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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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『団長と兵長と分隊長、そして俺』モブリット・バーナー受難記

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  1. 1 : : 2015/03/14(土) 23:30:52
    『団長と兵長と分隊長、そして俺』モブリット・バーナー受難記

    3人の上司に振り回される苦労人モブリットの話

    彼の日常に平穏は訪れるのか

    訪れない気しかしないのは内緒
  2. 2 : : 2015/03/14(土) 23:31:22
    「はい?」


    直属の上司の口から出た、あまりにも突拍子のない言葉に、モブリット・バーナーは耳を疑った


    「何呆けてるんだい?モブリット」

    彼の直属の上司である眼鏡がトレードマークのハンジ・ゾエは首を傾げた


    「いえ、あの、聞き間違えたかなと思いまして……」



    「だから、一緒に寝てくれと言ってる」



    さも当然と言ったていで宣うハンジに、モブリットはポカンと口を開ける

    そして、餌を欲しがる鯉の様に口をパクパクさせた


    「えっと……率直に申しまして……」

    やっとの事で言葉を発したモブリット

    ハンジに今にも泣き出しそうな情けない顔を見せた


    「うん、なんだい?」


    「…………嫌です」



    「何で?」

    きょとんとした顔でそう尋ねてくるハンジに、モブリットは頭を抱えるしか術を持たなかった
  3. 3 : : 2015/03/14(土) 23:32:26
    「何でと言われましても……その」


    「君は私の部下だろ?上司に従うのが部下の役目だと思う」

    ハンジは腕組みをしながら諭すような口調で物を言った


    「あの、そうなんですけど……ですが今はもう勤務時間外といいますか……」


    「副官に勤務時間外も何もないよ。常に寝食苦楽を共にするべきだと思うんだけどな」


    ハンジの言葉に、モブリットは頭をブンブン振った


    ハンジの下に着いてから早数年

    毎晩毎晩何故こんな押し問答を続けなければならないのか

    何時になったらあきらめて貰えるのか


    モブリットは頭を悩ませていた
  4. 4 : : 2015/03/14(土) 23:33:11
    「……もういいよ。毎晩毎晩疲れた。他を当たるよ」

    ハンジは表情を曇らせると、はぁとため息をついてモブリットの前から立ち去った



    その後ろ姿を見送って、モブリットもまた、はぁとため息をついた


    「何で毎晩毎晩一緒に寝てくれなんて言ってくるんだよ……そりゃ、異性の副官の役目にそういうのがあるっていう噂は耳にするけどさ……」


    「一緒に寝てやればいいんじゃないか?」

    モブリットは、自分の独り言に返事があって、ビクッと背中を震わせた


    振り返らなくてもわかるその声の主

    彼はおそるおそる振りかえった


    「……エルヴィン団長」

    想像通りの顔を見つけたモブリットは、より一層情けない顔をした
  5. 6 : : 2015/03/14(土) 23:35:32
    「今日は、あなたの所ではなかったんですね……ハンジ分隊長は」


    「いや、俺はまだ部屋に戻っていないからわからんが、おおかたリヴァイの所じゃないかな?あいつの部屋にいる時が一番多いしな」


    「そうかもしれませんね……」

    モブリットは肩を縮こまらせた



    「なあ、モブリット。お前をハンジにつけた理由だがな……」


    エルヴィンの言葉に、モブリットはギクッとした


    「す、す、すみません! 俺はその、どうしてもお役に立てそうにありません、エルヴィン団長……ですのでどうか副官の解任なりなんなり……」


    「お前は、一度引き受けるといった事を簡単に放棄する様な男なのか?」

    エルヴィンの底冷えのするような低い声が、モブリットの胸に突き刺さった


    「あ、あの……いえ……………善処いたします」


    「ああ、頼む。これからもハンジを支えてやってくれ」


    エルヴィンはモブリットの肩をポンと叩いて、その場を後にした
  6. 10 : : 2015/03/15(日) 10:36:01
    リヴァイ兵士長の部屋


    「……クソメガネ、また来たのかよ」

    部屋の主は真っ白なパジャマに身を包んで、眠い目をこすりこすり真夜中の闖入者を出迎えた


    「ああ、眠れないからさ」

    ハンジはそう言い放つと、真っ先にリヴァイのベッドに向かって腰を下ろした


    「今何時だと思っていやがる。毎度毎度人の睡眠を邪魔しやがっ……」

    ベッドの脇に仁王立ちで苦情を宣うリヴァイは、それを途中で遮られた


    ハンジの唇によって
  7. 11 : : 2015/03/15(日) 10:36:19
    「…………おい、ハンジ」

    唇を奪われた上、強引にベッドに押さえつけられたリヴァイは、怒気を極力抑えた様な声で、強引に事を成そうとする同僚に話し掛けた


    「なんだい、リヴァイ。いつもみたいに一発やったら眠れるからさ……頼むよ」

    ハンジはそう言いながら、リヴァイに馬乗りになったまま、自らの兵服に手をかけた


    「毎晩毎晩……体を壊すぞ」

    「……眠ない方が、体を壊すと思わないかい?君が相手をしてくれないなら、その辺の兵士に夜這いするけど?今日はエルヴィンもいなかったしね」


    ハンジは肩を竦めてそう言うと、スラックスを脱ぎ捨ててリヴァイの純白の寝巻きを脱がせにかかったのであった
  8. 12 : : 2015/03/15(日) 11:48:46
    「じゃ、おやすみ」

    事が済むや否や、兵服を元通り着直してベッドから飛び降りたハンジ

    ひょいっと手を上げてそう言うと、部屋を後にしていった



    「……ちっ」

    リヴァイは思わず舌打ちをした


    一発やらなきゃ眠れないといいながら、決して一緒にベッドで夜を明かす事はしないハンジ

    それどころか、眼鏡すら外さないし、全裸にもなった事がない

    そんなただ繋がるためだけの行為に、何の意味があるのか、リヴァイには理解できなかった


    だが、仮にもハンジは分隊長

    そんな変な癖を他の兵士にまで知らせるのは、兵団風紀に関わる

    だから求められれば最低限応じてきた


    今の所、そんなハンジの性癖に応えてやっているのはリヴァイとエルヴィンだけだった


    いつも側に仕える彼女の副官は、数年に渡りハンジの求めを拒み続けていた


    「……モブリットめ。あいつが副官らしくすりゃあ万事丸く収まるんだがな」

    リヴァイは思わず毒づいた


  9. 13 : : 2015/03/15(日) 12:07:16
    「くしゅっ……うー、鼻がむずむずする。風邪かな」

    リヴァイに噂をされているとは露知らず、モブリットは夜の兵舎の裏庭に来ていた


    月明かりが照らす裏庭の片隅の小さな木に、美しく咲く紫の花

    彼のお目当てはこの花であった


    「少し貰っていくね」

    モブリットはそう言いながら、花を一房、枝ごとたおって立ち上がった


    花を鼻に近づけると、ふんわりと良い薫りがした


    「やっぱり落ち着くなあ……」

    モブリットは目を細めてそう言うと、来た道を戻って行った
  10. 14 : : 2015/03/15(日) 12:29:13
    翌朝、モブリットは定時にハンジの部屋の扉をノックした

    「分隊長おはようございます。朝ですよ」

    扉の前で、何時もの口調で何時もの様に挨拶をするモブリット

    ハンジの下に着いてから変わる事が無い、朝の情景


    しばらく待っていると、扉が軋む音をさせながら開く

    そして隙間から顔を覗かせるハンジ

    眼鏡ごしに輝くその瞳も、変わる事はなく、いつも生き生きとしていた


    「おはようモブリット」

    ハンジはそう言いながら、だが扉をそれ以上開けようとはしない


    「お仕度がまだ整っていませんか?」

    「……整っているといえばいるけどね」

    ハンジは少々ばつが悪そうに言葉を発すると、扉を開けた


    ハンジの兵服姿を見て、モブリットは眉を潜める


    「…………あなた、昨日から着替えてないじゃないですか」


    「…………ああ」

    ハンジはぽりっと頭をかいた
  11. 15 : : 2015/03/15(日) 12:31:31
    「パジャマも兵服も、新しい物を用意しておいたはずですが」


    「めんどくさくて」


    「……着替えてきて下さい。待ってますから」


    モブリットはそう言うと、上官の体を部屋に押し込んで扉を閉めた



    上官を自分の視界から消した後、モブリットは盛大にため息をついた



    「ほぼ毎朝、こうなんだよな……」

    こめかみを指で押さえても、頭痛の種は消える事はなかった
  12. 16 : : 2015/03/15(日) 15:37:12
    「今日の予定はですね、午前中は技巧班との打合せ、昼過ぎからは駐屯兵団へ出向となっています」

    朝食を口に運びながら、予定をハンジに伝えるモブリット

    これもまた、いつもの情景だ


    「技巧班、って事は、巨人捕獲にまた一歩近付くね」

    「はい。先日提出した捕獲罠が採用されまして、技巧班で試作機を用意して下さったそうです」

    「よっしゃ! ちょっとやる気が出てきた」

    ハンジはそう言うと、朝食を貪るように平らげた


    「巨人の事になると俄然やる気が出ますよね、分隊長」

    「あったりまえだろ?私は巨人を知るためにここにいるんだからね?というか、早く食べて、技巧班の所に行こう」

    ハンジは捲し立てるように言葉を発して、モブリットのトレイの上のパンを取り上げる

    「あっ、何を……ムグッ」

    そして、モブリットの口にパンを押し込んだ


    「早く食べなきゃ、端からかじるよ?そんなに長いパンじゃないから、すぐに口と口が当たっちゃうね」

    モブリットはハンジの言葉に、顔を真っ赤にした

    文句の一つも言いたいところだったが、パンが邪魔で言葉を発することは叶わず……

    慌ててパンを平らげて喉をつまらせたのであった
  13. 17 : : 2015/03/15(日) 19:01:15
    ハンジ達が技巧班を訪れている頃

    調査兵団団長室では、大きな男と小柄な男が額を寄せあっていた



    「まだ、進展は無しか」

    エルヴィンの神妙な口調に、リヴァイが肩を竦める

    「ああ、あいつはなかなか強情らしい。見かけによらずな」

    「何のためにハンジにつけたのか、説明しようとすれば遮って謝り倒されるんだ」

    エルヴィンも肩で息をした


    「前途多難だな」

    「ああ、そうだな。だが、ハンジが立ち直るためにはモブリットの協力が必須だ。何か手を考えよう」

    エルヴィンは不敵な笑みを浮かべた

    リヴァイはその顔を見て、らしくない程顔をこわばらせる


    「……おい、なんて面してやがる」

    「いやあ、久々に燃えるよ。難攻不落の城を裸で落とすような高揚感さ」

    「……お前が敵じゃなくて、心底良かったと俺は思う」

    リヴァイは背中をブルッと震わせた
  14. 18 : : 2015/03/15(日) 19:18:12
    「くしゃんっ! うー、何だか寒気が……」

    「モブリット、大丈夫かい?さっきからくしゃみ連発だねえ。風邪かな?それとも、誰かに噂されてるんじゃないかい?」

    額にハンジの手の温もりを感じながら、モブリットは鼻をすすった


    「ま、まさか……噂なんてされるような生き方してませんよ。あなたじゃあるまいし……くしゅっ」

    「上官の求めに応じないけちな副官とかいう噂がさー」

    「そ、それはあなたが噂を撒き散らしてるだけでしょうが!」

    モブリットはキッ、とハンジを睨んだ

    だが、生来の目尻の下がり具合と頬の緩み具合があいまって、全く迫力は感じられなかった


    「ははっ、撒き散らしてなんかいないよ。自分の恥を自ら撒いてどうするんだよ」

    「……恥、ではないでしょうが」

    モブリットは憮然とした

    彼が夜な夜なの上官の求めを拒むのは、上官のためなのである

    ハンジが自分に恋愛感情を持っているとは思えない事が明白な今、彼は副官として、ハンジを守るという責務を負っていると考えていた


    それを回りがやれ一緒に寝ればいいだの寝てくれだの、好き勝手に囃し立てる


    もしエルヴィンが、性的にハンジを満足させるために自分をつけたのなら、お門違いにも程がある


    そんなに簡単に上官を抱けるはずがない!


    そう、彼はとてつもなく真面目な朴念人であった
  15. 19 : : 2015/03/15(日) 20:44:39
    「いやあ恥だろ?毎晩毎晩断られまくってるわけだからさ」

    「だから、それはですねっ…………くしっくしゃんっ」


    肝心な時にくしゃみを連発するモブリットに、ハンジは目を細めて彼の頭に手を伸ばす

    「はいはい、真面目真面目。っていうか、くしゃみ可愛すぎるだろ、君」

    「真面目のなにが悪いんですか……くしゃみなんか可愛くて得した記憶無いですよ」

    「ぶへっくしょい!とかより萌えるよ」

    ハンジは人差し指をピンと立てて言った

    「それはあなたのくしゃみですね、ぶへっくしょい、は」

    「まてまて! 私のくしゃみだって可愛いさ! そんなおっさんみたいな……ぶへっくしょん! 」

    そんな矢先に、まるで図ったかの様なタイミングで繰り出される、ハンジのおっさんの様なくしゃみ


    「……ほらね」

    「くっ、腹立つなあ!」

    肩を竦める副官に、ハンジは頬を膨らませた


  16. 20 : : 2015/03/16(月) 17:37:19
    「捕獲用の機材、うまい具合にまとまって良かったですね」

    「ああ、本当に。わがままが通って良かったよ」


    技巧班との打合せの後、昼からの予定である駐屯兵団への出向任務につくべく、街道筋を歩く上司と部下


    「問題は、捕獲後のあなたの行動をどうやって制御するかですね。そこが一番苦労する所なんで」

    「ちょっとぉモブリット?! 私を制御するって何だよ?! ちょっぴり我を忘れて奇声あげるくらいじゃないか! 」


    モブリットは、食って掛かってくるハンジに、困った顔を向ける

    「ちょっぴり奇声をあげるだけならまだしも、束縛もしっかりしていない内から巨人に接近してセクハラ行為を繰り返したり、まるで赤ちゃんに話しかけるみたいにしたり……」

    「だって、可愛いんだから仕方ないだろ?」

    ハンジは頬を膨らませた

    可愛く見えなくもないその顔だが、モブリットは更に眉間の皺を深くした

    「俺にはあなたの趣味は一生理解できそうにありません……やはり早急に医療班と競合して精神安定剤のきついやつを開発して飲ませるしか……」

    「薬浸けにする気かよ?!」

    ハンジは目をむいた

    「そうしたくはないので、どうか落ち着いて観察なさって下さい、分隊長」

    モブリットはハンジに諭すような口調で進言した
  17. 21 : : 2015/03/16(月) 17:45:41
    「……君は私を制御したいんだろ?」


    ハンジは突然立ち止まり、モブリットに向き直った

    少し上の位置にある副官の顔を、上目使いで見る

    すると、今まで平然としていたモブリットの顔に赤みが射す

    「制御、といいますか……ただ無茶をして欲しくないだけでして……」

    そう言いながら後ずさるモブリットに、ずいっと顔を近づけるハンジ

    「制御したいなら、一緒に寝ればいい。躾は夜のベッドが一番効果的だと思わないかい?」


    「そうきましたか……」

    モブリットは顔を赤らめながらぼそっと呟いた

    「どう思う?モブリット。試してみようか」

    「……却下です! 話をそらさないで頂きたい! あなたが分隊長らしく自重なさってくれたらいい話なんですから!」

    モブリットは大きな声で叫んだ

  18. 22 : : 2015/03/16(月) 21:03:40
    「あーあ、つまんないなあ」

    副官の反応に、ハンジは口を尖らせた

    「つまんないって……俺はあなたの為を思ってですね」

    「はいはい、わかったわかった。見上げた副官根性だよ……ったく」

    ハンジは吐き捨てる様に言うと、踵を返してさっさと歩き出してしまった


    しばらくその後ろ姿を呆然と見ていたモブリットだったが、上官の背中が急速に小さくなったため、慌てて駆け出した

    「分隊長、待ってください! 」

    そう言葉を発しながら
  19. 23 : : 2015/03/16(月) 21:18:06
    駐屯兵団本部の司令室にて、ハンジは調査兵団の分隊長としての役割をきっちり担っていた

    食えないじいさんと名高い、駐屯兵団のトップ、南方軍総司令官ドット・ピクシスとのやり取りにも淀みがない

    先程夜がどうのと言って拗ねてへそを曲げていた人物とは思えない

    モブリットはハンジの背中に頼もしげな視線を送っていた

    そうだ、この人はやる時はやる人で、自分の全てを賭けてでもサポートし、守るべき人なのだと再確認する

    この人の身体は、本人が思っている以上に大切なのだ

    だからこそ、軽々しく誰にでも許してほしくはなかった

    だが聞く所によると、毎晩事に及んでいるらしい

    やるのがよくないわけではない

    程度の問題だ

    モブリットはなんとかそれを止めさせようと思いつつも、どうして良いかわからず悩んでいたのであった


  20. 24 : : 2015/03/16(月) 21:44:00
    「(というか、なんで兵長も団長も断らないんだ?あのお二人の精力は確かに無尽蔵な感じではあるけど……結局お二人ともハンジさんを甘やかしすぎなんだよな。そんな事本人に言えないけどさ……)」

    モブリットははぁ、とため息をついた

    その時だった

    「何だか疲れておるようじゃの、ハンジの副官よ」

    ピクシスに言葉をかけられて、直立不動になった

    「は、はい! ……っいいえ、疲れておりません、司令」

    モブリットは見事な敬礼で応えた

    「いつも仲良さそうじゃの、お主たち。やっぱり夜の方もお盛んなんじゃろうな。若いしのお、ふぉっふぉっふぉっ」

    「ふがっ?! お盛ん?」

    モブリットは思わずどもった

    「司令、いきなり何を仰ってるんですか! 真っ昼間からお酒なんか飲むからですね!」

    すかさずピクシスの後ろに控えた女性兵士……アンカ・ラインベルガー参謀がつっこみをいれた


    「アンカはわしのお側付きなんじゃが、副官としての大切は役割を放棄してのお……困っとるわい」

    「なんと、司令、うちも同じですよ。モブリットはてんで夜に相手をしてくれないんです。副官なのに」

    「そうじゃったのか。異性の副官の仕事について教えてやらねばならんのお」

    ハンジとピクシスは変なところで結託した
  21. 25 : : 2015/03/17(火) 08:15:39
    「ピクシス司令! 副官にそんな役割はありませんっ! それならグスタフを相手にされたらいいじゃないですかっ! 彼も副官なんですから!」

    アンカは顔を真っ赤にして怒りながら、自分の隣に立つオールバックの男を指差した

    「ええっ?! お、俺?!」

    突然矛先を向けられたピクシスの二人目の副官グスタフは、長身をビクッと震わせた

    「ふぉっふぉっ、アンカよ。わしは異性の副官と言うておるはずじゃがの。グスタフは男、わしと同性じゃからのお」

    したり顔のピクシスに、アンカは顔を歪ませる

    「くっ……ああ言えばこう言う……」


    「ひっひひ……面白い」

    ハンジはその様子に必死に笑いをこらえ、体をくの字に曲げていた

    一方モブリットは、アンカに憂いを帯びた表情を向けていた

    ……この人俺とよく似た境遇なんだな


    と、心の中で共感しながら
  22. 26 : : 2015/03/17(火) 11:25:23
    期待です!!
  23. 27 : : 2015/03/17(火) 11:31:49
    >蛙さん☆
    ありがとうございます♪がんばります!
  24. 28 : : 2015/03/17(火) 18:14:20
    「いやいや、ピクシス司令とアンカ、面白かったねえ! 」

    駐屯兵団からの帰り道、ハンジは楽しげに先程の出来事を反芻していた

    「面白がるなんて失礼ですよ……。アンカさんがかわいそうでした」

    「そうかい?彼女も満更じゃなさそうだった様な気が……」

    「そんなわけ無いじゃないですか。すっごく嫌がってましたよ」

    モブリットは眉を潜めた

    「ふうん、君ってああいうタイプが好みなんだ」

    ハンジの言葉に、モブリットは首を傾げる

    「えっ?どういう意味ですか?」

    「だってえらく優しいからさ」

    「……どこがですか?いつも通りだと思いますが」

    モブリットは得心がいかないといった顔をした


  25. 29 : : 2015/03/17(火) 18:34:03
    「さっきもさ、それとなく司令から庇ってやっただろ?話題をそらしてさ……せっかく面白かったのに」

    ハンジはふくれっつらを副官に見せた

    「気の毒だったからですよ。今にも泣きそうでしたし」

    「泣かないよ。アンカはそんなたまじゃないさ。司令のセクハラにも慣れてるんだから」

    「……俺もあなたの無茶には慣れているつもりですが、今だに掴めませんよ」

    モブリットは肩を竦めた
  26. 30 : : 2015/03/17(火) 20:20:16
    「なーんか私が出来の悪い上司みたいな言い方だなあ」

    ハンジ不機嫌そうに顔を歪めた

    「あなたの出来が悪いわけないじゃないですか」

    「ほんとに?」

    ハンジはモブリットの顔を覗きこんだ

    「ある一点を除いては、素晴らしい上司だと思っていますよ」

    「そのある一点がやっかいなんだろ?どうせ」

    ハンジはむっつり顔で言った

    「そうですねえ……やっかいといえばやっかいですが」

    「なんだよ」

    「毎晩無茶をおっしゃる事だけですよ」

    モブリットはそう言うと、肩で息をした
  27. 31 : : 2015/03/17(火) 23:26:45
    「無茶言ってるかい?ただ一緒に寝ようってだけなのにさ」

    おどけた様な口調のハンジに対し、真面目なモブリットはこめかみを指で押さえる

    「一緒に寝るなんて言葉が無茶なんでしょうが……この点に関しては数年の付き合いでもどうしても埋まらない溝になってしまった様ですね」

    「埋まらない溝、かあ。何だか寂しいね」

    ハンジは目を伏せ、呟く様に言った

    その様子にモブリットは、一瞬どきっとする

    ハンジの表情が、今まで見たことがないほど消沈している様に見えたからだ

    だが、次の瞬間

    「あっ、あの子かっわいいなあ! お母さんに抱っこせがんでるよー!モブリット、抱っこ抱っこ!」

    道端で母親に抱っこをせがむ幼子を見て、ハンジがそれを真似て、モブリットに両手を広げた

    「…………後20年早かったら抱っこしてあげたんですがね」

    彼は呆れた口調でそう言って、手を広げるハンジからひらりと身を躱すのであった
  28. 32 : : 2015/03/18(水) 08:55:23
    「昔は良かったなあ。ただ好きな事だけやって、寂しくなればお母さんに甘えれば良かったし。何も不安がなかったよ」

    ハンジは物憂げな表情を見せた


    それを聞きながらモブリットは内心首を傾げる

    彼女が過去を由として哀愁に浸る等、今までになかったからだ

    いつも前だけを向いて猪突猛進といっても過言ではない性質だったはずだ

    そんな性質の上司が過去に思いを馳せる──

    モブリットにはそれが彼女から発せられるSOSの様に思えて、頭の中をフル回転させ始めた
  29. 33 : : 2015/03/18(水) 15:22:20
    「おーいモブリット、どこ見てんのー?」

    考えに耽りながら歩いていたモブリットの顔の前で、ハンジは何度も手をパタパタさせていた

    「あっ……すみません、考え事をしていました」

    モブリットははっとして、目線をハンジに向けた

    「なあんだ。君、さっきの小さい子を凝視してたから、もしや幼女趣味なのかと心配になったよ」

    「そんなわけ無いじゃないですか」

    「いやあ、幼女趣味なら合点がいくからさ。毎晩誘ってるのに乗ってこない事にね」

    ハンジはぺろっと舌を出した

    「俺は至って普通の趣味の、普通の男です」

    モブリットはきっぱりそう言った

    「わかんないよー?真面目な奴に限ってたがが切れたら手がつけられないらしいしさあ。君の事もっと詳しく知りたいんだけどなあ」

    「俺は至って普通で、真面目だけが取り柄の人間ですってば……」

    顔を凝視してくるハンジに少々赤面しながら、モブリットは小さな声で言った


  30. 34 : : 2015/03/18(水) 15:29:32
    「モブリットって、なんかいい匂いがするんだよ。懐かしい匂いがね」

    夕焼けに彩られた街道筋を、調査兵団本部に向かって歩きながら、ハンジが突然鼻をすんすんいわせた

    「匂いですか?」

    「うん。もしかして加齢臭だったりしてね、うぷぷ」

    「……まだ加齢臭漂う年齢ではありません」

    モブリットは憮然とした

    「冗談だよ。でもほんとにね、君にはじめて会った時からなーんか懐かしい気がしてさ。顔が芋みたいだからかなあとか思ってたんだけど……」

    「芋みたいってなんですか!失礼ですよ?」

    「いやあ、昔芋が好きで、芋ばっかり食べてたからね。おならが沢山でてさあ、あだ名がおならだったくらいさ……ははっ」

    ハンジは愉しげに笑った

    その表情を見ていたモブリットは、心のどこかが暖かくなった気がしていた
  31. 35 : : 2015/03/18(水) 15:38:15
    「仮にも女性なのに、あだ名がおならって……言う方も言う方ですね」

    「ははっ、全然気にしなかったけどね。しっかし君は、一応私を女だと認識してはくれてるんだね」

    ハンジの言葉に、モブリットは頷いた

    「あなたは女性らしいですからね」

    「ふうん、そのわりには据え膳を食わないよね、君」

    ハンジはモブリットに、試すような視線を向けた

    「食いませんよ。しかし匂いといえば、分隊長今日こそ風呂に入って下さいね?異臭が漂う女性は困ります」

    「話、そらしたな?」

    「…………風呂、入って下さいね」

    ハンジは口を尖らせたが、それ以上何も言わなかった
  32. 36 : : 2015/03/18(水) 18:16:00
    その夜

    モブリットはハンジを風呂に押し込んで、ほっとしたのも束の間、エルヴィンに呼ばれて団長室へ向かっていた


    「(やばい、今度こそやばい。なにがやばいかわからないけど、団長に俺が直々呼ばれるなんて、嫌な予感しかしない。今まではなんとか追求をかわしてきたけど、こうなるともう、命令を聞かないわけにはいかなくなる……でもハンジさんの夜の相手なんて俺には命令されても……どうしよう)」

    モブリットは土のような顔色で、廊下をとぼとぼ歩いていた

    すれ違う兵士たちへの挨拶もそぞろに、自分にこれから降りかかるであろう団長直々の言葉に想像を巡らせながら……
  33. 37 : : 2015/03/18(水) 18:22:31
    モブリットが団長室に入ると、出会いたくないペアが室内にいた

    一人は執務机に、一人は簡素なソファにどっかり足をくんで座っていた

    「お呼びでしょうか……エルヴィン団長、そしてリヴァイ兵士長」

    モブリットは声の震えをなんとか我慢しながら言った

    「用件は、もう察しているとは思うがな、モブリット」

    そう言うエルヴィンの表情は、柔らかい笑顔

    だが、モブリットはその笑顔を見て更に表情を硬化させた

    団長が笑うということは、何かを企んでいるという事なのだと、長年調査兵団にいる彼にはわかっていたからだ

    「ひゃ、は、はい……なんとなく、その……わかっています」

    「ならさっさと副官としての任務を全うしろ。俺たちの体がもたねえ」

    リヴァイのその言葉に、モブリットはやっぱりそうきたか……と言いたげに目を伏せた
  34. 38 : : 2015/03/18(水) 18:30:30
    「あの……兵士長と団長には、うちの分隊長がお世話になりっぱなしで……俺が至らないばかりに、すみません」

    「迷惑している。さっさとなんとかしやがれ、モブリット。俺の安眠を返せ」

    リヴァイは泣きそうな表情のモブリットに、畳み掛ける様に言い放った

    「まあリヴァイ、そう言ってやるな。彼には彼のポリシーもあるだろうし、一重に一夜を共にすると言えど、好みもある、無理強いはできない」

    「エルヴィン団長……」

    モブリットは少しだけ息を吹き返した

    「ハンジはいい女だと思うがな。選り好みできるような立場かよ、お前」

    「あ、いえ、好みだとかそういう話ではなくてですね……」

    リヴァイの言葉に、モブリットはまた泣きそうな顔をした

    「モブリット、お前にいっておきたいことがある」

    エルヴィンの言葉を耳にしたモブリットは、ごくりと生唾を飲み込んだ

    ついに命令が下るのか

    団長に命令されれば従わないわけにはいかない
  35. 39 : : 2015/03/18(水) 18:37:36
    「君をハンジにつけた理由だが、ハンジは精神的に不安定な一面を持っている。それは君も感じているとは思うが……不眠症で、今は夜の営みがなければ寝れない状況だ」

    「…………はい」

    モブリットは観念した様に肩を落とした

    「ハンジは自ら副官がほしいなど言ったことがなかった。だが、君が入ってきた時に、初めてそれを望んだ。理由は……」

    エルヴィンはそこで言葉を切った

    モブリットは恐る恐るエルヴィンの顔をみた

    団長は真摯な眼差しをモブリットに向けていた

    「君といると落ち着くから、だそうだ」

    「……落ち着く、ですか」

    「そうだ。懐かしいとも言っていたな」

    エルヴィンの言葉に、モブリットは先程の出来事を思い浮かべた

    そして、自分の中で何かが繋がった気がした
  36. 40 : : 2015/03/18(水) 18:42:01
    「……わかりました。副官としての任務、全うさせて頂きます」

    モブリットはそう言うと、背筋をただして敬礼をした

    「わかってくれたか。ある意味君には苛酷な任務かもしれないが……」

    「いえ、大丈夫です。分隊長のためなら何でもします。副官として……」

    モブリットは力強く頷いた

    「頼むぞ、モブリット。お前しか奴を救えねえ」

    「……どこまでできるかわかりませんが、心は決めました、兵長」

    モブリットはもう一度上官達に敬礼をすると、踵を返して部屋を後にした
  37. 41 : : 2015/03/18(水) 19:43:36
    「ふう、すっきりしたよーモブリット」

    風呂上がり、色気があるとはとても言い難いパジャマに身を包み、顔を上気させているハンジ

    モブリットはちらりとその姿に視線を移動させた

    パジャマに色気がなかろうと、多少……というかかなり不潔だろうと、怒れば手をつけられなくても、ハンジの魅力はいささかも衰えない──長年連れ添った彼にとっては

    全てはハンジのためにと行動してきた、その忠誠心だけが自慢だ

    今夜は、いや今夜からは、その忠誠心が試される──いわば最終試験だ、彼はそう考えていた

    「モブリット?どうしちゃったんだい?なんだか思い詰めた様な顔しちゃって」

    ひょこっと顔を覗いてくる上司の間近に迫る瞳に、長いまつげを確認した時、モブリットは心が締め付けられる様な気がして、胸を押さえた

    「何でも、ありませんよ」

    小さな声でそう言うモブリットに、ハンジは首を傾げた

    「ほんとに大丈夫かい?あっわかった。今更ながら私のお色気に気がついたとか?!」

    「……そんなの、前から気が付いてますよ」

    「ははっだよねーってええっ?!モブリットがおかしくなった!」

    副官のいつもとは正反対の応対に、ハンジはあわてふためいた
  38. 42 : : 2015/03/18(水) 20:04:11
    「分隊長、今日はここ……あなたの部屋で一夜を共にしましょう」

    モブリットは静かに言葉を発した

    「ええっ?!」

    ハンジは驚き、副官の顔を伺った

    彼は緊張しているのか、青ざめた顔をしていた

    「いいですよね?分隊長はいつもそうして欲しいと俺に言ってましたし……」

    「ああ、そりゃ構わないけど……何でまた急に?えらい舵を切ったね」

    ハンジの訝しげな表情を他所に、モブリットは正していた兵服を緩め始めた

    「……分隊長、先にベッドにいて下さい。俺はシャワーを浴びてきますので」

    「うん、わかったよ。待ってるね」

    ハンジは副官の態度の急変に首を傾げながらも、願ってもないチャンスとばかりにベッドにダイブした
  39. 43 : : 2015/03/18(水) 20:14:30
    「お待たせしました」

    そう言ってベッドに歩み寄ってきたモブリットは、パジャマを着ていた

    ハンジは、彼のパジャマ姿を見るのが初めてだ

    よくよく考えてみれば、彼はハンジより先に起きて、ハンジより後に寝ていた──だから長年一緒にいても、パジャマ姿すら見たことがなかったのである

    よく働く、模範的な副官だ

    思えば彼から懐かしい匂いがした時、一緒にいたいと直感的に思った

    最初は匂いだけだった興味が、いつしか彼そのものに向けられるようになった

    どうしても手に入れたくて、あの手この手で誘惑しても歯牙にもかけなかった堅物

    手に入らなければ余計に手にいれたくなる

    だがこの見た目はか弱く見える男が実は、精神的にとても強くて、いつも不安定な自分では到底叶わないと感じた時、ハンジは彼への自分の思いに気がついた

    彼に包まれていたかったのだと

    懐かしい匂いのする、優しい副官に
  40. 44 : : 2015/03/18(水) 20:28:32
    「モブリット、おいで」

    ハンジはベッドの脇に立つ副官に、殊更優しくそう言って両手を広げた

    モブリットが思い詰めた様な顔をしていたからだ

    もしかして童貞なのかもしれない

    ハンジはそう思った

    「……はい」

    モブリットはそう言うと、ベッドに腰をおろした

    そして、マットレスに足を投げ出した形のハンジの顔に手を伸ばす

    そして暫しためらった後、指先で眉間を数回撫でた

    「……くすぐったいよ、モブリット」

    ハンジが目を閉じると、モブリットは上官の肩をゆっくりベッドに押し倒した
  41. 45 : : 2015/03/18(水) 20:40:59
    「おやすみなさい、ハンジさん」

    ふわりと身体に布団がかけられて、隣に体温を感じたハンジは、目を開けた

    身体を傾けると、隣で目を閉じる副官の姿が目にはいった

    「……モブリット?ちょっと?」

    「……ハンジさん、寝てください。あっ、眼鏡をとらないといけなかったですね」

    モブリットは身体を起こすと、ハンジの顔にかかる眼鏡を外してサイドテーブルに置いた

    「いやいや、眼鏡じゃなくて、ほら、大事な儀式が……寝る前の」

    ハンジがくびを振ると、モブリットはまた眉間を指先で撫でた

    「ねんね、してくださいね。いい子ですから」

    「……いやいや、そうじゃなくて!やろうよ?!」

    ハンジはベッドから身体を起こして叫んだ
  42. 46 : : 2015/03/18(水) 21:19:29
    「やるって、何をですか?今から寝るんですよ。一緒に」

    モブリットはそう言うと、布団を被って目を閉じた

    「違うだろ?君のこれは飾りかい?!」

    ハンジはモブリットの下半身に手を伸ばして、それを引っ付かんだ

    「今のところ飾りです。わかりますよね?」

    「……」

    ハンジはむすっとした

    モブリットの大事な部分が何の変化も成していない事が明白だったからだ


    「ハンジさん、聞いてください」

    モブリットは身体を起こすと、拗ねるハンジを気遣うように頭を撫でた

    「俺はずっとあなたに、ゆっくり寝て頂きたかったんです。そういう行為に及ばなければ眠れない、という状況を、なんとか変えたかったんです」

    「モブリット……」

    ハンジは目を見開いた

    副官がただ自分と寝るのが嫌で、申し出を突っぱねていると思っていたからだ

    「あなたは俺の匂いが落ち着くとおっしゃっていましたね。そして、兵長から聞いた事があるんですが、決して人前で眼鏡を取らないと……ですが、今は」

    「……眼鏡、外してる。なくても不安じゃない」

    ハンジは頷いた
  43. 47 : : 2015/03/18(水) 21:29:21
    「俺は特に強いわけでもなく、頭の回転が速いわけでもなく、本当に普通の兵士なんですが……もしあなたが俺といて落ち着くと言ってくださるのであれば、ずっとお供します」

    「……モブリット、ありがとう」

    ハンジはモブリットに、頭を下げた

    「ハンジさん、頭なんか下げないでください。俺はあなたのためなら何でも……いや、とにかく寝ましょう。まだ眠れるかどうかわかりませんしね」

    モブリットはそう言うと、ハンジを横たわらせて布団をかけた

    そして自分も隣に滑り込む

    「モブリット、腕枕してよ」

    「……それくらいなら、どうぞ」

    モブリットが広げた腕に、そっと頭を乗せたハンジは、彼の胸に顔を埋めた

    「ん……いい匂いがする」

    ハンジはモブリットの温もりに包まれながら、大きく鼻から息を吸い込んだ
  44. 48 : : 2015/03/18(水) 22:44:04
    「…………」

    闇の中の静寂

    微かな寝息だけが聞こえてくる

    彼はゆっくり、顔を傾けた

    視線の先には、自分の腕を枕にして安心しきった様に眠るハンジの穏やかな寝顔があった

    空いている腕をそっと伸ばして、彼女の前髪に触れた

    「……ん」

    その瞬間、彼女から発せられた声に、モブリットはビクッとした

    それと同時に、今まで意識せずにいようと心がけていた何かが、ぷつりと切れたような気がした

    彼女に触れたいと、そう願ってしまったのだ……本能的に、そして心の底から

    彼の身体の一部分……先程上官に掴まれたそれが急速に熱を帯びてくるのを感じる

    「(…………だめだ、ハンジさんの眠りを妨げてはいけない)」

    モブリットはぐっと唇をかんで、誘惑と衝動に耐えようと努力したのであった
  45. 49 : : 2015/03/18(水) 22:55:30
    翌朝


    「モブリット、おはよう」

    モブリットが目を覚ました時、すでにハンジは起きていた

    ただし副官の腕枕の上で、まだ寝転んでいたのだが

    「おはようございます。よく眠れましたか?」

    「ああ、久々にゆっくり寝たよ。モブリットの匂いと腕枕は最高だね!」

    ハンジは笑顔でそう言った

    「それは良かったです」

    モブリットも、自然と笑顔になった

    「ありがとうモブリット。これからも一緒に寝てくれる?」

    ハンジの言葉に、モブリットは頷く

    「…………勿論です。俺が出来ることならなんでもします」

    「ありゃ、即答じゃなかったね。もしや、私の寝顔盗み見て、あそこ固くしたんじゃないのー?」

    ハンジの言葉に、モブリットは首をブンブン振った

    「そ、そんなわけないじゃないですかっ! 」

    「ふーん……怪しいなあ。ま、いいよ、寝込み襲っても」

    「襲いません!あなたがゆっくり身体を休めるのが目的なんですからねっ!」

    かたくななモブリットに、ハンジは肩を竦めたのであった
  46. 50 : : 2015/03/18(水) 23:02:22
    「今日は非番ですから、俺の匂いの正体をお教えしましょう」

    「落ち着く匂いの正体?あー、お母さんの匂いなんだよね、思い出した」

    ハンジはぽん、と、拳で手のひらを叩いた

    「では着替えて支度しましょうか」

    「賛成ー!デートだデート!」



    こうして二人は、兵舎の裏庭にあるピンクの花が咲く木の場所に行った

    そこに咲いているのは、モブリットがお気に入りの花、ライラック

    ハンジの母もこのライラックの香水を愛用していたらしい

    二人は匂いの秘密を共有したのであった

  47. 51 : : 2015/03/18(水) 23:05:57
    モブリットはそれからずっと、ハンジに添い寝をし続けた

    そのある意味拷問のような状態に耐えることができたのは、一重に彼のかたくなまでの精神力と、ハンジを大切に思う気持ちからなのであろう

    彼が本当の意味でハンジと寝たのは、それから数年の月日が流れ、戦いが終わった後だった

    その話はまた別の物語……



    ─完─
  48. 52 : : 2015/03/18(水) 23:11:43
    おまけ『モブリット副長の逆襲』


    「さて、団長、兵士長、あなた方にお話があります」

    モブリットがハンジと一夜を明かし、ライラックの花を一緒に摘んでなかむつまじいデートをしたその日の夜

    モブリットは団長室へおしかけた

    「なんだモブリット。珍しいな、君から話とは。ハンジとは寝たらしいな。ご苦労だった」

    エルヴィンの言葉に、モブリットは頷いた

    「はい、大人しく寝てくださいました、団長。で、こちらをご覧下さい……兵士長もお願いいたします」

    「なんだ、このカレンダーは」

    リヴァイが顔をしかめた

    冊子になった手帳型カレンダーに、何かがびっしり書き込まれていた

    「これは……わかりませんか?説明した方がよろしいでしょうか」

    「……いや、説明はいらん。君はこんなものをいちいち手帳につけていたのか」

    エルヴィンが目を見開いた
  49. 53 : : 2015/03/18(水) 23:17:49
    「なんだ、これは」

    リヴァイの言葉に、モブリットはたんたんと説明を始めた

    「これはここ数年のハンジさんの不純異性交遊についての記録です。生理周期も記録しております。万が一妊娠された場合、はっきり誰だかわかるようにする意味もありましたので」

    「お前はストーカーか!」

    「いえ、ハンジさんの管理が自分の仕事ですから、当然です。で、本題にうつりますが、回数的には少しだけ兵長が多いんですが……」

    そこで言葉を切ると、モブリットは胸のポケットから二枚の紙を取り出し、二人の上官に手渡した

    「……どちらがハンジさんと結婚するんですか?俺はハンジさんの保護者として、お二人のどちらかに責任を取っていただきたいと思っています」

    二人の上官は、はとが豆を食らった様な顔をした
  50. 54 : : 2015/03/18(水) 23:23:10
    「俺は無理だ。ペトラがいるからな」

    「……ペトラがいるにも関わらず、ハンジさんを抱くとか、兵士長それはいけませんよ」

    「いや、ハンジが眠れねえから仕方なくだろうが!」

    リヴァイは激昂した


    「仕方がない……では、団長よろしいでしょうか」

    「いや、俺は誰とも一緒になるつもりはない」

    「ハンジさんを遊びで抱いたと……?」

    モブリットの言葉に、エルヴィンは首を振った

    「ハンジにセクハラをされただけだ」

    「……ハンジさんが、エルヴィンに後ろから激しく突かれてさあ、とか笑いながら話しているのを何度か聞きましたが」

    「……ハンジめ」

    さすがのエルヴィンも、ぐうの音も出なかった
  51. 55 : : 2015/03/18(水) 23:26:11
    「今後ハンジさんと関係を持ちたい場合は、俺を通してくださいね。では失礼いたします」

    モブリットは婚姻届を回収すると、さっさと部屋を後にした


    「…………持ちてえなんざ言えるわけねえだろうが」

    「確かにな。モブリットは案外怖い奴なんだな。侮れん」

    こうしてハンジはモブリットという最強のガーディアンを手に入れたのであった


    おしまい
  52. 56 : : 2015/03/18(水) 23:39:57
    黒リットの逆襲w
    はんたんに一途なモブリットがもうね、とてもかっこいい!
    例の婚姻届けは結局モブリットが書くのかな…?それとも私が書こうか?
    とにかくロメ姉執筆お疲れ様でした‼︎
  53. 57 : : 2015/03/19(木) 00:04:17
    >りぃちゃん☆
    読んでくれてありがとう♪
    黒りっとかっこいいでしょw
    婚姻届だれが書くのかなあ♪
    えっ、りぃちゃんはわたしと(о´∀`о)
    いつもありがとうね♪
  54. 58 : : 2015/03/19(木) 07:50:58
    執筆、お疲れさまでした(^^)
    モブリット…怖いってw
    そのうち毎朝体温と血圧も測りだすよこの人は(^_^;)
    そしてリヴァイ兵長のほうが寝た回数が多いという事実…兵長、しばらく夜道にお気をつけください(?)
    毎日更新を楽しみに、読ませていただいてました。素敵な作品をありがとうございます。
  55. 59 : : 2015/03/19(木) 13:24:21
    >さだはるどの☆
    読んで下さってありがとうございます♪
    モブリット怖いですよねw完全にストーカーですw
    体温図りそうw
    そのうち基礎体温を毎朝はかりだす気がしますw
    兵長も団長もお疲れ様でしたといったところでしょうかw
    コメントありがとうございました♪
    執筆お互い頑張りましょうね(^_^)v
  56. 60 : : 2015/03/22(日) 19:09:34
    モブリットw保護者ってw
    さすがお母さんwww
    ハンジさんを大切に想うあまりストーカー並にw
    黒リット恐るべしwww

    リヴァイ...
    ペトラ、よく怒んなかったね...

    モブリットとハンジさんのラブラブ新婚生活を|ω・*) ソーッ♪したいですw

    執筆お疲れ様です♪
  57. 61 : : 2015/03/22(日) 20:33:40
    >妹姫☆
    コメントありがとう♪
    そうそう、お母さんだからねww
    ハンジさんのためなら白にも黒にもなりそうだよねw
    あーモブハン尊い(*´ω`*)
    ペトラは理解がありすぎたらしいですはいw
    読んでくれてありがとう(*^3(*^o^*)
  58. 62 : : 2015/03/26(木) 08:14:13
    もぶりっと、ハンジさん欲しそうw
    面白かったです!
    お疲れさまでした!
  59. 63 : : 2015/03/26(木) 18:37:07
    >蛙さん☆
    モブリットは本当はね、うんw
    戦いが終わるまでは意思を貫き通す男のはず!
    読んでくれてありがとうございます♪
  60. 64 : : 2015/04/08(水) 10:58:52
    良かった。時間がある時に姉さんの作品全部読んでます。
  61. 65 : : 2015/04/12(日) 14:19:27
    >とあちゃん☆
    ありがとう♪
    昔のをまた読んでもらえて、嬉しい♪

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fransowa

88&EreAni☆

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