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『魔族の国の、国王になっていただけませんか?』〜第4話〜
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- 1 : 2014/11/28(金) 19:45:49 :
- 『魔族の国の、国王になっていただけませんか?』第4話です!
『魔族の国の、国王になっていただけませんか?』シリーズ↓
http://www.ssnote.net/series/1724
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- 2 : 2014/11/28(金) 22:08:26 :
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「あなたに……全てを統べる、神になって頂きたい。」
「これこそが……人類を救うための術です。」
「……は?」
堕神が何を言っているのか
わからない
それを理解しようと、頭をフル回転させる。
自分が神になる……?
人類を救うための術……?
だが、いくら考えてもわからない。
「……どういうことだよ?」
考えることを諦め、直接彼に聞く。
すると、
少し間を開けて、堕神は続ける。
「神々の頂点に君臨する、全知全能の神がいます。」
「その全能神を倒し、あなたがその座に着くのです。」
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- 3 : 2014/11/28(金) 22:09:41 :
「全能神……」
どこかで聞いたことがある。
ギリシャ神話ではたしか……
雷を操る
神々の頂点にして、最強の神
「ゼウス……」
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- 4 : 2014/11/28(金) 22:10:32 :
「はい。ゼウスに代わることのできる人間は……陛下しかいません。」
「オレにしかできない。か」
ふと、一つのことを疑問に思う。
「でも、それが何で人類を救うことになるんだ?」
「そのゼウスが人類存続を脅かしているっていうのか?」
堕神は真っ直ぐと自分の目を見ている。
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- 5 : 2014/11/28(金) 22:11:23 :
- こんな時に何故思ったのかはわからないが、
綺麗な目だ……
人間ではありえない色をした、黒い眼。
血のように紅い瞳。
きっと何処かで……
「……私も、過去の話をしてよろしいですか?」
「……おう。」
「ん?……私″も″?」
聞いていたのか……
まぁこいつなら既に知っていたことかもしれないな。
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- 6 : 2014/11/28(金) 22:12:31 :
- 「昨日、捜索隊の指揮をとった女性を覚えていますか?」
「覚えてるよ。」
彼女は、堕ちた女神だ
彼女から直接教えてもらった。
こいつと同じ……
「私と彼女は、かつて天界にいた神というのはご存知ですよね?」
「おう」
「……ちなみにだけど、堕ちてきた神っていうのは他にいるのか?」
「いえ、魔界には私たち2人だけです。」
「へぇ……」
堕神と堕女神……か。
「では……少し長くなりますが、よろしいですか?」
「頼む」
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- 7 : 2014/11/28(金) 22:13:22 :
- 私と彼女が魔界に来る前、
私は『友情』を……
彼女は『愛』をつかさどる神だった
その頃、
神とヒトとの距離は近く
自分らが祀られた神殿には
たくさんの人が訪れ、捧げ物も沢山あった。
無邪気に遊ぶ子供
毎日欠かさず祈りを捧げに来る老人
信心深い若者など
様々な人が来ていた。
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- 8 : 2014/11/28(金) 22:15:28 :
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その自分の所に来てくれている人たちが、大好きだった。
全ての人間が大好きだった。
その様子を
微笑みながら見つめる、青年の見た目をした神が1人。
薄く金色の髪
肌は白く。
綺麗に澄んだ、青い瞳。
彼の座っている石像の足下に、
野原から摘んできた花を供える女の子がいた。
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- 9 : 2014/11/28(金) 22:16:09 :
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「ふふっ……いつもありがとう。」
そうにこやかに彼女に話しかける。
しかし
今、彼女には彼のことは見えていない。声も聞こえてはいない。
それでも……
「本当に、ありがとう。」
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- 10 : 2014/11/28(金) 22:17:14 :
ある日
天界に、不穏な空気が流れていた。
「一体どうしたのですか?」
金髪の青年の神は、近くにいた女神に尋ねる。
桃色の長い髪に、
アメジストのような紫の瞳
美しい という言葉が似合う。
彼女は、少し眉を下げて言う。
「神を根絶やしにし、世界を人類の思い通りに操作しようとする人間が、急増しているようです……」
「なるほど。」
「昔からいなくはなかったですが、なぜ今こんなにも増えているのでしょうか……」
「……。」
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- 11 : 2014/11/28(金) 22:18:01 :
- 人類の思い通りに、か……
話によると、
天界へと繋がる塔を、多数の人間が
囲んでいるそうだ
″戦いの神″や
″狩猟の神″、
″豊穣の神″
神を討つことのできる″人間″など、
存在しないに……
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- 12 : 2014/11/28(金) 22:18:19 :
その日を境に、神殿に人が全く来なくなった。
捧げ物の果物は腐り、花は既に枯れた。
いつも花をくれる女の子もいない。
「悲しいなぁ……」
膝を抱えて座りながら、そう一人でつぶやく。
遠くの方、
厚い雲に、オレンジ色の光が映り、揺らめいていた。
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- 13 : 2014/11/28(金) 22:18:45 :
- その日の夜
天界では、
神々が騒ぎ、天使は慌ただしく動き回っていた。
また何があったのか、昨日の女神に尋ねる。
「いくつもの神殿が……人間によって焼かれたそうです。」
「え……?」
「なんで……」
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- 14 : 2014/11/28(金) 22:19:09 :
その日以来、
各地の神殿が次々と壊されたり、焼かれたりしていった。
自分の神殿も……
全能神の神殿も例外ではなかった。
残るは、あの女神の神殿だけだった。
その日、神々は人類に鉄槌を下すことを決めた。
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- 15 : 2014/11/28(金) 22:19:34 :
人類を
絶滅させる神 の手で。
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- 16 : 2014/11/28(金) 22:20:11 :
しかし、まだ神殿を壊されていないあの女神が、一つ提案をした。
「最後の……私の神殿が壊されるまで、信じて待ってほしい。」と。
彼女は『愛』をつかさどる神だと言っていた。
そのためか、
彼女の涙ながらの願いに
全能神も首を横に振ることはできなかった。
何度も何度も
彼女は説得し続けた。
他の神々にも
彼女は訴え続けた。
「人間を……信じましょう。」
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- 17 : 2014/11/28(金) 22:20:49 :
そしてついに、
全能神が首を縦に振った。
数日後
青年の神は、最後の神殿に向かう。
愛の女神の神殿に。
彼女の神殿は、とても荒れていた。
雑草は伸び放題
柱や石像には苔が生え
椅子などは手入れがされず、壊れていた。
祭壇に、愛の女神が座っていた。
アメジスト色の目からは、一筋の涙がこぼれていた。
今は、
彼女に声をかけられそうにない。
こんなの……
いつ壊されても……
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- 18 : 2014/11/28(金) 22:21:27 :
- そのとき、彼女から声がかかる。
「あの……」
「!?」
いちおう隠れていたつもりだったが……
見つかっていた。
「どうして、来たのですか?」
「すみません、心配でしたので……」
「……いえ、ありがとうございます。」
風の音と、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「もうすっかり、寂しくなってしまいました……」
なんと声を掛けたらいいのか、
わからなかった。
何を言っても
彼女を傷つけてしまいそうで。
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- 19 : 2014/11/28(金) 22:22:00 :
- 「人類は、もういなくなってしまうのでしょうか……」
彼女は、少し震え声になっていた。
「……信じましょうよ!あなたが信じなくてどうするんですか!」
少しわざとらしかったかもしれない……
「そうですね……そうですね!信じましょう!!」
それは、
自分に言っているのではなく、
彼女自身に言い聞かせているようだった。
信じる心を崩さないように。
人類が、明日もまだあるようにと
願うために。
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- 20 : 2014/11/28(金) 22:22:41 :
「私は、『友情』をつかさどっていますが……」
「本当は、人類と神が手をとり合うような……そんな繋がりを作りたかったんです。」
「それなのに……」
気付いたら、
自分の夢を語っていた。
前までは、
本当に実現できると思っていたのに
こんなにも遠いものだなんて。
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- 21 : 2014/11/28(金) 22:24:39 :
「私も、皆が愛しあえるような世界を……望んでいました。」
「……でも、」
その時、
複数の男の声が聞こえてきた。
手にはいくつもの松明を持っている。
「あ……」
彼女が小さく声を上げた。
「ウソ……あの子……」
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- 22 : 2014/11/28(金) 22:25:12 :
そしてその後
神殿は炎に包まれた。
あぁ……
もう……
ダメだ……
「やめてくれ……」
心の底からの悲痛な声
もう……
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- 23 : 2014/11/28(金) 22:26:08 :
そのとき
遠くから、雷の轟く音が聞こえた。
始まった……
始まってしまった
いや……
終わってしまった。
愛の女神は、
涙をボロボロと流していた。
自分ももう
何かが決壊したようだった。
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- 24 : 2014/11/28(金) 22:26:28 :
何が
神だ……
たった二つの種族さえ
繋ぎ止めることも出来ずに……
何が……
『『友情 だ』』
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- 25 : 2014/11/28(金) 22:26:51 :
そのとき、
何かに吸い込まれるような感覚に襲われた。
落ちる……
否
堕ちる
彼女と繋いだ手から、少しだけ温もりが伝わった。
寒くない
きっと
彼女と一緒なら。
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- 26 : 2014/11/28(金) 22:27:26 :
「それから、数十年……いえ、数百年、数千年かもしれません。」
「こちら世界をさまよい続け……この国にたどり着きました。」
堕神が話してくれた過去の話。
二人は、
いったいどれだけ苦しんだことかか……
「そして神々は、新しく人類を作り直しました。」
「それが今の人類です。」
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- 27 : 2014/11/28(金) 22:28:03 :
「今の人類の前に、別の人類が存在したのか……」
「はい」
「ですがゼウスは、今の人類も……また作り直すつもりなのです。」
「……え?」
「前の人類が滅びたときと同じ刻に、彼は再び人類を滅ぼすつもりです。」
「なんでだよ……?神を討とうとかする奴らなんていないだろ?」
「おそらく、今の人類は進化しすぎたのだと。」
「進化……」
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- 28 : 2014/11/28(金) 22:28:52 :
- 「ゼウスは、都合の良い進化を遂げた人類を生み出すつもりです。」
「このような事を……許してはなりません。」
「まぁ……確かにな……」
都合が悪いから消す
まるでワガママだ……
「オレが『雷撃』使いなのも……このためか?」
「はい。ゼウスと同じ……全能神には天候を操る能力が必要です。」
「なるほど……」
自信はあるはずがない。
けれど、
自分はもう来る所まで来た。
あいにく
全てを背負っていく覚悟はできてる
背負う物全部背負ってやる。
国も
仲間も
過去も
未来も
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- 29 : 2014/11/28(金) 22:30:14 :
「要は、ゼウスを倒せばいいんだな?」
「はい」
「ですが、私がゼウスを倒すことに協力することができません……」
「神を倒した者に、神の力が宿るため……」
「神の力?」
「不老不死、老いることがなく、時間の経過では決して死ぬことのない力です。」
「どっかの国の始皇帝が、喉から手が出るほど欲した物だな……」
「歴史が得意なのですか?」
「過去には振り回されて生きてるからね。」
そう言い、笑う。
過去の悩みも、苦しみも
笑えば少しは楽になる。
しかし、
それを完全に無くすことはできはしない
過去だけは
揺るがないのだから。
それならば……
それを乗り越えて学ぶしかない
それを乗り越えて強くなるしかない
「ご冗談を……」
「自虐ネタだよ、ノって来てくれないと寂しいだろーが。」
「申し訳ありません……過去は振り返らない主義なので。」
「さっき長々と語ってたよね!?」
「あははは……」
うん。
これでいい
きっとこれでいいんだ。
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- 30 : 2014/11/28(金) 23:52:57 :
-
翌日
執務室で、いくつかの資料に目を通しながら、
堕神と話をしていた。
「じゃあ、そのルシファーとかいう奴に、協力を頼めばいいのか?」
「はい。ですが、彼の部下にはだいぶクセのある人が多く……」
「知り合いなの?」
「ルシファーは何度か会ったことがあります。彼は堕天使を統率する、元熾天使です」
「シテンシ?」
「天界の天使の中でも、最上位の者たちです。」
「へぇ……」
「こちらの準備が整い次第、彼らの城へと向かいます。」
「了解。」
「彼らが協力してくれれば、かなり助かるのですが……」
「まぁきっと大丈夫だろ。『友情』の神もいることだしな。」
「あはは……」
分かりやすいほどに乾いた笑い声をあげる
「さて、全部片付けちゃおっか。」
そういって、資料に再び目を落とす。
そのとき、ペンの先に一匹のハエがとまった。
「ん?」
「どうしました?」
「このハエ……何か違和感が……」
「ハエ……?」
「陛下!!離れてください!!」
突然、堕神が大声を上げる。
「えっ!?」
椅子から飛び退き、距離をとる。
「オイオイ……バラシちゃだめじゃないの……」
聞き慣れない低い声が、ハエから聞こえてくる。
すると、ハエの周りに黒い風が吹き、
2mほどの男に変わる。
「よう。」
~第4話 end~
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- 31 : 2015/03/19(木) 23:02:47 :
- ベルゼブブかな?
期待です
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- 32 : 2018/10/14(日) 21:01:29 :
- 続きは、、、
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