このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
アルミン「愛おしかった」 *転生パロ
-
- 1 : 2015/04/19(日) 18:26:53 :
- 転生パロでアルアニを書いていきます。
亀更新になりますが、よろしくお願いします。
-
- 2 : 2015/04/19(日) 18:27:28 :
――――――だからこそ僕は、手加減することが出来なかったんだ。
-
- 3 : 2015/04/19(日) 18:28:12 :
-
「貴様は何者だッ!!!」
「シガンシナ区出身、アルミン・アルレルトです!」
「そうか、バカみてえな名前だな!」
「祖父がつけてくれました!」
「貴様は何しにここに来た!」
「人類の勝利に貢献するためです!」
「そうか、貴様には巨人のエサになってもらおう! 三列目、後ろを向け!」
845年、シガンシナ区に突如として超大型巨人が出現。僕らの日常はもろくも崩れ去った。
幼馴染みのエレンとミカサは両親を失い、その後、口減らしのために僕も両親を失った・・・・・・。
「今に・・・・・・見てろ・・・・・・。」
エレンは巨人を憎んだようだったけど、僕は少し違っていた。
憎いのは巨人だけじゃない・・・・・・僕の家族を奪った憲兵団や王政も憎かったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 4 : 2015/04/19(日) 18:29:05 :
-
~2850年、シガンシナ区、アルミンの自宅~
「う~~~ん・・・・・・。」
目覚ましの音が僕の頭を叩き、僕の夢を駆逐した。
随分懐かしい夢を見た・・・・・・あの時が僕にとって、すべての始まりだったから。
ふと隣を見ると、もうすでにベットはもぬけの殻だった。
昨日はあれだけ愛し合って・・・・・・そのまま一緒に眠ってしまった。
ベットから起き上がり、裸のままシャワーを浴びに部屋を出ると、キッチンのほうからいい香りが漂ってきた。
この香りは・・・・・・得意料理のふわトロオムレツかな?
大好物の香りに微笑むのを堪えきれない僕は、そのままシャワールームへと入った。
-
- 5 : 2015/04/19(日) 18:32:33 :
「いっただっきま~す!」
こうやって当たり前のように食卓に着く関係になってから、もう2年が経つ。
目の前の最愛の人が、微笑んでいる。
「人の顔をじろじろ見て、どうしたの?」
尋ねる彼女に、僕は悲しみと歓びの入り混じった表情をして答えた。
「・・・・・・懐かしい夢を見たんだよ、アニ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 6 : 2015/04/19(日) 18:53:11 :
-
~847年、南方訓練所~
一目惚れだった・・・・・・。
僕と同じ色の金髪に、まるで空の色がそのまま結晶になったような青い瞳。
胸の奥がムズムズするような感覚に、僕はしばらく動けなくなってしまった。
あぁ、今日は何て素敵な日なんだろう。
そう思ったのも束の間。僕は対人格闘でアニと組むことになった。
世界がひっくり返り、我に返ると僕は医務室にいた。
「大丈夫か、アルミン!?」
ベットのそばにいるのはエレン・イェーガー、僕の幼馴染みだ。
「う~ん、一体何が・・・・・・痛たたたたッ!」
頭がズキズキする。どうやら僕は頭から落下したらしい。
「あの女狐、エレンだけでなく、アルミンまでッ!」
少しとげとげしい口調なのは、これまた僕の幼馴染みのミカサだ。
僕たち三人はまるで兄弟のように育ち、孤児になってからはお互いを支え合って生きてきた。
でも、僕は弱かった。
また・・・・・・僕は二人に守られている。
もっと強くなりたい――――――そう、僕を蹴り飛ばした彼女のように。
-
- 7 : 2015/04/19(日) 19:01:05 :
「アルミン? 上の空だけど大丈夫? まだ頭が痛むの?」
「えっ、いや、何でもないよ。」
―――――あぁそうか、僕は・・・・・・
きっと恋に落ちたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 8 : 2015/04/19(日) 22:28:34 :
- 期待ですよ~~~!!
-
- 9 : 2015/04/19(日) 22:32:10 :
- 『エレアニファンクラブ』なら見んなよ(・言・)ゴゴゴゴ
あ、俺は超期待です!!
-
- 10 : 2015/04/19(日) 22:35:30 :
- アルアニさんに同意。でも、見るくらいいいとおもいますよ!!
-
- 11 : 2015/04/20(月) 20:08:34 :
- 頑張って下さいね!
-
- 12 : 2015/04/20(月) 20:16:53 :
- いつの間にかこんなに期待が・・・・・・本当にありがとうございます!
少しずつ投稿していきますね。
頑張ります!
-
- 13 : 2015/04/20(月) 20:17:47 :
~2845年、シガンシナ区~
その日は記録的な猛暑日で、セミの鳴き声が喧しい一日だった。
「・・・・・・アニ?」
都会となったシガンシナ区の雑踏の中で、カフェの椅子に座って本を読む君を僕は見つけた。
「・・・・・・アル・・・・・・ミン・・・・・・。」
都会の喧騒も、夏の纏わりつく暑さも、僕たちの周りから消え失せた。
周りがせわしなく動く中、僕らは時が止まったように動けなかった。
-
- 14 : 2015/04/20(月) 20:19:00 :
「となり・・・・・・座っていいかな?」
「・・・・・・うん。」
前世以来の再会だった。
僕は既に24歳になり、背も170㎝まで伸びていた。それでも童顔といわれるのが僕の悩みであるけれど、昔よりは精悍な顔つきになった・・・・・・と思う。
「・・・・・・あんたは変わらないね、アルミン。」
・・・・・・ちょっと傷ついた。
アニは25歳になり、大人の女性としてそう・・・・・・とても魅力的だ。空の色を閉じ込めたような瞳は昔と変わらないけれど、顔の彫が深くなって鼻筋が通り、昔より・・・・・・美人になった。
「ははは、アニは何というか、色っぽくなったね。」
「あんたは昔から口が上手いからね。でも、一応感謝しておくよ。」
-
- 15 : 2015/04/20(月) 20:20:09 :
―――――――少しの間、気まずい沈黙が流れた。
前世での別れを、僕たちは未だに引きずっている。そして、この沈黙は僕たちの間に壁があるという事実を告げていた。
「前世でのこと・・・・・・覚えてるんだね?」
アニは一瞬戸惑ったが、首を縦に振った。
「おぼろげにね・・・・・・アルミン。訓練兵だった時に私たちは出会った。」
「そうだよ、アニ。その頃の君は周りから孤立していた。僕にとって君は、まるで手の届かない青空のような存在だったんだ――――――
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 16 : 2015/04/20(月) 23:38:59 :
- 期待です♪
-
- 17 : 2015/04/21(火) 02:28:30 :
- 期待ありがとうございます!
-
- 18 : 2015/04/21(火) 02:28:40 :
~847年、南方訓練所~
「アルミン、無茶はいけない。」
「いや、無茶はしてないよ。」
エレンやミカサに追いつくため、僕は今まで以上に必死に座学へと打ち込んだ。
訓練が終わった後でも、ランプの明かりを頼りに必死になって勉強した。
既に僕の成績はトップで、ほかの誰も寄せ付けなかったけれど、それだけでは満足できなかった。
-
- 19 : 2015/04/21(火) 02:29:11 :
「ふう、疲れたなあ・・・・・・。」
ふと窓の外を見る。すると・・・・・・意外な光景が見えて来た。
「だらしないね、私に傷一つ付けられないじゃないか。」
「く、まだだッ!」
――――――どうして、エレンとアニが、二人で訓練しているの?
エレンとアニが、良く対人格闘で組んでいるのは知っていた。
でも、これじゃあまるで・・・・・・・・・・・・
それ以来、僕はエレンに対して、何か胸につかえるような感情を持つようになった。
――――――駄目だ駄目だ駄目だ駄目だッ!!!
僕にとってエレンは唯一無二の親友。
なのに・・・・・・・・・・・・どうしてこんなにもイライラするのだろう?
-
- 20 : 2015/04/21(火) 02:32:09 :
「エレン・・・・・・またパンくずついてる。」
「だからッ! 自分で取れるって言ってんだろッ!」
普段は微笑ましいはずの光景さえ、今日は妬ましく見える・・・・・・妬ましい?
一体僕はどうしてしまったんだろう?
「何だよアルミン? 俺の顔をじっと見て? まだパンくずついてるのか?」
「ふふふ、何だか見てて和むなぁって・・・・・・。」
心にも無いことを言って、僕は微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 21 : 2015/04/22(水) 00:31:15 :
――――――――――また遅くまで勉強している。
私は少し呆れていた。
どうせ憲兵団を目指すために勉強をしているのだろうが、実技が伴っていない。
一言で言えば、無駄な努力だと思った。
典型的な優等生・・・・・・それが何のためにあるのか分かっているのだろうか?
-
- 22 : 2015/04/22(水) 00:32:28 :
-
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・くそ・・・・・・。」
雨の中での行軍訓練で、案の定そいつは遅れだした。
当然だ・・・・・・もともと体力もないのに十分な睡眠もとらずにこの訓練に参加すれば、誰だって遅れるに決まっている。
そんなアルミンに助け船を出したのは、兄貴分として慕われているライナーだ。
「貸せ、アルミン!」
「ライナー・・・・・・」
アルミンの荷物を肩代わり・・・・・・そんなことが教官にばれたら、自分まで減点されてしまうかもしれない。
全く・・・・・・昔からあんたはそうやって周りを放っておけない、責任感の強い男だ・・・・・・。
だからこそ、心配になるよ。
-
- 23 : 2015/04/22(水) 00:34:18 :
「・・・・・・お荷物なんか、死んでもごめんだ!」
アルミンは歯を食いしばり、ライナーから荷物をひったくった。
「な!? おい!?」
・・・・・・女みたいな外見のくせに、意外と強情な男。でも、気持ちだけではどうにもならない。
現実は・・・・・・残酷だから。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 24 : 2015/04/22(水) 16:56:07 :
「気が付いたかい?」
目を覚ますと、僕はまた医務室にいた。
「・・・・・・アニ?」
―――――なんて僕は情けないんだろう・・・・・・。
結局僕はあの行軍訓練で倒れてしまった。
それも・・・・・・よりによって、アニの目の前で。
「あ・・・・・・ありがと・・・・・・僕を看病してくれて・・・・・・。」
泣きたくなる気持ちを堪え、感謝の気持ちをアニに伝えた。
-
- 25 : 2015/04/22(水) 16:57:05 :
―――――やれやれ、ここまで強情な人間だとは思わなかった。
「あんたさ、憲兵団を目指しているみたいだけど、そんな頑張り方じゃ体が 持たないよ。」
少し嫌味を言いたくなって、それと無く体の部分を強調した。
「・・・・・・情けないよね、アニ。」
今度は急にしょんぼりしだした。全く・・・・・・何なの、本当に。
-
- 26 : 2015/04/22(水) 16:58:52 :
「僕はね・・・・・・憲兵団なんかに行きたくはないんだ。」
「・・・・・・はっ!?」
思わず声を出してしまった。
気のせいだろうか? アルミンは今憲兵団なんか といった。
内地での快適な暮らしを約束され、志願する人間も多い兵団を、まるで嫌っているかのように吐き捨てたのには驚かされた。
-
- 27 : 2015/04/22(水) 16:59:47 :
「あんた、憲兵団も何も、成績が10位以内に入っていないじゃないか。」
強がっていると思った私は、根本的な疑問をぶつけた。
「うっ・・・・・・そうだよね・・・・・・僕なんかが10位以内に入れるわけないよね。いくら座学が一位だからって、実技では皆についていけない・・・・・・歯がゆいよ・・・・・・。」
――――――――やっぱり10位以内 を目指してるじゃないか。
「・・・・・・調査兵団に入りたいのに、これじゃまるで駄目だ・・・・・・。」
――――――えっ!?
どうしてこの男はこんなにも立て続けに私を驚かせるのだろう?
-
- 28 : 2015/04/22(水) 17:08:06 :
「・・・・・・あんたってさ、意外と変わってるんだね?」
アルミンに対する見方が変わったことを自覚した私は、もう少し彼について質問してみることにした。
「えっ!? あ・・・・・・うん。昔はそれでよくいじめられたよ・・・・・・異端者だって言われて・・・・・・。」
「異端者?」
一体何を言ったらそんなことを言われるのだろう?
「人類は、壁の外に出るべきだって言ったら街のガキ大将に目を付けられたんだ。」
―――――正直言って非常識もいいところだった。
タブーとされている発言を、アルミンは子供のころからしていた・・・・・・一見優等生なアルミンが、ここまで非常識な人間だとは思わなかった。
それからアルミンは私に、自分の夢を語りだした。
-
- 29 : 2015/04/22(水) 17:09:03 :
―――――壁の外の世界。
私はこの壁の外について、ある程度の知識を持ち合わせていた。
当然だ。私は壁の外から、壁の内側の人類を滅ぼすために遣わされた――――――戦士なのだから。
だからアルミンの話は現実からかけ離れた妄想でしかない。なのに・・・・・・
どうして世界がこんなにも魅力的に聞こえるんだろう?炎の水 、砂の雪原 、氷の大地 、そして・・・・・・海。
知識として知っているはずのものが、まるで初めて聞いたかのような魅力で迫ってきた。
-
- 30 : 2015/04/22(水) 17:11:37 :
-
「そろそろ消灯の時間だ! レオンハート訓練兵! 自分の部屋に戻るんだ!」
いつの間にか日が暮れて、夜も遅い時間になってしまった。
「あっ、ごめん、アニ・・・・・・夢中になって・・・・・・つい・・・・・・。」
――――――またしょんぼりしている。
「女々しいね、全く・・・・・・。」
「ごめん・・・・・・アニ・・・・・・迷惑だったよね・・・・・・。」
また自信なさげに、独り言のようにつぶやいている。
「今度の休暇に・・・・・・続きを聞くから。」
「えっ!?」
今度は瞳を輝かせて私の顔を覗き込んできた。
「訓練は明日もある。早く寝るんだね。」
心の奥底を覗かれそうで、私はわざとそっぽを向いて医務室を後にした。
教官の命令で、内心いやいやアルミンを医務室に運んだことが、今ではさほど悪くないように思えた。
なぜだろう・・・・・・今までなんでもなかったアルミンの、その海のように青い瞳が心の中に残った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 31 : 2015/04/23(木) 13:54:39 :
~2845年、シガンシナ区~
―――――どれくらい私たちは話したのだろう?
夏の日差しは既に傾き始め、街は夕焼けに染まっていく。
注文したアイスコーヒーも、既にぬるくなってしまった。
「夢中になると話が長いね。相変わらずだよ、アルミン。」
ため息交じりに話すアニ。
-
- 32 : 2015/04/23(木) 13:55:04 :
海のように青い、その瞳の輝き。そして、何かに夢中になると、こっちが辟易するほど沢山のことを話す癖。
それらに私は、半ば呆れつつも、安堵していた。
私が恋した男・・・・・・アルミン・アルレルトの根幹は変わっていない。
でも・・・・・・アルミンがそれだけでは終わらない男だということを今では知っている。
――――――恐ろしく非情で冷酷な、手段を選ばない策略家になりえることも。
-
- 33 : 2015/04/23(木) 13:56:28 :
「ごめんね、アニ。僕ばっかりしゃべりすぎちゃったみたいだね。」
どれくらい僕はアニとしゃべったのだろう?
・・・・・・正直なところ、まだまだしゃべり足りないし、もっと現世でのアニのことを知りたいという気持ちが生まれていた。
その青空のような瞳の奥で、君は何を考えているの?
その瞳には、僕はどう映っているの?
君のその瞳は、何を見つめているの?
様々な想いが、僕の頭の中で交錯する。
-
- 34 : 2015/04/23(木) 13:57:06 :
-
―――――前世で僕らは、最終的に敵同士になった。
その時の僕は、君を激しく憎んだ・・・・・・。
多分・・・・・・僕が愛した分だけ、その気持ちが憎悪に転じてしまった。
でも・・・・・・君がいなくなり、憎んだ分だけ、虚しくなった。
何より・・・・・・君がそばに居なくて寂しかった―――――・・・・・・
夕暮れの光が差し込み、ひぐらしの鳴き声がどこからか聞こえてくる。
それでも、真夏の昼の空気がまだ熱を帯びたまま、なおも僕らを取り囲んでいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 35 : 2015/04/23(木) 22:54:22 :
街灯がかすかに照らす暗い夜道を、僕らは並んで歩いていた。
もっとも、都会というだけあって、空の星はあまりよくは見えない。
暗い夜道を一人で帰らせるのも忍びなかった僕は、アニを自宅に送ってから帰ることにした。
今、アニはシガンシナ区に住んでいる。聞けば最近引っ越してきたばかりらしい。
勤めている会社で重要なポストに任ぜられての栄転・・・・・・明日からは忙しいのだそうだ。
-
- 36 : 2015/04/23(木) 22:56:01 :
不意に、アニが尋ねてきた。
「あんたは・・・・・・私のこと、今でも憎んでいるのかい?」
しばらく間をあけた後、アルミンはゆっくりとしゃべりだした。
「・・・・・・憎んでいない・・・・・・といったら、嘘になるかな・・・・・・。」
―――――そうだね、私は結局、愛したあんたを裏切った。その事実は取り消せない・・・・・・。
-
- 37 : 2015/04/23(木) 22:57:10 :
「でもね、アニ。僕はもう憎み疲れたよ・・・・・・。」
「憎み・・・疲れた?」
アルミンの顔に、影が差したような気がした。幼いと思っていた顔が、急に歳を取ったように見えたのには驚いた。
「うん・・・・・・どれ程憎しみで心を誤魔化しても・・・・・・結局、心の穴は大きくなるばかりだった。」
虚ろな瞳でつぶやくアルミン。
「アルミン?」
だが、それもつかの間、アルミンの瞳はすぐに輝きを取り戻した。
-
- 38 : 2015/04/23(木) 22:57:56 :
やっと・・・・・・僕は、アニに言いたかったことが言える。
「ずっと君が愛おしかった・・・・・・だから、もう一度僕とやり直して欲しいんだ。」
-
- 39 : 2015/04/23(木) 22:58:22 :
心のつかえが・・・・・・取れた気がした。
瞳が熱くなるのを堪え、私は何とか言葉を絞り出した。
「・・・・・・ごめん・・・・・・なさい・・・・・・。」
素直に・・・・・・アルミンに言いたかった一言が・・・・・・ようやく言えた。
-
- 40 : 2015/04/23(木) 22:59:01 :
「・・・・・・ははは。」
―――――あれ!? アルミン!?
気が付くと、今度はアルミンが泣きそうな顔をしている。
「そ・・・・・・そうだよね・・・・・・僕は・・・・・・君にあんなひどい仕打ちをしたんだ・・・・・・当然だよね・・・・・・。」
瞳から涙をこぼすアルミン。
「もう・・・・・・君には会わないよ・・・・・・アニ・・・・・・。」
背を向けてアルミンは走り出した。
「!!! 待ってッ!!!」
すぐにアルミンの腕を掴んだ。
「えっ!?」
今度は、私の瞳から雨のように涙が流れた。
「ずっと・・・・・・謝りたかった・・・・・・あんたを・・・・・・裏切ったこと・・・・・・。」
「じゃあなんで振ったのさ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
-
- 41 : 2015/04/23(木) 22:59:36 :
・・・・・・・・・・・・。
「えっと、アニ。話がややこしくなってきたから少し整理しようか? その、ごめんなさいっていうのは、君が僕を裏切ったことに対する謝罪ということでOK?」
「そうだね。」
「じゃあ、やり直そうっていう話は?」
私はアルミンの海のような瞳を、真っ直ぐに見据えて答えた。
「・・・・・・一緒に、やり直したい。」
双眸に湛えられた海から、再び塩水がこぼれ出した。
「もうッ!!! 紛らわしいこと言わないでよッ!!! 本気で振られたかと思ったじゃないかッ!!!」
「それは・・・・・・そもそもあんたが私をまだ憎んでいるなんて言うから・・・・・・あっ――――・・・・・・
―――――気が付くと、私はアルミンに強く抱きしめられていた。
「全くアニは・・・・・・僕の予想をことごとく覆すんだから・・・・・・。」
もう君を離さない・・・・・・僕はアニを・・・・・・愛してる。
散々回り道をして、やっと・・・・・・辿り着いた。
空と海が、水平線の上で漸く交わったように、僕には思えたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 42 : 2015/04/24(金) 19:55:35 :
~848年、南方訓練所~
初めてのデート・・・・・・いったいアニとどこに行けばいいんだろう!?
医務室での一件がきっかけで、僕らの距離は少しづつ縮まり始めた。
ダメもとで今度の休暇にデートを申し込んだら、何とOKしてくれた! OKしてくれたッ!!
でも、ここに来てアニの気持ちがよく分からない。
一体何をすればアニの気を引けるんだろう?
そもそもアニは・・・・・・僕の何を気に入ってくれたんだろう?
-
- 43 : 2015/04/24(金) 19:56:21 :
「アルミン、何か悩みでもあるの?」
「ふぇっ!?」
突然ミカサに話しかけられて、僕は飛び上ってしまった。
本日最後の座学の授業が終了し、荷物を片付けているところだったが、気が付けば僕の周りにはミカサとエレンしかいなかった。
「お前、そこまでボーっとしてたのか? 珍しいな?」
「ご、ごめん、エレン、ミカサ。待たせてたみたいだね。」
エレンにまで言われる始末・・・・・・きっと座学も上の空だったんだろうな・・・・・・。
-
- 44 : 2015/04/24(金) 19:57:41 :
「そういえばエレンはアニとまだ格闘訓練をやってるの?」
エレンにボーっとしているといわれたのが少し悔しかったので、ミカサが居る前でそれと無く聞いてみた。
「あぁ、俺は一刻も早く強くなりてえからな。」
こともなげにエレンは答えた。流石は鈍感。
さて、ミカサの反応は・・・・・・
-
- 45 : 2015/04/24(金) 19:58:20 :
「エレン、無茶だけはしてはいけない。体調管理も兵士としての務め。」
「分かってるって、疲れをためねえよう気を付けるからよ。」
・・・・・・あるえっ?
予想外なことに、ミカサが余裕の態度だ。う~ん、おかしいなぁ・・・・・・
何でだろうと考えていると、衝撃が予想の斜め上からやってきた。
「ところでよ、アルミン。お前はアニとどうなんだよ?」
「えっ!!??」
どうなってるの!? なんでエレンが僕とアニのことを聞くの!!??
「デート誘ったんだろ? 噂になってるからな。」
一瞬何を言われたのかわからず、もう一度言葉を頭の中で反芻してみた。
「ええぇえぇえぇええッ!!!」
何十秒か後になって驚きと恥じらいが同時にやってきた。
エレンをからかおうと思ったのに、こっちが赤面する羽目になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 46 : 2015/04/25(土) 20:35:44 :
私は・・・・・・戦士だ。
この感情にのめり込みすぎてはいけない・・・・・・そんなことは分かっている。
「どうしたの? アニ? 何か考え事?」
白々しく問いかけてきたのはミーナだ。自称私の親友が、訓練所中に広まった噂の震央だというのはすぐに察しがついた。
「隠すつもりならそのにやけ面をどうにかしな。」
全く・・・・・・隠す気ゼロだね。
―――――当然ライナーやベルトルトの耳にも入っているだろうね。
-
- 47 : 2015/04/25(土) 20:36:41 :
ミーナは好奇心にあふれた様子で私の顔を覗き込んできた。
「ねぇアニ? どうしてアルミンの誘いをOKしたの?」
――――――外見に似合わず、アルミンは強い意志を持っている。
いつか外の世界を旅する・・・・・・夢を語るアルミンの目は、日差しを受けて輝きを放つ海。その力強さを思わせる。
アルミン自身はまだ気が付いていない・・・・・・それどころか、いつも劣等意識 に苛まれている。
だからその目は濁りがちになるが、いつかは気付いてくれるだろう。
-
- 48 : 2015/04/25(土) 20:37:28 :
でも、アルミンが自分の素質に気が付いた時・・・・・・それは私にとって死刑宣告になるかもしれない。
アルミンが、自らの歩む道を定めたとき、私は必ずやその障害となって立ちはだかるはずだ。
何故なら・・・・・・私は、戦士だから――――・・・・・・
・・・・・・だから、この関係を踏み越えてはいけない。
それはお互いの心に深い傷を残すから。
なのに・・・・・・。
-
- 49 : 2015/04/25(土) 20:38:12 :
「・・・・・・アニ?」
何も答えないのを、不思議そうにミーナは訪ねて来た。
どうやら私はしばらくの間、考え込んでいたらしい。この沈黙はミーナにはどう映ったのだろう?
「なんで・・・・・・惹かれたんだろうね。」
誤魔化そうとして、私は失敗した。
「へぇ、そうなんだ。」
にやけるミーナに、蹴りを一発お見舞いした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 50 : 2015/04/26(日) 21:51:15 :
~翌日~
その日はよく晴れていて、どこまでも抜けるような青空だった。
僕は青空が大好きだった。あの空はどこまでも続いていて、やがてそれは壁外へと辿り着く。
夢に対する僕の情熱は、壁の向こうに拡がる青空を夢想したところから始まったといってもいいくらいだ。
「う~ん、すがすがしいなぁ~・・・・・・。」
待ち合わせの場所に、僕は約束の時間より40分ほど早くやってきた。
初夏の日差しが公園にある池に差し込み、池の噴水は清冽な光の粒を吹きあげている。
公園にあるベンチに座って、一人でぼうっと待ちぼうけ。
少し汗ばむ陽気にウキウキしながら、僕はアニを待っていた。
-
- 51 : 2015/04/26(日) 21:51:58 :
「あっ・・・・・・アニ・・・・・・。」
スカートをはいたアニの姿に、僕は心を奪われた。
沢山の言葉が浮かんでは消え、結局シンプルな言葉が口から洩れた。
「か、かわいいね・・・・・・そのスカート・・・・・・。」
顔から火が出そうになった。
-
- 52 : 2015/04/26(日) 21:52:30 :
-
顔から火が出そうになった。
「あ、ありがと・・・・・・アルミン。」
前日からあれこれ考えて選んだパーカーにスカート。
普段とは違う私を演出したかった。
・・・・・・アルミンが敵になるのはまだ先の話。
今は少しでも、アルミンのそばに居たい・・・・・・そう思う。
「それじゃあ・・・・・・いこっか、アニ。」
あいつが私に手を差し出した。
華奢で細いアルミンの指に、私は自分の指を絡める。
―――――どうしたものだろう。たかだか指を絡めただけで、こんなにも胸が高鳴るとは・・・・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 53 : 2015/04/26(日) 23:06:52 :
-
~2847年、ストヘス区、ストヘス酒場~
今夜は私たち四人(アルミン、アニ、エレン、ミカサ)。ストヘス酒場で恒例の飲み会が開かれた。
「いやぁ、あはは、初めてのデートの時は緊張したなぁ。」
お酒が入って陽気になっているのはアルミンだ。
「おいおい、大丈夫か、アルミン!? お前、飲み過ぎだぞ!?」
「アルミン! それ以上はいけない!」
本気で心配する幼馴染み達。
「いやいや、ダイジョブらって・・・・・・あはははは・・・・・・えへへ・・・・・・。」
既にろれつが回らなくなってるアルミン。
アルミンはあまりイケる口ではない。それに、笑い上戸で少々鬱陶しい。全く・・・・・・
-
- 54 : 2015/04/26(日) 23:07:44 :
-
既に付き合い始めて2年。年齢から言って当然結婚だって視野に入れている。
最初のデートこそ胸のときめきが抑えられなかったあの時を思い出したけど、今ではこんな感じだ。
所帯じみたというのか、なんというか・・・・・・。
付き合いが長くなると、勢い相手の嫌な部分だって目に付くことになる。
アルミンは良くも悪くも理想主義者だ。
良い時のアルミンは私を今だに夢中にさせてくれる。夢を語るあの時のアルミンだ。
悪い時のアルミンは・・・・・・
自分の理想を相手に押し付けるきらいがある。
自分の価値観を勝手に押し付けがちなのがアルミンの欠点だ。
そのことが原因で、私とアルミンは過去二回にわたって大ゲンカをしている。
一度目は前世で、そして、二度目は現世で。
まずは二度目の大ゲンカから話を進めたいと思う。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 55 : 2015/04/28(火) 02:22:29 :
時をさかのぼること一ヶ月前。
「勝手なことを言うな!」
「あんたこそ勝手じゃないか!」
アルミンと私の大ゲンカの第二ラウンドは、これからの生活について話し合っている最中に起こった。
さっきも話した通り、結婚を前提としていた私たちは、新生活の計画を一緒に練っていた。
でも、話し合いをする中で、価値観の違いが決定的に判明した。
-
- 56 : 2015/04/28(火) 02:25:12 :
「子供ができれば、今まで通り働くのは困難だ! 分かってるだろ!?」
「だからって仕事を辞めろだなんて、おかしいじゃないか!」
・・・・・・分かってはいる。アルミンなりに私を気遣い、新しい未来を思い描いていることくらい。でも・・・・・・
「あんたはいつもそうだ! 自分の理想ばっかり!」
拳で机を叩き、私はアルミンに抗議した。
「はぁ!?」
声を荒げるアルミン。珍しく完全にケンカ腰だ。頭に血の上った私は、ついつい言い過ぎてしまった。
「私の考えとあんたの理想は違うんだ! 私は仕事を辞めるつもりはないね! 夢を見るのも大概にしな!」
-
- 57 : 2015/04/28(火) 02:31:45 :
アルミンは私が家に入って、子供たちを育てることを望んでいる。
一方のアルミンは、人気のある弁護士だ。自分がしっかり稼いで、家族を守ろうと考えている。
悪気は全くない・・・・・・それは分かっている。
だからこそ気に入らない。私の考えを聞き入れず、なおかつ悪びれないアルミンの態度に。
-
- 58 : 2015/04/28(火) 02:32:20 :
「くっ! 分かったよ、アニ! 少し僕らは距離を置こうか!?」
売り言葉に買い言葉、アニが仕事を続けたがっていると分かっていたのに、僕は自分の理想を優先してしまった。
「アルミン!?」
ハッとした様子のアニに構わず、僕は部屋を飛び出した。
もう離さないと決めたはずなのに、価値観の違いから、僕らはまた別れてしまったんだ・・・・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 59 : 2015/04/28(火) 03:28:11 :
「それはアルミンが悪い!」
悪酔いし始めたミカサがアニに賛同する。
「そうだろう!? 図体は小さいのに、理想ばっかり大きんだから!」
アニも相当酒がまわっているようで、自分のほうが小さいのを棚に上げてアルミンの愚痴を言い始めた。
ちなみに・・・・・・当のアルミンは・・・・・・
「・・・・・・ふへへへ・・・・・・アニ・・・・・・。」
とっくに酔いつぶれて俺の横で寝てんだよな~。親友の愚痴を聞かされている俺の気も知らないで!
-
- 60 : 2015/04/28(火) 03:28:59 :
-
「まあでも、アルミンの気持ちも分からなくはねぇけどな。」
「「はぁっ!?」」
「ひっ!」
猛獣二人に睨まれて、間抜けな声をあげてしまった。
何だよこの状況は!? てかいい加減起きろよアルミン!
「全く、こんな鈍感な彼氏を持つと大変だね。」
「苦労してる。」
あれ、今度は俺が標的になっちまったのか!?狩人 なのに狩られるってのかよ!?
その日、俺は思い出した。
お酒に酔った猛獣二匹の恐怖を・・・・・・。
それから俺は正座させられて、二人に徹底的にダメ出しされた。
いわく、乙女心が分かってないとか、女性との話し方をもっと学ぶべきだとか。
なぁ、足が痺れてきて、もう限界なんだが・・・・・・。
「「聞いてる!? エレン!」」
「は、はい!」
頼むから、もう勘弁してくれよ!!!
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 61 : 2015/05/01(金) 00:13:59 :
エレンへ説教しているうちに、少し酔いの覚めてきた私は、アニに根本的な質問をすることにした。
「アニ。どうやってアルミンとの仲を修復したの?」
するとアニは愛おしそうに、眠っているアルミンの頭に手を当てて話し始めた。
-
- 62 : 2015/05/01(金) 00:14:27 :
数日の間、私たちはまったく口を利かなかった。
まぁ当然といえば当然だ。けれど、我ながら可笑しいと思ったのはここからだ。
その頃の私たちは既に結婚を前提としていたので、既にアパートで同棲していた。
ケンカした後、私は部屋で、アルミンはリビングにあるソファーで眠っていた。
朝、目覚めると既にアルミンの姿はなかった。
「・・・・・・そうだよね。先に出て行って・・・・・・ん?」
テーブルの上を見ると、私の分の朝食が作り置かれていた。
「・・・・・・別れた、はずなのにね。」
-
- 63 : 2015/05/01(金) 00:15:09 :
―――――今まで私たちが積み重ねてきた時間が、確かにそこにあるように感じた。
時を経て私たちは、お互いを深く思いやるようになっていた。
愛してる・・・・・・という言葉だけでは、もどかしい感じのする何か―――――・・・・・・
口もきかないのに、お互いを思いやる日々が数日続いた。
ある時は私がアルミンの分まで夕食を作り置き、またある時は私の部屋までアルミンが掃除をする。
――――何だかまるで・・・・・・夫婦みたいだ。
-
- 64 : 2015/05/01(金) 00:16:04 :
-
そんな日々が四日目に差し掛かったころ、遂にアルミンから話を切り出してきた。
「僕が・・・・・・悪かったよ・・・・・・アニ。僕たちは、もうお互いを必要としあって支え合っていたんだね・・・・・・。」
少し目線をそらしながら、遠慮がちに話してくるアルミンに、私はまっすぐ目を向けた。
「・・・・・・別れてもなお、私にはあんたが必要だってこと、気付かされたよ。」
・・・・・・私にしては正直に話したと思う。
「一緒に暮らすようになって、それが当たり前だと思ってた。思い上がってた・・・・・・何年もかけて、それこそ前世から、やっと築くことのできた関係なのに、僕は欲張りすぎたよ。」
アルミンの頬に、一筋の涙が流れた。
僕は後悔していた。既に欲しいものはその手の内にあったのに、アニに多くを望みすぎたことを。
「一緒に暮らすって、こういうことなのかな、アニ?」
少し微笑んで、アルミンが問いかける。その問いかけに、私も口元をわずかに緩ませながら答えた。
「こうやって少しづつ・・・・・・折り合いを付けていくことだろうね。」
「はは、難しいな・・・・・・結婚って。」
「・・・・・・は?」
あんまりにもあっさり言われて、私は拍子抜けした。
「あんた、もっと時と場を選べないのかい!?」
「えっ? 僕は今だと思ったんだけどな。」
アルミンの体が、久しぶりに宙を舞った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 65 : 2015/05/01(金) 22:53:07 :
「何だか、ロマンのかけらもない話。」
話を聞いていたミカサも半ば呆れたようにため息をつく。
「それでも、こうやってようやく出発できてよかった・・・・・・前世の時みたく・・・・・・ならなくて。」
ミカサのこの言葉は、しばらくの沈黙をもたらした。
眠っているアルミンの寝息だけが聞こえてくる。
「あん時のアルミンは・・・・・・ホントに辛そうだったからな・・・・・・俺は何もしてやれなくて、歯痒かった。」
エレンの表情が少し曇る・・・・・・眠っている親友の額に手を当てた。
「!!! アルミン!?」
エレンがアルミンの異変に気が付いた。
-
- 66 : 2015/05/01(金) 22:56:35 :
ミカサとアニも、アルミンの顔を覗き込む。
その顔を見て、ミカサは次の言葉を、口にした。
「アルミン・・・・・・どうして泣いてるの?」
眠ったまま、アルミンは涙を流していた。
-
- 67 : 2015/05/01(金) 22:57:03 :
ボソッと一言、寝言を呟く。
「・・・・・・・・・・・・アニ・・・・・・どうして?」
悲痛な表情をしているアルミンが、あの時のアルミンと重なって見えた。
「・・・・・・またあの時の夢を見てるんだね、アルミン。」
心配そうにアルミンの顔を覗き込むアニ。
アニは知っていた・・・・・・時々アルミンが、悪夢にうなされていることを。
アルミンの悪夢。それは、一度目のケンカと、その後に続くストヘス区での作戦に端を発する。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 68 : 2015/05/01(金) 22:57:36 :
~850年~
「何であんたは調査兵団に行くんだい?」
それは・・・・・・アニの何気ない一言から始まった。
――――――新兵の勧誘式の後、僕はアニに対して割り切れない感情を持つようになっていた。
付き合い始めて既に2年。僕らはその間にいろんなところでデートをしたり、時には体を重ねたりしたけれど、僕には何かが物足りなかった。
アニは、僕と一定以上の距離をとっているようだ・・・・・・。
そして、勧誘式の後、アニは憲兵団へと入団した・・・・・・憎んですらいる、憲兵団に。
・・・・・・いつの間にか僕の中にあったしこりのようなものが、不満という実体を取り始めた。
-
- 69 : 2015/05/01(金) 22:58:16 :
「言ったことあるよね? 僕は外の世界を見たいからだって・・・・・・何で今更そんなことを?」
――――――分かってはいた。こんなことを言えば、アルミンの神経を逆なでしてしまうことくらい。でも・・・・・・
「悪いことは言わない・・・・・・あんたは座学に優れている。技巧課に行くべきだ。」
「はぁ!? ふざけないでよ、アニッ!!!」
案の定、アルミンは激怒した。
「アルミン、あんたの選択は勇敢とは言わない。無謀だよ。」
「じゃあアニの選択はなんなんだよッ!!! 臆病そのものじゃないかッ!!!」
―――――僕は自分を止めることが出来なかった。
-
- 70 : 2015/05/01(金) 22:58:37 :
「失望したよ、アニッ! 僕は・・・・・・君と別れたい!」
-
- 71 : 2015/05/01(金) 22:59:08 :
――――胸に深く突き刺さるのを、私は感じた。
「やっと本音が出たね・・・・・・いいよ、別れよう。」
・・・・・・大好きなのに。
「なっ!? ・・・・・・分かったよ! 僕はもう、アニに会うつもりはないからッ!」
・・・・・・別れなくちゃいけなかったんだ。でも・・・・・・お願いだから・・・・・・
行かないで・・・・・・・・・・・・
-
- 72 : 2015/05/01(金) 23:01:19 :
背中を向けて、アルミンは走り出した。
・・・・・・いや、これでよかったんだ。
空と海は、混じり合うことはない。
水平線で混じり合っているように見えるのは・・・・・・幻。
私は・・・・・・幻に恋をしていたにすぎないんだ。
馬鹿だよ・・・・・・全く・・・・・・・・・・・・
―――――無理やり自分を納得させた。そうでもしなければ、私自身が壊れてしまう。そんな気がして―――・・・・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 73 : 2015/05/02(土) 20:23:31 :
~第57回壁外調査~
奇行種じゃない!
あれは・・・・・・
鎧や超大型、エレンと同じ、
巨人の体を纏った人間だ!
まずいよどうしよう!
僕も死ぬ!
殺される!!!
―――――――――アニと別れてからおよそ一か月後、僕は人生で初めての壁外調査に臨んだ。
そこで僕は・・・・・・今までの人生の中で一番の悲しみと・・・・・・怒りに直面することになった。
-
- 74 : 2015/05/02(土) 20:28:07 :
「うわぁッ!」
落馬した勢いで頭にフードが被さる。
その巨人の手がゆっくりと・・・・・・僕に向かって伸びてくる。
もう・・・・・・おしまいだ・・・・・・。
でも、その巨大な手は、僕を押しつぶすことはなかった。
-
- 75 : 2015/05/02(土) 20:28:36 :
「フードをつまんで僕の・・・・・・顔を、確認した?」
その時、僕の目には・・・・・・印象的だったあの目が飛び込んできた。
そんな・・・・・・あの目は・・・・・・あの空色のように青い瞳は!
初めて出会った時よりも世界がひっくり返ってしまったような気がした。
僕は・・・・・・騙されていたの?
その時、僕は唐突に理解した。
これから何をすべきなのか?
今の自分に出来ることは何なのか?
気が付いてあげられなかったことの悔恨と悲哀。
裏切られたことに対する・・・・・・憤激。
これらの理性や感情が一気に僕の頭の中で働き、恐ろしい速度で現実を認識させ、僕を突き動かした。
-
- 76 : 2015/05/02(土) 20:29:13 :
「ジャン! 死に急ぎ野郎の仇を取ってくれッ!」
「そいつは、そいつに殺された、死に急ぎ野郎の仇だぁッ!」
「僕の親友を、そいつが踏みつぶしたんだッ! 足の裏にこびりついているのを見た!」
思いつく限りの言葉をそいつにぶつけた。
案の定、そいつは僕の言葉に反応を見せた。
間違いない・・・・・・あの女型の巨人の正体は・・・・・・
―――――――――許せない。
葦に放たれた焔のごとく、その感情は燃え上がり、黒煙を上げた。
僕が愛したそいつは、憲兵団であり、しかも・・・・・・巨人。
僕が憎んでいるすべてを備えた存在だった。
何だかもう・・・・・・滑稽だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 77 : 2015/05/02(土) 20:29:42 :
~ストヘス区女型の巨人捕獲作戦数日前~
「失礼します。」
僕は、団長室の部屋に入り、立案した作戦の概要を伝えていた。
「それで、女型の巨人は・・・・・・アニ・レオンハートで間違いないのか?」
団長の目が鋭く光る。この作戦にかける僕の真意を量っているようだ。
「・・・・・・決定的な証拠はありませんが、やらなければエレンが犠牲になります。それは、人類の敗北を意味します。僕らはそれを、避けなければなりません。」
-
- 78 : 2015/05/02(土) 20:30:16 :
団長がゆっくりと立ち上がった。
「では聞こう。この作戦、決行されれば多数の死者が出る。聡明な君のことだ、分からぬはずはないだろう。それでも君は、人類の為と言い切れるのか?」
――――――選択肢はたくさんあるに違いない。
でも・・・・・・人類を守るためなら・・・・・・いや・・・・・・
・・・・・・女型を・・・・・・斃すためなら・・・・・・
「何も捨てることの出来ない人間に、何も変えることは出来ない・・・・・・これが僕の、答えです。団長。」
「つまり、言い切れると?」
「・・・・・・言い切れます。」
その言葉に、団長がゆっくりと頷いた。
「現状で打てる、最善の策だろう・・・・・・君の作戦案を採用する。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 79 : 2015/05/02(土) 20:31:06 :
~ストヘス区、女型の巨人捕獲作戦決行当日~
エレンを中央へ護送する馬車。
その馬車を護衛する憲兵団の連中に紛れて、ターゲットは行動していた。
「・・・・・・アニ。」
路地裏から、声をかける。
ターゲットを、誘き出すため。
――――――路地裏から、聞き慣れた声が、聞こえた。
聞き慣れてはいるけれど、どこか冷たくて、そして、熱い・・・・・・不思議な感触を受けるような声だった。
-
- 80 : 2015/05/02(土) 20:31:34 :
声のした方へ向かっていくと、雨具に身を包み、フードを被ったアルミンがいた。
その瞳は・・・・・・普段以上に濁って見える。
「やぁ、もうすっかり・・・・・・憲兵団だね。」
驚くほど寒々しく聞こえたその言葉に、思わず戦慄が走る。
――――――そうか、あんたは・・・・・・私を、殺す気なんだね。
-
- 81 : 2015/05/02(土) 20:32:08 :
アルミンに誘導され、私は地下へと続く階段へとやってきた。
断ろうと思えば、断れたはずだ。
でも・・・・・・出来なかった。
私の愛した男が、私を殺そうとしている。
それも・・・・・・悪くないように思えたから。
いや・・・・・・そんなことはないか、私は・・・・・・
ただアルミンに、愛されていたかった。
なのに・・・・・・
「アルミン、私があなたのいい女 で良かったね。ひとまずあんたは賭けに勝った。でも、私が賭けたのは、ここからだからッ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 82 : 2015/05/02(土) 20:32:46 :
~2848年、シガンシナ区~
僕は、今まで待ち焦がれた瞬間を遂に迎えることが出来た。
「・・・・・・綺麗だよ、アニ。」
ウェディングドレス姿のアニを見て、僕は思わずうっとりとして声を漏らした。
「全く、結婚まで長かったじゃねえか。」
「私たちより、長かった。」
親友たちに祝福されて、僕たちはようやく挙式することになったんだ。
-
- 83 : 2015/05/02(土) 20:33:15 :
――――――思い起こせば、ここまで来るのに、どれだけの苦悩を経験したのだろう?
水晶体の中に閉じこもった君を見ては、憎しみと悲しみを交互に行ったり来たりした日々。
一人の女性に、僕は一生分の憎しみを既に注いでしまった。
それと同じくらい、僕は愛情を注いできた。
でも・・・・・・
今でも僕は、君が・・・・・・愛おしい。
-
- 84 : 2015/05/02(土) 20:34:50 :
――――――やっとここまで辿り着いた。
ケンカや争い、果ては殺し合いに至るまで、アルミンとは幾度となくぶつかった。
それは恐らく・・・・・・これからも続くだろう。
でも、これからのそれは、お互いを深く思いやった結果。
正しく言うなら、お互いを思いやるための言い争いは続くだろう。
もう、あの時のような、互いを損ない合うような戦いは必要ない・・・・・・。
-
- 85 : 2015/05/02(土) 20:35:58 :
「ねぇ、アニ。」
タキシード姿で隣に並び、式場の下り階段の前に立つ。
―――――アルミンはわざわざ、下り階段の式場を選んだ。
「僕らの関係は、簡単じゃなかった。」
「・・・・・・あぁ、そうだね。」
「『私たちは誤解し合う程度に理解できれば沢山だ。』・・・・・・そういった表現をした文学者もいたほどさ。」
アニが怪訝な顔をする。
「・・・・・・何がいいたいの?」
「人は・・・・・・簡単には分かり合えないってことさ。でも、だからこそ思いやるんだと思う。分からないからこそ、分かろうと努力すると思うんだ。」
「いつになく臭いセリフを言うんだね。」
「今日ぐらい許してよ、アニ・・・・・・僕らはこれからも分かり合おうと努力できる・・・・・・僕が賭けたのは、ここからだからさ。」
アルミンが右手を差し出す。
そっと、結婚指輪が嵌められた左手を握った。
「ずっと君が・・・・・・愛おしかった。」
僕らは、あの時、一緒に降りることの出来なかった階段を、ゆっくりと降りていった。
FIN
-
- 86 : 2015/05/02(土) 20:37:43 :
- 以上で終了になります。
何だか力量不足でよく分からない物語になってしまいましたが、いかがだったでしょうか?
感想を頂けると幸いです。
-
- 87 : 2015/05/05(火) 21:36:37 :
- これはいいアルアニですね
-
- 88 : 2015/05/06(水) 22:21:48 :
- コメントありがとうございます!
このお話は手法としては、ゴットファーザーのパート2を意識したところがあります。
過去の話と現在の話を同時進行させるというのは難しかったのですが、自分なりに楽しめて書けました。
- 著者情報
- 「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
- 「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場