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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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イレギュラーズ 【第一章】

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  1. 1 : : 2014/11/06(木) 01:57:38











    この世界は【奇妙】だった








    _____2045年 地球







    着実に、この星の命を削り、人類は日々をすごす







    30年前の2015年から、人類も比較的に文明を進歩させていったと言えるだろう






    だが、30年前と違うのは







    その、住んでいる人々の様子だった






  2. 2 : : 2014/11/06(木) 02:02:09






    ①【無気力人間】と呼ばれる、言葉を喋ることもできず、ただ路上に寝ている人々





    ②【植物人間】と言われる、ずっと眠りついた人々





    ③【特殊な人間】と称される、明らかに人外な運動能力を持った人々





    ④そして、【犯罪者】と括られる、罪を犯す人々














    多種多様の人類が存在したが、30年前に比べ明らかに増加していたのは④【犯罪者】だ






  3. 3 : : 2014/11/06(木) 02:07:35







    何故、【犯罪者】がそこまで急増したのだろう




    もちろん、先ほどの4パターンの人々しか住んでいない、という訳ではない




    主に【犯罪者】という括りの人々が過去に比べ明らかに増大したのだ





    すでにテレビという概念がなく、空中に映し出される映像【ヴァーチャルTV】のニュースでは





    凡そ、約2~3年前から、犯罪者の数は急増したという











    そのTVニュースでは語られることはなかったが






    その時期は





    とある会社の、とある社長の持つ、昔は【携帯電話】と呼ばれていた「VPCP」が





    突如、大爆発を引き起こし、彼の命を奪った時期と






    同じ、ということであった






  4. 4 : : 2014/11/06(木) 02:07:59















    【イレギュラーズ】












  5. 5 : : 2014/11/06(木) 02:16:17












    2045年、日本





    東京湾の海上に新たに建設された、【港マリンシブヤ】の土地に建つ堺原高等学校で、さわやかな声が響き渡る







    「おおおーーーーっ、ヒロ、行けえええーーーっ!」



    「お前なら抜ける! 抜けるぞおおおおっ!」



    「ヒロくん! 素敵よーーーっ!」








    その声援を受け、運動会のリレーでアンカーを走っていた【鎌足ヒロ】は、トップの走者に残り2メートルと迫る





    「おりゃああああぁあぁああっ・・・・・・!」




    陸上部の期待のエース、とまで言われる彼は、叫びながら猛烈なスピードアップをし




    「う、嘘だろ・・・!? 20メートルは差があったんだぜ・・・・・・!?」




    トップの走者を、いとも簡単に抜き返した




    「・・・いよっしゃっ・・・・・・!」




  6. 6 : : 2014/11/06(木) 02:27:38




    そして、彼はそのままゴールテープを切る。




    ドンケツだった【鎌足ヒロ】率いる紅組は、リレーをトップでゴールしたことにより、大逆転





    ワアアアアアッと、運動会最後の種目は盛り上がり、数々の声援が上がった





    「はあっ・・・はあっ・・・どうだ!見たかっ!」




    鎌足ヒロは、息を切らせながらも、余裕を見せる




    堺原高校2年生の彼は、身長175センチ、体重60キロのスリムな体型だ




    陸上部らしく、髪は黒髪の短髪。



    目が大きく眉が少しきつめであるが、傍から見れば、クラブ活動に精を燃やす好青年である




    「ヒローーーーーッ!」




    リレーを走り終えたヒロに、声をあげて近づくのは【高濱マナ】




    ヒロの同級生であり、堺原高等学校陸上部のマネージャーだ




    彼女はCカップのその胸を揺らし、藍色のボブショートヘアを靡かせながら、ヒロに近づいていく




    他の同級生から見れば、それはどんなに羨ましい光景だろう




    彼女は学園のマドンナ、とまではいかないものの、校内2年生美女ランキングの中のトップ3に入る美少女だ




  7. 7 : : 2014/11/06(木) 02:41:50




    「やったね!さっすがエース!」



    マナは笑顔で、ヒロの肩を叩く



    「お、おい、やめろって・・・照れるよ」



    ヒロは控えめに、彼女に返す



    「それに陸上部なんだから、他の奴らに負ける訳にいかねえだろ」



    負けん気な彼は、彼女に精一杯の強がりを言い放った




    「あははーっ、相変わらずストイックだねー。素直に喜べばいいのに。ほれほれ」




    マナは何度も、ヒロの肩を叩く




    彼女の身長は155センチ。少し手を伸ばせば、ヒロの肩には手が届く



    「ったく」



    ヒロも満更ではないのか、顔を赤くして照れる




    「あ、ほら、他のみんなも嬉しがってるよ!」




    「え・・・」



    ヒロが紅組の応援団を見ると




    「おおーーーっ!!ヒロ、さすがだな!!」



    「やっぱ200メートルでお前に勝てる奴はいねえよ!!」



    「よっ!期待の星!鎌足様バンザイ!!」




    クラスの皆から、微笑ましい賞賛が飛んでいた




  8. 8 : : 2014/11/06(木) 02:48:07




    「・・・・・・」



    ヒロは嬉しい様子でもあったが



    「・・・あれ? どうしたの?」



    少し、虚しそうな顔もしていた



    「・・・あ、いや・・・・・・」



    「みんな嬉しいんだよ! だって私たちドベだったし!」



    「・・・・・・」



    「ヒロのおかげで、優勝できたんだよ?」



    「あ・・・・・・ああ・・・・・・」



    何が不満なのか



    鎌足ヒロは、素直に優勝したことを、喜べていなかった




    「・・・・・・なあ・・・マナ・・・・・・」



    「ん?」



    「なんかさ・・・・・・その・・・・・・」



    「どうしたの・・・?」



    「変じゃないか・・・?あいつら・・・」



    「んん?」



    マナは言葉どおり【何が?】という顔色を浮かべる



    「変って・・・・・・そう・・・?」



    「・・・・・・その・・・前から言ってるだろ? オレ・・・」



    ヒロは更に、クラスの連中を見てボソッと話す




    「あいつら・・・ちょっと前から・・・変になった、って・・・」



  9. 9 : : 2014/11/06(木) 02:56:57




    「ええ? そうかなあ・・・」




    マナは相変わらず天然だ




    些細な教室の変化や、他の生徒からの好意にも、彼女はほとんど気がつかない




    それが、【天然メンズ・キラークイーン】の異名を持つ、彼女の肩書きだった



    決して、どこかの奇妙な漫画に出てくる、爆発の能力を持ったスタンドのことではない




    「・・・・・・」



    だが、ヒロは感じられずにはいられなかった



    クラスの大半の友人に感じている【その違和感】を



    幼い頃からの付き合いであるマナには、その印象を感じることはなかったものの



    ヒロは、確実に、その異変に気がついていた



    「まあまあ、とりあえず胴上げみたいだよ? 行こ?」




    マナは、ヒロの【違和感を感じた】との台詞等をものともせず




    「お、おい・・・!」




    彼の手を引っ張り、自分のクラスの中心に連れて行った



  10. 10 : : 2014/11/06(木) 03:01:01


































  11. 11 : : 2014/11/06(木) 03:09:52








    ~堺原高校 2年G組 教室~





    「えーー、みんな静かにー」




    「ホームルーム始めっぞー」




    堺原高校2年G組の担任である高橋は、運動会優勝でざわついていた教室を鎮める




    「・・・・・・」



    ヒロも、その中の一番後ろの席に座りながら担任の様子を伺い



    「ははっ! またね、サドちゃん!」



    マナは、お喋りをしていた女友達に挨拶をする






    「えー、まずは、運動会優勝おめでとう。先生も嬉しいぞー」



    御年45歳、専門教科が国語の高橋は、相変わらず棒読みの口調で喋る



    「ヒロ、よく頑張ったなー、お前は我がクラスの誇りだー」



    「・・・・・・っす」



    「ただ・・・・・・運動会の優勝はとても嬉しいが・・・残念なことに、バッドニュースだー」



    バッドニュース、という言葉を聞き、クラスは少しざわつく




    「みんな、手元のVPC開けー。あ、携帯のVPCPのことじゃないからなー」



  12. 12 : : 2014/11/06(木) 03:15:52





    VPCとは、ヴァーチャルパーソナルコンピュータの略名である。




    2028年以降、世界に普及したパソコンのことであり、




    2045年となった現代では、全てのPCがヴァーチャル化したと言っていい。





    いわゆる、ノート型、デスクトップ型パソコンの概念はなく




    今自分がいる目の前に、仮想の空間であるPC画面が映し出される




    学校に支給されているものは、全てその机からヴァーチャル画面が映し出される仕様となっており




    その広さは、主にノートPCの2倍程の面積の大きさだ




    人は、その【空間に映し出されたヴァーチャル画面】に手を触れることで、VPCを操作することができる




    今の学校の授業では、手書きのノート、そして筆記用具も必要がない




    全て、VPCでデータ保存をすれば解決するからだ





    「・・・・・・」




    鎌足ヒロ、彼を除いて



  13. 13 : : 2014/11/06(木) 03:23:53




    「おー、鎌足悪かった。お前はノートとシャーペン持てー」




    「・・・ういっす」




    鎌足ヒロは、陸上部の短距離選手の中で、200メートル走の達人であり、全国でもトップ50位に入る名走者だ




    性格も明るく、基本的に熱血漢で、周りには天才と持て囃されても彼は努力を怠らない



    顔もそれなりに整っているため、女子から告白されることも、少なくはなかった



    そんな彼に、弱点があるとすれば【機械オンチ】であること



    近代化したのこの世界にとって、それは致命的な弱点であるが、彼は持ち前の努力と根性で【原始的】なノートとシャーペンで勉強を行う




    彼はVPCのヴァーチャル画面を見るだけでも、体が拒否反応を起こし、吐き気がしてくるそうだ




    「・・・あ、後で内容教えてあげるね、ヒロ!」




    ヒロの隣に座るマナは、いつもヒロには優しい



    高濱マナ自身も、これまた全世界に普及している携帯電話VPCP(ヴァーチャルパーソナルコンピュータフォン)を持ってこそいないものの



    彼女もまた、最近の機械にはめっぽう弱かった



  14. 14 : : 2014/11/06(木) 12:35:26




    彼女がヒロと違う点で言うと、【機械に弱い】だけであって、ヴァーチャル画面が苦手という訳ではない





    VPCP(ヴァーチャルパーソナルコンピュータフォン)は、簡単に言うと、昔の携帯電話の進化版である




    その歴史は長いものの、簡潔に言えば2025年に第一次携帯革命が起こり、



    当時皆が手にとって利用していたスマートフォンやiphone等が全て廃止され、世の携帯電話はメガネ・サングラス型の携帯電話機へ移行した




    メガネの中の空間が仮想世界となり、それらが人々の新たな携帯電話として普及した時代もあったが・・・・・・



    【空中にヴァーチャル画面を映し出す】という画期的な発明があったことや、更にその機能を【イヤホン型】の小型機に含められることに成功し




    2038年以降、人々の持つ携帯電話は全て、イヤホン型のVPCPとなった




    VPCPは手動でも、音声でも操ることができ、今では脳内のイメージにも反応して作動できるものも存在する




    使用方法は、イヤホンに少し触れるor音声認識で、目の前に緑色で描かれたPC画面が広がる



    それは待ち受け画面によって様々であるが、大きさも自由に変更でき、スマートフォン画面のように小さな形状にもできる



    また、マナー機能も存在し、その空中のヴァーチャル画面は他者には見えないようにすることもできる




    VPCPを持っていない人にとっては、通勤の電車内は、人々が空中に手をかざしている行為ばかりであり、違和感を覚えるかもしれない




    その利便性から、全世界の9割以上がVPCPを利用



    すでに人類は、その生活にVPCPは欠かせない存在となっていた


  15. 15 : : 2014/11/06(木) 12:52:01





    「うい、ではバッドニュースのお知らせー」



    担任の高橋は、教壇ののVPCを立ち上げ、空中でキーパッドを叩く




    「はーい、みんな見えてるかなー」




    「・・・・・・」



    ヒロ以外の生徒には、VPCのヴァーチャル画面に高橋が言うバッドニュースの画像が載っている




    「うわ、またかよ」



    「最近多いよね、こんな事件」




    クラスの連中は、そのニュースを見てざわざわと騒ぎを立てる



    「はい、見てわかるように、また変な男の出没です」



    「・・・・・・ヒロ、今ね、画面にはすっごい長い爪を生やした仮面の男が映ってるの」



    VPC画面が見れないヒロの変わりに、マナは彼にニュースの説明をする



    「・・・・・・えぇ、なんだよそれ。変態だな」



    「・・・今、港マリンシブヤの街で頻繁に目撃されてるらしいよ」




    「・・・・・・ふーん・・・・・・」



    ヒロは鼻と口にシャーペンを挟み、興味なさそうに椅子に寄りかかる




    「えー、この男は仮面をしていて顔は分からないが、身長は190センチくらい、体格もいい」



    高橋は相変わらず、棒読みのように説明をする



    「実質的な被害は確認されていないが、ここ数日、刃物による通り魔事件も多いらしいので気をつけることー」



  16. 16 : : 2014/11/06(木) 12:59:34



    「・・・・・・怖いね・・・・・・」



    マナは背筋を震わせる



    「・・・・・・」



    彼女は3年前に父親を亡くしている



    勤務中の不慮の事故かなんかだったそうだが、原因は分からず、そのまま会社は何も責任を持たなかった



    母親も同じくして、その時期に失踪



    一人っ子だった彼女は、親戚の宛もなく、今は孤児院施設で暮らしている



    「・・・・・・大丈夫だよ」



    「え?」



    「オレが・・・オレが毎日一緒に帰ってやるから」



    ヒロは恥ずかしそうに鼻をかきながら、マナを安心させる



    幼い頃から機械オンチだった自分に優しくしてくれたマナを、彼は放っておけないのだ



    「・・・・・・うん、頼りにしてるね」



    マナも恥ずかしそうに、これを返す



    二人が相思相愛な様は、すでにクラスでは公認の中だった



    片や陸上部の期待のエース、片や学年ナンバー3の美女



    お似合い以外の何者でもない




  17. 17 : : 2014/11/06(木) 13:10:42





    「はい、まあこれは説明するまでもないと思うが____」




    高橋はざわついていた教室の空気を落ち着かせるかのように、現代の問題について話し始める




    「ここ近年で、【異常な運動神経を持つ人】が急増しています」



    「それはドーピングとか、変な薬やってるとか、悪魔に魂を売っただとか言われてますが、そんなことはありません」



    「事実、その人たちをちゃんと研究した結果、普通の人の体であることも判明してます」




    「だけど、その特異な体を使って、犯罪を起こす人が急増したのも事実です」



    「この仮面の男というのも、そんな体になったから、長い爪をつけて危険だと判断されてるのかもしれません」




    「世の中にはその他【無気力人間】【植物人間】等も多くなったそうですが、お前たちはそうならないように」




    「あんなものは、ただの堕落としか言えません、気をつけてー」




    「あ、それと、その【長い爪をした男】を発見したら、すぐに警察に連絡すること」



    「世界の各地で残酷な殺人や、戦争も行われてる中、日本もその空気に巻き込まれてしまってはいけません」



    「日本は平和な国。それを崩さないためにも、みんなで頑張っていきましょー」



    「終わり」



  18. 18 : : 2014/11/06(木) 13:19:32




    そう言って、高橋のホームルームは終了した



    何故彼がそのような説明的な言い回しをしたかというと、それはお話の都合上、聞かないお約束というやつだ




    ともあれ、無事ホームルームが終了した教室では、同日の運動会の話題で持ちきり・・・のはずだった




    「よぉヒロ!今日すごかったな!」



    クラスの友人である牟田が、ヒロの肩を叩きながら明るく話しかけてくる



    「・・・・・・おう」



    高校に入学してからの知り合いであり、彼は帰宅部ではあるものの【入学当初】はヒロと気が合う友人であった



    「なんだよー、あんなに見事な追い抜きだったんだから、もっと自慢げにしていいんだぜ?」



    「・・・・・・ああ」



    「はは、相変わらずクールだなあ、お前昔はそんなんじゃなかったのに」



    「・・・・・・そう、かな」




    「そうだよー、いつも明るくてオレらを先導してたリーダーだろ?」




    「・・・・・・」



    「まあいいや。それよりお前、いつVPCP買うんだ?」




    牟田は唐突に、ヒロにVPCPの話題を振る



    「・・・・・・またそれか・・・」



    ヒロは毎日その言葉を聞いていたのか



    呆れたように、牟田の言葉に対応する

  19. 19 : : 2014/11/06(木) 13:28:47




    「いやいや、だってお前、今時高校生でVPCP持ってないとか有り得ねえぞ?」



    牟田の言うとおり



    全校生徒1300人の堺原高校で、VPCPを持っていないのはただの数人である



    機械音痴、お金がなく買えない、興味ない、等と理由は様々であるが、持っていない人は【異端】とまで言われる程だった




    「・・・・・・いつも言ってるだろ。今は陸上に集中してるし、そんなモンに時間使ってられねえよ」




    ヒロがVPCPを買わない理由は【2つ】




    ①機械オンチであり、また彼はVPC(ヴァーチャルパーソナルコンピュータ)やVPCPの画面を見ることで吐き気がするということ




    ②陸上部の練習に集中するためにも、他のことに神経を使いたくないこと




    等である




    「そうは言ってもなあ」




    牟田もヒロと同じく、呆れ声だ




    「オレお前と連絡取り合っていたいし、せめて電話とかメールができるだけのVPC買おうぜー」



    「・・・・・・なんで男のお前と、いつも連絡取り合わなきゃいけねえんだ。気持ち悪いよ」



    「そりゃそうだけどよ、クラスの連絡網とかも困るだろ?このクラスでVPCP持ってないの、お前と高濱さんくらいだし」



    そう、高濱マナも、VPCPは持っていない



    孤児院で生活する彼女にとっては、VPCPを買えるお金もなく、また親からの連絡があるわけでもないため、所持をする必要性がないからだ
  20. 20 : : 2014/11/06(木) 14:16:20




    「・・・まあ、何言われようとも、オレはそんな機械使うつもりねえよ」




    ここ約1年、VPCP、VPCPと言われ続けてきたヒロにとって、もうウンザリだった



    思えば、その時期からクラスの皆に【違和感】を感じていたのかもしれない



    「はあ・・・お前、ほんっと頑固な」



    「・・・・・・」



    「そんなんじゃ、就職とかどうすんだよ。今時VPCPはもちろんVPCも使えないんじゃ世で通用しねえぞ?」



    「・・・オレは陸上で食っていくからいいよ」



    「陸上ねえ。ま、お前の才能を否定する訳じゃないけどさ」



    「・・・・・・なんだよ」



    「前回の記録会でも、高見丘高校の1年の薮内とかいう奴に負けたんだろ?」



    「・・・・・・」



    世界は広い



    いくらヒロが、全国で50番以内の名ランナーだとしても



    上には上がいるものだ



    「しかもそいつ、別に特段運動能力が特化したやつじゃないんだってな」



    「・・・・・・」



    「裏から聞いた情報だが、そいつもVPCPのヴァーチャルトレーニングを導入してるらしいぜ」



    「・・・ヴァーチャル・・・トレーニング・・・?」



    ヒロは、トレーニング、という言葉に反応した


  21. 21 : : 2014/11/06(木) 14:26:16



    「お、こういう話には食いつくんだな」



    「・・・・・・」



    ヒロは、一言で言うと陸上バカである



    今までは努力、根性、そして近代的なトレーニングを一切行わず、古いトレーニングでこれまで成長してきた



    そんな彼にとって、ヴァーチャルは興味はないものの、そのトレーニング方法には興味があった



    「・・・・・・んだよ・・・ヴァーチャル・・・トレーニングって・・・・・・」



    「はは、知りたかったら、お前もVPCP買えよ。一瞬で検索できるぜ?」



    「検索・・・・・・?ああ、インターネットとかいうやつか」



    「おう、昔はggrksって言葉があったみたいだしな、今時ネットも知らないとか終わってるぞ」



    「・・・・・・」



    ヒロは、分からないことを恥ずかしくて聞きたくない訳ではない



    ただ単に【今までの自分が全て否定されそう】で、それらの詳しい話を聞きたくなかったのだ



    「あれだよ、陸上で走るフォームをヴァーチャルで再現して、それを自分で実践してみるんだ。対戦相手には過去の有名選手とかと一緒に走れるソフトもあるらしいぞ」



    「え・・・・・・」



    「お前の憧れてる、あのー、どこの国だっけ、昔だっさいポーズで一世風靡した・・・ヒャクマン・ボルト?」



    「・・・・・・ウサイン・ボルトな」



    「そうそう、その人!その人と一緒に、仮想空間で走ることもできるんだぜ!」



    「・・・・・・ふーん・・・」



    ヒロは少し、羨ましそうだ


  22. 22 : : 2014/11/06(木) 14:45:35




    「なになに?なーーんの話?」




    突然、ヒロ達の話題に入ってきたのは、高濱マナ




    どんな時も明るい彼女は、差別等することなく、クラスの人皆に蟠りなく話しかける



    「おお、高濱さん!ヒロがよーやくVPCPに興味持ってくれてさあ」



    「・・・牟田! 別に興味持ってる訳じゃ・・・!」



    「へえーっ! いいじゃないヒロ! 前からずっと、牟田くんにも他の人にも誘われてたもんねえー」



    「・・・いや・・・・・・オレは・・・」



    「あ、でも高濱さんもVPCP持ってないよね?」



    「・・・・・・ふふん!」



    マナは「待ってました」というように、自分の鞄からイヤホン型のVPCPを取り出す



    「これを、見よーーーーッ!」



    マナは得意そうに、右手で掴んだVPCPを天高く上げる



    「な、なんだとおーーーーーーっ!あ、あれはまさか、今最新型のVPCP【iphoneデルタ】のピンク色!」



    牟田は希に見ないVPCPを見つけ、テンションが上がり気味にやけに説明的に実況をする



    「2045年8月に限定リリースされ、1万個の在庫は当日即完売!その機能はパソコン、携帯はもちろん、あらゆるネット通信が行えwifi共有も可能、それに何より10グラムという軽量!更に更に、ウイルスの進行を全て自動的にブロックできるシステムJWPも搭載され、自動車の浮力化や自動運転ナビゲーションも装備され、今やまさに誰もが喉から手が出るほどほしい代物!!そしてなんといっても一番の魅力はエ●チな動画も最高画質のGクラスで見れることが・・・・・・」



    「・・・それ以上言うな」



    VPCPのことを知らないヒロでも、さすがに牟田がそれ以上話すことがマナの性教育にも害を成すと判断した




    「・・・ん?エチな動画?」



    マナはその部分を聞き取れなかったのか、無垢な顔をして天然っぷりを発動させる



    「いや、お前は気にしなくていい」



    ヒロは牟田の口を抑えながら、その部分には触れないようにさせた



    「さ、さすが天然メンズキラークイーンですな」



    牟田は口を離された後、少し鼻血を垂らす



    「いや・・・っていうかお前、そんなのどうしたんだよ」



    「え」



    ヒロはマナの持っていたVPCPを見る

  23. 23 : : 2014/11/06(木) 14:58:26




    「ああ、サドちゃんにもらったの!」



    「え・・・もらった・・・?」




    サド、の本名は峯岸サド。



    マナほどとはいかないものの、彼女もスタイル抜群で、色白な綺麗な肌をし、堺原高校2学年美少女ランキング10位のお方だ



    マナとは昔から仲がよく、二人で校内を歩いていると男子からは「歩くSM魔女達」と賞賛されることもしばしば



    決して、檀と蜜が重なりあったお人や、杉と本と彩が重なりあった方ような、妖艶な響きではないことはご理解頂きたい




    なお、今まで違和感をお持ちかもしれないが、現代では名前はほとんどカタカナに統一されている



    世界へのグローバル化を目指し、等という理由らしいが、それで日本人魂を失っては国の文化はどうなってしまうのだろうか



    まあ、それはさておき



    VPCPの限定品という高価なものを【譲り受ける】・・・とは考えにくいヒロは、【もらった】という形式に疑問に思った



    「うん。サドちゃんこの限定VPCPを抽選で手に入れたんだけど、なんともう1個無料サービスを受けたんだって!」



    「・・・・・・」



    ヒロはそこにも、疑問を感じる



    限定1万個の商品が、抽選で当たったからといって、そんな簡単に【無料サービス】で提供されるのかと




  24. 24 : : 2014/11/06(木) 15:07:15




    思えば、一年前からそうだ




    クラスの連中は、寄ってたかって、ヒロやマナに対してVPCPを勧める



    今までは、普通に友達として連絡を取りたい、という理由でそれを言ってきたことに特段不思議に思うことではなかったが



    その言ってくる回数は、明らかに多く、変なのだ




    「・・・・・・そんなもん、もらって大丈夫なのかよ・・・」



    ヒロはマナを心配する



    「ええ?サドちゃんがくれたんだよ?なら安心だよ~」



    「・・・・・・」



    マナとサドは仲はいい



    それは、高校1年生からのことだから、ヒロはそこには疑問は持たなかった







    今までずっとマナがVPCPを持たなかったのに、【譲り受けただけでVPCPを持つことに決めた】ことには、不思議に思った




    「やぁああ~、私もこれで、VPCP同盟の仲間入りだよ~」



    「・・・・・・」



    「ヒロも、VPCP買ったら教えてね! なんか、アドレスに登録すればいつでもお話できるんだって!」



    「お・・・おう」



    色々と疑問に思うこともあったが、マナの嬉しそうな姿を見て、ヒロは考えることを辞めた



    これだけ嬉しそうなのに、彼女にVPCPを持つな、と言う理由はない



    3年前から笑顔を無くしていたマナが、これだけ明るく楽しそうなのだ、これ以上何かを言うのは野暮というものだろう


  25. 25 : : 2014/11/06(木) 15:36:27




    「・・・ま、いいや、そんじゃ帰ろうぜ。マナ」




    嬉しそうなマナを見て、ヒロも少し気分が洗われた



    「あ、うん!」



    マナはVPCPを鞄に収める




    「おいおい、淋しいなあ、今日くらい部活休みなんだし、一緒に帰ろうぜーヒロ」




    牟田もヒロと一緒に帰ろうとするが




    「・・・いいよ。お前と帰るといっつもVPCPの動画の話ばっかだからな」




    ヒロは、彼に皮肉を言う




    牟田が話す動画の話とは、もちろん卑猥な動画の感想ばかりである



    「ははっ、分かった分かった、毎日言って悪かったって!」




    「・・・・・・へえ、VPCPって動画も見れるの?」



    マナが動画という言葉に食いつく



    「高濱さん! オレがその動画の見方を詳しく教えてあげましょうか・・・?」



    牟田はナイトのように、片膝を床につけて男らしく言う




    「グレート牟田さん。そのまま口を閉じて死んでくれ」



    ヒロは引き顔で冷静に彼の命を奪う台詞を口にする



    「こ、ここに来て古いネタ持ってくるなあお前は!」



    「えぇ?なんで死ぬの?どうして動画見ちゃいけないの?」



    マナは相変わらず、動画という話に興味深々だ



  26. 26 : : 2014/11/06(木) 15:40:34





    「あー、もう! いいから帰るぞ! 送ってってやるから動画の話はまたしてやるから!」




    ヒロはそのまま、教室の出入口へ歩いていく




    「えぇ?ま、待ってよヒロ~」




    マナのその後を追う




    「はは、お幸せに~」




    牟田は教室から出て行く彼らに、笑顔で手を振る










    「・・・・・・」






    一瞬、その目つきは、突如として虚ろなものに変わった





  27. 27 : : 2014/11/06(木) 15:40:53


























  28. 28 : : 2014/11/06(木) 15:49:44





    ~マナの孤児院前~






    ヒロとマナは、堺原高校から沿岸の道路を通り、帰り道を歩いていた





    2045年の現代では、自動車にタイヤという概念はなく、道路に埋められた磁石により浮力を維持して走行している




    つまり、タイヤがない、空中に浮いている車だ




    歩行者を自動的に判断してストップすることもできるし、それにより事故の件数も格段に減り、ガソリンを利用する概念もなくなっている




    施設やビル等については飛躍的な進歩を遂げた訳ではないものの、自動車業界、携帯電話業界、そしてPC業界は30年前とは比べ物にならないほど進歩していた




    「だーかーらー、動画ってなんなのよ~」




    先ほどから、マナはずっとこの調子だ




    VPCPを持ってテンションが高くなっているのか、何度も何度も動画のことについてヒロに尋ねてくる




    「だから・・・お前は気にしなくていいって・・・」




    ヒロも先ほどから、この調子で誤魔化している



    自分が好意を寄せる幼馴染に、大人な動画の説明などするわけにはいかない




    「あーあ・・・せっかく・・・」



    「ん・・・?」



    「ヒロの力に・・・なれると思ったのに・・・」



    「え・・・」



    マナは、動画のことについて教えてくれないことを、残念そうにする



  29. 29 : : 2014/11/06(木) 15:57:01



    「な、なんだよ、力って」



    ヒロは慌てて、マナに聞き返す



    「んー・・・だってヒロ、VPCP持ってないでしょ?」



    「え? あ、ああ」



    「・・・・・・こないだ、ヒロに勝った高見丘の1年生がさ・・・VPCPのヴァーチャルトレーニングしてるって聞いたから・・・」



    「あ・・・」



    「ヒロ、画面見るだけで吐き気するから、私も何か力になりたいと思って・・・」



    「・・・・・・」



    マナがVPCPを譲り受けたのは、それが理由だった



    陸上部のマネージャーとして、彼女はヒロの力になりたかったのだ



    今流行りのヴァーチャルトレーニング。それをヒロが実践できないからこそ、彼女は自分なりにそのトレーニングの研究をするつもりだった



    だから【動画】という言葉に興味を抱いたのだ




    「そう・・・だったのか」



    「・・・・・・」



    「すまん・・・わざわざ・・・オレのために・・・」



    ヒロは、自分の行動を後悔した



    マナはただただ、そのために動画のことが知りたかっただけだったのだから




    「や、でも・・・オレも正直動画やヴァーチャルトレーニングのことわかんないんだ。全部牟田から聞いたことだしさ」




    「ああ、そうなんだ」


  30. 30 : : 2014/11/06(木) 16:03:05



    「それに・・・どっちにしろ、そのトレーニング方法を知ったところで、オレはヴァーチャル画面を見れないし」



    「・・・・・・」



    「はは、気持ちは嬉しいんだけどな、そこまでお前が背負い込む必要はないよ」



    「・・・・・・」



    「それに、次の記録会までには絶対あいつを抜かしてやっからさ! なんてたって、オレだぜ!?」




    「・・・・・・うん」




    マナはかすかに微笑んで、ヒロを見る




    強がりを言っていたヒロだが、彼女は知っていた




    更衣室で大泣きをしていたヒロの姿を



    1.5秒差、という有り得ない大差をつけられて、絶望していたヒロの姿を



    そんな姿を見た彼女だったからこそ、ヒロの知らないところで、少しでも彼のために尽力を注ぎたかったのだ




    「そうね・・・ヒロだもんね!」



    「おう!」




    彼女はその強がりを言ったヒロを見て、更に決心した



    なんとしてでも自分がヴァーチャルトレーニングを調べ、ヒロの力になる、と




    「あ・・・もう、孤児院着いちゃった」



    「お、おう。意外と早かったな」


  31. 31 : : 2014/11/06(木) 16:10:31




    「・・・・・・じゃあね、ヒロ」




    「ああ、また」




    「私も・・・」



    「え・・・」



    「私も、ヒロが勝てるように、精一杯頑張るね!」



    マナは頬を赤く染め、ヒロに恥ずかしそうに言う



    「あ・・・ああ!」



    同じくヒロも、頬を赤くし、彼女に答える




    その空間は味こそ感じることはなかったものの、とても不思議な甘い空間だった



    彼らは青春真っ只中の、超リア充である。



    暗い部屋の中で小説やラノベを書いている売れない作家からすると、うっとおしい限りだ。




    「じゃあ、また明日!」



    「うん!またねヒロ!」



    マナは笑顔で手を振り、孤児院へ入っていった



    「・・・・・・」



    院にマナが入る最後まで見続けたヒロは、ふと、ひとつの疑問を感じた




    「あれ・・・そういや・・・なんであいつ」



    「高見丘の1年が、ヴァーチャルトレーニングやってること知ってるんだろ」




    彼は、そう疑問を感じつつも



    自分の家への帰路を歩き出した







  32. 32 : : 2014/11/06(木) 16:17:13




    すると




    「ん・・・・・・?」




    ヒロの目線先の海岸沿いに




    「あ・・・・・・!」




    やけに体格が大きく、全身黒色スーツ姿の





    「あいつ・・・・・・!」





    真っ白な色の中に、黒い目と大きな赤い口が描かれた仮面を被っている





    「爪の・・・・・・!」




    凡そ50センチ以上の爪のような金属を両手につけている男が、立っていた





    「っ・・・・・・あ・・・・・・!」





    まさか、自分がその人物と遭遇すると思っていなかったヒロは





    手と額に、過剰な汗をかく





  33. 33 : : 2014/11/06(木) 16:22:07






    2045年となった今でも、日本の治安は良い





    いくら【無気力人間】【植物人間】【特殊な人間】そして【犯罪者】が増えた世の中とはいえ




    昔から日本は安全な国ではあったし、そう簡単に残虐な事件等が起きている訳ではない




    ただ、それは【他の国と比べて】である





    例えば、2015年では、日本の犯罪者の数は1万人だったとする




    残虐な事件は、100件程度だったと仮定する






    ただそれが、現在2045年になった日本では





    10倍程に膨れ上がっているというだけだ




  34. 34 : : 2014/11/06(木) 16:27:39




    「・・・っ・・・・・・!」




    「け、警察に・・・・・・!」




    ヒロは慌てて、自分の鞄を手で探る




    が、VPCPを持たないヒロにとって、警察に110番をすることすらできない




    「な、何鞄つついてんだオレは・・・!オレは携帯なんか持ってねえだろ!」




    そう独り言を言っていると




    仮面の男は、ゆっくりとヒロに迫ってくる




    「・・・おいおい・・・・・・おいおい・・・・・・!」




    ヒロは少しずつ、後ずさりをする




    仮面の男は、少しずつスピードをあげてヒロに近づいてくる




    「だ、誰か・・・・・・!」




    ヒロは周りを見るも




    なぜか、この沿岸通りの家沿いには、誰も歩いていない



    「うそだろ・・・!さっきまで散歩してた人とかっ・・・!」



    そんなことを言っている最中にも



    「・・・・・・」



    仮面の男は、黙って走りながらヒロに近づいてくる



    ヒロとの距離は、凡そ50メートルと迫った



  35. 35 : : 2014/11/06(木) 16:29:58




    「く・・・・・・!」




    ヒロは、先ほどまで一緒だった、マナのいる孤児院を見る




    「あっちには・・・行かせたくねえっ!」




    ヒロは覚悟を決め




    「こっちだ!仮面野郎ッ!!」




    と、叫びながら




    孤児院とは別の方向へ走り出す




    「はっ・・・はっ・・・はっ・・・!」




    ヒロは走る




    走る




    走る




    走る




    精一杯、走る





  36. 36 : : 2014/11/06(木) 16:43:56






    「・・・っし・・・!このくらい走りゃあ・・・!」




    約300メートルは走っただろうか





    ヒロは、自信があった




    なんといっても、自分は高校でも全国トップクラスの短距離ランナー




    普通に走れば、並大抵の大人は追いつけるはずはない




    そう思い、顔を振り返ると



    彼は驚きを隠せなかった




    「・・・・・・はぁッ!?」




    仮面の男は、ヒロと残り10メートル程と思われる距離まで近づいていた




    「・・・・・・」




    仮面の男は、黙って走りながらヒロを追いかける




    チャキ、チャキ、とその両手の爪を道路に弾かせながら




    「う・・・嘘だろッ!!」



    ヒロが思うことはひとつ



    【本気で走ってたのに、逆に追い詰められている!】ということだ



    「なんで・・・・・・! なんで・・・!?」




    それでもヒロは、走る



  37. 37 : : 2014/11/06(木) 16:46:35





    走る




    精一杯、走り抜ける




    「はっ・・・はっ・・・はっ!!」




    何があろうと、走り続けた




    そして




    彼が、ふと、もう一度後ろを振り向くと




    「・・・・・・なッ・・・・・・!」




    自分の真後ろに、大きな爪を振りかざす仮面の男が見えた




    ヒロは思う




    自分はここで終わりなのか




    自分は、ここで殺されてしまうのか




    自分は、マナになんの礼もできずに




    ここで・・・死んでしまうのか・・・と




  38. 38 : : 2014/11/06(木) 16:51:35




    「うぅあああああぁぁああぁあああぁぁッ!!!」




    それでも、目を瞑り走り続けたヒロは





    突然、【目の前】の衝撃に吹き飛ばされた





    「ぶっ・・・!」




    意外だった




    ヒロには、まだ何が起きたのか分からない




    だって、自分が追われていたのは、【後ろから】だったからだ




    なのに、今自分は【目の前】の何かに衝突した




    様々な疑問があったが、まず彼は目を開けてみることにした




    「う・・・っ・・・!」




    一瞬、何が自分の目の前に立っているのか、理解できなかったが




    彼の目の前に立っていたのは




    緑色のベレー帽をかぶった、黒色スーツを着た女性だった




    「・・・・・・」




    その女性は




    倒れていたヒロを見下しながら、手を差し出す





  39. 39 : : 2014/11/06(木) 16:57:57





    「大丈夫かい・・・?」




    その優しい声は




    先程まで心臓が爆発しそうだったヒロにとって、なぜかとても安心できる声だった




    「え・・・・・・!」




    ヒロは未だに、何が起きたのか理解ができない




    先ほどまで、【大きな爪を持った仮面の大男】に追われていたのだ




    それが、気がついて目の前をみると、【ベレー帽をかぶった金髪の女性】が立っている




    「な・・・・・・なに・・・・・・これ・・・!」



    未だに彼は、現状を理解できない



    女性の容姿は、一見して外国人だと分かる金髪であり、青い澄んだ目をしている



    見るからに洋画のムービースターを彷彿させるほどの美形で、スタイルも抜群であるが、彼女は似合わない黒いスーツを着ており




    その手を、自分に差し伸べてくれている




    だが




    「さ、さっきの仮面の男は・・・・・・!?」




    ヒロの疑問はそこだった




    先程まで、走る自分をとんでもないスピードで追いかけてきた、変質者




    その男の姿は




    今、自分の周りのどこにも、いない



  40. 40 : : 2014/11/06(木) 17:03:45






    「仮面の・・・男・・・?」




    その外国人風の女性は、不思議そうに聞いてくる



    日本語に長けているのか、その言葉になまりはない




    「そうです!!あの・・・大きい爪を持った奴で・・・!」




    「??」




    「さっきまで、オレを追ってきてて・・・!」




    「・・・・・・」




    「あいつが爪を振り上げてきたから・・・オレ・・・し、死にそうになって・・・・・・!」




    女性は、未だ不思議そうにしながらも、ヒロのその話を聞いてくれる




    「でも・・・・・・あなたの後ろには、何もいなかったけど・・・」




    「ええっ!?」




    ヒロは慌てて、後ろを振り返る




    「そ・・・・・・そんな・・・・・・」




    「・・・・・・」




    女性も冷静な顔で、ヒロの後ろ姿を見る




    「というか・・・君・・・」



  41. 41 : : 2014/11/06(木) 17:09:11




    「え・・・」



    「そんな男がいたなら、警察に電話すればよかったんじゃない?」




    女性は、この現代で生きる人間なら誰でも知っている正常な行動を、ヒロに諭す




    「あ・・・・・・いや・・・・・・」




    ヒロは、恥ずかしそうに口を捩る



    「もしかして、VPCP持ってないの?」



    彼女が聞いてくることは、それこそ正論だった



    世界の9割の人口が利用する、VPCP



    それを文明が遅れている訳でもない日本で、持っていない方が異常なのだ



    「あ・・・・・・はい・・・持ってません・・・」



    ヒロは再び、恥ずかしそうに話す



    「・・・・・・ふーん」



    女性も、ヒロが表に出す行動を信じたのか、それに納得する




    「まあ、とにかく、人にぶつかったんだから、謝ってくれないかしら」



    それも、正論だ



    ヒロは目を瞑っていたまま走っており、無防備だった彼女に衝突したのだ



  42. 42 : : 2014/11/06(木) 17:19:56




    「あっ!」



    ヒロは、それを忘れていたように気がつき



    「ご、ごめんなさい!」



    素直に、彼女に深々と頭を下げた




    「・・・ふふ、De rien」



    ヒロと同じ、もしくはそれ以上の身長の彼女は、優しく微笑み、フランス語で「気にしないで」と返す




    ただ、それでも、ヒロは未だに先程の【仮面の男】のことが気になっていた



    夢でも見ていたのだろうか



    いや、でも、今でも自分の心臓はバクバクと鳴っている



    「・・・・・・」



    「夢でも見たような顔ね」



    「あ・・・いや・・・」



    ヒロはまだ、信じられない



    あんなことが、現実に起こるなんて



    確かに、ものの1分前には【自分の目の前に、仮面の大男】が爪を振りかざしていたのだ




    「・・・うぅ・・・・・・」



    ヒロは、自分の体がブルッと震えることに気づいた



    「・・・・・・なんか、相当怖かったみたいね」



    女性は、震えるヒロを心配する



    「はは・・・・・・」



    ヒロは苦笑いを返す



    「それじゃあ・・・」



    女性はそう言って、自分のポケットから、黒い小さな箱状のモノを取り出す




    「これ、護身用に」




    「え・・・・・・」




    彼女がヒロに渡したのは


  43. 43 : : 2014/11/06(木) 17:26:15




    昔、携帯電話として世に普及していた「スマートフォン」と呼ばれる電話機だった




    「・・・・・・なんですか・・・?これ・・・・・・」




    「スマホ。スマートフォンよ」



    「スマートフォン?」



    すでにヒロの生まれた年には、スマホと呼ばれる機種は存在しない



    そのため、彼女が差し出した「スマートフォン」と言われるものが、ヒロはなんなのか分からなかった




    「知らないかな? 言うなれば、電話だけできる機械ね」



    「電・・・・・・話・・・・・・」



    「これがあれば、警察にも連絡できるし、困ったことがあったら役に立つでしょ?」



    「へえ・・・・・・」



    「今の怯えている君には、ちょうどいいと思うけれど」



    彼女はそう言うと、ふふっと笑いをこぼす



    「あ・・・・・・でも・・・・・・」



    ヒロは黒いスマートフォンと呼ばれるものを受け取るが、遠慮するような声を上げる




    「ん?」



    「これをオレが持ってると・・・あなたが・・・」



    「・・・・・・」



    「えと・・・・・・」



    「私は、アナよ」



    「あ・・・アナさんが困るんじゃ・・・・・・」



    アナと名乗る彼女は、相変わらず微笑みながら、ヒロの問いに答える



  44. 44 : : 2014/11/06(木) 17:32:03




    「大丈夫。私はVPCPを持っているから」




    アナはそう言うと、ポケットからVPCPを取り出す




    「あ・・・・・・」




    「ね?だから、そのスマホは古いものだし、あなたにあげるわ」




    「・・・・・・」



    ヒロは困惑していた




    ただでさえ、先程まで爪男に追いかけられ



    そして更に、機械音痴の自分が、スマートフォンを手に入れる



    今までの人生で経験になかったことを、続けて2度も起こったことに、彼は不安を隠しきれなかった




    「・・・・・・あ・・・・・・」



    その時ヒロは、更にもうひとつ、疑問に気が付く



    「どうしたの?」



    「あ・・・えっと・・・・・・アナさんはどうして、VPCPを耳につけていないんですか?」



    ヒロの質問も、的確だった



    確かに、VPCPは耳につけて初めて利用できるもの




    クラスの連中も、授業とクラブ活動以外では、ずっとVPCPを耳につけているのだ



    アナがVPCPをポケットに入れていたことに、彼は素朴な疑問を持った



  45. 45 : : 2014/11/06(木) 17:36:29




    だが彼女は、



    「あらあら、今のVPCPは、耳に取り付けなくても使えるのよ?」



    と、笑いながらそう言った




    「あ・・・・・・」



    ヒロは、そのことを知らなかったのか、顔を赤くし



    「す、すいません・・・本当・・・・・・何も知らなくて・・・」



    自分の無知を、悔いた



    「・・・・・・いいのよ」



    彼女はそう言うと、ヒロとぶつかった体の埃をはらい



    「それじゃあ、またね。ヒロくん」



    と言い残し、爪の男が追ってきていた方向へ、歩いて行った







    「あ・・・・・・!」



    そそくさと去ってしまった彼女に、ヒロは何も言えなかった



    せめて、スマホをくれたことについて、お礼を言いたかったのだが



    その暇もなく、彼女はその場から立ち去って、すでにその姿も見えなくなった





    「・・・・・・」



    ヒロは、渡されたスマホを見る



  46. 46 : : 2014/11/06(木) 17:48:42




    「・・・・・・本当に・・・こんなもんもらって良かったんだろうか・・・・・・」



    彼は、そのスマホをつついてみる







    「・・・・・・え・・・・・・なんだ、これ・・・・・・」



    彼は根っからの、機械音痴



    そんな彼が、スマホを正常に取り扱うことなど、できるはずもなかった




    「・・・・・・まあ、いいか」




    彼はそのまま、スマホを自分の鞄にしまう




    「あれ? そういえば・・・・・・あの人・・・・・・」



    ヒロはふと、思い出した



    「なんで・・・・・・オレの名前知ってたんだろう・・・・・・」





























  47. 47 : : 2014/11/06(木) 18:10:33
















    その頃、アナと呼ばれる女性は




    爪の男が走ってきた通路を、スタスタと歩く




    そして、家と家の間にある暗い路地に入り込み




    「・・・・・・間違いないわ」




    と、独り言を話す




    「・・・本当ですかい? でもあんなヘナチョコで使えるんですかねェ」




    そう答えるのは




    仮面を被り、長い爪を伸ばしている【ヒロを襲ってきたスーツ姿の不審者】だった





    「・・・・・・あなたも、あれはやりすぎよ。彼もよく逃げおおせたものだわ」



    アナは少しムッとしながら、爪の男に文句を言う




    「へいへい、すいやせん」



    「・・・・・・」



    「ナヨナヨしてる奴を見てると、苛つくんでさあ」



    男は、両手のその爪をカチャカチャとつついている



  48. 48 : : 2014/11/06(木) 18:14:57




    「それと、早く《アンインストール》しなさい。細胞が死んでしまう」




    「・・・・・・おっと、了解でさあ」




    爪の男はそう言い、自分の爪が当たらないように器用に、服の中から黒い物体を取り出す




    「・・・・・・」




    「あとは、あのヘナチョコが、【耐えられれば】いいんすけどねえ」




    爪の男は、その黒い物体を、自分の胸に持ってくる




    「・・・・・・耐えるわよ」




    「おっと、その自信はどこからで?」




    「少しの接触で分かったわ」




    「・・・・・・」



    「彼は特別な【イレギュラー】よ」
























  49. 49 : : 2014/11/06(木) 19:19:31




























  50. 50 : : 2014/11/06(木) 19:35:57







    ~鎌足ヒロ宅~




    「・・・ただいま」




    今日だけで色々な災難に遭った鎌足ヒロは、疲弊していた



    運動会の逆転優勝、高濱マナのVPCPの所持、そして謎の爪男の襲来からの決死の逃亡、アナという女性との出会い



    普通では起きることのないことが続けて起き、彼はすぐにでもベッドに横になりたい気分だった




    「おかえり」




    ヒロの母親である鎌足アイリは、自分の前に広がっていたVPCPの仮想画面を収め、帰ってきた息子に挨拶をする



    いくら機械音痴の息子がいたとしても、親もそうであるとは限らない



    母親自身は得て不得手でもなく、VPCPを一般人と同じように利用している




    「運動会どうだった?」




    彼女は微笑みながら、ヒロに問う



    「・・・・・・優勝した」



    「・・・・・・そう」



    母親である彼女は、普通この場面では嬉しそうにするはずが



    昨日のヒロとの喧嘩によりギクシャクしていたため、少し控えめな発言をする



  51. 51 : : 2014/11/06(木) 19:40:30




    ヒロの父親は、海上自衛隊員である



    出航があれば、半年以上家を開けることはザラだ



    現在も父親が海外へ出張し、もう3ヶ月は家に父親がいない



    よって、母親と思春期の息子の喧嘩を仲裁する人物も、この家には存在しないのだ




    「・・・・・・昨日は、ごめんね」




    母親は、ヒロに謝ってくる



    「・・・・・・」



    「私、ヒロくんに、どうしてもVPCPを持ってほしかったの」




    「・・・・・・」



    「だって、今世間では残忍な事件もたくさん起きているし・・・非常時に連絡が取れなくなると思うと・・・心配で・・・」



    「・・・・・・」



    昨日の喧嘩の内容



    それは、母がヒロに対しVPCPを買い与え、それを利用しろということだった



  52. 52 : : 2014/11/06(木) 20:05:34




    もちろん母親は、ヒロが機械音痴であり、ヴァーチャル画面に【アレルギー】に似た反応を発症し、吐き気がすることは知っている



    だが、それでも



    非常時の連絡や、陸上の効率良い練習をさせるためにも、便利なVPCPを与えるつもりだったのだ



    「・・・いや・・・・・・もう、いいよ・・・」



    ヒロも昨日は言いすぎたのか、少し母親に優しい言葉をかける



    「・・・ごめんね・・・」



    母親は下を向き、更に申し訳なさそうにする



    「・・・・・・と、とにかく腹減った! ご飯ある?」



    「あ、うん、ニーファが今持ってくるわ」




    ニーファ、とは



    鎌足家のメイドロボのことだ



    ようやく各家庭にロボが普及してくる世になり、少し裕福な家であれば、一家に一台は存在している



    メイドロボと言っても、人間の言語を理解して喋ったり、自ら考えて行動するようなシステムはない




    昔流行った【ルンバ】というお掃除ロボを、そのまま縦に少し大きくし、更に行動が早くなったものとの認識でいいだろう




    そのロボは、自宅の掃除、洗濯、布団干し、更に調理までをこなしてくれる



    人間のような容姿ではなく、約80センチ程度の円状の機械であり、掃除のために10本の手や、足の代わりのコロが取付けられ、作業を器用に行う




    ニーファという名は、ヒロの父親が昔好きだった漫画のモブキャラから取った名前だそうだ


  53. 53 : : 2014/11/06(木) 20:10:57




    ギイイッ、と音を立て、ニーファはヒロの元へ今日の食事を持ってくる




    「お、オムライスかー」



    ニーファの両手に持たれた料理は、疲弊していたヒロのお腹をグギュルルルと鳴らす




    「ありがとな、ニーファ」




    ヒロは機械といえども、挨拶を欠かさない




    「・・・・・・」



    母は黙って、その姿を見守る



    「今日は卵を多めに入れたからね、ふわふわに出来上がっていると思うわ」



    「へえ、楽しみだなー」



    そしてヒロはテーブルに座り、パクリとオムライスを口に運ぶ



    「うん、うまい!」



    「ふふ・・・・・・良かった」



    ヒロの機嫌がよくなったからか、母親も自然と笑顔がこぼれる




  54. 54 : : 2014/11/06(木) 20:22:03




    「・・・母さん不安だったの・・・ヒロくんに嫌われたんじゃないかって・・・」



    「ん・・・んん?」



    ヒロはオムライスを食べながら、不思議な顔で母親の喋る内容を聞く




    「あんなにヒロくんが嫌がったの・・・初めてだったから・・・」



    「い・・・いや・・・」



    「本当に、ごめんね・・・」



    「・・・母さん、毎日毎日言ってくるからさ・・・ごめん・・・・・・オレも言いすぎたよ」



    「うん・・・」




    そう、母親がヒロにVPCPを勧めたのは、昨日が初めてではなかった



    何度かの勧めがあり、ヒロもその怒りが爆発したのが、昨日だったというだけだ




    話は一度落ち着いたのか、更にヒロはオムライスを口に運ぶ




    母親も、ヒロと一緒に座っていたテーブルを離れ、一度リビングへ移動する




    何故急に母が立ち上がったのかは分からなかったが、彼はとにかく減っていたお腹を満たすため、オムライスを食べ続けた



  55. 55 : : 2014/11/06(木) 20:28:25





    すると、ヒロは頭に少しの違和感があるのを感じた




    目の前がグラつき、自分の意思ではない感覚に陥った




    「・・・あれ・・・・・・?」




    ヒロはたまらず、持っていたスプーンを落とす



    「なんだ・・・・・・これ・・・・・・!」



    頭を抱え、ヒロは座っている状況すら、苦しくなってくる



    「・・・・・・っ・・・・・・」



    とうとうヒロは、椅子から崩れ落ち



    床に背を落とし、寝ころぶ形となった




    「からだ・・・・・・が・・・・・・」



    それは、疲れだったのか、若しくは【食べ物に何かが混在していた】のかは分からないが



    ヒロの目は、まるで錘がついているように、重くなった




    そこに



    「・・・・・・」



    ヒロの母親が、やってくる



    「・・・かっ・・・・・・かあ・・・さん・・・!」



    「ヒロくん・・・・・・・・・・・・・」



  56. 56 : : 2014/11/06(木) 20:34:34




    母は、そのまま、黒い物体を持った右手をヒロに見せる




    「なに・・・・・・?これ・・・・・・」




    「う・・・・・・!」



    母が手に持っていたのは




    今日、ヒロが【アナ】なる女性からもらったスマホだった



    「それ・・・・・・は・・・・・・」



    母親は、勝手にヒロの鞄を開け、スマホを手に取っていたのだ



    「ヒロくん・・・・・・機械・・・・・・苦手だよね・・・・・・?」



    「い、いや・・・・・・それは・・・・・・たまたまもらって・・・・・・!」



    「へえええええええええええええええ」



    母親の言動は、おかしかった



    いや、ここ1年程、このような【いきなり怖い言動】をすることがだんだんと増えていったのは事実だが



    今まで見た中でも、母親の顔は、今までヒロが見たことのないほど、目が見開いていた



    「そおおおおおおなんんんんだああああああああああ」



    おかしい



    明らかに、いつもの母ではない


  57. 57 : : 2014/11/06(木) 20:40:46




    「なああああああああんんんんんんでえええええええええええ?」




    母親は顔をヒロの直近まで近づけ



    「ちょ・・・っ・・・かあさん・・・・・・!」



    「私のVPCPは、使ってくれないのにいいいいいいいいいいいいいいいいいいい?」




    恐ろしい声を木霊させる




    すでに母の目は、ヒロの知る母親の目をしていない




    まるで、悪魔に取り憑かれたように




    彼女は笑いだした





    「は!は!はぁあは!はあはああははははははあああっはははははははあははははははははははっはははあははははっはあはははははははしゃああはっははあはは!!!!!」




    「・・・・・・!」




    頭はまだまだグラグラするものの



    ヒロには、すでにそこにいる人物が、母親であるかどうかさえ疑うしかなかった




    「・・・なんなんだ・・・・・・これ・・・・・・!」




    ヒロは目が重い状況を跳ね除けるように




    床を這いつくばって移動する




    「・・・おかしい・・・・・・おかっしいよ・・・・・・!」



    ヒロは震えながら、笑う母親を背にして逃げる



  58. 58 : : 2014/11/06(木) 20:48:11





    すると




    ザンッ、という音とともに、ヒロの目の前の床に【包丁】が刺された




    「ひッ・・・・・・!」




    眠気、と認めていいのだろうか



    ヒロを襲っていた眠気も、一瞬覚める程の異常な状況




    その包丁を床に刺したのは、自分の母親だったからだ




    「どおおおおおおおおおこにいこうとしてるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお?????」



    「あ・・・・・・ああ・・・・・・」



    今までの母親とは違う、その女性がヒロの前に佇む




    「ねえ? ヒロくん! こんな昔の古っ臭い携帯より、こっちがいいでしょおおおおおおお???」




    母はそういうと




    イヤホンに取り付ける、VPCPを取り出した




    「・・・・・・そ・・・れ・・・・・・はっ・・・・・・!」




    「へへへっへへへえっへえへへへへへへえへへへへへへえへへへへへっへうふふふふふうふうふふふふうふふふ」




    母親は相変わらず、変人のような笑い声をあげる




  59. 59 : : 2014/11/06(木) 21:44:04





    「かあ・・・・・・さん・・・・・・!」




    「へへへっへへっへへへへへへへへええええへへえ」




    「母さん! 目を・・・・・・目を覚まし・・・て!」




    母はそのまま



    ヒロの耳に



    そのVPCPを持っていく




    「あんんんんたあああもおおおおお、これでええええええ・・・・・・」




    母親は口からよだれを垂らしながら



    「ああ・・・・・・ああっ・・・・・・!」



    ヒロの右耳にそのVPCPを取り付け・・・・・・ようとした瞬間



    「はあぁああぁあぁあああああッ!!」



    突然母親は、何かに苦しむように



    両手で頭を抱え込む




    「・・・・・・ッ・・・・・・なんだ・・・!」



    「あばばばばっばばばばばばっばああああああううううううあああああああっ!!」



    母親は、そのまま苦しみ続ける



    「・・・・・・が、あがああっがががががっががが!!」



    「な・・・何が・・・・・・!」



    ヒロも、相変わらず頭がグラグラするものの、また急に豹変した母親を心配する


  60. 60 : : 2014/11/06(木) 21:49:08




    「がががっががああ・・・・・・に・・・逃げ・・・ががあがあううああうあうあああ!」




    「か・・・母さん・・・・・・!?」




    ヒロの母親は、その叫び声の中に【逃げろ】と言いたかったのか




    それは定かではないが




    「・・・・・・ぽっ」



    と静かに奇声を発したあと




    「・・・・・・」



    何も言葉を発しないようになり、その場に立ち尽くした




    「・・・な・・・・・・なん・・・・・・だ・・・・・・」




    「・・・・・・」



    そして、母親は、何も喋ることなく



    ヒロの前で落としていたVPCPを拾い




    「・・・・・・」



    無言で、彼の耳にVPCPを取り付ける



    「や、やめ・・・・・・!かあさ・・・・・・!」



    ヒロの必死の声も届かず



    「・・・・・・」



    母親は、ヒロに設置したVPCPの電源を




    「や・・・・・・め・・・・・・!」



    作動させた



  61. 61 : : 2014/11/06(木) 21:53:11






    瞬間、ヒロの目の前に




    緑色をした、パソコン画面の仮想空間が広がる




    「・・・・・・っ!」




    機械音痴であり、吐き気がすると判断したヒロは




    必死で、強く目を瞑る




    しかし、その行為とは別に




    ヒロの脳内に、たくさんの言葉が流れ込んでくる







    《殺せ・・・・・・》



    《壊せ・・・・・・》



    《全て投げ出せ・・・・・・・》



    《服従・・・・・・》



    《楽になろう・・・・・・》



    《死ぬことは怖くない・・・・・・》



    《ただ・・・・・・身を任せるだけ・・・・・・》



    《終わり・・・・・・》



    《始めよう・・・・・・》



    《ミンナデヤレバコワクナイ・・・・・・》



  62. 62 : : 2014/11/06(木) 21:56:11






    「うあああっ!! うあああああーーーーーーーっ!!」




    ヒロは叫ぶ




    「わあああああっ!! なんだ・・・なんだこれっ!!!」




    叫ぶ



    「やめろおおおおおッ!! やめてくれええええッ!!」



    叫ぶ



    「があああああっ!! くそおおおっ!くそおおおッ!!」



    暴れる



    「うああああああっ!!うああああああーーーっ!!」




    ヒロの耳・頭にはずっと




    まるで悪魔の囁きが、コンサートのように響き渡る





    「があああああああーーーーーーッ!!」





    が、次の瞬間




  63. 63 : : 2014/11/06(木) 22:00:27




    「うおおおあああああああーーーーーーッ!!!!」




    ヒロは、右耳に取付けられたVPCPを両手で取り




    「らあああああっ!!!」




    そのVPCPを、床に叩きつけた





    「ぐっ、あっ・・・はあ・・・っ・・・・・・!」




    ヒロはそのまま



    テーブルに寄りかかり、身を任せながら



    倒れる




    「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・・・・!」



    自然と、息が上がる




    「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・・・・」




    たった、10数秒の出来事だったのかもしれない



    だが、ヒロにとっては



    永遠にその時間が終わらないような、圧倒的な恐怖が植えつけられていた



  64. 64 : : 2014/11/06(木) 22:06:01






    「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・!」




    ヒロの目線の先には




    変わり果てた母親は、いない




    「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・!」




    その床には



    頭を下にして、眠ったように倒れている母親がおり




    その隣で、先程ヒロが床に叩きつけて破壊したVPCPの残骸が広がっていた




    「はっ・・・はっ・・・はっ・・・・・・!」




    少しずつ、ヒロの息も正常に戻る




    なぜかは分からないが、先程までの眠気も、まるでなくなっているかのようだった




    「一体・・・・・・はあ・・・・・・何が・・・・・・!」




    ヒロは、震える体を必死に動かし



    母親の元へ寄る




    「・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・」



    母親は、息はしているようだ



    「・・・・・・よ、良かった・・・・・・」



    ヒロは自分が大変な目に遭っているにもかかわらず



    母親の命の心配をした



  65. 65 : : 2014/11/06(木) 22:13:32




    「かあ・・・・・・さん・・・・・・!」






    (がががっががああ・・・・・・に・・・逃げ・・・ががあがあううああうあうあああ!)




    「オレを・・・オレを守ろうと・・・・・・?」




    確かに、母親は、様子がおかしくなった後少しだけ



    【何かに逆らうよう】に、一瞬とはいえ【ヒロに逃げるようにと】声を上げていた



    「・・・・・・」



    果たして、それは、母親の意思だったのか否か、それも分からない



    それに、その後母親は【無表情な状況】となり、事実ヒロにVPCPを装着した




    これらが何を意味していたのか、それも分からない



    「・・・・・・」




    ヒロが、色々な考えをする中




    部屋には




    「トゥルルルルルルルル」と、何かのアラーム音が鳴った





    「っ・・・・・・!・・・・・・なんだ・・・・・・?」




    初めて耳にするその音に、ヒロは驚く




    この時代には、VPCP以外の電話機というものは存在しない




    よって、普段からVPCPを装着していないヒロにとっては




    その電話のような音が、なんなのかさえ分からなかった



  66. 66 : : 2014/11/06(木) 22:21:52




    「・・・・・・」




    ヒロは、恐る恐る、その音がする方へ移動する




    すでに、頭のぐらつきは落ち着いていたため、引き足であるが、彼はゆっくりと歩けた




    「・・・・・・スマート・・・フォン・・・・・・?」




    音がしていたのは




    ヒロがアナという女性からもらった、スマホだった




    床に落ちていたスマホは、継続して「トゥルルルル」と音を立てる




    「・・・・・・」




    ヒロは、そのスマホを手にとり




    【電話を取る】という選択肢が、画面に表示されていたため




    その表示を、タップした





    すると、そのスマホ画面に




    ヒロが力強くぶつかった、【アナ】の顔が映る





    「・・・・・・アナ・・・・・・さん・・・・・・?」




    《鎌足ヒロくんね》



  67. 67 : : 2014/11/06(木) 22:28:09




    「・・・・・・あ、はい・・・・・・」



    《・・・・・・合格だわ》



    アナは突然、【合格】という言葉を口にした




    「え・・・・・・?」



    ヒロは何がなんだか、分からない




    《あなたは、VPCPのデビルウイルスに感染しなかった》



    「・・・・・・?」



    《特務機関DRAST(ドラスト)への入隊を許可します》



    「は・・・・・・?」



    突然訳の分からないことを言われ、ヒロは動揺を隠せない



    不気味に襲ってくる母、取り付けた瞬間恐ろしい声が聞こえてくるVPCP、そして謎の女性からの電話



    合格、デビルウイルス、VPCP、特務機関



    ヒロの頭はすでにパンパンだった





    「ちょっ・・・・・・ちょっと待ってください・・・・・・!」




    《なに?》




    スマホ画面のアナは、先ほどの優しいお姉さんの雰囲気はなく



    どこか、冷たい感じを見受ける



  68. 68 : : 2014/11/06(木) 22:34:07





    「い、いきなり合格とか言われても・・・・・・!」



    《・・・・・・》



    「それに、なんなんですか?ウイルスって・・・・・・!」



    《時間がないわ、説明している暇はない》



    「えっ」



    《今から言う場所に、来てもらえる?》



    「い、いや・・・・・・だから・・・・・・!」







    その瞬間




    ヒロの腕が、何か機械のようなものに掴まれる




    「え・・・・・・!」



    腕が掴まれた方向を振り返ると



    《・・・・・・ホカ・・・ク》



    メイドロボットのニーファが、10本の腕の内6本と使い




    ヒロの右腕を掴んでいた




    「お、おい・・・ニーファ?」




    《ホウコク・ホウコク・ホウコク》



    ニーファはボイス機能を変換させ、発せられるはずのない、《ホウコク》という言葉を発す



  69. 69 : : 2014/11/06(木) 22:40:38





    《!?、もしかして、家にMRTE(メルティ)を導入してるの?》




    電話の先のアナは、焦るように確認する




    「え・・・?メルティ・・・・・・?」





    メルティとは、メイドロボットティーン(made robot teen)の略称である




    簡単な作業しかできないことから、ティーンとの呼称がなされている



    「あ、ああ。ニーファのことですよね?はい、導入してます」




    《逃げなさい!!》



    「へ?」



    ヒロが【逃げろ】という言葉を理解するより前に




    《ホウコク・ホウコク・ホウコク》




    ニーファは体内に収められている10本の腕を出し




    ものすごい力で、ヒロを自分の頭上へ抱える




    「うっおおおおおおおッ!!?」



    ニーファは軽々とヒロを持ち上げた


  70. 70 : : 2014/11/06(木) 23:01:57





    「ニ、ニーファ、なにすんだああ!?」




    今までメイドロボとして活躍してきたニーファだが




    この時初めて、主人であるヒロに勝手な行動を取った




    《ホウコク・ホウコク・ホウコク》




    ニーファは先程から、ホウコクという言葉をずっと発する




    《Merde!クソッ!!》




    スマホ画面から、アナの悔しがる声が聞こえる




    「ア、アアアアアアナさん、これは一体!?」




    《すでにそのメルティもウイルス感染し、遠隔操作されてる》



    「は、はあ!?」



    《仕方ない、少し待って!》



    そう言うと、アナはスマホ画面の中で、【自分のスマホ】を操作している動きが見えた




    「な・・・なにやってるんですか・・・・・・!?」




    ヒロにとっては、アナの行動全てが理解できない




    《・・・・・・よしッ》



    アナは何かの操作が完了したように、声を上げる



  71. 71 : : 2014/11/06(木) 23:12:02




    《ヒロくん! 君の持っているスマホに、電気回線をショートさせるウイルスアプリを送った!》



    「へ・・・!?」



    《通話はこのままでいい!通話しているそのスマホ画面の右上に、何か映し出されていないか!?》



    「え・・・な、なんて・・・・・・!」



    《私の顔が写っているだろう!その右上だッ!》



    「右・・・上・・・・・・!?」



    言うまでもないが、ヒロは機械オンチである



    的確な指示がないと、スマホの利用方法すら分からない



    「こ、これですか!?なんか、ライトみたいなちっさい画像が映って・・・!」



    《ええ!それを押しなさい!》



    「お、押すって・・・」



    《タップすんのよおおおおおおおおおッ!!》



    アナは機械音痴のヒロに、苛立ちが隠せない



    「や、わ、わかんないんですよお!でも押しますッ!」




    ヒロがタップを押すと




    スマホ機の上部から、小さな針が飛び出した



    「うおっ!」



  72. 72 : : 2014/11/06(木) 23:19:52




    《スマホから、針が出たはずだけど分かる!?》




    「あ、はい! なんか裁縫に使うような針が1本・・・・・・!」




    《そいつを、メルティにぶっ刺しなさい!!》



    「ええ!?」



    先程まで丁寧だった口調のアナが【ぶっ刺す】という言葉を使うことに、ヒロは動揺する



    「ぶ、ぶっ刺すったって!」



    《ホウコク・ホウコク・ホウコク》



    「こ、こいつ硬い金属ですよッ!?」



    《それなら、たくさんある手の肘部分はどう!?》



    「え・・・・・・!」



    ヒロがニーファの数ある手の肘を確認すると



    その部分は鉄製ではなく、数多くの導線が配線されているのが見えた




    「あ、導線がたくさんあります・・・!」



    《よし!!じゃあその導線に向かって、針を突き刺しなさい!》



    「え・・・いや・・・でも・・・!」



    《ホウコク・ホウコク・ホウコク》



    「これを突き刺すと、どうなるんですか?」



  73. 73 : : 2014/11/06(木) 23:27:39






    ヒロがその言葉を言った瞬間




    スマホ画面から、ブチッという音が聞こえる




    《ええからはよ刺せやコルアアアアアア!!!!それでもてめえタ●ついてんのかあああッ!!》




    「ひっ!」



    アナはヒロの遅い行動にイラつき、その不満を彼に爆発させた




    「わ、分かりましたよっ!!」



    ヒロは意を決し



    「これでいいんでしょーーーーっ!!!」




    ニーファの導線部分に、スマホごと針を刺した




    《ホウコク・ホウコク・ホウコ・・・・・・》



    《コクコクコク・・・・・・ゴゴゴゴゴゴオゴゴゴ・・・・・・》



    ニーファはだんだんと口調がおかしくなり、その体から煙を出す




    「う・・・うわ・・・・・・!」




    ヒロが驚くと同時に



    彼を掴んでいた10本のニーファの腕は、1本、また1本とその体から離されていく




    《よしっ!それでOK!》



    「・・・な、何が・・・・・・!?」



    《今は説明してる暇はない!腕は離されたはずよ!!さっさとそのメルティから降りなさい!!》



    「は、はい!」



    ヒロは、力が弱くなってきた、掴まれたニーファの手を外していき




    そのまま、ニーファから飛び降りた



  74. 74 : : 2014/11/06(木) 23:51:47




    《ゴオゴオアオアソアsンs¥ソ2fj2イfkd1@qzkkqwンセfニq1フィf13モpッフォ》





    すでに、小刻みに震えるニーファは、何を言っているのか分からない




    「ニ、ニーファ・・・・・・」



    ヒロも、3年以上ともに過ごしてきたメイドロボが震える姿に



    少しの哀れみを感じる



    《・・・スマホの針から、ウイルスアプリをインストールさせることによって、メルティの電気回線を全てショートさせたの》



    「え・・・」



    《このメルティは、すでに、別のウイルスに感染されていたわ》



    「・・・・・・感染・・・って・・・・・・」



    《とにかく、【奴ら】にこの状況が伝えられてしまった》



    「やつ・・・・・・ら・・・?」



    少しの沈黙の後、アナは



    《・・・・・・詳しいことは後で話すわ》



    と、静かに話した


  75. 75 : : 2014/11/07(金) 13:36:11




    《とにかく、すぐにその家から出なさい》



    「え・・・・・・」



    《このままじゃヒロくん。あなたまた襲われちゃうわよ》



    「ど、どうして襲われていたことを知って・・・」



    《・・・・・・》



    「っていうか、母さんを病院に連れて行かなきゃいけないんです!」



    《・・・・・・》



    「母さん、いきなり変な叫び声あげて、オレに襲いかかってきて・・・・・・でもそのまま、倒れちゃったみたいで」



    《・・・・・・息はしているの?》



    「えっ。ああ、はい」



    《・・・・・・残念だけど、お母さんは・・・・・・》



    「え・・・・・・」



    《もう、目を覚ますことはないわ》




    「は・・・・・・!?」




    ヒロは、さっき知り合ったばかりのアナという女性が



    【母親がもう目覚めない】と言った言葉が、一瞬理解できなかった




    「ちょっ・・・え・・・・・・? どういう・・・ことですか・・・・・・?」



    ヒロは嫌な汗をかきながら、アナに聞き返す



    《・・・・・・あなたのお母さんはすでに、VPCPから発症するデビルウイルスに感染していた》



    「・・・・・・」


  76. 76 : : 2014/11/07(金) 13:44:54




    《そして彼女は、その【ウイルスを操る存在】によって、自分の体の意思を奪われていたの》




    「へ・・・・・・?」




    《とにかく、詳しいことは後で話すと言ったでしょう! 時間がない!》



    「ま、待ってくださいよ!」



    ヒロは話を誤魔化そうとしているアナに苛立ちを覚える



    「どういうことですか! いきなり母さんはウイルスに感染してるって言って! 目を覚まさないって! そしてそれを説明する時間もないって・・・・・・訳わかんないですよ!」



    《・・・・・・》



    「それに! なんでオレのお母さんがウイルスに感染してるって分かって助けてくれなかったんですか!!」



    《・・・・・・すまない》



    「大体、逃げろったって何からですか! 確かに、ニーファは襲ってきましたけど・・・! それ以上何から逃げろって言うんです!」



    《・・・・・・何から、逃げる・・・か》



    アナは弱点を言われたように、少し考え込む



    そして、小さな声で



    《・・・・・・人類から》



    と言った



  77. 77 : : 2014/11/07(金) 13:47:18




    「は・・・・・・!?」




    あまりにも、大きすぎる存在



    【人類】という括り



    ヒロにはもう、何がなんだか分からなかった



    人類とは、誰のことだと考えた時



    クラスの連中、先生、牟田、峯岸、そしてマナが思い浮かぶ



    が、その考えを巡らせている最中に







    ギッ









    と、家の玄関が開く音がする





  78. 78 : : 2014/11/07(金) 13:53:59




    「っ!!」




    ヒロはスマホ画面から目を逸らし、音のした玄関方向を見る




    《!?、どうしたの?》




    アナもその様子を感じ取る




    「い、今・・・・・・!玄関から誰か・・・・・・!」




    ヒロの顔は、だんだんと青くなっていく




    《ちっ、さっきのメルティから信号が発せられて、奴らが来たのよ!》




    「し、信号・・・?」



    《ホウコク、と言っていたでしょう!?ニーファとかいうロボが!》



    「あ・・・」



    《あれは、【VPCPをつけている人類】を呼び寄せたの!》




    「VPCPをつけた人・・・?」




    ヒロはそこで、更に鳥肌がたった




    さすがに、鈍感である彼にも、アナが言っている断片的な言葉から、今の自分の置かれている状況が理解できてきた


  79. 79 : : 2014/11/07(金) 13:57:00







    VPCP【ヴァーチャルパーソナルコンピュータ・フォン】を所持しているのは






    すでに、世界の人口の、9割






    そして、先ほどのアナの言葉では





    VPCPをつけている人は、【ウイルスに感染している】というニュアンスで話していた






    と、いうことは






    世界の人口の、9割が






    皆、ウイルスに感染しているという事実となる







  80. 80 : : 2014/11/07(金) 14:04:53




    「っ・・・・・・あ・・・・・・!」




    ヒロの顔は、真っ青になる




    それはそうだ




    先程、アナが言った【人類から逃げろ】という言葉が




    そのまま、自分の疑問に当てはまったからだ




    「ちょっ・・・ちょっと待って・・・・・・!」




    《・・・・・・?》




    「じゃあ・・・じゃあ・・・・・・人類は・・・・・・?」




    《・・・・・・》



    アナは、少しだけ沈黙し



    《ほぼ、全ての人間がウイルス感染しているわ》




    ヒロに、驚愕の事実を言い放つ



    「・・・・・・!!」



    それだけは、信じたくなかった




    いくら敵がいるとはいえ、普通の物語でも多くて数万人




    それが、アナの言った事実のとおりであれば




    現在の地球の人口、凡そ80億人以上が




    ヒロに襲いかかってくる、ということとなるのだ



  81. 81 : : 2014/11/07(金) 14:12:23




    「そんな・・・・・・!」



    ヒロが驚きを隠せない状況の時




    ガチャ、とリビングのドアが開く




    「っ!!!」




    リビングに入ってきたのは




    「・・・・・・」




    隣の家に住む、高齢の井上夫妻だった




    《ヒロくん!家に人が入ってきたのね!?》




    「あ・・・・・・!」




    井上夫妻は2人とも、65歳の高齢であり、先日旦那が職場を早期退職したばかりだ



    息子と娘がおり、彼らもすでに結婚して子供もいる



    井上夫妻は、これから年金生活をし、優雅に暮らしていくはずだった




    「・・・い、井上さん・・・?」



    「・・・・・・」



    井上夫妻は2人とも



    すでに目の焦点が合っておらず



    よだれを垂らしながら、ヒロをじっと見つめる



  82. 82 : : 2014/11/07(金) 14:18:40




    《逃げなさい!!!》




    スマホ画面から、アナがヒロに向かって叫ぶ




    「で・・・でも・・・・・・!」



    ヒロは躊躇する



    井上夫妻が、先程の母親と同じように



    また眠ってしまうのではないかと、心配したのだ




    「なんとか・・・この人達・・・・・・救えないんですか!?」




    《あ・・・あんた何言って・・・・・・!》




    瞬間




    井上夫妻の旦那が、ヒロに向かって右手を振りかざす





    「わっ!」




    運動神経がよかったヒロは、井上が振ってきた【何か】を間一髪躱す




    「い・・・いきなり何を・・・・・・!」




    ヒロが、井上夫妻の旦那の姿をみると




    「!!!」




    その右手には、鎌を所持していることが分かった




  83. 83 : : 2014/11/07(金) 15:00:40



    「・・・・・・」




    井上夫妻の旦那は、そのまま再び鎌を構える




    「っ!」



    ヒロが井上夫妻の妻をみると




    「・・・・・・」




    彼女もまた、手には果物ナイフを持っていた




    「ウ・・・ウソ・・・でしょ・・・!」




    ヒロは少しずつ、リビングの窓へ後ずさる




    アナも焦りを隠せず、



    《相手を救いたいあんたの気持ちは分かった! だけど・・・だけどここはッ・・・・・・!》




    「っ・・・・・・!」




    《逃げろオオオオッ________!!!!》




    アナの叫び声とともに




    ヒロは自宅のリビング窓を開け、外へ飛び出した


  84. 84 : : 2014/11/08(土) 11:24:27






























  85. 85 : : 2014/11/08(土) 11:36:37





    ヒロは、走っていた




    訳も分からず、走っていた




    「はっ・・・はっ・・・はっ・・・!」




    運良く自宅の大きい窓の鍵が空いていたことによって、すぐに家の外に出たのはいいものの




    明確に、どこに行けばいいのか、分からなかった




    「はっ・・・はっ・・・はっ・・・!」




    ヒロはスマホを見る




    《・・・・・・》




    だが、先程からそこに映っていたアナは、忽然と姿を消していた




    「とにかく、海岸沿いまで出て!」という言葉だけを言い残して




    「・・・そんなこと言ってもさあっ・・・・・・!」




    しかし、それでも、どうすることもできないヒロは、言われたとおり海岸沿いまで走る





    ヒロの住む【港マリンシブヤ】自体は、10年程前から栄えてきた街だ




    2020年に開催された東京オリンピックのため、様々な施設が海岸上に建設されており、港マリンシブヤ自体は元々アミューズメントパークの建設予定だった




    しかし、その建設途中にアミューズメントパークの事業を展開する予定だった会社の経営が傾き、パーク自体の建設の話はなくなり



    そして、元々命名されていた土地の名前である【港マリンシブヤ】は変わることなく、その後住宅街が建設されていったのだ


  86. 86 : : 2014/11/08(土) 11:41:14




    現在、その港マリンシブヤの人口は【4万人】





    「っ!!」




    普通に道路を走っているだけでも




    「・・・・・・」




    人に会わないようにするには、とてつもなく困難だ




    「ま、また人かよっ!!」




    「・・・・・・」




    ヒロの前方30メートル程先には、虚ろな目をした20代後半の男性がヒロをまっすぐ見つめている



    現在の時刻は、午後8時



    薄暗くなってはいるものの、【安心・暮らし・犯罪絶無】が売りの港マリンシブヤでは、明るい街灯がいくつも並んでいるため、夜中でも明るい




    「くそっ!」




    ヒロは更に、その男性から逃げる




    とにかく、人と会ったら逃げることにしているのだ


  87. 87 : : 2014/11/08(土) 11:48:34




    「はっ・・・!はっ・・・!はっ・・・!」




    ヒロの家から、海岸線までは約2キロ




    「くっ・・・!そっ・・・!」




    だが、海岸線に行くまでに人と会うたび経路を変更していたヒロにとって




    「はっ・・・はっ・・・はっ・・・!」




    海岸線が、近いようでとてつもなく遠かった




    「・・・! こ、ここに・・・!」




    ヒロは、家と家の間の路地裏を見つけたのか




    そこに身を隠す




    「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」




    ヒロ自身は陸上部のエースであり、逃げることに関しては自信があった




    事実、家から出たあとに人に出会っても、全てそれらから逃げる力があった




    「・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・はああ・・・・・・」




    ヒロは息を整える



    「・・・・・・くそー・・・・・・」



    何がなんだか分からないヒロ



    一体何から逃げて、何をすればいいのか



    それすら分からない彼は、自分の頭を両手で抱える




    「・・・・・・どうすりゃいいんだよ・・・・・・」



  88. 88 : : 2014/11/08(土) 12:02:55




    ヒロは、アナからもらったスマホを見るも




    《・・・・・・》



    画面は相変わらず、黒く、何も映らない




    「・・・・・・くそ・・・・・・」




    ヒロはかつてない絶望感に包まれていた



    人類ほぼ全員が敵______?



    じゃあ、今までのクラスにいた奴らも、全部すでに感染していた?



    1年以上前から感じていた違和感は、まさにそれだったのだろうか



    しかし、そうすると矛盾点はいくらでもある



    何故、【今日】母親は無理矢理VPCPを取り付けにきたのか



    他の日でもよかったのじゃないのか



    というか、クラスの奴ら全員が感染しているなら、全員で自分を押さえつけてしまえばいいんじゃないのか




    それに、何故、今まで誰も【無理矢理自分にVPCPをつけなかった】のか




    「・・・・・・あれ・・・・・・」



    色々と考えを巡らせる中、彼はひとつ思い出した




  89. 89 : : 2014/11/08(土) 12:09:37








    (私も、ヒロが勝てるように、精一杯頑張るね!)








    それは、ヒロの幼い頃からの馴染みであり、彼が恋焦がれる女性




    素敵な笑顔が、夕焼けの光に染められ、更に綺麗だった




    高濱マナの存在





    「・・・・・・待て・・・待て待て・・・・・・!」




    ヒロは、少しずつ思い出し



    そして、焦る



    彼の心は、先程までの絶望を通り越し




    「あいつ・・・・・・まさか・・・・・・!」




    彼女のことを想い、更にその心は絶望した




    マナがVPCPを手に入れたのは【今日】




    そして、今までマナにだけは【違和感】を感じたことはない




    また更に、【マナ自身もVPCPを他者に勧められていた事実】もある





    「・・・・・・!!」




    彼女はまさに今日まで、【ウイルスに感染していなかった】と言える




    その彼女が、何故かしら【VPCP】を手に入れ、利用しようとしているのだ




    「やべえ・・・・・・やべえよこれ・・・・・・!」



    ヒロの額にはじわじわと汗が吹き出てくる




  90. 90 : : 2014/11/08(土) 12:19:30




    その時





    「・・・・・・ッ!」




    隠れていたヒロを見つけるかのように




    《・・・ハッケン・・・ハッケン・・・ハッケン・・・》




    と声を上げながら、街の清掃マシンであるメルティ+(プラス)がヒロに近づいてくる



    「な・・・・・・!」



    清掃マシンであるメルティ+は、昼夜を問わず、凡そ100台程で毎日街の清掃を行っている



    充電が切れそうになれば、自動的に街の充電スポットに帰っていき、充電が完了すれば再び清掃に入る、半永久的に動き続けるロボットだ




    《ハッケン・・・ハッケン・・・ハッケン・・・》




    メルティ+はそのまま、ハッケンと言い続ける




    「こ、これって、やべえやつだよな・・・!」



    ヒロは立ち上がり、逃げる体制を取ろうとする



    メルティ+が立っているのは、ヒロが路地に入ってきた入口



    その入口を塞がれたが、反対側の出口は空いているはずだ




    「くそ・・・! 逃げるしかねえか!」




    ヒロは、メルティ+が立っている入口の、反対側の出口へ走る



  91. 91 : : 2014/11/08(土) 13:17:37




    「っ!!」




    しかし、反対側の出口にも




    《・・・・・・ハッケン》



    別の、メルティ+が待ち構えていた




    「う、うそ・・・・・・!」




    《ハッケン・ハッケン・ハッケン》




    2台のメルティ+は、ヒロを挟み撃ちする形で




    ジリジリと、ヒロに近づいていく



    メルティ+は、身長1メートル50センチあり、各家に普及しているメルティよりも高性能だ



    鉄製のボディの下には、約30個のミクロ足車輪がついており、どの方向への転換も可能



    更に、手の数は、メルティの倍の20本が取り付けられている




    《ハッケン・ホウコク・ハッケン》



    メルティ+は、20本の手をその収められていた体から出す



    「ど・・・どうすりゃ・・・・・・!」



    そして、2台ともヒロまで残り5メートルの位置まで近づく




    「そ、そうだ!さっきのスマホの・・・!」



    ヒロは、スマホから出ていた針で、機械をショートさせる方法を思い出す



    「あ・・・・・・あれ・・・・・・?」




    しかし、何故か、スマホの画面は黒いままだった




    「なんでだ・・・?電源が入ってないのか・・・!?」



    ヒロはスマホ画面をタップするも、全く画面は動かない。黒くなったままである

  92. 92 : : 2014/11/08(土) 13:34:44




    「く・・・くそ・・・・・・!」




    ヒロが気が付くと




    《ホウコク・ハッケン・ホウコク》




    2台のメルティ+は、すでに自分の目の前で、その数ある腕を構えていた




    「う・・・・・・!」




    また、捕まってしまうのか




    いや、井上夫妻は、鎌やナイフを持って襲ってきた




    捕まってしまう、という生半可なものではないかもしれない




    死__________





    ヒロがそう考え、




    メルティ+2台が、その手を振りかざした瞬間














    《foudre(フードゥル)!!!》








    バリバリバリ、と雷のような音がヒロの耳に響く





    ヒロは驚いてその目を一瞬閉じるが




    ふと、薄目で目を開けたその先に






    【彼女】が立っていた






  93. 93 : : 2014/11/08(土) 13:43:12





    「大丈夫!?ヒロくん!」




    そう、ヒロにスマホを手渡し、先程まで彼を導いていた彼女




    「ア・・・・・・!」




    アナだった





    「アナさんッ!!」




    「・・・遅くなって、すまない・・・!」




    ヒロはアナの姿を見て、安心するとともに




    1台のメルティ+が、焦げながら煙を上げていることが分かった




    《ハ・・・・・・ケ・・・ホ・・・・・・》




    先程の、ニーファのように、機械の中から煙を上げるような姿ではなく




    それは明らかに、【外からの攻撃】を受けたように、鉄製の体が黒く焦げ上がっていた




    「・・・い、一体何が・・・・・・!」




    「ふせなさいッ!!」




    「えっ」




    アナの叫びも虚しく




    「うわわあわっ!」




    ヒロは、後ろにいたもう1台のメルティ+の10本の腕に掴まれ、その体をメルティ+の頭上に持っていかれる




    「ち・・・!」




    アナは少し悔しそうにするが、すぐに続いて




    《sabre(サーブル)!!》




    と叫び



  94. 94 : : 2014/11/08(土) 13:52:00




    アナの右腕が、何やら雷ような電気に纏われた




    「な・・・!」




    明らかに人外なそれを見たヒロは、驚きを隠せない




    アナはそのまま




    「デアアアッ!!」




    雷が纏われた右腕を、まるで剣(サーベル)のように振り




    ヒロを包んでいた、メルティ+の10本の腕を切り落とした




    「ええっ!?・・・ぐえっ!」



    ヒロはそのまま、切られた腕とともに、地面に転げ落ちる




    そしてアナは、間髪を入れず




    《foudre(フードゥル)!!!》




    と叫び




    バリバリバリッ、という音とともに、メルティ+の体に右腕を突っ込む




    鉄製だったメルティ+の体は嘘のように破壊され、アナの右腕はメルティ+の胴体に入り込んだ




    《ホウ・・・コ・・・・・・ガ・・・ガ・・・》




    再び、バリリリリという音が流れるとともに、メルティ+の体は、内部から黒焦げとなっていくのが分かる




    「・・・・・・で、電気・・・? 雷・・・?」




    ヒロは思ったことを素直に口にする




    アナがメルティ+を破壊するためなのか、その右腕に纏っていたものは、雷や電気以外の表現ができないほど、それに酷似していた







  95. 95 : : 2014/11/08(土) 14:12:15





    《ホ・・・・・・ゴ・・・・・・》




    メルティ+は、その電気にやられたのか




    煙を出しながら、そのまま動かなくなった




    「・・・・・・ふう」




    アナはそのまま、右腕をメルティ+の体から引き離す



    すでにその右腕には、電気のようなものは纏っていない




    「・・・す、すげえ・・・・・!」




    ヒロが思わず口にするのは、その言葉だった



    「・・・・・・大丈夫かい?」



    そして、暖かい言葉を、アナはヒロに呼びかけながら



    ヒロに左手を差し出す



    「あ・・・・・・はい・・・・・・」



    呆気にとられたヒロも、その左手を持ち、立ち上がる




    「・・・・・・途中、連絡が取れなくなってすまなかった」



    アナは乱れた帽子を直しながら、ヒロに謝罪する



    「君に渡したスマートフォンが、ハックされている可能性が認められたのでね。あれ以上君と話す訳にはいかなかった」



    「は・・・・・・はあ・・・・・・」



    機械に詳しくないヒロは、アナが何を言っているのか理解できていない



    「とにかく移動しよう。ここは危険すぎる」



    アナはそう言って、2台の壊れたメルティ+を見る



    「今回は相手が機械だったからよかったものの、人間相手にこの能力は使いたくはない」



  96. 96 : : 2014/11/08(土) 14:21:38




    「人間・・・・・・相手・・・・・・?」




    ヒロは不思議そうに聞くが、その内容だけは分かった



    自分たちの敵は、人類



    機械のようなものであれば、破壊に躊躇はしないものの



    人類相手には、相手を殺しかねないため、攻撃はしたくはないということだ




    「て、ていうか・・・さっきのあれ、なんですか?」



    「ん?」



    「あの・・・電気みたいなので、バリバリって・・・」



    「・・・・・・」



    アナは少しだけ黙る




    「あ、明らかに、人間の力じゃないですよね・・・?」




    ヒロはアナに助けてもらったものの、その人外な攻撃が疑問だった




    「・・・・・・あれは、私のウイルス能力《ヴァルキュリア・フードゥル》」




    「え・・・・・・」




    「自らの血液中に含まれるイオン濃度を高密化させ、それを電撃に変えているの」



    「??、???」



    ヒロの頭には、ハテナマークしか浮かばない




    「・・・それは、後でたっぷり説明してあげるわ」



    「・・・・・・」



    「今は、とにかく逃げましょう」



  97. 97 : : 2014/11/08(土) 14:23:37



    「で、でも、逃げるったって・・・・・・どこへ・・・」




    「・・・・・・こっちよ」




    アナはそう言うと




    ヒロを背にして、走り出した




    「・・・・・・っ」




    ヒロも、自分が成すがままに案内されていることに疑問を感じるも




    「ま、待ってくださいよお!」




    彼女の後を、追うしかなかった
































  98. 98 : : 2014/11/08(土) 14:56:22
























  99. 99 : : 2014/11/08(土) 18:46:30






    歩いていた





    ヒロは、港マリンシブヤの地下水道を歩いていた





    「・・・・・・」




    ヒロの目の前には、【アナ】というスーツ姿の女性が歩いている




    彼女の本名は、


    白鳥澤・アナ・グラシード


    といい、日本人とフランス人のハーフらしい





    元々フランス陸軍特殊部隊にいたそうだが、ある理由があり、2~3年前から日本で暮らしているとのこと




    彼女が強気な性格であることや、機械を躊躇なくぶっ壊す姿は、まさに軍人という証明だとヒロは納得した




    それにしても、もうどのくらい歩いただろう



    あの後、人に見つからないように海岸線に出て



    いきなりアナが、【ステルス解除】と道路に叫んでスマホを差すことで、この下水道みたいな地下通路に入ることができた




    よって、普通の人には容易に見つけられない施設のようだ




  100. 100 : : 2014/11/08(土) 18:54:33





    「・・・あ、あの・・・アナさん・・・・・・?」




    ヒロは恐る恐るアナに話しかける




    彼女は自分のことを救ってくれたとはいえ、まだまだ謎はたくさんある女性だ




    「・・・・・・なんだ」




    アナも、先程よりは落ち着いてヒロに答える




    この歩いている地下水道は安全なのだろうか、地上にいる時より、彼女は忙しない印象を受ける




    「その・・・・・・今、どこに向かってるんです・・・・・・?」




    ヒロが思う疑問は、そこだった



    果てしなく続いているような、地下水道の中



    街の下水道であることから、やはり少し臭い



    そんな中、アナが自分をどこに連れて行こうとしているのかが、不安だった




    「・・・・・・我々の、基地だ。」




    「・・・き、基地・・・ですか?」




    まるで小学生がつけるような名前に、ヒロは少しだけワクワクした




    「・・・といっても、すぐに移動はせねばならんがな」




    「え・・・・・・」




    アナはそう言うと、下水道の中間地点の場所で立ち止まる



  101. 101 : : 2014/11/08(土) 19:01:09




    「・・・・・・ここだ」



    「・・・・・・?」




    アナが立っている場所には、コンクリートでできた壁しかない



    ましてや彼女の反対側には、下水が川のように流れている




    「ここ、って・・・・・・何もないですけど・・・・・・」



    「ああ。承認がいる。」



    「承認?」



    「このコンクリートの壁に、四角い穴があるだろう」



    アナが差す先には、ちょうど、スマホが入るような大きさの窪みが存在した



    「ここに、自分のスマホを入れる」



    「スマホ・・・・・・あ、ああ。僕に渡してくれたやつ!」



    「ああ。今回は君が入れてみろ」



    「え・・・こ、ここに、ですか?」



    「そうだ」



    「えっと・・・スマホを縦に入れればいいんですよね?」



    「ああ。覚えておいてくれ。私は何度も説明することが嫌いだ」



    「・・・き、気をつけます」



    ヒロは、恐る恐る自分の持っていたスマホを、その窪みに入れた



  102. 102 : : 2014/11/08(土) 19:06:11





    《DRAST 承認》




    その窪みから、何やら機械のような声が聞こえ




    「おうっ!」



    壁だったコンクリートは、人が入れる程のドアの形になり、ドアはひとりでに奥へ開く




    「・・・・・・す、すっげえ」



    「さ、スマホを取って、そのまま奥へ進もう」



    「え、あ、はい!」



    ヒロはドアに埋め込まれたスマホを取り、奥へ繋がる通路を歩く






    そして






    「ようこそ。特務機関DRAST(ドラスト)へ。」






    アナはそう言うと





    「わぁ・・・・・・!」





    ヒロの前に、基地と呼ばれるに相応しい部屋が広がる




  103. 103 : : 2014/11/08(土) 22:43:50




    と、思ったのだが




    「・・・・・・ぁああああ・・・・・・」



    ヒロの声は、だんだんと残念な声となっていく




    特務機関、と名を聞いて《近代的》な機械や、モニター、そして武器等が配備されているような印象だったが




    それとは、全くの逆だった




    部屋の中は薄暗く、鎖やドラム缶が置かれ



    まるで、昔の刑事ドラマに出てくる廃屋工場、といった造りであろうか



    近代的な機械等なく、汚いテーブルと椅子、古い型の冷蔵庫、そして少しの飲食料が置かれている




    まだ目が慣れていないのか、ヒロは周りがよく見えない




    だが機械音痴であり、アレルギーに似た症状を持つヒロとしては、機械が全くない施設で安心したのが本心である





    「やあ。鎌足ヒロくん」




    その施設の影の中で、自分を呼ぶ声が聞こえる




    男性の声であり、なんというか一言聞いただけでも「かっこいい」と思う低めの渋い声だ




    「特務機関DRASTへようこそ。君を歓迎する。」




    その声の主は一人




    部屋と呼ばれるその中央の一番奥側に座っていた



  104. 104 : : 2014/11/08(土) 22:52:41





    「あ・・・・・・」




    その男は、20代前半、といった容姿であろうか。




    印象的なのは、その若さでの白髪。




    その白髪は逆立ち、眉毛までも白色で、丹精な引き締まった顔立ちをしている。



    口にはひとつの黒いピアスがつけられ、そして頭と同じように、【右目だけ白色】だ。



    彼はアナと同じく、黒色のスーツを着ているものの、その上から大きな白いコートを着ている



    まるでオセロのようだ




    「・・・・・・私は、特務機関DRAST神奈川県支部の隊長、秀虎ハイロ(ひでとら はいろ)だ。」




    秀虎、と名乗る男は、その椅子から腰を動かすことなく、そうヒロに自己紹介をする




    座っているので少しわかりにくいが、随分小柄な人間だ。



    160センチ前後と言ったところだろう




    「あ・・・・・・か、鎌足ヒロです・・・・・・」




    身長も小さく、特に怯えるといった感情ではないものの、ヒロはその隊長と呼ばれる男に安心感を覚える




    それは、秀虎ハイロの落ち着きからであろうか。何故か彼を信頼しても良いと、知らぬ間に思い始めている


  105. 105 : : 2014/11/08(土) 23:10:53




    「・・・大変だったな。鎌足くん」



    「あ・・・い、いえ」



    「アナ、すでに説明はしているのか?」



    「・・・・・・いえ。詳しくはまだです。」



    「・・・分かった」



    ハイロの声は、落ち着く



    今まで必死に逃げてきたヒロにとって、この閉鎖された空間もプラスしたのか、今が一番落ち着いて話を聞くことができる



    ただ、1点程そのハイロという男に恐怖を感じるすれば



    両手に黒い手袋をし、その背中には自分より大きな剣のようなものを背負っていることだけだ






    「・・・・・・私が、全てを説明する」



    「・・・・・・」



    「私やアナは、無駄なお喋りが嫌いでね。簡潔に述べさせてもらうけれど大丈夫か?」



    「あっ・・・はい。それでいいです。どうせオレ、あんま機械とか詳しくないもんで・・・はは」



    「・・・・・・では、まず、この世界の現状から」



    「・・・・・・」



    「ヴァーチャルパーソナルコンピュータフォン、略名VPCP。古く言えば携帯電話と呼ばれるこの機種が世に普及し、すでに7年が経過した」



    ハイロは、そのまま話を長く続ける



    「当初、画期的とまで言われたVPCPはすぐに世界に普及し、2040年には世界の5割の人口がVPCPを利用していた。」



    「そんな時、2042年4月、ある事件が起きる」


  106. 106 : : 2014/11/08(土) 23:31:36



    「VPCPの大幅アップデート開発を企画していた、UnKnown(アンノウン)と呼ばれる会社の代表取締役が、謎の大爆発事故を起こし死亡した」




    「その原因を調査した結果、代表が耳に取り付けていたVPCPが、突如として爆発したそうだ。」




    「警察、そしてVPCP開発を行っていたスタッフとともにその調査に入ったが、原因も不明」




    「以後、VPCPは劣化して爆発するという危険性を持つことがニュースとして発表されたが、誰もそのニュースには聞く耳は持たなかった」




    「何故かわかるかね、ヒロくん?」



    「えっ!」



    いきなり質問をされたヒロは、心臓がドクンとする




    「い・・・いや・・・分かりません。確かにあの時VPCP爆発ってニュースになりましたけど・・・オレVPCPを持っていなかったですし・・・興味なくて・・・」




    「・・・・・・ふ、そうだな。VPCPを持たない人間にとっては、それは興味がなくても仕方がない」




    ハイロは座っていた椅子から立ち、静かに歩きながら語る




    「結局・・・・・人類は、VPCPの爆発の危険性より、すでに生活の一部と化しているVPCPの利便性を捨てきれなかったんだよ」




    「・・・・・・あ・・・VPCPが便利すぎて、離したくても離せなかった・・・ってことですか・・・?」



    「・・・ふふ、そうだ。理解が早くて助かる」



    そして、ハイロは立ち止まり、ヒロに目線を合わせながら再度話しだした




    「・・・・・・そこからだ。人類がおかしくなっていったのは」




    「多種多様の犯罪発生、無気力人間の増加、植物人間の存在、そして異常な能力を持つ者の誕生・・・・・・」




    「全て、繋がりがないように思えるが、これらは全て【繋がっている】」





    「・・・・・・」



    機械のことがよく分からないヒロであるが、ハイロが言わんとすることは理解できていた

  107. 107 : : 2014/11/09(日) 12:49:02




    「・・・・・・結論から言おう」




    「そのUnKwounが開発していたVPCPの大型アップデート計画の技術は、全て【別のものに利用】された」



    「そして、全世界のVPCP所持者に向けて、アップデートではなく、別のアップデートシステムが配られたのだ」




    「それが【デビル・ウイルス】」




    「デビルウイルスは、人の脳神経に直接侵入し、人間を根幹から【操る】ことができる」



    「つまり」



    「その当時VPCPをつけていた、世界の人類5割全員が、そのウイルスに同時に感染してしまったのだ」






    「・・・・・・へ?」




    あまりにも壮大すぎる話に、ヒロは驚きを隠せない




    つまりその時点で、世界の人口の半分が、操られているという結論になる




    いつの間にかヒロの体は震え始めていた





    「そこからの普及は早かった」



    ハイロは続ける



    「【奴ら】はその感染者を操り、VPCPを持っていない人間にもどんどんVPCPを勧める」



    「その結果、VPCPを持っていなかった人類も徐々にVPCPを持つようになり」



    「結果、現在世界の人口の9割が、VPCPの所持者となった」




    「つまり【世界の人口9割】が、皆感染しているのだ」




  108. 108 : : 2014/11/09(日) 13:05:55



    「ヒロくん。4種類の人間、というのは覚えているかい?」



    ハイロは唐突に、ヒロに質問する



    「えっ・・・あ・・・」



    これは、ヒロの冷静さを欠けないようにするためなのだろうか、それでもヒロは焦りながら答える



    「えっと・・・無気力人間、犯罪者・・・とか、植物人間、と・・・後・・・」



    「・・・・・・特殊な能力を持った人間よ」



    アナもヒロの手助けをする




    「あ、そうです!特殊な能力を持つ人間・・・この4人種です」



    「・・・そうだ」



    ハイロは少し微笑み、更に話す



    「無気力人間、とは、今この街でもいるように、言葉をほとんど発せず廃人のような人間だ。彼らは一見してやる気がないような姿で道端に寝ているのが主」



    「これは、VPCPのウイルスに耐えられなかったものだ」



    「脳組織に入り込んだウイルスにより、精神自体が崩壊。彼らは操られることはないものの、人間として普通に生活することもできない」



    「動物と同じだ。言葉を発することもなく、ただ欲だけを持って生活する。だから食べ物は食べるし、寝たい時には寝ている」



    「そ・・・・・そんな・・・・・・!」



    「次に、犯罪者」



    「これは、デビルウイルスに精神が乗っ取られ、【奴ら】に操られた人間が残酷な犯罪を犯している」



    「まあ、いつの世も犯罪者はいるため、それが全てとは限らんがね」



    「それでも、バラバラ殺人や人間の所業とは思えない酷い犯罪が起きている犯人は、全て【VPCP】の所持者だ」




    「・・・・・・!!」



    ヒロの震えは、止まらない



    「そして、次に、植物人間」



    それでも、ハイロは続けた



    「これは、ウイルスに感染した人間が、その指示に抵抗した際に発症する」



    「・・・・・・腐っても我々人類は人間だ。ウイルスに全てを委ねることには、反発する」



    「しかし、脳細胞にウイルスが入った時点で、ウイルスには指示がなされている。デビルウイルスに反発すれば、その人間の生命行動を絶て、と。」



  109. 109 : : 2014/11/09(日) 13:13:08




    「えっ・・・・・・」



    ヒロはその時点で、あることに気が付く



    「・・・・・・」



    ハイロもそれに気がついたのか、少し黙る



    「ちょ、ちょっと待ってください・・・じゃあ・・・」



    「・・・・・・」



    アナも、ヒロから目線をそらす




    「オ、オレの母さんは・・・・・・!」




    「・・・・・・君のお母さんは、立派だった」




    ハイロは、ヒロの想いを諭すように話す




    「最後まで、自分の息子である君を守ろうとしたんだ」




    「うっ・・・うそだ・・・・・・!」




    ヒロ、そしてハイロらも分かっていた




    ヒロの母親は、最後の最後で、息子を守ろうとしたのだ




    いつから母親がウイルスに感染していたのかは分からない



    だが、彼女がヒロにVPCPを装着させなかったのは、最後の最後まで自分がウイルスに反発し、息子を守ろうとした故だろう




    「じゃ、じゃあ!!なんでそんなこと分かってたのに!助けてくれなかったんですか!!」




    「・・・・・・」




    アナは握っていた両拳を強く握る




    「オレの母さん・・・か、感染してたのかもしれないけど・・・!助けられたはずじゃないですか!!」



  110. 110 : : 2014/11/09(日) 13:25:42




    「いや、どちらにしろ、もう手遅れだった」



    「え・・・・・・」



    「彼女はすでにデビルウイルスに感染しており、以後【操られて生きる】か【植物人間となって生きる】の2択しかなかったのだ」



    「そ・・・そんな・・・・・・」




    「ただ、ヒロくん。思い出してほしい」




    「え・・・」




    「君のお母さんを含め、クラスの生徒や、友達など・・・君に無理矢理VPCPを取り付けようとしたことがあったかい?」




    「・・・・・・い、いや・・・・・・ない・・・ですけど・・・・・・」




    ヒロの勢いは、冷静だったハイロによって少しずつ落ち着かされる



    「そのとおり。」



    ハイロは自分の目の前に、人差し指を立てた右拳を持ってくる



    「これがキーポイントだ。VPCPを無理矢理つけられた人間、強制的につけられた人間には、ウイルスは発症しにくい」



    「・・・え・・・」



    「それはつまり、【VPCPに反発心があるもの】には、ウイルスは発症しないという結論に至る」



    「・・・・・・そ、それが、なんなんですか・・・・・・」




    「・・・つまり、VPCPのデビルウイルスは完璧ではない。いわゆる一種の催眠なんだよ」



    「・・・・・・?」



    ヒロはハイロの言っていることが、理解ができない




    脳細胞に侵入するウイルスなのに、催眠術?




    どういうことだ_____と思っている内に




    ハイロから、救いの一言が放たれる


  111. 111 : : 2014/11/09(日) 13:37:59




    「つまり、そのウイルス自体が催眠の一種であるなら、【別の催眠療法】で直せる可能性は、大いに高いということだ」




    「・・・・・・!」




    「無気力人間、植物人間、犯罪者、そして、VPCPに操られながら生活している人々。これら全てを治療できる療法は、必ずある!!」



    ハイロは人差し指を引っ込め、右拳を自分の心臓位置へ持ってくる



    「もちろん、君の母親も、救う手立てがあるかもしれない」




    「・・・か、母さんを・・・・・・!」




    「・・・・・・その療法を突き止めるため、我々特務機関DRASTは極秘に活動している!」




    ハイロは更に鋭い目をしながら




    「そのためには、デビルウイルスを世に広げた、悪の組織を叩かなければならない!」



    と、ヒロに言い放った







    「・・・・・・な、なるほど・・・・・・」



    ヒロの震えは、少し収まっていた



    治療法がある_____これだけで、彼の心はどれだけ救われたことか



    「じゃ、じゃあ・・・その悪の組織ってのを倒せば・・・みんな元に戻るんですね!?」




    「・・・・・・」



    「・・・・・・」



    その言葉に、ハイロもアナも黙り込んでしまった



    「え・・・?」



  112. 112 : : 2014/11/09(日) 13:51:30






    「おーおー、思った通りの単細胞パーだなあ、こいつぁ」




    その時、暗い影から、一人の大男が出てくる




    「・・・・・・だ、誰・・・・・・?」




    一瞬、その大男が誰か、ヒロには分からなかった




    「・・・・・・隊長、はっきり言った方がいいんでねえかい?今の現状をよ」



    「・・・・・・ユウスケ。少し黙れ」




    ユウスケ、と呼ばれたその男は




    身長175センチであるヒロより、更に大柄で、190センチ以上の高身長の男だった



    ハイロらと同じく、スーツ姿に身を包み、その髪型はドレッドヘアーが全体に広がっている、いかにも【不良】と思われるその男



    ヒロは、そのナリに、少し見覚えがあった



    「・・・よ、お前の逃げる姿、なかなか見ものだったぜ」



    ユウスケと呼ばれた男は、自分の両手の爪をカチカチと合わせる



    「・・・・・・!」



    思い出した



    「あ、あんた!仮面の爪男か!?」



    「おー、よく覚えてたなあ」



    ユウスケは、ニヤリと笑う



    しかし、その姿は、昼間に襲われたような大きな爪は見えない



    彼の両手の爪は、明らかに短かった



  113. 113 : : 2014/11/09(日) 13:58:36




    「・・・ユウスケ、ハイロが今話してる。拗れるからあなたは出てこないで。」




    アナは冷静に、ユウスケに話を促す




    「ひどいなあ姉さんは。オレぁ事実を早めに伝えた方がいいと言ってるんですよ」




    「な・・・なんで爪の男がこんなところに・・・・・・!」



    ヒロが焦る姿に、ハイロも冷静に答える



    「・・・ヒロくん、彼は我々DRASTのメンバーだ。名は新羅ユウスケという。こんなナリをしているが、仲間だから安心してくれ」



    「・・・・・・よろしくな、ビビリ」



    「なッ___!」



    ヒロは、自分をおちょくってくるユウスケに、苛立ちを覚える




    「ユウスケ、彼を中傷するな。」



    「へいへい」



    ユウスケはつまらなそうに、ハイロからそっぽを向く




    「ヒロくん・・・少し話を戻そう。・・・・・・特殊な能力を持った人間と言ったのを覚えているかい?」



    「え・・・?あ・・・はい」



    「それは____我々DRAST(ドラスト)のことなんだ」



    「え・・・」


  114. 114 : : 2014/11/09(日) 14:27:02



    「DRASTの正式な名称は、Devilvirus radically all Strikers team(デビルウイルス・ラディクリーオール・ストライカーズチーム)。」



    「デビルウイルスを、根本的に破壊するチームということだ」



    「・・・・・・」



    ヒロは黙っている



    「が、我々がもっているのは、特殊な運動能力等ではない」



    そう言うと、ハイロは自分の胸ポケットからスマートフォンを取り出す



    「・・・・・・このスマホから、自身の体の血液に【ウイルス】を寄生させることで手に入れる能力のことで、周りに特殊と言われているだけだ」



    カシャッ、という音を立て、ハイロの持つスマートフォンから1センチ程度の針が出てくる



    「あ・・・それ・・・」



    ヒロは、自分の持っているスマホを手に取る



    「そうだ。アナが君に渡したそのスマホと同じだ」



    「・・・・・・」



    「・・・我々が他のVPCPの感染者と違うこと・・・それは、【今まで機械等の接触が少なかった人物】に限定される」



    「ヒロくん、君もそうだろう?」



    「え・・・ま、まあ」



    「・・・恥ずかしながら、オレもアナも、ユウスケもその内の一人だ。皆機械が苦手だった」



    「・・・・・・」



    「だからこそ、我々は、それらウイルスに対抗できる耐性を持っているのだ」



    「・・・えっと・・・よ、よく分かんないです・・・」



    その内



    「だーーーっ、もう!隊長!こういう奴には見本を見せてやりゃあいいんですよ!」



    ユウスケはそう言って、同人も持っていたスマホを出す



    「・・・・・・ユウスケ、今日は2回目だ、負担はないか?」



    ハイロはユウスケを心配する


  115. 115 : : 2014/11/09(日) 14:42:26




    「大丈夫っすよ」




    ユウスケはそう言うと、ハイロと同じく、スマホから針を出し




    「爪硬化《メタル・クロウ》!!インストール!!」




    と叫び、自身の左腕に、スマホの針を刺した




    「い、痛ッ・・・・・・!」




    ヒロはその腕を見て、目を細める




    「・・・・・・ふう・・・・・・」




    ため息を立てるユウスケ自身の両手の爪は、みるみる内に




    50センチ以上長く、そしてまるで鉄製のようなメタル色に染まっていく




    「え・・・・・・えええぇぇぇえ!!?」



    いきなりユウスケの身体に変化があったため、ヒロは驚きを隠せない



    「・・・・・・どうだ、あまちゃん坊主」



    ユウスケは鼻を高くし、その長くなって硬そうな爪をヒロに見せびらかせる



    「・・・・・・これが、我々DRASTの武器である、インストールシステムだ」



    ハイロは驚くヒロの目を見ながら話す



    「スマホから発せられる、電磁波ウイルスを血液自体に直接寄生させている」



    「へ・・・・・・?へえ・・・・・・?」



    「簡単に言うと、スマホから、特殊能力を自分の体宿すというイメージだな」



    「いやいやいやいや、わ、訳分かんないですよ!!」



    「詳しく話してもいいが、それこそ君の頭がパンクしそうだな・・・・・・」



  116. 116 : : 2014/11/09(日) 14:56:55




    「・・・つまり、今まで私たちは機械に触れる機会がなかった。だからこそ機械のウイルスには強い体を持ってる。よって、自分の血液に多少のスマホウイルスを流しても問題ない、ってこと」



    アナが分かりやすくヒロに説明する



    「アナ、すまない」



    「・・・・・・そ、それを聞いてもよく分かりません・・・」



    「うむ。まあ詳しい原理を知ったところで、混乱するだけだ」



    ハイロはそのまま、爪硬化《メタル・クロウ》を出しているユウスケの隣に立つ



    「とにかく、【自分の体の血液に、人体の組織の構造を覆すウイルス】を注入するんだ」



    ハイロはユウスケの爪を指し



    「そのことで、ユウスケの場合であれば、血液中に含まれる鉄分と、爪のタンパク質を促進させることで、この鉄製の爪を造り上げている」



    「・・・・・・は、はあ・・・・・・」



    ヒロの学校の成績は下の中程度



    体育会系として育ってきた彼にとって、こういった勉学の話は苦手だ



    「・・・これは、ユウスケの体内の血液が【鉄分とタンパク質】に特化していたから使える能力だ」



    そして次に、ハイロはアナを見る



    「アナに関しては、君も見ただろうが、電撃のウイルスを血液にインストールしている」



    「でん・・・げき・・・」



    「血液の中のイオン濃度を、ウイルスによって増幅させることにより、体外へ電撃を発出する能力だ」



    「・・・・・・」



    自分のことを紹介されたアナは、少し恥ずかしそうだ



  117. 117 : : 2014/11/09(日) 15:11:25




    「でっ・・・でも・・・!」



    「ん?」



    「どうして、そんな戦う能力がいるんですか?そりゃあ・・・ニーフ・・・・・・いや、メルティとかは壊せますけど・・・・・・」



    「・・・・・・」



    ハイロはヒロの正当な質問に、少し黙る



    「それは・・・・・・」



    と、口を動かそうとした瞬間に









    「・・・・・・隊長。そろそろ時間ですです」




    DRAST基地の別の暗闇から、小さな女の子が出てくる




    「えっ!?」




    ユウスケの他にも人間がいたことに気がつき、ヒロは驚く



    どこにこんな小さな子がいたのだろう



    いくらこの【基地】が暗がりとはいえ、自分が今までそれだけ焦っていたことを、ヒロは自身で理解した




    「・・・・・・サヤ」



    ハイロはその少女を、サヤと呼んだ




    身長は150センチよりも低いだろう、そして見たまま小学生高学年程の幼い子



    黒髪で肩までかかる程のストレートの髪をつつきながら、彼女は続ける




    「・・・・・・基地の位置が、感染者にバレてしまいそうですです」




    彼女は「ですです」と特殊な語尾を使う



  118. 118 : : 2014/11/09(日) 15:19:23





    「ち・・・・・・思ったより早いな」




    「ハイロさん・・・こ、この子は・・・?」




    ヒロは、サヤと呼ばれる子を見ながらハイロに問う




    「・・・・・・生茂田サヤ(おもだ さや)。12歳。彼女もDRASTのメンバーだ」



    「じゅっ、12歳・・・・・・!?」



    ヒロは改めてサヤを見る



    12歳で大人びているようには見えるが、やはり小学生なのだろう



    彼女は、ヒロの視線を怖がるように、そそくさとハイロの背中に隠れる




    「・・・・・・彼女の能力は、危機感知能力にも長けていてね。どうやらこの基地も、感染者に見つかってしまいそうらしい」



    「え・・・・・・!」



    「説明もまだ不十分かもしれないが、ここを移動しなければならない」



    「・・・・・・い、移動って・・・・・・」



    ヒロは改めて周りを見る



    そこには、ハイロ、アナ、ユウスケ、サヤの4人しかいないことが確認できる




    「もしかして・・・・・・メンバーってこれだけ・・・・・・ですか・・・・・・?」




    「・・・・・・」



    ハイロは少し黙ったあと



    「・・・・・・そうだ」



    と口にした



  119. 119 : : 2014/11/09(日) 15:23:45




    「・・・・・・!!」




    愕然とした




    いくらなんでも、少なすぎるメンバー




    そして、自分が今から対抗していこうと思う組織




    それらは【凡そ世界の人口の9割】だ




    ほぼ全ての人間が、自分たちを襲ってくるのだ




    その圧倒的な数の差に




    ヒロの精神は落ち着いていられる訳がなかった




    「た・・・たった・・・・・・4人・・・ですか・・・!?」




    「・・・・・・」



    ハイロはヒロの言葉に、黙っている




    「世界を相手に戦おうとしているのに・・・・・・たったの・・・・・・」




    ヒロは再び震えだす




    「・・・・・・チッ・・・・・・だから最初に言えっていったんだ・・・・・・」




    ユウスケはボソボソと嫌味を言う



  120. 120 : : 2014/11/09(日) 15:29:07




    そこに、言葉を刺したのは



    「・・・・・・もちろん、他のメンバーも存在するわ」



    アナだった



    「え・・・・・・」



    「ハイロ隊長は、神奈川支部の隊長と言ったでしょう。だから、日本でも各地に組織は存在する」



    「な・・・なるほ・・・・・・」



    ヒロは一瞬、納得しかけたが



    「あれ・・・・・・」



    ひとつの疑問が浮かんだ



    「・・・・・・じゃあどうして、神奈川支部の人が、東京都内にいるんですか・・・?」




    正論だ



    ハイロ達神奈川支部のDRAST隊員が、【なぜ感染者と会う恐れを犯してまで】東京に来ていたのか



    その理由を聞かずにはいられなかった



    「・・・・・・」




    ハイロはそのヒロの質問に




    「それは、本部である東京支部が、感染者によって全滅したと情報が入ったからだ」




    と答えた



  121. 121 : : 2014/11/09(日) 15:42:02




    「え・・・・・・!」



    ヒロは少しずつ、後ずさる



    「特務機関DRASTの日本チームは、元々1000人以上で構成された組織だったが、1年前からその存在は【奴ら】に気づかれ、現在感染者によるDRAST狩りが行われている」




    「い・・・いや・・・・・・!」




    「東京支部も、1年前までは200人以上のDRAST隊員がいる日本で一番の大組織だったが・・・・・・」




    「え・・・・・・」




    「ここ一週間で、全ての東京DRAST隊員の死亡が確認された」




    「・・・そ・・・・・・」




    「我々神奈川支部から来た隊員達は、その事実を確かめるために東京支部に偵察に来ていたんだ」




    「そんな・・・・・・!」




    「そして、それは事実であると判明した。」




    「・・・・・・!」



    死、という言葉を聞き、ヒロは今の状況が恐ろしい状況であると、改めて気付く




    ハイロも、ヒロが怯える姿は見て分かったものの、事実を言うしかなかった


  122. 122 : : 2014/11/09(日) 15:56:52




    「・・・・・・現在確認されているDRAST隊員は、日本で100名にも満たない」




    「・・・そんな・・・・・・!」



    ユウスケは、驚愕するヒロのを見ながら




    「追い詰められてるのは、感染者じゃあなく、オレらの方なんだよ~ん」



    と、軽々しく言い放つ



    「ユウスケ!」



    アナもこれには憤怒する



    「・・・・・・そんなの・・・そんなの・・・!」



    ヒロは地を見ながら、震えて立っている




    「・・・・・・気休めにしかならないかもしれないが・・・・・・」




    ハイロはそう言いながら、ヒロに近づき



    「東京支部が殲滅する前に発見した、鎌足ヒロ、君という存在」



    ヒロの肩を持つ



    「【君を確保すること】が、東京本部が残した最後のメッセージだった」




    「え・・・・・・!」




  123. 123 : : 2014/11/09(日) 16:05:11





    「・・・・・・なぜ、そのようなメッセージが残されていたのかは分からない」



    「・・・・・・」



    「だが、彼らは命を賭して、君を助けることを望んだ」



    「・・・・・・」



    「我々DRASTは、この世界に生きる、VPCPを所持しない異端者である【イレギュラー】」



    「・・・・・・」



    「そして君は」



    「・・・・・・」




    「その【イレギュラー】からも、更に特別と思われる【イレギュラー】だ」




    「・・・・・・オレが・・・・・・」




  124. 124 : : 2014/11/09(日) 16:12:35




    「・・・かと言って、君がその重荷を背負う必要はない」




    「・・・・・・」



    「それに、なぜ君を救うことを、東京支部が目的としていたのかも分からない」



    「・・・・・・」



    ヒロは黙って下を向く



    「・・・こちらも、すまなかったとは思っている」



    「・・・・・・」



    「君をあそこの家から連れ出さなければ、君の周りの環境は変わっていなかったはずだからな」



    「え・・・・・・」



    「アナが君に、スマートフォンを渡さなければ、君は母親に襲われることはなかったかもしれない」



    「・・・隊長!」



    アナはハイロの話を止めるように、彼の名を呼ぶ




    「・・・・・・いいんだ。事実に変わりはない」




    「・・・・・・」



    「我々が君と接触しなければ、不自然な日常ではあれ、君は継続して生活できていたはずだ」



    「・・・・・・」



    「周りの人物は、どんどん感染していき、自分を取り巻く環境の変化はあったかもしれないがね」



    「・・・あ・・・・・・」



    ヒロは、何かを思い出すように感づく




  125. 125 : : 2014/11/09(日) 16:37:30




    「そ、そうだ! 救いたい人が・・・救いたい人がいるんです!!」




    彼が思い出すのは、高濱マナの存在だ




    「救いたい、人・・・?」




    ハイロもその話に食いつく




    「はい・・・!えっと・・・オレの幼馴染で・・・高濱マナって言うんですけど・・・!」



    「高濱・・・」



    ハイロは少し考え込む



    「そいつ・・・そいつも今までVPCPを持ったことがなくて、今日始めてVPCPを手に入れたんです!」




    「・・・・・・」



    アナもその話をじっと聞いている



    「だから・・・だから・・・そいつもまだ、感染してないんじゃないかって・・・思うんですけど・・・!」



    「・・・・・・本当か・・・?」



    ユウスケは不思議そうにヒロに尋ねる



    「え、ええ!オレ、今まで他の奴らには違和感を感じなかったんですけど・・・マナだけは違うんです!」




    「・・・・・・高濱・・・マナ・・・」



    サヤは自分のスマホをつつきながら、何やら検索をかけている



    「・・・でも、この人は感染除外リストには載ってない、ですです」



    サヤはその画面をハイロに見せる



    「・・・・・・」



    ハイロも、サヤのスマホ画面をじっと見つめる


  126. 126 : : 2014/11/09(日) 16:45:49



    「な、なんですか・・・感染除外リストって・・・・・・」



    と、ヒロ



    「・・・・・・まだVPCPやVPCを利用していないと判断されている人のリストだ。これを見て我々もDRAST隊員の勧誘を行っている」



    ハイロはヒロのその質疑に答える



    そして



    「だが、そのリストには高濱マナの名はない」



    と言い放つ



    「え・・・そ、それって、VPC(ヴァーチャルパーソナルコンピュータ)を使った人も除外されるんですか・・・?」



    「・・・・・・そうだ。約半年前からだが、携帯ではないVPCP以外のコンピュータからでも感染の恐れがあることが判明した」




    「っ!!」



    続いて、ハイロはヒロに問う



    「ヒロくん。高濱さんはVPCを使ったことがあるんじゃないのか・・・?」




    「あ・・・・・・!」



    ヒロは思い出す



    確かに高濱マナは、VPCPこそ利用してはいなかったものの



    学校の机に設備されているVPCは、普通に利用しているのだ




    「そ・・・・・・そんな・・・・・・」



    ヒロは愕然として両膝を地につける



    「で、でも!あいつは絶対感染していません!」



    「・・・・・・どうして分かるの?」



    アナは冷静に聞き返す



  127. 127 : : 2014/11/09(日) 22:16:08





    「どうして・・・・・・って・・・・・・!」



    ヒロの声は、少し小さくなる



    「・・・・・・いや・・・・・・あいつは・・・そんな違和感とか・・・・・・」



    「ああ!?はっきり言えやこの野郎!」



    ユウスケは怒鳴る



    「ぃっ・・・・・・!」



    ヒロもその勢いを返すことはできない



    「・・・・・・ユウスケ黙って。・・・・・・ねえ、ヒロくん。」



    アナはユウスケを落ち着かせ、ヒロに話す



    「あなたが言うとおり、高濱マナさんは感染にかかっていなかったと想定しましょう。・・・・・・では、誰がそれを助けに行くの?」



    「え・・・・・・」



    「私たちはすでに、この街での素性がほぼ奴らに掴まれている。ユウスケが仮面をかぶっていたのも、感染者からの顔認識を逃れるためなの」



    「・・・・・・」



    「それに、先程サヤが言ったとおり、この基地自体も、感染者に居場所がバレてしまうのは時間の問題。私たちは早急にでもこの場所を移動しなければならない」



    「・・・・・・」



    「何を切り捨て、何をやらなければならないか、分かるでしょう?」



    アナが言っていることは、正論以外何者でもない



    そうだ、すでにDRASTと認められたメンバーが、感染者ばかりの街をうろつくということは、それだけで自殺行為に等しい



    ヒロの頭には、先ほどの襲ってきた井上夫妻の顔が浮かぶ



    彼らは隣に住んでいる優しい人たちだったが、それらも、ヒロに向かって鎌や刃物を振りかざしてきたのだ



  128. 128 : : 2014/11/09(日) 22:41:14





    「・・・・・・でも・・・・・・」



    ヒロはそれでも、諦めきれなかった



    元はと言えば、マナがVPCPを持とうと決意したのは【自分のトレーニングを向上させるため】だ



    それに、幼い頃に両親がいなくなり、元気がなかったマナを



    いつも自分の味方でいてくれたマナを



    ヒロは、放っておくことはできなかった




    「それでも・・・・・・!彼女を、救いたいんです・・・っ・・・!!」



    ヒロは、この基地に来てから、一番声を張ってそれに答える



    「・・・・・・」



    隊員たちも、その勢いに負け、少しの間沈黙が流れる




    まっすぐな目、そして覚悟を決めたその心




    ヒロが心からマナを救いたいことは、誰が見るより明らかだった





    その沈黙を破ったのは、DRAST神奈川県支部隊長である秀虎ハイロ




    「・・・・・・分かった」




    「た、隊長!?」



    アナも驚きを隠せない




    「・・・・・・ただヒロくん、3つ、約束をしてくれ」




    ハイロはその右手に3本の指を掲げる



  129. 129 : : 2014/11/09(日) 23:11:39




    「は・・・はい・・・!」




    「一つ、制限時間は1時間だ。それ以上は待てない。他の隊員をこれ以上危険に晒す訳にはいかないからな」




    「・・・・・・はい」




    「二つ、高濱マナさんがデビルウイルスに感染していた場合は、素直に諦めてもらう。」




    「・・・・・・っ・・・は、はい・・・」




    ヒロは辛そうに、これに納得する




    「そして三つ目。」



    「・・・・・・」



    「高濱マナさんがウイルスに感染していなければ、彼女もDRASTの隊員となってもらう」




    「・・・・・・そ・・・それは・・・・・・」



    ヒロの本心は、マナを救えたとしても、大人しい生活をしてほしかった



    だが、彼女を救うということは、【こちら側】に引き込むことと同じ




    「・・・・・・」



    ヒロは少し沈黙したが、それに納得するしかなかった



    「・・・・・・分かりました・・・・・・」




    今の彼の力だけでは、彼女を救うことは【できない】からである




  130. 130 : : 2014/11/10(月) 15:39:17




    ハイロは少し微笑む



    「・・・すまない、4つ目の約束を忘れていた」



    「えっ」



    彼はそう言うと、3つの指を人差し指だけ上げ




    「【君も】、DRASTに入隊してもらう。これが最後の約束だ」



    「・・・・・・」



    意外すぎる4つ目の約束を言い放つ




    ヒロは自分の幼馴染を助けるため、このハイロ率いるDRAST隊員の命を危険に晒し、地上に出ようと言うのに



    自分のわがままで、この組織に対し負い目を感じている彼にとって



    4つ目の条件の答えは、決まっているようなものだった




    「・・・はい!もちろんです!」



    と、ヒロは覚悟を決めた声を発し




    「・・・・・・よろしくな。ヒロくん」




    ハイロは、心温まる返答をし




    鎌足ヒロは、DRASTの正式隊員となった











  131. 131 : : 2014/11/10(月) 15:43:14





























  132. 132 : : 2014/11/10(月) 15:52:27






    港マリンシブヤの海岸沿い




    ここに、ひとつの施設がある




    その名は《海鳥亭》(うみどりてい)




    ワインが有名なこの飲食店で、高級ステーキを食しながらため息をつく女性が一人




    「・・・・・・美味し」




    妖艶な唇にその肉を運ぶたび、彼女の口から甘くとろけそうな声が聞こえる



    ステーキに合うワインを一口飲み、彼女は再び「美味」という言葉を口にする



    「・・・あなたも食べたら?」




    その女性は、高級なテーブルの向かいに座っている高校生の女性に対し、ステーキ肉を食すように催す



    「・・・・・・大丈夫」



    その高校生女子の目の前に置かれたステーキからは、すでに煙は出ておらず、彼女は手を差し出そうともしない




    「・・・これから始まるパーティには、かかせない前菜なのにん」




    その色っぽい女性は、自慢の紫の髪を靡かせ、更にワインを口に運ぶ



    その豊満な胸は、いくら感染者と言えども、他の男性客からも釘付けだ



    すでに彼女は酒が回り始めているのか、やけに色っぽい発言をする




  133. 133 : : 2014/11/10(月) 16:03:57




    「・・・・・・【彼ら】は本当に来ると思いますか?」




    堺原高校の制服を着た彼女は、紫の髪の女性に質疑する




    「・・・・・・来るわよお」



    妖艶な女性は、再びステーキをその口に運ぶ



    「はぁあぁんッ!脂身ぃいんッ!」



    脂身が特に美味しかったのか、彼女は顔を赤く染め、豊満な胸を揺らしながら両手を首下に持ってくる



    「・・・・・・」



    高校生風の女性は、それを見ながら少しずつ呆れている




    「・・・・・・最高のお肉に、最高の酒、そして最高の【部隊】ん」




    口の横に僅かにワインが残っていたのか、女性は舌を使いペロリと頬を舐める



    「楽しみだわん、ハイロちゃん」



    彼女が出した名は、【ハイロ】という名前



    「・・・あなたもん、1年間ご苦労様さまあん。峯岸ちゃん」



    いかにも語尾にハートマークがつきそうな声で、彼女は対面にいた峯岸という高校生に礼を言った



    「・・・・・・いえ」



    峯岸サド、それが彼女の名前だった



    「これも、sir(サー)のためです」




    「・・・・・・うふん。い・い・子」



    彼女達の会話は、そこで終わり



    そのレストランから、2キロ離れた場所に存在する「とある孤児院」を見ていた



  134. 134 : : 2014/11/10(月) 16:05:09




























  135. 135 : : 2014/11/10(月) 16:12:57






    ドバッ、という擬音を立て、コンクリートの地面に穴が開けられる





    地下から開けられたその「穴」から出てくるのは




    鎌足ヒロ、そして白鳥澤・アナ・グラシードの2名




    彼らは、高濱マナが住む孤児院から、100メートル程離れた場所へと立つ






    「姉さんすんません、オレができるのはここまでです」



    と話すのは、新羅ユウスケ



    彼の能力である《メタル・クロウ》は、地面やコンクリート等を破壊する程の威力を持つ



    その能力によって、彼自身は地面に穴を掘ることで、自由に移動することができる



    簡単に言えば、モグラのような能力だ



    もちろんその爪は、武器として利用することもできる







    先程まで基地にいた3人は、高濱マナを救出するため、ユウスケの能力で地下道から孤児院付近まで移動してきたのだった






    「ありがとう、助かったわユウスケ」



    「す、すごいっすね・・・!まるでモグラみたいに・・・!」



    アナとヒロは、ユウスケにお礼を言う



    「しかし・・・・・・本当に2人で大丈夫ですかい?」



    ユウスケは不安そうに聞き返す



  136. 136 : : 2014/11/10(月) 16:26:00




    「大丈夫。人数が多い方が感染者に気がつかれる危険性があるから、この方が都合は良い」



    「・・・・・・姉さんがそう言うなら・・・・・・」



    「・・・心配してくれるのか? 珍しいな。ユウスケ」



    アナは少し微笑む



    「い、いや、違うんでさぁ!姉さんだけならまだしも、インストールシステムも理解してないこいつもいるんですぜ?」



    ユウスケが言う「こいつ」とは



    「はは・・・・・・す、すいません」



    鎌足ヒロ、その人だ



    ユウスケの言うとおり、鎌足ヒロは《ただの人間》



    未だ、インストールシステム等を理解している訳ではない





    「・・・隊長も何考えてるんだか・・・・・・もしその高濱って子が《覚醒者》だったら・・・・・・」



    ユウスケはぼそりと呟く




    「・・・ユウスケ。大丈夫だ」



    「・・・覚醒者・・・・・・?」



    ヒロは不思議そうな顔をする



    「・・・・・・今は気にしなくていい」



    アナはそれを促す



    「・・・とにかく、後30分もない。急ごう」



    アナは少しづつ、孤児院に近づいていく



    「あ、は、はいっ!」



    ヒロも、その姿を追う




  137. 137 : : 2014/11/10(月) 16:36:39





    その歩いている途中、アナは自身のスマホを取り出す




    そして、スマートフォンから【1センチ程度の針】を出し




    それを自身の腕に突き刺す




    「・・・・・・ヴァルキュリア・フードゥル。インストール」



    彼女がそう言い放つと、身体が少しだけ発行し、電気のようなものがビリッと音を立てる



    彼女の特殊能力である電撃の能力を、自己の体内の血液にインストールしたのだ



    「・・・・・・うわあ・・・・・・」



    自分の体に針を突き刺すことに、未だ抵抗を感じているヒロは、相変わらず痛そうに目を細める



    「・・・・・・君も、一応この能力を理解しておけ。【彼ら】が襲ってきて、こちらに何も武器がないのは心許ない」



    「あはは・・・は、はい」



    「・・・そういえば、まだサーチをしていなかったな」




    アナはそう言うと、ヒロのポケットを探り、スマートフォンを出す



    「ア、アナさん?」



    「少し痛いが、我慢してくれ」



    「えっ___」



    アナはそう言うと、ヒロのスマホから針を出し、それをヒロの右腕に突き刺す



    「痛っ・・・・・・!」



    突然針が刺されたことで、ヒロは苦痛に歪む顔をする



    「・・・我慢してくれ。今このスマホは、君がなんの能力に特化しているのかサーチしている」



    「サ、サーチ・・・?」



    「私は電撃、ユウスケは爪だっただろう。今は君の体の血液が何に使えるのか調べているんだ。」


  138. 138 : : 2014/11/10(月) 16:48:50



    「は・・・はあ・・・」




    相変わらずヒロの頭上には、ハテナマークが浮かぶ




    「・・・まあ、今日の今日、君にその能力を使いこなせとは言わない。ただ・・・今後のためにもな」




    「りょ、了解です」




    「サーチ自体はすぐに終わる。もし必要とあらば、そのスマホを自分の腕に再度突き刺せ。それで自分の能力を利用できる」



    「・・・・・・はい」(と言われてもよくわかんないし、オレは使えないだろうな)






    「さ、では行こう。彼女____高濱マナの部屋は、7番目の窓の部屋だったな」



    アナは再び、孤児院に向け歩き出す



    「あ、アナさん、ひとつ聞いてもいいですか?」



    ヒロはアナを引き止める



    「・・・・・・なんだ」



    「あの・・・なんでアナさんの能力は、ヴァルキュリア・フー・・・?って言うんですか?」



    「・・・・・・フードゥルだ」



    「フード・・・え・・・?」



    「フランス語で、電撃という意味だ」



    「あ、なるほど!」



  139. 139 : : 2014/11/10(月) 16:59:19




    「・・・・・・単純だが、その方が分かりやすくていいだろう」



    「は、はあ・・・ちなみに、ヴァルキュリアっていうのは・・・?」



    「え・・・」



    アナは少し顔を赤くする



    「ん・・・?」



    ヒロはすぐに答えないアナを不思議そうに見る



    「・・・い・・・戦・・・乙女という意味だ・・・」



    アナは更に恥ずかしそうに、顔を赤くして下を向く




    「戦乙女ですか?か、かっこいい!」




    ヒロは素直にそう言った




    「ふ・・・ふふ・・・そうだろう!かっこいいだろう!」




    アナは少しずつ元気になり、自分の能力の名をカッコイイと自画自賛する




    「へええーー!すげえ!オレもそんな名前がいいです!名前って自由に決めていいんですか?」




    ヒロはキラキラした目でアナに問う




    「ああ、自分で決めていい。だが、そうだな・・・ヒロの能力はまだ分からないが・・・」




    「・・・・・・?」




    「頭に、【エクスキュゼモワ】とつけるのはどうだ?」



    アナは自身満々にそう言う



    「お!おお!かっこいいですね!!」



    「そ、そうだろう!そうだろう!」



    アナはこういった命名をよくするのか、かっこいいと言われ、とても嬉しそうだ



  140. 140 : : 2014/11/10(月) 17:03:35




    「エクスキュゼモワって、ちなみにどんな意味なんですか!?」




    ヒロは興味津々でそれを聞き




    「・・・フランス語で、すいません、という意味だ」




    アナは更に鼻を高くし、自慢そうに言った



    そしてヒロはその名前を



    「・・・・・・それなしで」



    日本人らしく、丁重にお断りした






























  141. 141 : : 2014/11/10(月) 17:05:43


























  142. 142 : : 2014/11/10(月) 17:12:00







    ヒロとアナの二人は孤児院の裏に回り、高濱マナがいる部屋である、東から7番目の窓の下に隠れる




    「・・・・・・」



    「・・・・・・」



    さすがに孤児院の直近であり、二人は声を潜める



    すでに時刻は午後9時30分



    周りは暗いものの、窓からは電気の光が溢れている




    (・・・・・・部屋を、覗け)



    アナは窓を指差し、ヒロに指示する



    (オ、オレがですか!?女の子の部屋ですよ!?)




    ヒロは自分の顔の前で、右手を交互に振る




    (・・・私には高濱の顔は分からない。君が確認しろ)




    アナは更に、ヒロに指示する




    (わ・・・分かりました・・・)




    ヒロは仕方なさそうに、その窓を覗く











  143. 143 : : 2014/11/10(月) 17:17:45




    バタン、と音が鳴り、突然その窓が開く




    「うわあああっ!!」




    ヒロは沈黙を破り、大声を出して驚く




    (ヒ、ヒロ!声が大き・・・・・・!)




    アナが声を潜めてヒロに申す前に




    「あ・・・・・・!」




    その窓から、ヒロのよく知る人物の顔が見える




    「・・・・・・ヒロ?」



    「マナ!!」




    それは紛れもなく、ヒロの幼馴染で恋焦がれる、高濱マナのパジャマ姿だった




    「な、何してるの?こんなところで・・・!」



    マナは不審者を見るように、ヒロにそう声をかける



    それはそうだ



    こんな夜遅くに、幼馴染とはいえ、男性が女性の部屋の窓を覗こうとしていたのだ



    不審者以外何者でもない



    「あ・・・い、いや、違うんだ!その・・・これは・・・!」



    ヒロは慌てふためいて、マナに弁明する



    「・・・・・・??」



    マナはその姿を見て、不思議そうだ



  144. 144 : : 2014/11/10(月) 17:23:21




    「お、お前、大丈夫か!?」



    「・・・・・・だ、大丈夫って・・・・・・何が・・・?」



    「いや・・・その・・・・・・」



    ヒロは言葉を詰まらせる



    「・・・・・・」



    アナは黙って、その姿を見つめている



    マナが感染者かどうなのか、観察しているのだ




    「そうだ!VPCP!お前サドにもらったVPCPどこにやった?」




    「え・・・?どうして・・・・・・?」




    「いや・・・その・・・あ、あれは危ないんだ!」




    「危ない?」




    「つ、つけてないよな!?」




    ヒロは必死に、マナにVPCPのことについて問う




    「・・・・・・」



    マナはその質問に、黙っている



    そして彼女は、虚ろな目をしながら



    「うん。まだつけてないよ」



    と、冷静に言った



  145. 145 : : 2014/11/10(月) 17:27:09





    「ふせろッッッ!!!」




    突然、アナは叫び




    「わっ!!」




    ヒロはアナに押し倒される




    「い、いきなり何を・・・・・・!」




    ヒロはそう言うが




    「・・・・・・遅かった・・・・・・!」




    窓にいたマナは、包丁を窓の外へ突き出していた



    刺そうとしたのだ、彼女は、ヒロを




    「・・・・・・マ・・・・・・マナ・・・・・・?」




    ヒロは震えながら、マナの名を呼ぶも




    「・・・あら、残念。」




    マナはヒロを刺せなかったことに、「残念」と漏らした




    「そんな・・・・・・!」




    ヒロはその姿を見て、愕然とする




  146. 146 : : 2014/11/10(月) 17:45:40





    「彼女はすでに・・・【感染】しているッ!!」




    アナがそう叫ぶとともに




    「うふふ」




    マナは不敵な笑みを浮かべ




    同時に「バリバリバリッ」と窓が割れる音が響く




    「っ!!」




    ヒロが見たその回りは




    孤児院の他の窓を割って飛び出してくる、中高校生の子供たちだった




    「・・・・・・」



    「・・・・・・」




    彼らは窓を割って傷ついた自己の体を何も痛がることもせず



    ヒロとアナを黙って見つめる



    「ち・・・・・・!ここは・・・この孤児院はッ・・・!」



    アナはヒロの服を掴むと



    「すでに【感染者だらけ】だあッ!!」



    叫びながら、ヒロを連れて走り出した



  147. 147 : : 2014/11/10(月) 17:52:53




    「そんな・・・・・・!」



    ヒロは絶望しながらも、アナに引き連れられて走る




    その間も、バリン、バリンと、他の孤児院の窓が開く




    振り返ることはできないが、感染者がヒロ達を追うため、窓をどんどん飛び出してきているのだ




    「どっけえええええっ!」




    アナはヒロを掴みながら、前から襲ってくる感染者の攻撃を避け、必死に走る



    「マナが・・・・・・」



    ヒロは、未だその状況を信じようとしない




    「自分の力で走れ!!ヒロ!!このままでは感染者に捕まってしまうぞ!!」




    アナは感染者を避けながら、必死にヒロに声かけする




    「もう・・・諦めろッ!!」




    「・・・・・・!」




    「あああーーー・・・・・・」



    「あああーー・・・・・・」




    逃げるヒロ達を、虚ろな声を上げる感染者が襲ってくる



    まるでその姿は、ゾンビのようだ



    ほとんどの者は素手であるため、アナは少しずつの電撃を流し、その攻撃を回避する





    「くそっ!!20人以上はいる!!」



    ようやく彼らは、孤児院の端にたどり着いた


  148. 148 : : 2014/11/10(月) 17:57:39




    「・・・・・・」




    ヒロは変わらず、失望した目をする




    「ヒロ!目を覚ませ!隊長と約束しただろう!」




    「ああー・・・・・・」



    その間、包丁を所持した感染者がアナを襲ってくる




    「クソッ!!foudre(フードゥル)!!」




    バリバリッ!と音をたて、アナは包丁を持った感染者に電撃を食らわす




    相手は人間とはいえ、やらなければこちらがやられるのだ




    「あ・・・う・・・」



    電撃を受けた感染者は、絶命こそしないものの、その場に倒れこむ




    「君がそんな状態では、逃げ切ることもできないッ!!」




    アナはヒロに呼びかける




    「ショックなのは分かるが、彼女は感染者だ!もう助けられん!」




    「・・・・・・」



    アナの必死の呼びかけにも、ヒロは何も答えることはできない




  149. 149 : : 2014/11/10(月) 18:09:23





    その時





    「ッ!!!」




    ビュン、と音をたて、何やら緑色の触手のようなものが、アナに襲いかかる





    「くそっ!!」




    アナはヒロを抱え、間一髪その謎の攻撃を躱す




    「・・・・・・【覚醒者】・・・・・・!」




    アナが【覚醒者】と言ったその目の前には




    「ふへえ・・・ふへへ・・・・・・!」




    高校生くらいの男の子が、自分の背中に【緑色の触手】を伸ばしているのが確認できる




    その【緑色の触手】は、数字やローマ字等が含まれたデータのような容姿をしており



    男の子の両肩に、まるで寄生しているように生えている



    その男の子の後ろには、凡そ20人程の感染者が待機している




    「な・・・・・・なんですか・・・・・・こいつ・・・・・・」




    ヒロはようやく、目の前の状況に気が付く




    「・・・こいつらは、感染者の中でも特殊な存在の【覚醒者】だ」




    「覚醒・・・・・・」




    「背中に緑色の羽のようなものが生えているだろう・・・信じられないかもしれないが、あの羽はVPCPのデータを具現化したもの」




    その覚醒者と呼ばれる男の子は「ぐへへ」と言いながら、緑の触手をグネグネと動かす




    「感染者の中でも、VPCPの仮想世界を現実化とした連中だ。その緑の羽は自由自在に我々に攻撃してくる・・・!」




    「じゃあああッ!!」




    その覚醒者は、緑の羽をアナ達に向け触手に変えて何本も飛ばしてくる




    「くそっ!!foudre(フードゥル)!!」




    アナは再び、その緑の触手に向け電撃を放つ




    「ジュアア」と音をたて、その緑の触手は溶けていくも




    「・・・・・・こいつら覚醒者の持つ、緑の羽は、やっかいだ」




    すぐに、再生したように同じ触手となり復活した




    「何をやろうとも、破壊することはできん!」



  150. 150 : : 2014/11/10(月) 18:25:50




    「そんな・・・・・・!」




    アナは、正気に戻っているヒロの肩を押し



    先程ユウスケが届けてくれた穴の方向へ押し出す




    「・・・私が時間を稼ぐ!君は逃げろ!」




    「えっ・・・!」



    「覚醒者が目の前にいる今、誰かが食い止めない限り、こいつらからは逃げ切れん!」



    「で・・・でも・・・!」



    「いいから行け!!ユウスケの穴までたどり着けば、応援も呼べる!二人で逃げ切るのは不可能だ!」



    「・・・・・・っ・・・!」



    「君は足でまといだと言ってるんだ!!さっさと走れ!!」



    「は・・・はい・・・・・・!!」




    ヒロはアナを背にし、走り出した







    「あうう?あうー・・・・・・」




    覚醒者の男の子は、ヒロを逃がさないようにするためか、緑の触手を更に勢いよく伸ばす









    「Eclaire puissant(エクレール ピュイサン)!!!」




    アナがそう叫ぶと




    その体からは更に強烈な稲妻が発せられ




    ヒロを襲おうとした触手は、一瞬にして塵となった




  151. 151 : : 2014/11/10(月) 18:31:14




    「ぐッ・・・・・・!」



    しかし、その攻撃は、かなりの体力を消耗するのか




    アナの腕から、多少の血液が出血した




    「エクレールピュイサンは、ここぞというときの大技・・・・・・まだ多用はできんか・・・・・・」




    アナは静かに微笑む





    その間にも、覚醒者の触手はみるみる内に回復していく




    また、その覚醒者の後ろにも




    2人の高校生風の女性が、その肩に緑色の触手を用意して待っていた





    「ふ・・・・・・3人・・・か・・・・・・!」




    アナは出血する血を気にすることなく、右手を掲げる




    「いいだろう・・・我がフランス軍の誇り、貴様らに喰らわせよう!!!おおおおおおォォォォォッッ!!!」




    アナは3人の覚醒者に向け、突撃していった




  152. 152 : : 2014/11/10(月) 19:10:49





















  153. 153 : : 2014/11/10(月) 19:17:37





    「はあ・・・!はあ・・・!はあ・・・!」





    ヒロは、逃げる





    「はあ・・・!はあ・・・!はあ・・・!」





    またしても、逃げる






    「はあ・・・!はあ・・・!はあ・・・!」





    もう逃げたくはないのに、逃げることしかできない





    「くそ・・・・・・!」





    彼の頭には、マナと仲が良かった記憶が走馬灯のように流れる




    幼い頃は、家が近く、毎日のように遊んでいた記憶



    自分が機械が苦手でも、それでも仲良くしてくれた彼女



    小学校に上がってからも、男女としての蟠りもなく、いつも2人で遊んでいた



    中学校に入ってからは思春期となり少しずつ距離があったものの、彼女の父親が死に、母親が失踪してからは、ヒロは彼女への恩返しのために、いつも傍で彼女を支えた



    ようやく高校生になって笑顔が戻ったマナは、自分をフォローしてくれるため陸上部のマネージャーになった



    そこからは、まるで恋人のように一緒に過ごした



    毎日毎日、遅くまでこなしていたトレーニングにも、彼女は愚痴ひとつこぼさずに付き合ってくれた



    そんな彼女に、ヒロは言いたいことも、伝えたいこともあった



    だが、もう



    彼女にそのことは【伝えられない】



  154. 154 : : 2014/11/10(月) 19:23:54




    「はっ!!」




    ヒロが、ユウスケが掘ってきた穴に辿り着く直前




    彼の足は、緑色の触手に包まれて、ヒロは勢いよくこける




    「痛てて・・・・・・って、これは・・・・・・!」



    ヒロは自分の足に巻き付いた触手を見て驚く







    「キャハハハハッ!」



    それも束の間、緑の触手の先に見える少女の姿に、ヒロの目は釘付けとなる




    「どおおおして逃げるのおおおおお?ヒイイイイロオオオオオ」




    「・・・・・・マナ・・・・・・!」




    緑の触手を靡かせながら、覚醒者となった彼女は笑い叫ぶ



    おそらく、孤児院の窓からではなく、出入口側からヒロを追ってきたのだ



    「ねえええ、ねえええ?あなた私のこと好きだったんでしょおおおおおお?」




    「・・・・・・!」




    「なのおおおおおににいいいい、どおおおおおしててええええ、逃げるのおおおおおお?????」





    すでに、マナの言葉は人間とは思えない




    夕刻、ヒロが襲ってきた母親のように、彼女の声は奇怪だった




  155. 155 : : 2014/11/10(月) 19:28:40




    「マナ・・・・・・マナ・・・・・・!」



    ヒロは願いを込めるように叫ぶ




    「・・・お前・・・・・・感染してるなんて嘘だよな・・・・・・?変なフリして・・・・・・ふざけてるだけなんだろ・・・・・・?」




    「・・・・・・」



    マナは少し黙る




    「そうだよ・・・・・・お前・・・今日まで感染してなかったんだ・・・!」




    「・・・・・・」




    「だからさ・・・だから・・・お前・・・・・・」



    「・・・・・・」



    「早く・・・そんなもん投げて・・・・・・こっち・・・来いよ・・・!」




    ヒロは、マナの右耳に取り付けられたVPCPを指しながら、そう話す



    「そ、それが・・・原因なんだろ・・・?それさえ取れば・・・お前は元に戻るんだろ・・・・・・?」



    「・・・・・・」



    「・・・ほら・・・・・・今ならまだ・・・オレに包丁刺そうとしたことくらい、許してやるからさ・・・!」



    「・・・・・・」


  156. 156 : : 2014/11/10(月) 19:39:16



    「だから・・・・・・早く・・・・・・!」




    「あっははははははっ!!!」




    マナは笑う




    「あはははは!あは!あはっ!」




    「・・・・・・マナ・・・・・・!」




    「あんたバカじゃないの?」



    「えっ・・・!」



    「VPCPを取り外したところで感染は消えない。もう脳内にウイルスが入ってるの。だから、この子を助ける方法はもうないの。」




    「・・・・・・この・・・子・・・・・・?」




    ヒロは、先程までマナだった人間が、【まるでマナ自身ではないと思われる言動】に疑問を持った




    「あははっ!そんなことも知らなかったのね!!マヌケちゃん~~~☆」




    マナは変わらず、高笑いを浮かべる




    「・・・お前・・・・・・マナじゃないのか・・・・・・!」




    「あはは・・・ああははははは・・・えぇ?」




    「もしかしてお前が・・・!人類を操ってる・・・ウイルスを発症させた【奴】だってのか!!」



    「・・・・・・あらぁ、もうそこまで知ってるのね」




    ヒロが今言った言葉は



    マナの精神がすでに【乗っ取られ】ており、ウイルスを使ってマナ自身を操っている【奴】が裏にいるということだった



    ほとんどの人間は【操られる】ことはなく、自動的に生活しているが、マナの先程の言動から、彼女が今【操られている】と気がついたのだ



  157. 157 : : 2014/11/10(月) 19:45:17





    「お前が・・・お前らが・・・ウイルスを広げたせいで・・・・・・!」




    「・・・・・・」




    「どれだけの人間が、不幸になったと思ってるんだ!!」




    「・・・・・・不幸?」




    「そうだ!!お前らがウイルスをばら撒いた張本人なんだろう!!お前らのせいで・・・・・・!」




    「本当にそう思っているの?」




    「え・・・・・・」




    「私たちは確かに、ウイルスで人を操っている時もあるわ。でもそのほとんどは違うわよ?」




    「・・・・・・っ」



    「ほとんどの人間は、自分がやりたいように、生きたいようにしている」



    「ど・・・どういう・・・・・・!」




    「それに、今の状況は人間にとって【本当に不幸】だったのかしら?」




    「な、なんで・・・・・・」




    彼女の声は、まさにヒロの知る高濱マナそのものなのだが、ヒロの知っているマナの口調ではないのは明らかだ




    「・・・うふふ、まあそれはいいわ」



    マナの姿をしたそれは、緑色の触手を6本尖らせ、ヒロの目の前に持ってくる




  158. 158 : : 2014/11/10(月) 19:51:42




    「っ・・・・・・!」



    「・・・・・・特務機関DRAST・神奈川県支部長の秀虎ハイロ。彼はどこ?」



    「え・・・・・・!」



    マナは、ヒロの知っている【秀虎ハイロ】の名を出す



    「彼に会いたかったわん。来ないのかしら」



    「・・・っ・・・・・・そ、そんなこと・・・・・・!」



    「・・・・・・知らないの?」



    「・・・・・・し、知らない・・・・・・!」



    ヒロは、ハイロのため、嘘をついた



    「あらそう」



    マナの姿をしたそれは、気にしなさそうにそう言うと




    「じゃ、死んで」




    不気味にそう言うと、用意していた緑の触手をヒロに襲わせた





    「っ!!!!」




    ヒロは一瞬、襲ってきた緑の触手に身体が貫かれたと思った









    6本の触手は、ヒロを襲うことなく




    空中で止まっていた




  159. 159 : : 2014/11/10(月) 19:59:46





    「・・・・・・あれ・・・・・・?」




    マナは不思議そうに、空中に止まった緑の触手を見る




    「え・・・・・・!」




    ヒロも閉じていた目を開け、未だに自分が刺されていなかったことに驚く




    「あらまあー、この子まだ完全に・・・」



    マナはそう言うと、一瞬顔を沈め



    「逃げて・・・・・・!ヒロ・・・・・・!」



    ヒロの知った幼馴染のマナの顔に戻り、苦しそうに、ヒロに逃げるように話す




    「マ・・・マナなのか・・・・・・!」



    ヒロはいつもの聴き慣れた声に、答える




    「・・・ごめん・・・・・ね・・・!わた・・・・・・し・・・・・・!」



    「マナ!マナッ!!」



    シュルシュル、と音をたて、マナの触手はヒロから離れていく



    「マナなんだろ!?お前はマナなんだろ!?」




    「ヒ・・・・・・ロ・・・・・・!」




    マナは変わらず、苦しそうにヒロに話す




  160. 160 : : 2014/11/10(月) 20:21:45




    「マナ・・・!」




    「・・・・・・わた・・・・・・し・・・・・・!」




    「ああ!どうしたマナ!!」




    「ごめ・・・・・・ヒロ・・・に・・・・・・! なに・・・も・・・・・・!」




    「なんだ・・・? なんだ・・・!マナ!」




    マナはその眼から、涙を流す




    「なにも・・・・・・おんがえ・・・・・・し・・・・・・!」




    「恩返し・・・?恩返しって言ったのか!?」




    「・・・はや・・・・・・逃げ・・・・・・!」




    「・・・マ、マナッ!!」




    マナはそう言うと、下を向き「逃げて、逃げて」と小声で言う




    そして




    「っ!!」




    次に彼女が顔を上げると




    その顔は、白目を向き、まるで悪意の塊のようにヒロを見つめた




    「・・・・・・お前・・・・・・!」




    「・・・ごろごろごろごろごろずうう・・・・・・!」




    マナには、もう、以前の面影はなかった




  161. 161 : : 2014/11/10(月) 20:26:28





    「くそ・・・くそっ・・・・・・!」




    「があああ・・・がっ・・・があああ・・・・・・!」



    マナは気が狂ったように、涎を垂らしながらヒロを見て



    再び、その緑の触手を尖らせる





    「くそおおおおおおおーーーッ!!!」




    ヒロは再び、彼女を背にして逃げる




    マナの自我がなくなったと思われる今




    彼にはもう、ユウスケが開けた穴に逃げ込むしか選択肢がない




    「・・・い・・・!」



    穴まで走ろうとしていたヒロだったが




    「いや・・・・・・待て!」




    何故か、立ち止まり、【ある言葉】を思い出す




    (あらまあー、この子まだ完全に・・・)




    「・・・・・・完全に・・・・・・?」




    「ぎゅううええええ・・・・・・」




    マナは立ち止まるヒロを見て、微笑みながら両手を上げる




  162. 162 : : 2014/11/10(月) 20:32:08





    「おかしい・・・・・・!」




    ヒロは考える




    「完全に・・・完全に・・・・・・感染してない・・・?」




    それは1秒、2秒程の出来事だったのかもしれない




    だが




    「そんなこと、有り得ない・・・・・・!だって、本当に感染したのなら【完全に】とは口にしない!」




    彼に




    「・・・・・・まだマナは、救えるかもしれないッ!!」




    覚悟を決めさせるには、十分な時間だった











    「があああああッ!!!」




    マナと思われたそれは、両手をヒロに向けて倒し、緑色の尖った触手で攻撃する









    その場に、ヒロの姿はなかった




    「があああ?が?」



    マナは不思議そうにする




  163. 163 : : 2014/11/10(月) 20:37:52






    「がが?がああああ?」




    マナはヒロがどこに行ったのかを探す







    「こっちだ!!マナ!!」




    そう叫ぶヒロは




    マナから10メートル程離れた場所に立っていた




    ユウスケが開けた穴からは、別の方向である




    彼は陸上部で鍛えた瞬足を利用し、触手が襲ってくるのを一瞬で避け、10メートル先まで走り抜けたのだ




    「がああああううううあああ・・・・・・」




    マナと呼ばれたそれは、ヒロの方向を向く










    「オレは・・・もう、逃げない・・・・・・!」




    ヒロはそう言って、自分のスマホをポケットから出す




    「君を・・・君を必ず救ってみせる・・・・・・!!」




    そしてヒロは、スマホの針を取り出し




    《インストオオオーーーーールッッ!!!》




    叫びながら、その針を腕に突き刺す



  164. 164 : : 2014/11/10(月) 20:47:54





    「があああああーーーーーーッ!!」





    再び、マナの触手がヒロを襲う!




    先程よりとても早いスピードであり、常人であればこれを避けることはできない









    6本ともあった触手は、何かに止められたように




    ピタリと、空中で止まっていた




    「・・・・・・がああ?」




    マナは驚く




    気持ちよく貫くはずの触手が、一瞬にして止まったからだ










    「・・・・・・これが・・・オレの力・・・・・・!」




    その止まっていた触手に囲まれたヒロは、一人呟く




    彼が差し込んだ針の傷跡から




    まるで【糸】のように、血液が何本も伸び




    その赤い糸は、マナの触手を6本とも、ロープのように巻き付き、止めていたのだ




  165. 165 : : 2014/11/10(月) 20:54:41





    「ん・・・・・・」




    ヒロが覗き込んだスマホ画面には




    【フリーダム・ストリング】




    と表示された文字が映っていた




    「・・・・・・フリーダム・・・ストリング・・・・・・」




    自由の糸




    という意味だ





    「・・・・・・自分の血液を、糸のように排出して、操れる」




    ヒロは自分の傷口から出ている無数の血液に触れる




    「柔らかい血の糸だ、なのに、すごく硬い」




    そう言った後




    「なんでだろう・・・この使い方が分かる・・・」




    糸を物凄い勢いで、引っ張る




  166. 166 : : 2014/11/10(月) 20:58:53




    すると




    「があああああああっ!!?」




    糸は引っ張られた圧力で、6本の触手をバラバラに切り裂いた




    マナも、その異様な光景に驚く




    「・・・・・・強い」




    ヒロはそう呟きながら




    「がっ?」




    少しずつ、マナに近づいていく




    「マナ・・・・・・」




    「があああっあああーーーーっ!!」




    マナはすぐに触手を回復させ、別の触手でヒロを襲うも




    多数の糸に守られたヒロは、その触手をいとも簡単に弾け飛ばす




    「があああっ?がああっ!?」




    まるで怪獣のような声を発するマナは、その光景が信じられないのか、叫び声を上げ続ける



  167. 167 : : 2014/11/10(月) 21:06:05







    「ん・・・・・・っ?」




    その時、新羅ユウスケは叫び声に反応したのか




    地面に空いた穴から、ヒロ達の方へ顔を覗かせる




    「あ、あいつ・・・・・・襲われてるじゃねえか・・・!」




    ユウスケは穴から飛び出し、ヒロの方へ走る




    「し、しかも覚醒者かよ!シャレになんねえ!」




    焦るユウスケだったが




    「・・・・・・スケーーーーーーーッ!」




    「ん・・・?」




    孤児院の方から走ってくるアナを見て、安心する




    「ユウスケ!!逃げるぞ!!穴を頼む!!」




    アナはユウスケに叫びながら、走る




    「ね、姉さん!無事でよかった・・・・・・って、ええ!!?」




    アナの後ろからは、何十人も感染者が追ってくる




    その内に、覚醒者も何人か混じっている



  168. 168 : : 2014/11/10(月) 21:10:56





    「ちょ_____!ど、どんだけ感染者連れてんですか!」




    「すまない!!逃げるので精一杯だった!!ヒロは!?」




    「あ・・・・・・あの腰抜け野郎も襲われてまさぁ!!」




    ユウスケが指差す方向に




    触手を持つ覚醒者に向かって歩いている、ヒロの姿が映る




    「な・・・・・・!あ、あいつ一体何を!?」




    アナは、逃げていたと思っていたヒロを見て驚愕する




    「早く助けやしょう!逃げるのはそれからです!!」




    ユウスケは珍しく、自分からヒロを助けると言う



    さすがに自分の目の前で人が殺されるのは、彼も嫌だったのだろう






    「あああ・・・・・・」



    「ああーーー・・・・・・」




    アナの後ろからは、感染者や覚醒者が走って襲ってくる




  169. 169 : : 2014/11/10(月) 21:19:52




    「ちっ!!ヒロ!待ってろ!!今助ける!!」




    アナも走る




    「・・・・・・厄日だぜちきしょう・・・・・・!」




    ユウスケも走る














    「マナ・・・・・・」




    ヒロはマナの名を呼びながら、彼女に近づく




    「がうううっ!がっ!があっ!」




    マナも触手をヒロに襲わせるも




    それらは全て、ヒロの【自由の糸】に弾かれていた




    「お前を・・・・・・!」



    そして



    ついにヒロは、マナの前に立つ




    「お前を・・・助ける・・・・・・!!」




    そう言って、彼は




    マナを力いっぱい抱きしめた



  170. 170 : : 2014/11/10(月) 21:21:08


















    ドクン













  171. 171 : : 2014/11/10(月) 21:23:43





    音が鳴った






    鳴り響いた






    その瞬間







    「ッ・・・・・・!!」




    アナの動きは止まる




    「なん・・・・・・ッ・・・・・・!!」




    ユウスケの動きも止まる





    「あ・・・・・・!」




    「え・・・・・・!」




    アナを追ってきた感染者の動きも止まった







    (なんだ・・・これは・・・・・・!!)




    アナはピクリとも動けない




    (身体が・・・身体が全く動かねえ・・・・・・ッ!!)




    ユウスケもピクリとも動けない




    まるで、【その場の空間が支配されたかのよう】に、ヒロの近くにいた人物は、動きが止まった




  172. 172 : : 2014/11/10(月) 21:27:04





    「が・・・・・・うう・・・・・・!!」




    それは、覚醒者であった高濱マナも例外ではなかった




    彼女も、体、そして触手までも、全く動かせない





    その中で自由に動けるのは




    「マナ・・・・・・!」




    鎌足ヒロ、その一人のみ





    「随分・・・苦しかったな・・・・・・マナ・・・」




    「が・・・う・・・・・・あ・・・・・・!」




    「オレが・・・・・・オレが・・・・・・!」




    「う・・・・・・!あ・・・・・・!」



    「今・・・助ける・・・・・・!!」




    ヒロはそう言うと




    マナの右耳に付けられていたVPCPを





    そっと、取り外した






  173. 173 : : 2014/11/10(月) 21:30:39




    「これで・・・・・・!」




    ヒロは、そのVPCPを




    手から血がこぼれ落ちようと、握りつぶして破壊した





    「・・・・・・お前・・・・・・を・・・・・・!」




    そう言うと




    先程まで、鬼のような形相だったマナは




    安らかに眠るように、目を瞑る




    「・・・・・・マナ・・・・・・」




    ヒロは、マナの頬を摩りながら




    そのまま地面に倒れこむ






  174. 174 : : 2014/11/10(月) 21:36:30





    同時に



    「っはああっ!!」



    「うおおおっ!!」




    アナとユウスケも、何かから解放されたかのように、その場に崩れる





    「う・・・あ・・・・・・」




    「が・・・・・・」




    それは、アナを追ってきていた感染者らも同じだった



    彼らも、なにかから解放されたように、その場に倒れこむ






    「い、一体・・・・・・なんだったの・・・・・・!?」




    アナは首を持ちながら、そう言う




    「い、息もできず・・・・・・!全く動けなかった・・・・・・!」




    ユウスケは、ゼェゼェと言いながら、息を整える









    「・・・・・・」




    「・・・・・・」




    アナとユウスケから、20メートル程先に倒れているヒロとマナは、黙ったままその場に倒れている





  175. 175 : : 2014/11/10(月) 21:42:19





    「と・・・とにかく・・・・・・!」




    アナは苦しみながらも、ヒロの元へ向かう




    「感染者もいる・・・!早くあの子達を回収するわよ・・・!」




    「あ、あの子【達】って・・・・・・!」




    ユウスケも、アナの後を追う




    「まさか・・・感染者の高濱マナも連れて帰る気ですかぃ!?」




    「・・・・・・あなたも見たでしょう・・・ヒロは、マナさんのVPCPを破壊していた・・・」




    「い、いや、だからって・・・!」




    「VPCPがない限り、通信手段がないから、感染者を呼ぶことはないはず・・・・・・」




    「そうは言いますが、奴ぁ【覚醒者】ですよ!?そんな危ない奴を連れて帰るなんて・・・・・・!」




    「・・・・・・連れて帰れって言ってるのよ・・・・・・」




    「へえ!?だ、誰がですかい!?」




    「・・・・・・私の勘が・・・・・・!」




    「そ、そんなこと・・・・・・!」




    アナとユウスケは、そのままヒロの元へ歩く




  176. 176 : : 2014/11/10(月) 22:05:55






    「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




    アナは歩きながら、自分を追ってきていた感染者らの姿を見るも






    「が・・・・・・う・・・・・・」




    「あ・・・・・・」





    彼らは、まともに歩けない様子であることが分かった





    「・・・・・・一体何が・・・・・・!」




    アナとユウスケは、ヒロ達の元へ辿り着く




    「・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・」



    「・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・」




    ヒロとマナは、お互いで手を繋ぎながら気を失っているようだった




    「・・・な、なぜか知りやせんが、奴ら倒れたまんまですね・・・・・・」



    ユウスケは感染者を見ながら言う




    「・・・・・・ああ」




    アナは返事をしながらも




    ヒロの持っていた、スマホを手に取る




  177. 177 : : 2014/11/10(月) 22:11:32





    「・・・・・・」




    アナはそのスマホを見ながら




    「フリーダム・ストリング・・・」




    と、一言




    「え・・・?」




    ユウスケは不思議そうにアナを見つめる




    「なに・・・・・・これ・・・・・・」




    「な、何がですかい・・・?」




    「通常、特殊能力がスマホに表示されるのは、ひとつのみ」




    「・・・・・・?」




    「鎌足ヒロは【フリーダム】そして【ストリング】の2つの能力をもっている・・・?」





    アナが目を疑った、そのスマホの下で




    ヒロとマナは、静かに眠ったままだった





  178. 178 : : 2014/11/10(月) 22:11:44


























  179. 179 : : 2014/11/10(月) 22:22:28






    ~海鳥亭~





    「あららん、どうしてかしら」




    海鳥亭でステーキを食べ終えた妖艶な女性は、VPCPの仮想画面を見ながら、不思議そうに話す




    「・・・どうしたのですか?」




    その対面にいる峯岸サドは、彼女のその姿に疑問を持つ





    「【彼女の】マニピュレーターが動かなくなっちゃったのん」




    「え・・・・・・」




    「うふふ・・・誰の仕業かしらねん」




    「・・・ただ、彼女が精神が壊れただけでは・・・?」




    「いやあ、恐らく違うわ」




    妖艶な女性は、不敵な笑みを浮かべる




    「鎌足ヒロですか?」




    「うふふん、そうそうその子」




    「・・・彼が・・・一体・・・・・・何を・・・・・・?」




    「うふふ・・・・・・東京支部の人が、最後に命乞いで言ってたのよねえん」




    「え・・・」




    「彼はん、イレギュラーだって」




  180. 180 : : 2014/11/10(月) 22:26:57





    「・・・・・・イレギュラー・・・」




    峯岸は、目の前にあるオレンジジュースを口に含む




    「うふふ・・・楽しみだわん」




    その女性も、静かに赤ワインを飲み干す




    「私はいい気分になっちゃったん、帰るから、後ここはお願いねんサドちゃん」




    「え・・・は、はあ・・・」




    「今日は、久しぶりにあなたからボスに電話してくれるん?」




    妖艶な女性は、立ち上がる




    「まあ・・・いいですけど・・・」




    「うふふん。いい子」




    そして彼女は去り際に




    「秀虎ボスに、よろしくねん」



    と言った




  181. 181 : : 2014/11/10(月) 22:27:46





























  182. 182 : : 2014/11/10(月) 22:33:52






    ~地下水道~






    ザアアアッ、と水が流れる、ここ地下水道の脇道で





    DRAST神奈川県支部のメンバーは、二人の少年少女を見ながら、佇む






    「アナ、何故高濱マナを連れ帰った」




    そう話すのは、DRAST神奈川県支部隊長、秀虎ハイロ




    「・・・勘です」




    白鳥澤・アナ・グラシードは、それに「勘」と答える




    「いやぁ・・・アナ姉さんの勘は頼りになるってのは分かりますがねェ・・・」




    新羅ユウスケも、遠慮がちにそう話す




    「・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・」



    その横で、壁に横たわりながら寝ているのは、鎌足ヒロ




    「・・・・・・スー・・・・・・スー・・・・・・」




    同じく、感染者であった高濱マナも、その横で静かに眠る




    「・・・どうだ?サヤ」




    高濱マナの手や目、そして体の匂いを嗅いでいるのは、小学生である生茂田サヤ




    「・・・・・・」




    彼女は黙々と、マナの体を触り、匂いを嗅ぐ



  183. 183 : : 2014/11/10(月) 22:37:06





    「・・・・・・まだか」




    ハイロは小さく「ちっ」と舌打ちをする




    「・・・だが、本当なのか・・・?その・・・・・・まるで【時間が止まったように身体が動かなくなる】という症状は」




    「ええ。間違いありません。」




    「オレも体験しましたけどよ、全く動けねえのなんのって・・・!」




    ハイロとアナとユウスケは、先ほどの怪奇現象について話す





    そんな中





    「・・・・・・ハイロさん」





    声を上げたのは、生茂田サヤ





    「なんだ、サヤ」




    ハイロは優しく、彼女に尋ねる




  184. 184 : : 2014/11/10(月) 22:40:03





    「・・・・・・この高濱マナさん、間違いありません」





    サヤは、マナを指差す





    「匂い、感触、汗、血、肌、どれをとっても」






    そして、ありのままの調査事実を







    「彼女は、感染者ではなく、ただの人間です」







    言い放った







































  185. 185 : : 2014/11/10(月) 22:42:10






























    イレギュラーズ









    第一章


























  186. 186 : : 2014/11/10(月) 22:51:48

















    あとがき






    イレギュラーズ【第一章】をご覧の皆様、お忙しい中、このようなお話に付き合っていただき、ありがとうございました!




    SS、という書き方ではなく、どちらかというとライトノベルに近いお話であり、読みにくかった点が多々あったと思います。


    大型近未来SFを書く事、そしてラノベ風作品という初めての試みだったため、「よくわかんねえよ!」と言わせてしまった皆様、深くお詫び申し上げます。




    しかし、読み返してみれば、本当によく分かんないお話です(笑)
    ただ、すでに結末までお話は決まっていますので、そこはご安心を。


    色々と誤字脱字もあると思いますが、勢いで書いてしまったので、その点ご教示頂けますと幸いです。





    また、ご存知と思いますが、このお話は続きがあります。


    長い長いお話になると思いますが、お付き合いして頂けますと嬉しいです。



    第二章のスレッドにつきましては、他作品が完成次第、投下していこうと考えております。




    このようなお話に付き合っていただき、毎度毎度ありがとうございます!!!!



    お気に入りまで頂けて、とても嬉しいです(^_^)




    それでは、コメント制限を解除させていただきますので、もし皆さんがよろしければ、色々とご意見お待ちしております!!



    というか、わかんないとこがあったらいけませんので、ネタバレをしない程度に解答させて頂きます!!


    また色々と教えて頂けますと幸いです!ではでは~


  187. 187 : : 2014/11/10(月) 22:52:38
  188. 188 : : 2014/11/10(月) 22:54:18
    アサシンさん!こんなにコメントを早く・・・・・・!
    ありがとうございますー(^_^)
  189. 189 : : 2014/11/10(月) 22:55:18
    乙です
  190. 190 : : 2014/11/10(月) 22:57:20
    キキさん、ありがとうございますー!
    こんなに早くコメを頂けると嬉しいです!
  191. 191 : : 2014/11/10(月) 22:58:25
    サクサク読めて楽しかったです。
    次回作にも期待です
  192. 192 : : 2014/11/10(月) 22:59:13
    お久しぶりです。
    相変わらずの文章力で、本当に尊敬します。
    これからも期待してます (`・ω・´)
  193. 193 : : 2014/11/10(月) 22:59:27
    最後なんか感動しました!乙です!

    次回作にも期待です!(^ω^)
  194. 194 : : 2014/11/10(月) 23:33:51
    >>191
    とまたん様

    ありがとうございます!
    無駄な文章が多々あったと思いますが、サクサク読めたと仰っていただき嬉しいです!



    >>192
    あずきさん
    ご意見ありがとうございます!!
    いやあ、あずきさんにも負けないようにしなきゃw
    お互い未分類頑張りましょう☆



    >>193
    松田さん
    コメントありがとうございます!!
    いつもたくさんの応援嬉しいです(^_^)
    次回作はちょっと先になってしまいますが、今回みたいに頑張って書ききります!

  195. 195 : : 2014/11/11(火) 21:53:12
    す、助様。ww
    面白い!の一言しかありません。私はあんまりライトノベル読まないんですけと面白くて読みやすかったです!
    続きが気になる!
  196. 196 : : 2014/11/11(火) 22:11:40
    恵林さん
    いつもいつも、本当にありがとうございます!!
    おもしろいと言って頂けて嬉しいです(^_^;)が、恐縮ですw



    また、もし皆様が分からなかった点、こうして欲しかった点等、遠慮なく教えて頂けますと嬉しいです

    正直、今回は反省点ばかりです。
    物語のキーとなる冒頭でのお話が、盛り上げではなく説明のような形になっていましたし・・・

    その他もたくさん、不備等がありました


    もし皆様がよければ、遠慮なくそういった点を教えてください!
    言いにくければ名無し様でも全然構いません!
    またお待ちしておりますー
  197. 197 : : 2014/11/14(金) 04:25:30
  198. 198 : : 2014/11/14(金) 09:48:32
    主人公の特殊性の発覚からの次回への引きはとてもよかったと思います。お疲れさんです。
  199. 199 : : 2014/11/14(金) 21:01:06
    助さんってなんでいろんな知識持ってるんですか?
  200. 200 : : 2014/11/16(日) 01:24:08
    助さんやっぱり凄いですね!
    続きも期待してます!
  201. 201 : : 2014/11/16(日) 03:05:49
    皆さんコメントありがとうございます!!!
    知識・・・知識・・・いえ、そんなことありませんよー
    ただ書きたいものを書いてるだけです(^_^;)
  202. 202 : : 2014/11/16(日) 12:29:00

    執筆お疲れ様です。
    私はこういうアクションやバトルものの話が大好きで楽しく読ませていただきました!
    設定がしっかりしていてとても読みやすかったです。
    次回作も期待しております!!
  203. 203 : : 2014/11/30(日) 20:17:04
    面白かったです!
  204. 204 : : 2014/12/03(水) 17:04:17
    大人はすごい。乙。
  205. 205 : : 2014/12/27(土) 13:08:54
    最高ですね!
    そして最高の敬意をッ
  206. 206 : : 2015/01/20(火) 01:15:21
    怖かったです!!!!
    続きが気になります!
  207. 207 : : 2015/02/03(火) 19:22:57
    最高です!続きに期待してます!助さんに心臓を捧げよ!
  208. 208 : : 2015/02/15(日) 02:30:51
    >>196
    むしろその説明があってよかったと僕は思いましたが
  209. 209 : : 2015/02/22(日) 22:14:17
    What an interesting story this is!
    Your story is most interesting I have ever read!
  210. 210 : : 2020/10/27(火) 14:15:11
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
  211. 211 : : 2023/07/04(火) 22:04:15
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
    toyama3190

    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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