この作品は執筆を終了しています。
孤独な空を舞う戦士~届かぬ愛を込めて~
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- 1 : 2015/01/06(火) 12:54:09 :
- 空を舞う鳥
自由に羽ばたくことが出来る翼を広げ
大空を舞う
その姿はまさに『自由』であろう
これは重い十字架を背負った戦士のお話である
64話のネタバレあり
また、作者が65話の続きがこうなってしまうのではないか…
そう言った妄想が詰められた作品となります
※ネタバレ有り
※作者が妄想した続き有り
上のことを理解し、それでも読んで良いと言う人だけ読んでください。
SSを読者の皆様に気持ちよく読んで貰うために、作品が終了するまでコメントを制限させて頂きます。
コメントを貰えると本当に嬉しいです
しかし、途中で貰ったコメントを非表示にするのは心が痛みます。
ですので、作品が終了するまではこちらにコメントを頂けると嬉しいです!
http://www.ssnote.net/groups/347/archives/10
作品の感想
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- 2 : 2015/01/06(火) 12:55:21 :
- 真夏の肌を焦がすような日照りが地面の上を歩く生き物の体力を奪っていく
そんな暑く、苦しい時期に大量の汗を流しながら訓練に励む者達がいた
「たくっ……毎日、毎日…こんな訓練ばっかりよ」
「次は、お前の得意な立体起動の訓練だ……文句いってないで頑張るぞ」
体の大きい少年が集団の中心となり、多くの訓練兵をまとめている
彼等は104期訓練兵である
その中心であり、先頭を歩いている少年の名は…
「俺は得意だけどよ、いつもお前に負けるからな……ライナー母ちゃんよ」
「ジャン、そのアダ名は辞めろ……頼むから」
ライナー・ブラウン
人の上に立つべき力を持っているのか、人を引っ張って行く力があるのか…
彼を慕う人、憧れにする人はあとをたたない
仲間が緊張で震えている時、恐怖で怯えているような時には、冗談を言って場を和ませようとする姿がある
そんな立派な『兵士』には隠し事がある
誰にも言えない、辛い隠し事が彼を、彼等を苦しめている
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- 3 : 2015/01/06(火) 12:55:56 :
- 目には見える現実
心の目で見ても感じる現実
『悪魔の末裔』と言われていた悪魔達は、自分達と同じで人間味溢れる良い奴等であった
だから彼等は辛いのだ、だから可笑しくなってしまうのだ
「おい!!それは俺が見つけた!」
「ジャン!!早い者勝ちだぜ!お前が遅いから悪いんだ!」
「この野郎!ざけんな!!」
悔しい時は悔しがり
悲しい時は泣く
嬉しい時は笑い
恥ずかしい時は頬を紅くする
どこに悪魔がいるのだろうか
彼等には自分が進む道が正しいのかすらわからないのだ
このまま『戦士』を辞めてしまい
『使命』を投げ出すことが出来れば苦しくなくなる
だが、それは出来ない
『故郷』に帰る
これが戦士達の最終的な目標であり、夢であるのだから………
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- 4 : 2015/01/06(火) 12:56:30 :
- 訓練が終わり、多くの兵士達は疲れから睡魔に襲われてしまう
風呂を澄まし、固いパンと薄味のスープを食べ
おのおの自らの部屋に戻っていく
先程のライナー・ブラウンは暑さに耐えれず外の風に当たろうとする
「ここでも夜空は同じなんだな」
故郷から見た夜空も同じであった
何も変わらない夜空だ
故郷にいる両親達も夜空を見ているのだろうか
故郷を思いながら外の風に当たる
そんな時、木の麓で誰かが居ることに気が付いた
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- 5 : 2015/01/06(火) 12:57:13 :
- ライナーは就寝時間ギリギリなのを伝えに行こうとした
遠くから見た印象からして小柄であり、金髪なのがわかる
「……」
その姿を見た時、胸の鼓動が振動を強くしたのがわかった
「く、クリスタ……なにしてんだ?」
「ライナー!」
木の麓にいたのは104期訓練兵の男子達が女神と言っている少女であった
彼も、その男子の1人である
クリスタと話したくても、彼女の隣にはボディガードがいる
同じ訓練兵であり、クリスタを守るような姿勢を見せる女がいる
今日は姿が見えない、ライナーはチャンスと思い
クリスタに話しかけるのである
「こんな時間にどうしたんだ?」
「………この子がね」
小さな両手の上には、翼を怪我して飛べなくなってしまった
小鳥の姿がある
クリスタは小鳥の怪我を治療していたようだ
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- 6 : 2015/01/06(火) 13:02:26 :
- 「翼を怪我したんだな、傷は浅そうだな」
「何とかしてあげれないかな?可哀想なんだ」
「………巣はねぇな」
木の上には巣の姿が見えなかった
親元を離れ、一匹で餌を探している時に敵に襲われたのだろう
「ちょっと見せてみろ」
小さな両手に乗っていた小鳥を自分の手に乗せる
見たところ鷹か何かに襲われたのだろう
「大丈夫だ、小鳥って言っても立派な大人だ」
「でも怪我して…」
「鳥はな、軽い怪我なら自然に治せるんだよ」
「そうなの?」
「逆に俺達人間が……」
「人間が?」
「……クリスタみたいな優しい奴が力を貸すとな、鳥はストレスが溜まるんだよ」
「優しくは……でも、ストレスたまるんだね」
「そっとしておくのが1番なんだが、ここに置いていったら猫か何かに襲われるしな」
ライナーは小鳥を置いてはいけないクリスタの気持ちを考え
訓練所の裏にある小さな物置小屋に向かうことにした。
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- 7 : 2015/01/06(火) 13:02:59 :
- 訓練所の裏には、使われていない物置小屋がいくつか存在している
訓練兵の中では、その場を使い
ひと時の愛に溺れる者がいる
「……」
そんな噂を耳にしない訓練兵など存在していない
クリスタは少しだけ不安になっていた
「ん?」
「な、何もないよ!」
目が合ってしまい、慌てるクリスタを見てライナーは理解した
「安心しろよ、俺は1度も噂にあるような事はしたことないからよ」
そもそも許されない
人類を攻撃し、滅ぼすことが目的の俺を愛してくれる人はいない
そんなことに身をおいて良い立場じゃない
求めてはいけないと自分に言い聞かしている
「ち、違うよ!そんな!考えてないよ!!ライナーは酷い人じゃないって知ってるから!」
「はははっ!俺は酷い奴だよ!そんな事より、さっさと準備しないとな」
物置小屋の壊れて穴の空いた場所に箱を押し積める
雨風を防ぐことが出来れば充分だ
ライナーはその箱に小鳥を入れ、傷が治れば飛んでいけるようにした
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- 8 : 2015/01/06(火) 13:04:47 :
- 「ライナーは物知りなんだね」
「ん?」
箱の中に入った小鳥を下から眺めながらクリスタは口にした
「俺は山育ちだからな」
「山育ちって事はサシャと同じだね……あと、コニー!」
「あいつらと同じだな(形だけだけどな)」
山奥から来た理由、それは戦士としての使命を果たすためだ
立派な兵士になるわけではない
立派な戦士として最後まで使命を貫くことが、俺がここにいる理由なんだ
「さぁ、クリスタ……そろそろ戻らないと走らさせちまう」
「あっ…うん、そうだよね」
チラッと小鳥を気にする様子を見せるクリスタ
ライナーは本当に小鳥を心配しているんだと思った
仕方なく、ライナーはクリスタに提案する
「訓練が終わったあと、こっそりと見に行こうぜ」
「え?」
「心配だろ?飛び立つ姿が拝めるかは自身がないが、隠れて……な?」
「うん!約束ね!!」
この約束は俺とクリスタの約束だが
きっと、明日からクリスタと小鳥を見に行くのは俺ではないだろうな
ライナーはそう、思っていた
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- 9 : 2015/01/06(火) 13:05:27 :
- 宿舎に戻るまで、2人は今日の出来事を話していた
立体起動の訓練が苦手だと言うクリスタは素直に可愛いと思った
「立体起動が使えないと早死にしちゃうからね」
「クリスタは憲兵を目指してるんじゃないのか?」
『早死にする』という言葉が少しだけ気になった
壁の外に出ない限り、早死にすることは少ない
自分達が壁を破壊し、中に巨人を入れてしまったら話は変わってしまうが
「憲兵には入れないよ?私は成績よくないからね」
「なら、駐屯兵団志望か?」
憲兵団に入る事が出来たら安全な暮らしが保証されている
しかし、難しいことだとは知っている
ほとんどの訓練兵は駐屯兵団に行くことになる
「私は調査兵団……も…良いかなって…」
「は?」
耳を疑った
死に急ぎと呼ばれる調査兵団に入ろうかと悩んでいると聞いたからだ
人類の為に死ぬことも恐れず、無謀にも壁の外へ出ていく集団
「な、何でなんだ?」
ライナーは理由が知りたかった
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- 10 : 2015/01/06(火) 13:06:21 :
- 「エレンが言ってたからね、外の世界には見たこともない景色があるって!」
クリスタはライナーに説明するが、ライナーは信じれなかった
どこか偽りの言葉を並べている様子だったからだ
エレンの夢を口実に、自らの命を危険に晒そうとしている気がした
「………そうなのか」
信用はしていないが、深く聞くのはクリスタに悪いと思った
人に言えない事がある
これは誰よりも知っていることだったから
人は産まれた時、すでに十字架を背負っている
儚い夢を掲げ、生きることが出来る世界ならば幸せだ
だが、俺達が生きてる世界は残酷で夢すら見ることが出来ない
「クリスタ、またな?」
「お休みなさい!明日も訓練だから頑張ろうね」
手を降り、宿舎に帰っていく彼女の姿を後ろから見詰めていた
小さな背中に何を背負っているのか
そんなことを考えながらライナーは宿舎に戻っていくのだった
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- 11 : 2015/01/06(火) 13:40:17 :
- 部屋に入ると聞きなれた声に名を呼ばれ、振り替えると馴染みの顔がある
「どこに行ってたの?」
「ベルトルトか、ちょっと外の風にな」
俺と同じで使命を背負った者の1人
故郷に帰るため、共に戦っている仲間だ
「次からは僕も行くよ、1人でいると可笑しくなりそうだから」
少しだけ問題があり、ライナーの傍から離れられないことである
104期の訓練兵達にもライナーの傍から離れられない奴と言われている
だが、彼等は後から後悔することになる
彼が仲間であり、好きな女を守るため、牙を向けることを……
「悪いな、これは俺のちょっとした息抜きなんだ」
「息抜き……ね…わかったよ」
「心配すんな、戦士としての使命は忘れてねぇよ」
「……」
小さな声で伝えた戦士としての覚悟
辛い現実を受け止める事は出来そうにないが、今日の疲れをとるため眠りにつく…
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- 12 : 2015/01/06(火) 13:40:57 :
- 夢の中に現れる景色、故郷の景色だ
生まれ育った故郷の夢を見る
夢の中では、両親がいて、ベルトルト達と一緒にいる景色
その夢は途中から地獄に変わる
使命を背負うため育てられてきた
その使命を全うする光景が地獄にしか見えない
壁を破壊する
破壊した壁の中に巨人を引き連れていく
巨人は人を食べ、消化しないまま吐き出す
そんな光景を目の辺りにした時
俺達は使命の重さに心が壊れてきた
声が聞こえる、声の持ち主はわからない
それぞれの声が何を言っているのかを聞く勇気が俺にないから……
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- 13 : 2015/01/06(火) 13:41:37 :
- 名前を呼ばれる、何度も何度も呼ばれる
俺は誰に呼ばれているのかがわからない
「ライナー!朝だぞ!」
「早く起きねぇとベルトルトの寝相が見れねぇぞ!」
「………お前らか…おはよう」
同室の奴等に起こされる
普段は俺が起こす立場だが、今日は普段よりもグッスリと寝ていたようだ
「ベルトルトの寝相って芸術だよな」
「今日は曇り1つない晴れだね」
「馬術の訓練には最高だな」
「おい、死に急ぎ野郎……何で俺を見ながら言いやがるんだ?」
『悪魔の末裔』と呼ばれていた壁の中で生きている奴等
俺には悪魔には見えない
人間味溢れる良い奴等しか居ない
俺は何の為にここにいるんだろうな
生まれてきた時、同じ産声をあげたのも変わらない
何も変わらない人間を殺さないとならない使命を最近は恨む
何も知らなかった
こんな奴等が壁の中で暮らしていたなんて……
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- 14 : 2015/01/06(火) 15:33:53 :
- 朝から賑やかな光景を目にする
「パァン!!」
「うるせぇよ、芋女!」
「サシャは朝から本当に元気だよね、私は朝から訓練のことで憂鬱だよ」
「あははっ……ミーナ、私もかな」
「クリスタも~?わかるな~訓練は辛いからね」
この光景を俺達が壊すことになる
そう思うと仲良くすることは無意味だ
「アニは今日も大変だね」
「……何が」
「対人格闘だよ、最近はエレンがアニの技術を身に付けようと頑張ってるからね」
「………別に」
「あっ!もしかして嬉しい!?エレンって目付きは悪いけどイケメン…」
「……」
「ごめん!睨まないでよ!アニ!」
ミーナはアニを気にかけ、一緒に居てくれることが多い
アニ・レオンハート
俺とベルトルトと同じ使命を背負った仲間
唯一の女の戦士だ
ここに来てから、昔と違い笑わなくなってしまった
対人格闘の時、エレンと特訓している時が1番楽しそうにしている
きっと親父を思い出せるのだろうか…
一刻も早く故郷に帰らないといけない
俺だけの為ではない、ベルトルトとアニの精神も限界にきているんだ…
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- 15 : 2015/01/06(火) 15:34:46 :
- 暑い日照りに体力を奪われていく中、馬術の訓練に励んでいる
訓練中にクリスタを見てしまう
壁教に関する情報を持っているであろう存在
だから見てしまう……
「……」
それは大嘘であり、故郷に連れて帰りたいと思うぐらい惚れている
いつまで続くかわからない約束が、辛い運命を背負った自分の息抜きだ
誠実になり、優しくなるのは何故だろう
多くの命を奪った俺は、誰が見ても大量殺人者だ
なのに兵士という身分に酔って落ちていくのは何故だろう
遠い昔に何があったのだろう?
クリスタの瞳の奥には、俺達と同じぐらいの悲しみがあった気がする
大きな『使命』を背負った俺なら
お前の『過去』を知った時、少しは力になれる気がするんだ
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- 16 : 2015/01/06(火) 17:49:41 :
- 訓練が終わり、ミカサに投げられた時にぶつけた尻を撫でながら約束の物置小屋に向かう
ユミルも一緒に来ているだろうと思っていた
「ライナー!さっきね、顔が見えたんだよ」
「あれ?クリスタ、1人で来たのか?」
「え?うん……あっ!ユミルには内緒にしてあるよ」
「そ、そうだったのが!意外だな」
「だってさ、せっかくの2人だけの秘密なんだもんね」
この純粋さが好きだ、それと同時に騙していることを謝りたくなる
全てを吐き出し、罪を償えたらどれだけ楽になれるか
「おっ……本当だな…顔が見えてるな」
「うん!その内、飛んでっちゃうかもね」
このまま、時が止まってしまえば良い
訓練兵として身を置いたまま、時が止まれば良いんだ
そうすれば、俺はこれ以上、手を血で染める必要はなくなるんだから
いくつもの夢を消してきた俺という存在
風が吹き、砂が散っていくように夢を消してきた
時が止まることを願ったが、人類の願いは俺達の命の鼓動が止まること
「飛んでっちゃうところが一緒に見れたら良いね」
俺達の絆はどこまで続くのだろ
俺の過去は争いしかない
「そうだな、あいつが飛んでく姿も一緒に見ような」
闇を照す光が1つ
不屈の戦士の如く、使命を全うするよ
俺達の絆は誰にも引き裂くことは出来ない
罪の意識に押し潰されそうな戦士
唯一、救いだと言えるのはクリスタに出会えたことかもしれない
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- 17 : 2015/01/06(火) 20:57:28 :
- 眠れない夜は何度か来る
そんな日は一睡もできない
休む暇などないと言わんばかりに、戦士としての任務が押し潰してくる
立ちはだかる現実に足跡を残している俺達
闇より指した光が照すのは戦士なのか、それとも壁の中の人類なのか
抗えない定めを受け止める事ができない
「兵士として、強くならないと意味がないんだ」
「……」
「お前もそうだろ?巨人を倒して人類に貢献することが…」
「ライナー」
「あ?」
「君は戦士だ……兵士じゃない」
「あっ………あぁ…」
考えることに疲れていた
戦士としての覚悟が消えていく
自分の使命と罪から逃げることが幸せだった
使命と罪から逃げだしたら、自分の存在の意味がないとわかっていても…
考えるたびに答えが消えていき、新たな問題が出てくる
傷付く心を癒してくれる何かを見つけたかった
訓練が終わるたび、急ぎ足で向かってしまう俺は兵士なのかもしれない
「ライナー!ほら、一緒に見に行こうよ」
「あぁ!そろそろ傷も治って飛んでくだろうな」
光1つない、暗闇を歩き、怯えている俺を救ってくれたのは君という存在。
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- 18 : 2015/01/06(火) 20:58:28 :
- 今日が楽しいと、明日も同じぐらい楽しいと思ってしまう
「何か今にも飛んでいきそうだね」
「あぁ、きっと傷は治ってるんだろうな」
「何で飛ばないのかな?」
「飛ぶことが怖いのかもな」
「怖い?」
「俺達と同じだよ、飛ぶことが当たり前な鳥は飛ばないと意味がない」
「俺達は兵士として、戦わないと………」
「ライナー?どうかしたの?」
「……」
俺はまた、戦士から兵士に……
「何もないんだ、悪いな」
「?」
曖昧な言葉は言葉にはならない
伝えたいことは伝えられない
この夢のような光景はいつか無くなる
心を癒す場所はいつか消え去る
この思い出も、いつかは悲しみに変わる
わかっているのにな…
曖昧な日々すら、俺を苦しめる
その日々が居心地が良すぎで可笑しくなる
目の前で溢れている『愛』や『友情』を前にすると
自分達の存在など無力に感じてしまう
数えきれない悲しみを背負い、生きているのは俺だけじゃない
わかっているんだ
でも……
夜が来ると悲しみが押し寄せてくるんだ
こんなにも許されない罪を背負った俺を優しく包んでくれる場所はここしかないのかもしれない…
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- 19 : 2015/01/06(火) 20:59:11 :
- 「お休みだな」
「また明日ね!明日も訓練がんばろうね!」
あの小さな体で、あの眩しい光を放っているのは何故だろう
この君といた場所が、いつか、俺の心を苦しめるかもしれない
見えない未来を手に入れるため、息を潜め、嘘をつき、生きている
俺達はなんだか、大切なことを忘れそうな気がする
今の自分を信じて生きていたい
誰も認めてくれないとしてもだ…
「ふぁぁぁ………おぉ…今日は雨かもな」
目を覚まして目に入ってきたのはベルトルトの寝相だ
例え雨が降ったとしても訓練は休みにならないことが多い
今日もそうだろう
「ベルトルト…ベルトルト!」
「ライナー………朝?」
「たくっ、そんな寝相だといつか人を殺すぞ」
「否定は出来ないんだよね」
ベルトルトを起こし、エレン、ジャン達を叩き起こして食堂に向かう
変わらない日常だ
終わらない日常だと信じていたかった
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- 20 : 2015/01/06(火) 20:59:40 :
- 曇り空で、雨が降ってくるような空だ
立体起動の訓練を受けている最中、顔に水が当たり始めた
雨が強くなり、教官から訓練中止の声が入った
エレン以外の訓練兵はやったと言わんばかりに兵舎に戻っていく
「クリスタ……見に行くか」
「うん!でも、ちょっと教官に頼まれた荷物を運んでから行くから先に行ってて!」
「手伝うぞ?」
「ふふっ、悪いから良いよ!せっかく早く終わったんだから、ゆっくりしててね」
クリスタはそう言って行ってしまった
ライナーは仕方なく、1人で先に行き待ってることにした
「雨が降ってきたな……雨は嫌いだ」
歩きながら空を眺める
故郷にも雨が降っているのだろうか
故郷に帰れる日はいつになるのか
兵士として、巨人を倒していけば、里帰りする時間は貰えるのではないかと
ライナーは兵士としての意思に押し潰されていたのだった
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- 21 : 2015/01/06(火) 21:00:24 :
- 訓練所の裏にある小屋の近くに腰掛け、クリスタが来るのを待っていた
目的の鳥は今にも飛び出そうとしている様子だ
「お前みたいにな、俺も飛べたら故郷に帰れるのにな」
「ライナーの故郷って、どんな所なの?」
「クリスタ!?い、いつのまに!!」
急に後ろから声がし、振り返ってみたら女神の姿がある
そんな女神はライナーの慌てぶりにクスクスと笑い出す
その姿を見て、ライナーも笑い出してしまう
「俺の故郷は本当に山奥なんだよ」
「山育ちって言ってたもんね」
自分の故郷について語る
言えないことが多いけれど、少しだけ故郷の話を聞いて欲しかったんだ
「色んな動物がいるんだよな、クリスタが好きそうな動物もいるぞ」
「そうなの?良いなぁ、私は動物が好きだからね、ライナーの故郷に行けたら楽しいだろうなぁ」
その言葉を聞いたとき、本心が溢れてしまう
「来てくれよ!クリスタなら大歓迎だ!!」
嘘偽りない、真っ白で真っ直ぐな気持ちをぶつけた
故郷にある色々な物を見せてやりたい
川を泳ぐ魚や、緑の森を駆け巡る動物達をクリスタに見せてやりたい
「うん!いつか絶対に連れていってよ!!」
「おう!約束だ!絶対に連れていってやるからな!」
バサッ!
クリスタと約束をした時、小屋から羽ばたく音が聞こえた
見上げた時には鳥は空を飛んでいた
傷付いた翼は癒えていて、雨が降る中を羽ばたいていく
「見えたな」
「雨の中を飛んでいかなくても良いのにね」
いつか見ることが出来る
クリスタと2人で同じ光景が見れると思っていたんだ。
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- 22 : 2015/01/06(火) 21:02:00 :
- 取り返さないといけない『力』
この世で1番、その『力』を手にしてはいけない奴に渡ってしまった
絶対に取り返さないといけない
そして、絶対に仲間を助けないといけない
「グォォォォォ!!!!!」
鎧の巨人の姿で今一度、エレンを奪おうとする
だが、エレンに渡ってしまった『座標』の力により
それは断念することになる
座標を取り返すこと、アニを助けること
ここで死んだら今まで自らの手を血で染めた意味がない
何が何でも生き抜かないといけない
大量の巨人に噛みつかれ、今にも殺されるかもしれない現状
無くすことを恐れた結果かもしれない
いくつもの出会いにより、戦士として死んだのだ
「(ちくしょう、ちくしょう!!)」
巨人の姿でクリスタを見た時、エレンと同じ様な目で見られた
それが辛かったんだ
ユミルも結局、エレン達と一緒に壁の中へ戻っていく
そう思っていた
「がぁぁぁ!!」
俺の体に噛み付く巨人を凪ぎ落としていくユミル
何で戻ってきた?
お前が1人で戻ってきたとしても、助かりはしないんだ
何故なんだ
何で良い奴等を敵にしないといけないんだ
何でユミルが助からないとわかっていて、俺はこいつを故郷に連れて行かないといけないんだ
小さな蟻を握り潰すような簡単な使命だったら俺は戦士として生きれたんだ
「(エレン……お前が俺達の故郷に来てくれるだけで…俺達は…)」
遠くに行ってしまうエレンの姿を、クリスタの後ろ姿を巨人の姿で追いかけようする
そして、その目的は達成することは出来なかった
「ユミル………何で……僕を助けてくれたの?」
ベルトルトの質問に、ユミルは答える
お前の声が聞こえたからだと
これは、ベルトルトが言った言葉に対してだ
俺達の心の声を聞いてくれた奴なんだ
「お前達の境遇を知ってるのは私だけだしな……私も同じだよ…自分じゃどうにもならなかった」
ユミルは仰向けのまま、月に手を伸ばしながら答える
「女神様もそんなに悪い気分じゃないね」
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- 23 : 2015/01/06(火) 21:02:43 :
- いくつもの命を奪った
戦士として使命を果たそうとした
その結果がこれなんだ
「………ダメだ」
「ライナー?」
「お前は…アニを置いて行けるのか?俺には無理だ!」
「おいおい、ここまで来て……」
「僕も……アニを置いてなんか行けないよ…」
最後の最後まで戦士になり損ねる
心を戦士として染めることは出来なかった
ユミルを故郷に連れていくことすら、俺には出来ない
「たくっ、土産になってやろうと思ってたのによ」
「ユミル、悪いが先にアニを救出することに力を貸して欲しい」
「僕からもお願いする……お願いだ…ユミル」
俺達の必死な頼みに、ユミルは『仕方ねぇ』と良いながら了承してくれた
シガンシナから見える荒れ果てた町を見渡す
巨人の姿は見えない
巨人化する必要はないと判断し、ゆっくりだが人の姿で動き出すことにした
巨人にならないのは体力が戻り、戦士として動ける最高のコンディションを作るためだ
ゆっくりと踏み込んでいく
荒れ果てたシガンシナの土地に足跡をつけていく。
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- 24 : 2015/01/06(火) 21:03:16 :
- ライナー達が向かってる最中、クリスタは確実に死に近付いていた
リヴァイから強制的に女王という立場に立たせられる
そして、段取りを考え、絶対に成功するであろうと想われた作戦は失敗する
エレンとクリスタの身柄は中央憲兵に渡ってしまう
その中に、リヴァイと堂々の強さをもつ敵がいる
リヴァイ達と中央憲兵は死闘を繰り広げる
それでも、エレンとクリスタを救出することは不可能だった
そして殺されそうになったジャンを救うために……
アルミンは手を血で染める
アルミンだけでなく、104期は人を殺めることにる
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- 25 : 2015/01/06(火) 21:04:10 :
- その頃、クリスタ……ヒストリアは実の父親と再会し
真実を見せられる
自分を気にかけてくれた姉がいたこと、その姉が殺されていたことを
レイス家が背負った重い十字架がのし掛かる
重い使命がヒストリアを襲った時、ケニー・アッカーマンが姿を現す
「じゃあ、俺が巨人になってエレンを食っても意味ないのかよ…」
全ての謎は解けていない
それでも、目の前の現実はわかる
目の前にいる父はヒストリアを巨人にさせ、エレンを食べさせようとしている
それに対し、ケニーは座標の力を手に入れ、王になろうとしている
「時間がない、ヒストリア……覚悟を決めてくれ」
「えっ……でも…お父さん」
「おいおい、ヒストリア…親父の話を全部きれいに信じていいのかよ」
「ヒストリア、さっきも言ったが、私はヒストリアの味方だ」
ケニーとロッドはヒストリアに話しかける、何が正しくて、何が悪なのかを言い合う
子供には重く、理解することも不可能なほどの現実だ
そんな時、ヒストリアの記憶にある女性の姿が浮かぶ
その女性は、自らの運命を悟ったようにレイス家が背負った定めを受け止めた
「………お父さん…貸して…私……やるよ」
「ヒストリア…大丈夫だ、絶対に大丈夫だからな」
その光景を見ていたケニーが動き出す
対人立体起動でロッド達に近付く、その瞬間、扉が壊された音がする
「ケニー!!」
「チッ……リヴァイ!邪魔しに来たか!!」
エレン達を追ってきたリヴァイとミカサが突入してくる
「エレン!!」
ミカサはエレンに近付き、助けようとする
その時、稲妻が落ちるような音がする
ミカサを始め、その場にいた者は目を疑った
ヒストリアが巨人になり、エレンを食べようとしていた
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- 26 : 2015/01/06(火) 21:05:16 :
- 「ミカサ!!!」
リヴァイは大声で名を叫び、エレンを守らせようとする
ミカサは言われるまでもないとブレードを握り締め
巨人になったヒストリアに攻撃しようとする
「エレンを食べさせなんかしない」
ミカサは巨人となってしまったヒストリアを仕留めようとする
「んんん!んん!!!」
しかし、エレンの様子が可笑しい事に気が付く
ケニーと戦闘中のリヴァイが再び叫ぶ
「先にエレンを救出しろ!救出して外に出ろ!!」
「人の心配をしてる場合か!?」
リヴァイとケニーの戦闘は今まで見たことがないような戦いだ
そんな戦いを気にも止めず、ヒストリアを見ているロッドはミカサに語り出す
「エレンに座標の力が有る限り、この地獄は終わらない!諦めろ!」
「関係ない、私にはエレンがいない世界が地獄」
ガキッ!
ミカサはエレンを拘束していた鎖をブレードで切る
巨人化したヒストリアの手が伸びてくる
その手をミカサは切る
再生している最中、ミカサはエレンを抱えて外へ飛んでいく
「何故わからない!!お前達がやっていることは間違いだと!」
「ヒストリア!?や、やめろ!やめるんだ!!」
知性のない巨人になったヒストリアはロッドを掴み
「やめろぉ!やめろぉぉぉ!!!!!」
噛みちぎり、食い殺してしまった
その景色を見たケニーはリヴァイの足に銃弾を打ち込む
「ぐっ……」
「くそったれが…リヴァイ…次に会う時は逃がさねぇ」
動けなくなったリヴァイはヒストリアに目をやる
父親を食い殺したヒストリアは、他の巨人とは違い涙を流していた
そんなヒストリアを残し、リヴァイは立体起動を使い外を目指し飛んでいく
-
- 27 : 2015/01/06(火) 21:06:07 :
- 礼拝堂の地下にヒストリアを残し、リヴァイ達は外で合流する
「すみません!何人か逃げられてしまいました」
「すみません……まだ、覚悟がしっかり出来ていなかったから…です」
戦いを終えたジャン達が外で待っていた
ケニーが逃げていくのを見たとコニーは言う
その言葉にリヴァイは納得した様子を見せる
「ハンジさんは大丈夫です、肩の傷は止血しました」
「そうか、すまないな」
リヴァイはハンジの安否を確認した時、安心した様子を見せる
が、サシャの質問で再び顔がひきつる
「あれ、ヒストリアは……?」
その言葉に全てを見ていたリヴァイは躊躇なく答える
「ヒストリアは巨人になった」
「は?」
「ロッドから貰った注射が原因だ」
「そ、そんな……」
「嘘だろ」
ジャン、コニー、サシャは信じられないと言った表情見せる
リヴァイは地下にヒストリアがいる事を伝える
後から駆け付けたエルヴィンに、ことの真相を話す
そして、エルヴィン達に巨人になったヒストリアを拘束することを頼んだ。
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- 28 : 2015/01/06(火) 21:06:58 :
- 戦いを終えたら兵士達は本部に戻ることになる
汚名を晴らしたいま、調査兵団に味方しない者は少なくとも近くにはいない
「それで?お前が見たもの、感じたこと……全てを話せ」
リヴァイはエレンに問う
何を見たのか?何を聞いたのかを…
「はい……まずは、俺が…何で人間に戻れるかを…話します」
今まで思い出せなかった真実
父親の行方、ヒストリアの母親達を殺した者の正体
座標の力をどうやって手に入れたのか
エレンは自分が見た真実を全て語り出す
「………そうか」
リヴァイを始めに、その話を聞いた者は皆、俯いてしまう
そんな時、アルミンが言葉を発する
「エレンに座標の力が有る限り……この地獄は終わらないのか」
「アルミン?」
アルミンの言葉にミカサは酷く驚いてしまう
しかし、アルミンは話すのを辞めなかった
「もう何が正しいのか何てさ、誰にもわからないんだよ」
「もしかしたら、僕達は本当に取り返しのつかない事をしたのかもね」
アルミンの言葉にリヴァイは言う
『何が正しいのか、そんな事は誰にもわからない』と
重い空気の中、アルミンはヒストリアをどうするか話し出す
ハンジさんに託し、ソニー達のように実験台にしてしまうのか
礼拝堂の地下から出すことなく閉じ込めてしまうのか
「残念だが、ハンジは巨人を実験台にする余裕はねぇだろうな」
「え?」
リヴァイはアルミンに言う、巨人が元々が人間だと知った今、好き好んで実験をする奴はいない
ハンジもその1人だと
「さっきから他人事みたいに黙ってるが、エレンよ」
「お前はどうしたいんだ?」
黙ってるエレンに対してリヴァイは話し掛ける
それに対し、エレンは少しだけ考えてから答える
「俺は……巨人を一匹残らず殺したい…駆逐したい……です」
自分の意思は変わらないと伝える
その意思を聞いた時、幼馴染みが答える
「エレンが座標を持ってる今、それは不可能かもしれないんだよ」
エレンは目を丸くした
親友の言葉の真意が何を意味するかを知っているからだ
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- 29 : 2015/01/06(火) 21:08:20 :
- 「アルミン……ヒストリアに食われろって言ってるのかよ?」
エレンはアルミンに聞く
アルミンはエレンの問いに答える
「違うよ……ただ、現実的に考えるなら…今の時点では巨人は駆逐できない」
アルミンの話す言葉にエレンは苛立ちを隠せない
「だから!巨人を駆逐したいなら俺がヒストリアに食われろって意味だろ!?」
「エレン、落ち着くべき」
ミカサはエレンを落ち着かせようとする
しかし、エレンはアルミンに怒鳴ってしまう
自分が『座標の力』を使いこなせない真実が本当なら自分はヒストリアに食われるしかないのか
そして、その現実に皆は満足することができるのかと
「おい、エレン……」
「何だよ!?次はジャンかよ!」
苛立ちを隠せないエレンに対し、ジャンは冷静に答える
「お前を助けるために……ここにいる…俺達はな」
「…?」
「104期の連中は皆……皆…」
震える腕を掴み、自分が行った行為を思い出しながらジャンは答えた
「お前を助けるために、俺達はな、大量に人間を殺したんだよ!」
「……え」
「サシャもコニーも!ミカサもアルミンもだ!」
「俺達はな、お前に見返りを求めてるんだよ!!忘れたのかよ!」
エレンはジャンやサシャ、コニー達に目を向ける
皆は下を向き
自分の手を掴んでいる
その手は寒さで震えるように、ガタガタと震えていた
エレンは言葉を発せなくなる
黙って俯いてしまう、そんな時、リヴァイが頭を冷やせと言い
部屋から出ていく
ジャン、サシャ、コニー、アルミンすら部屋を出て行ってしまう
エレンの傍から離れなかったのはミカサだけであった……。
-
- 30 : 2015/01/06(火) 21:09:19 :
- それから数日が過ぎた時、何人かの駐屯兵団が殺される事件が起きた
死体は壁の外へ捨てられており、最初は事故だと考えられていた
が、立体起動装置を奪われている事に気が付き
調査兵団を始め、全ての部隊は対人制圧部隊が再び動き出したのだと思われた…
「おい、壁の中は少し見ない間に気持ち悪い物が流行してるんだな」
「……」
「ベルトルト、安心しろ……アニは無事だから」
そう、ライナー達が壁の中へ戻って来ているのだ
彼等は駐屯兵団を切り殺し、立体起動装着を奪い
戦闘の準備は揃っている
そして、彼等は調査兵団の本部にある、地下深くに拘束されている仲間を救出に向かうのである
ダリスが行っている、趣味の悪い拷問
彼等には壁の中には悪魔の末裔と呼ばれる人間が少しはいるのではないかと思ってしまう
「俺が巨人になる、その間にベルトルトとユミルはアニを頼む」
「わかったよ」
「上手くやれよな、私は捕まりたくねぇからな」
調査兵団本部を間近にし、ライナーとベルトルト達は別行動をとる
調査兵団本部に侵入するのはベルトルトとユミル
多くの調査兵団を相手に戦うのがライナーである
「………」ガリッ
ライナーは右手を噛み、巨人になる
町の真ん中で巨人になった
一斉に悲鳴が町の中をいっぱいにする
その悲鳴が聞こえた時、調査兵団、駐屯兵団、憲兵団が巨人が来たことに気付いた
「ライナー!」
「壁は壊されてないですよ!?」
「壁の中で巨人になったんだろ!」
ジャン、サシャ、コニーは壁を破壊せずに来たライナーの行動に驚いた
が、リヴァイが攻撃の準備をしろとの合図に動き出す
エレンとミカサは本部から慌てて出てくる
右手を噛み、巨人化することに成功する
再び、ライナーとエレンは拳を交える事になる
-
- 31 : 2015/01/06(火) 21:10:08 :
- ライナーとエレンが死闘を繰り広げてる間に
ベルトルトとユミルは調査兵団本部の地下へと降りていく
カツン…カツン…カツン…カツン…カツン……
「まるで王子様だな」
「そんな者じゃないよ、僕は大量殺人者だからね」
「ちょっとは話に乗ってこいよな」
「ごめんね、そんな余裕がないんだよ」
ベルトルトはアニを救い出す事で頭がいっぱいだった
悪魔の末裔が語った言葉を忘れることはなかった
あの言葉がベルトルトを戦士として、鬼として、修羅として
奮い立たせてしまったのだ
「ここだな」
「開けるよ」
ギィィィィィ…
「………アニ」
「何だよ?アルミンは嘘ついてたのかよ」
結晶化し、自らの身を守ったアニを見た時、ベルトルトは心から救われた
「良かった…良かった……アニ…」
「おいおい、感動してるところ悪いと思うんだが」
「うん…ごめん……アニ?聞こえる?助けに来たから出てきてよ」
ベルトルトがアニに語り出す
ベルトルトの声がアニに聞こえた時
アニの身を守っていた結晶は崩れ落ちた
中から眠り姫がゆっくりと目を覚ました
「ごめんね……失敗しちゃったんだ」
「僕達も同じだよ…アニ……良かった…本当に」
「ベルトルト……ユミル?」
アニはユミルに目線をやる
ベルトルトとユミルは今まで起こった事の真相を話した
アニは納得したような表情を見せる
そして、ベルトルトはライナーから言われていた行動をとる
ライナーから言われていたこと、エレンとは戦わずにクリスタの行方を見つけ
一旦体制を整える事が目的になっている
そのために部屋を出ていこうとした時
ベルトルトの瞳に悪魔の姿が映る
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- 32 : 2015/01/06(火) 21:11:29 :
- 「………アルミン」
「上でライナーがエレンと戦ってるからね……きっとここに来ると思ったんだ」
アルミンはベルトルトに話し掛ける
「君達の目的は何なの?ねぇ、ベルトルト……アニ…教えてくれよ」
「君に話す必要はないよ」
「ベルトルト……お願いだ…」
「僕は君を殺したい……ズタズタにしてやりたい気分なんだ」
ゆっくりとアルミンの方へ近付いていく、アルミンは逃げることなく問う
君達の目的は何なのかと
ガシッ!!
ベルトルトはアルミンの首を絞める
力強く、躊躇なく握り締める
「がぁっ…うっ」
「君は悪魔の末裔だ……死んでくれよ」
アニとユミルは慌ててベルトルトを止めようとする
しかし、ベルトルトは首を絞める力を緩めない
アルミンを殺そうと力を強くしていく
そんな時……
「アニ……あんたねぇ!!」
アニの名を叫ぶ女が姿を現す
ベルトルトはアニを守ろうとアルミンを握り締める手を離し
アニを後ろにし、アニの名を叫んだ女を睨む
「ちょっ!まって!まって、ね?」
「……ヒッチ」
アニと同じ憲兵団に種属しており
アニとは同室だった彼女
女型の正体がアニだと知った時、言ってやりたい事があったようだ
「あんた……巨人だったんだね」
「…」
「だから目付き悪いんだぁ」
「…」
「人と話すことが怖そうにしてたのもさ、それが原因でしょ?」
「…」
「あんたが……あの時…あそこで暴れたからさ」
「たくさ~ん、人が死んだんだよね」
「…」
「私達が死に物狂いで死体を片付けるわけ」
「その原因が……あんたなのにね…私……さ」
「…」
「あんたが生きてるって聞いた時…」
「ぐちゃぐちゃになった死体の中にアニが居なくて良かったって思ったんだよね」
「……ごめん…なさい」
ヒッチは泣き出す
その姿を見たアニは下を向く
頬には涙が流れているのがわかる
ベルトルトとユミルは2人の会話を黙って聞くことしか出来なかった
アルミンは黙っていた
この後、何をすれば良いのかを考えていた
が、アルミンの考えていた案はヒッチにより崩される
「黙っててあげるからさ……さっさと逃げちゃいなよ」
「ヒッチ!?」
ヒッチの発言にアルミンは驚く
アニ達も驚いた様子を見せる
目撃者を殺そうと考えていたベルトルトもブレードを握ろうとしなくなった
「ヒッチ…ありがとう」
「あんたの荷物……私が届けに行くから…それまで死なないでよ」
「…」
「その時は殴らせてもらうから」
「……わかった…本当にごめんなさい」
アニ達は外へ行くため、階段を上がっていく
アルミンは黙っていた
何が正しいのか、何が間違いなのか
アルミンはわからなくなってしまったのだ……
「アニ……家出娘をさ、見付けてくれてさ…ありがと」
「………別に…あれは、あれで…言い思い出になったよ」
アニとヒッチの交わした最後の言葉であった
彼女らが次に言葉を交わすのは、もう少し先の未来の話である
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- 33 : 2015/01/06(火) 21:12:37 :
- アニを救出し、ヒストリアの行方を探す三人
アルミンに聞いた時、アルミンはヒストリアの行方は教えなかった
ベルトルトとユミルは諦め、他を当たることにしたのだ
「ライナーが時間を稼いでる間に早く見つけよう」
「当たり前だ……生きてんだろうな」
ヒストリアの安否を気にするユミル
3人の前に姿を表した調査兵団の兵士
その兵士はベルトルト達に斬りかかろうとする
が、3人には勝てず、捕まってしまう
「ヒストリアの居場所を吐け……時間がないんだ」
ユミルの問いに兵士は首をふる
ユミルは苛立ち始めた
調査兵団は死ぬことを恐れない兵士達が集まっている
それを思い出したベルトルトは兵士の顔面に蹴りを入れる
「あがぁ!」
「言え……もう一度、蹴って欲しいのかな?」
腰巾着と言われていたベルトルトの姿はもうない
あるのは修羅の如く、使命を全うする戦士である
アニとユミルが驚くが、ベルトルトは蹴りを入れる事を辞めない
「ひ、ヒストリアは!礼拝堂の地下に拘束されてる!」
「ロッドからの注射で巨人にされたんだ!!」
その言葉を聞いた時、ベルトルトとユミル、アニは驚愕した
ユミルは血の気が引くのを感じた
背中を冷たい汗が流れてるのを感じた
ベルトルトは調査兵団の兵士を気絶させる
「どうする」
「…」
アニとベルトルトは次にとる行動がわからない
巨人から人間に戻るためには、巨人化能力を持った人を食べる事が必要だ
「私が食われる……どうせ、お前らの故郷に行けば死ぬんだから」
ユミルは自らが犠牲になると言い出した
その顔に迷いはなかった…
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- 34 : 2015/01/06(火) 21:13:05 :
- 死闘を繰り広げているライナーとエレン
そして調査兵団はエレンと共に鎧の巨人を拘束しようとしていた
「ぐぁぁぁぁぁ!!!」
座標の力を使いこなせていないエレンは、ライナーには勝てず
あの時と同じように地面に叩き付けられるだけであった
アニから学んだ技術を使おうとしても、2度も同じ手を食わないライナー
戦闘は一方的なものだった
「モブリット…拘束の準備は済んだか?」
「はい…ただ、鎧の巨人に効くかどうかが…」
「チッ……だろうな」
女型の巨人を数秒しか拘束出来なかった武器で、鎧の巨人を拘束するのは難しいとわかっていた
それでも試してみるしかなかった
リヴァイはエレンに作戦を伝えるため、怪我した足で立体起動を使う
「エレンよ、奴を奥に誘い出せ……成功するかはわからねぇが、拘束させる」
その言葉に頷き、立ち上がるエレン
この死闘が終わる時、立っているのは誰かはわからない
が、リヴァイ達の作戦は失敗してしまう
途中で町の家を破壊し、砂煙を上げる鎧の巨人
鎧の巨人の姿がはっきりと見えない状態になる
「ライナーはどこです!?」
「この瓦礫と砂煙で見えないだろ」
「何がしたいんだよ、ライナー……お前らはよ」
サシャとコニーとジャンは砂煙が落ち着くのを待った
しかし、砂煙が落ち着いた時、そこにライナーの姿はなく
鎧の巨人の脱け殻が転がっていた
-
- 35 : 2015/01/06(火) 21:13:26 :
- 鎧の巨人の本体である、ライナー・ブラウンを捜索するため
多くの兵士が動き出した
その兵士達が捜索しようとしているライナーは、ヒストリアの居場所を探していた
「アニ!ベルトルト!」
「ライナー!」
ライナーはベルトルト達と合流することに成功する
「無事だったんだな、アニ……良かったぜ」
「心配かけたね、大丈夫さ」
「そうか……ヒストリアは…ユミル?」
酷く機嫌の悪い表情を見せるユミルに気付いたライナー
その真相を聞いた時、壁の中には悪魔の末裔がいたんだと思いしる
「……ベルトルト…アニを連れて先に逃げる準備をしておけ」
「え?」
「あんたは、何を言ってんのさ」
「4人で動いても見付かりやすくなるだろ、俺とユミルがヒストリアの場所へ行く」
最初はベルトルトとアニは反対した
しかし、ライナーの強い頼みで2人は諦める
ユミルはそんなやり取りをしている時間が不毛だと言う
ライナーが来ることすら意味があるのか?と思っていた
だが、3人は知らなかった
ライナーと会うのが最後になることを
先程、調査兵団の兵士から聞き出した礼拝堂に向かう
ライナーは途中で鳥が飛んでいることに気が付く
礼拝堂に向かっている最中、クリスタと一緒に過ごした時間を思い出す
あの場所、クリスタと話した言葉を思い出す
『故郷を案内してね!』
『魚釣りとかしてみたいなぁ』
『また、一緒に鳥を育てようね』
戦士は幸せになってはいけないのだろうか?
同じ血を流す人間を滅ぼす使命を背負った人間は
人に愛されてはいけないのだろうか?
「ここだな」
「ライナーさんよ、私が食われてクリスタが戻ったら…」
「……あぁ、ユミル……アニ達がいる場所は聞いてたな?」
「あ?聞いてたよ、南区の壁の上で合流だろ?」
「そうだ、忘れるなよ」
ライナーの言葉に困惑するユミルだが、礼拝堂の奥に入っていく
1歩、2歩と進むにつれ、ヒストリアの苦しみが感じ取れた
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- 36 : 2015/01/06(火) 21:13:54 :
- ガチャ
「ヒストリア……お前…」
ユミルとライナーの目の前には知性を無くした巨人の姿がある
地下に拘束されていると言うより
地下に閉じ込められていたヒストリアを見て少しだけ安心したユミル
「ヒストリア……頑張ったな、今から人間に戻してやるからな」
ユミルはヒストリアに近付いていく
恐怖はなく、親友を助けたい一心で近付いていく
「うぐっ……ライナー…何の真似だよ?」
ユミルはライナーに殴られ、その場に崩れ落ちる
「お前が死んだらな、クリスタは……ヒストリアは悲しむだろ?」
「お前……まさか…」
「故郷にいる、俺の両親に伝えてくれ」
「ライナー・ブラウンは戦士として死ぬんではなく、男として最後を全うしたと」
ライナーはヒストリアに近付いていく
ライナーの存在に気が付いた巨人はゆっくりと手を伸ばす
「クリスタ……本当の名前は、ヒストリア・レイスなんだな」
「ヒストリア……良い名前だ」
人は死ぬ時、走馬灯を見ると言う
彼が見た走馬灯は生まれてきて
母親に抱き締められているところからだった
物心をついた時から、戦士として鍛えられた思い出
ベルトルトとアニとマルセルと共に戦士として戦う事を誓った日が見える
初めて人類に攻撃をした日
多くの命を奪ったことに対し、大粒の涙を流した光景が見える
苦しかった、辛かった
逃げ出したい現実から目を背けていた
訓練兵として汗を流した日々が見える
教官に怒られた光景
エレン達と語った夢の話し
ミカサに投げ飛ばされた訓練
思い出すと色々あった
雨が降る中を羽ばたいて行った鳥はどこを飛んでいるのだろうか?
「ありがとな……クリスタ」
-
- 37 : 2015/01/06(火) 21:16:56 :
- 壁の上でライナー達を待っている2人は人影が近付いてくるのがわかった
「ユミル…クリスタ」
「えっ……ライナーは?」
アニとベルトルトの問いに答えるユミル
ユミルから聞かされた現実は2人の戦士の涙腺を破壊した
共に戦士として戦う仲間だからではない
幼い頃より一緒に遊び、喧嘩をし、泣いた
時には助け合い、誕生日を祝った思い出がある
大切な友達を失ってしまった
「いたぞ!巨人だ!」
「捕まえろ!!」
多くの兵士が集まってくる
その中には見慣れた顔もある
「アニ……頼むね」
「わかってる………」パチン
指にはめたリングで指先を傷付ける
アニは自分が嫌いな姿になる
ベルトルトとユミル
眠り込んでいるクリスタを両手に包み
壁の外へ走り出す
キュイイイイイイン!!
「!?」
突如、立体起動のアンカーが撃ち込まれた
アニを始め、戦闘を覚悟した
が、自分達の方に飛んで来たのは意外な人物だった
「アニ!ベルトルト!お願いだ!僕も連れていってくれ!!」
エレンとミカサの幼馴染み
104期で1番の秀才である少年だった
壁の上から聞こえる叫び声
ミカサとエレンの声であった
「何でだよ!?アルミン!!!」
何かを変えることが出来るのは、何かを捨てることが出来る者
アルミンは真実に近付くため、友との別れを選んだ
これが最後になるわけじゃない
全てが終れば会える
夢の続きを見ることが出来る
アルミンはエレンとミカサとの一時の別れを選んだのだ…
女型の巨人は走る
これは戦士としての使命が終わったから走るのではない
体制を立て直す為に1度だけ退散する
彼等の戦いは終わらない
~孤独な空を舞う戦士~
―――Fin―――
PS
「……」
「ヒストリア?どうかしたのか?」
巨大樹の森で休んでいる5人
ヒストリアとユミルは2人で話していた
「あそこに止まってる鳥ね、私は知ってる子なの」
翼に小さな傷がある鳥
こちらをずっと見ている
「へぇ、どっかで捕まえたのか?」
ユミルの問いに首をふる
彼女は答えた
「好きな人とね、一緒にいられる時間を作ってくれた……私の友達なの」
孤独な空の下から届かぬ愛を込めて
Fin
最後まで見てくれた皆様、本当にありがとうございます
かなり強引に書きましたが、前々から書こうかと悩んでいた内容でした
原作はもっと面白く、素晴らしい話になると思います
これは、ただEreAniか妄想しただけの話です
少しでも楽しんで貰えたら嬉しいです
それでは、次の作品で会いましょう。
-
- 38 : 2015/04/07(火) 12:26:11 :
- 感動しました!
エレアニさんはいつもすごい!
-
- 39 : 2015/04/11(土) 23:17:00 :
- 名無しさん
読んで頂いて嬉しいです!!コメントもありがとうございます!
次の作品も楽しんで貰えるように頑張りますね!
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
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