www.ssnote.net/archives/25857)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの再陣』
(http://www.ssnote.net/archives/27154)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの謀反』
(http://www.ssnote.net/archives/29066)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの杞憂』
(http://www.ssnote.net/archives/30692)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの勇敢』
(http://www.ssnote.net/archives/31646)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの挽回』
(http://www.ssnote.net/archives/32962)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慈愛』
(http://www.ssnote.net/archives/34179)
★巨人に右腕を喰われたエルヴィンと
最愛のミケを失うが、エルヴィンに仕えることになった
隠密のイブキとの新たなる関係の続編。
『進撃の巨人』の最新話に私の想像(妄想)を書き足した
オリジナルストーリー(短編)です。
オリジナル・キャラクター
*イブキ
かつてイヴと名乗りエルヴィンの命を狙っていた隠密の調査兵 。
生前のミケ・ザカリアスと深く愛し合っていた。
ミカサ・アッカーマンの年の近い叔母。
※SSnoteのルールに則り感想等を書いていただくグループコミュニティを作りました。
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまで
お願いします⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
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- 2 : 2015/05/15(金) 11:49:10 :
- 隠密から調査兵に生まれ変わったイブキはヒストリア・レイスがオルブド区住人に向かい、緊張する面持ちを隠せず、自らが次期女王であると身振りを手振りを交え説明する姿を眺めていた。
多くの人々から尊敬の眼差しを注がれ、興奮する気持ちを抑えきれず、押し合い圧し合い近づこうとする動きにイブキはヒストリアの小さな身体が押しつぶされると懸念する。当初は笑顔で見守っていたはずが、歓声を耳にしながら住人たちの背中の合間を縫って、ヒストリアの『救出』に向った。
「――皆さん、通してください」
「…あんたも調査兵か?」
イブキがヒストリアのそばに立ち、彼女の腰に手を添え、住人たちに鋭い眼差しを向け、その質問に答えた。
「いいえ…! 私はヒストリア女王の護衛です!」
イブキの宣言するような固い口ぶりは住人たちの合間に広がり、どよめきを与えた。
中でも女性の住人は二人の活躍に胸の鼓動に両手のひらを宛がい、光輝くような視線が送られた。
「イブキさん、これからもよろしくね!」
「もちろん、女王様!」
互いに相好を崩し、何かが吹っ切れたような笑顔を住人たちに向けていた。
ケニー・アッカーマンはロッド・レイスの暴走によって崩落してしまった地下から、命辛々這い上がるが、対人立体機動装置は壊れ、それを放り出し、大木の幹に身体を預けた。脱出の際に負った火傷と怪我により、幹にもたれるだけでも体力の限度は通り越していた。
「この景色…空の色…おまえと対等に見ることが出来るのか…?」
ケニーはウーリ・ロッドと出会いから対人立体機動部隊の隊長を任された今日までの人生を振り返っていた。
死ぬ間際の走馬灯に苦笑いも出来ず、ぼうっと木々の合間から注がれる柔らかな日差しを眺め、かつてウーリと眺めた太陽に反射する湖の煌き、また彼への気持ちを重ねていた――。
若き日のケニーが隠密を通して仕入れた情報を元に本物の王にケニーが近づいたとき、初めて対峙する巨人の圧倒的な強さと脅威に、また身体ごと握られるという行為が自分は誰よりも強い、という彼のプライドも見事に打ち砕かれた。
その直後、ウーリの力となり、ケニーの隠密としての権力は拡大していく。王政としての裏家業のはずが、『本物の王』の側近としての立場も担っていた。
隠密として二重生活を送りながらも、孤児となったリヴァイを引き取り、生きるためにケニーなりに生きる術を授け、特にナイフ使いの飲み込みの早さに、さすが甥だと思ってもそれを明かすことはなかった。
数年の後、イブキの育ての親となっても、二人に対しては親らしいことは強さを与えることだけ――。
それしかできなかった。
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- 3 : 2015/05/15(金) 11:50:20 :
- 本物の強さだけを求めてきた人生とウーリの穏やかさを思い返し、ケニーは目を閉じて命の灯が小さくなるのをただ一人で感じているいたとき、今度は別の懐かしい声がそれを遮った。
「ケニー…」
「…何だ…お前かよ…」
どうにか左目だけを開いて、声の主であるリヴァイを確かめる。部下の調査兵と共に銃を向けられてもケニーに抵抗する力はほんの少しも残っていない。
「俺たちと戦っていたあんたの仲間は皆、潰れちまっているぞ…残っているのはあんただけか?」
「…みてぇだ」
弱々しく失意の口調にリヴァイは部下の調査兵に対してケニーのことを報告をさせるため、その場から離れさせた。
リヴァイは銃を下ろし、ケニーの傷と火傷を眺め、助からないと判断していた。
だが、思いがけずロッドからくすねたという、巨人に変貌できる注射器のキットを出され、リヴァイは彼に微かに焦る色をその目に浮かべた。同時に延命として、なぜすぐに注射をしなかったのか、という疑問も過ぎる。
「なぜ…やらなかった?」
「…あぁ、何……だろうな…ちゃんとお注射、打たねぇと……あいつみたいに出来損ないになっちまいそうだしな……」
全身の痛みは麻痺して、どうにか動かせる血の滲む唇がリヴァイへ向け、御託を並べる。冷え切った眼差しのリヴァイはそれを言い訳と見抜いていた。
「…あんたが座して死を待つわけがねぇよ…もっとましな言い訳はねぇのか?」
「あぁ…俺は死にたくねぇし、力が欲しかった……でも、そうか――」
ケニーはその死の直前、ウーリだけでなく、人は何かに酔い、何かの奴隷であることで突き動かされるものだと悟る。
自分自身は力の奴隷だったと確信しても、ナイフさえ握れず、冷笑を唇に浮かべ血を吐きながら咳き込んだ。
「お…お前は何だ!? 英雄か!?」
リヴァイはケニーの真意に気づかずとも、目の前に苦しむ身体をゆすり、最後と問いを投げかけた。
「ケニー…知っていることをすべて話せ! 初代王はなぜ人類の存続を望まない!?」
「知らねぇよ! だが…俺らアッカーマンが…対立した理由はそれだ……」
ケニーが話しながら、再び咳き込んで、血飛沫がリヴァイの頬にべっとりとこびり付いた。本来、潔癖症であるリヴァイはそれを気にせず、ただ一心にケニーを眺める。
「俺の姓も…アッカーマンらしいな? あんた…本当は母さんの何だ?」
リヴァイの唐突で、母に思いを寄せる疑問にケニーは声を立てて笑う。
「バカか…! ただの兄貴だ」
ケニーの息は乱れ、苦しい笑みを顔に浮かべながら、続いてリヴァイのまっすぐな眼差しを見ていた。
それは最期に確かめたいことをリヴァイに問うためである。
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- 4 : 2015/05/15(金) 11:51:22 :
- 「イブキ……あいつから…俺のことを聞いているだろう?」
「あぁ…『殺しを教える育ての親』だったとか…言っていたな…あんた、昔っから、いったいどんな生活していたんだ…?」
「そうか…」
ニヤリと頬を引きつらせる笑みは更なる辛く険しさを与える。
「あいつも……組織の働きとはいえ……女を捨て…暗殺の繰り返しだった…」
リヴァイは跪いて引き続きケニーの話に耳を傾け、その間も顔の血糊を拭うことはしない。
「今では…お前のところの団長の女なんだってな…?」
「あぁ…」
「最初は暗殺対象だったのに……まさか、女に上り詰めるとは……
だが、冷酷な指揮官の『慰み相手』ってだけじゃねぇだろうな? 大切にされているのか?」
開いている左目が捕らえるリヴァイへの眼差しは鋭く、またケニーの表情は父親の顔に変わる。その視線は注がれ続ける。
「それは…問題ねぇ…。その冷酷さを忘れ、迷惑なくらい…イブキに夢中だ」
「そうか…」
ケニーは安心したように鼻を鳴らして笑う。
眼差しは死期が迫る影響か、優しいままで、それを通し、リヴァイの脳裏に幼い頃、自分の元から離れ行く大きな背中が思い返された。
「あの時…何で、俺から去って行った?」
リヴァイは穏やかでも、切羽詰る声で問う。幼い頃から心の中の爪を立て、宙ぶらりんでひかっかる疑問をようやく投げかけられたからだ。
その声の感触にケニーは『愛想のねぇ死にかけのガキ』の頃のリヴァイの顔を一瞬だけ思い出す。
今では反対に死にかけの自分をリヴァイが見取る、と思っても、眼差しは柔らかいままで、最期の力を振り絞る。
「…俺に…人の親には…なれねぇよ」
「ケニー…」
ケニーが最期の言葉と共にリヴァイの胸に託したのは注射器のキットだった。青ざめた苦しい表情のリヴァイがそれを手にしたとき、ケニーの顔から生気は抜け、開いている左目から強さを奪い去り、追い続けた力の欠片も宿っていなかった。
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- 5 : 2015/05/15(金) 11:52:42 :
- 新女王であるヒストリアの戴冠式において、調査兵団団長のエルヴィン・スミスをはじめ各兵団の幹部たちが彼女の前にひれ伏せた。エルヴィンが視線を少しだけ上げると、その先には民衆に対して心臓を捧げ、敬礼する初々しい女王が姿勢を正していた。強張る表情が緊張と覚悟、どちらが上回るのかエルヴィンは想像できない。しかし、彼女がロッド・レイスが変貌を遂げた巨人を仕留めるとは、いつも先を見据えるエルヴィンにさえ、予想外の出来事だった――。
(父さん、僕は…やったよ…)
エルヴィンは幼いゆえ、父への配慮が欠けたことで、死に追いやった過去を持つ。壁の中の秘密に迫った父にようやく報いられるのかと思えば、小さな笑みが自然と唇に浮かんだ。
背後の民衆の歓声は霹靂の如く鳴り響いている。ヒストリアの背後に建つ宮殿の窓ガラスに映る青天はどこまでも澄んでいる。実際に見上げなくても、その日の空の青さは何度も見てきた壁の外まで広がっているだろうと、エルヴィンが想像したとき、宮殿の窓際でイブキがヒストリアを見守る姿を見つけていた。
眼差しは鋭く、護衛に徹している。イブキはエルヴィンの視線を感じ、頬を僅かに上げても険しい表情に変りはなく、ヒストリアに近づく怪しい影はないか、目配せに勤しんでいた。
「ミケ…あなたにもこの光景を見せたかった…」
イブキの心で生き続けるミケ・ザカリアスに聞えるようにつぶやく。ヒストリアの向こう側にいる民衆が踊りだすような笑顔や歓声とは正反対のイブキの寂しさ漂う声にミケは何も返してこない。だが、イブキは隣にミケが立っているような気がして、彼の横顔を眺めるようにそっと顔を上げていた。
戴冠式が終わり、エルヴィンは宮殿の一部屋を執務室のように使い、もちろん専用のデスクがないため、細かな彫刻が施された豪華な応接セットに座り、今回の作戦の報告書に目を通していた。
座り心地のいいソファから身を乗り出し、最後にリヴァイが報告した件については特に目を凝らして見逃すまいと、一文字ずつ目で追っていた。
またヒストリアをはじめ、104期の面々はこの数日間の緊張から解放された影響か、それぞれの顔に安堵と喜びの色を浮かばせ宮殿の廊下を歩いていた。
もちろん、その中にはヒストリアを護衛するイブキも含まれている。
「ねぇ、イブキさん、今は皆もついているし、私の護衛は少しだけ皆にお願いしてもいいかな…?」
晴れやかな笑顔でも思惑顔のヒストリアがイブキにお願いする。傍らのエレン・イェーガーだけは焦りを隠せないようだが、皆はなぜか張り切る気持ちを抑えられないようだ。イブキは久方ぶりに同期があつまり、ヒストリアを祝うのか、と思うとふうっ、と軽いため息を漏らした。
「わかった! ヒストリア…! 本当に少しの間だから」
「ありがとう、イブキさん! そうだ、団長の部屋なら、そこを曲がって…!」
ヒストリアは涼しい顔で、エルヴィンが執務室代わりに使う一室を広々とした宮殿の廊下を指差ししながら、説明した。イブキは目の前で手を振り、その一室に向かい、姿が小さくなると、すぐさまエレンが口火を切った。
「おい、ヒストリア…! 本当にやるのかよ?」
「もちろんよ…!」
「何だか…面白そう…」
意気揚々と答えるヒストリアにミカサ・アッカーマンの瞳に好奇心の色が宿り、いつも冷静で笑みをもらさない彼女が僅かに高揚しているようだった。
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- 6 : 2015/05/15(金) 11:54:51 :
- イブキがその一室でノックをし、エルヴィンが入るよう促す。ドアの前まで迎えに出なかったのは、すべての報告書を読み終え、ファイルにまとめている最中だったからだ。
はやり、左手だけでは時間を要し、戸惑うエルヴィンの手元にイブキの視線に止まった。
イブキはエルヴィンの隣に座り、手を携える。
「いつも…すまないな――」
「ううん…」
イブキは口端に笑みを浮かべる横顔をエルヴィンに見せた。その日のイブキは女王の戴冠式の警護のため、長い黒髪をポニーテールにし、王室から支給された高級素材の黒色の生地の前開きジャケットを着用していた。胸元には銀ボタンの装飾が目立ち、腕章として銀の糸で縫われた王政のエンブレムが輝く。さらに動きやすいように同じ高級素材の生地の細身のパンツを履いていた。エルヴィンはイブキのまた違った一面に一瞥をくれ、この数日で二人っきりになるのは初めてであり、久しぶりの安堵感のため息を漏らした。
「イブキ…一息入れよう」
「うん、わかった!」
エルヴィンは紅茶に視線を送り、イブキはその動きを感じて理解する。ティーポットに手を伸ばすと、イブキは腕章のエンブレムに目をやる。
「私はやっぱり、調査兵団の『自由の翼』が…いいな…」
「まぁ…そんなこと言わずに…」
エルヴィンはイブキが言うことに冗談だと、もちろん気づいていて、穏やかに答える。イブキがカップに唇を寄せ、ソーサーに戻したとき、エルヴィンは彼女の元へ身体を向けた。
「そんなに…このエンブレムが嫌なら、脱げばいい――」
言いながら、エルヴィンは左手でイブキの胸元の銀ボタンに触れ、柔らかな口付けを落す。
「もう…そういう意味じゃないの…」
イブキはエルヴィンに美しく妖しい笑みを向ける。イブキが銀ボタンに指先を触れると、エルヴィンは軽く頷き、彼女はひとつずつ丁寧に外していく。イブキはエルヴィンを自分の胸元に招く。エルヴィンは左手で、ジャケットを脱がせ、ソファーの手すりに置いた。
シャツだけの姿になっても、エルヴィンはイブキのボタンに手を伸ばす。イブキはゆっくりと頷いて、再びボタンをすべて外したとき、その中はさらしで巻いた胸元が露になる。エルヴィンはイブキの胸元から視線を逸らさない。イブキがシャツを脱いだとき、エルヴィンが左手の指先をイブキの胸の谷間に差し入れ、さらしを一気に下ろした。たわわな胸元が弾くように現れたと同時に、エルヴィンは貪るようにイブキを求める。
大きな左手の手のひらは片方の胸を手に収め、もう片方はエルヴィンの唇がその先を捉えて離さない。イブキは突然ことでも身体を仰け反らせながらも、エルヴィンの背中に腕を伸ばした。
「もう…エルヴィン…誰か…が…来ちゃう…だめ」
イブキの声は艶っぽく、甘美を帯びる。エルヴィンはイブキのいうことに意に介せず、その動きを続ける。
「そう…いいながら…君のその声は何だ…」
エルヴィンも喘いだ息を漏らす。イブキの背中に左腕を伸ばし抱き寄せ、次に彼女の髪のポニーテールを外した。
「この方がいいな…」
「そう…?」
「生きているな…俺たち…」
「そう…みたいね…」
互いに見つめあい、再びエルヴィンはイブキを強く抱きしめる。長い黒髪を左手の指先で梳いて、二人は互いの温もりを通して『生』を実感したとき、その部屋のドアが突如開かれた。
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- 7 : 2015/05/15(金) 11:56:15 :
- そこに立っていたのはリヴァイだった。リヴァイはイブキの素肌を抱くエルヴィンを険しく眺める。エルヴィンも突然の来訪者にそれ以上に険しく見やった。
「邪魔したな…」
「待て、リヴァイ!」
背を向けリヴァイがドアを閉めようとするが、エルヴィンはそれを阻止する。
「いや…大した用事はねぇ…こんなカッコウのイブキに…恥をかかすな」
リヴァイが突然来たことで、ただでさえ恥ずかしさで戸惑っていたが、また彼の気遣いにイブキの身体に熱がこもる。
「まぁ…強いて言えば『イブキを慰み者だけにはするな』という遺言くらいか…」
リヴァイは言い放ち、そのままドアをゆっくりと閉めた。ドアが閉まったと同時にイブキは驚きから少し体を飛び跳ねさせた。
(まさか…リヴァイはあれから頭(かしら)に会っていた…? 遺言ってまさか――)
イブキは最悪な予感から表情を戸惑わせる。エルヴィンが少し前まで読んでいた報告書にはケニーの死亡記述があった。だが、リヴァイがイブキに気遣ってか、二人の関係の詳細は報告されていない。
それでも理知的に勘を働かせるエルヴィンは何かあるだろうと確信するが、手放せなくなったイブキを目の前にすると、それをあえて心の奥にしまいこんでいた。
「君はもう…調査兵であり、女王の護衛で…俺の――」
エルヴィンは最後まで言うよりも、イブキに熱い口付けを注ぐことを選ぶ。イブキに余計なことを考えさせないつもりで、舌先を彼女の口内に侵入させては有無を言わせないほど激しさが増していた。
ようやく互いの唇は離れ、イブキの息はさらに色香を増し乱れ続ける。眼差しも潤んでさらに妖しい美しさを放っていた。
その姿にエルヴィンは堪えきれるわけもなく、イブキを優しくソファに押し倒す。ドアの向こうから104期の賑やかな声が届いても、それを聞えないこととして、イブキとの逢瀬を望んでいた。
リヴァイは二人がいる一室のドアの前に立ち尽くし、イブキの喘ぎ声が聞えたような気がして、鼻で笑っていた。
「これから…どうしようか…」
リヴァイが不意に視線を自分の元へ歩いてくる班員たちに向けたとき、女王を中心として引きつる顔をさらしていた。
その女王は何かを決意し、うなり声を上げながら、リヴァイに飛び掛ると思えば、彼の左腕に拳を振り上げた。振り上げた、といってもリヴァイのジャケットの袖にヒストリアの拳が触れた程度でもちろん、リヴァイは痛みすら感じない。
亡きリーブス会長の、ヒストリアが女王になった暁、『リヴァイを殴って、殴り返せと言ってみろ』という遺言となった冗談を実行を遂げ、104期の面々は歓声を上げても戸惑いは隠せない。ただひとり、ミカサは除いて。ミカサだけは、したり顔で口端は上がっていた
「ハハハ…! どうだー私は女王様だぞ! 文句あれば――」
ヒストリアは棒読み台詞のように声高々といい、リヴァイに向けて震える拳を向けても声は裏返ってしまった。
しかし、それ以上に驚かされたのはその行動にリヴァイが、ふふ、っと微かに笑みを漏らしたからだ。
「おまえら…ありがとうな」
リヴァイの笑顔に104期の面々は目を剥いて驚きを露にする。調査兵になって、リヴァイが礼をいい、笑う瞬間を初めて見た、というだけでなく、笑える人なんだ、と初めて知ったからである。
「それから…この団長の部屋には今は入るな、しばらく立ち入り禁止だ」
「どうして…ですか?」
「察しろ…」
リヴァイがエルヴィンとイブキがいる一室のドアをあごで示しても、柔らかい笑顔には変らない。
皆はただリヴァイの優しい笑顔に戸惑わされていた。
皆はこれから新たなに始まる壁の中の歴史の過程にいて、緊張する反面、願っていた平凡でもいつまでも笑いあえるような日々が送れるのか、とリヴァイの笑顔を通じそれを感じれば、強張る顔も少しずつ和らぎつつあった。
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- 8 : 2015/05/15(金) 11:56:31 :
- ★あとがき★
みなさま、いつもありがとうございます。
毎回、度肝を抜かれるような内容ですが、今回はまさかリヴァイの笑顔が見られるとは
思いもしませんでしたが、ケニーの死は残念でした…。だけど、本当に死んでしまったのか?
という気もしますが…。
だけど、原作と私のこのシリーズをうまく繋げたケニーが惜しくてたまりません。
あと、ヒストリアが女王になり、何が変っていくのか、来月号もまた目が離せませんね。
ようやく、イブキとエルヴィンが会って、二人の時間を過ごす。ただ二人にはほんのひと時でも
普通の男女として過ごして欲しいのですが、これからどうなっていくのでしょうか…。
また来月もよろしくお願いいたします!
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまでお願いいたします!
⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
★Special thanks to 泪飴ちゃん(•ㅂ•)/♡love*
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