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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

ハンジ「モブリット、見てくれ!赤ちゃんが私のおっぱい吸ってるよ!」(シリアスモブハンです)

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  1. 1 : : 2015/04/23(木) 17:01:04
    題名はアレですが、モブハンのシリアスです

    女である事に対して不満があるハンジに、副官はどんな対応をするのでしょうか

    モブリットの家族捏造です

    ネタバレは基本単行本

    よろしくお願いいたします
  2. 2 : : 2015/04/23(木) 17:02:09
    「あーっ、腹いてえ……」

    ハンジは執務中、何度も顔を歪めてお腹を押さえていた

    彼女は巨人の実験に関する資料を纏めていたのだが、それも全くはかどる様子がなかった

    「分隊長、大丈夫ですか?」

    側に控えながら書類を束ねていた、ハンジの副官モブリットが、心配そうに上官に声を掛けた

    「大丈夫じゃないよ……なんか熱っぽいし、イラつくし……」

    「鎮痛剤は飲みましたか?お渡ししたのは昼食の時でしたが」

    「飲んだよ……そろそろ夕方だ。薬が切れてきたのかな」

    ハンジは下腹をさすりながら、もう限界とばかりに机に突っ伏した

    「分隊長……今日はもうお休みください。無理はいけません」

    モブリットは書類の束を執務机に置くと、ハンジの腰の辺りをゆっくり擦った

    「まだ仕事たまってるのに……」

    「ですが、そういう日はあまり無理をすべきではないですよ。非効率ですし….…何より顔色が良くないので、休んで頂きたいです」

    モブリットはそう言いながら、自身がまるで腹痛に苛まれているように、悲痛な面持ちを見せた

    彼にとって、ハンジは何より守らなければならない存在

    彼女になにかあったら自分のせい

    そう言い聞かせてきた彼であったが、彼女にもれなく月一で襲来するこの腹痛に対しては、なす術がなかった

    代われるものなら代わりたい

    だがそれは無理な話だ

    何故なら彼は男であって、ハンジが悩まされている腹痛の原因は、女性特有のものであるからだ
  3. 3 : : 2015/04/23(木) 17:07:10
    「あーっ、私って何で女なのかな……」

    ハンジは顔を上げて、ため息をついた

    「分隊長……」

    モブリットは、いつになく物憂げな表情の上官に、気遣わしげな目を向けた

    「この間もさ……女の癖に分隊長なんて、調査兵団は人材不足甚だしいとか嫌み言われたしさぁ……」

    ハンジは副官に、膨れっ面を見せた

    「ああ、憲兵ですね。あの様な輩の発言など気にする必要はありませんよ」

    「だけど、月一度はこうして痛みに悩まされなきゃだし、下着にも気を使うし……鬱陶しいよ。女なんて……嫌だ。うんざりだ」

    「……」

    モブリットは上官の愚痴に、宥める言葉を持っていなかった

    彼女が月一苦労しているのは、側にいる彼も良く分かっている事であるし、その度に愚痴を漏らすのも毎度の事

    その度に慰めてやりたい気持ちはあった

    だが、彼としては自分が体験していない事象について、軽々しく大丈夫だのなんだの言えないのだ

    せいぜい彼が出来ることは

    「分隊長、今日は本当に休みましょう。後は俺が片付けておきますから」

    そう言って、彼女の負担を少しでも減らす事だった
  4. 6 : : 2015/04/23(木) 17:20:12
    ハンジを寝間着に着替えさせて、ベッドに寝かせると、モブリットはそのまま執務机に向かおうとした

    だが、彼の手をハンジが握った

    「モブリット、背中擦ってくれないかな……」

    「はい、分隊長。……辛そうですね」

    モブリットはベッドに腰を掛けると、ハンジの背中を擦りはじめた

    「私さ、女に生まれてこなきゃ良かったな」

    ハンジはぼそっと呟いた

    「何故ですか?」

    「だって、何にもいい事ないもん。バカにされるし、お腹いたいし……」

    ハンジは頬を膨らませた

    「確かに、生理痛は大変ですが……」

    「この痛みは私にとっては無駄でしかないからね。いっそのこと、薬で止めてしまおうかな」

    「な、何をおっしゃっているんですか……」

    ハンジの言葉を聞いたモブリットは、慌てて言葉を発した

    「排卵を止めちゃうんだよ。半永久的にね。その方が都合がいいだろ?遠征にももれなく参加できるし、止めたら体格も良くなるってきくし」

    焦る副官に、ハンジは不思議そうに首をかしげた
  5. 7 : : 2015/04/23(木) 17:38:14
    「い、いけません、ハンジさん。身体に無理に変化を与えるなんて……」

    モブリットはあり得ないとばかりに、首を振った

    「別に男になろうって訳じゃないよ?ただ生理を止めるだけ。メリットこそあれ、何も支障はないだろ?」

    ハンジは飄々とそう言った

    モブリットはその言葉に慄然とした

    何とか上官の言葉に反論しようと脳内で試みたが、説得力のある答えがみつからない

    彼ははぁ、と息をついた

    「分隊長……とにかく今は痛みで辛いでしょうし、この話はまた後日。お休みください」

    「…………わかったよ、モブリット」

    ハンジはしばらく副官の顔色を伺っていたが、今にも泣きそうなほどに狼狽えている彼の表情を見て、それ以上議論を重ねるのをやめた

    そして、副官に背中を擦ってもらいながら、いつしか眠りについた
  6. 8 : : 2015/04/23(木) 18:06:07
    ハンジが眠りについたのを確認したモブリットは、ハンジの下腹の辺りに毛布をあててから、布団を掛けた

    上官の、痛みからか潜めた眉の付け根、鼻の上をゆっくり指で解して、ふぅと息をついた

    「ほんと、辛そうだよな……代われるものなら代わりたいんだけど、こればっかりは……」

    モブリットは目を伏せた

    先程上官が言っていた、生理を止める事

    遠征のために遅らせる事は、実は一度試したことがあった

    だが、その次にきた生理痛がいつもの数倍辛いものになるという副作用に悩まされて、それ以降は自然に任せていた

    生理を止めてしまうと言う事は、あの若さで更年期障害に悩まされる可能性があるし、子どもを望めないという事に繋がる

    確かに今のハンジが、子どもを身ごもるなど現実的な話ではない

    だが、もし将来彼女がそれを望んだ時に叶わなかったら

    後悔するかもしれない

    「女なんて、かあ……」

    モブリットはそう一人ごちると、頭の中でいろいろな考えを出しては消しつつ、書類の処理に取りかかった
  7. 11 : : 2015/04/23(木) 19:39:48
    モブリットにとってハンジの存在は、敬愛の対象であった

    何よりも優先すべき人であり、何よりも守りたい人であった

    ハンジが男であっても、女であっても、彼の忠義心に変わりはない

    だからといって、折角女性で生まれてきたのに、一時の利便のために女を捨てるのは、どうしても納得できなかった

    「女性だからこそ、出来ることが沢山あるのになぁ……」

    モブリットはまた、独り言を呟いた

    そして、なんとかハンジに女性の素晴らしさをアピール出来ないかと、また思案に暮れる

    しばらく頭の中でああでもないこうでもないと、押し問答を繰り返しているうちに、ふと思い至った事があった

    おもむろに胸のポケットから、封筒を取り出す

    中身は昼間に目を通していた

    彼の実家からの手紙だった

    「そうだ、そうしよう。よし、そうと決まれば……」

    彼は手帳を開くと、何やら指で指し示しながら考えに耽り、やがて頷いた
  8. 12 : : 2015/04/23(木) 21:01:44
    翌日


    朝食を食べた後、モブリットは執務室に向かう道すがら、ハンジに話し掛けた

    「あの、分隊長。お話があるんですが」

    「ん、なんだい?モブリット」

    「次の休暇なんですが、珍しく二日間あるんですよ。俺たち」

    モブリットは自分の手帳を開いて指し示しながら、にこやかに話を切り出した

    「おっ、珍しいね。私の予定も一緒なのか」

    「はい。まあ遠征の合間ですから、団長の計らいで連休にしてくださったようです。で、お願いがあるんですが」

    モブリットは上官の前に立ち、歩みを止めた

    「ん?なんだろ」

    「…………分隊長、一緒に、俺の実家に行ってくれませんか?あなたに会わせたい人がいるんです」

    「………………えっ?モブリット、どういう事?」

    ハンジは、驚き目をぱちくりさせた
  9. 17 : : 2015/04/23(木) 21:21:32
    「深い意味はないんです。ただ、一緒に実家に着いてきて欲しいなと思いまして」

    モブリットははにかみながらそう言った

    「いや、深い意味はないって……君」

    ハンジは信じられない物を見る様な目をモブリットに向けながら、彼の表情をうかがった

    「分隊長、俺の実家は田舎なんですが、風光明媚で、星も綺麗で、とても良い所なんですよ。きっとあなたにも気に入ってもらえると思います」

    モブリットはにっこりと笑みを浮かべていた

    「……そうなんだ、わかったよ。君が私に頼むなんて事今までなかったし、一緒に行かせてもらうよ。しかし家族水入らずの邪魔になりそうだけど」

    ハンジが心配そうに言葉を発すると、モブリットは首を振る

    「いえ、ハンジ分隊長の事は、家族が会ってみたいと前から言ってましたので、来ていただけたら皆喜びます」

    「そうか……じゃあ、お邪魔してみようかな」

    「ありがとうございます、分隊長。では早速今日の勤務明けから、準備に取りかかりますね」

    ハンジにもまだ聞きたい事はあったのだが、モブリットのいつになく嬉しそうな顔を見て、口に出すのを止めたのであった
  10. 20 : : 2015/04/23(木) 21:37:56
    その日の夜、かなりましにはなったがまだ痛むお腹を擦りながら、ハンジはベッドにいた

    「しっかし、いきなりな話だよなぁ」

    今朝の副官の誘いを思い出して呟いた

    あの後、モブリットに体調を気にされながらいつも通り執務をし、風呂に入り、こうしてベッドの中に納まっているハンジ

    モブリットはというと、執務が終わるや否や、旅の準備をしてきますと言い残して、街へ出ていった

    何を準備するのかと問えば、分隊長の服やら下着やら……とあっさり宣うので、それなら着いていくと言ったが、体調が良くないでしょうと頑なに拒まれた

    「えらい張り切り様だよなぁ。嬉しそうだったし。モブリットのあんな顔、見たことないよ。しっかし、実家へ連れていく上に、会わせたい人がいるなんて……」

    ハンジは深い意味はないと言った副官の言葉に、妙にどきっとしていたのである

    顔が熱を帯びているのをはっきり感じる

    「あいつ……なに考えてんだろ」

    ハンジは虚空を見つめながら思考に耽ったが、答えは出てこなかった

    「ま、いっか。折角の連休だし、風光明媚な場所とやらを満喫させてもらうとしよう」

    そう一人ごち、ハンジは眠りについた
  11. 21 : : 2015/04/23(木) 22:29:26
    一週間後、二人は馬で一路、モブリットの実家へ向かっていた

    場所で言えばトロスト区の更に北、ウォールシーナに程近い山間の町

    本来ならば船と馬車を乗り継いで行くのだが、兵団の馬の私的利用の許可を取って、慣れ親しんでいる自分達の馬で移動していた

    途中で何度か休憩を挟みながら移動していくうち、徐々に田舎の景色に移り変わって行った


    「分隊長、もうすぐ町が見えてきますよ」

    モブリットのその言葉通り、山間の街道を駆け抜けた先に、小さな町が見えてきた

    町というよりは村に近い

    そんな場所であった
  12. 22 : : 2015/04/23(木) 22:30:48

    自然に抱かれた小さな町は、だが近づけば案外沢山の家が軒を連ねていた

    その町の北の外れ、小高い丘の上の一軒の家の前で、モブリットは馬を止めた

    「分隊長、ここが俺の実家です」

    彼は馬から降りてそう言った

    「可愛いお家だね」

    家は、素朴で何処となく懐かしかったが、真っ赤な屋根がその印象を可愛らしく見せていた

    「赤い屋根でしょう?目立つんですよね」

    モブリットは少々顔を赤らめながら苦笑した

    「いいね。なんだかわくわくしてきたよ! 」

    ハンジは目をキラキラと輝かせた

    「夜空がとても綺麗なんですよ。さあ、行きましょうか」

    モブリットに連れられて、ハンジは彼の実家に足を踏み入れた
  13. 23 : : 2015/04/24(金) 17:23:18
    「ただいま」

    モブリットが扉を開けてそう言うと、家の奥からバタバタと足音がした

    「あらあら、おかえりなさい、モブリット。早かったのねぇ……ハンジ分隊長さん、はじめまして。いつも息子がお世話になっております」

    モブリットを小さくして、丸くした様な女性がぺこぺこと頭を下げた

    「はじめまして、ハンジ・ゾエです。息子さんにいつもお世話になっているのは私の方です。押し掛けてしまってすみません」

    ハンジはそう言った後、丁寧にお辞儀をした

    「あらあら、押し掛けるだなんて! ずっとお会いしたかったんですよ?至らない息子に手を焼かれていらっしゃるのではないかと……」

    「母さん、分隊長は疲れておいでだから……」

    モブリットの言葉に、母がはっとした様な顔をする

    「ああっ、すみません。長旅お疲れでしょう。どうぞお上がりください」

    「モブリット、疲れてないよ、大丈夫。お母様すみませんが、明日までよろしくお願いします」

    「我が家だと思ってゆっくりなさって下さいね。ちょっと、騒がしいかもしれませんけど……」

    モブリットの母がそう言った時だった

    「兄さん!」

    部屋の奥からもう一人、女性がモブリットに駆け寄ってきた
  14. 24 : : 2015/04/24(金) 18:14:33
    「あ……」

    ハンジは彼女を見て思わず口をぽかんと開けた

    何故なら

    「分隊長、妹のマリアと、姪っ子です」

    彼女が胸に赤ちゃんを抱いていたからであった

    「ハンジさん、初めまして! いつも兄がお世話になってます」

    「初めまして、モブリットの妹さん……そして、赤ちゃん」

    ハンジは驚きながらも彼女らに頭を下げた

    「私、初めての出産だったので里帰り中で……騒がしいと思うんですけど」

    「いや、大丈夫。しかし驚いた。小さくて可愛いね。赤ちゃんを間近で見るのは初めてだよ」

    ハンジはマリアに歩みより、彼女に抱かれている赤ちゃんに、そっと顔を寄せた

    何とも言えない懐かしいような落ち着く匂いが、ハンジの鼻孔をくすぐった

    「もうすぐ二ヶ月なんですよ、ハンジさん。抱いてみますか?」

    そう言って赤ちゃんを差し出すマリアに、ハンジは慌てて後ろに下がった

    「いや、いや、それはさすがに……壊してしまいそうだよ」

    「ふふっ、大丈夫ですよ、ハンジさん」

    狼狽えるハンジを尻目に、マリアは優しげな笑みを浮かべていた

    「可愛いな……」

    ハンジの後ろからひょっこり顔をだして覗くモブリットの顔は、今まで見たことがないくらい目尻が下がっていた

    「兄さん、可愛いでしょ?ふふっ」

    「とにかく、先に上がってゆっくりなさって下さい、さあさ、どうぞ」

    母に促され、ハンジとモブリットは家の中に通された
  15. 25 : : 2015/04/24(金) 19:55:25
    モブリットの部屋に通された二人は、荷物の整理をしつつ言葉を交わす

    「実は、妹が出産したと聞いて、実家にいる間に顔を見せて欲しいと言われていたんですよ。で、たまたま休暇が重なっていたのであなたをお誘いしたんです」

    「なるほどね、最初からそう言ってくれたら、祝いの一つでも買っていくのにさぁ」

    「大丈夫ですよ、ちゃんと買ってありますから。これは服で、これはおもちゃです」

    モブリットは荷物の中から包みを取り出して、ハンジに示した

    「おお、さすがはモブリット。抜かりないな!」

    「後程きっちり代金は請求させていただきますけどね」

    「…………さすがはモブリット、抜け目がないな」

    ハンジはにやりと笑った
  16. 26 : : 2015/04/24(金) 19:55:55

    「しかし、何故分隊長と同じ部屋にしたのか……何か勘違いでもされている気が」

    自分の部屋を見回して、モブリットは首を傾げた

    ベッドの上には枕が二つ並んでいた

    「もしや、私を男だと思ってるのかな?」

    「……いや、それはないですよ。ちゃんと上官は女性だと伝えた事がありますし。男だと思っていたとして、枕二つ並べませんよ、普通」

    モブリットは首を振った

    「だよねぇ。じゃあ、あれかな?付き合ってると思われたとか」

    「その可能性が高そうですね。そういえば、次に家に帰る時は、結婚する相手を紹介する時くらいだと言った事があるんですよ……」

    モブリットはそう言いながら、ほんのり顔を赤らめた

    「君、何て事を! そ、それなら、確実にそう思われているはずだよ?婚約者だって!」

    「いや、ですがかなり前の話ですよ?当時何度も調査兵をやめて戻ってこいと言われ続けていてですね、つい売り言葉に買い言葉で……」

    モブリットは頭を抱えた

    「モブリット……どうするんだい?私は同じ部屋でも構わないけどさ」

    「い、いけませんよ、それは! ちゃんと、母に話しますから。ご安心下さい!」

    ハンジの上目使いを振り払うように、モブリットは首をぶんぶん振った

    「モブリット、顔真っ赤だよ?」

    「そんな事ありませんっ!」

    モブリットは手で顔を覆い隠した
  17. 27 : : 2015/04/24(金) 20:29:07
    「わあ、可愛い服!わざわざお祝いを頂いて……ハンジさんすみません」

    モブリットが用意した祝いをハンジが手渡すと、モブリットの妹マリアは嬉しそうに顔を綻ばせた

    「いやいや、モブリットが用意したんだよ?ほんと可愛らしい服だけど、赤ちゃんはもっと可愛いね!ねえ……少しだけ触ってもいいかな?」

    「勿論、どうぞどうぞ! 」

    マリアの言葉に、ハンジは恐る恐る指先で赤ちゃんの頬に触れた

    「や、やわらかぁい……かっわいい!」

    ハンジはますます目尻を下げて、表情を弛めた

    「ありがとうございます、ハンジさん。よかったら抱いてやって下さいね! 」

    「う、うん。もう少し慣れたら……」

    ハンジはそう言いながら、またそっと指先で赤ちゃんの頬を撫でた

    そんなやり取りをしていると、モブリットと彼の母が飲み物を持って応接室に入ってきた

    「ハンジさん、お待たせしてすみませんねぇ。冷たい飲み物でもどうぞ」

    「お母様、ありがとうございます。頂きます」

    ハンジがそう言って頭を下げた時だった

    「まあまあっ……こんなに素敵な人を連れてきてくれるなんて思ってもみなかったんですよ……平凡な子なのに……」

    モブリットの母が、ハンジの手を握って涙ぐんだ

    「か、母さん?!ハンジさんは……」

    モブリットは慌てて誤解を解こうとしたが、ハンジが目でそれを制止した
  18. 28 : : 2015/04/24(金) 21:02:45
    「お母様、私と息子さんは、公私ともにずっと一緒にいて、戦ってきました。私たちは夫婦よりも更に強い絆で結ばれていると思っています。ですので今更婚約なんて手順が必要なのかはわかりませんが……」

    ハンジはモブリットの母の手を握り返しながら、真摯な眼差しを向けて話した

    「ハ、ハンジさん?!」

    モブリットはぎょっとして、思わず声を裏返した

    「……だらだらとそのままにしておくのも、彼に気の毒だと思っていまして。ですがご存じの通り、私たちの仕事は命がけです。まだやらねばならない事もあります。ですから、今すぐにとはいきませんが、事が落ち着けばと考えています」

    モブリットの言葉を聞いているのかいないのか、ハンジは淡々と話を進めた

    「あら、まあ……ハンジさん、ありがとうございます……」

    「母さん良かったわね。素敵な人で」

    母につられたのか、マリアまで涙ぐんでいた
  19. 31 : : 2015/04/24(金) 21:17:25
    「兄さん、赤ちゃん抱いてみない?ほら、ほら腕広げて。兄さんだってパパになることがあるかもしれないでしょ?練習しなきゃ」

    「いや、俺がパパになんて……」

    モブリットの言い訳もむなしく、マリアに急かされ、彼は仕方なく腕を広げた

    マリアが彼の腕に赤ちゃんを乗せると、赤ちゃんは小さな声を出した

    「うーうー」

    そして手を伸ばして手をバタつかせた

    「なんて可愛い声なんだ。そして動作もかわいいなぁ……」

    ハンジは赤ちゃんのその姿に、柔らかい声色でそう言葉を発した

    モブリットは、初めて抱く赤ちゃんの柔らかさにびっくりしたのか、身動き一つしなかった

    だが赤ちゃんを抱く彼の表情は、とてつもなく優しげなものであった
  20. 32 : : 2015/04/24(金) 22:07:40
    赤ちゃんを床に腹這いにしてやると、自分で首を上げたり、手足をバタつかせたり、愛らしい動作を見せた

    「凄い! 頑張ってる、 偉いな!しかしなんて可愛いんだ……」

    ハンジは最初こそ大人しかったが、今では一緒に腹這いになって赤ちゃんの真似をする程、馴染んで楽しんでいた

    「ハンジさん、大きな子どもみたい! あはは」

    「そうなんだ。分隊長はいつもこんな感じさ」

    愉しげに笑うマリアの隣で、モブリットは苦笑した

    「こうして見ていたら、あの調査兵団の分隊長さんには到底見えないわねえ」

    「まあ、闘わせれば、ハンジさんの右に出る者は殆どいないよ」

    母の問いに、モブリットが答えた

    「あの兄さんが、分隊の副隊長というのがもっと信じられないけど」

    「頼りなく見えるって事かい?マリア」

    モブリットは妹に、不服そうに尋ねた

    「小さい頃から押しが弱くて気も弱くて、困った顔ばかりしていたもの、兄さんは」

    「昔の話だろ……それは。まあ今でも困った顔ばかりしているけどさ……」

    そう言って眉を潜める兄の背中を、マリアはくすくす笑いながらポンポンと叩いたのであった
  21. 33 : : 2015/04/24(金) 22:23:51
    「モブリット、折角だし、疲れていないなら川沿いの散策でもしてきたらどうかしら?ハンジさんと一緒に。その間に夕食の支度をしておくから」

    母の言葉にハンジがいち早く反応する

    「夕食の支度、手伝いますよ。お母様」

    モブリットはその言葉を聞いてぎょっとした

    自分が側に着いてから、ハンジは一度だって料理などした事がないのだ

    「いえいえ、ハンジさんにはゆっくりしていただきたいので……大丈夫ですよ!」

    「そうですよ、私も居ますから。兄さんいってらっしゃい!」

    こうして二人は勧められるまま、村に流れる川の散策に出る事になった
  22. 34 : : 2015/04/24(金) 23:06:45
    集落から程近い場所に、川が流れていた

    渓流で、所々岩があったり、瀬があったりしている、とても美しい川だ

    目を凝らせば、川魚が悠然と泳いでいるのを見ることができた

    「焼いたらうまそう。あまごだよね、あれは」

    「……禁漁区ですけどね」

    「うん、わかってるよ……あっイワナもいる」

    こんな感じで、言葉少ななやり取りをかわしながら、二人はゆっくり川を遡る


    しばらく行くと、目の前に滝が見えてきた

    「滝だ、すごい水しぶき」

    「あまり近寄ったら濡れますよ、分隊長」

    滝に駆け寄るハンジに声をかけるが、彼女がモブリットの言うことを素直に受け入れる事は少ない

    ハンジは水しぶきで濡れるのを構わず、滝壺を覗き込んだ

    「凄い水量だ……」

    「ちょっと、覗きすぎです。落ちますよ?」

    モブリットに首根っこを掴まれて、ハンジは無理矢理後ろに下げられた

    「ああ、またいつもの様に良いところで……」

    「滝壺に落ちて死んだら俺のせいになるじゃないですか」

    「大袈裟だなぁ、君は」

    ハンジは肩を竦めたが、結局滝壺から離れた
  23. 35 : : 2015/04/24(金) 23:07:19

    滝の前に設えてある数席のベンチに、二人で座って滝を眺める

    時折、風に吹かれてかかる水しぶきが心地いい

    辺りは新緑の木々……雄大な景色だった

    「分隊長……あなた、どういうおつもりですか?」

    モブリットが小さな声で、ハンジに問い掛けた

    「何の話だい?」

    「婚約のくだりですよ。母に真っ赤なうそをついて……あなたは」

    モブリットはこめかみを指で押さえた

    「……でもさ、君のお母さん、あんなに楽しみにしてくれていて、言いづらかったし」

    ハンジは小さい声でそう言いながら、視線を地面に落とした

    「すみません、分隊長。俺が、きちんと誤解を解かなかったのがそもそも悪かったんです」

    モブリットは、上官の何処と無く辛そうな表情に、思わず背筋を伸ばして謝罪した

    「うーん、なんと言うかな……嘘も方便じゃないけど、どのみちまだまだ君と一緒にいる事になるだろうし、その関係性が変わるわけじゃないなら、せめて君のお母さんを喜ばせてあげたかったんだ。落胆はさせたくなかった。君も親孝行になるじゃないか」

    「分隊長…………」

    モブリットの目尻に、何が暖かいものが込み上げてきた

    彼はそれを必死で堪えた

    「だから、精々婚約者らしく振る舞ってくれよ?まあ、普段から私の嫁みたいな働きをする君だから、何も特別な振舞いは必要ないけどさ 」

    「誰が嫁ですか、まったく。ちょっと、つつかないで下さいよ! 」

    モブリットが不服そうに膨らませた頬を、ハンジは面白がってつんつんつつくのであった
  24. 36 : : 2015/04/25(土) 08:33:07
    「うわぁお! お母様は料理の天才ですか?! 何だこのテーブルの上の美味しそうな、それでいて美しい料理たちは! 」

    夕食の席に通されて、ハンジは目をきらきらと輝かせた

    「あらまあ、そんなに大袈裟なものじゃないですよ、ハンジさん。今日は少し奮発しましたけど」

    母が頬を緩ませながら、なかなか手に入らない川魚を指差した

    他には色とりどりの野菜と、フルーツのサラダにオムレツ

    魚以外は自家栽培であった

    「いえ、こんなに美味しそうな食事は本当に久々です。何せいつもパンとスープだけですしね」

    「確かに、兵団の食料事情もあまり芳しくないからね。これは久々の贅沢だよ、母さん」

    ハンジの言葉に、モブリットが補足した

    「喜んでもらえたなら良かった。さあさ、召し上がれ」

    「……マリアさんは一緒に食べないんですか?」

    ハンジがフォークを手にしながら、きょろきょろした

    「マリアは今、授乳中なんですよ。後程食べさせますから」

    「じゃあ、マリアさんの分残しておかなきゃね。魚は彼女に食べさせてあげて下さいね」

    実はテーブルの上には、魚が二匹しかいなかった

    ハンジは自分の目の前にあった魚を、母親の方へ押しやった

    「えっ、ですがこれはあなたたちに食べてもらおうと思って……」

    「私は彼とつつきますし、マリアさんは二人分食べなきゃいけないんですから」

    「ハンジさん……」

    ハンジの言葉に、母はまた涙腺を弛ませた

    モブリットはハンジのその様子に、内心首を傾げていた

    彼が上官に抱いている印象は、とにかく猪突猛進、人の事などそっちのけで自分のやりたい事をやる、そんな感じだった

    だが、今のハンジはモブリットが知るハンジとは180度違っていた……まさに理想的な上司であり、理想的な女性だ

    この人やればできるんじゃないか……と心で愚痴ったモブリットであった
  25. 37 : : 2015/04/25(土) 10:47:31
    「わぁぁ、可愛い……天使だ……」

    ハンジはついに、赤ちゃんの抱っこに成功した

    自分の腕の中に納まる、このうえなく愛らしい存在の温かさを感じながら、目尻を限界まで下げていた

    「本当に可愛いですね……癒されます」

    「ああ、本当に……」

    マリアが食事をしている間、ハンジとモブリットが子守りをかって出ていた

    目をらんらんと開けている赤ちゃんは、目の前にある、母親とは違う顔をじっと見つめたり、その顔の動きを目で追ったりしていた

    「分隊長、代わって下さい。俺が抱きたいです」

    モブリットは催促するように、腕を広げた

    「やだよー。むさいおじさんに抱かれるより、私の方が絶対嬉しいはずだしね」

    ハンジはプイッと体ごとそっぽをむいた

    「おじさんじゃないです!お兄さんです!」

    モブリットは剣呑な眼差しをハンジに向けた

    「いやいや、この子からみたら、君はモブリット叔父さんだよ?やーいおじさん!」

    「……くっ、そりゃそうですけど……」

    モブリットは悔しげに顔を歪めた

    「まあ仕方ない。おじさんに抱っこしてもらおうね。嫌なら直ぐに戻っておいでよ?」

    ハンジは赤ちゃんにそう話しかけながら、モブリットの腕にそっと、小さな命を乗せてやったのであった
  26. 38 : : 2015/04/25(土) 15:37:53
    「ハンジさん、子守りありがとうございます。今からお風呂なんですけど……もしよかったら赤ちゃんと入ってみますか?」

    食事を終えたマリアが、ハンジにそう声をかけた

    「ええっ?!わ、私がこの子を!?いいのぉ?!」

    「だっ、ダメだよ! ハンジさんに赤ちゃんの風呂を任せるなんて!」

    マリアに食らいつきそうな勢いのハンジを制止する様に、モブリットは叫んだ

    「大丈夫だよ、モブリット。抱くのにも慣れたし、マリアだって着いててくれるよねえ?」

    「はい、洗う時はご一緒しますよ」

    「そ、それでも、危ないって……万が一湯船に落としたりしたら……」

    モブリットは身震いした

    「やだぁ兄さんたら大袈裟!」

    「モブリットはいつも大袈裟なんだよ、マリア」

    「やっぱりーそうですよねぇ。心配性も度を越せば鬱陶しいですよね!」

    マリアとハンジの結託に、モブリットが敵うはずもなく……

    「鬱陶しいってなんだよ……ハンジさんがどんな人なのか知らないから言えるんだ……」

    「ん?なんか言ったかい?モブリット」

    「いいえ、何も!」

    モブリットは不機嫌そうに口をすぼめた
  27. 39 : : 2015/04/25(土) 16:05:57
    「ハンジさん、大丈夫ですか?!しっかり抱いてやってますよね?頭が沈んだりしてませんよね?!」

    風呂の扉の前で、中に声をかけ続けるモブリット

    マリアは赤ちゃんを風呂からあげる準備をしていて不在だった

    「大丈夫だって……うるさいなぁ君は。ゆっくり入れないじゃないか。あー、可愛いなぁ。目を細めてるよ、きっと温かくて気持ちがいいんだろうなぁ」

    「分隊長、変わったことはないですか?逆上せて顔が真っ赤になったりは……」

    モブリットがまた声をかけた時だった

    「うひゃぁぁぁ!」

    風呂の中からハンジの悲鳴のような声が聴こえてきた
  28. 40 : : 2015/04/25(土) 16:06:41
    「分隊長?!どうされましたかっ!?」

    モブリットはハンジのただならぬ悲鳴に、慌てて風呂場の扉を開けて中に入った

    そこで彼が目にした物は……

    「モブリット、見てくれ! 赤ちゃんが私のおっぱい吸ってるよ!」

    ハンジの胸の下辺りで赤ちゃんは、湯に浸かりながら、彼女のなけなしの胸に口を当てていた

    モブリットはそれを目にして、しばらく言葉を失った

    そして、おもむろに息を吸い込む

    「…………あんた何を吸わせてるんですか!出ないでしょうが!」

    上官に向かって罵声とも言える口調で捲し立てた

    「いや、赤ちゃんが自分で探って吸ったんだよ?私はくわえさせたりなんかしてないって」

    「とにかく早く外して下さいよ! いくら吸っても出ないのに……可哀想ですよ!」

    「いや、外し方わかんないし……どうしよ」

    ハンジは困ったように首を傾げた

    「後ろに下がればいいじゃないですかっ!」

    「無理だよ、吸い付いて離れそうにない……しかし可愛いなぁ……」

    ハンジはそう言って、自分の乳を吸う赤ちゃんに慈愛のこもった眼差しを向けた

    「あんたね…………いてっ!」

    「兄さん!?何をやってるのよ!いくら婚約者だからって、風呂を堂々と覗かないで!もうっ!エッチ!バカ!」

    何かを言おうとしたモブリットの背後から、マリアが現れ、彼の頭にげんこつを食らわせたのだった
  29. 41 : : 2015/04/25(土) 19:50:25
    「エッチ、バカ…………うぶぶぶぶ」

    風呂の後、モブリットの部屋に戻った二人

    ハンジは先程から堪えきれない笑いを室内にぶちまけていた

    「しつこいですよ?!だいたいあなたが急に悲鳴あげるから!」

    「だからって、いきなり風呂に飛び込んで来るなんてさぁ。しかも女が裸でいるのに、何の躊躇も恥じらいも見せないし」

    「あなただって恥じらわなかったじゃないですか!」

    モブリットは悲鳴のような声で叫んだ

    「赤ちゃん抱いてたしさ、動けないじゃないか。だから恥じらうにも恥じらえなかっただけだろ?」

    「いやいや、背中を向けるとかですね」

    「君が顔を背ければ良かったんじゃないか」

    ハンジはそう言うと、いきなりモブリットの顔を覗き込んだ

    彼の顔は端からみてもわかるほどに紅潮していた

    「君、今更照れてるの?顔真っ赤なんだけど。思い出した?」

    「…………分隊長、やっぱり俺が、悪かったです。すみません」

    モブリットはぼそっと口を開くと、枕にポスッと顔を埋めた

    「エッチ、バカ?」

    「…………はい、完全に」

    枕に顔を埋めたまま動こうとしないモブリットに、ハンジは笑いを噛み殺した

    「ははっ、いいよ別に。君もなかなか可愛い所があるんだねぇ」

    ハンジはそう言うと、モブリットの背中をポンポンと叩いたのだった
  30. 42 : : 2015/04/25(土) 20:44:34
    「しっかしさぁ、可愛いよねえ、赤ちゃん。ふわふわだしさぁ」

    「そうですね、本当に可愛らしいです。姪っ子なんですが、目に入れても痛くなさそうです」

    二人は目を細めながら赤ちゃんの可愛らしさを語り合った

    「ははっ、君に子どもができたら、超溺愛しそうだね。娘だったら、嫁にやらんぞ、みたいな! 」

    「そりゃあ、そうなるでしょう。まず間違いなく」

    モブリットは神妙な顔つきで頷いた

    「年頃の娘にうざがられる親になりそうだなぁ。ははっ!」

    「だってね、男なんてろくな事考えてないですから」

    「エッチ、バカだしね、うぷぷ」

    ハンジは思い出した様に笑った

    「またそれですか……ずっと言われ続けそうですね」

    モブリットはげんなりと肩を落とした
  31. 43 : : 2015/04/25(土) 21:31:25
    「では、俺も風呂に入ってきますので、くれぐれも部屋を散らかさないように」

    モブリットは、ハンジにぴしゃりとそう言って立ち上がった

    「わかってるよ、早く入っておいで。心配しなくてもいかがわしい本なんか探さないからさ」

    「そんなもんありませんよ! 全くあなたは! 」

    ふん、と鼻を鳴らして部屋を出ていったモブリットを、ハンジはぺろりと舌を出して見送った

    「ほんとに無いのか、怪しいなぁ……ふふっ。でもまあ、たまには部下のプライバシーを尊重してやるか」

    手持ちぶさたになったハンジは、赤ちゃんの姿を探すべく部屋を後にした
  32. 44 : : 2015/04/25(土) 21:34:16
    ハンジが応接室に行くと、 マリアと赤ちゃんはいなかったが、 モブリットの母親がいた

    「あっ、ハンジさん。お茶でもお入れしましょう。どうぞ座ってらして下さいね」

    「はい、お母様」

    ハンジは頷き、椅子に腰をおろした


    しばらく待っていると、香りの良いお茶がハンジの前に置かれた

    「自家製のお茶なんです。あの子が大好きでして……あなたのお口にも合うといいんですけど」

    「頂きます」

    ハンジはそう言うと、お茶を一口含んだ

    良い香りと、爽やかな喉ごしで飲みやすいお茶だった

    「とても美味しいです。モブリットはこのお茶が好きなんですね。彼は私にはあまり、自分の事を話さないので……」

    「そうなんですか。確かに昔からそう言うところがありました。あまり自分の考えを口には出さないんです。ですから、調査兵団に入ると聞いた時には……」

    そこまで言うと、母親は辛そうに目を伏せた
  33. 45 : : 2015/04/25(土) 21:34:53

    「ショックだったでしょう。心中察して余りあります。それも、私が引っ張ったも同然。家族の方に恨まれても仕方がないと思っていました。それなのに、温かく迎え入れて下さって……ありがとうございます」

    ハンジは丁寧に頭を下げた

    「あの子は、あなたのお役にたてていますか……?何度も危ない所をあなたに助けられていると聞いています……」

    「私にとって、息子さんは片腕も同然です。彼がいなければ私も生きてはいませんでした。彼がいたからこそ、こうして生き抜いて闘う事ができています。私たちは二人三脚で、この厳しい時代を、戦いを渡ってきました。これからも、共にあり続けるつもりです」

    「ハンジさん……」

    モブリットの母親は、涙を溢した

    「お母様、すみません、彼を死地に向かわせている私には、あなたを慰めることができない……」

    「違います、あの子は望んであなたの下で戦っています。あの子の意志で……ですから、あなたが頭を下げる事はないんですよ……」

    いつしかハンジの目から溢れ落ちた涙を、モブリットの母は丁寧に拭ってやったのだった

    「ありがとう……ございます」

    ハンジは久々に、涙を流した

    それは、ソニーとビーンが死んで以来の事であった
  34. 46 : : 2015/04/25(土) 22:52:29
    その頃、部屋の外では……


    「兄さん、大丈夫?」

    「…………ああ」

    風呂から上がってきたモブリットと、赤ちゃんを寝かしてお茶を飲みに来たマリアが居合わせていた

    彼らは偶然、ハンジと母親の会話を耳にしたのだった

    「とても素敵な上官ね、兄さんは幸せよ」

    「ああ、そうだね、本当に。改めてそう思うよ」

    モブリットの目尻にも、涙が浮かんでいた

    「そういえば兄さん、ハンジさんと婚約なんかしてないんでしょ?」

    「……ん?なんでだい……?」

    妹の言葉にモブリットはぎょっとした

    「兄さんの手紙、母さんから見せてもらったけど……どう読んでも、ただ上官を連れてくると書いてるとしか思えなくて。母さんは勘違いしたみたいだけど」

    「……だよな。まあ前に喧嘩した時に言ったのを覚えていたんだよ、母さんは」

    モブリットは肩を竦めた

    「ふふっ、二人ともあまり自分の事を詳しく話さない人だからね。ほんと、母さんと兄さんは良く似てるわ。ちなみに、部屋を一緒にしたのは私だからね。母さんは、いくら婚約者でも、まだ結婚してないから別の部屋じゃないとって言ってたもの」

    「……勘違いってわかってて、なんで同室にするんだよ」

    モブリットは目くじらを立てた

    「そんなの決まってるじゃない…………面白そうだからよ」

    「面白そうだからって、お前ね!」

    「嘘よ。兄さんがハンジさんの事好きなんだろうなって思っていたからよ。手紙読んでても、ハンジさんの事ばかりなんだもん。兄さんはそう言うところはわかりやすすぎるんだから」

    モブリットは、悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう言うマリアに、反論する言葉を失った

    「嫌いではないけど……枕二つ並べて寝るような関係では……」

    モブリットは顔を真っ赤にしながら狼狽えた

    「そう。どうせ兄さんは押しが弱いだろうから、お膳立てしてあげようと思って」

    「マリア?!」

    「……婚約は嘘なのかもしれないけど、それをいっそのこと、事実にしてしまってもいいんじゃない?」

    マリアはそう言うと、唖然とするモブリットの背中を思いきり叩いて、応接室に入っていった

    「痛いなぁ……まったく」

    残されたモブリットは、どうしようもなく火照っている顔を冷やすべく、玄関へ向かったのだった
  35. 47 : : 2015/04/26(日) 08:34:57
    丘の上にあるこの家の庭からは、付近に民家も少なく、夜空がとても近くに見える

    モブリットは木箱の上に座って、空を眺めていた

    ときおり流星を見る事ができる、星空観測の特等席だ

    彼は幼い頃から、星が好きだった

    「星が近くて綺麗だ。トロスト区ではここまで見れないもんな。でも、壁外ではこれくらいの星空は見られる場所はあったんだよな」

    天敵である巨人さえいなければ、ここよりももっと凄くで美しい星空を探しに行けるのにと、彼は思った


    上官が先程母に話していた言葉

    二人三脚、片腕、これからも共にあり続ける

    彼はこれを耳にした時、今まで生きてきた中で一番、心が震えた

    彼は、常にそう在りたいと願い続けて、努力をし続けていたからだ

    彼はハンジを必要としていた

    ハンジの側で、ずっと共に在りたかった

    役に立ちたかった

    だが、現実は甘くない……迷惑をかけて、至らない事ばかりで、いつまでもハンジに頭が上がらなかった

    だから、まさか上官があんな風に言ってくれるとは思ってもみなかった


    勿論、婚約話と同じ様に、母を安心させるための『嘘も方便』なのかもしれない

    それでも、彼は上官が涙声で発したそれらの言葉を、大切な宝物の様に胸の奥底にしまうのであった
  36. 50 : : 2015/04/26(日) 10:36:11
    「モブリット、何してるんだい?」

    モブリットが星を見ながら感慨に耽っていると、ハンジがやって来た

    「分隊長、星を見ていたんですよ。こちらへどうぞ」

    モブリットはハンジに隣を指し示した

    「おお……凄く綺麗だな! 今にも落ちてきそうだよ」

    ハンジは夜空を見上げながら、手を伸ばした

    「流星も、たまに見られますよ」

    「ほんとかい?!探そう!」

    ハンジが眼鏡をかけ直して目を皿にし始めたのを見て、モブリットもそれに倣った

    しばらく二人は星空を凝視する


    「……あ、流れました」

    モブリットが夜空の一点を指差して言った

    「えっ?!どこどこ?!」

    「もう消えましたよ。一瞬ですし」

    「ちぇっ……次は見つけるぞ!」

    ハンジは舌打ちをして、また星空に視線を移した

    「……あ、また流れた」

    「嘘だ!ちっとも見えないよ、モブリットずるい!」

    ハンジはそう言うと、モブリットの目を自分の手のひらで覆った

    「ちょっと!何するんですかっ?!見えないじゃないですか!」

    「私が見つけるまで目隠しだ! 」

    「や、止めてくださいよ! 」


    静かな夜に、騒がしい二人

    星がまるで彼らを見て笑う様に、きらきらと瞬いていた
  37. 51 : : 2015/04/26(日) 11:07:42
    「さっきさ、お母様と、マリアと話をしていたんだ」

    「…………そうですか」

    モブリットは、部屋の外で漏れ聞いたハンジの言葉をまた思い出し、胸の奥がじんときた

    「君は、あまり自分の事を話さないから知らなかったけど、実家に帰ったこと無かったんだって?駄目じゃないか。ちゃんと、たまには顔見せてやりなよ?」

    「はい……すみません」

    「まあ、私から目を離せないから仕方がないかもだけどね」

    ハンジはそう言うと、モブリットの頭をがしがしと撫でた

    「マリアから、妊娠とか出産の話を聞いたよ。生理痛よりも酷いつわりに悩まされたり、トマトしか食べられなくなったり……出産に至っては、めちゃくちゃ痛くて辛かったんだって、怖いねえ。鼻からスイカ出すくらいなんだよ?無理だろ普通! 」

    「はい、分隊長、無理ですね」

    モブリットは素直に頷いた

    「でもさ……女の体はそれらの痛みに耐えられるように出来ているんだって。元々女は痛みには強いし、立体機動の際の重力に対しても、女性の方が順応率が高いじゃないか。それも出産に耐えられる体と関連してるのかな?」

    「わかりませんが、もしかしたらそうかもしれませんね」

    「そんなにきつい痛みに耐えた末に、やっと赤ちゃんに出会えた時……とても感動したんだって。生まれてすぐに抱かせてもらった時、柔らかくて温かくて、今まで痛かった事を全て忘れたんだって」

    ハンジはそう言うと、目を閉じお腹に手を当てた

    「私が嫌いなあの痛みも、そういう喜びを知るために必要なんだろうね。ここに命が宿るわけだからさ……なんか凄いよね」

    「はい、女性は凄いと思います」

    モブリットは、ハンジの穏やかな表情に目を奪われた

    彼女の表情はまさに女性そのものを象徴する様に柔らかく、優しいものであった
  38. 52 : : 2015/04/26(日) 14:47:28
    「君は……私にそれを知らせたくてここに連れてきたんだろ?女性である事の喜びとか、そういうものを」

    「…………はい、あなたが早まりそうだったので。それに、姪っ子にも会いたかったですしね。生きている間に」

    モブリットは小さな声で呟くように言った

    「生きている間、かあ……そうだね。いつ死ぬかわからない状況はずっと変わらないもんね」

    「はい。ですが、俺はきっとあなたが生きてさえいれば……人類が自由を掴める日が来ると信じています。あなたがいれば、何とかなる気がするんですよ」

    「ははっ、それは買い被りすぎだよモブリット」

    ハンジはモブリットの肩をガシッと抱いて笑った

    「いえ、あなたの奇想天外で斬新な発想のお陰で、人類は少しずつ、前に進んでいるんです。それを側で見られて、俺は運が良いと思っています」

    「ありゃ、珍しく誉められてる?いつも止められてばかりだから拍子抜けだ」

    ハンジはモブリットの言葉に目を見張った

    「俺はいつも、あなたを尊敬していますよ。無茶をしすぎるのは困りますが、本当にあなたの副官で……良かったと思っています。ありがとうございます、ハンジさん」

    モブリットはハンジに肩を抱かれながら、ふわりと微笑みを浮かべた

    ハンジはその表情を目にして、ごくんと唾を飲み込んだ

    「…………な、なんだかモブリットがとても愛おしくなってきた」

    「な、何ですか急に……ってちょっと、あなたなんて顔してるんですか!?」

    モブリットはハンジのただならぬ顔に、思わず立ち上がろうとしたが、肩をがっちり掴まれていてそれは叶わない

    彼女の顔は今までにないくらい紅潮していて、鼻息が荒い……巨人の実験の時より更に興奮している様子だった

    「モブリット相手に発情期を迎えてしまった」

    「んなバカな!分隊長落ち着いて下さい!うわぁっ!」

    「やーだね」

    ハンジは悲鳴を上げるモブリットなど意に介さず、彼の体を強く抱き締めたのであった
  39. 53 : : 2015/04/26(日) 16:11:55
    「モブリット……」

    ハンジは熱の籠った声で、モブリットの耳元に囁きかけた

    「ひえっ……な、何ですか?」

    耳にハンジの吐息がかかり、身体をびくつかせながらも、なんとか返事をした

    「君に免じて、女である事は止めないでおくよ。確かに生理痛なんか闘うには邪魔だけど、無理に止めて、変に体のバランスが崩れたら嫌だし、なにより……」

    ハンジはそこまで言うと、モブリットを抱いていた腕を緩めた

    そして、真っ赤に染まっている彼の顔をじっと見つめる

    「私もいつか、赤ちゃん産んでみたくなったから。だって人の子でもあんなに可愛く思えるんだよ?自分が生んだ子なら……きっともっと可愛いはずだ」

    「勿論、可愛いはずですよ。自分よりも大切な存在になるといいますからね」

    モブリットは笑みを浮かべながら頷いた

    「ああ、そうだね。きっと巨人より可愛く思えるさ!」

    「当たり前でしょうが。比べないで下さいよ……」

    モブリットはため息混じりに言葉を発した
  40. 54 : : 2015/04/26(日) 16:12:17

    「まあ、でもこればっかりは相手がいなきゃできないしなぁ。戦いが終わった時にはすでに誰にも相手にされなくて枯れ果ててたりして……」

    ハンジは遠い目をした

    「……戦いが終わって、あなたが行き遅れて嫁に行く宛がなければ……俺が、引き取りますよ」

    モブリットの今にも消え入りそうな声が、辛うじてハンジの耳に届いた時、彼の上官はみるみるうちに顔を綻ばせた

    「モブリットぉぉ……それ約束だからね?!」

    ハンジはモブリットの小指に自分の小指を無理矢理絡めた

    「はいはい……ですので生き急ぎ過ぎないで下さいね。あなたの命のためにも、ここに宿す予定の小さな命のためにも」

    モブリットは、空いた手をハンジの腹にそっと添えて、諭すように言った

    「君の子だしね!」

    ハンジはにやりと笑った

    「いや、まだわからないじゃないですか。あなたを貰いたい物好きがいるかもしれませんし。そしたら俺はお役御免です」

    「あーいいや、めんどくさいから君で」

    「…………めんどくさいからってなんですか!手頃だからって理由で俺を見繕うの止めてください!失礼ですよっ!」

    モブリットは絡まっていた小指を振りほどいて、ハンジから距離をとった

    「満更じゃないくせにー」

    「うるさいっ!やっぱり前言撤回です! 他を当たってください! 」

    「男に二言はないよ!観念しなさい、モブリット!……はははっ」

    ハンジは愉しげに笑いながら、もう1度彼の体を引き寄せて抱き締めたのであった
  41. 55 : : 2015/04/26(日) 19:45:34
    「さて、そろそろ戻ろうか。枕が二つ並んでる寝室へ」

    ハンジはひらりと立ち上がると、モブリットに手を差し伸べた

    「うわっ、そういえばそうでした……すっかり忘れていました」

    モブリットはその手から逃れる様に、立ち上がり後ずさった

    「どうせ近い将来君の子を孕む予定だし、予行演習くらいしといた方がいいよね?」

    ハンジは、副官に伸ばした手をひらひらとさせて誘った

    「予行演習なんか必要ないです……あの、それに、ここ俺の実家なんですが……」

    モブリットはゆっくり後ずさりながら、震えるような声で言った

    「実家だと不都合でもあるのかい?」

    「いや、だってですね……お、音とか、声とか……あの、その……」

    モブリットのしどろもどろの言葉に、ハンジはぽん、と手のひらを拳で叩いた

    「音とか声か!わかった、なるべく我慢するよ! じゃあ善は急げだ! 」

    ハンジは徐に、モブリットの腕をとった

    「ひいっ!?無理です無理です! 離して下さいよぉ……」

    「ほんとに、往生際悪いなぁ君は」

    ハンジは肩を竦めながら、モブリットを半ば引き摺って部屋に戻ったのであった
  42. 56 : : 2015/04/26(日) 19:47:00
    部屋の片隅に置かれている、枕が二つ並んだベッド

    ハンジは部屋に入るなり、ピョンとそれに飛び乗った

    モブリットは部屋の扉付近から、動こうとはしない

    「モブリット、おいで?」

    ハンジは両手を広げて言った

    モブリットはごくんと生唾を飲み込んだ

    「分隊長……本気ですか?」

    「さすがに冗談でこんな大それた事はしないよ。今ね、私は君が無性に可愛いんだ。何だろう、今まで近すぎて見えなかった部分を沢山知ったからかな……」

    ハンジは熱の籠った眼差しをモブリットに向けていた

    「分隊長……俺は」

    モブリットはベッドにゆっくり歩み寄りながら口を開いた

    「ん、なんだい?モブリット」

    ハンジはいつになく緊張した声色のモブリットに、手を差し伸べながら優しく問い掛けた

    モブリットはベッドの側まで行くと、自分を誘う上官の手をじっと見つめた

    「俺は……この手を握る資格はありますか……?」

    「資格?それを言うなら、私だって君とこれからずっと共に在る資格はあるかな?君は私を大事にしてくれていた。でも私は君に、それを返してはいなかった。君の優しさを、当たり前のように受け取るだけでね……」

    ハンジはモブリットに差し出した手をぎゅっと握りしめて引っ込めた

    「資格なんて必要ないです。俺が、あなたと共に在りたいんですから……ただ、俺はあなたの事を、あなたが思っている以上に、その…………大切に思っているので、こんな風になし崩しで……」

    「最後の方、声小さくてなんて言ってるかわかんないし……じれったいなぁ、もう」

    ハンジは吐き捨てる様に言うと、モブリットの手を取り、彼の足をひょいと引っかけて、自分の方へ引き寄せた

    「わっ!何を……!」

    その力の強さに抗えず、モブリットは宙を掻くようにもんどりうって、ベッドに倒れた
  43. 57 : : 2015/04/26(日) 19:47:28

    「女の誘いを蹴るなんて、男がしちゃダメだよ?私が恥をかくじゃないか」

    ハンジは、ベッドにうつ伏せになったまま身動き一つしないモブリットの、心なしか赤い耳元に囁いた

    「…………」

    「何も言わないのは了承とみなすからね?」

    ハンジはそう言うと、彼の耳に唇を落とした

    そのままふぅと息を吹き掛けると、モブリットの体がびくっと跳ねた

    「ハ、ハンジさん……」

    「ん?」

    ちゅ、ちゅ

    と、彼の耳に、頬に唇を落とす行為を続けながら、ハンジは彼の言葉に耳を傾けた

    モブリットは上官の唇の感触に、何か無図痒い様な、いてもたってもいられなくなる様な感覚に捕らわれて、身体を起こした

    彼は上官の唇の感触をもっとはっきり知りたくて……

    目の前で慈愛の籠った眼差しを自分に向けるハンジの、触れることすら恐れ多いと思っていたその唇に、自分のそれを重ねた
  44. 58 : : 2015/04/26(日) 19:48:06
    唇が離れると、モブリットはハンジの顔にかかる眼鏡を外した

    彼女の鼻の付け根に刻まれた眼鏡の鼻あての跡に、そっと指で触れる

    「……あなたが眉間に皺を寄せたまま眠るのを見る度に、心が痛みました。俺は無力だなと、ずっと思い続けていたんです」

    モブリットは何度も指で、彼女の眉間を撫でた

    ハンジは気持ちが良さそうに目を閉じた

    「君がそこまで悩んでくれてるなんて、気が付かなかったよ。ほんとにありがとうね、モブリット……」

    彼女がそう言って目を開けると、今にも泣き出しそうな表情の副官が、辛うじてそれを堪えている様子が目に入った

    「これからもずっと、共に在ろう。この命ある限り」

    ハンジはその言葉を発し終わるや否や、モブリットの胸に顔を埋めた

    「…………はい、ハンジさん」

    モブリットは震えるような声で返事をすると、彼女の背中に腕を回した

    ぎゅっと力を込めれば、より一層彼女の温かさを感じる

    彼は自身の中にずっと前から芽生えていた、抑えきれない想いを、彼女の身体に刻む決意をした
  45. 59 : : 2015/04/26(日) 19:50:40



    「はぁ……苦しかった」

    事後、乱れた服を整えながらハンジは息を大きく吐いた

    「あなたの声が大きいから仕方がないじゃないですか」

    「いや、だからってずっと最中唇塞いだまんまはないだろ……?」

    要するに、モブリットはハンジの声を外に漏らすまいと、ずっと唇を重ねたまま事に及んでいたのである

    「俺も苦しかったんで、同じです。しかも、誘ったのはあなたなんですからね?実家なのに……」

    モブリットは眉をきゅっとひそめた

    「でもさぁ君、途中で完全に理性を失っていただろ?」

    ハンジはモブリットに人差し指をつきつけながら言った

    「はい、すみません……久々だったのと、あなたが、その……想像していた以上に……可愛かったから……つい」

    モブリットは思い出したように顔を真っ赤にしながら、しどろもどろに言葉を発した

    「想像していた?って何を想像していたの?やっぱり私の身体を妄想して、おかずにしていたのかな?そう言えば風呂も何度も覗いてるし、巨人の実験の最中だってさりげなく胸を触ったりしてるし……」

    ハンジはじと目をモブリットに向けた

    「そ、そ、それはですね……」

    「ハンジさんはあそこを触ればどんな声だすんだろう、とか日々妄想しながら抜いてたりしたのか?」

    「………………し、仕方ないじゃないですか! 男なんて皆そんな事ばかり考えてますよっ!」

    モブリットはハンジのじと目を振りきるように、首をブンブン振った

    「エッチ、バカ……だもんね!ぶふふっ」

    ハンジは拗ねるモブリットの頬に軽い口づけを落として、はだけた寝間着のボタンをはめてやるのだった
  46. 60 : : 2015/04/26(日) 19:51:02
    翌朝

    「ハンジさん、モブリット、気を付けて帰って下さいね」

    「兄さん、ハンジさんを幸せにしてあげてよ?」

    母とマリア、そして赤ちゃんに見送られ、ハンジとモブリットは家路についた


    彼らの家は調査兵団本部

    まだまだ彼らが乗り越えなければならない壁は沢山ある

    いつの日か彼らが自由を手にするその日まで

    二人は共に在り、戦い続ける

    そして、その夢が現実のものとなった時

    ハンジは、母になるという女の喜びを知る事になる

    いつも側に控えてくれていた副官と、その喜びを分かち合う日は、そう遠くはない


    ─完─
  47. 61 : : 2015/04/27(月) 09:14:03
    執筆お疲れ様でした!

    いつも以上にハンジさんが男前で、モブリットと一緒にキュンキュンしてました!(あれ?なんかおかしい?)

    兵士という職業上、女としてのジレンマはわかりますが女性にしか出来ないこともありますからね!
    ハンジさんの赤ちゃんも見たいです。
    あの世界が本当に幸せになることを祈るしかないですが…。

    執筆スピードがとても早く、いつも尊敬しています。無理をなさらず、楽しい作品をこれからも期待してます。
  48. 62 : : 2015/04/27(月) 15:58:40
    >キミドリさん☆
    読んで下さってありがとうございます♪
    ハンジさんいけめんでしたか?!
    きゅんきゅんてww

    女の身で兵士っていろいろ大変だと思うんですよね
    今回はそういう大変さを乗り越えてるハンジさんたちの姿を書きたかったんです( ^∀^)
    原作の世界、平和になって欲しいですね……

    とりちゃんに尊敬してるなんて言われて照れ死しそうで悶えてます(*´ω`*)(*/□\*)(*´ω`*)(*/□\*)
    ぼちぼち頑張ります!
    とりちゃんも、ほのぼの癒し系のお話、これからも期待してます!
    お互いゆっくり頑張りましょ(^_^)/□☆□\(^_^)
  49. 63 : : 2015/04/27(月) 16:09:20
    女性の立場で命をいつ落としてもおかしくない世界で生きてるハンジさんにしてみると、女性と男性の扱いの違い、周りからの言葉…辛いことが多いだろうと思いますね…それでも女性にしか出来ない素晴らしいことって現実の世界にもたくさんありますからね!
    女性と男性との関係性、ジェンダーと言えば良いのでしょうかね♪ハンジさんが乗り越えようとしてるのを支える素敵なモブリット♪
    88師匠の作品は読んでて心が熱くなったり暖かくなったりで凄いです!!素敵な作品をありがとうございます。次の作品も期待してます!!
  50. 64 : : 2015/04/27(月) 18:48:54
    わー!
    完結おめでとうございます!

    やっぱり、女性と兵士の両立って難しいんですかね…
    でも、ハンジさんには幸せになって欲しい…!
  51. 65 : : 2015/04/27(月) 19:38:21
    俺が引き取るってモブリットおおお!!
    貴様とモブリットにかっこいい台詞を授けたロメ姉をイケメン罪で逮捕するぅぅ!!

    なんてね☆テヘペロ

    です。

    何より、ハンジさんには本当に幸せになってほしいです...
  52. 66 : : 2015/04/27(月) 21:37:04
    >EreAni師匠☆
    コメントありがとうございます(*´ω`*)
    女性ならではの悩みと、兵士である事を題材にしてみました♪
    モブリットは男なんで、全てを理解することはできないんですが、寄り添っていく姿勢がとても好もしい男性像と言うか(*´ω`*)
    私が師匠に支えてもらってるのと同じかな♪
    次もまたモブリットの話になりそうですが、頑張ります♪
    一緒にのんびりやろうね!
  53. 67 : : 2015/04/27(月) 21:39:15
    >りんねさん☆
    わ♪読んで頂きありがとうございます(*´ω`*)
    完結しましたっ!
    ハンジさんは女性であるからこその慈愛で、巨人の謎を解き明かしてくれるはずなので♪
    ハンジさん幸せになってほしいですね……!
  54. 68 : : 2015/04/27(月) 21:42:10
    >妹姫☆
    いつもコメントありがとう!
    引き取るだなんてねぇぇ!私言われたい言われたい言われたい!
    いけめん罪で私が逮捕かww
    おとなしく捕まって、姫に可愛がってもらうわ(*´ω`*)
    ハンジさんはしぶとく生き残って幸せになりますよ!
    キリッ!
  55. 69 : : 2015/04/27(月) 23:41:22
    執筆お疲れ様でした!
    モブリットがエッチ、バカって言うのがすごく面白いと思いました!!



    ハンジさんたち、お幸せに(⌒0⌒)/~~
  56. 70 : : 2015/04/27(月) 23:46:17
    >オチョッポケロンさん☆
    読んでいただいてありがとうございます( ^∀^)
    モブリットだって男の子ですから仕方ないですよねっ

    ハンジさんはしぶとく生き残って幸せになります!
  57. 71 : : 2015/05/02(土) 00:07:27
    お疲れさまでした!!
    とっても良かったです♪
    モブハン?って思ってたんですけど、ハンモブって感じがして読んでいて楽しかったです!!
    ありがとうございました(*^^*)
  58. 72 : : 2015/05/02(土) 09:43:47
    >ハルさん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    良かったと言って頂けて嬉しいです(*´ω`*)
    そうですね!ハンジさん途中からモブリットの良さに目覚めちゃいましたしねw
    こちらこそ、素敵なコメントありがとうございます( ^∀^)
  59. 73 : : 2015/05/02(土) 18:13:50
    流石っす ハンジ分隊長は我がもらう(`・ω・´)キリッ
  60. 74 : : 2015/05/02(土) 18:42:44
    >ゆうしゃん☆
    読んでくれてありがとう♪
    ハンジさんもらっちゃう!?じゃあ私は余ってるモブリットもらっちゃお( ^∀^)
    流石だなんて照れるぜ(*´ω`*)

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fransowa

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