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マルコ「君が笑顔でいられることを」
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- 1 : 2015/01/17(土) 20:09:44 :
- よろしくお願いいたします!
↓コメントはこちらにお願いいたします。
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- 2 : 2015/01/17(土) 20:13:38 :
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夜空はとても綺麗で、星がキラキラと光る。
草原の中で、うずくまる君を見つけると、僕はゆっくりと君に歩みよる。
君は肩を震わせていた。
マルコ「どうしたの?」
僕はそう言って、肩を震わせる君の髪に触れようとした。
金糸のような髪を風に靡かせる君は、きらびやかで美しい。
二人だけのこの風の音が微かに響く、この空間を照らす。
僕は君の美しい髪に触れた。
マルコ「あれ…?可笑しいな」
君の髪に触れることができない。何故だろうか、君の髪をすり抜けてしまった。
まるで、僕が本の世界では描かれた幽霊みたいじゃないか…。
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- 3 : 2015/01/17(土) 20:16:14 :
再び君の髪に触れようとする。
しかし、君の髪をかすることさえできない。
悪寒がする───
君の髪に触れる手が震え、汗がたれてくる…。
嘘だ、そんなの間違いだ。確かめるように、君の肩や腕に触れる。何度も何度も…、気が狂ったかのように。
しかし、君に触れることは叶わなかった。
マルコ「あはは…はは…」
僕は信じたくなかった。けれど、これが現実なのだろう。
僕は…もう、君に触れることはできない。
何故なら…、
マルコ「僕は死んでしまったんだ…」
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- 4 : 2015/01/17(土) 20:21:59 :
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僕は死んだんだ…。
そう、死んだんだ。
巨人に殺されたんだ、僕は。
死んだ時、安らかな光に包まれたんだ。少し眩しくて、温かくてこのまま眠ってしまいたいと思うような。
荒くなった呼吸を整えながら、僕は自分に言い聞かせる。
呼吸が規則正しいリズムに戻ると、君の目の前に立ち僕は君の顔を覗きこんだ。
君はその青く澄んでいる瞳から、大きな雫を流していた。
マルコ「どうして泣いているの?…」
そう聞いても、返事はない。当たり前だ、返事があるはずはない。
だけど、君にどうしても泣き止んで欲しい、そう強く思う。
だから、せめてもの思いで、触れることができないこの手で君の頭を撫でる。
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- 5 : 2015/01/17(土) 21:06:03 :
- 当然、君は僕に気付かない。
アニ「っ…、マルコ、何で死んじまったんだ…?」
君は雫を服の袖で拭いながら言う。
マルコ「涙を流すなんて、君らしくもないな…」
僕はそう呟く。君は普段、弱いところを僕には見せない。
それはプライドなのだろう。
アニ「約束…したじゃないか…!」
───約束。
確かにしたね、君と約束をした。君がまだ覚えていたなんて思わなかった。
きっと、君は忘れてしまうのだろう、そう思っていた。
けど、君は忘れていなかったんだね。
良かった…。
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- 6 : 2015/01/17(土) 21:11:38 :
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- 7 : 2015/01/17(土) 21:12:32 :
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夏のジメジメとした暑さに、僕は寝つけずにいた。
宿舎の部屋の窓を開けようかと思ったのだけれど、蚊や虫がはいってきては困る。窓も開けれず、寝つけない。それもそれで困る。
どうしようかと、頭を悩ませるだけで僕の額からは汗がつたう。
そうだ。それなら、外へと行こう。
そう思い立つと、僕は外へと向かった。
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- 8 : 2015/01/17(土) 21:20:01 :
外は暑いが、それでも風が吹いている分涼しく思える。
草原に着くと、風が吹いた。草原はカサカサと音を立てながら歌う。
その音が何とも耳に心地よく、思わずうっとりする。
空を見れば、満天の星。
キラキラと光る星は、絵に描いたようなもの。
そして主役となるであろう月は、艶かしく、少し怪しく輝く。
月や星空を見上げてから、僕は視線をゆっくりと下へとおとす。
すると、そこには金糸のような髪を束ね結わき、丘の先を見据えている者がいた。
─────綺麗、
そう自然と思わせる、その人物。
まるで、夜の主人公は月ではなく、その人物であるかのように思わせた。
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- 9 : 2015/01/17(土) 21:31:46 :
- 誰だろう…
僕はそう思い、その人物へと近づいていく。
近づくにつれ、その人物は女性であることや、小柄であることがわかる。
同期であることも、当然のことだろう。
その人物は、まだ僕に気づかず、草原の丘の先を見据えている。
声をかけようか、かけまいか悩むがここまできたのなら、かけるしかない。
マルコ「ねえ…」
そう声をかけると、その人物は咄嗟に振り返る。
振り返ると、その人物が誰かわかった。
対人格闘では、エレンに教えを乞われ教えたりしていて、訓練には比較的あまり積極的ではなく、
それでいて、訓練では大抵は良い成績を残す……、
マルコ「アニ…?」
そう、アニ・レオンハートだったのだ。
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- 10 : 2015/01/18(日) 14:45:03 :
- アニは青色の瞳に被さるはずの瞼を大きく開き、驚いたような表情をする。
よほど、丘の先に見いっていたのだろう。
アニは僕が口を開く前に、口を開いた。
アニ「どうしてあんたがここにいるの?」
これが、アニの発した第一声だった。まあ、無理もないだろう。
ギロリとアニの鋭い目が僕を捕らえ、僕を睨む。
まるで、刃の剥き出しにした猫のように、アニは僕を睨み付ける。
マルコ「どうしてって言われてもなぁ…。まあ、涼みに来たようなものだけど」
アニ「…そう」
マルコ「アニは何をしているの?さっきから、丘の先に見いっているようだけど」
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- 13 : 2015/01/20(火) 21:30:38 :
- アニはもう一度、丘の先へと視線をやる。その横顔は何かを思わせるような表情をしていた。
そして、指を指し僕を見た。
アニ「向日葵があるでしょう…?」
指を指した方向…、丘の先には向日葵の丘があった。
背の高い向日葵は、天を仰ぐように空へと花を向けている。
マルコ「確かに…、初めて見たよ」
あまりの多い数に、僕は驚く。
自分の知らないこんなところに、こんな近くに向日葵の丘があること、それ事態が僕を驚かせる。
アニ「向日葵を見ると、明るくなれるってみんな言うよね…」
アニは思わせるぶりに言うと、どこか悲しみが漂う表情をした。
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- 16 : 2015/01/23(金) 19:56:33 :
- マルコ「確かにそうだね。眩しいくらいの黄色い花弁を纏う向日葵は太陽みたいなものだからね」
アニ「そう…、太陽。太陽のようなもの」
そう言ってアニはうつむき、そして向日葵にまた視線をやる。
アニ「向日葵を見たら、嫌なことも忘れられるかなって思って、毎晩毎晩見ていたのだけれども、やっぱり忘れることはできない…」
悔しそうでも、悲しそうでもないアニの表情は、どこか僕は何も言えなかった。
アニには忘れることはできない過去がある。
アニのことはよく知らない。同期である、という情報以外、アニについては知らないのだ。
アニ「マルコはさ、過去を忘れる方法を知らない?」
無表情なアニに、僕はどうしたら良いのか戸惑う。
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- 17 : 2015/01/23(金) 20:03:29 :
- マルコ「わからない…」
僕はそう言って俯いた。
きっとアニは、僕の想像を絶する過去を送ったのだろう。
それは僕が理解などできるものではない。
けれど、その過去があるから、アニは今ここにいるのではないか、そう思う。
今のアニは、感情をできるだけ抑え込んでいる、そんな気がした。
あまり関わりがないけれど、それでもアニは感情を抑え込みすぎている。
そんな気がして、今のままじゃいけない気がした。
マルコ「アニはさ…、何で過去を忘れたいの?」
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- 18 : 2015/01/23(金) 20:07:01 :
- アニ「……」
アニはうつむき、僕の質問には答えない。
答えないのなら、しょうがないと思い、僕は再び口を開く。
マルコ「アニはさ、きっと僕の想像を絶する過去があるんだと思う」
アニは顔をあげずに、黙って僕の言葉に耳を傾けた。
マルコ「だけどさ、その辛い過去も含め、それがあるからこそ、君はここにいるんじゃないかなって思うんだ」
ハッと顔をあげるアニは驚いたような表情をしていた。
無表情なんかではなく、驚いたような。
マルコ「過去も記憶も、君の大切な財産だ。忘れるなんて、言ってはいけないと思う」
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- 19 : 2015/01/23(金) 20:13:19 :
- マルコ「君は向日葵のように、顔をあげることはできないかもしれないけど、それでも君は歩ける足がある」
アニ「…」
マルコ「向日葵のように明るくしなくちゃならないわけじゃない。けど、日当を歩けばいつかはきっと、その辛い過去も大切な〝思い出〟になる」
アニ「…思い出?」
マルコ「ああ、思い出だよ」
僕がそう言うと、アニは夜空を見た。
そして、大きな笑い声を響かせる。
アニ「あははは!やっぱり、あんたは良い人だね。あははは…あは」
夜空を見上げるアニの顔には、涙がつたう。
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- 20 : 2015/01/23(金) 20:17:06 :
- アニ「あんたのおかげで吹っ切れた気がする。過去は忘れることはできないけどね」
マルコ「そっか…」
アニ「ありがとう」
そう言って笑顔で涙を流すアニはとても綺麗だと思った。
まるで、夜の闇が突然晴れ、朝日がのほってきたようなそんな美しさ。
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- 21 : 2015/01/23(金) 20:23:30 :
- マルコ「あと、半年で訓練兵も卒団か…」
アニ「せいぜい死なないようにね…」
マルコ「アニって優しいんだね…、不器用だから勘違いされやすいようだけど。ジャンとそっくりだ」
アニ「何言ってんの?」
マルコ「アニ、約束してよ。死なないって」
アニだけではないけれど、同期が死んでしまうのは心が痛む。
それでいて、アニが本性を打ち明けてくれたことが嬉しくて、つい口走ってしまったのもあるけど。
それでも、アニには死んでほしくない。
アニ「あんたもどうせ、憲兵団に入団するんだろ?」
マルコ「そうだけど、それでもいいから…!」
アニ「…わかった、約束する」
アニは渋々約束をした。
マルコ「何に誓って約束しようか…?」
アニは向日葵を見てから、口を開く。
アニ「向日葵に誓って、私は死なない…」
アニが早くもそう言ってしまい、僕も慌てて言った。
マルコ「向日葵に誓って、僕は死なない…」
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- 22 : 2015/01/23(金) 20:23:50 :
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- 23 : 2015/01/23(金) 20:26:57 :
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マルコ「懐かしいなあ…」
僕はそう呟く。
半年も前のことだ。僕は死ななければ、憲兵団に入っていたんだろうな。
マルコ「ごめん…、アニ」
僕はそう言ってアニに言った。けれど、アニは返事をしない。
アニは震わせていた肩を、ぴたりととめて立ち上がった。
そして、涙を拭う。
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- 24 : 2015/01/23(金) 20:30:20 :
- 「アニ…か…?」
後ろから声をかけられ、アニはパッと振り返る。それにつられて、僕も振り返った。
アニに声をかけた人物は、僕の耳に馴染む声をしていた。
懐かしいと言うには早すぎて、だけれど懐かしい気がする。
きっと聞こえないけれど、それでも僕はアニに声をかけた人物の名前を口にする。
マルコ「ジャン…」
当然、ジャンは気づかない。
ジャンの顔は少し血の気がさり、暗い顔をしていた。
アニ「何でここに?」
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- 25 : 2015/01/23(金) 20:36:52 :
- ジャン「何でって、何となくだ…」
アニ「そう…」
アニはそう言うと、再びうつむく。
ジャンも何も言わなかった。
今すぐにでもジャン、アニ、君らと話すことができたらいいのに。
人肌の温もりを、感じられたら。
アニ「マルコ、憲兵団に行けなくて残念だったね」
ジャン「ああ…、何でアイツが死んだんだ…?俺みたいなのが生き残ってよ…」
アニ「それは…、マルコに運がなかっただけだよ…」
ジャン「そうだよな…、所詮はそんなもんなんだ」
アニ「マルコとね、一度話したことがあるんだ。その時にね、マルコは私があんたに似てるって言ってたんだ」
アニがそう言うと、ジャンは驚いたような表情をし、
ジャン「は?どういうことだ?」
アニ「さあね、私にもわからないよ。だけど、マルコは本当に良い人だったと思うよ…」
ジャン「当たり前だろ、マルコだからな」
アニ「うん…」
ジャン「アイツのことは忘れねえ。絶対に…」
アニ「そうね…」
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- 26 : 2015/01/23(金) 21:02:21 :
- アニ「マルコは、冷たくて無表情な私に、〝優しい〟って言ったんだ…」
ジャン「アイツは、俺みたいな馬鹿に〝優しい〟って言ったんだ…」
アニ「結局、似ているのかね?私達は」
ジャン「そりゃ、マルコに言われたからな」
アニはクスリと笑い、ジャンは空を見上げた。
アニ「本当に優しいのはマルコなのに。ありがとうってもう一度、伝えたい。マルコに…一度だけでいいから」
ジャン「何も伝えたえずに、アイツは逝っちまったからな…、全く」
僕は二人の会話を聞いていて、身体の震えが止まらなかった。
一度だけでいいから!
一度だけでいいから、話したい。
ありがとうと伝えたい。
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- 27 : 2015/01/23(金) 21:09:07 :
マルコ「アニ、ジャン…」
そう言っても、きっとアニとジャンには聞こえず、僕の姿も見えないのだろう…。
アニ「マルコの声がする…」
ジャン「馬鹿いえ、マルコは死んだんだ…」
聞こえている、聞こえるのかもしれない…、そう思うと心臓の鼓動がうるさくなる。
マルコ「アニ!ジャン!」
僕がそう叫ぶと、二人は僕の方に振り返った。二人は驚いたような表情をしていた。
ジャン「マルコ…か?嘘だろ…」
アニ「マルコ…」
何故、二人に僕が見えたのかはわからないけれど、二人に今すぐにでも伝えたいことがある。
二人に、伝えたなくてはならないこと。
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- 28 : 2015/01/23(金) 21:10:46 :
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マルコ「アニ、約束守れなくてごめん…」
僕がそう言うと、アニは涙を流していた。そして、肩を震わせていた。
アニ「…マルコ、ありがとう」
マルコ「それは僕の台詞だよ…」
アニ「あんたのことは、思い出なんかにしたりしない」
マルコ「えっ…」
僕は驚いた。
アニ「あんたのことは忘れない、心に留めておくから…」
アニは涙を流しながら、向日葵のような太陽のような笑顔を僕に見せた。
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- 29 : 2015/01/23(金) 21:15:30 :
マルコ「ジャン、頑張って、それから死なないで」
ジャン「…当たり前だろ、俺は死なない」
マルコ「僕はジャンを支えているつもりだったけど、本当は君が支えてくれたんだ…、ありがとう」
ジャン「ハッ…馬鹿なこと言うんじゃねえ」
ジャン「真っ直ぐな言葉を、俺に向けてくれてありがとよ」
ジャンはそう言ってニカリと笑った。
その目には、涙が浮かんでいた。
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- 30 : 2015/01/23(金) 21:18:43 :
- マルコ「ありがとう…、二人とも。そろそろ、さよならだね」
アニ「みたいだね…」
ジャン「待ってろよ?末長くな」
マルコ「ああ、待ってるさ。一足先に、僕は逝くよ」
アニ「じゃあね…」
マルコ「本当にありがとう、僕は見ているから。例え二人がどんな間違いをしても、僕は味方だから……!」
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終わりとなります。
後半は、駆け足でしたね(汗)
満足いくものになったので、良かったです。
ありがとうございました。
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