この作品は執筆を終了しています。
一番の被害者、エレン。
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- 1 : 2013/11/18(月) 13:46:51 :
- 第23話 慈悲 のネタバレ含みます。
学生コミュニティサイト、キャスフィの進撃の巨人板にも投稿しております。
予め書き溜めたものを投下しますので、かなーり更新早いです。
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- 2 : 2013/11/18(月) 13:48:44 :
- 「遅ぇな……」
リヴァイはそう呟くようにして言い、一口お茶を啜った。
「エルヴィンの野郎共……待たせやがって。憲兵が先に来ちまうぞ……」
どこともない空虚をリヴァイは見つめている。
「大方……クソがなかなか出てこなくて困ってんだろうな」
「ハハハ……」
リヴァイの笑えない冗談に、エレンは笑った。
お茶を啜る音が響く。部屋はとても静かだ。
「兵長……。今日は……よく喋りますね」
リヴァイはちらりとだけエレンの方を見て言った。「バカ言え、俺は元々結構喋る……」
「……すみません。俺が……あの時……」
エレンは全く視線を動かさない。真っ直ぐ前を見つめたまま、声を絞り出すようにして言った。
「選択を間違えなければ……兵長にもケガまで……」
リヴァイは少しだけ顔を上げ、あの時のことを思い出した。
「言っただろうが、結果は誰にもわからんと」
沈黙が流れた。それを破ったのは戸を叩く物音だった。扉が開かれ、エルヴィンの声が響く。
「遅れて申し訳ない」
「いえ……」
エレンは立ち上がった。
「アルミン? ミカサも……。ハンジさんまで……?」
エレンは動揺を隠せずにいる。
エルヴィンは通る声で、はっきりと言った。
「少し、実験をしようと思う」
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- 3 : 2013/11/18(月) 13:49:29 :
席に着いた一同は、ハンジが説明をするのを待った。
「この実験は、アルミンと一緒に考えたんだ。今回の作戦にも有効だと思って……というか、変に薬品をいじっていたら偶然面白い物ができてしまったんだ。それを試したい」
リヴァイが舌打ちをした。
「今回の替え玉作戦……これが成功すれば、もっとスムーズに行くと思うんだ」と、アルミン。ハンジは頷く。
「肝心の、お前の持っている薬品は何なんだ」
リヴァイは低い声で尋ねた。
「中身が入れ替わる薬だよ」
「……は?」
一同が口を半開きにする。
「この瓶の中に入っている気体を吸えば、吸った者同士の人格が入れ替わるんだ」
ハンジは嬉々とした表情で話す。
「いやいや、ちょっと待ってくださいよ!」
エレンは机に手をついて立ち上がった。
「落ち着いて、エレン」
ミカサが制すが、全く耳に届いていない様子だ。
「全然替え玉作戦関係なくないですか?」
「うん、今考えてみると全然関係ないね」
ハンジはさらりと言った。
「まあ、とにかく面白いからやってみようよ! 何か新しい発見があるかもしれないし!」
「おい待て……」
リヴァイが止めようとするが、一歩遅かった。ハンジは瓶の蓋を開け、机の中央に置く。気体を吸ったのか、ケホケホ、とエレンが咳き込んだ。
「エレン大丈……」
ミカサの声はそこで途切れてた。
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- 4 : 2013/11/18(月) 13:50:10 :
痛む頭を押さえ、エレンは身を起こした。
「エレン、大丈夫……?」と、エルヴィンがエレンに手を差し出す。
「え?」
エレンは一瞬戸惑った顔をして、すぐに状況を飲み込んだ。
「僕はアルミンだ。エレンじゃない……人格が入れ替わってしまったんだ。エルヴィン団長は……もしかしてミカサ?」
エルヴィンはこくりと頷く。
「私はミカサ……さっきから、目線がおかしいと思った」
エルヴィンの外見をしたミカサと、エレンの外見をしたアルミンは顔を上げて周りを見渡した。
「おいクソメガネ……これはどういうことだ」
アルミンがハンジの胸ぐらを掴む。
「残念ながら、クソメガネはそっちじゃないよ~」
リヴァイがにやにやと笑いながら言う。まるで、この状況を楽しんでいるかのように。
「へ……兵長!? どうしたんですか、急に」
ミカサがおろおろとしている。
エレンの外見をしたアルミンは、冷静に言う。
「取りあえず、状況を整理しよう」
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- 5 : 2013/11/18(月) 13:51:49 :
「まず、エレンになっているのが僕、アルミン・アルレルトで……物言いからして察すると、僕になっているのがリヴァイ兵長ですよね?」
アルミンの姿をした人物に確認を取る。こくりと頷いた。
「リヴァイ兵長の姿をしているのが……ハンジさん?」
「あたりー」と、リヴァイが笑う。
必死に笑いをかみ殺し、続けた。
「ハンジさんの姿になっているのが……えーっと」
「私、エルヴィン・スミスだ」
「で……エルヴィン団長になっているのが、ミカサ」
エルヴィンは頷く。「うん」
「ミカサになっているのが……残りのエレンか」
「おお、お、俺が……ミカサ……?」
中身エレンのミカサだけが、状況を読み込めていない様子である。アルミン――リヴァイがこう言った。
「おい、この後会議があるんだが」
「あっ、すっかり忘れてたな。アハハ。ついついこの実験のことで頭がいっぱいだったよ」
リヴァイ――ハンジが笑う。
「……忘れてた、じゃないだろう。しかし――これでは会議に出るどころではないな」
自分の手や髪をアルミン――リヴァイは見て、深いため息をついた。眉間にしわがよっているアルミンなんて、初めて見た。
「解毒剤は無いのか?」
「ど、毒って……うーん。あ、しまった。部屋に置いてきてしまった」
アルミンはリヴァイを殴った。ミカサ――エレンがププッと笑いを漏らす。
「おい」
アルミンに睨まれ、ミカサは口を手で押さえた。
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- 6 : 2013/11/18(月) 13:53:07 :
- 「エルヴィ……ハン……エルヴィン、どうする? 会議まで時間が無い……出発しなければ間に合わないぞ」 アルミンはちらちらと時計を確認し、ハンジに問うた。
「……解毒剤がないのなら、このまま行くしかないだろう。私とハンジは一応参加できる。それに、私の外見をしているのがミカサなら、私たちが補助をすればなんとかなるだろう……」
そんなにいい加減で本当に大丈夫なのだろうか。不安が大きいが、ここは任せるしかない。
「……頼んだぞ。クソメガネ、くれぐれも俺の格好で変なことはやらかすなよ」
「大丈夫だってー。さ、行こうか。ミカサは私たちの指示に従ってくれればいいから」
「はい。……エレン、何かあったら必ず言うのよ」
エルヴィン――ミカサはそう言い残し、リヴァイ――ハンジ、ハンジ――エルヴィンに連れられて部屋を出て行った。
「チッ」
アルミンは舌打ちをする。
「兵長……俺は……」
ミカサはアルミンを見つめた。
何だこの光景、とエレン――アルミンは思う。
――でも、これはある意味面白いな。僕が何をやらかしても、責任は全部エレンに負わされる……。
ゲスミンスイッチが不意に押されてしまったようだ。
「僕、ちょっと用事思い出したんだ! 少しだけ自分の部屋に戻る」
エレンは立ち上がった。慌ててミカサ――エレンも立ち上がる。
「エ……アルミン! ちょ、お前こんな時に……」
顔をしかめているミカサに、エレンはふっと笑った。
「大丈夫、すぐに戻るから」
そう言い残し、エレン――アルミンは去って行った。残されたミカサ――エレンとアルミン――リヴァイには微妙な空気が流れる。
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- 7 : 2013/11/18(月) 13:55:05 :
- 「アルミ……えーっと、えーっと……兵長。俺は……」
「何も言うな」そう言ったあとに、小さな声で「女の格好で俺とか言うんじゃねえ……」と付け足した。
「え? 何と言いました? ……すみません、聞き取れなくて」
ミカサは座る体制を変えた。
「いや、なんでもない」
「……そうですか」
会話が途切れて、三十分が経過した。突然戸を叩く音がして、驚いてミカサは扉を開けた。
そこには、走って来たのか息を切らしたジャンが立っていた。
「アルミン! ミカサ! ちょっと来てくれ……エレンが……っ」
ミカサとアルミンは顔を見合わせた。悪い予感しかしない。
「おいジャン、それはどういうことだよ」
「なんだ、ミカサまでおかしくなっちまったのか!? いや、その……エレンの様子がとにかく変なんだ」
ミカサ――エレンは喋り終えてからしまったと思った。今の自分は外から見ればミカサにしか見えない。事情を知っている人間以外、ミカサの外見をしている自分がエレン・イェーガーだということを知らないのだ。
「ううん……な、なんでもない。わわわ私は大、丈夫。とりあえず状況を教えて。でででないと分からない」
必死にミカサを演じる。
「急にクリスタのスカートをめくったり……察してくれ」
ジャンの顔が淡く赤面している。スカートをめくる以上のことをエレン――アルミンはやっているようだ。
――あの野郎。俺の姿しているからって……なにやってんだ!
ミカサは拳を握りしめた。
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- 8 : 2013/11/18(月) 13:56:19 :
- 「そ、そういうことなら急がないといけない。行ってエレンを止めよう」
「おう。……頼む、アルミンも来てくれ」
奥に座っているアルミン――リヴァイにジャンは声を掛けた。ミカサ――エレンは嫌な汗をかく。
「……チッ。面倒くせえガキ共め」
ジャンは一瞬動きがぴたりと止まった。
「アル……ミン? 熱でもあるのか!? 病気でも流行っているのか……?」
「……アルミンは元気だから、ジャン、早く行こう」
ミカサはジャンの背中を押し、ジャンを部屋から追い出した。扉を勢いよく閉め、アルミン――リヴァイに向かって囁く。
「兵長、お願いです……ついてきて頂けないでしょうか? あの、なるべく兵長には喋らせないように努めますんで……」
アルミンは少し迷ってから立ち上がり、答えた。
「これっきりだ」
「ありがとうございます!」
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- 9 : 2013/11/18(月) 13:58:22 :
- ミカサ――エレン、アルミン――リヴァイ、ジャンはエレン――アルミンのいる宿舎へと向かっていた。
「ひゃああ!」
か細い悲鳴が時折聞こえる。
「エレン、やめて。失望した。死ね!」
とんでもない暴言が、次々と聞こえてくる。声の主はクリスタだ。
ミカサ――エレンはなんとも言えない気持ちになった。厳密に言えば罵倒されているのはアルミンだが、自分の名前を呼ばれると、やはりいい気分にはなれない。
「女神クリスタ様の言った言葉だと思えねえよ……思いたくもねえ……」
ジャンは髪をくしゃくしゃとかく。
「だいたいよ……エレンにはミカサがいるじゃねえか!! それなら俺にミカサをくれ!!」
こういう場合ミカサならどうするのだろうな、とミカサ――エレンは考えた。自分がエレンで、ミカサの姿をしているだけにとても複雑だ。助けを求めるわけでは無いが、アルミンの方をちらりと見る。アルミン――リヴァイは淡々と静かに後ろをついてきている。眉間にしわを寄せた表情は、リヴァイそのものだ。
階段を駆け上がり、クリスタの叫び声がした方角へ急ぐ。その途中で、コニー、ライナー、ベルトルトに会った。
「おせぇぞ、ジャン」
コニーが苛立ちを露わにする。
「すまん……これでも走って来たんだが。ミカサ、アルミン……あの廊下の奥だ、二人がいるだろう」
ジャンが指さす方向を見た。エレン――アルミンとクリスタが、取っ組み合いのようなことをしながら、じたばたとしている。
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- 10 : 2013/11/18(月) 13:59:55 :
- 「うん、見える……ところで、お前……あなたたちは何をしているの?」
「見てるんだ」
ライナーが真っ先に答えた。
「ミカサにエレンを止めてもらって、目を覚まさせるのが男の間でも一番平和的に解決できるからな……手を出さずにいた」
――何やってんだよ……!
腸が煮えくり返りそうな勢いで、怒りが募る。
「……ど、どうすればいいの?」
「殴るなりして……止めてくれ。頼む」
――自分で自分を殴れって言うのか!? それは流石に……嫌だな。
そこでエレン(ミカサ)は一つ閃いた。
「アルミン、いい一緒に来て」
そう言ってアルミン――リヴァイの手を引いて、二人の元へ歩み寄った。
「なんだ、エレン」
アルミンの眉間のしわが深くなる。ミカサはアルミンの耳元で囁いた。
「俺を、蹴ってくれませんか……? 兵長なら、歯が折れるほど俺を蹴ったことがある訳ですし……」
「ほぅ……悪くない。躾に一番効くの痛みだ」
アルミンはカツカツと二人の元へ早足で近づき、立ち止まった。
エレン――アルミンは驚いて、クリスタを掴んでいた手を離す。
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- 11 : 2013/11/18(月) 14:00:27 :
- 「……リヴァイ……兵長」
大粒の汗が、エレンの額からぽとりと流れ落ちる。と同時にアルミンは、エレンの顔面を蹴りあげた。ガッガッガッと、エレンに蹴りを入れる音が廊下に響き渡る。
「アル……ミン?」
クリスタは呆然と立ち尽くしていた。アルミンがエレンをなんの躊躇いも無く蹴り上げている姿など、誰も見たことが無かった。
「やっぱりアルミンは熱でもあったのか……? ミカサの様子も少し変じゃないか……?」
ジャンが呟く。
「僕も思った。ミカサならこの状況を見て一目散に飛び出して、エレンをクリスタから引きはがすかと……。アルミンが手を出すなんてことは、ありえない」と、ベルトルト。
コニーは腕を組んで、視線を落とした。
「エレンも変だし……いったいどうなってるんだ?」
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- 12 : 2013/11/18(月) 14:00:48 :
アルミン――リヴァイは蹴るのに満足したのか、蹴るのをやめた。その代り、思い切りエレンの髪を鷲掴みにし、引っ張る。
「どうだ、少しは反省したか?」
薄らと開かれているエレン――アルミンの瞳を覗き込んで、威圧的に尋ねる。エレンは何かを喋ろうと口を開けるが、力が入らないようだ。そんなエレンを離し、くるりとミカサの方を見た。
「……さっさとこの馬鹿を連れて戻るぞ」
アルミンは無駄な動作なくエレンを担ぎ、すたすたと歩き去って行った。
「……は、はい!」
ミカサは急いでその後を追った。残された者たちは口を半開きにし、その場に立ち尽くして、二人の様子を目で追っていた。
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- 13 : 2013/11/18(月) 14:01:18 :
「兵長……俺が、担ぎます」
リヴァイは首を横に振った。中身はエレンだと分かっていても、やはり女の外見をしている以上、重たい男の体を担がせるのは気が引けたのだ。
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- 14 : 2013/11/18(月) 14:02:57 :
- 数日後、なんだかんだで皆元の体に戻った。とりあえず、ハンジはリヴァイに蹴られた。
しかし、「イテェ!!」と声を上げたのはエレンであった。アルミンがエレンの姿をしているときに蹴られた傷が疼くのだ。そして、同期のメンバーからは冷たい視線を浴び、特に女子からは嫌われた。
その反面。
変態行為を犯したエレンを激しい蹴りで止めたアルミンは、皆からの好感度が上がり、オロオロとしていたミカサも可愛らしいとのことで評判だった。
~おしまい~
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- 15 : 2013/11/18(月) 14:05:04 :
- ウワアアアアアアア!
エレンさんが!w
乙です!面白かったです
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- 16 : 2013/11/18(月) 14:09:01 :
- >15さん
ありがとうございます!
こちらへの投稿は初めてだったので、緊張してましたww
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- 17 : 2013/11/18(月) 14:19:37 :
- 面白かったです!!
ややこしくて頭パンクしましたw
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- 18 : 2013/11/18(月) 15:02:44 :
- >17さん
ありがとうございます!
書き方勉強しなきゃですね^^;
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- 19 : 2013/11/18(月) 20:51:19 :
- 非常に面白かった....ので乙ww
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- 20 : 2013/11/19(火) 11:10:00 :
- >19さん
ありがとうございます! 嬉しいです(>_<)
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- 21 : 2014/02/16(日) 08:44:38 :
- しかしその後、ハンジ達からの発表ですべてアルミンが原因だということが発覚。 女子から避けられ、エレンはアルミンをためらいなくホコボコになるまでけるようになった。
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- 22 : 2014/02/21(金) 22:32:20 :
- <<21 アルミンかわいそうww
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- 23 : 2014/02/21(金) 22:53:01 :
- 途中でわからんくなった~~でも最後面白かった!
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- 24 : 2016/02/15(月) 18:52:17 :
- これは書き方が悪いね…内容はいいのだけれど…
例えば
エレン「ーーー」
改行
ミカサ「ーー」とかにしてみるといい
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- 25 : 2017/09/25(月) 21:32:49 :
- 緊急でお知らせします。俺の弟ベルトルトが自殺したので名前変えます。ライナー教官にします。
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- 26 : 2017/09/25(月) 21:51:40 :
- >>25
えっ⁉︎えっ⁉︎
やめてよ!氏ぬなよ!
エレンチートが流行ってるからねw
四年前のだけどw
エレンザマァwww
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