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この作品は執筆を終了しています。

『さざ波に寄せて』 ※エレミカです 『時を超えて』番外編

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  1. 1 : : 2015/02/27(金) 02:34:54
    皆さんこんにちは。進撃のMGSです。



    misoyosiさんと合作の話をしていたのですが、話しているうちに、misoyosiさんの作品『時を超えて』の転生の話になりました。



    その話の中で、エレン達は3回転生しており、2度目の転生は『救われた命はお前の為に』で書かれ、3度目の転生は『時を超えて』で書かれています。



    そこで、1度目の転生の話をしたのですが、その話を書いてほしいとmisoyosiさんからお願いされましたので、全力で書いていきたいと思います。




    よろしくお願いします。





    ※注意


    キャラは変わってしまっているところがあります。

    エレミカのようなものです。

    ドロドロとした愛憎劇です。

    今回は少しづつ書き溜めておりますので、今まで以上に亀更新です。




    2度目の転生


    救われた命はお前の為に
    http://www.ssnote.net/archives/30889

    救われた命はお前の為に②
    http://www.ssnote.net/archives/30961

    救われた命はお前の為に③
    http://www.ssnote.net/archives/31013

    救われた命はお前の為に④
    http://www.ssnote.net/archives/31088

    救われた命はお前の為に⑤
    http://www.ssnote.net/archives/31189

    救われた命はお前の為に⑥
    http://www.ssnote.net/archives/31207

    救われた命はお前の為に⑦
    http://www.ssnote.net/archives/31283




    3度目の転生


    『時を超えて』 修正版 ※エレアニです
    http://www.ssnote.net/archives/31582

    『時を超えて』 修正版② ※エレアニです
    http://www.ssnote.net/archives/31627

    『時を超えて』 修正版③ ※エレアニです
    http://www.ssnote.net/archives/31694

    『時を超えて』 修正版④ ※エレアニです
    http://www.ssnote.net/archives/31740

    『時を超えて』 修正版⑤ ※エレアニです
    http://www.ssnote.net/archives/31822

  2. 2 : : 2015/02/27(金) 02:39:59
    第1話
    潮騒の遠鳴り





    2860年
    シュトルムブルク




    寄せては返す潮騒の音が、遠くから聞こえてくるここは、中世と呼ばれた時代の気風を伝える古城。世界遺産、シュトルムブルク(疾風の城)は今、静かに僕を、見下ろしている。



    海原から吹き寄せる潮風に吹かれて、アルミンはパイプを吹かしながら、かつてここで起こった惨劇に思いを寄せた。



    穏やかな春の太陽は、丁度空の頂上に辿り着き、海の上に煌めく光を振りまいている。








    今、僕はここに帰ってきた。海のすぐ傍にあるこの城に隣接する墓地を訪れると、アルミンの気を引く墓碑銘が刻まれている。


  3. 3 : : 2015/02/27(金) 02:41:34




    「エレン・イェーガー 1325~1350」

    「ミカサ・アルレルト 1321~1350」

    「ジャン・イェーガー 1328~1350」



  4. 4 : : 2015/02/27(金) 02:43:04
    この3人の名前が並んで刻まれているのを見るたびに、アルミンの心には、重い鎖で締め付けられるような、強い罪悪感が生まれる。



    普段は心の負担を軽くしてくれるパイプも、ここでは何の役にも立たない。



    口からパイプを放し、大きく息を吐く。口から出された煙は、海の潮風に運ばれて、彼方のほうへと消えてゆく。















    パイプ越しにアルミンは、潮騒の彼方を見ていた。




























    遥か昔、エレンの居城だったこのシュトルムブルクから、ミカサを迎えに出航していったであろう、白い帆を張った帆船を・・・・・・



  5. 5 : : 2015/02/27(金) 02:49:22













    ______________






    1350年
    壁外の国と壁内の国を隔てる海の上








    疾風(はやて)よ進め 時よ来い♪

    俺の行く手の 困難も♪

    苦しみさえも 受け入れて♪

    目の前の道 示したまえ♪












    冬の凍てつくような海風の吹くマストの上で、歌を歌っている男の声が聞こえる。



    生来の生命力に溢れた歌声は、一方で、海のさざ波のような繊細さまで感じさせた。



    「歌を歌っているのは、誰?」



    白いドレスに身を包んだ黒髪の女性が尋ねる。僕の妹として転生した、ミカサ・アルレルトだ。



    「この歌声はエレンのだよ。」



    「エレンが!?」



    信じられないのも無理はない気がした。この歌を聴いている僕でさえ信じられない。転生する前のエレンは、こんな芸術とは無縁の男だったはずだ。



    でも、転生後、エレンは騎士として、ふさわしい教養を身に付けるよう努力したのだろう。壁内の国を守るための最前線に城を構える、高貴な騎士として。














    「ちっ、死に急ぎ野郎の奴、また気取った歌を作りやがって。」



    エレンの弟として転生した騎士、ジャン・イェーガーはそう毒づいた。


  6. 6 : : 2015/02/27(金) 02:51:34
    僕たちは、前世では調査兵団に一緒に入団した仲間だった。でも、今は違う。



    エレン・イェーガーとジャン・イェーガーは兄弟で、壁内の騎士として国を護る任に当たっている。



    そして僕ら・・・・・アルミン・アルレルトとミカサ・アルレルトは兄妹で、壁外の国の名門貴族、アルレルト家の一族として転生した。



    今、エレンは壁外の国からミカサを乗せて、壁内の国に向かっている。























    ミカサを、壁内の国王、エルヴィン・レイスと婚約させ、両国の緊張状態を緩和するために。




  7. 7 : : 2015/02/27(金) 02:53:39
    「ジャン、エレンを呼んで。」



    「はぁ? なんで俺が死に急ぎ野郎を呼ばなくちゃならねえんだよ?」



    「理由は後、今はエレンと話がしたい。」



    ジャンはやはり快くは引き受けなかった。まぁ当然だよね。ジャンはミカサのことが大好きだから。




















    でもね、ジャン・・・・・・ミカサはエレンを想って言っているんじゃないんだよ・・・・・・





  8. 8 : : 2015/02/27(金) 02:54:44
    「・・・・・・仕方がねえなぁ、感謝しろよ、ミカサ。」



    遂に観念したのか、本心を隠すようにそっけなく言うジャン。



    「ありがとう、ジャン。」



    感謝の言葉とは裏腹に、ミカサの心の中には、降り続く雨のような憎悪と、雷のような復讐の念が渦巻いていた。





















    私たちの両親を殺した、エレンを絶対に許さない・・・・・・
















    僕とミカサの心は、前世からの友情や愛情。現世での憎悪や復讐。その間を、まるで嵐の中の船のように揺蕩っていた。




  9. 9 : : 2015/02/27(金) 08:31:05
    第2話
    親友たちの復讐





    「おい、死に急ぎ野郎。」



    マストを登って来たジャンは、見張り台で歌を歌っていたエレンに声をかけた。見張り台に立つためか、厚いコートを襟を立てて着込んでいる。



    「おいおい、兄貴に向かってその言いぐさは止めろって。」



    笑って受け流そうとするエレン。前世と同じようにミカサにかまってもらえなくて、焼きもちを焼いているのが分かっていたからだ。



    「羨ましいんだよ、畜生が。」



    今にも泣き出しそうな顔をするジャン。お前が変わってなくてよかったよ。



    「何の話だよ!?」



    「ミカサがお前を呼んでんだよ!!! クソ、とっとと行っちまえよ!!!」



    そう言ってジャンは、見張り台の中に入ってきた。見張りを交換するといっているのだ。何だかんだでジャンは優しい。これも前世と変わらない。


  10. 10 : : 2015/02/27(金) 08:32:58
    それに引き換え、エレンの顔は急に曇った。昔だったら何なんだよって悪態をつきながら、ミカサの元へと行っただろう。



    でも、今は行きたくなかった。ミカサもアルミンも、俺を激しく憎んでいる。



    俺たちの関係は・・・・・・昔とすっかり変わってしまった。


  11. 11 : : 2015/02/27(金) 08:35:21
    前世で俺は、ベルトルトに母さんを殺され、そのことを激しく恨んだ。



    だけど、思いもしなかったんだ。



    この俺が、転生したミカサやアルミンの両親を、殺すことになるなんて。



    まさか俺が、ベルトルトと同じことを、よりによって俺の幼なじみに対してしてしまうなんて。


  12. 12 : : 2015/02/27(金) 08:41:18
    壁内の国王であるエルヴィンと、壁外の国の名門貴族であるミカサの結婚は、言ってしまえば政略結婚だった。



    ・・・・・・俺は知っていた。この結婚は、壁外の国の宰相、アルミン・アルレルトによって仕組まれたものであると。



    アルミンにとってこの結婚は二つの意味を持っていた。









    一つは壁内の国と壁外の国の友好を保つため。



    俺たちは前世において、ヒストリア女王を立てて、500年にも渡る平和を実現した。でも、今はその平和に陰りが見え、あちこちで武力衝突が起きている。



    その為にお互いの国の結びつきを強くして、平和と安寧を実現する。現実的な政策。






    そして・・・・・・もう一つは・・・・・・

















    エルヴィン王に仕える騎士である以上、俺は王妃となるミカサにも忠誠を誓わねばならない。俺は嫌でも、自分の罪に向き合わなくてはならない。



    つまりはこれが、俺に対する、政治家アルミン・アルレルトの冷酷な・・・・・・復讐。



    かつての親友から向けられた、あからさまな敵意を前に、俺は既に悩み、苦しんでいた。



    しかもこの苦しみは、今後もずっと続いていく。


  13. 13 : : 2015/02/27(金) 08:43:40
    「誰がッ!! 人なんか殺したいと!! ・・・思うんだ!!」



    かつてのベルトルトの嘆きは、今はもう俺のものとなった。



    アニが今の俺を見たら、笑うのだろうか?



    鉛のような体に鞭うち、ゆっくりとマストを降りはじめる。




















    ・・・・・許してくれとは言わない。せめて、ミカサの手で終わらせてくれ。



    この時から俺は、心のどこかで死を望んでいた。



    俺は死に、救いと希望を見出すようになっていたのだ。













    強い風がマストに打ち付ける・・・・日の光は陰り、雲に隠れていった。


  14. 14 : : 2015/02/27(金) 12:27:08
    …正直言って、MGSさんに今回の件を無理言って御願いして、よかったと思っております。

    これはこの先がかなり期待です‼

    これは自分も新作に相当気合い入ります!

    宜しくお願いいたします‼
  15. 15 : : 2015/02/27(金) 17:40:05
    期待ありがとうございます!


    この作品を書かせていただくきっかけを与えてくださって、とても感謝しています。


    全力で書きますので、よろしくお願いします!
  16. 16 : : 2015/02/27(金) 17:42:22
    第3話
    一族の秘薬





    壁外の名門貴族であるアルレルト家の当主には、代々秘薬の作り方が伝授される。



    様々な難病を直す秘薬。



    様々な毒を解毒する秘薬。



    死の秘薬・・・・・・心臓発作に見せかけて、証拠を一切残さない、恐るべき暗殺用の秘薬。



    変わり種は愛の秘薬・・・・・・これは同じ薬を飲んだ者どうしを結び付ける霊薬だ。一人で飲む分には、ただの眠り薬だが。



    そして・・・・・・巨人化の薬。




















    皮肉にも僕は、巨人の発生に関わった一族の、最後の末裔として転生した。



    平和が打ち立てられてから500年あまり・・・・・・既に巨人がいなくなって久しかったが、それは僕の一族を除いて巨人化の薬の製法を知る人間がいなくなったからだ。



    勿論僕は、巨人の恐怖をその身をもって知っている。この秘伝の薬の継承は、僕の代で終わらせるつもりだ。



    宰相となった今、500年続いてきた平和を、僕は守らなければならない。



    だからミカサを、エルヴィン王に嫁がせることを決断した・・・・・・エレンへの復讐もこめて。



    それだけに、ミカサの言葉は、僕には受け入れがたかった。


  17. 17 : : 2015/02/27(金) 17:45:08
    「何を言っているんだい!? 君はエレンを殺す気なのかい!?」



    「そう、私はエレンを、殺す。ので、死の秘薬が欲しい。」



    僕は動揺していた。まさかミカサがそこまでエレンのことを恨むなんて、予想できなかったからだ。











    僕もエレンを恨んでいる。でも、心のどこかで、エレンに対する友情を捨てていなかったことに気がついた。



    今更後悔しても遅かった。僕は・・・・・・エレンに対してなんて惨い仕打ちをしてしまったんだろう。



    でも、ミカサの恨みは、僕の恨みをはるかに凌いでいた。


  18. 18 : : 2015/02/27(金) 17:47:40
    エレンを殺したいと思うほどの、強烈で深い恨み・・・・・・僕にはこれがどこから来たのか、手に取るようにわかった。

























    ミカサは未だに、エレンを愛している。その気持ちが、エレンに対する嵐のごとき復讐心を増大させていた。前世からエレンを愛しているからこそ、エレンが余計に憎たらしかったのだ。



    「早く渡して、アルミン。」



    ミカサは相変わらず淡々と言ってくるが、その目には疾風のような激しさが宿っている。



    「駄目だ! ここでエレンを殺したら、君を嫁がせる意味が薄れてしまうだろ!? 何も殺すだけが復讐じゃない!」



    もっともらしい言い訳をした。エレンをかばうために、ミカサにエレンへの復讐を説く。これ以上の矛盾はないだろうなと、心の中で、僕は自嘲した。



    「何を言っても無駄。私はエレンを、殺す。」


  19. 19 : : 2015/02/27(金) 17:49:31
    ミカサは剣を抜いて、切先を僕の喉元に突きつけた。



    「何のつもりかな? 身内とはいえ、元幼なじみとはいえ、一国の宰相に刃を向けることがどれほどバカなことか、分かっているのかい!?」



    権力を盾に、脅しをかける。



    「死体がどうやってしゃべるの?」



    ミカサがこんなことで引く人間ではないことは分かっていた。それでもこんな言葉が出てしまった。僕も相当焦っていたのだと思う。



    「・・・・・・分かったよ、少し待ってて。」



    ミカサが剣を納める。僕はいつも肌身離さず持ち歩いている秘薬を詰めた箱の中から、一つの秘薬を取り出した。



    「それが・・・・・・死の秘薬?」



    「・・・・・・そうだよ。」



    瓶の中には、無色透明の液体が入っている。



    「これをエレンに全部飲ませるんだ。エレンは苦しむことなく、安らかに死んでいくから。」























    恐る恐る、僕はミカサにその薬を渡した。



  20. 20 : : 2015/02/27(金) 17:50:41










    この時の僕は、想像もしていなかった。



    この薬が、僕たちの運命を、ことごとく狂わせていくことになるなんて。














    ホー! ヘー! ハー! ヘー!



    マストの下の帆をたためー!













    船員たちの歌は、壁内の国に近づいていることを知らせていた。



    船が徐々に減速していく・・・・・・。



  21. 21 : : 2015/02/27(金) 20:54:00
    第4話
    憎悪と復讐





    コンコン!



    「入るぞ、ミカサ。」



    エレンがミカサとアルミンのいる部屋に入ってきた。考えてみれば、転生してから、三人が一緒になったのは初めてだった。



    歳月は、俺たちをここまで隔ててしまった。今や俺は、ミカサやアルミンの敵として、目の前に立っている。



    「エレン、単刀直入に聞く。どうして私たちの両親を殺したの?」



    ミカサはストレートに聞いてきた。俺のほうがたじろぐほどに。



    「・・・・・・戦争だった。仕方がなかったんだよ。」


  22. 22 : : 2015/02/27(金) 20:55:00
    「仕方がなかっただって!?」



    怒りを孕んだ口調でエレンに迫ったのはアルミンだ。



    「僕の両親は勇敢だった! 貴族であったのにも関わらず、騎士として常に前線で兵士達を鼓舞していた! 教えてよ、エレン! そんな僕らの両親を、仕方なく殺す理由は何だったんだよ!!??」



    泣きながら、アルミンはエレンを詰った。



    エレンは苦悶の表情を浮かべた。戦争になれば敵と味方の区別すら難しい。



    祖国のために必死に戦っているうちに、ミカサやアルミンの両親を殺めてしまったのだから。


  23. 23 : : 2015/02/27(金) 20:57:26















    エレンの両目から、涙が零れ落ちる。



    「殺したく・・・・・・なんか・・・・・・なかった・・・・・・。」



    情けなかった・・・・・・かつての親友たち、いや、家族たちの前で、こんなことしか言えない自分が。罪を受け入れきれずに泣いてしまった自分が。


  24. 24 : : 2015/02/27(金) 20:59:05
    次の瞬間、ミカサがいきなり剣を抜いた。



    切先が俺の額を掠め、俺は頭から血を流した。



    「ミカサ!?」



    驚いたアルミンが止めに入ろうとする。



    「止めるんだ、アルミン。」



    間に入るアルミンを、エレンが制した。














    「俺はもう生きてても辛いんだよ・・・・・・ミカサ、せめてお前の手で、一思いに殺してくれよ。」



    声を震わせて、涙を流したまま、エレンはミカサに微笑みかける。


  25. 25 : : 2015/02/27(金) 21:00:10















    「・・・・・・なぜなの、エレン。」



    次に沈黙を破ったのはミカサだ。冷静を保とうとはしているが、声が微かに震えている。



    「前の戦争で傷ついたあなたを、私は癒した。」



    「・・・・・・覚えてる。」



    「えっ!?」



    僕は初耳だった。前の戦争といえば、僕たちの両親が死んだ戦いだ。ということは・・・・・・



    「両親を殺したエレンを、助けたということかい? ミカサ?」



    ミカサは首を縦に振った。



    ・・・・・・何ということだ。



    ミカサはエレンを匿っていた。下手したら反逆罪になるところだったかもしれない。そんな危険を冒してまで、ミカサはエレンを助けていたのだ。


  26. 26 : : 2015/02/27(金) 21:01:25
    「私はすぐに分かった。エレン、あなたが私の両親を殺したって。」



    「じゃあなんで俺を助けたんだよ!? なんであの時俺を殺さなかったんだ!!!」



    「あなたは、私の、家族だったから。」



    「家族・・・・・・。」



    「でも、あなたは私を裏切った。あなたは、裏切り者!」











    裏切り者・・・・・・俺が昔ライナーにぶつけた言葉だ。



    くそ、言われたほうはこんなにも痛かったんだな・・・・・・。



    「私がエルヴィンに嫁ぐことをエレンは認めた! そして、図々しくも私を迎えに来た!!!」



    ミカサの怒りは頂点に達した。



    「これ以上の恥は無い!!! エレンは私を売った!!! 私は、エレンを許さない!!!」



    ミカサの口から、憎悪の念が吹き荒れた。



  27. 27 : : 2015/02/27(金) 21:02:53
    第5話
    死の影と愛の影





    「殺してくれよ!!! ミカサ!!!」



    エレンは堪らずに叫んだ。



    自分の顔を流れているのが涙なのか、血なのかさえも分からないほどに泣いた。



    すると、ミカサは剣をしまい、懐から透明の液体が入った瓶を取り出した。



    テーブルの上に置いてあった杯に、キラキラと光る液体を注いでいく。



    「何だよ、この水は?」



    「水じゃない・・・・・・これは、死の秘薬。」



    「死の・・・・・・秘薬・・・・・・。」


  28. 28 : : 2015/02/27(金) 21:04:00































    体が震えた・・・・・・目の前に、死を運んでくる秘薬が、ここにある。



    そうか、俺は・・・・・・ここで毒殺されるのか。







  29. 29 : : 2015/02/27(金) 21:04:45
    「エレン、私があなたを斬ることは容易い。でも、前世では私たちは幼なじみだった。ので、選ばせてあげる。」



    ミカサは恐怖に震える俺の目を見据えると、こう言った。



    「私に斬られるか、自ら毒薬を仰いで死ぬか、好きなほうを選ぶといい。」












  30. 30 : : 2015/02/27(金) 21:06:32























    「お、俺は・・・・・・。」



    恐る恐る・・・・・・死の杯に手を伸ばし始める。



    杯を持つ手が震える。
















    ガタガタガタガタ! 自分ではもうどうしようもないほどの、恐怖。




  31. 31 : : 2015/02/27(金) 21:07:47













    「あ・・・・・・あ・・・・・・ミカサ・・・・・・俺は・・・・・・。」














    ホー! ヘー! ハー! ヘー!



    マストの下の帆をたためー!













    「もうすぐ港に着く。早く決めて。」



    ・・・・・・止めて!



    「ミカサ・・・・・・俺は・・・・・・。」



    ・・・・・・もう止めて!


































    「死ぬよ!!!・・・・・・この毒を飲んで!!!」




  32. 32 : : 2015/02/27(金) 21:08:38
    意を決し、エレンは少しずつ、秘薬を飲み始めた。



    「止めて!!!」



    毒を半分ほど飲んだエレンから、毒杯をひったくるミカサ。



    「ミカサ?」



    エレンの顔は、既に恐怖で満ちている。



    「あなただけを、死なせたりはしない!」



    そういうと、ミカサも毒杯を飲もうとする。



    「!!! やめるんだ!!! ミカサ!!!」



    叫んだのはアルミンだった。でも、もう遅かった・・・・・・。



    ミカサは、毒杯の毒を全て飲んでしまった。



  33. 33 : : 2015/02/27(金) 21:09:28

















    カランカラン!



    部屋の中に、空になった杯の音が響く。



















  34. 34 : : 2015/02/27(金) 21:09:58






    ドクンッ!




    ドクンッ!




    自分の心臓がまだ力強く脈打っているのが聞こえる。




    もうすぐ、俺の心臓は止まる。




    呼吸は大きく乱れ、精神は最高に興奮していた。





  35. 35 : : 2015/02/27(金) 21:10:33







    ドクンッ!




    ドクンッ!




    体が・・・・・・熱い・・・・・・








  36. 36 : : 2015/02/27(金) 21:10:59














    「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・・ミ・・・カサ・・・・・・?」




    「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・・エ・・・レン・・・・・・?」




    「変なんだよ・・・・・・俺の・・・体が・・・・・・熱いんだ。」




    「何が起こってるの?・・・・・・エレン!?」




    「ミカサ!!!」









  37. 37 : : 2015/02/27(金) 21:11:40


















    気が付くと・・・・・・俺はミカサをこれ以上ないくらい強く抱きしめていた。



    「お前と、離れたくないんだ!」



    「どうして・・・・・・裏切り者がこんなに愛しいの!?」



    「俺だけを見てくれ!!」



    「エレンしか見えない!!」



    「一緒になろう!!!」



    「エレンと一緒!!!」



    興奮したまま、俺たちは唇を重ね合わせてしまった。



















    「ああ・・・・・・どうしてこんな・・・・・・どうして!?」



    部屋の片隅で、アルミンは絶望に打ちひしがれた表情をしていた。



  38. 38 : : 2015/02/28(土) 20:54:46
    第6話
    夜への入り口





    僕は・・・・・・最低だ・・・・・・。



    どうして、ミカサを分かってあげられなかったんだろう?



    僕が渡したのは死の秘薬じゃない。














    愛の秘薬だった。



  39. 39 : : 2015/02/28(土) 20:55:29
    エレンだけが飲めば、エレンは眠りに落ち、ミカサをごまかせるはずだった。



    予想すらしていなかった・・・・・・。



    ミカサが・・・・・・エレンと心中を図る気でいたなんて。



    でも、考えてみれば不思議じゃない。



    前世から愛してきた男が、両親を殺すようなことをすれば、狂おしい気持ちにだってなってしまうだろう。


  40. 40 : : 2015/02/28(土) 20:56:15
    前世ではアニのために、ミカサは潔く身を引いた。なのに、僕はミカサの、エレンに対する想いの蓋をこじ開けてしまった。



    一人で飲むはずの秘薬が、二人で飲んでしまったことにより、その魔力を発揮してしまった。



    エレンとミカサの心に、激流を巻き起こしてしまったんだ。



    それもよりによって、ミカサが王に嫁ぐ、最悪のタイミングで。


  41. 41 : : 2015/02/28(土) 20:58:32
    エレンとミカサは、アルミンの目も憚らずに、ひたすらお互いの唇を貪った。



    「もうお前を離さねえよ、ミカサ!」



    「私こそ、あなたのそばにいる!」



    お互いの唾液が、糸を引くほどの、狂おしく激しい口づけ。











    ミカサの激しい恨みは、愛情の深さゆえに噴出したものだ。そして、その憎悪がエレンに対する愛情を縛っていた。



    エレンはエレンで、アニへの想いから、ミカサへの想いを家族だからと誤解しているところがあったし、僕やミカサへの罪悪感も、思慕の足枷になっていた。



    でも、この秘薬が、戒めの鎖を壊してしまった。














    舵を失った船が、奔流に流されていく。



    果てしない暗闇、世界の果てへと押し流されていく。







  42. 42 : : 2015/02/28(土) 20:59:59









    「おい、お前ら!? 何やってんだ!!!」



    目の前の出来事に呆然としていて、僕らはジャンが部屋に入ってきたことに気が付かなかった。



    「ジャ、ジャン!!!」



    「こ、これは!!!」



    ジャンが入ってきたことで、ようやく理性を取り戻したエレンとミカサ。でも、すべてはもう遅かった。



    酷く狼狽するエレンの頬を、ジャンは思いっきり殴った。



    「ぐあっ!!!」



    倒れたエレンの胸倉を掴む。



    「テメエ言ったよなッ!!! 俺にはアニがいたからって!!! エルヴィン王に嫁ぐミカサのことは心配だけど、俺は影からミカサを見守るって!!! その誓いの結果がこれかよッ!!!」



    「止めるんだ! ジャン!!!」



    僕はジャンの肩を思いっきり掴んだ。



    「アルミン、テメエも何で止めるんだ!? 親友ならな!!! 殴ってでも止めるのが筋ってもんだろうがッ!!!」



    ジャンの真っ直ぐな言葉は、僕の胸に突き刺さった。その通りだ。ジャンの言う通り、僕は両親を殺したエレンと、真正面からぶつかるべきだった。



    なのに、どうして僕は・・・・・・こんな陰険で姑息な復讐を選んでしまったんだ。



    その結果が・・・・・・今のこの状況を作り上げた。



    僕は・・・・・・最低だ・・・・・・。


  43. 43 : : 2015/02/28(土) 21:02:14
    「聞いてくれ、ジャン!!!」



    悔恨の思いが、ジャンの肩を掴む僕の手の力を強くした。



    「何なんだよ!!??」



    「エレンとミカサがこうなってしまったのは、僕のせいなんだ!!!」



    「はぁ!!??」









    僕はエレンを治療しながら、ことの顛末をジャンに話した。



    案の定、ジャンは激怒したが、拳を上げることが出来ないでいた。エレンもミカサも僕も、それくらい汚れていたからだ。



    かつての幼なじみが、複雑に絡み合った愛憎の中に囚われている・・・・・・ジャンに出来ることは、何もなかった。



    「いいかい、ジャン。ここであったことは、絶対の秘密だ! もしこのことが露見すれば、エレンもミカサも壁内に居られなくなる! それだけじゃない・・・・・・異国の王妃と騎士との恋が発覚した日には、政治問題になる! そうなれば、どれほどの影響が出てしまうのか、僕でも想像がつかない!」



    僕に出来ることは、二人の秘密を絶対に隠し通すこと。その為に僕は、どんな手段も辞さないつもりだ。



    「ふざけんなよ、アルミン!!! エレンとミカサを別れさせるのが先だろうが!!!」



    「出来ないんだよッ!!! 僕の秘薬は、エレンとミカサを結び付けてしまった!!! もう誰も、二人の想いを止められないんだよ!!!」



    エレンとミカサを見ると、お互い目線を交わし合っている。体が、心が、お互いを激しく求め合ってしまっている。



    「くそ、どうにかなんねえのかよ!!!」



    「ジャンがいてもこのありさまだ!!! どうして僕に・・・・・・ひっぐ・・・・・・二人を止められるんだよ・・・・・・うう・・・・・・。」



    僕も最後は泣いてしまった・・・・・・あまりのふがいなさに、僕は絶望していた・・・・・・。



    「くそぉ、この役立たず!!! 死んじまえ!!!!!!」



    在りし日のように、僕は叫んでしまった。僕らの運命は、これからどうなっていくんだろう。



    漠然とした不安が、僕らの周りを取り囲んだ。

























  44. 44 : : 2015/02/28(土) 21:04:08








    やがて船は、壁内の国の港へと辿り着いた。








    エルヴィン王、万歳!!!


    エルヴィン王、万歳!!!









    寒空の下でも、この港には活気が満ち溢れていた。



    王であるエルヴィンも港に到着したらしく、船の外では人々の活気ある声が響き渡る。



    ここからは、僕も政治家らしく振る舞わなければならない。不安定な心を隠し、僕は政治家の仮面をかぶった。



    壁外の国の宰相にして、実質最高権力者、アルミン・アルレルトとして、僕はエルヴィン王に恭しい挨拶をした。



    「エルヴィン・レイス国王陛下。この度はわが妹、ミカサ・アルレルトとのご婚礼、誠におめでとうございます。この良き機会に、両国の一層の友好と繁栄に力を尽くして参りましょう。」



    「これはアルミン・アルレルト宰相殿、祝福の言葉、痛み入ります。この世界の平和のために、共に力を尽くしましょう。」



    固い握手を交わす。前世の調査兵団では上司と部下の関係だったが、今ではお互いが国を代表する者同士だ。僕らの双肩には、国の未来が重く圧し掛かっている。



    秘密は絶対に守り通さねばならない。
















    こうしてミカサは、エレンとの不義を抱え込んだまま、エルヴィンとの婚礼に臨んだ。



    身分違いの、決して報われない恋。












    不条理な運命が今、動き出した。





  45. 45 : : 2015/02/28(土) 21:07:14
    以上で、第一部が終了になります。



    この作品は、三部構成にしたいと思っています。



    ある程度書き溜めましたら、第二部を作っていきます。



    ここまで見てくださってありがとうございます!



    感想を頂けたら幸いです。
  46. 46 : : 2015/02/28(土) 21:29:21
    ・・・いい感じに仕上がってますね!!
    これはこの先が期待です!!

    こっちも頑張らねば・・・((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
  47. 47 : : 2015/03/01(日) 04:58:43
    misoyosiさん、ありがとうございます!



    続きたてました。
    http://www.ssnote.net/archives/32128



    よろしくお願いします。

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hymki8il

進撃のMGS

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この作品はシリーズ作品です

『さざ波に寄せて』 ※エレミカです 『時を超えて』番外編 シリーズ

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