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【12/6ペトラ生誕企画】ーあの音は…兵士達の絆

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  1. 1 : : 2014/11/30(日) 22:58:01
    プロローグ

    *





    ー聞こえる、あの音が…





    そしてふと、少女…ペトラはある人を思い出した。


    私がまだ幼かった頃、元調査兵団女性兵士であったお母さんのことだ。
    どこか周りと違う雰囲気をまとった不思議な人だった。今にして思えば調査兵団という異端と呼ばれる組織に所属していたのだから当然と言えば当然かもしれないが。
    淡い萌木色の柔らかい長い髪、凛としていながらも穏やかな瞳、血色の良い健康な肌色に、すっと通る鼻筋、ほんのりピンク色の唇、兵士として鍛え上げられた細身の体……そして、どこか気の抜けたふわふわとした天然な性格。
    幼いながらも私は優しくて美しいそんなお母さんが元兵士には思えなかった。
    だけど今、脳裏によぎったのは、優しく微笑むお母さんでも怒気を含んだ睨みをきかせお父さんを黙らせる恐ろしいお母さんでもなく、時々浮かべるふとした姿だった。

    ーーお母さんは時々、ふとどこかに視線をやる。

    それが気になり出したのはお母さんと一緒にいる時のある行動だった。
    ある日、陽気の良い昼下がりに野原でお母さんと一緒に昼寝をしていた時のことだった。
    私がふと目を覚ますとお母さんは、何かに気が付いたようにどこかをただただ見つめていた。 私は気になって上半身を上げ、お母さんの視線の先を追ったがそこには何もなかった。 そこらに立ち並び木々も、生い茂る草花や雑草も、鳥や蜜蜂や蟻や野良猫の昆虫や小動物も。


    ーー何も、ない。


    虚ろな目でどこを何を見つめているのか、私には分からなかった。
    ーお母さん?どうしたの?
    と、声をやっとのことで掛けると、お母さんは何事もなかったかのように優しく微笑みながら、何一つ動じずにこう答えるのだ。
    ーううん、何でもないわよ。
    それからというものの、その不思議な行動は一回に限らず頻繁によくある出来事だった。


    何故今、思い出したのだろうか?忘れていたのだろううか?
    そして思い出した今になって、思うのは……



    ーー……もしかしたらお母さんもあの音を聞いていたのだろうか?



    だけどもし、もしそうならば…、確かめなければ。
    今聞こえるこの音が本当にあの音なのか。
    そしてーー……


    朦朧とする意識の中、重たい瞼を開き、ゆっくりと俯いていた顔を上げると、目の前には幻想的で不思議な何とも言えない世界が広がっていた。


    遥か彼方遠い遠い地平線に沈みかけた太陽の光は、何処までも果てしなく続いていく大空を夕焼けに染め上げる。
    雲の間から差し込む夕陽は大地に注ぎ、そして空に飛び散るように広がる真っ赤な光を照らし…、


    「……血?」


    頬を生暖かい液体が掠った。
    それが " 血 " だと気付いたのは次に目の前で起きた光景だった。…人の姿をした自分よりも遥かに大きな巨体が人間を食べた。
    両頬を思いっきり引っ張叩かれたような衝撃が朦朧とした意識を覚醒させた。
    …死んだ、殺された?と意識的にそう思ったのは、周りから聞こえる仲間の悲鳴と怒声、後ろから掛けられたその声だった。


    「…起きたか、ペトラ」


    あぁそうだ、思い出した。
    私は巨人との戦闘中に立体機動装置の予期せぬ不良動作に気付かず、そのまま崩れ落ちてそれで…
    ズキッ、と額に激しい傷みが走る。と、同時にひどい目眩に襲われた。思わず手で額部分に触れてみると、包帯が巻かれていた。
    おそらくあのまま私は地面に激突して出血多量と地面激突の衝撃で気絶でもしていたのただろう。


    「リヴァイ……兵長です…か?」


    どうやら今私はリヴァイ兵長の馬に私を後ろから抱き締めるように二人で乗馬しているらしい。
    手綱を引くがっしりとした一回り大きな手が見える。


    「…そうだ」


    「…ねぇ、兵長あの音が聞こえませんか?」
  2. 2 : : 2014/11/30(日) 23:02:50

    さっきより音が段々と小さく掠れてきた。
    聞き取りづらくなった音に耳をすます。


    「…いいから、今は休んどけ」


    考えることがひどくしんどくなった。目眩が止まない。


    「…はい、すみません」


    微睡む意識の中、背後に暖かい温もりを感じながら、目の前に広がる世界を見る。それはまさにこの世界の本質を現していた。

    …油断すれば、すぐに巨人は牙を剥き人を喰らう。

    依然として戦い続ける仲間達は次々と喰われていく。
    燃えさかる炎のような夕焼けを背景に、無惨にも散っていく仲間達の鮮やかな鮮血は夕陽に照らされ舞い踊る踊る。

    あぁ、何て残酷なの…でも、それでも……





    ーーー " 美しい "と思ってしまうのは、人類に対する冒涜なのだろうか…?





    *
  3. 3 : : 2014/11/30(日) 23:12:50

    こんばんは。
    お久し振りな方はお久し振りです。初めましてな方は初めまして。
    愛に飢えて飢えすぎて一時活動再開することになりました、はい笑
    ページを開いていただきありがとうございますm(__)m
    いきなり2000字を超える投稿をしました。読みにくくて、すいません。

    今回は数珠繋ぎさん主催のペトラ生誕企画に参加させていただきます !
    ↓↓↓参加したい方はこちらからどうぞ~↓↓↓

    http://www.ssnote.net/link?q=http://www.ssnote.net/groups/964/archives/1

    執筆中はコメントを規制します。すいませーん。
    では最後までお付き合いいただけると大変嬉しいです(*≧ω≦*)ノ☆
  4. 4 : : 2014/12/01(月) 22:50:44
    1.その音とその人との出会い

    *







    ーーーーーーーーーーーーーーーーーギュルルルッ、ル、







    と、いう音を確かにペトラ・ラルは聞いた。


    それはまだ調査兵団に入団して数日経ったある昼下がりのときだった。
    私は、調査兵団第100期生新兵として、一ヶ月後に行われる壁外調査に向けて実践訓練や手練れの先輩達が開く講座を受けるなど息を吐く暇もなく怒濤の日々を送っていた。
    訓練生の頃よりも辛い訓練が多かったが、その分学んだ知識と技術はとても高度で利便性が高く、後に何度も命を救われたことが多かった。
    その日は、訓練も講座も休みで暇を持て余していた。
    同期の皆は実家に帰省したりしていたが、何故かペトラはそんな気になれず、一人馬小屋の掃除をしていた。
    ただ単に一人になって落ち着きたかったのと、自分の命を共に背負っていると言っても過言じゃない馬の世話をしたかっただけだ。
    変わっている、と言われたらそうだと私も思う。
    これが不定期にある休日ならばそうは思わない。けれど今日はー……


    ーー壁外調査前日の最後の休日だからだ


    一歩この鳥籠から出れば常に死と隣り合わせの世界。
    どんな強者も、弱者も、"死"定めは理不尽に訪れる。
    誰が死ぬか。いつ死ぬか。

    ーー果たして自分は、生き残れるか

    そんな弱肉強食な世界に私は明日、足を踏み入れるのだ。
  5. 5 : : 2014/12/01(月) 23:59:36

    想像するだけで全身に雷が走るような衝動に駆られる。
    それが恐怖から来るものなのか、好奇心から来るものなのか、さては他の感情から来るものなのか…ペトラにはまだ分からない。
    ー明日になれば嫌でも分かるだろう

    そうしたぐるぐるとしたままの心境の中、馬の毛並みをブラッシングしようとした時だ。
    ーーペトラの耳はその音を捉えた。


    (…ん?)


    ペトラは辺りを見回した。
    視界に入るのは広い広い野原。かなり古びた家屋。数百頭の馬の住処である馬小屋。そして今目の前にいる私の愛馬。
    ほんの一瞬しか聞こえなかったが、重く素早い音だった。
    けれど、辺りにはその様な音が出たり鳴ったりするような物も動物も見当たらない。
    ただ一つ、聞き覚えのある音で例えるならば…


    「立体機動装置の音…かな?」


    でもこの平地で立体機動装置は使えない。
    使えたとしても、訓練もないこの休日に、一体何の為に? どうして…?
    一度気になり出したこの思考は止まらない。まるで溢れ出す好奇心を止められなく次々と疑問を口に出す幼子のように。何故?どうして?と脳内で原因を突き止めようと思考は廻る廻る。


    だから私は気付かなかった。
    背後から私を不思議そうに訝しく睨むその視線に。
    後に、共に背中と命を預け戦うこととなるその人に。






    ーーー数十秒後に大切な出会いを果たすこととなるその運命に






    ーこれは、そんな目まぐるしいその日から始まり今までに至る不思議なお話だ。多分。



    *
  6. 6 : : 2015/01/23(金) 20:43:41

    「おい、お前…そこで何してる ? 」


    どくんっ。
    心臓が跳び跳ねた気がした。
    重く低いドスの聞いた声がペトラの背後からそう言った。
    何故か全身から冷や汗が引いていき、息を呑むことでさえ躊躇ってしまう謎の緊迫感が襲う。

    (い、嫌な予感が…)

    そのままゆっくりと後ろを振り返ると…ーそこには人を射抜き殺すような鋭い目付きをした小柄の男が仁王立ちで佇んでいた。


    「聞いてんのか…おい?」


    「は、はひいいいぃ ! ! ! ! ? す、すいません馬の世話をしていただけで決して怪しい者じゃないんでお願いですからそんな怖い目で睨まないで下さあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁい!!!!!!!!!!」

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著者情報
naorin2004

砂糖楽夢音@復活

@naorin2004

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