ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

リコ「私はチョコになる」バレンタイン記念SS

    • Good
    • 3

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2015/02/08(日) 22:09:07
    リコ「私はチョコになる」

    リコ「私は蝶になる」
    http://www.ssnote.net/archives/9810

    エルヴィン・リコ「ユトピア区☆湯~トピア温泉物語」モブリット・ハンジ
    http://www.ssnote.net/archives/13096

    上の二作と繋がりがあります
    もしよければ読んでいただければより楽しめる内容になっています♪

    エルリコ、モブハンのバレンタイン話です♪

    ネタバレは単行本

    よろしくお願いいたします
  2. 2 : : 2015/02/08(日) 22:09:40
    ─トロスト区突端壁上─

    今日の任務も終わりに近付いている

    ふぅと肩で息をすると、単眼鏡で壁の外側の地平線をぐるりと見渡す

    特に異常は見当たらない

    なんとか平穏に一日が過ぎ去りそうだ

    そう思った時だった

    「リーコちゃーん! 」

    夕焼けの静けさのなか、響き渡るすっとんきょうな声

    この声は紛れもないあの人だ

    「ハンジさん! 」

    私は嬉々として振り返った

    ハンジさんは宙に浮いていた

    私の目の前で身体をぐるりと一回転させて、スタッと地面に降り立った

    かっこいい立体機動に、私は惚れ惚れした

    「やあ! リコちゃん、迎えに来たよ! 」

    ハンジさんはそう言うと、私に手を差し伸べた

    「ハンジさん、こんばんは。迎えに来たって、何の話ですか?」

    私は、何かハンジさんと約束しただろうかと脳裏で考えたが、思い付かなかった

    「いやあ、明日は大事な日だからさ、リコちゃんと頑張ろうかなと思ってね! 」

    「明日?何かありましたっけ?」

    私はきょとんとした
  3. 3 : : 2015/02/08(日) 22:11:08
    「明日はさぁ、バレンタインだよ! 」

    ハンジさんは目を血走らせながら叫んだ

    「な、なんか気合い入ってますね……」

    私は思わず後ずさる

    だってなんか良からぬ事を考えている様にしか見えないんだもん

    「女の子から告白できる大チャンスの日だよ! 」

    「そうですけど、ハンジさんはもうモブリットさんとラブラブカップルじゃないですか。告白しなくていいでしょう?」

    「いやあ、駄目だよ! マンネリ化している私たちに、そろそろ新しい風を吹き込まないと、飽きられてしまうじゃないか! 」

    ハンジさんは拳を握りしめて力説した

    「モブリットさんは飽きるような方じゃないですよ。誰よりも平穏を望んで……」

    「びっくりさせたいんだよ……くふっくふっくふっくふっ」

    「その怪しい含み笑い、止めてください、ハンジさん」

    私は肩をすくめた
  4. 4 : : 2015/02/08(日) 22:11:48
    「要するに、どっきりを仕掛けたいんですね」

    結局ハンジさんは駐屯兵団の兵舎にある、私の部屋にまで押し掛けてきて、話し合いをすることになった

    「そうなんだよ、何がいいかなあ。リコちゃんが仕掛けるどっきり! 」

    「ちょっと待って下さい! 嫌ですよ。スミス団長にどっきりなんて、逆にどっきりさせられるに決まってますし」

    私はブルッと震えた

    スミス団長の思考は私たちの想像をはるかに超えるところまで、一気に拡げられる

    私が到底騙せる相手ではないんだ

    「じゃあさ、ドキッとさせない?女の力で。それならいいだろ?」

    「……そうですね、そっちの方向なら」

    私は頷いた
  5. 5 : : 2015/02/08(日) 22:12:24
    とはいえ、女の力でドキッとさせるなんて、やり方がわからない

    どうすればいいんだろう

    そう思った時だった

    「やっぱりさぁ、ドキッとさせるにはイメチェンが必要だよね! 」

    「そ、そうですね」

    私は相づちを打った

    「例えばさぁ、リコちゃんはかわいいワンピースを着てさ、私はぴしっとした男物スーツを着るんだ。それで、いちゃいちゃするとかさ! 」

    「ちょ、ちょっと待って下さい! 私はともかく、ハンジさんがスーツはダメでしょう?」

    「いいや、リコちゃん。いいかい?ドキッとさせるには、一番いい方法なんだよ。男装の私とリコちゃんが怪しい関係ですって見せかけたら、ドキッとするよ、エルヴィンも!」

    ハンジさんはナイスアイデアとでも言いたげに、うんうんと一人頷いた

    「ドキッとなんかしませんよ! いい見世物みたいに扱われるのがおちですってば!」

    私はぶんぶん首を振った
  6. 6 : : 2015/02/08(日) 22:13:15
    「私は完璧に男になりきるよ。そしたらエルヴィン絶対に焦るって。あの無敵な鉄仮面が歪むのを見られるかもしれない! くふっくふっ」

    「そ、そんな……無理ですよ! 」

    「リコちゃん御願い……協力してくれよ。私もたまにはエルヴィンを騙したい」

    ハンジさんは私の顎に手をかけて、じっと見つめながらそう懇願してきた

    顔にかあっと血が上る

    かっこいい……普通に

    れっきとした女性なのに、そこらの男性よりよほど端正な顔立ちで、イケメンなんだから、この人は

    「で、でも……」

    「リコちゃん?うんていわなきゃ、キスしちゃうよ?」

    ハンジさんが更に私に顔を近づけてきたので、私は首をぶんぶん振った

    「あーっだめだめ! だめですよ、ハンジさん! わかりました、協力しますから……でも、チョコはちゃんと作りましょうね?」

    「オッケー!チョコは作るよ!ネタばらしで渡せばいいよね?」

    というわけで、私はなぜか男装のハンジさんとデートするはめになったのだった
  7. 7 : : 2015/02/08(日) 22:14:08
    ─モブリットの部屋にて─

    「モブリット、どうだい?似合う?」

    ハンジはモブリットの私服から、一張羅のスーツを取り出して勝手に着込んでいた

    「ハンジさん、勝手に何を」

    上官の奇行に悲しくも慣れているモブリットは、さほど驚かない

    ただまたおかしな事をしているな、と肩を竦めた

    「いやあ、私女の子が好きになっちゃって!だからナンパしに行くんだよ」

    「はあ、そうでしたか」

    「……あんまり驚かないんだね」

    ハンジはふて腐れた

    もっと焼きもちなり妬いてくれると期待していたのだ

    この副官兼恋人は、あまり感情を表に出さない

    自分を好きだと言ってくれる事も稀だ

    ハンジとしてはもう少し愛情表現をしてもらいたいがための嫉妬大作戦なのだが……どうやら上手くは行かなさそうだ

    「驚かないと言いますか、いきなり女の子が好きになったとかいう話し自体が眉唾物ですし、ナンパをしに行くとおっしゃいますが、きっとなにかを企んでいるんだろうとしか思えませんし……」

    「君はいつもそうだ。いつも冷静で熱くならない。私が一人恋愛に息巻いてる様にしかならない。もう嫌けがさした。だから、本気で女の子が好きになったの。もう君とは付き合えないから! 」

    ハンジは逆ギレ気味にそう言い放つ

    「そうですか……。あなたが私と付き合えないと言うのであれば、私も納得するより他ありません。嫌気をささせてしまってすみません。その女性とどうぞお幸せに」

    モブリットは静かにそう言った

    ハンジはきゅっと唇を噛み締めたまま、無言で部屋を飛び出した
  8. 8 : : 2015/02/08(日) 23:03:27
    モブリットw冷静ねw
    そして、ハンジさんの焼きもち作戦…可愛い!♪くふっくふっくふっ←移った
    リコちゃん可愛い♪くふふっ
    ロメ姉さん、期待です♪
  9. 9 : : 2015/02/09(月) 07:51:38
    >いんこ分隊長☆
    モブリット冷たいw
    ハンジさんもたまには可愛くしなきゃね!女の子?だし!
    くふっくふっこわいよww
    がんばります♪
  10. 10 : : 2015/02/09(月) 07:52:06
    ─エルヴィンの部屋─

    「やあ、リコ、珍しいな。わざわざ調査兵団にまで会いに来るとは」

    「実は、私、その……好きな人がで、できました」

    リコは頭の中で、ハンジに教わったセリフを思い出しながら、しどろもどろに話をした

    「ん?どういう事だ?俺以外にという意味かな?」

    「はい、あの……そうです」

    「ふむ」

    エルヴィンは青い瞳をリコに向けた

    その全てを見透かされる様な目を向けられて、リコは目をそらした

    「リコ」

    「は、はい」

    リコが恐る恐るエルヴィンを見た

    エルヴィンは優しげな笑みを浮かべていた

    そのエルヴィンがゆっくり言葉を発する

    「……わかった。で、俺はどうすればいい?」

    「えっ?!」

    リコは目を丸くした

    「何か企んでいるんだろう?差し金は……ハンジか」

    「……あっ、あの……」

    狼狽えるリコに、エルヴィンはそっと手を伸ばし、頬を撫でた

    「可愛いリコのためだ。たまには騙されてやるさ。その代わり……バレンタインチョコには期待しているよ」

    「エルヴィン……はい、期待して下さい」

    リコはエルヴィンの胸に飛び込んで、目を閉じたのだった
  11. 11 : : 2015/02/09(月) 07:52:46
    リコが頬を染めながら部屋を退出した後、エルヴィンは顎に手をやりながら思考を巡らせた

    「俺の焦る顔でも見たいがために、しょうもないどっきりでも考えたんだろうな。ハンジのやつめ」

    そしてエルヴィンは、隣の部屋につめている兵士にこう言った

    「すまないが、モブリットを呼んでくれ」

    こうして、数分後にはモブリットが団長室に参上した
  12. 12 : : 2015/02/09(月) 17:29:16
    「なるほど、リコさんがそんな事を……」

    エルヴィンの話を聞き、モブリットはため息をついた

    自分の上官が何やら企んでいる事くらいは理解できたが、よもやリコまで使ってくるとは……

    そう思うと胃が締め付けられるように痛くなった

    「いや、モブリット。君を責めているわけではないよ。ハンジは君に、好きな人ができたと言ったんだな?その相手がリコか。ならばやはり、どっきりのターゲットは俺と、君だな」

    「どっきり、ですか」

    「ああ。大方俺と君があわてふためくのを見たいんだろう。どうする?騙されてやるか?」

    エルヴィンの問いに、モブリットはこめかみを指で押さえた

    「俺はともかく、団長が騙される事は……」

    「俺はリコのためにやる。あいつには勝てないんだ。とっておきのチョコが待っているしな」

    エルヴィンはそう言うと、不敵な笑みを浮かべた

    「でしたら俺も、騙されておきますよ……気は進みませんが」

    「ああ、そうしてやれ。ハンジはああだが一応は女。君にもたまには焼きもちなり焼いてほしい年ごろなんだろうしな……ははは」

    エルヴィンはそう言って笑った

    「もう長い付き合いですのに、まだ焼きもちを焼かなければならないんでしょうか」

    モブリットはため息混じりに呟いた

    「いや、長くてもたまには愛の言葉の一つくらいささやいてやるべきだそ、モブリット。ベッドの上以外でな」

    エルヴィンはモブリットの肩をぽんと叩いた

    「はい、わかりました。精進いたします」

    モブリットは頷き、敬礼を施したのであった
  13. 13 : : 2015/02/09(月) 17:30:07
    「リコちゃん、上手く言えた?」

    「……あの、そ、そうですね。言われた通りに言いました」

    ハンジの部屋にて、リコはチョコを砕きながら言った

    「そっかそっか! くふっくふっくふっ」

    実はエルヴィンにはバレていたが、ハンジの怪しげな笑みを見ていると、とてもじゃないがその事までは言えなかったリコであった

    「モブリットさんの方はどうでしたか?」

    「……ああ、全く動じる素振りもなく冷静でさ。君とは付き合えないからって言っても納得されて。私ってなんなんだろ」

    ハンジはふて腐れた表情で言葉を発した

    「そうだったんですね……。でも、モブリットさんはハンジさんを大切に思っているはずですよ。いつも甲斐甲斐しくお側についてらっしゃいますし」

    「副官としてだよ。今回の事で何となく私の独りよがりだったんじゃないかって思えてね」

    ハンジはため息をついた

    「ハンジさん、そんな事は考えずに、バレンタインを楽しみましょ! もしモブリットさんの気持ちが離れていると感じるなら、チョコで振り向かせましょうよ! 」

    リコはそう言うと、ハンジに板チョコを押し付けた

    「……そうだね、考えても仕方がない。チョコでも作って気をまぎらわそう」

    「はい、そうしましょ! クッキーも作りましょうね、ハンジさん」

    リコは笑顔でそう言うのだった
  14. 14 : : 2015/02/10(火) 03:04:21
    スレタイ吹いたw期待。
  15. 15 : : 2015/02/10(火) 07:32:10
    >とあちゃん☆
    ありがとう!
    スレタイ通りだとヤバイ展開にしかならないねw
  16. 16 : : 2015/02/10(火) 08:47:26
    「チョコを湯煎で溶かして、クリームを加えて、よーく混ぜるんですよ! 」

    「こんな感じ?リコちゃん」

    ハンジはリコの真似をするが、どうも手つきが覚束ない

    「ハンジさん、一杯下にこぼしてますよ……あはは」

    リコはハンジのその必死な姿に、頬を緩めた

    ハンジはこう見えても、泣く子も黙る調査兵団の分隊長、幹部中の幹部

    本来ならば、背中を丸めてチョコを混ぜる様な人物ではない

    そういうリコも、二万人を越える駐屯兵団の精鋭班の班長

    ハンジと並ぶほど、いやそれ以上のエリートだと言える

    人類の存亡を担う勇敢な女性兵士二人は、今だけはその職務を忘れて、手作りチョコに取り組んでいるのであった
  17. 17 : : 2015/02/10(火) 08:57:41
    「チョコブラウニーも完成しましたし、次はクッキーですね!生地を寝かせておきましたから、作りましょう! 」

    「いろんな型抜きがあるんだねぇ。星とかハートとか」

    「ハンジさんの好きなように、型を抜いて下さいね?」

    リコはそう言うと、早速型抜きを始めた

    ハンジも真似て型抜きをしていたが、やがて何か考えたのか、型を使わずにクッキーの形を整え始めた

    「……ハンジさん、何を作ってるんですか?って、可愛い! 上手ですね! 」

    リコはその作業を覗くなり、歓声を上げた

    「恥ずかしい、あんまり見ないでよ、リコ」

    ハンジは慌てて作っている物を隠した

    「いいえ、上手ですよ! きっと喜んでもらえます!私も作ろ! 」

    リコはハンジと仲良く、クッキー作りに勤しむのであった


  18. 18 : : 2015/02/10(火) 17:36:40
    「クッキーも、美味しそうに焼けましたね! 」

    リコは沢山のクッキーを目の前にして、満足げだ

    「ああ、美味しそうに焼けたね。まさか私にクッキーを手作り出来る日がくるとはね」

    ハンジは上手く焼き上がったクッキーを一つ摘まんで、感慨深げに呟いた

    「それも全て、愛する人のためですよね、うふふ」

    「……何だか、そう言われると恥ずかしいんだけどな」

    ハンジは照れて鼻の頭を掻いた

    「そう、それですよ!ハンジさん! 」

    リコは唐突にハンジの手を取った

    「な、何?」

    「モブリットさんも、恥ずかしいんですよ。男性って、自分から好きとか愛してるとか可愛いだとか、言い辛いものです。付き合いが長ければ長いほど。特に、モブリットさんは真面目な方ですから余計に」

    リコは真摯な眼差しをハンジに向けてそう言った

    「そうかもしれないけどさ……付き合えないからっていったら、その女性とお幸せにとか言いやがったよ?!あり得ない」

    「……確かにそれは言い過ぎだと思いますね。売り言葉に買い言葉なんでしょうけど……」

    リコは何かを考える様に、視線を天井へ向けた
  19. 19 : : 2015/02/10(火) 17:44:53
    「そうだ! どっきりの方向転換しましょ! 」

    リコは突然ぽん、と拳で手のひらを叩いた

    「方向転換?」

    「はい! モブリットさんにどっきりを仕掛けるのは変わらないんですが、少し手法を変えましょう! 」

    リコは目をきらきらと輝かせた

    「手法を変える?」

    ハンジは首を傾げた

    「はい! そのためには協力してくれる人を探さなきゃ! エルヴィンに相談してみます! 」

    「ちょ、ちょっと待って?エルヴィンに相談って、どっきりの相手に相談するのは……」

    「あ、実はエルヴィンにすぐにバレちゃったんですよ。騙されてあげると言われたんですけどね。じゃあちょっと待ってて下さい! 」

    リコはそう言うなり、ハンジの部屋を飛び出して行った
  20. 20 : : 2015/02/10(火) 18:00:27
    「……手法を変えるって何だろう?っと、とりあえずクッキーをラッピングしていくかな」

    ハンジは可愛い袋に慎重に、クッキーを入れていく

    いろんな形のクッキーの中には、いびつな物もあった

    それをパクっとつまみ食いした

    「旨い」

    ハンジはクッキーの旨さに思わずもう一つつまみかけたが、寸前でやめた

    「つまんでいるうちに無くなりそうだ。リコにどやされてしまうよ」

    そう呟いて、またクッキーの仕訳とラッピング作業を再開させたのであった
  21. 21 : : 2015/02/10(火) 21:55:05
    「ただいま戻りました、ハンジさん」

    ハンジがクッキーをラッピングしていると、程なくしてリコが部屋に戻ってきた

    「お帰り、リコちゃん。どうだった?話は」

    「ばっちりです! エルヴィンに作戦立案してもらいました! 」

    リコはそう言いながら、手にしたメモの束をハンジに示した

    「作戦立案?エルヴィンが?何だか怖いんだけど……」

    「大丈夫ですよ! ハンジさんのためにエルヴィンが考えてくれたんですから」

    リコは満面の笑みを浮かべていた

    「リコちゃん、楽しそうだね……」

    「えっ?!そうですかねー。ハンジさん達のためですからね、うふふ! 」

    リコの不敵な笑みを見て、ハンジは背中をぶるっと震わせた

    「なんかリコちゃん、エルヴィンに似てきてない?」

    「うふふ、光栄ですよ。それより、作戦について目を通しておいて下さいね?明日決行しますからね」

    リコはハンジにそう言って笑顔を見せたのであった
  22. 22 : : 2015/02/10(火) 23:01:33
    リコが帰った後、作戦案を見ながらハンジは頭を振った

    「これ、まじでやるの……?嫉妬させるじゃすまなくなる気しかしないんだけど。いや、そんな事はないか。第1モブリットが本当に私を好きかどうかも、今となってはわからないしね。嫉妬以前の問題かもしれない」

    ハンジははぁ、とため息をついた

    そして、作戦に必要な物を衣装棚から探り当てる作業に入った

    「スカートなんてはくの、何年ぶりだろ……」

    ハンジはそう呟きながら、一枚だけあったワンピースを取り出した

    「はけるだろうか……太ったりはしてないはずだけどね」

    体にあてながら、またため息をひとつついた

    「着たくないけど、リコちゃんに言われたしなぁ。眼鏡の妹には勝てないんだよね」

    ハンジは意を決して、ワンピースに袖を通してみるのであった

  23. 23 : : 2015/02/11(水) 15:48:01
    翌日の2月14日

    モブリットに嫉妬させよう大作戦当日

    「今日、実は急用が出来て、人と会う事になったんだ」

    今朝、開口一番そう言ったハンジと共に、モブリットはトロスト区の街を歩いていた

    誰と会うかは知らないが、見たことがない格好をしているハンジに、内心首を傾げるモブリット

    初めて見る、上司のスカート姿

    ハンジが足を出した服を着るなど今まで一度もなく、これから会うという人物が上司にとってどうやら特別な存在であるらしい事だけはわかった

    「あっ、この店だ。よく来たんだよね、昔は二人で」

    そう言って立ち止まったのは、おしゃれなカフェだった

    「そう、なんですか」

    「ああ、甘い物も美味しくてね。コーヒーが絶品なんだ。って、君とは来たことが無かったか!」

    「はい、分隊長」

    モブリットは頷いた

    確かにモブリットは、この店には一度も来たことが無かった

    昔二人で来たということは、付き合っていた人とでも来たんだろうか

    何となくそう思ったモブリットであった

    心がほんの少し、ざわついた気がした

  24. 24 : : 2015/02/11(水) 16:02:04
    しばらく店の前で待っていると、一人の男性が声をかけてきた

    「やあ、ハンジ。ひさしぶりだね」

    その男はにこやかな笑みを浮かべていた

    「おっ、ひさしぶり! 相変わらずいい男だね! 」

    「そうかな?かなり老けたと思うけどね。っと、こちらの方は……噂の副官殿?」

    男はそう言いながら、モブリットに向き直った

    「はい。分隊長がお世話になるようで……宜しくお願い致します」

    モブリットは頭を下げた

    「いやあ、世話だなんてそんな事はできないですよ。しばらく会っていなかったので、懐かしい話でもと思いましてね」

    「憲兵は暇だから、トロスト区の出張ついでに呼ばれたってわけ」

    「暇じゃないさ。毎日忙しいよ、上司の尻拭いでな」

    「そうか、じゃあ今度手土産にトイレ紙を持っていくよ」

    ハンジはそう言うと、胸をとんと叩いた


  25. 25 : : 2015/02/11(水) 17:45:12
    「トイレ紙って……もっと色気のある土産はないのか?」

    「そんなもんあるわけないだろ……ははっ」

    男の言葉に、ハンジは彼の肩にポンと手を置きながら笑った

    「まあ、君は昔から変人だったしな」

    「そんな変人を相手に選んでたのは誰だっけね?」

    「……我ながら、勇気があったと思っているよ」

    男はハンジと目配せし合った

    どうやら二人は訓練兵時代に付き合っていた関係らしい事が、端から様子を見ていたモブリットにもわかった

    そして彼は、愉しそうに話している上官を目にして、なんとも言えない複雑な感情に揺さぶられていた
  26. 26 : : 2015/02/11(水) 17:58:34
    「では、私はこの辺で失礼します」

    モブリットはそう言って頭を下げた

    さすがにせっかくのひさしぶりの逢瀬を邪魔するのは気が引ける、そう思ったのだ

    彼にしてみれば、ハンジはれっきとした彼の恋人であるはずだから、この憲兵の男と一緒にいようとする恋人が気にくわなければ、それを諌める事は不自然ではない

    だが、モブリットにはそれが出来なかった

    彼にとってハンジはあくまで上官であり、自分はその下の立場だ

    しかもハンジは今や調査兵団でトップに限りなく近い存在

    そんなハンジに対して、任務以外の事でとやかく言いたくはないし、言えるような立場であるとも自分では思っていなかった

    「帰っちゃうの?モブリット」

    ハンジの言葉に、モブリットは頷く

    「はい、またお迎えに上がりますから」

    「俺がちゃんと送り届けるから、大丈夫ですよ。副官殿」

    男の言葉に、それが心配なんだよなんて勿論言えやしない

    「ではお言葉に甘えて、ハンジさんを宜しくお願い致します」

    モブリットはそう言うと、踵を返した




  27. 27 : : 2015/02/11(水) 19:13:23
    兵団へ帰る道すがら、モブリットは様々な考えを脳内で巡らせる

    ……確か昨夜は男装して女の子をナンパするとか言っていたはずだ

    相手はリコさんだと団長からきいた

    だから、騙されておこうと心に決めたのだ

    ところがそれが急展開、男装以上に驚きのワンピース姿で、昔の男とデートだ

    そう、デートと言って差し支えない状況だ

    ワンピースなど、自分と一緒にいた時にすら着用する事はない

    それほどの相手だと言うことか……おしゃれをして、女を前面に押し出したいくらいの相手だと

    確かに、男である自分から見ても、彼はいい男であると断言できた……あくまで見た目は、だが

    彼女が付き合っていたというのだから、人間的にも出来た男なのだろう

    加えて憲兵だ、成績も優秀

    自分はどうだ

    成績はともかく、あの男に勝てる要素が一つも思い付かない

    「……だめだ、何だかおかしい」

    モブリットは頭を振った

    言い様の無い不安に苛まれながら、それを振り払うかの様に……

  28. 28 : : 2015/02/11(水) 20:44:22
    「モブリットさん、何だか変な顔してましたね、エルヴィン」

    「そうだな、とりあえず作戦第1段階成功と言えるかな」

    サングラスにロングコートにハンチング帽を被ったでこぼこコンビ……エルヴィンとリコは、建物の影に隠れながら様子を伺っていた

    「男性の心情を逆手に取った嫉妬作戦、すごい効果ですね」

    「いくらモブリットとは言え、ハンジを愛していれば、他の男に対してあんな態度をとられれば嫉妬もするさ」

    エルヴィンは頷いた

    「要するに、普段しないおしゃれだとか、自分が知らない店だとか、昔の男の出現だとか、そういう行動が、モブリットさんの嫉妬心を駆り立てているんですよね?」

    「ああ、そうだよ。だがモブリットはこのままだと自分から身を引きかねないな。あの煮えきらない様な切なそうな表情を見るに……」

    エルヴィンはそう言うと、顎に手をやりながら思考に耽った

    「ハンジさんは、あの人と本当に付き合っていたんですか?」

    「ああ。兵団が別れて疎遠になったらしい。たまたまハンジが誘われたと言っていてな、会わないつもりだったらしいが、作戦のために会わせた」

    「じゃあ、ひょっとしたらひょっとするかも?」

    リコが青ざめた

    モブリットとの仲を裂くために考えた作戦ではないからだ

    だが、エルヴィンは首を振った

    「リコ、大丈夫だよ。その辺り抜かりはない。心配するな」

    「エルヴィン……はい」

    リコは頷いて、エルヴィンの手をぎゅっと握りしめた
  29. 29 : : 2015/02/11(水) 23:32:44
    兵団本部にに帰還するなり、分隊長室に籠って書類の処理に取り掛かったモブリット

    今日は非番ではない

    こなさねばならない仕事は山ほどある

    ハンジも非番ではないが、もともと非番でも仕事に励む様な彼女だ

    モブリットはたまにはハンジに、ゆっくり非番を満喫させてやりたかった

    昔の男とのデートだと言う事に引っ掛かりが無いとは言い切れない

    だが、この際自分の気持ちはどうでもよかった

    ただ、ハンジの息抜きになるのであればなんでも良いと思っていた
  30. 30 : : 2015/02/11(水) 23:40:21
    書類の処理をしながらも、やはりハンジの事が気にかかる

    あの男に復縁を迫られているかもしれない

    いや、むしろ自分に愛想をつかした彼女自身が、あの男に復縁を迫る可能性もある

    何しろ昨夜は、付き合えないと言われて思わず肯定してしまったのだ

    言葉のあやだった、つい口から出てしまった、いわば売り言葉に買い言葉

    後悔は先に立たない

    案の定彼女は怒って部屋を飛び出して行ったし、翌朝普通に話し掛けてくれてホッとしたのもつかの間、ワンピースを着て他の男に会いに行くのだ

    もはや取り返しがつかない所まで来ているのかもしれない、とモブリットは思い、ため息をついた
  31. 31 : : 2015/02/11(水) 23:55:21
    日が沈み、夜の帳がおりた頃

    モブリットは未だに帰らないハンジを心配して、やきもきしていた

    夕食も全く喉を通らなかった

    迎えに行く時間を決めておけばよかったと思いながら、兵舎のハンジの部屋の前にいた

    もしかして、今日はもう帰ってこないかもしれない

    漠然とそう思って、頭を振った

    今からでも迎えに行こうか……とはいえトロスト区は広い

    どこにハンジがいるのか見当もつかない

    モブリットはこめかみを指で押さえた

    頭が痛い

    自業自得だとは言え、どうする事もできないこの状況に頭を抱えるしか術がなかった

    こんなに心配になるくらいなら、無理矢理でも連れて帰ってこればよかった

    理解のある恋人など演じなければ良かった

    ハンジに対してもっと、接し方を考えれば良かった

    沢山の後悔に苛まれ、モブリットはその場に座り込んでしまった
  32. 32 : : 2015/02/12(木) 07:36:20
    しばらく座り込んで、折り曲げた膝の上にひたいを乗せていると、コツコツと足音が耳に届いた

    顔を上げて音が近づいてくる方に顔を向けると、そこには……

    「……ただいま、モブリット。どうしたんだい?そんな所で座り込んで」

    紙袋抱えたハンジが、驚いたような顔をモブリットに向けていた

    「ハンジさん、おかえりなさい」

    モブリットは慌てて立ち上がった

    そして、ハンジが手にした紙袋を持とうと手を伸ばした

    「これはいいよ、私が持つから」

    ハンジはそう言うと、部屋の扉を開けて中に入っていった

    バタンと閉まる扉

    「……」

    モブリットはそれを無言で見送った

    その時だった

    ガチャリと扉が開く

    「何で入ってこないの?おいで」

    困った様な表情で手招きをするハンジを見て、モブリットはただこくりと頷いた

  33. 33 : : 2015/02/12(木) 12:34:52
    「ふぅ、さすがに一日中街をうろうろしたら疲れるね。慣れない靴だし」

    ハンジはそう言いながらソファに腰かけて、ヒールのある靴を脱いだ

    スカートがふわりとたなびき、その下からすんなりとした脚が覗く

    思った以上に華奢で、形のよい脚だ

    この脚が立体機動を楽々こなす様には見えない

    モブリットはその足をちらりと見て、何を思ったのか部屋を出た

    しばらくすると彼は、温かい湯をためたたらいを抱えて戻ってきた

    「温めましょう」

    モブリットは足元に跪くと、ハンジの足に手で触れた

    「あっ……モブリット、臭いよ?」

    「……大丈夫ですよ」

    モブリットはハンジの足をゆっくり湯に浸けた

    そして、足の指を丁寧に解していく

    「あぁ、気持ちいいね、それ」

    「そう、ですか……」

    慣れない靴で疲れた足を癒すべく、モブリットは優しくマッサージをした

    「寝ちゃいそうだよ……ふわぁ」

    「おやすみになって下さって構いませんよ」

    あくびをするハンジに、モブリットは視線を向けた

    ほくほくとした、幸せそうなハンジの顔

    それを見ているだけで、ざわついていた心が落ち着いた気がした
  34. 34 : : 2015/02/12(木) 14:55:03
    室内にはパシャ…という水音のみが鳴っている

    静かな夜

    ハンジはいつしか目を閉じていた

    モブリットはそれを見てしばし躊躇った後、足を湯から上げて丁寧にタオルで拭いた

    寝ているのかと思ったのだ

    だが、ハンジはすぐに目を開けた

    「今日は楽しかったな。懐かしい顔にも会えたしね」

    「良かったですね」

    どんな会話をしたのかなど、気にする必要はない

    こうして戻ってくれただけで、差し当たり十分なのだから

    「昔ね、彼と付き合ってたんだ。君以外にも物好きがいたんだよね……はは」

    「そうでしたか」

    モブリットの予想は正しかった

    やはりただの知り合いではなかったのだ

    「まあ、自然消滅したんだけどね。お互い道が別れたし、忙しくてね」

    「はい」

    モブリットはたらいを下げながら相槌を打った

    「本当は会うつもりなんか無かったんだ。でも、何度も誘われていたし、たまには懐かしい話をするのもいいかなってね」

    「何度も、ですか」

    「ああ。私も今や一応調査兵団の幹部。向こうも憲兵で同じくらい……いや、階級的には少し下だけど、幹部でね。仕事の話をしたかったらしい」

    仕事の話だけではないだろうと思ったが、口には出さなかった

    ハンジがそう言っているなら、それが正しいのだから

    「楽しい1日だったようで、良かったです」

    モブリットはそう言うと、立ち上がり頭を下げた


  35. 35 : : 2015/02/12(木) 17:08:03
    「たらいを下げてきますね」

    「……ああ、ごめんね、頼むよ」

    ハンジはモブリットがたらいを抱えて部屋を出たのを見送って、肩で息をついた

    「ふぅ……モブリット、元気なかったな。帰った時も床に座り込んでたし……」

    ハンジは先程からの副官の様子を反芻しながら呟いた

    エルヴィンの作戦が効を奏したのだろう

    男の気持ちを逆手に取って、揺さぶりをかける作戦が

    「とはいえ、モブリットのあんな顔は、あまり見たくはないな。嫉妬くらいしてもらいたいけどさ」

    憲兵の誘いが何度もあったのは事実

    復縁を迫られている事はない

    ただ若かりし頃の思い出を面白おかしく語り合っただけだ

    それでも、気を利かせて立ち去ったモブリットにしてみれば、彼と何を話しているのかもわからず、不安になったかもしれない

    帰宅時のあの様子から察するに、相当悩んだのがわかる

    「モブリット……」

    ハンジは俯いた




  36. 36 : : 2015/02/12(木) 18:17:55
    ─調査兵団の廊下─

    「ハンジさんたち、仲直りしますかね?あっ、モブリットさんが部屋から出てきましたよ。たらいを返しに行くみたいですね」

    「ああ。足を洗ってやっていたんだろうな。ずっと脚がいてえ脚がいてえと言っていたしな」

    リコとエルヴィンは、こっそり二人を尾行していた

    というか、先程までハンジと一緒に街をうろうろしていたのは他ならぬこのでこぼこコンビだったのだ

    ハンジは昔の男とは小一時間話して別れ、後はずっと三人でバレンタインのトロスト区をうろついていたのだった

    「モブリットさんはやっぱり元気なさそうですね。ため息ついちゃってますし」

    「まあ、ハンジもモブリットも、何が見えていなかったか、何を忘れていたのか、理解したと思うがな」

    エルヴィンはそう言うと、リコの頭にポンと手を乗せた

    「あっ、肘おきにしないで、エルヴィンったら! 」

    「ははは、丁度いいな」

    「もう……」

    リコは頬を膨らませた

    「とりあえず、部屋に戻らないか?買ってきた酒を飲みたい。あとはリコのチョコとクッキーをな」

    「……そうですね。あの二人の事ですから、きっと大丈夫ですよね?」

    リコは頭の上に乗っている手を退けながらエルヴィンにたずねた

    「ああ、多分大丈夫だ」

    「多分て! 」

    「心配するな。あいつらは切っても切り離せない間だ」

    エルヴィンはそう言うと、退けられた手をまた頭に乗せたのだった


  37. 37 : : 2015/02/12(木) 20:04:12
    ─ハンジの部屋─


    「ただいま戻りました。脚の具合は如何ですか?」

    モブリットが部屋に戻った時、ハンジはベッドの上に座って、足をマットレスの上に投げ出していた

    「うーん、まだ痛いかな。でも温まったし疲れが取れたよ。ありがとう、モブリット」

    ハンジは心配そうな表情の副官に笑顔を見せた

    「それなら良かったです。あの……ハンジさん」

    モブリットがおずおずと、ハンジに話しかけた

    「ん?なんだい?」

    「昨日は、すみませんでした」

    モブリットは頭を下げた

    ハンジは首を傾げる

    「何で謝るんだい?」

    「昨日、思ってもいない事を口走って、あなたを怒らせてしまいました」

    モブリットは頭を下げたまま、小さな声で言葉を発した

    「思ってもいない事?」

    「はい……」

    モブリットは視線を床に向けたまま、頷いた
  38. 38 : : 2015/02/12(木) 20:38:19
    「 あなたが私と付き合えないと言った事に対して何のリアクションもせず、挙げ句の果てにはその人とお幸せに、などと言ってしまいました」

    モブリットはそこまで言って顔をあげた

    ハンジは慈愛に満ちた表情をモブリットに向けていた

    「いいよ。私も君に嫉妬してもらいたくってやらなくてもいい行動を取ったしね」

    「嫉妬ですか……」

    「ああ。君はいつも側にいてくれるし優しいけどさ、あんまり愛情表現しないだろ?疑っている訳じゃないんだけど、たまには聞きたいなあとか思ってね」

    ハンジはそう言うと、鼻な頭をぽりっと掻いた

    「聞きたい?何をですか?」

    首を傾げるモブリットに、ハンジが頬を膨らませる

    「こら、とぼけるなよモブリット。わかってるくせに」

    「本当にわかりません」

    「嘘だ! こら、明後日の方向を向くんじゃないよ、モブリット! 」

    プイっと顔を背けるモブリットに、ハンジは声をあげた

  39. 39 : : 2015/02/12(木) 21:16:28
    「ところで、この紙袋の中には何が入っているんですかね」

    視線をテーブルの上のハンジが抱えていた紙袋に向けたモブリット

    だが、ハンジがまた声をあげる

    「こら、話をそらすなモブリット! 」

    「……私は何を言えばいいんですか?」

    モブリットは観念した様にベッドに歩み寄ると、真っ赤になった顔をハンジに向けた

    「わかってるくせに」

    モブリットはベッドの上に座るハンジに引き寄せられた

    胸に思いきり顔を埋める体勢になったモブリットを、ハンジはぎゅっと抱き締めた

    「モブリット、愛してるよ。ずっと君に側にいてもらいたい」

    モブリットはハンジの胸の中で、目を閉じた

    「私も、あなたを愛しています。誰よりも、大切に思っています。ずっと、側において下さい、ハンジさん」

    小さな声で、そう言うのだった
  40. 40 : : 2015/02/12(木) 21:34:49
    「……モブリット」

    「はい」

    「私の胸が気に入ったのかい?ずっと動かないけど」

    モブリットはハンジの胸に顔を埋めたまま、身動きひとつしなかったのだ

    「はい。これは私の枕なんで」

    「枕って君ね……って、あっ 」

    モブリットは胸に顔を埋めたまま、手をハンジの脚に伸ばす

    そして珍しくスカート姿で、剥き出しの生足をさらっと撫で上げた

    「ワンピース、よくお似合いですよ」

    「今更遅いよ。っていうか脱がす気まんまんな癖に」

    スカートを腿の辺りまで捲りあげられながら、ハンジは眉を引き絞った

    だがその顔は朱に染まっていた

    「脱ぎたくないのであれば、このままいたしますが……」

    「そんな事を聞くなよ、 バカリット! 」

    「……バカリットで結構です」

    モブリットはそう言うと、ハンジの唇に自分のそれを強く押し付けた

    もう遠慮はしない、そう決めた

    後悔するくらいなら、この人を自分の色に染めてしまおう

    お互いがお互い無しでは生きられない程、深く交わるのもまた一興

    こうして二人の甘いバレンタインの夜は更けて行く


  41. 41 : : 2015/02/12(木) 22:28:24
    「でね、この紙袋の中身は……じゃじゃーん! 」

    事を終え、全裸のままでハンジの紙袋の中身を確認する二人

    「これは……酒と、チョコと、クッキーですか」

    「ああ、そうだよ。甘いお菓子にあうお酒だってさ。これは、私の手作りチョコと、クッキー」

    ハンジはそう言いながら、モブリットの手にチョコとクッキーの袋を置いた

    「ハンジさんの手作り……胃薬が必要だ」

    「失礼だな君は! 大丈夫だよ、リコちゃんと一緒に作ったんだからね」

    「なら安心です……チョコ旨いですね」

    モブリットはチョコの包み紙を開けて、ぱくっと口にいれてそう言った

    「チョコブラウニーって言うんだよ。私にも、あーんして」

    「嫌ですよ。これは私のチョコです」

    モブリットはひょい、と後ろ手にチョコを隠した

    「けち! チョコ食べたいよ! あーんしてあーん」

    「仕方がないですね。ほら」

    モブリットはハンジの口に、ぽんとチョコを入れてやった

    「おいしーい♪酒飲も酒」

    ハンジはベッドの上で酒瓶のふたを開け、直接飲んだ

    「グラスにいれましょうよ……」

    「めんどくさいよ、ベッドから出るの。裸だし」

    ハンジはそう言うと、また酒をあおった

    「まあ、確かにめんどくさいですが……それよりクッキー、これはもしや、私の顔ですか?」

    モブリットはクッキーを一枚取り出してつまみながら言った

    「そうだよ。そっくりだろ?」

    「ええ、良く似てますね。頬が丸すぎる気がしますが」

    「いやいや、君のほっぺはこんな感じだよ?ぷにぷにしてて、可愛いの」

    ハンジはモブリットの頬をつつきながら言った

    「こんなに丸顔ですかね……」

    モブリットは頬をつつかれながら、なんとも情けない顔をした

    「いいじゃないか。私がスッとした顎のラインだし、足して二で割ったら丁度いいよ」

    「それはもしや、子供の話ですか?足して二で割るとか無理ですよ。どちらかの骨格にしか似ないと思いますし」

    「どっちに似ても可愛いって、間違いない!」

    ハンジはそう言うと、クッキーをぱくっと食べた

    「ああ、それは私の顔のクッキーじゃないですか。何の躊躇もなく食べないで下さいよ」

    「いいじゃないか。君は私のものだし、私は私の物なんだから」

    ハンジはそう言うと、不敵な笑みを浮かべた
  42. 42 : : 2015/02/12(木) 23:16:23
    「何ですか、その法則。私の物は私の物ですよ! 」

    「仕方ないなあ、私はモブリットの物になってあげるからさ」

    ハンジはそう言うと、上目使いでしなを作った

    「結構です。あなたの物はあなたの物。私の物は私の物でいいです」

    モブリットはクッキーをぱくっと口にして、神妙な面持ちを作った

    「やだよ。モブリットは私の物。もう離さないって決めたんだから」

    ハンジはすかさずモブリットの手にした紙袋を奪って、クッキーを横取りした

    「か、返して下さいよ! 私のクッキー! 」

    「私が作ったクッキーだから、私のだ! 」

    二人はベッドの上で、クッキーの奪い合いを繰り広げるのであった

    ………………全裸で

  43. 43 : : 2015/02/12(木) 23:31:59
    ─エルヴィンの部屋─

    「ふぅ、おいしいお酒ですね。クッキーにもチョコにもぴったり! 」

    リコは頬杖をつきながら、酒をちびちび飲んでいた

    「チョコもクッキーも旨いな。というか、その俺の顔型クッキー、一つわけてくれないか?リコ」

    エルヴィンは、リコが独り占めしている、エルヴィン似のクッキーを指差して言った

    「嫌ですよ。これは私のために作ったクッキーなんですから。エルヴィンをペロリとひとかみです、ふふっ 」

    リコはそう言うと、エルヴィン型クッキーをぱくっと口にいれた

    「痛っ」

    「痛いわけないでしょう?……あはは」

    顔をしかめるエルヴィンに、リコはお腹を抱えて笑った

    「良く似ているから、取っておいて皆に見せてやろうかと」

    「嫌ですよ恥ずかしい。でも、確かに良く似てますね、我ながら! まあリアルはもう少し不気味な笑みを浮かべてますけどね」

    「不気味ってリコ、酷いな」

    エルヴィンは顔をしかめた

    「だっていつも何考えているかわからないんですもん。っと……そろそろおいとましますね?明日朝から任務なので」

    リコはそう言うと、スッと立ち上がった

    エルヴィンも立ち上がり、おもむろにリコの身体を抱き寄せた

    「まてまて、まだ約束のとっておき、もらっていないぞ?」

    「……え?チョコならあげたじゃないですか。先程食べたでしょう?」

    リコは首を傾げた

    「違う。俺が欲しいとっておきは、それじゃない」

    エルヴィンはそう言うと、リコの口にチョコを投入した

    「あ……んっ?! 」

    口の中に甘い味が広がったかと思えば、突然口を塞がれる

    深く口付けながら……

    リコの舌の上で少し溶けた甘いチョコを、エルヴィンの舌は巧みに自分の口の中に移動させた

  44. 44 : : 2015/02/12(木) 23:37:32
    「な、な、な……」

    唇が離されて、何か一言言ってやりたいのに、リコの口から言葉はでなかった

    「リコからの口移しのチョコ、旨いよ。これでまた頑張れる」

    エルヴィンは涼しい顔をして、溶けた甘いチョコを堪能した

    「勝手に口移ししたんでしょう?もう、恥ずかしい……」

    リコは顔を真っ赤にした

    「まだまだチョコは沢山あるぞ。全部口移しで……」

    「しませんって! バカエルヴィン! 」

    「俺にばかって言うのは君だけだよ、リコ」

    エルヴィンはそう言うと、目を細めながらリコを優しく抱き締めるのであった
  45. 45 : : 2015/02/12(木) 23:39:29
    かくして二組のカップルは、バレンタインの夜に、更にお互いの愛情を確認しあったのであった

    どんなに辛い困難な道でも、小さな甘いごほうび一つで頑張れる

    それが彼らの強みである

    ─完─
  46. 46 : : 2015/02/12(木) 23:46:57
    師匠!!執筆お疲れ様です!!
    1番好きなシーンはモブリットの顔の形をしたクッキーを見て、頬が…ってところが可愛くて好きです!!さすがはモブハンの師匠!!
    そして、エルヴィンさん!!やってくれるとは思ってましたが!やっぱりエルヴィンは最強ですねwリコさんの口に……大人や!!
    ハンジとリコのチョコを準備するまでの過程も素敵&面白いです!!素敵な作品をありがとうございます!!次の作品も期待してます!!!
  47. 47 : : 2015/02/13(金) 10:26:33
    >EreAni師匠☆
    読んで下さってありがとうございます♪
    モブリットクッキー、私もほしいですw
    作ってみようかなあww
    エルヴィンはリコさんの前だけはっちゃけてます!
    大人可愛いw
    ハンジとリコの眼鏡コンビ、なかなかいいですよね!
    気に入っているので、また何か書きたいなあ♪
    次の作品、まだ未定ですが頑張ります♪
    師匠もファイトや\(^^)/
  48. 48 : : 2015/02/13(金) 17:11:14
    お疲れ様ですっ!!
    スレタイを見て、「あれ?これ見たことある…」と思って開いたら、88さんの作品でしたw
    「私はチョコになる」にクスッってなりましたがリコさん可愛いです!!
    エルリコ…末長く爆発してほしい(褒め言葉)
  49. 49 : : 2015/02/13(金) 18:16:38
    ロメ姉さん♪
    いたした...のかな??
    リコちゃんとエルヴィンのコンビ、可愛い♪
    ハンジさんのワンピース...くふっくふっ←気に入った♪
    次回にも期待です♪お疲れ様でした♪
  50. 50 : : 2015/02/13(金) 19:24:37
    >>48
    いちご大福さん☆
    読んで下さってありがとうございます♪
    スレタイねw私は蝶になるを知ってる方にはくすっとしていただけるかなあとw
    エルリコ末永く爆発w笑いましたw
    お腹いたいww
  51. 51 : : 2015/02/13(金) 19:26:45
    >>49
    ゆう姫☆
    モブハンはいたしました(^○^)
    エルリコ、でこぼこコンビなかなかいいですよねw
    ハンジさんのワンピース姿は美しいはずだ(*μ_μ)♪
    くふっくふっ
    いつも読んでくれてありがとう♪
  52. 52 : : 2015/02/13(金) 20:54:45
    スレタイで笑いましたww

    ハンジさんのくふっくふっがかわいいww

    クッキーの奪い合いのシーンが個人的に好きです!急に子どもっぽくなるモブハンかわいいなあw

    最後のエルリコのシーンにドキッとしました!

    読み易い文章&素晴らしいストーリーで面白かったです!

    次も期待してます、頑張って下さい(*`・ω・)ゞ
  53. 53 : : 2015/02/13(金) 21:12:06
    >>52
    まっちゃん☆
    わあ、コメントありがとうございます♪
    スレタイww狙いましたw
    くふっくふっくふっくふっ

    全裸でクッキー奪い合いですからね、分隊長に副長までなにやってるんですか!なんて二ファあたりにつっこまれてほしいw

    エルヴィンは大人なんであははw
    文章、まっちゃんに誉めてもらえるなんて凄く自信につながります!

    また頑張るね♪いつもありがとう!
  54. 54 : : 2015/02/13(金) 21:20:25
    ロメ姉お疲れ様です!

    甘甘なストーリー、美味しくいただきました((
    クッキー欲しい…羨ま

    エルリコいいですねぇ…
    最後!最後!流石大人だなぁと思いましたw

    また、他の作品も楽しみにしています( *`ω´)
  55. 55 : : 2015/02/13(金) 22:12:36
    >>54
    ぬこたん☆
    読んでくれてありがとう(*μ_μ)♪
    私もモブリットとクッキー食べたいよ!
    エルリコは二人とも大人びたかんじなのでね、うふふ(*´ω`*)
    最後ねwチョコになれたかしらw
    また頑張るね\(^^)/
    ありがとう♪

▲一番上へ

このスレッドは書き込みが制限されています。
スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。

著者情報
fransowa

88&EreAni☆

@fransowa

「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
「進撃の巨人」SSの交流広場
進撃の巨人 交流広場