この作品は執筆を終了しています。
誰が為に -my dear-
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- 1 : 2013/11/16(土) 00:31:21 :
- 【注意】
・このSSはモブキャラと勝手に作った設定で構成されています(重要)。
・相変わらずの推敲していないSSです。
・シリアス(死にネタ)
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三度目の投稿になります。
今回はエルドの彼女さん視点でのSSになります。当たり前のように捏造設定です。書き溜めをしていないのでノロノロ投稿となりますが、気長にお付き合い下さいませ。
誤字脱字や他の方と書き方が異なる、文章が未熟など諸々ありますが、ご了承くださいますようお願いします。
それでは無事立っていたら始めます。
前作:
『最愛の殺人鬼』 http://www.ssnote.net/archives/2283#thread-bottom-navigation
『もし、リヴァイが死んだなら』 http://www.ssnote.net/archives/2416
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- 2 : 2013/11/16(土) 00:32:38 :
彼と過ごした時間の全てが幸せだったのか、今となってはもうわからない。
わからないけれど、彼がここに生きていた証は、私の心の中に確かにある。いつまでも消えることなく残り続ける。
きっと難しいことだけど、私は彼を忘れずに生きていこうと、そう思った。
――二人で笑いあった日々。そんな幸せな日のこと。
【誰が為に -my dear-】
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- 3 : 2013/11/16(土) 00:34:29 :
私は幼い頃から活発なほうではなかった。
好きなことは木登りよりも歌かお絵描き。風邪をひけば誰よりも長引いたし、怪我をすれば泣きじゃくってばかり。そんな幼馴染みをもってしまった彼は、きっといつも遊び足りないと感じていたに違いない。
それでも私たちは常に一緒だった。一度だって離れることなく、成長していった。
「俺、いつか兵士になるんだ」
「兵士……?エルドが?」
「ああ、絶対に憲兵団に入るんだ。知ってるだろう?憲兵団に入れば贅沢放題で、ここよりずっと幸せになれる」
私は俯いた。だって、エルドは体力も人以上で喧嘩も強くて、それに頭も良かったから。きっと憲兵様になって王都で働けると思った。けど、私は違う。体力はないし喧嘩も出来ない。頭は悪くないけど、誉められたことはないように思う。それに兵士になるには訓練兵にならなくてはいけなくて、その訓練というのもとても過酷なものだと聞いていた。だから幼心に怖くてたまらなかった。でもそれでは私達は離ればなれになってしまう。小さい頃からずっと一緒だったのに、ここでバラバラになるのは嫌だった。
「巨人と戦う訓練をするんでしょう?私は反対……」
「お前には心配掛けない。それに、少しくらい離れたってお前が呼べば駆けつけてやるよ」
彼はそう言って私の頭をポンと叩く。
「んもう……エルドったら」
「……だからさ、もし俺が立派になったらさ、俺の嫁になってくれよ」
それが確か初めての告白だったと思う。子供の頃の約束。もしかしたら言った彼は忘れてしまっていたかもしれない程、記憶の奥にある約束だった。
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- 4 : 2013/11/16(土) 00:36:26 :
- 結局彼は数年後、訓練兵として故郷を離れることになる。心配で眠れなかった私の頬をつねり、手紙を書くことを約束してくれた。そして、必ず立派になると誓ってくれた。
「ほんの三年だ。俺とお前が一緒だった時間よりずっと短い。耐えられるだろう?」
「……ちゃんと帰ってきて」
それしか言えず、私は視線をおとす。エルドの顔が眩しい程輝いて見えて、何も出来ずにここに留まる自分ではとても見ることが出来なかったのだ。
「約束する。こんな始めで死ぬものか」
「うん」
「お前はここで待っててくれ。必ず、迎えにいく」
その意味も伝えないまま、彼は馬車に乗って去ってしまった。後に残される私の気も知らず、眩しい笑顔を浮かべて。
……私は、巨人も壁の外もどうだって良かった。今がこんなに平和で幸せなのに、エルドが欠けることでそれが壊れてしまう。それが本当に恐ろしかった。心配で心配でたまらなかった。
(エルド……早く帰ってきて)
消えていく馬車の影。彼を私から遠ざける忌々しい影。なのに私はここから一歩も動くことなく、その影を見送るばかり。無力な人間とはなんて情けないのだろうと唇を噛み、うな垂れるだけ。
「エルド……」
エルド。私の幼馴染。そしてきっと一番大切な人。強くて優しくて、人を思いやれる。そんな素敵な人。だから私は彼を待ち続けなくてはいけない。彼が約束を果たしにくる日まで、私は私で強くなろう。彼に相応しい人になろう。……それだけ。
――エルド、どうか無事で。
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- 5 : 2013/11/16(土) 00:37:00 :
- 支援
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- 6 : 2013/11/16(土) 00:38:02 :
私との約束どおり、彼は手紙をくれた。季節ごとに一通。それが忙しい訓練兵に許される数らしい。まるで単純な距離だけでなく、規則すらも私たちを引き裂いているかのようで、返事を待つ間はとても苦しい期間を過ごさなければならなかった。
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よう、最近どうだ?冷え込んできたが、風邪をひかないように温かくしろよ。お前は昔から風邪ばかりひいているからな。
近況報告だが、立体機動は難なく出来るようになった。けれどまだまだだな。もっと練習して一番にならなくてはとても憲兵団に入れるとは思えない。現実が厳しいことをここに来てから何度も教えられたよ。
同期とはよくやってる。みんな目標がある奴らばかりだから俺も上を目指す意欲が湧いてくる。やはり同じ高みを目指す仲間というのは必要だな。教官は厳しい方だし、訓練は難しいものばかりだ。それでも俺なりに頑張ろうと思う。
お前の親父さんの加減はどうだ?ガキの頃からよく叱られたが、俺も大好きな親父さんだ。俺の分も宜しく頼む。休みがあれば見舞いに行くことも出来るのだが、まだまだ無理だ。まあ、しっかり者のお前がいれば、俺の出番なんてせいぜい場を盛り上げるくらいしかないだろうがな。
とにかく、お互い無理はしないように頑張ろう。後二年、そうしたらすぐ会える。お前もここ一年ですっかり見た目が変わったんじゃないか?俺も色々変わった。あれから背も更に伸びたしな。お前もきっと驚くぞ。
また連絡する。お前からの手紙がここでは一番の楽しみなんだ。いつも通り、また分厚い手紙をくれよ。
じゃあ、また。
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- 7 : 2013/11/16(土) 00:39:26 :
- 彼の手紙はいつも簡素で、私の手紙はそれと比べれば長くなるばかりだった。気持ちだけがとにかく逸り、現実が私を置き去りにしているかのような錯覚に陥る。
けれど、早く彼に会いたい。早く彼と話がしたい。早く彼と、早く――。
(貴方がこんなにも愛おしいのに、いつだって私は置いていかれるばかり)
たった一人でいくつもの季節を過ごす。変わらない日常の中、きっと変わったであろう彼を待ち続けて。手紙ではいつも守られて、助けられて、大切にされて。でも私は実際問題一人きりでここに残されている。いつ死ぬかもわからない人にただ恋焦がれている。なんて馬鹿な女。なんてくだらない恋心。なんてつまらない私。
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エルド。
貴方に会いたいよ。早く会いたい。会って色々な話をしたい。貴方とまた、手を繋いでどこまでも走って行きたい。
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子供っぽい自分と大人っぽくなってしまった彼。手紙にいくら書いてもけして報われない想い。このままじゃいけないのに、このままでいるしかない現実がもどかしくて悔しくて。
「……貴方がいないのに、どうやって強くなればいいの?」
そう呟いて、書いた手紙をそのまま屑篭に放り投げた。そのまま跳ね返って床に落ちた便箋が今の私の全てのような気がして、余計に自分の無力を思い知らされる。
(エルド……)
泣いてもエルドは来てくれない。だから泣くことも出来ない。どんなに寂しくても私はここで彼を待ち続けなくてはいけない。それが約束だったから。それくらいしか出来なくても、どんなに悔しくても私はそれを守り続けなくてはいけないんだ。彼が迎えに来てくれるまで。
――だから弱音は書けなかった。書けるわけなかった。
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- 8 : 2013/11/16(土) 00:41:18 :
- とりあえず今日はここまでです。また明日以降少しずつ投下していきますので気を長くお待ち下さい。
>>5
支援ありがとうございます!嬉しいです!
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- 9 : 2013/11/16(土) 06:50:23 :
- アソビンさんのところで証明されてたけどやっぱり文章力ヤバですな
ラストは鬱になりそうだな
期待
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- 10 : 2013/11/16(土) 08:00:42 :
- わたちゃんすごい!
支援&期待
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- 11 : 2013/11/16(土) 11:25:15 :
- クオリティ高いですね!!
スポットライトが当たらないキャラ視点は貴重で面白いです!
自分の作品が矮小な存在だと思えてくる…
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- 12 : 2013/11/16(土) 20:09:32 :
- わた姉頑張ってください♪
応援してます♪
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- 13 : 2013/11/16(土) 21:42:20 :
- わた姉が、見てくれてるんだから私もみまふ♪
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- 14 : 2013/11/16(土) 22:49:41 :
- 皆さんありがとうございます!
こんなマイナーなSSでも読者さんがいてくれると本当に嬉しくなります。
それでは投下。
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- 15 : 2013/11/16(土) 22:50:44 :
それからまた春が来て夏が過ぎ、秋を経て冬になった。一人になって二度目の冬。相変わらず私は彼の手紙を待ち焦がれるばかりだった。エルドは私が手紙を出せば決まってすぐに返事を書いてくれる。ただ、それだけを励みに毎日を生きるのも、もう疲れてしまっていた。
頼れる親戚もいない親子二人暮らし。それなのに父は病気で床に臥し、私は知り合いの店を手伝って生活している。父の看護と仕事の両立。とても楽とは言えない生活……。
「またエルドからの手紙か?」
「ええ、返事が来たの」
病床の父に心配を掛けないよう、近頃すっかり型についてしまった塞いだ顔を緩めて明るく微笑む。そして私は待ち焦がれていたその手紙の封を切った。
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二年目が終わるな。もうお前と随分長く会ってないが、俺はお前の顔をちゃんと思い出せるぞ。お前はどうだ?
今年も冷え込むらしいが、親父さんの具合はいいだろうか。前回の手紙だとだいぶいいらしいが、まだまだ心配だ。何事も油断は禁物だ。お前の家が貧乏なのは承知しているから、いざとなったら俺の家を頼れ。お袋はお前のことが気に入っているみたいだから喜んで迎えてくれるはずだ。ただでさえお前は片親で頑張ってるんだ。これ以上無理して身体を壊せばみんな悲しむ。どうか自分を大切にしてくれ。
さて、俺の近況だが、上手くやっているから安心してほしい。冬になれば雪が降る中での訓練になるが、まあなんとかなるだろうと思えるくらいには俺も強くなった。お前に俺の勇姿を見せてやれる日も近いだろうな。
それより、最近お前の手紙が短いのが気がかりだ。何か俺に話し難いことでも抱えてないか?お前は昔から隠し事が得意だったから俺にはよくわからないが、お前が落ち込んでいるのは俺も辛い。傍には行ってやれないが、俺は常にお前のことを考えている。だからさっきも書いたとおり、絶対に無理はするな。
一番にお前に連絡したいことがある。だが今は話せそうにない。それまでどうか待っていてくれ。
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- 16 : 2013/11/16(土) 22:51:52 :
「また、待っていてくれ……か」
病床の父は弱るばかりだったけど、私はずっとそれを彼に隠し続けていた。心配を掛けたくなかったのが第一だったけれど、向こうで充実しているというエルドに対する、ほんの少しの仕返しのつもりだった。勿論彼は彼なりに悩み、それを超えてきているからこそ充実した時を過ごしているのだということはわかる。訓練は過酷で、時には死者だって出る。わかっているからこそ、それを超えてなお明るく振舞えるエルドと今の自分を比べて嫉妬していたのかもしれない。
私は机に向かい筆を取った。言いたいことはたくさんあった。私がここでどれだけ苦労しているか、どれだけエルドを想っているのか、伝えようと思えばいくらでも書くことは出来た。けれどもいくら感情を整理したところで、実際の言葉にはならない。
――“会いたい”それだけで。他に何もいらなくて。貴方の声、姿、その全てをもう一度私自身に焼き付けたくて。
本当にそれだけ。それ以上のことは望まない。私じゃ望めない。
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- 17 : 2013/11/16(土) 22:53:15 :
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エルド。
貴方に会いたいよ。早く会いたい。会って色々な話をしたい。貴方とまた、手を繋いでどこまでも走って行きたい。
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去年書いたのと同じ言葉を紙に書き、今度はそれを封筒に入れた。彼と違って一歩も進んでいない私。そのありったけの想いを込めた手紙。……彼に届くだろうか、ちゃんと読んでもらえるだろうか。意味は伝わるだろうか。それだけが心配で、それだけが気がかりで。
(けど、これだけが私の希望)
翼もない私に許された、彼へ想いを届ける手段。唯一彼と繋がっていられる手段。
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- 18 : 2013/11/16(土) 22:55:51 :
「エルドか……あの若造。少しは立派になったか?」
いつもなら口数少ない父が珍しく今日はよく話しかけてくる。それだけ調子がいいのか、それとも考えたくもないけれど、それだけ悪いのか。どちらにせよ、私は笑みを浮かべた。
「私たち、もう二年も会ってないのよ?わかるわけないじゃない」
「そうか。いや、俺としてはあいつならと思っていたんでな」
父は上機嫌だった。ここ最近すっかり冷え込んだ家の空気が暖かくなった気がして、私の頬が緩む。
「あいつならって?」
「俺の身体はもうこんなだ。いつまでお前と一緒にいられるかはわからん。だがそれまでに、お前を嫁にする幸せ者の顔を拝みたくてな。……あいつなら相応しいと思っていたんだが」
「……エルドが?」
「ああ」
そんな弱気なことを言わないでと言うつもりだったのに、思わず涙腺が緩んでしまい、私は慌てて袖で目頭を拭う。
「上手くいってないのか」
「……だって、エルドはもう私の届くところにいないもの」
「お前はよく出来た娘だ。昔から俺に余計な世話を掛けたことがない。この世界にこんな出来た娘が他にあとどれだけいると思う?いや、お前だけだ。だからもっと自信をもて」
それだけ言うと疲れてしまったのか、父はまた目を閉じる。私は再びの静寂の中、エルド宛の手紙を握り締めて思いに暮れる。
……自信をもてと言われても、私は何も出来ない一般人で。これから兵士になって人の為に働くエルドとは全く違う。立場が全く違ってしまうのに、一体何に自信をもてばいいのだろう。待つことすら出来ない女に、何故あんなにも立派な彼が釣り合うと思うのだろう。
(エルドなら、答えを教えてくれるのかな?)
一般人の私にはどうしたってわからない答え。……私はエルドを想ってもいいのか。その答えを知っているのはおそらくエルドしかいないんだ。だから私は訊かなければいけない。訊いて、納得するまで突き詰めなくてはいけない。
私は封をしたばかりの手紙を破り、中からさっきの便箋を取り出す。
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- 19 : 2013/11/16(土) 22:56:31 :
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エルド。
貴方に会いたいよ。早く会いたい。会って色々な話をしたい。貴方とまた、手を繋いでどこまでも走って行きたい。
私は貴方のことが好き。だけど、正直言って今の私が貴方と釣り合うかどうかわからない。貴方をこれ以上想ってもいいのか、ずっとそれが気がかりなの。だから貴方の答えがほしい。
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そしてその最後に一文を付け足し、また封をした。……これでいい。これできっと彼に伝わる。
(エルド……会いたい)
後一年。それすらも我慢できない私に、エルドはきっと失望するだろう。けど、もう私は自分を抑えることなんて出来ない。だからどうか……どうか。
――彼に私の気持ちが伝わりますように。
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- 20 : 2013/11/16(土) 22:58:14 :
一ヶ月が過ぎ、エルドの手紙が届けられた。いつもと違い、殊更に軽い手紙だった。封を破った私の目に映ったのは、彼の書いたほんの一文だけの手紙。
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もう少しだけ待ってくれ。
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たったそれだけしか書かれていなかった。
「なんで――?」
何故それだけなのか。どうしてそれだけしか書いてくれないのか。私の気持ちは彼に伝わらなかったのか――。
わからなくて、どうしようもなくて。
「私は……これからどうやって生きればいいの……っ?」
こんなに苦しいのに、寂しいのに。待て、もう少し待てってそればかりで。後一年もこうして生きなくてはいけないなんて無理よ……。
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- 21 : 2013/11/16(土) 23:00:29 :
床に崩れ落ちる私を追うように、エルドの手紙が舞い落ちる。その裏に書かれた言葉、普段なら何も書かれていない余白に目が留まった。
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直接伝えなければ、きっと俺の気持ちはお前に伝わらない。
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「……え」
何故こんな回りくどいことをするのか、一緒に育った幼馴染なのにわからなかった。けど、その筆跡が走り書きのように霞んでいて薄かったから、きっとそれが彼の言いたいことの全てなんだと悟る。
(こんなこと書かれたら、また一年待つしかないじゃない……)
彼の心が知りたくて書いた手紙。……その返事はまだないけれど。直接伝えたいという気持ち、それだけで頑張れる気がした。頑張らないといけないと思った。
一年待って、それで何が変わるのかはわからない。だけど待とう。待ち続けよう。どんなに苦しくても寂しくても、心が折れてしまいそうでも頑張ろう。
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- 22 : 2013/11/16(土) 23:02:42 :
- 面白いです♪
創造力豊かですねわた姉
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- 23 : 2013/11/16(土) 23:06:03 :
それから色々なことがあった。エルドが憲兵団への入団を止めて調査兵団へ入ることを決めたり、父が亡くなってとうとう私が一人きりになったり。……その間、私はただ待ち続けた。エルドの家族には幼い頃からお世話になりっぱなしだったけど、父が亡くなった今は私の第二の家族のように優しくしてくれた。だから一人でも寂しさを紛らわせることが出来た。
「エルドが戻ってくるよ」
「ええ。きっとあの頃とは違うんでしょうね」
私は不安や期待、それ以上の喜びでそわそわしていた。エルドが帰ってくる。ようやく会える。もう、大丈夫。
「――私、ちょっと外に出てきますからっ!」
堪らなくなって私は駆け出した。通りに飛び出し、人が行き交う道の向こうを見つめる。そこにエルドの姿を認めるまで、いつまでもいつまでも立ち尽くした。やがてこちらに向かってくる一つの点を見つけ、それが人の形をしているのを見つけると、無我夢中で声を上げた。
「――エルドっ」
それがエルドじゃなかったらどうしようとか、そんなことは全く気にならなかった。背の高い、少し逞しくなった姿。三年ぶりに会う大切な人の姿が次第に鮮明になっていく。
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- 24 : 2013/11/16(土) 23:07:35 :
「エルド……エルドぉ……」
後から後から嗚咽のように漏れる声。私は彼に向かって一歩を踏み出す。そして、よくやくその足が彼の目の前に届く。
「……やっと会えたな」
「うん」
「随分と待たせた」
「……うん」
「ただいま」
「おかえりなさい……エルド」
抱きついた身体が昔よりもずっと大きくなっていて、私の知らない匂いがして。でも相変わらず強く抱きしめてくれる彼の腕の中で、私は涙が涸れてしまうくらい泣いた。
「無理、させたな」
「……そうよ。私頑張ったんだから」
「そうだな。よく頑張った」
「……それだと偉そう」
「ああ、確かに」
少ししょぼくれた彼の顔が面白くて、思わず口元が緩む。
「やっと笑ったな」
「だって、安心したんだもの」
頬の涙を優しく拭ってくれると、エルドは私の手を引いて歩き出した。
「手、繋ぎたいんだろ?」
「え、あ……うん。そう」
繋いだ手をしっかりと握り返す。確かな温もりと優しさをくれるエルドの手。まるでそれは魔法の手だった。
「――帰ろう、俺たちの家に」
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- 25 : 2013/11/16(土) 23:10:14 :
本日はここまでとなります。
おそらく次回の投稿で二人が付き合うと思われますが、付き合ってから先はいよいよ書き溜めが尽きるため投稿が遅れます。ご了承下さい。
皆さまの支援やコメントはありがたく拝見しておりますので、ここから先もどうぞ宜しくお願いします。
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- 26 : 2013/11/16(土) 23:24:49 :
- 初めまして、支援させて頂きます。
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- 27 : 2013/11/16(土) 23:46:18 :
- 支援しまくり♪
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- 28 : 2013/11/16(土) 23:54:52 :
- >>26
こっそりSS読ませていただいておりました。アルタイルと星の翼たちで何回泣かされたことか……。
本当に支援感謝します。
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- 29 : 2013/11/16(土) 23:58:01 :
- わた姉良かったね♪(★・ω^)♭
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- 30 : 2013/11/17(日) 23:47:45 :
- 私たちはエルドの家に帰った。そして、皆で温かい料理と温かい笑顔で彼を迎える。たった一週間でエルドはまたここを去ってしまうけど、それまで私たちは一緒に過ごすことを約束した。
調査兵団に入ると決めたエルド。次に帰る時は背中に自由の翼を背負うのだと嬉しそうだった。……調査兵団が巨人と直接戦うところであるということは知っていたけど、そんな彼の笑顔を見ているとその決断が正しいように感じてしまう。だから私は彼の決断を信じるしかなかった。
「俺は死なないさ。これでも成績は優秀だったんだ。どこに入ったって俺は生き残る」
昼食後、私に調査兵団の死亡率などを誤魔化すことなく話し終えると、彼は笑ってそう締めくくった。
「でもエルドはどうして調査兵団に?あんなに憲兵様になるって言ってたのに」
その理由を一度も彼から聞いていなかったことを思い出す。ちょうど父の死と葬儀が重なり、そんな大切なことも訊けないほど心の余裕がなかったのだ。
「ああ、何でだろうな。このままじゃいけないと思ったからだろうか」
「このまま?」
私はこのままが良かった。それどころか、本当ならエルドに兵士になってもらいたくなかったくらいだったのに。
「――仲間の話を聞いてな。お前に壁の外を見せてやりたくなったんだ。御伽噺に聞くような海や砂漠をな」
「私に?どうしてそう思ったの?」
エルドはすぐに答えず、窓の外に視線を移す。そこには私のよく知る町が広がっている。そして遠くには、私たちを外界から隔てている、あの壁も見えているはずだった。
「……外に行こう。話したいことがある」
暫く黙った後、彼はそう言って椅子から立ち上がった。私が慌てて後を追うと、彼は私の腕を掴んでそのまま走り出した。
「ちょっと……エルドっ」
走る、と言っても私と彼じゃ走る幅も速さも違う。それはきちんとわかっているのか、私に合わせてゆっくり走ってはくれるものの、どこに行くのかも告げずにただ走り続けるだけでは目的も何もわからなかった。
(それでも、私エルドと走ってるんだ)
それだけが嬉しい。だから私は何も言わずに前を見据える彼の姿を見つめながら駆けた。
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- 31 : 2013/11/17(日) 23:49:34 :
「懐かしいな。ここは全く変わってない」
幼い頃よく二人で遊んだ原っぱに私たちは来ていた。柔らかい日差しに包まれた草原は、まるで私たちが再びここを訪れたことを祝ってくれるかのようにキラキラと輝いて見える。
「ここが変わっていないって言うより、エルドが変わりすぎたのよ」
「そうか?まぁ、図体もでかくなったしな」
少し日差しが強すぎる為木陰まで歩くと、私たちはふかふかとした芝に腰を下ろす。何か敷く物を持ってこれれば良かったと、座ってから思ってしまった。
「さて、――まずは手紙の話だな」
そしてエルドは話し出す。
「この三年間。暇さえあればずっとお前の手紙を読んだよ。一度だけじゃなく、何度も繰り返して。そしてお前の気持ちを探った」
「……うん」
「お前は俺に自分の気持ちを隠そうとするからな。だから何度も読まなければ真意は掴めなかった。季節毎にたった一度きりの手紙で、俺は全てを伝えなければいけない。……とても足りなかったさ。何度も抜け出してお前に俺自身の口から伝えたいと、そう思った」
涼しい風が頬を撫ぜる。その風にエルドの声が混ざった。
「俺のこと、好きか?」
――そんなの、とっくの昔から決まってる。
「……好きよ。好き」
けれどエルドは顔を曇らせる。途端に私は不安で一杯になった。
(ねぇ、なんで答えてくれないの?)
沈黙する。そのまま目を閉じ、私はエルドの言葉を待った。十秒、二十秒……待ち続けると、ようやく小さな囁きが聞こえる。
「――俺は心臓を捧げた兵士だ。いつ死ぬかもわからない。お前にそんな俺と付き合ってもらいたくない」
そんなことはわかってる。それでも私は――、
「私はエルドが好き。いつ死ぬとか、そこに私が居られないかもしれないとか、そんなことはどうだっていい。貴方が私を好きでいてくれれば、それで私は幸せなの……」
そう言ってエルドに抱きついた。力を入れて抱きしめると、私の背中にエルドの手がそっと置かれる。
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- 32 : 2013/11/17(日) 23:49:49 :
- わた姉ちゃんfight♪
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- 33 : 2013/11/17(日) 23:50:43 :
「……ああ、わかってるさ。俺だって同じ気持ちだ。だからこそ、お前には俺以外の奴と幸せになってもらいたいんだ」
「そんなの嫌っ……」
強く抱きしめなければ、繋ぎ止めなければこの人は私から離れてしまう。そう直感した。
「本当に強くなったなら、何度も何度も帰ってきて……っ!私ここで待ってる。絶対待ってるから」
「――俺はお前が好きだ。だが、万一の時に辛い思いをさせるくらいなら、今ここで別れることが最善だと、俺は思う。今日お前に再会して、前よりずっと綺麗になったお前の顔を見ていたらそう思ったんだ。“俺じゃこの人は守れない”とな」
「守ってもらわなくてもいい。私だってもうそんな年じゃない……。けど、私にはどうしてもエルドが必要なの。エルドじゃない人なんて絶対嫌なのっ!」
まるで駄々をこねる子供みたいだと、自分でも思う。けれど私はエルドの腕の中でそう喚いて暴れることでしか自分の気持ちを伝える事が出来なかった。
だから彼が殊更強く私を抱きしめた時、驚いて大きく身体を震わせてしまう。
「……エルド?」
あまりに私が我が侭だから、怒っているのかと思った。でも彼のすすり泣く声が聞こえて、それで彼もこの選択が辛いのだと察する。
「もう俺は……三年も待たせてしまった。それだけでなくこれからもずっと、俺が死ぬまでお前を待たせることになる。それじゃいけないんだ。好きだからこそ、守ってやりたいからこそ俺はお前と一緒にいることは出来ないと結論付けたんだ」
優しく諭すように、けれどもどこか吐き捨てるように、彼は心情を吐露した。私はその腕の中で、黙ってその思いを受け止めることしか出来ない。
(エルド……私はそれでも、構わないの)
この人の為に強くならなければいけないと思った。私の大切な人が、せめて帰ってきた時だけでも笑ってくれればそれでいい。悲しませたくない。傷つけたくない。そう思うのが二人共一緒なら、エルドじゃなくて私が強くなることできっと解決するから。だから一緒にいたい、そう思う。
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- 34 : 2013/11/17(日) 23:52:54 :
「エルドは私が弱いから、守らなくちゃって思ってる?たった三年も待てなかった私だから、駄目だと思う?」
「そんなことはない。はっきりさせないまま三年間も待たせた俺が悪いんだ。それに結局お前は三年間待ってくれたじゃないか」
「……ううん。私ね、エルドばかりが私を置いて先に進んでいってしまうのが悔しかったの。私は兵士にはなれないから傍にいられない。どんな時でもただ待つことしか許されない存在。だから寂しくて悔しくて、自分が嫌だった。そして結局待つことも出来ないで貴方を困らせて、今もこうして貴方に縋ることで自分を保ってる。――だけどね?私はエルドを支えたいと思うの。エルドがいるならきっと強くなれる。これからの一分、いえ一秒でも一緒にいることが出来るなら、……笑ってくれるなら。それで頑張れると思うの」
そう、私は頑張らなくてはいけない。本当にエルドが好きなら、この人を困らせるのではなく、この人の帰る場所になろう。その為には強くなって、守ってもらわないといけなかった今までの自分を変えなければならない。
「だからエルド――私と一緒に生きてくれる?」
「……本当にそれでいいのか?」
私の髪を優しく撫でる彼。その温かい手の温もりを感じながら、私は言葉を紡ぐ。
「うん。こんなこと縁起でもないから言うべきじゃないかもしれないけど、――死が二人を別つまで、絶対に貴方と共に生きる」
「――っふ」
小さな笑い声が聞こえて私は顔を上げた。
(エルド――笑ってる)
さっきまで辛そうに歪められていた顔。その顔が何かを吹っ切ったように穏やかになる。ようやく見ることが出来た私の大好きなエルドの表情だった。
「死が二人を別つまで、か」
「可笑しい?」
「いや、まるで結婚するみたいだなと思ってな」
「え、あっ……」
私は紅くなっただろう顔を両手で隠すように覆った。彼は暫くの間楽しそうに笑った後、改まった口調で言う。
「――それなら俺も誓おう。死が二人を別つまで。いや……死すらも引き裂けない関係を築くと」
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- 35 : 2013/11/17(日) 23:53:34 :
だから約束。もしもどちらかが死ぬことがあっても、残された方は強く生きると。
エルドは言った。その時は自分を忘れて生きてほしい、と。
だけど私は忘れない。――忘れない。
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- 36 : 2013/11/17(日) 23:55:11 :
夕闇に染まり黄金色に揺れる草原。その中に一本だけ佇む木の影で、私たちは手を繋ぎ、沈む夕日を眺めていた。
「これからはこの夕日を見ながら、お前のことを思い出すんだろうな」
「私もその時にはきっとエルドを思い出すのね」
彼にそっと寄り添いながら呟く。繋いだ手から感じる体温が心地よく、そのまま微睡みの中に抱かれつつあった。幸せが温かく、孤独でないことがこうも満たされることであったかを久しぶりに噛み締める。
(まるで夢のよう)
私の髪をいじくる彼の手を握り、互いの指をしっかりと絡めて膝の上に乗せる。心も身体も繋がった――そんな錯覚。
「……幸せすぎて私じゃないみたい」
「俺もだ。子供の頃から一緒だったのに、今お前と一緒にいることが奇跡のようにさえ思える」
彼の目を見つめる。少し細められた綺麗な瞳に自分の姿が映りこむのを見付け、思わずドキリとした。
「一週間後にここを離れたら、次に会えるのは最初の壁外調査の後になる。まずはそれを無事に乗り越えるのが俺の役目だ」
「役目?」
「ああ、お前に会える日まで生き延びなければならない」
「じゃあ、私はそれまで頑張らないとね」
向き合い、額を合わせて手を繋ぎ、共に約束する。ゆっくりと目を閉じると、彼の唇がそっと額に押し当てられた。
「んもう……エルドったら」
その感触がくすぐったくて、私は身を捩るようにして抗議した。目を開けると、彼の方も緊張しているのか、真面目な顔に少しの朱が差している。
「そっちは違う……」
強請るように呟いて私は目を閉じる。二人の他には誰もいない静まった草原。穏やかに吹く風の音に混ざる互いの心音が少しずつ近づいていく。そして彼の香りをこれ以上ないほどはっきりと捉えた瞬間、その時は訪れた。
気持ちを確かめ合うように何度も口付けを繰り返す。何度も、何度も何度も求め、求められ、繋がっては離れ……思考が停止し、全て忘れる程に無我夢中になって彼を求めた。やがてそれすらも通り過ぎ、呼吸が苦しくなってやっと身体が離される。
-
- 37 : 2013/11/17(日) 23:56:43 :
「エルド……」
この世界で一番愛しい人の名前。その名を呟いて、彼の胸に顔を埋めた。
「……温かい」
「ああ、俺もだ。これがおそらく幸せなんだろうな」
俺が守りたいものだ、とエルドは言って、もう一度私を強く抱きしめた後、ゆっくりと立ち上がる。
「そろそろ帰ろう。二人共帰ってこないとなると、お袋が心配する」
「ええ」
差し伸べられた彼の手をとり、私も立ち上がった。遠くに見える町の屋根に夕日がゆっくりと沈んでいく。
(この光景を一生覚えていよう。覚えて、彼が居ない日を耐えればいい。今日のこの日が永遠に心に刻み込むんだ)
繋いだ手が離れてしまわぬように力を込め、私はエルドに微笑んだ。彼もまた微笑み返し、思いついたように言う。
「お前の親父さんに報告しなくちゃな」
「うん。父もきっと喜ぶ」
「お前の親父さんには長生きしてほしかった……」
今は亡き私の父の姿を思い出すように目を細め、エルドはしみじみと呟いた。
「あいつはきっと立派になるって、エルドがいなくなってからずっと言ってた」
「親父さんがか?」
目を丸くする彼。そんな可笑しな顔を笑ってから、私は父の言葉を思い出していた。
「――エルドのこと、“私を嫁にする幸せ者だ”って」
「そうか。お前のことを一番心配してた親父さんらしいな」
-
- 38 : 2013/11/17(日) 23:58:34 :
母を亡くしたばかりで泣いてばかりだった幼い私。エルドはそんな私を強引に連れまわしては色々な冒険をし、結果的に私に怪我をさせて父に怒られていた。傷だらけの私とたんこぶだらけのエルドは、いつだってこの草原で泣きあっては笑いあって、今度はどこへ行こうか相談しあったものだ。今だって目を閉じれば、目蓋の裏にその記憶が鮮明に映し出される。そして疲れきって眠ってしまった私たちは、いつの間にかお互いの家のベッドに寝かされているのだ。子供二人を一度に抱えられる人は、力持ちだった私の父以外いない。
「――俺は絶対に、お前を嫁にするからな」
「うん。待ってる」
私はまた夕日を見つめた。子供の頃にエルドと見た空と、今こうして見ている夕空がもしも同じなら、きっと何年後かに見る夕空も今日と変わらず美しいのだと信じて。
(ずっと、変わらずエルドと二人でこの空を見ていられるように。……生きていけたら)
それが最高の幸せになる。
だから絶対に私を一人にしないでと、呟くかわりに微笑んだ。
「エルド、好き」
「ああ。俺も好きだ」
――固く繋いだこの手が、伝わる体温が、私の前から絶対に消えることなどないと。この時の幸せな私は信じて止まなかった。
-
- 39 : 2013/11/18(月) 00:01:50 :
- 本日の投下は以上です。今日もありがとうございました。
ここから本格的に書き溜めがない為、ありえないくらい遅れることが想定されます。どうぞ気を長くしてお待ちくださるようお願い申し上げます。
-
- 40 : 2013/11/18(月) 00:03:33 :
- わた姉ちゃんお疲れ様♪
&寝るからお休み
。・゜゜(ノД`)話だよ…エルド…可哀想に…
-
- 41 : 2013/11/18(月) 00:07:49 :
- こんばんは。
わたせんさんが私のSSを読んでいたと知って
驚きました。ありがとうございます!
引き続き楽しみにしています。
-
- 42 : 2013/11/20(水) 23:48:34 :
そして、時が流れる。約束どおり、エルドはどんな時も必ず戻ってきてくれた。仲間を喪った時も、怪我をした時でも、必ず帰ってきては私とあの草原に立った。その背に“自由の翼”を背負い、心に深い傷を抱えてなお明るく笑ってくれる彼。そんな彼を迎える度に増す小さな不安を押さえつけ、私も明るく笑うのが恒例行事になっていた。
そんな彼が本当の笑顔を見せてくれる時がある。それはだいぶ前から町でも噂になっているある英雄の話だった。
「リヴァイ兵士長?」
「ああ。俺の尊敬する方だ。まさに英雄だよ、あの人は」
一度だけ、調査兵団が帰ってくる日に見かけた時がある。――遠目でもわかる程小柄な男性で、とても噂ほどの人には思えなかったのが感想だった。それを正直にエルドに言ってみると、彼は不満げに反論する。
「いや、兵長は偉大な方だ。まぁ、確かに近くで見ると思ったよりはアレだが……それはほんの印象でしかない。ああ見えて部下思いで誰よりも巨人討伐に力を入れられているし、実際に戦う姿を見た時には失神するかと思ったほどだ。同期の中にも兵長に命を助けられた奴は少なくない」
「エルドはリヴァイ兵士長のことを尊敬しているのね」
あまりにその様子が必死だったので、私はそう判断する。彼は自分が珍しく熱く語ってしまった事に気づいて照れくさそうな顔になったけれど、すぐに頷いて肯定した。
「ああ。最近初めて声を掛けていただいたんだが、俺のような下々の名前でもしっかりと覚えて下さっているらしい。――本当にリヴァイ兵士長は素晴らしい方だ」
そして、そのリヴァイ兵士長の作った精鋭班に抜擢されたのだと、彼は嬉しそうに報告した。
-
- 43 : 2013/11/20(水) 23:49:46 :
- 私はエルドの為に紅茶を用意しながら、彼のする話に聞き入っていた。どこの銘柄かもよく知らない紅茶。庶民の買うものだから安物ではあるのだけど、彼はそれを好んで飲む。オレンジ色に一滴だけ落ちた深い赤はまるで夕焼けのようで、エルドだけでなく私もその色を気に入っていた。
「調査兵団の、特別作戦班?」
「トロスト区のことは聞いているだろう?」
「ええ」
カップを温めながら相槌を打つ。今更になって私の分を用意するのを忘れたことを思い出し、慌てて食器棚からもう一つカップを取り出した。
「……一人の少年が巨人になって壁の穴を塞いだって聞いたわ」
「今回はその“巨人になれる少年”の護衛が任務だ」
エルドがその任務に不安を感じていることが声音でわかる。……兵士をやっていれば、私たち庶民より多くの情報を得ることが出来るはず。それでも不安を感じるということは、その少年が私たち人類にとって本当に安全であるという確証が持てないということを意味する。
「兵長自らがこの俺を指名してくださった。これほどまでの名誉はない。それでも不安なものは不安なんだ。巨人になることが出来る少年の護衛……。安全だとは言い切れない。おそらく、これまで以上の危険に晒されるだろう」
――死。その単語はいつだって彼に付きまとっていた。実際こうして調査兵団に所属すれば、彼の口から出る言葉は、誰が死に、自分はどう生き残ったかということだけ。現実が甘くないことはよく理解していた。エルドがいつ死ぬ事があってもおかしくないということも理解していた。けれど認められるかどうかはまた別で――。私はいつだって彼の前で“死”という単語を口に出さぬよう、それだけを気をつけていた。
「ねぇエルド。他の人は?」
だから重苦しい空気を払拭するように、努めて明るい声で問いかける。
「ああ、俺と年が近いのが一人と、後は若いのが二人だ。みんな馴染みだよ」
それなら良かったと安堵した。彼だって見知らぬ人ばかりではそんな危険な任務、きっと耐え切れないから。
-
- 44 : 2013/11/20(水) 23:50:51 :
「一ヶ月間、また会えないのね」
「……ああ、暫くの間は手紙しか出せないな」
温かい紅茶にレモンを一切れ添えてエルドの前に置き、私は彼の向かいに座る。
「私は平気。一人じゃないもの」
あれから数年。もう私の家はエルドの家と言っても過言ではなかったし、エルドのお母さんも私たちの仲は知っていて、結婚までの段取りは任せてくれとまで言ってくれている。――それだけ私はこの家に受け入れられて、温かく包んでもらっていた。エルドが訓練兵だったあの頃とは随分違う。
「そうだな。もうあれから随分経つ。……結婚はいつだ、とそろそろお袋が言い出してるんじゃないのか?」
「エルドのお母さん。ずっと楽しみにしていてくれているのよ?」
実はかなり前から結婚の話は出ていた。だからもうその話が急に口から出てきても照れたりはしない。……エルドからのプロポーズはまだだったし、実際に細かい話は一度もしたことがないけれど、きっとエルドもその事は意識しているはずだった。
「お前の婚期もあるだろう。それにお前は綺麗だから、他の男も放っておかない」
「もう……他の人にはとっくに結婚しているって思われてるわよ」
悪戯っぽく笑う彼に対して同じくらい悪戯っぽく返す。そして紅茶の水面に浮かぶ自分の顔を見つめながら、私は静かに問いかけた。
「……まだ、そんな時期じゃないものね」
「ああ。今はな」
-
- 45 : 2013/11/20(水) 23:51:43 :
とにかく今は結婚どころか生死すら危ういし、食糧難だって解消されたとは言えない。おめでたいことはこの困難を乗り越えてからでも遅くないように思えた。
(それでも、将来の約束は欲しいと思ってしまうわけで)
我が侭といえばそうなのだろう。それに今のこの立場でも十分幸せなのに、婚約だなんておこがましいような気がする。女の幸せは結婚なんて世間じゃ言うけれど、私はそんな価値観に踊らされるような人間じゃない。
「お前に迷惑は掛けないつもりだ」
彼も私と同じ考えなのだろう。だからそのことに触れずに今日まで過ごしてきたのだ。現状維持――それがこの状況での最善であると、今の私たちは信じるしかない。
「それでも、俺はいつかお前と結婚したいと、そう思ってる」
「ええ。私も同じ気持ち」
紅茶に浮かぶ自分の顔がゆらりと揺れ、幸せそうな笑顔をつくった。
「前にした約束を覚えてる?……貴方が壁を越えて、私を外に連れて行ってくれるって言った」
ふとそんな約束を思い出し、彼に訊いてみる。
「ああ、憲兵になってお前を楽にさせてやることは叶わないが、必ずお前に外の世界を見せてやる。そうしたら――」
エルドは笑って言った。
「そうしたら、必ず結婚しよう」
-
- 46 : 2013/11/20(水) 23:52:40 :
- 本日の投下は以上です。遅くて本当にごめんなさい。
もうあと少ししか残ってないので今週中に終われればいいなと思っています。
-
- 47 : 2013/11/21(木) 07:15:09 :
- 面白いにゃ♪
頑張ってにゃ~
-
- 48 : 2013/11/21(木) 13:13:39 :
- 面白い~
-
- 49 : 2013/11/22(金) 16:25:16 :
淡い紫色の花が窓際で揺れていた。吹く風にその花弁を震わせ、自分が摘まれたことすら気づかずにその最後の命を精一杯輝かせている。その花を手折って花瓶に生けたのは私だ。エルドからの手紙を読んだ後、無性にあの草原からの夕日が見たくなって出かけた。その時に見つけたとても美しい一輪の花。一週間も前に摘んだその花は既に萎れかけ、生けた時の鮮やかな様は失われてしまったけれど、私は何故かその花を捨てる事が出来ずにいた。
窓から顔を覗かせ、穏やかな風を頬に受けながら便箋二枚からなる手紙を開く。几帳面な彼の字が延々と綴られた手紙。そこに書かれているのは、笑いそうになるほどありきたりな彼の本心。その細かい文字を指でなぞって追いかけ、私は深く息をつく。
「……もうあれから結構経つのね」
この手紙を開く時はいつも気が沈む。多分如何なる人間だってそうだ。きっと何度繰り返しても、この感覚に慣れることは出来ないだろう。――大切な人を喪った者の気持ちなんて。
あの思い出したくもない悪夢のような一日を越え、私はまるで心が空になったように日々を過ごしていた。何も手に付かないなんて生易しい表現じゃない。本当に世界が終わてしまったかのように、何も無くなってしまったといった感覚がちょうど当てはまるくらい、どうしようもない虚無の念に押しつぶされそうになっていた。
玄関の戸の前で鳴る小さな足音が彼の物に思えた。遠くで響く男の人の声が、彼が私の名を呼ぶ声に聞こえた。他人に少しでも彼との共通点を見つけては、その姿に彼の面影を見出そうとしていた。……それほどどうしようもないくらいエルドの姿を求めたのに、私のところに帰ってきたのはこの一通の手紙きり。
-
- 50 : 2013/11/22(金) 16:27:03 :
(……身体さえ残らないなんて)
巨人に喰われたか、それとも単に彼の遺体を持ち帰れなかっただけなのか。幸いにも巨人を一度も目にした事がない私には、彼の最期がどうであったかなんてわからなかった。それにその光景を思い浮かべようとする度に、あの優しい彼の声と笑顔が蘇って胸を締め付けるのだ。
――それはまるで、エルドが自分の最期の姿を私に見せないように妨害しているようで。
あの正義感が強く、ただただ真面目だった彼なら有り得ると、そう勝手に解釈してしまう。だから私は彼が託した最後の言葉を胸に抱き、あの穏やかな笑顔を思い浮かべては過去に思いを馳せる。それがせめてもの弔いになると信じて。
遺品代わりの便箋二枚分の手紙は彼にしては字が荒く、しかも宛名に書かれた私の名すらインクが掠れていた。きっと壁外調査に出る直前に急いで仕上げたのだろうと、手紙を持ってきた調査兵団の兵士が教えてくれた。
カサリという小さな音を立てて紙が折られる。急に強くなった風が窓から流れ込んできたのだ。私は慌てて椅子から立ち上がり、萎れかけた花を生けた花瓶を窓辺からテーブルへ移動させた。そしてエルドが決まって座る定位置に腰掛けると、再び便箋の上から下へと目を通す。
(……よりにもよって、また急いで書いた手紙だなんて)
彼がまだ訓練兵だった時の手紙。私の精一杯の気持ちに一文だけ答えた彼の手紙。……あの時は待ってさえいれば彼は帰ってきた。けれども今は違う。
――それとも、こうして彼の家でただ待っていれば、今は静かなあの戸が音を鳴らして開き、彼が姿を現すのだろうか。
そんなことはない、と思う。だって彼はもうこの世には存在しないのだから。
-
- 51 : 2013/11/22(金) 16:28:41 :
涙はとうに涸れ果てた。そのため、もういくら感傷的になっても一滴だって溢れそうにない。だからその代わりに私は花瓶の水を換える。――この花はきっと今の私なのだ。水がなくては、涙を流さずには生きていけないのに、自分ではそれを得ることが出来ない。人から与えられることで今日を辛うじて生きる虚弱な存在。ただ、この花と私では一点だけ大きく異なっていた。
私は苦しくても生きねばならなかった。エルドが死んだからといって自分も後を追うわけにはいかない。私は精一杯を生きて、彼がこの世界に貢献したという証拠――人類が真の自由を取り戻す日を見届けなければならなかった。
そう、調査兵団の兵士が届けてくれたのは、エルドの手紙だけではなかったのだ。手紙――というには短いその文面。彼とは似ても似つかない神経質そうな書き手の内面が現れているような、そんな小さな文字と文体。それが誰のものであるか、名を見ずとも察する。
リヴァイ兵士長。エルドが誇らしげに語っていたその英雄からの手紙。それもエルドの家族ではなく、私個人に宛てたものだった。けれどその手紙を開けた時、私は何故彼が私の為に筆を執ったかを知る。そしてその手紙を涙で濡らした。
きっとエルドは仲間に私のことを話しただろう。いつか結婚するつもりなのだとも言ったに違いない。そしてそれはこのリヴァイ兵士長の耳にも届いていたに違いなかった。
――なぜならば、私宛の手紙。その宛名が私の名ではなく、『エルドの婚約者へ』だったから。
-
- 52 : 2013/11/22(金) 16:29:39 :
彼と過ごした時間の全てが幸せだったのか、今となってはもうわからない。
わからないけれど、彼がここに生きていた証は、私の心の中に確かにある。いつまでも消えることなく残り続ける。
きっと難しいことだけど、私は彼を忘れずに生きていこうと、そう思った。
だから、どうかあの日の約束が、……自由を望む彼のささやかな夢が叶いますように。
――それだけを祈る。
-
- 53 : 2013/11/22(金) 16:30:17 :
-------------------
壁外調査の前に、どうしても伝えたいことがある。直接言えればいいが、後になれば俺も照れくさいだろうからこうして筆を執った。実は書いている今、集合時刻が迫っていてな。正直こんな物を書いている時間なんてないんだが、まぁ、気の迷いってことで笑ってくれ。
お前と過ごす何もないただの一日が、今はとても恋しい。今の生活は充実しているし、信頼出来る仲間と尊敬する方がいるこの環境は、おそらく兵士の中でも恵まれたものに違いないだろう。それでもお前が恋しいよ。
今まで俺は自分が何故戦うのか。あんな化け物を前にして何故ここに今立っていられるのか。自分自身でもよくわかっていなかった。自由が欲しい、お前に外の世界を見せてやりたい。確かにそれで戦えるのかもしれない。でも正直に言えば、あの恐ろしい巨人を前にして命を懸けられるほど俺は命知らずでも死に急ぎでもないんだ。だけどその理由が最近になってようやくわかったような気がするよ。
俺は人類の一員だ。そして人類は俺の一部なんだ。だから仲間の死を目の当たりにし、人類が巨人の脅威に怯えているというのに俺一人が傍観しているわけにはいかない。きっとそれが俺が戦う理由なのだと思う。今更こんなことを考えるのも、多分この一ヶ月の間兵長のお傍にいたからなのだろうな。兵長と俺では背負うものの量があまりに違いすぎるが、それでも俺は俺なりのやり方で英雄に近づきたいのかもしれない。
人はきっと誰かがいなくては生きていけない。お前がそうであるように、俺もそうなんだ。だから俺は無意識にお前の姿を探してしまう。こうして手紙を書いている時ですら、お前の顔が頭を過ぎる。笑えるだろう?そんな俺が今、自分の命を賭して戦いに挑んでいるんだから。いざという時にお前の下へ一目散に駆けていくことが出来ない立場の人間なのに、巨人と戦うことでお前を守れるつもりでいるんだ。
いつかきっと、人類が真の自由を取り戻す時がくるだろう。その日を俺も一緒に迎えることが出来たら、それに勝る喜びはない。だが、所詮俺は一介の兵士だ。いつ、どんな時にこの身が果てるとも知らない。だがお前はそれに気をとられてはいけない。たとえ俺が死んでも、おそらく誰かが俺の意志を引き継いでくれるだろう。それがある限り俺は真に死んだとは言わない。そして意志を引き継いでくれるだろうその誰かの中には、お前も含まれる。
もちろんこんなところで死ぬつもりはない。だが、時にはこういう手紙もいいだろうと思って文章に残すことを決意したまでだ。前にも少し話したが、俺が死んだら俺のことは忘れてほしい。だがけして俺の意志は忘れないでくれ。そして出来れば、俺がお前を想っていたことも覚えていてほしい。
いい加減外が賑わってきたから、ここで筆を置く。最後に一つだけ、照れくさいことを書くついでに伝えておこう。どうせ直接お前に言うことは、俺の勇気が足りずに出来ないのだから。
愛してる。
-------------------
-
- 54 : 2013/11/22(金) 16:31:03 :
テーブルに移した花瓶。そこに生けられた淡い紫色の花が揺れる。
窓から入ってきた穏やかな風が萎れかけた花弁を撫で、遠くへ連れ去ろうとしているのだ。
それを私はぼんやりと眺め、徐に彼の手紙をその隣に置く。そしてもう一度あの草原へ夕日を見に行こうと、席を立った。
振り返ったテーブルの上、まるで花瓶と手紙が寄り添うように、仲良く並んでいた。
-
- 55 : 2013/11/22(金) 16:32:27 :
《
今穏やかな響きを立て、鐘が私に言う「あなたは死ななければならない」と。
おそらく弔いの鐘の音を聞いている人は、あまりに自分が弱っているがために、それが自分の為に鳴っていることを知らないかもしれない。――そして多分、私は自分が実際よりもずっと元気だと思い込むあまり、私の周りにいて様子を伺っている人たちが、私のために鐘を鳴らせていることを知らずにいるのかもしれない。
太陽が昇るときに、顔を上げて見つめない者がいるだろうか。彗星が現れたときに、目をそむける者がいるだろうか。鳴らされる鐘の音に、耳をそばだてないものがいるだろうか。鐘の音が自分の魂を天へと運んでいってくれることを、望まない者があるだろうか。
人は孤独ではない。独立した人間など一人もいない。全ての人間は世界の一部なのだ。一塊の土くれが水に洗われると、大地は狭くなっていく。それはあなたの友やあなたの土地が流されていくようなものだ。
誰かの死もこれと同じで、私の一部を削り取られるに等しい。なぜなら私もまた、人類の一員なのだから。
それ故、私はあなたがたに言いたいのだ。けして問うてはならない。――誰がために鐘は鳴るのか、と。それはあなた自身のためにも鳴っているのだから。
『誰がために鐘は鳴る』より
》
-
- 56 : 2013/11/22(金) 16:34:05 :
これにて終了です。ノロノロ更新でしたが、ここまで読んでいただき大変嬉しく思っています。
最後の『誰がために鐘は鳴る』は世界観が合うように改変させていただきました(だって元のは海とか島とかヨーロッパとか書いてあるし……)。ので、もしかしたら本来の意味と少し違ったものになっているかもしれません。どうか浅学な私を笑うことでお許し下さい。
>>1の作品リンクが残念なことになっていたので、失礼ですが張り直しさせていただきます。
前作:
『最愛の殺人鬼』 http://www.ssnote.net/archives/2283
『もし、リヴァイが死んだなら』 http://www.ssnote.net/archives/2416
それでは、前回のSSや今回のSSに支援・感想コメントをして下さった方、これからコメントしようと思ってくださっている方に心からの感謝の言葉を言わせていただきまして、今回の作品でも締めの挨拶とさせていただきます。ありがとうございました!
-
- 57 : 2013/11/22(金) 16:52:20 :
- 面白かった♪
次回も頑張ってにゃ♪
-
- 58 : 2013/11/22(金) 23:39:49 :
- エルドが女型によって地上に
落とされた瞬間にはその手紙の
想いがあると知りえたなら…
やるせない気持ちになりました。
次回の作品も楽しみにしています!
ありがとうございました。
-
- 59 : 2013/11/22(金) 23:49:25 :
- 神ですね!!
-
- 60 : 2020/10/28(水) 13:46:02 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
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