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密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの勇敢』
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- 1 : 2015/02/17(火) 11:34:12 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『エルヴィン・スミス暗殺計画』
(http://www.ssnote.net/archives/2247)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスとの1週間』
(http://www.ssnote.net/archives/4960)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの苦悩』
(http://www.ssnote.net/archives/6022)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの審判』
(http://www.ssnote.net/archives/7972)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの否応』
(http://www.ssnote.net/archives/10210)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの溜飲』
(http://www.ssnote.net/archives/11948)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの流転』
(http://www.ssnote.net/archives/14678)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの渇望』
(http://www.ssnote.net/archives/16657)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの血涙』
(http://www.ssnote.net/archives/18334)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの証明』
(http://www.ssnote.net/archives/19889)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慕情』
(http://www.ssnote.net/archives/21842)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの天命』
(http://www.ssnote.net/archives/23673)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの微睡』
(http://www.ssnote.net/archives/25857)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの再陣』
(http://www.ssnote.net/archives/27154)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの謀反』
(http://www.ssnote.net/archives/29066)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの杞憂』
(http://www.ssnote.net/archives/30692)
★巨人に右腕を喰われたエルヴィンと
最愛のミケを失うが、エルヴィンに仕えることになった
隠密のイブキとの新たなる関係の続編。
『進撃の巨人』の最新話に私の想像(妄想)を書き足した
オリジナルストーリー(短編)です。
オリジナル・キャラクター
*イブキ
かつてイヴと名乗りエルヴィンの命を狙っていた隠密の調査兵 。
生前のミケ・ザカリアスと深く愛し合っていた。
ミカサ・アッカーマンの年の近い叔母。
※SSnoteのルールに則り感想等を書いていただくグループコミュニティを作りました。
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまで
お願いします⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
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- 2 : 2015/02/17(火) 11:36:03 :
- ヒストリア・レイスは突として、父親のロッド・レイスを投げ飛ばした。また娘のヒストリアが一度は受け取った注射を無駄にしてしまったことで、父は怒りを露にしたはずだった。しかしその感情を上回って、怒り狂うヒストリアの反撃に遭ってしまっていた。冷たい石畳の床に背中から打ち付けられたロッドは息も出来ないほどの痛みに襲われる。
「何が神だ!! 都合のいい逃げ道作って、都合よく人を扇動して!!」
ロッドと再会し、家族の愛情を知ったと思っていたヒストリアだったが、姉であるフリーダの優しさや訓練兵時代から馴染み深いユミルの励ましの言葉を思い出したとき、娘として愛されたことがない自分は利用されているだけだと気づいてしまった。直後、その父へ芽生えていた家族としての想いを断ち切った。
「もう! これ以上…私を殺してたまるか!」
涙ぐむヒストリアは意を決して、父が抱えていた黒いバッグを持ち出し、エレン・イエーガーが鎖で繋がれた頂へ向かう。二人の光景を愉快に眺めていたのはケニー・アッカーマンだった。
「親子喧嘩か! いいぞ、お前ら! おもしれぇ!!」
石柱にアンカーを突き刺しながら、ケニーは高笑いを上げ、ヒストリアが階段を登り、エレンのそばへ近づく様子を見ていた。その笑い声は自分の夢が叶わないと知り、恨みでもぶつけるような嫌味を伴う豪快な笑い声にも聞える。
ヒストリアが父親のバッグから鍵を取り出して、鎖からエレンを解き放とうとしても、彼はそれを拒み泣き叫ぶ。これまで父の言いなりだったはずのヒストリアが初めて自分の意志で行動する姿が痛快と感じるケニーは二人の動きばかりに視線を向け、目下のロッドには全く気にも止めていなかった。
ヒストリアに投げ飛ばされ、さらには腰の痛みに耐え、注射とその中身が飛び散った場所を目指して腹ばいになるロッドは、どうにかその目的地に辿りついていた。
しかし、その液体を目の前にしても安心することはない。
「父さん…ウーリ、フリーダ……。待ってて、僕が今…」
『最も戦いに向いた巨人の液体』は狭い容器から放たれ、飛び散っても湯気だっている。
床を濡らした液体にロッドが舌先を当てたまさにその瞬間――。
突然の爆発音と共にロッドは巨人へ変貌し始めた。その姿は巨大で、広かったはずの地下広場には収まりきらないようで、狂い踊りだしたような巨人の頭蓋骨は、ケニーがアンカーを突き刺す石柱を瞬く間にへし折った。
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- 3 : 2015/02/17(火) 11:38:07 :
- 巨人が放つ光と爆風に視線を送ったとき、飛ばされそうになったテンガロンハットを手にしていたが、石柱が崩れ落ちたと同時にケニーはそれを手放してしまった。
「――ロッド・レイス! あの野郎…巨人になりやがったな」
ケニーが突き刺していたアンカーは石柱でも天井付近だった影響で、その身体は爆風であおられても、吹き飛ばされることはない。視線をロッドに向けているつもりでも、突然の出来事と目前の高熱を帯びた白煙の影響で彼を見つけることは容易くなかった。
耳を劈き、聞き覚えのある轟音と爆風に調査兵団兵士長のリヴァイは、自分の信頼に足る仲間に対し、その音が響いた方へ向かうよう指示する。だが、皆は指示と同時に飛び立ち、その意志はエレンとヒストリアを助けたい一心で自然に身体が動き、立体起動を操作した。
隠密から調査兵に生まれ変わったイブキが煙の晴れ間からエレンとヒストリアの姿を見つけても安堵することなく、伴に飛ぶ彼女の姪、ミカサ・アッカーマンに声をかけた。
「ミカサ、あれ…見て!」
「――エレン!!」
鎖に両手を繋がれたエレンを見つめ、ミカサが彼をいち早く助けようと突き進むが、再び爆風が皆を襲った。そのとき、エレンを鎖から解き放とうとするヒストリアが鍵を抱えたまま、彼女の背中に位置する石壁に向かって転がり飛ばされる姿がミカサの目に飛び込んできた。
「ヒストリア…!」
ミカサは咄嗟にエレンよりもヒストリアを優先し、彼女が叩きつけられそうになった背中を守り、抱き寄せた。その傍らのイブキもミカサに追いついて、ヒストリアの身体が飛ばされないように支えていた。
もちろん、二人に助けられたヒストリアに怪我はない。
ミカサがヒストリアが手にしていた鍵をリヴァイに手渡す。続々とエレンの周りにリヴァイ班の皆が集まり、彼の救出に向かった。皆は爆風の中に天井から崩れ落ちる、いくつもの落石さえ物ともしない。
エレンが皆から抱えられる背中に視線を送っていたヒストリアが今度はイブキを見やる。
ポニーテールにした長い黒髪が強風にあおられる姿にヒストリアは小首を傾げた。
「フリーダ…お姉さんじゃ…ないか…」
知らない名前を言われ、イブキも小首を傾げながらも、ヒストリアをゆっくりと立たせた。
イブキと気づいて、ヒストリアの眼差しは寂しさが募る。
「そうだ…会えるわけ…ないんだ」
イブキは命が助かっても、寂しげなヒストリアの肩にそっと触れ、俯き加減な彼女に柔らかい笑みを注いだ。
「ヒストリア! また私と誰かと…勘違いしちゃった?」
「えっ!」
「とにかく、無事でよかったよ」
巨人化したロッドが突き破ろうとした天井がもろくなり、エレンが繋がれたその場所に大岩が直撃しようとした瞬間、エレンの身体はジャン・キルシュタインに抱えられ、腕はリヴァイに引っ張られ、危機一髪で命は助かった。
皆は退路を阻まれ、逃げ道を失っていた。石壁に身を寄せ合い、視線は大型巨人に変りつつあるロッドの身体を睨む。
変貌を遂げるロッドは片膝を立て、その背中が高かったはずの地下広場の天井を押し上げる。
イブキは目の前の巨人に頬を引きつらせ、ごくりと唾を吞みこんだ。
「こんなに…大きいの? 巨人って…」
「こいつは…いや、超大型よりデケェようだがな」
イブキの独り言にリヴァイは相変わらず冷静に答えていた。
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- 4 : 2015/02/17(火) 11:40:28 :
- 轟音と突風に顔を背けると、イブキは慈しむように自分を眺めるヒストリアに気づく。
「会いたい人に…とても会いたいんだね」
強風が吹き荒れる最中、イブキはそれとは正反対の優しい声でヒストリアにいう。
イブキの顔を眺め、次にヒストリアはユミルのことを思い出していた。
「そう、私には…会いたい人がいるの!」
俯いていたはずの顔に眉根に力を入れイブキを見つめる。その目に力が宿り、またイブキの手をぎゅっと握った。イブキが緊張から指先が冷えているとヒストリアが気づくと、握る手にはさらに強い力が入った。
エレンと伴に捕らわれた短い間で、弱々しく守ってあげたくなるような存在だったはずの
ヒストリアが成長したとイブキは感じる。何があったのか想像はできなくても、彼女にとって必要だったのか、とイブキは感じていた。
大型巨人が立ち上がろうとして、さらに天井に亀裂が入る。今にも暴れだしそうな巨人に恐怖からイブキの唇は戦慄き、目を剥いていた。
「イブキさん! 巨人の動きは予測できないの! 特に奇行種なんかはね…! 頭上だけじゃない、足元にも気をつけて」
「うん、わかった――」
ヒストリアの視線は巨人に向いているが、イブキに気遣って、思いのこもった声を捧ぐ。
実際に壁外で巨人を目の当たりにした皆が戸惑う様子を見ながら、イブキは気持ちを落ち着かせるため大きく深呼吸すると、肩が揺れた。
「…ミケ、守って、お願い」
イブキが自分の心に宿るミケ・ザカリアスを想い、気がつけば彼の名前を口にした。
訓練兵時代を関係を思い起こさせ、互いに感情をぶつけ合う皆は弱気なエレンに対して不満を口にしていたはずが、今度はイブキに好奇心の眼差しが注がれた。
唯一、エレンへの不満に口をつむいでいたはずのミカサもイブキの横顔を目を見開いて眺める。
「あれ…イブキ叔母さん…今はもう団長を愛しているんじゃ…?」
「あ、愛しているって…そんな…! えっと…ミケを始め、かつての仲間たちだって…みんなを守ってくれてる…ってことなのよ――」
新たな関係を築いたエルヴィン・スミスのことを言われ、平常心を取り戻すよう努めるが、イブキのその頬は紅潮していた。初めて目の当たりにする巨人に驚くだけでなく、イブキは自ら招いたとはいえ、無意識に口にしたミケの名前に戸惑っていた。
正面を見据えるヒストリアはイブキに再び温かみを帯びた声を掛ける。
「イブキさん、ありがとう!」
「どうしたの、突然?」
今度は礼をいうヒストリアにイブキは戸惑わされた。エレンへのボヤキがイブキに移ろうとしたいた矢先、ヒストリアの言動に、皆は自然にそれを止めていた。
フリーダとユミルへの懐かしい思い返しを一人で成し遂げるイブキに対して、素直な気持ちが表れていただけである。
「前に二人だけで話したとき『会いたい人がいれば、生きていける』って私に言ってくれたでしょ?」
「うん、そうね…」
「今日ね、それを気づかせてくれたんだ」
「そんな、私は…!」
イブキはエルヴィンからヒストリアの警護を命じられたことがあった。その当時は直にエルヴィンから与えられた仕事でもあり懸命に努めていた、ということを思い返す。
晴れやかなヒストリアの横顔に暗殺者としては決して得られなかった温もりのある達成感をイブキはその心で感じていた。イブキの戸惑いは一瞬で消えうせ、ヒストリアと二人、困難な状況でも迷いのない笑顔がその顔に宿る。
「今、イブキさんが会いたい人って、団長なんでしょ?」
「もう、ヒストリアまで…!」
大人しい女の子、という第一印象だったヒストリアに投げかけられ、イブキは目を見張ったが、それも成長の証と、唇の端を上げる。
「私も生きて絶対に会いたい人がいるの! イブキさんだって、ここで生き抜いたら団長に会えるんだよ!」
語尾に力を入れ、イブキの手のひらを改めてぎゅっと握る。
ヒストリアの中で何か変化が起きている。
それは確実な成長だと感じ、イブキは気弱になりそうなっていた自分の心に問う。
(…私は皆の役に立っている…? ヒストリアは自分の人生に抗うことを覚悟している…)
今度はイブキがヒストリアの手を握り返す。
彼女の励ましを受け入れたことを示すようにその力は強くて熱い。
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- 5 : 2015/02/17(火) 11:41:42 :
- もう一方の手のひらで、イブキは自分の胸を宛がい、再び心に問いかける。
(ミケ、私は…あなたにも…もう一度、会いたい)
(俺は…いつもここにいる――)
ミケの低くても柔らかい、いつもの声がイブキの胸に沁み渡り、声に出さずともイブキは嬉しさで目を大きく見開く。宛がう手のひらには彼の温かみも伝わっていた。
エレンが肩を落し、皆の顔色を伺って、天井を見上げたかと思うと、涙が頬に零れ落ちる。
ケニーに斬りつけられ、額から流れていた血は止まり、すでに固まっていて、涙と混ざり合うことはなかった。
「オレ…役立たずだったんだ……人類の希望なんかじゃなかった」
弱気になるエレンにイブキの胸は痛くなる。それでも構うことなく、104期の同期の皆はエレンへの不満を口々にする。
「ちょっと、みんな…!」
皆の不満を聞いて驚くも眼差しの強さを感じ、わざと発破をかけているとすぐさま気づく。
長い付き合いの皆は、エレンに不満をぶつけ、彼のやる気を引き出すのであろうとイブキは睨んだ。
今度はリヴァイの横顔を見やる。何かを思い出している様子だが、あえてイブキは声を掛けない。
目の前の困難を打破する何かを考えているように見えた。
相変わらずの冷めた眼差しがエレンに注がれても、リヴァイの彼を頼りたい気持ちが込められた。
「――毎度、お前にばかり、すまなく思うが…エレン、好きな方を選べ」
エレンとリヴァイの顔を交互に見やるイブキは二人が同じことを考えていると感じる。何を選ばせるのかわからないが、これまで築いた二人の関係がリヴァイに言わせ、エレンがそれに応えようとする。
その絆には入り込めない、イブキはただ二人を見守る、彼女はそれを選ぶことにした。
エレンが突然、ロッドの黒いバッグから飛び出て、傍らに転がる小瓶を手に取った。次の瞬間、雄たけびを上げながら、自分が繋がれていた突き出した岩の頂へ再び突進していく――。
「エレン!?」
思いがけないエレンの動きに、イブキは咄嗟に自分の右手を彼の背中に向かって伸ばす。
だが、彼が背負った決意を感じると、その手をゆっくりと下ろしていた。
「あなたの部下は…どこまでも勇敢なの…エルヴィン…。右腕を失っても、困難に立ち向かう…あなたの部下らしい」
微笑んでエレンの背中を見送る。エレンが頂に立ったと同時に手に持っていた小瓶を口に含んで噛み砕き、次に彼の身体から爆発音が轟き始める。巨人化して周囲に放つ閃光をイブキは眩しがり、目元にその手のひらを宛がう。
エレンの身体から放つ光は人類の希望であって欲しい、とイブキを始め皆は強く願っていた。
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- 6 : 2015/02/17(火) 11:41:57 :
- ★あとがき★
いつもありがとうございます。
今回は最近の作品に比べて短い内容で、ヒストリアの内面の変化に注目してみました。
原作の動きが激しくて、私は嬉しい戸惑いで困ってしまいますが、
読みながら、イブキはこの辺りにいそうだな、って想像(妄想)しながら毎回仕上げています。
ですが、エルヴィンがまたなかなか出てこないことが、寂しい限りですね…。
ハンジも気になるところですが、エルヴィンが次号に出てくるよう願うばかりです。
ミケは守ってくれる存在で、肉体はなくても今はイブキの傍にいられるのはミケなのかもしれないです。
また引き続きよろしくお願いいたします*\(^o^)/*
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまでお願いいたします!
⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
★Special thanks to 泪飴ちゃん(•ㅂ•)/♡love*
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