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『兵士達の壁ドン!』最終章―壁ドンマスターモブリットの逆襲?―

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  1. 1 : : 2014/12/18(木) 13:25:08
    『兵士達の壁ドン!』最終章―壁ドンマスターモブリットの逆襲?―


    兵士達が、今巷で話題の壁ドンにトライしてきました

    partⅠリヴァイ兵士長 
    http://www.ssnote.net/archives/25778 

    partⅡニファ 
    http://www.ssnote.net/archives/26688 

    part Ⅲ ミケさんとナナバさん
    http://www.ssnote.net/archives/27862

    と、少し繋がりがありますので、宜しければ読んで下さい♪ 

    ついに最終章、壁ドンマスターモブリットに春は訪れるのか?! 

    ネタバレは単行本 

    いろいろカプあり 

    よろしくお願いいたします♪ 
  2. 2 : : 2014/12/18(木) 13:31:41
    期待しかない
  3. 3 : : 2014/12/18(木) 13:39:13
    とあちゃん、ありがとう(*・∀・*)ノがんばる!
  4. 4 : : 2014/12/18(木) 13:39:22
    モブリット「俺は今日から…破天荒になるんだ…からな…リア充どもめ、今に見てろ…ゲフッ」


    数々の兵団内カップルを成立させた、調査兵団一の苦労人、モブリット・バーナー

    上官であるハンジの無茶に振り回され、部下の色恋沙汰の手助けをし、痴話喧嘩の仲介までさせられた彼は、ついにキレた

    「俺は今日から破天荒に生きる!」

    彼は同僚に啖呵を切って、兵舎を飛び出した

    彼の言葉に、同僚達は唖然としながら顔を見合わせるのだった
  5. 5 : : 2014/12/18(木) 13:45:29
    モブリット「…飛び出してきたはいいが、破天荒ってなんだ…?」

    飛び出して数分で、モブリットは我に返った

    彼の辞書にも、今までの人生にも、破天荒という文字は存在しなかった

    破天荒はむしろ、普段の彼とは正反対の生き方と言えるだろう

    モブリット「破天荒破天荒…どうしたらいいかな…パーっと貯金をギャンブルにつぎ込むとかか?それともそこらの女性をナンパしまくるとかか?だめだどれも出来そうに無い…」

    案の定、モブリットは頭を抱えた

  6. 6 : : 2014/12/18(木) 13:52:16
    モブリット「はっ、そうだ!有り金全部酒につぎ込もう!飲んで飲んで飲みまくる、これしかないな!そうと決まれば善は急げだ!」

    モブリットは酒場にダッシュした


    こうしてモブリットは、有り金すべてを酒に使い、酒場が閉まる時間までくだを巻いていたのであった
  7. 7 : : 2014/12/18(木) 14:03:04

    モブリット「…破天荒に、なれた、かな…ゲフッ」

    モブリットは夜の町をおぼつかない足取りで、ふらふら歩いていた

    こんな夜更けに、彼がこの様な場所でふらふらしているという事は、今までに一度だって無い

    モブリットは、少し破天荒に近づいたのではないかと自負していた

    裏通りを歩いていると、前から男前達が歩いてきた

    モブリットはそれに気が付き、道のはしに寄って進路を譲った

    …はずだったのだが、何故か肩が男の一人にぶつかった

    「あ、すみません…」

    モブリットは頭を下げて、立ち去ろうとした

    だが、男どもに進路を塞がれる

    「おい兄ちゃん、肩が外れた。慰謝料に有り金全部置いていけ」

    その言葉に、モブリットは酔いのせいで視点の定まりにくい目を、男たちに向けた
  8. 8 : : 2014/12/18(木) 14:22:59
    モブリット「…あの、肩外れていないようですが…」

    男1「外れてんだよ!さっさと金よこしやがれ!」

    モブリット「…お金、無いんです。全部お酒に使ってしまって…はは」

    男2「てめぇ!ふざけやがって!やっちまえ!」

    モブリットの態度に腹を立てた男どもは、彼に殴りかかった

    モブリット「…うわっ」

    モブリットは慌てて避けた

    すると男の一人は、体勢を立て直せず道に倒れた

    男3「いてええ…」

    男1「てめえ、よくもやりやがったな!」

    モブリット「えっ、俺はなにも…うわわっ!」

    モブリットはまたしても避けた

    男2「避けるんじゃねえ!すばしっこいやつめ!」

    モブリット「だめだ、酒のせいでふらふらして…」

    男1「今だ、やっちま…」

    モブリット「まあ、力の加減なんかいいか。俺は破天荒だしね…よっ!」

    モブリットはそう言うと、飛びかかろうとしていた男1に、脚蹴りを思い切り叩き込んだ

    男2「こいつ、強いのか?!」

    モブリット「破天荒破天荒…」

    ドンッ!

    身構える男2を壁際に追い詰めて、拳を男のすぐ横に叩き込んだ

    木の壁には、モブリットの拳の形の穴が穿たれた

    男2「ひいい」

    モブリット「俺は、弱い方です」

    モブリットがそう言うと、男2は慌てて逃げ去っていった

    残ったのは、昏倒して動けない男1と、地面に這いつくばりながら逃げようとする、男3であった
  9. 9 : : 2014/12/18(木) 14:29:40
    モブリット「ふう、何だか破天荒ってすっきりするなあ。今までにない経験だ…ゲフッ」

    モブリットもその場に座り込んだ

    その時だった

    「暴力行為を働いたのはお前たちだな!」

    厳しい口調の凛とした女性の声が、モブリットの耳に届いた

    モブリット「暴力行為…はい、俺です」

    モブリットは半分目をつぶりながらそう言った

    「お前を暴力行為と、器物破損の罪で逮捕する!」

    モブリット「…逮捕ね、逮捕。破天荒だなあ…って、えええええ!」

    モブリットは我に返って叫んだ
  10. 10 : : 2014/12/18(木) 15:07:15
    期待。
  11. 11 : : 2014/12/18(木) 16:27:11
    >じけいさん☆
    ありがとうございます♪嬉しいです(*´∀`)
  12. 12 : : 2014/12/18(木) 16:44:56
    モブリット「あの、違うんです!不可抗力というか、正当防衛というか…」

    「正当防衛にしてはやりすぎじゃないか。しかも壁に風穴が開いているぞ?!」

    凛とした声の女性は、壁を指差して言い放った

    モブリット「ああ、それは破天荒…いや、つい出来心で…」

    「とにかく、大人しくしろ。動けば切るぞ」

    女性はそう言うと、おろおろするモブリットの手首に手錠を嵌めた

    モブリット「うわぁ、手錠かけられた…何てことだ…」

    「お前たちも同罪だ。本部でゆっくり話を聞く!」

    女性は倒れている男たちにも手錠をかけ、三人を引き連れて歩き始めた
  13. 13 : : 2014/12/18(木) 16:52:04
    モブリット「駐屯兵団本部…」

    「そうだ。お前たちは明日までここに拘留される。その後は上の沙汰次第だ」

    モブリット「拘留…ちょっと待ってください、話を聞いて頂けませんか?!」

    「無理だ。問題を起こした者の拘留は決まっている事だ」

    女性は冷たい目でモブリットを見ると、つんと顔を背けた

    モブリット「そ、そんな…」

    モブリットは肩をがっくり落とした
  14. 14 : : 2014/12/18(木) 16:59:09
    駐屯兵団本部の地下にある取調室に、三人は押し込まれた

    「お前たちの身分証を見せろ」

    女性兵士の言葉に、男たちは徐にカードを取り出し提示した

    モブリット「み、身分証…しまった、ジャケットにいれたまま忘れてきた…」

    モブリットは調査兵団のジャケットを、破天荒になるために部屋に置いてきたのであった

    「お前、早く見せろ」

    モブリット「す、すみません。忘れてきてしまって…持ち合わせていないんです…」

    「身分証を持つのは義務だ。お前の罪がまた一つ増えた。身分証不携帯。明日も帰れないと思っておけ」

    女性兵士の冷たい言葉に、モブリットは呆然とした
  15. 15 : : 2014/12/18(木) 17:06:14
    格子付きの部屋に押し込まれたモブリット

    モブリット「ああ、まさか俺の人生にこんな結末が待っていようとは…」

    モブリットは諦めた様に、その場に座り込んだ

    モブリット「今まで真面目に生きてきたのに…」

    手錠をはめられた手を見て、モブリットは泣きそうになった

    モブリット「もう、いいや。破天荒でも、真面目でも、もうどうでも…」

    モブリットは目を伏せた

  16. 16 : : 2014/12/18(木) 17:15:06
    「リコ、騒ぎの犯人捕まえたんだって?もう、無茶したら駄目じゃない!」

    モブリット「…外から声がするな。女性の声だ。何処かで聞いたことがあるな」

    モブリットはそう思ったが、目を開けようとは思わなかった

    もう、全てがどうでも良くなっていたのだ

    リコ「大丈夫だよ。二人はろくに動けないほど弱っていたし、一人は壁に穴を開けた割には大人しかったしね」

    モブリット「…そうか、さっきの怖い女性兵士は、リコって言うのか」

    モブリットは会話を聞くともなしに聞きながらそう言った

    「ちょっと覗いてみようかな?風穴男はわりといけてるんでしょ?」

    リコ「そんな事一言も言ってない。悪人には見えないと言っただけ」

    モブリット「…風穴男って俺の事だよな。なんて2つ名なんだ」

    モブリットはため息をついた
  17. 17 : : 2014/12/18(木) 17:24:51
    「覗いちゃお!」

    リコ「ちょっとアンカ、駄目だってば!」

    モブリットは目を開けた

    すると、格子ごしに女性が二人見えた

    アンカ「あ、あら、あらららら」

    リコ「なに、どうしたの?アンカ」

    モブリット「あ、アンカ、君だったのか」

    モブリットはほっと胸を撫で下ろした

    同期で、見知った人物であったからだ

    アンカ「モブリット、あなたどうしちゃったの?こんな所に世話になる生活送ってないはずなのに」

    リコ「この男と知り合い?」

    アンカ「ええ、訓練兵団の同期。彼は調査兵団のモブリット・バーナーよ」

    リコ「モブリット、って、あの、ハンジ分隊長の副官の?」

    アンカ「そうよ。彼、私の友人でもあるの」

    モブリット「アンカ、頼む、出してくれないか?話を聞いて貰えたらわかるはずだから…」

    リコ「駄目だ。決まり事は曲げられない」

    リコはモブリットの願いを横から却下した
  18. 18 : : 2014/12/18(木) 19:05:49
    モブリット「そ、そんな事言わずに…」

    アンカ「まあ、悪い人ではないはずだから、リコ」

    リコ「身分がはっきりしたからとは言え、器物損壊罪は変わらない。後、男二人、いや三人に暴力を振るった。兵士にあるまじき行為だ」

    モブリット「因縁つけられて、三人がかりで襲ってきたから、つい…」

    モブリットは項垂れた

    アンカ「ほら、反省してるし、許してあげて、リコ。身元は私が保障するから…」

    リコ「アンカがそう言うなら…話は聞くよ」

    リコは渋々、モブリットを牢から出した
  19. 19 : : 2014/12/18(木) 20:44:21
    モブリット「あの、手錠は…?」

    リコ「駄目だ。お前は危険人物だからな」

    アンカ「プッ、プププ…モブリットが危険人物…あはは!」

    リコ「ちょっとアンカ、笑わないでよね!」

    アンカ「だ、だってほんとに人畜無害なのよ、モブリットは。それなのに…あー楽しい!」

    リコ「でも、壁に穴を開けた。しかも兵士の癖に民間人に本気を出すし」

    モブリット「壁に穴を開けたのは謝ります…。民間人に本気を出すというか、酔っていてふらふらで、力の加減をミスったというか…」

    アンカ「ばかねえモブリット。なんで壁に穴なんか開けたのよ」

    モブリット「いや何というか、直接顔を殴ったら駄目かなと思って、代わりに壁を殴ったら逃げてくれるかなぁ、なんて…」

    リコ「器物損壊罪」

    モブリット「弁償しますから、許して下さい。こんなことが上に知れたら…」

    アンカ「やばいわよね、さすがに。調査兵団の幹部なわけだし」

    モブリット「いや、万が一ハンジさんなんかに知られたら、もう調査兵団では生きていけない。面白おかしく語り継がれてしまう!」

    モブリットは頭を抱えた
  20. 20 : : 2014/12/18(木) 23:59:58
    リコ「何だか、上司にものすごく苦労させられているみたいな口振りだね」

    アンカ「だってあのハンジさんの副官よ?大変に決まってるじゃない」

    リコ「確かに…でもそれとこれとは話は別。罪を犯せば償うのは当然」

    モブリット「はい…かくなる上は、何でもやらせていただきます。ただ、ハンジさんだけには伝えないで下さい!後生ですから!」

    リコ「そんな、涙目で訴えられても困る」

    アンカ「本当に普段は真面目で、ただのいいやつなだけだから、多目にみてあげて、リコ」

    リコ「わかったよ。じゃあ明日1日の奉仕活動で手を打とう」

    モブリット「あ、ありがとうございます、リコさん、アンカ」

    モブリットはリコに頭を下げた
  21. 21 : : 2014/12/19(金) 00:00:45
    アンカ「良かったわね、モブリット。ブタ箱で一夜を明かさずに済みそうで」

    リコ「いや、拘留は変わらないよ。規則だからね」

    モブリット「牢屋で一夜を明かすなんて、無理だ…」

    アンカ「リコは規則規律に厳しいからねえ」

    モブリット「兵舎に帰らせて下さ…いや、だめだ。兵舎には帰れない!」

    アンカ「何でよ?」

    モブリット「破天荒になると言って飛び出してきたんだ。朝までは戻らないと決めた」

    リコ「ならちょうどいい。牢屋で一夜を明かせ」

    モブリット「それは、嫌です…」

    アンカ「じゃあどうするのよ。私は兵舎に戻るわよ。リコももうすぐ勤務交代の時間だし…」

    リコ「そうだね。やっぱりお前は牢屋に…」

    モブリット「いたしません…」

    アンカ「な、なによそれ…っていうかなんて顔してるの?泣きそうじゃない」

    リコ「男の癖に泣き虫…って、きゃ!」

    リコは慌てた

    モブリットが突然ぱたりと倒れたからである

    自分の、胸の中に
  22. 22 : : 2014/12/19(金) 00:10:52

    アンカ「モブリット…もしかして、寝たのかな」

    リコ「ええっ、今まで普通に起きてたじゃない」

    アンカ「昔からこうなのよ。凄くお酒を飲んだ時、酔ってないみたいに見えて、実は酔ってて、突然眠っちゃうの。女なら危険よね」

    モブリット「むにゃむにゃ…」

    リコ「ていうか、退かせてよ、アンカ!」

    アンカ「あらら、モブリットったら役得ね。ちゃっかりリコの胸を枕に寝てる…可愛い」

    リコ「か、可愛いわけない!セクハラだ!痴漢行為だ!」

    アンカ「リコ、顔が真っ赤だよ。まあ、仕方ないね。モブリットには珍しく荒れてたみたいだし、きっと何か嫌なことがあったのよ。連れ帰って寝かせてあげよう」

    リコ「調査兵団に送り返せばいい!」

    アンカ「かわいそうじゃない。可愛いし」

    リコ「可愛くないよ!は、犯罪者だ!」

    アンカ「もう最初からそんな風に思ってないくせに、リコったら」

    リコ「も、もういい。とにかく邪魔だから連れて帰るよ!」

    アンカ「私も一緒に行くわね。まあモブリットに限って万が一なんてないけど、念のため」

    こうしてモブリットは、寝ている間に二人の女性に連れていかれたのであった
  23. 23 : : 2014/12/19(金) 11:51:27
    ―翌朝―

    リコ「こら、起きろ!」

    ドスッ…リコはソファで安眠を貪っている男に手刀を繰り出した

    モブリット「痛っ!ハンジさん…やめて…」

    リコ「誰がハンジさんなんだよ。寝ぼけるな!」

    リコはモブリットの頭を叩いた

    モブリット「な、何を言ってるんですか…ハンジさん…じゃなかった!」

    モブリットはカバッと身体を起こした

    リコ「やっと起きたか。器物損壊の風穴男」

    モブリット「お、おはようございます、リコさん」

    リコ「名前を呼んでいいと言った覚えはない。お前は今日1日犯罪者なんだからな」

    モブリット「あ、すみません、管理官殿」

    リコ「第87号、朝食の支度ができている。さっさと身支度を整えて食え。5分でな」

    モブリット「朝食…朝食を用意して下さっているんですか?」

    リコ「本来なら牢屋の中の食事のはずだが、お前とアンカがわがままを言うから」

    モブリット「…俺のために、朝食を、用意して…ぐすっ」

    リコ「ちょっと!なんでまた涙ぐむんだよ!お前精神大丈夫か?!」

    モブリット「あ、すみません…こんなに至れり尽くせりは初めての経験なもので、つい…」

    リコ「一体どんな人生歩んできたんだよ…」

    リコは肩を竦めた


  24. 24 : : 2014/12/19(金) 11:56:53
    モブリット「どんな人生…聞かないで下さい…」

    リコ「…また泣きそうになっているな。お前泣き虫すぎだぞ、87号」

    モブリット「あの、87号ってやっぱり…」

    リコ「管理番号だ、受刑者のな。今日1日はそう呼ぶ」

    モブリット「…は、はい、管理官殿」

    リコ「返事ははっきり、歯切れよく!」

    モブリット「はいっ!管理官殿!」

    リコ「まあいいだろう。さっさと食え。奉仕活動に出るんだからな」

    モブリット「はいっ!管理官殿!」

    モブリットは一心不乱に朝食を口に運んだ
  25. 25 : : 2014/12/19(金) 12:04:30
    リコ「う、旨いか?」

    モブリット「はいっ!管理官殿!」

    リコ「そ、そうか…」

    モブリット「管理官殿が作ってくださったのですか!?」

    リコ「そ、そうだ。私の朝食のついでだがな」

    モブリット「オムレツが絶品です!管理官殿!」

    リコ「声が大きい…」

    モブリット「スミマセンカンリカンドノ」

    リコ「おちょくっているのか?!」

    モブリット「いいえ、指示に従っているだけです、管理官殿」

    リコ「そ、それならいい。早く食え!もう5分経つぞ!」

    モブリット「はいっ!管理官殿」

    モブリットは朝食を綺麗に平らげたのであった
  26. 26 : : 2014/12/19(金) 14:24:36
    モブリット「いやあ、すっかり綺麗に直りましたね」

    昨夜の現場に行き、早速壁の修繕をしたモブリット

    家の持ち主に謝罪した所、逆にお礼を言われた

    どうやら昨夜モブリットがやっつけた男達は、付近でも噂の、札付きの悪であったらしい

    高級そうなワインをお礼にと押し付けられたほど、感謝された

    リコ「まあまあ綺麗になったな。主人が優しかったから良かった物の、普通ならこうはいかないぞ、87号」

    モブリット「はい、わかりました、気を付けます、管理官殿」

    モブリットは素直に頭を下げた

    リコ「ま、まあいい。次は町の廃屋の片付けだ。付き合え」

    モブリット「駐屯兵団っていろいろ仕事があるんですね」

    リコ「き、今日は特別だ!私は精鋭班、本来ならこんな仕事はしない!お前が大人しく牢屋に入ってないからこうなっただけだ!」

    モブリット「駐屯兵団の精鋭班といえば、エリート中のエリートじゃないですか!管理官殿は凄いですね!」

    リコ「た、大したことはないっ…!やってることは憲兵の尻拭いばかりだからな」

    モブリット「大変ですね…」

    リコ「犯罪者に気の毒そうな目を向けられたくないわ!」

    リコは顔を真っ赤にしながら叫んだのだった

  27. 27 : : 2014/12/19(金) 14:39:25
    廃屋の内部は異様な雰囲気が漂っていた

    リコ「…こ、ここはな、数年前に殺人事件があってな」

    モブリット「そうなんですね。物騒な世の中だなあ…さっさと片付けてしまいましょう…って管理官、立ち止まってどうされました?」

    リコ「な、なんでも無い…」

    モブリット「管理官殿、顔色がすぐれませんよ。もしかして体調不良なのでは…俺が一人でやってきますので、あなたはここで待っていて下さい」

    リコ「ちょ、ちょっと待て!私も一緒に行く」

    モブリット「無理はいけませんよ、管理官殿」

    リコ「い、いやだ!こんなところで一人にするな!」

    モブリット「もしかして、怖いんですか?」

    リコ「そ、そんなわけ…きゃぁぁぁ!」

    リコは突然モブリットの背中にしがみついた

    モブリット「管理官殿?」

    リコ「あ、あ、あ、あれ…」

    モブリット「ん?鏡ですね。肖像画が写りこんでいるみたいですが…」

    リコ「はっ、そ、そうか…そうだよな、いるわけない、幽霊なんか…」

    モブリット「管理官殿、一緒にさっさと片付けましょう」

    モブリットの言葉に、リコは頷いた
  28. 28 : : 2014/12/19(金) 22:34:58
    モブリット「さあ、パアッとカーテンと窓を開けて…」

    リコ「うわぁぁぁ、なんかいた、なんかいたぞ!そこに!」

    モブリット「え?何も見えませんでしたが…」

    リコ「そ、そこだって…壊れたベッドの下…」

    モブリット「どれどれ…ああ、マネキンですね」

    リコ「本物の死体かと…」

    モブリット「数年前の事件なんでしょう?さすがに死体があっても骨だけに…」

    リコ「うわぁぁぁ、言うなバカ!」

    モブリット「すみません、管理官殿」

    背中にへばりついたまま離れないリコに、モブリットはぺこりと頭を下げた
  29. 29 : : 2014/12/19(金) 22:43:40
    モブリットは鼻唄混じりで、パタパタとはたきで部屋の埃を落としていた

    モブリット「フンフンフン♪いやあ掃除は楽しいなあ!」

    リコ「87号は掃除が好きなのか。ってきゃあ!」

    モブリット「管理官、今度は何です?ああ、大きな女郎グモですね。頭に乗ってますよ」

    リコ「蜘蛛…いやぁぁぁ!とってとってとって!」

    モブリット「はい、ほら外に行きなさい」

    モブリットはリコの頭から手のひら大の蜘蛛をつまんで、窓の外に出した

    リコ「き、気持ち悪…」

    モブリット「大丈夫ですよ、害虫を食べてくれるいい蜘蛛です。大きいですが」

    リコ「うう、大丈夫なわけない、蜘蛛は嫌いだ」

    モブリット「管理官殿はおばけと蜘蛛が嫌いなんですね。何だか可愛らしい…」

    リコ「か、可愛いわけないだろう!」

    リコの悲鳴が、廃屋に響き渡った
  30. 30 : : 2014/12/20(土) 09:37:52
    モブリット「いやあ、見事に綺麗になりましたね!」

    廃屋は、主にモブリットの働きのお陰で見違える程美しくなった

    リコ「ま、まあまあだな…」

    モブリット「管理官殿、大丈夫ですか…?声が枯れている様ですが」

    リコ「だ、大丈夫だ」

    モブリット「かなり叫んでおられましたしね。おばけだの幽霊だの、虫だの、変な音がしただの」

    リコ「う、うるさい!黙れ87号!」

    モブリット「すみません、管理官殿。そういえばいつの間にか日が傾いてきましたね」

    リコ「そうだな。廃屋掃除に思った以上に時間がかかった」

    モブリット「管理官殿がずっと俺の背中にへばりついているから…」

    リコ「何か言ったか?!」

    モブリット「いいえ、何も。ただ…」

    リコ「な、何だ!?」

    モブリット「管理官殿は怖い方だと思っていたんですが、普通に可愛らし…」

    リコ「可愛くないわっ!何度も言わせるな!」

    リコは顔を真っ赤にして叫んだ
  31. 31 : : 2014/12/20(土) 10:14:53
    リコ「1日奉仕活動はこれで終了だ。87号」

    モブリット「お疲れ様でした、管理官殿。では、無罪放免でよろしいですか?」

    リコ「ああ、お前は模範囚だったしな」

    モブリット「いやあ、模範囚なんて嬉しいです。奉仕活動も楽しかったですし。では腹も減りましたし、調査兵団に帰りますね」

    リコ「あ、ああ…」

    モブリット「どうされました?管理官殿。元気がないように見えるんですが」

    リコ「いや、何でも…」

    モブリット「もしかして…管理官殿」

    リコ「わ!顔を覗くな」

    モブリット「あっ、肩の上に蜘蛛」

    リコ「えっえっ?!とってとって!」

    モブリット「…嘘です。元気そうですね、良かった。まだ体調が悪くなったのかと」

    リコ「嘘をつくなぁぁ!」

    モブリット「すみません、管理官殿。ついうっかり。反応が可愛…」

    リコ「可愛くないって言ってる、だ、ろ!」

    モブリット「いひゃい、顔をひっぱらにゃいでくらさい」

    リコ「ふん!謀った罰だ」

    リコはモブリットの頬を左右に思いきり引っ張ってやったのであった


  32. 32 : : 2014/12/20(土) 17:45:35
    モブリット「あー、痛かった…管理官殿は手加減と言うものを知らないんですか…?」

    リコ「なぜ87号に私が手加減しなければいけないんだ」

    モブリット「管理官殿、もしかして…」

    リコ「な、何だ!」

    モブリット「そうか、あなたもどSなんですね。人が痛がったり嫌がるのを見るのがお好きな、どSなんですね!」

    リコ「ち、違う!私は普通だ!それにあなたも、って何だ。誰かと一括りにするな!」

    モブリット「ああ、実はうちの上官も、その相方も、同じ系統なんですよね。だから俺はいつも痛い目にしかあわないんです…」

    リコ「ハンジ分隊長か?かなりの変人だという噂だが…ってそんな人と一括りにしないでくれ!」

    モブリット「はい、変人です。でも…間違いなくこの世界に必要な、有望な方です」

    リコ「お前…」

    遠くを見つめる様なモブリットの顔を、リコはちらりと見ながら言葉を発した
  33. 33 : : 2014/12/20(土) 18:00:17
    リコ「87号は、ハンジ分隊長が、好きなのか」

    モブリット「…えっ?!」

    リコ「そんな顔をしていた」

    モブリット「いや、何というか、その、まあ…放っておけないというか…いろいろ抜けている所がありまして…」

    リコ「そうか…私もハンジ分隊長は見たことがある。凛として、勇ましい、そんなイメージを持った。変人ではあるのだろうが、調査兵団にいる時点で一種の変人だろうしな」

    モブリット「そうですね。俺も調査兵団に決めた時には、周りから変人扱いされましたから」

    リコ「私も、調査兵団に入るなんて変人としか思えない」

    モブリット「ですよね…はは」

    リコ「だが、少しだがイメージが変わった」

    モブリット「そうなんですか」

    リコ「ああ。調査兵団なんて死にたがりの自殺集団だとしか思えなかったんだが…87号を見ていると、案外普通なんだなと」

    モブリット「調査兵団は俺より数倍の変人の集まりだと思いますが…」

    リコ「そうかもな…でも、少なくともお前はまともだと思う」

    モブリット「管理官殿、もしかして…」

    リコ「な、何だよ!」

    リコは真面目な表情で顔を覗くモブリットから、距離を取るように後ずさった

    だが、背後は直ぐに壁

    これ以上後ずさる事は出来なかった
  34. 34 : : 2014/12/20(土) 18:17:03
    何気無く、モブリットは壁にとん、と手をついた

    その結果、リコの小柄な身体は、完全に壁とモブリットの身体にサンドイッチにされた

    リコ「ちょ、ちょっと…」

    リコは顔を限界まで赤くした

    モブリットは頭一つ分は低い場所にあるリコの顔を、屈むように覗きながら静かに言葉を発する


    モブリット「もしかして、調査兵団に入りたくなりましたか?」

    リコ「………………………んなわけないだろうがぁぁぁ!」

    モブリット「いひゃい、いひゃいです、きゃんりきゃんどの…」

    リコは激昂して、モブリットの頬をまた引っ張ったのだった

  35. 35 : : 2014/12/20(土) 18:28:42
    リコ「こ、この状況で、お前は全くデリカシーが無いっ…!」

    モブリット「この状況…はっ!もしかして…」

    リコ「ふん!」

    モブリット「そうか、これが壁ドンか…」

    リコ「知っていたのか、87号」

    モブリット「はい、実は調査兵団では壁ドンマスターと呼ばれているんですよ。壁ドンしたのは実は今が初めてですがね…管理官殿の様な可愛らしい方に初めての壁ドンができて、俺は幸せです、はい」

    リコ「まて、違うぞ。お前の壁ドン初体験は、昨日喧嘩した時の男相手だ。壁に穴を穿った時の状況だ」

    モブリット「……………あれは、違う。だって相手は男ですし、ただ脅すためにやっただけですし…」

    リコ「今だって、壁ドンしようと思ってしたわけじゃないだろ。流れでそうなっただけだ。よってお前の壁ドン初体験は、昨日のごろつき相手だ」

    モブリット「嫌です!管理官殿が初めての相手です!」

    リコ「違う!おっさんが初めての相手だ!」

    モブリット「おっさん相手なんて嫌です!」

    リコ「知るか!お前がやったんだろうが!」

    「何だ何だ、初体験だのおっさんだの…色っぽいようなそうでないような…壁ドンしながらやるやり取りにしては、色気がないなぁ、モブリット」

    背後から掛けられた言葉に、モブリットとリコはびくっと身体を震わせた
  36. 36 : : 2014/12/20(土) 18:52:48
    モブリット「ハンジさん…」

    ハンジ「やあ、今日1日どこいってたんだい?急にいなくなったから探したんだよ?」

    リコ「すみません、私が連れ回していました」

    リコは頭を下げた

    ハンジ「いやいや、いいよ!それならそうとちゃんと言ってから出てくれよ、モブリット。皆心配していたんだよ?破天荒になるとか言って出ていったとかでさあ」

    モブリット「はい、すみません、分隊長…」

    リコ「今日1日、仕事を手伝って頂いていました。どうしても、手が足りなくて…すみません」

    モブリット「管理官殿…」

    ハンジ「管理官?っと、いいよ、リコ!役に立ったかな?少しは」

    リコ「非常に助かりました。大切な部下をお借りしてすみませんでした。では私はこれで…」

    リコはぺこりと頭を下げて、その場を後にしようとした



  37. 37 : : 2014/12/20(土) 20:55:59
    ハンジ「待った待った!」

    リコ「襟首掴まないで下さいってきゃっ!」

    ハンジ「可愛い眼鏡ちゃん」

    ドンッ

    ハンジがリコを壁に押し付けて、手を壁についた

    リコ「ち、ちょっと!」

    モブリット「ハ、ハンジさん?!」

    ハンジ「うちの可愛いモブリット、君になら任せられる。是非もう少し可愛がってやってくれよ」

    リコ「な、何を言って…?!」

    モブリット「ハンジさん?!早とちりすぎです!」

    ハンジ「早とちりじゃない、先見の目だ」

    リコ「87号…モブリットは、あなたの事が好きなんだぞ、ハンジ分隊長!」

    ハンジ「うん、知ってる」

    モブリット「えっ…?!」

    ハンジ「そんな事、ずいぶん前からわかっていた。だが私には相手がいる。応えることが出来なかった。ならばせめて、身体の関係だけでもと思ったが、モブリットは真面目な奴だ。断られた」

    リコ「……」

    ハンジ「私はずっと、モブリットに似合いの女性はいないか、探していた。余計なお世話なのは百も承知。だが、こんなにいい男を、私の側にだけ置いておくのは勿体ない、そう思ったからだ」

    モブリット「分隊長…」

    ハンジ「今日、運命的な出会いを果たした。君しかいない、モブリットを幸せにしてやれるのは。リコ・ブレツェンスカ」

    ハンジはがしっとリコの肩を掴んだ

  38. 38 : : 2014/12/20(土) 21:05:27
    リコ「な、何故私が!」

    モブリット「そ、そうですよ!管理官殿に失礼ですよ!俺なんか、エリートの管理官殿とは釣り合いません。それに可愛いし…」

    リコ「か、可愛くないって言ってる!」

    モブリット「しかし、可愛いものは可愛いです!」

    ハンジ「ほら、仲良しじゃないか。それになぜかってそりゃぁ…」

    ハンジはそう言うと、リコの眼鏡をつついた

    リコ「えっ?!」

    ハンジ「眼鏡っ子だからさ、モブリットは眼鏡フェチなんだよね」

    モブリット「ち、違うわぁぁ!何を言ってくれてんですかっ…!」

    モブリットの悲鳴が辺りに響き渡った
  39. 39 : : 2014/12/20(土) 21:13:46
    ハンジ「なんだ、ちがうのかい。ずっと眼鏡の可愛い子を探していたんだけどなぁ」

    モブリット「眼鏡が好きだからとか、関係ないですよ…どう転んでそんな解釈になるんだか、俺には理解できません」

    リコ「眼鏡掛けてるだけで運命とか…あり得ない」

    ハンジ「でもさ、君たち普通にお似合いだと思ったんだよ。壁ドンの最中から観察してたけどさあ」

    モブリット「覗き見しないで下さいよ!分隊長!」

    リコ「わ、私は…やっぱり調査兵団は嫌いだ!だから、87号とも付き合ったりなんかしない!断じて、しないんだから!」

    モブリット「管理官殿?!」

    ハンジ「リコ!」

    リコは二人を置いて、走り去ってしまった
  40. 40 : : 2014/12/20(土) 21:21:37
    ハンジ「モブリット、振られたね」

    モブリット「振られるもなにも、まだ何も始まっていませんし…」

    ハンジ「追いかけなくていいのかい?」

    モブリット「俺に追い掛ける権利は…」

    ハンジ「最近町はごろつきで溢れかえっている。いくら駐屯兵団の服を着ていても、小柄で可愛らしいリコだ。万が一があるかもしれないよ」

    モブリット「………探してきます」

    ハンジ「ああ、そうしてあげて」

    ハンジが頷くと、モブリットはリコが去った方向へと駆け出して言った

    ハンジ「いやぁ、青春だねえ。しかし、管理官やら87号やら、まるで犯罪者みたいだな…はは」

    ハンジはそう言って、笑みを浮かべたのであった
  41. 41 : : 2014/12/21(日) 08:14:07
    リコの姿は案外早く見つかった

    彼女は商店街をゆっくり歩いていた

    モブリット「管理官殿!」

    リコ「もう、管理官などと呼ばなくていいよ。あなたは犯罪者じゃないんだから」

    リコは立ち止まり、ちらりとモブリットを見て言った

    モブリット「リコさん、でいいですか?兵舎まで送らせて下さい」

    リコ「構わないで、一人で帰れるから。あなたこそ上官を放っておけないんだろう?早く帰ってやるといいよ」

    モブリット「いや、あの人は大丈夫です」

    リコ「私だって大丈夫だ。ばかにするな」

    モブリット「ばかにしたつもりはありませんが…失礼しました」

    リコ「……いいよ、謝らなくて」

    頭を下げるモブリットに、リコはゆるゆると首を振った
  42. 42 : : 2014/12/21(日) 10:29:18
    駐屯兵団の兵舎への帰り道

    夕焼けに染まる街道筋を、二人はゆっくり歩む

    リコ「私はね、 目の前で大事な人を失ったんだ」

    モブリット「そうなんですか…」

    リコ「まあ、壁外へ行く度に仲間を目の前で失っているあなたにしてみれば、甘いと思われるかもしれないが…ショックだった」

    モブリット「甘いなんて思いませんよ。人の命は等価です。何人目の前で奪われようと、その悲しみには大小はありませんから」

    リコ「そうか…なあ、いつまで戦えば、この悲しい連鎖は止められるんだろうか」

    モブリット「…………わかりません。止められるかどうかも、定かではありません」

    リコ「では何故、あなたたちは壁外へ行くんだ?止められる可能が壁外に無いのなら」

    モブリット「それを模索するために、行くんですよ。俺たちは、巨人の事をまだまだ理解していないのです。壁外の遥か向こうに、なんらかの手がかりがあると、そういう希望を持って、戦っているんです」

    リコ「死に急ぐくらいなら、壁の中でしっかり人類を守る方が有益だとは思わないか?」

    モブリット「壁がいつまでも人類を守るとは限りません。それは…ウォールマリアの崩壊で明らかです。いつ、巨人が押し寄せてくるか、わからないんです」

    リコ「壁の中でじっとしていては、足元を掬われるか…わかってはいるが…」

    モブリット「リコさん…」

    立ち止まり、俯き目を伏せたリコに、モブリットは案ずるような視線を向けた
  43. 43 : : 2014/12/21(日) 10:48:01
    リコ「私は、意気地がないわけじゃない。人類の為に戦い、死ぬ覚悟だってできている。でも…………」

    モブリット「…」

    リコ「残されるのは辛い。愛した人を目の前で巨人に食われて失う、そんな思いはもうしたくない」

    モブリット「辛い思いをされていたんですね…」

    リコ「そんな悲しい顔をしなくていい。あなたの経験に比べたら、大したことは…」

    モブリット「大したことが無いなんて、あり得ないです。沢山泣いても、酒に逃げても、その悲しみは一生消えませんから」

    リコ「そう、だね…」

    モブリット「元気を出せとも、また恋をしろとも言いません。時が忘れさせてくれる事でもありません。俺が…」

    リコ「……ん?」

    モブリット「俺が忘れさせてやるとも、言えません。情けないですが…」

    リコ「モブリット…」

    モブリット「毎月ある壁外遠征、いつ死ぬかわからないこの状況で、軽々しく、あなたを守るとか、必ず帰ってくるとか、言えませんから…」

    リコ「……」

    リコは何も言わず、モブリットの手をぎゅっと握りしめた
  44. 44 : : 2014/12/21(日) 11:05:53
    リコ「私は、壁の中を守りながら、あなたが帰ってくるのを待っているよ」

    モブリット「リコさん…」

    リコ「必ず帰ってこいとは言わない。でもできたら…」

    モブリット「はい」

    リコ「できたら、戻ってきて。足が動かなくなっていても、何でもいいから…生きて戻ってきて欲しい。これは、私のわがままだけど……えいっ!」

    モブリット「わっ?!」

    リコは突然、街道筋の街路樹に、モブリットの身体を押さえつけた

    リコ「私はあなたに死んでほしくない。だから…地面を這ってでも、生きて戻ってこい、87号」

    モブリット「はい、善処いたします、管理官殿」

    そう言って、微笑みあう二人の唇が重なりあうのに、さして時間はかからなかった
  45. 45 : : 2014/12/21(日) 11:17:24
    モブリット「管理官殿、腹が減りました」

    リコ「ちょっと、この状況で、またデリカシーの無い事を…」

    モブリット「確かにそうですね。管理官殿にこうして壁ドンしてもらえるなんて、光栄です。調査兵団に帰ったら皆に自慢します」

    リコ「こら、言いふらすな!」

    モブリット「あっ、頭の上に蜘蛛」

    リコ「わっ!うそうそ、とってとって!」

    モブリット「嘘ですって。俺の大切な人は、美人で、少し怖いけど優しくて、蜘蛛が嫌いな恐がりだと皆に自慢します」

    リコ「止めてよ!」

    モブリット「止めてよ、とか言うんですね…可愛いなあ…」

    リコ「悶えるな!ばかっ!」

    モブリット「痛っ…!どこ蹴ってるん、で、すか…使い物にならなくなったら困りますよ?あなたが」

    リコ「困らんわ!ばかリット!」

    モブリット「ばかと言われて嬉しいということは、俺は立派なMだったのか、なるほど」

    リコ「壁ドンされながら、悟りを開くなぁぁ!」

    リコの悲鳴が、街道筋に響いた



  46. 46 : : 2014/12/21(日) 11:32:47
    モブリット「リコさん、飯行きましょう飯…って、だめだ。今日は帰ります」

    リコ「な、何でだよ…」

    モブリット「何ですか、その可愛らしい寂しげな表情…けしからん。俺がまた破天荒になりそうですから、止めて下さい」

    リコ「破天荒ってなんなんだよ!」

    モブリット「人生の永遠の課題、ですかね」

    リコ「変な課題だな…やっぱりあなたも変人だ。夕食は私が作るよ。どうせ、一文無しだから食べに行けないだけだろ?」

    モブリット「なんでわかるんですか!おれとあなたは以心伝心、もう繋がりあっているんですね!」

    リコ「繋がって無いわ!」

    モブリット「そっちの意味ではまだ繋がってはいませんが…まあ、焦らずゆっくりいきましょう」

    リコ「焦ってないわ!エロリット!」

    モブリット「また新たな称号を得たなあ、ははは。リコさん、俺はオムレツが食べたいです」

    リコ「早く帰って作るよ。あなたも手伝ってよね?」

    モブリット「はい、了解しました!」

    二人の影は、揃って夜の街に消えたのであった
  47. 47 : : 2014/12/21(日) 11:43:41
    ハンジ「いやはや、後をつけたかいがあったなあ」

    リヴァイ「いい雰囲気だったじゃねえか。やるな、壁ドンマスター」

    ニファ「可愛らしい人に壁ドンされて、目尻下がりまくりでしたよね、副長!」

    ケイジ「あんなに饒舌なモブリットは初めて見た。あれが本性なのかもな」

    ナナバ「良かったわ。モブリットにも幸せが訪れた様で」

    ミケ「俺たちのお陰だな、スン」

    ハンジ「さ、モブリットも無事、名実共に壁ドンマスターになった所で…皆でぱーっと行きますか!」

    リヴァイ「おう!」

    ニファ「いきましょいきましょ!」


    モブリットは敬愛する上官たちに、いつの間にか見守られていたのであった



    ―完―
  48. 48 : : 2014/12/21(日) 13:14:56
    執筆、お疲れさまでした。
    いやいや、愛すべき上官のみなさま…後をつけてきたって…ぞろぞろぞろぞろと(^_^;)見たかったなぁ。
    モブリットが、いつになく(?)イキイキしていたように思いました。モブリコも素敵ですね。
    素敵な作品を、ありがとうございました。
  49. 49 : : 2014/12/21(日) 14:04:33
    >数珠繋ぎさん☆
    コメントありがとうございます♪
    皆、モブリットに世話になった人達ばかりなので、気になったんだか興味本意なのか、まさに愛すべき上官たちです(*´∀`)
    モブリットはその本来のぼけつっこみ能力を発揮されたようですw
    モブリコは新しいですかね!
    いつもありがとうございますm(__)m
  50. 50 : : 2014/12/21(日) 14:33:13
    姉貴執筆お疲れ様です(´^ω^`)

    蜘蛛嫌いなリコさんに萌えました(´ω`)

    リコさんのモブリットに対するツッコミとか、色々笑いましたぜ(´^ω^`)

    素敵な作品をありがとうです(´ω`)
  51. 51 : : 2014/12/21(日) 14:40:24
    >おとうとぉレイアさん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    リコさんはきっと可愛いんですよ!
    いつもはりりしいですけど(*´∀`)
    笑ってくれて嬉しいです♪
    モブリットが生き生きとしている話は、書くの初めてですわw
    嬉しいコメント、ほんとにありがとうございます|^▽^)ノ
  52. 52 : : 2014/12/21(日) 14:52:03
    88さnのss相変わらず面白かったです、乙です
  53. 53 : : 2014/12/21(日) 14:59:37
    >神様じけいさん☆
    いつも読んで頂きありがとうございます♪
    じけいさんの言葉にいつも励まされています!
    ほんとにありがとう(*´∀`)
  54. 54 : : 2014/12/21(日) 19:15:53
    執筆お疲れ様です。
    リコかわいい‼︎
    そしてモブリットとのやり取りに悶えました!
    素晴らしい作品を読ませていただきありがとうございました♪
  55. 55 : : 2014/12/21(日) 21:24:37
    >ハンジがかりさん☆
    コメントありがとうございます♪
    リコさん可愛いですか?!ツンデレっぽくしてみたんですw
    モブリットも久々に若かりし頃を思い出した感じで、エンジンかけてみましたw
    楽しんでいただけたなら嬉しいです♪
    いつもコメント、ほんとにありがとうございます(;_;)
  56. 56 : : 2014/12/21(日) 21:40:36
    執筆お疲れ様でした!

    破天荒とか87号とか小ネタに笑わせていただきましたw

    リコさんはやっぱり可愛い。

    真の壁ドンマスターは壁ドンいたすのもいたされるのも上手いってことですね。

    モブリットが幸せになれてよかったです。
  57. 57 : : 2014/12/21(日) 22:19:52
    >キミドリさん☆
    コメントありがとうございます♪
    モブリットが持ち合わせていない破天荒を、あえてさせてみましたw
    87号ねw祭りに参加されていた方には、にやりな場面でしたでしょうか♪
    リコさんはツンデレ可愛いんですはい!
    モブリットを幸せにしてあげられて、私は満足です(*´∀`)
    ありがとうございました!
  58. 58 : : 2014/12/22(月) 00:47:06
    リコさんが凄く可愛いです!!
    幽霊と蜘蛛が嫌いなリコさんが可愛い過ぎです(*≧з≦)

    そして、ハンジさん!モブリットの事をしっかり考えてくれていて、モブリットとリコを付き合わせようとする所にハンジさんの愛を私は見ました!!(笑)

    毎回素敵なSSを本当にありがとうございます!!これからも応援してます!!
  59. 59 : : 2014/12/22(月) 10:13:33
    >EreAni師匠☆
    いつもコメントありがとうございます♪
    リコはかっこええお姉さまなんですが、可愛いところもあったら更に萌えるかなあってw
    ハンジさんの部下への愛は大きいと思います(*´∀`)
    とにかく今回はモブリットを普通の男にしてやりたくてw
    読んで下さってありがとう!
    いつもほんとに感謝しています(*´∀`)
    師匠一緒に、がんばろうね!

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著者情報
fransowa

88&EreAni☆

@fransowa

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