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Halloween story 卿姉さんと合作
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- 1 : 2014/10/25(土) 19:26:44 :
- ハロウィーンが近づいてまいりました。
そこで今回は、私の尊敬する卿姉さんと短編で合作をすることにしました。
読者の方々に楽しんでいただけるような作品にしたいと思います♪
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- 2 : 2014/10/25(土) 19:54:28 :
- 期待っす
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- 3 : 2014/10/25(土) 22:05:53 :
10月31日、それは恐ろしくも可愛らしいモンスター達が美味しい菓子を求めて紛争する。
そんな日である。
ニファ「はぁ?ハロウィンパーティー?」
ハンジ班所属であるニファは、隣に座る同期の女性兵士に向かって首を傾げた。
「そうそう!ハロウィン!仮装とかしてさ!」
ニファ「呑気なんだから。私達には浮かれてる暇なんてないのよ?」
呆れの含んだ表情を浮かべるニファは、隣の同期の次の言葉で一気に自分の意見を変えることとなる。
「え~、主催はハンジ分隊長らしいよ?」
ニファ「それは絶対参加ね!!」
勢い良く立ち上がるニファに、今度は同期の兵士の方が呆れた表情をする番であった。
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- 4 : 2014/10/25(土) 22:17:44 :
「本当に、ニファってハンジ分隊長好きだよね」
ニファ「勿論よ!」
力強く肯定するニファに、更なる幸福がやってくる。
ハンジ「ニファ!ニファはいないかな?」
ニファ「は!此方におります!!」
ハンジの声が彼女の名を呼んだ瞬間に、ニファは全速力でその方向へと走っていった。
残された者は苦笑いを浮かべたとか。
ハンジの元に向かうと、彼女の目の前には、もはやハンジ分隊長などという幹部はいなかった。
あるのは黒いスレンダーなドレスと、頭に白い布のようなものを被った…世で言うシスターの姿!
ニファ「ハンジさん!その格好は…」
ハンジ「えへへ♪ハロウィンだからね!ニックに借りてきてしまったよ!似合うかな?」
少し照れ臭げに言うハンジに、ニファは「とても!」と大きな声で肯定した。
ニファ「あの男も、たまには役に立ちますね!」
ハンジ「え、うん。そうだね」
ハンジは一瞬苦笑いを浮かべたが、次の瞬間に人差し指を自慢げに立てて、ニファの腕を取った。
ハンジ「ニファも仮装しよう!」
ニファ「私もですか!?」
ハンジはニヤリと妖艶に笑うと、
「ニファと楽しみたいんだ」
そう、口説き文句を言ってのけた。
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- 5 : 2014/10/26(日) 19:25:09 :
- その口説き文句を聞いたニファは頬を朱色に染めながら、
「もう、ハンジさんたらっ!冗談はやめてくださいよ!」
そう平静を装おって言った。
ニファの内心は本人以外は知らなかった。
ハンジ「ニファに似合うと思って私が選んだ仮装の衣装があるから、私の部屋に来てくれないかい?」
そう言って、ニンマリと笑うハンジ。
いくら、シスター姿と言えど、少し怪しげに笑うハンジは今にでも悪魔のツノが生えてきそうだった。
しかし、ニファは〝ハンジがニファのため選んでくれた衣装〟というセリフで舞い上がっていた。
ハンジ「ニファも参加してくれるよね?」
そう言うと、ニファはコクコクと頷き、
「はい!参加させていただきます!!」
そう元気に返事をしたのだった。
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- 6 : 2014/10/26(日) 19:33:05 :
ハンジに連れられ、ニファはハンジの部屋へと向かった。
何回か仕事でハンジの部屋には入ったことがあったが、いつも書類やら本が高く積み上げられていた。
ハンジ「さあ!入って」
ハンジはそう言いながら、ドアを開けた。
ハンジ「ニファに似合う衣装を持ってくるね」
そう言って、ハンジは行ってしまった。
ハンジの部屋はいつもと違い、机の上には書類が積み上げられていなかった。
「大きな本棚…」
ニファは思わず言葉が漏れた。
大きな本棚はニファの身長よりも、高く、横から横へと本がぎっしりと埋まっていた。
ニファはたくさんある本の中から、一つ手に取ろうとした。すると、
「お待たせー!」
そうハンジがウキウキ声で帰ってきた。
ニファは慌てて、手を引っ込めた。
ハンジは衣装を手に取り、
「ジャジャーン!」
と言って、ニファに衣装を見せる。
ニファの衣装は黒いワンピースのようなものだった。
ニファはなんだろうと思いながら、その衣装を着始めたのだった。
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- 7 : 2014/10/26(日) 20:31:35 :
ワンピースを身に纏い、仕上げと言わんばかりにハンジはニファの頭に黒いとんがり帽子を被せた。
ハンジ「はい!完成♪」
ハンジの言葉に、ニファは何か自分の全体図を見れるものはないかと辺りをきょろきょろ見渡すと、都合良く床に鏡が転がっていた。
其れを手に取り、ニファは自分の姿を見つめる。
黒いワンピースは通常よりも少し短く、肩が露出していてなかなかに大人っぽい。
とんがり帽子はワンピースと反してニファには大きいのか、上を向いていないとカポリと自分の視界を暗くしてしまう。
ニファ「あの、ハンジさん…?この格好は?」
ハンジ「うん!やっぱり似合うね!こういうのは若い子が着た方が可愛いし!」
ニファ「なんの、仮装なのですか?」
ハンジ「うん!本で読んだんだけど、昔から西洋で魔女と言われている者の仮装らしいよ!」
ニファ「へえ~」
ニファはハンジの物知りさに尊敬の眼差しを向ける。
ハンジ「さて!ニファが可愛くなったことだし、誰に見せ付けてやろうかなぁ~♪」
うふふ、と楽しそうに笑うハンジに、ニファは微笑ましい気分になって、自分の姿を再度見つめた。
普段ならば恥ずかしくて着れないけれど、
この人のためなら、とニファは口角を曲げる。
ハンジ「よし!リヴァイの所に行こう!」
その提案に、ニファの意志は呆気なく反転した。
「お待ち下さい!」と一歩を踏み出す。
ハンジ「ふぇ?」
ニファ「あのチ…いえ、リヴァイ兵長にハンジさんの其のお姿を見せるなんて反対です!」
ハンジ「なんでよ?」
こてりと首を傾げるハンジにニファはぐぐぐと唇を噛む。
ニファ「とにかく駄目です!」
ハンジ「え~」
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- 8 : 2014/10/26(日) 20:46:32 :
ハンジ「せっかく、リヴァイの衣装も用意したのに…」
悲しそうに俯くハンジに、ニファの意志はまたも揺らぐ。
ニファ「あ…その、」
ハンジ「でも、ニファが嫌なら…仕方ないよね…」
ニファ「あぁううう、分かりましたよ!行きましょう!私が悪かったですぅう!」
半ば涙目でハンジの服を掴むニファに、彼女の愛しき上司はニンマリと悪戯げに笑った。
人差し指を口元に当てて片目を瞑ると、
ハンジ「ニファならそう言ってくれると思った♪」
と微笑む。
ニファ「は、反則ですよ、ぶんたいちょお~」
ハンジのその妖艶な表情に、ニファは思わず顔を真っ赤にして、そう弱々しく降参の手を上げた。
リヴァイの部屋へと向かおうと、廊下を歩いている最中に、ニファは内心服を脱ぎ捨てて逃げ出したい気分になった。
二人して仮装している上に、格好が異例のものなので、誰もが嫌でも振り向いてしまうのだ。
ニファ(でも、ハンジさんが選んでくれたものだし…)
この事実が辛うじてニファの理性を繋ぎ止めていた。
ハンジ「いやあ、目立つね!きっとニファが可愛いからかな♪」
ニファ「なっ!?ハンジさんの魅力ですよ!」
其処で彼女は思い出した。
自分の上司が今、大勢の男に見つめられているということに。
ニファ「悪い虫は駆逐よ…」
ぼそりと呟く彼女は、まさにどこぞの人類最強にならぶ殺気を纏い始め、それにハンジは訳が分からず首を傾げた。
が、周りの兵士達は其れを感じ取り、本能に従い後退る。
彼女達の道を邪魔するような肝の据わった人間は、流石にいなかった。
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- 9 : 2014/10/26(日) 21:21:31 :
- リヴァイの部屋に着くと、ハンジはリズミカルにドアをノックする。
ニファは、ハンジが相当ノリノリだということが行動から読み取れた。
「誰だ…?」
と不機嫌気味に言いながら、リヴァイは戸を開けた。
リヴァイがドアを完全に開けた瞬間、ハンジはリヴァイ用の仮装の衣装をリヴァイに向かって、投げた。
すると、リヴァイの頭にパサリと落ちる。
ニファはハンジのあまりの早さに何が起こったのか状況がよく掴めなかった。
リヴァイの頭には白い布のようなものが被さっている。そのせいか、リヴァイの顔が見えない。
ハンジ「ハッピーハロウィン♪リヴァイ」
ハンジは笑いを堪えながら、そう言った。
ニファはリヴァイの今の有り様を見て、思わず吹いてしまった。
リヴァイ「どういうことだ…?クソ眼鏡」
白い布を被ったリヴァイの怒りはピークに達しそうな勢いだった。
ハンジ「リヴァイは知らないの?ハロウィンだよ?盛り上がらずにはいれないじゃん!」
ハンジはいつもの奇行種っぷりのテンション。
ニファは、リヴァイの仮装の衣装に意味がわからず、
ニファ「チ…リヴァイ兵長は何の仮装ですか?」
と訪ねた。すると、ハンジはウィンクして、
ハンジ「そんなの決まっているじゃないか。お化けだよ、お化け♪背の低いリヴァイには丁度良いと思ってね」
その言葉でまたニファは吹き出しそうになるが、何とか堪えたのだった。
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- 10 : 2014/10/26(日) 21:30:39 :
- リヴァイ「クソ眼鏡、削ぐ!」
そう言って、リヴァイはどこからか、立体機動装置の時に使うブレードを持ち出し、追いかけてきた。
ハンジとニファはすかさず逃げる。
リヴァイの頭に被さっている布は、とても大きく、リヴァイが走っても取れることはなかった。
周りの兵士から見れば、お化けがハンジとニファを追いかけている、という変わった状況になる。
ハンジ「あはははっ♪」
ハンジは楽しそうに笑った。笑った顔を見たニファは少し顔がほころぶ。
しばらく走るといつの間にかリヴァイは後ろにはいなかった。
怒りのあまりブレードを持ち出し、ハンジ等を追いかけていたリヴァイだが、途中で見失ってしまった。
しかし、白い布を被ったままだと、あまりよく周りが見えない。
ポスッと誰かにぶつかった。
リヴァイ「悪いな…」
そう言って、ハンジ等を探そうとしたが、誰かに捕まれる。
そして、誰かがリヴァイの白い布をパサッと取った。
取った人物は女と言えど、美しく凛々しい顔立ちのナナバだった。
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- 11 : 2014/10/26(日) 21:44:52 :
ナナバは予想はしていたものの、白い布の中から出てきた男を認めると、馬鹿にしたように噴いた。
ナナバ「ぶふっ!」
目に涙まで浮かべて口元を押さえるナナバの姿は誰もが見とれる程の美しさであったがいかんせん。
目の前の男は苛つきを抑えるのに必死である。
リヴァイ「テメエ…ナナバ…」
ぐぐぐとブレードを握る拳に力を入れるが、ナナバの笑みはおさまるところをしらず。
ナナバ「くくくっ…ふっ、…あはは!!」
リヴァイ「クソが…死ぬ準備は出来てんだろうな?」
ナナバ「ふふっ、…ごめんごめん…、つい…ね?リヴァイがハンジの遊びに付き合ってあげてると想像したら止まらなくなっちゃって…」
リヴァイ「…付き合ってねえ!!」
間髪入れずに叫んだリヴァイに、ナナバは再び白い布を被せた。
ナナバ「いやいや、似合ってるよ。」
リヴァイ「ざけんな!」
今度こそリヴァイはハンジとニファを追おうとするが、後ろからナナバが面白そうに付いて来るのに気付いて舌打ちを披露する。
ナナバ「ひどいなぁ、私もいくよ」
リヴァイ「来るな、邪魔だ」
ナナバ「良いでしょ?私もハロウィンに参加したいのさ」
クスリと笑うナナバに、リヴァイは眉をひそめる。
リヴァイ「やりてえならクソ眼鏡を捕まえるのに協力しろ。アイツ、今回は乗る気だからな、衣装は多く用意していると思うぞ」
ナナバ「仕方ないな。では一時協力しますか」
二人は口角を曲げると、指を鳴らしてハンジの走っていった方向へと歩を進めた。
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- 12 : 2014/10/27(月) 20:05:43 :
- ナナバ「しっかし、白い布を被っただけで仮装か~。何の仮装なの?」
リヴァイ「お化け…らしいがな…」
リヴァイは少し遠くを見て言った。
ナナバは納得したようで、「ふーん」という音を漏らした。
しかし、人類最強と男のように美しくナナバが並ぶと、兵団の兵士の誰もが振り返った。
ナナバ「やっぱり、リヴァイは人気者だねぇ~」
少しナナバは面白そうに言った。
リヴァイとしては、あまり面白いものではない。
リヴァイ「いや、てめぇを見て振り返っているんだろ?」
そう言うと、ナナバは
「そうかな~」
そう自覚なしな言葉を述べた。
人類最強のリヴァイ、そして調査兵団随一の美男顔の女ナナバを見る機会は、いくら同じ兵団だとしてもそう見る機会はない。
だから、見ることができた兵士達は騒ぎ出すほど。
リヴァイ「それより、クソ眼鏡を見つけ出す手掛かりを探さねぇと…」
ナナバも
「うーん…そうだねぇ」
と悩む。
しばらく考えた末、ナナバはある考えを思い付いた。
ナナバ「あ、そうだ。そこらにいる、兵士に訊けばいいんじゃない?」
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- 13 : 2014/10/27(月) 20:42:40 :
ナナバの提案による結果、
哀れな巻き込まれ被害者はゲルガーであった。
ゲルガー「あぁ、ハンジとニファか…」
ナナバ「そうそう」
面倒臭そうに眉をひそめると、口を開く
ゲルガー「さっきハンジには自慢された。ついでに今夜のハロウィンパーティーには美味い酒用意してるって言われたぜ」
ナナバ「流石はハンジだね」
逃げながらも確実にハロウィンパーティーの参加者を増やそうとしているのだ。
ゲルガー「本当だよなぁ!酒一つで釣ろうなんざ…俺も舐められたもんだぜ」
ふっと、得意げに笑うゲルガーは、確実にハンジの部屋へと向かっていた。その行動に、ナナバとリヴァイは似たような顔をする。
呆れ一色の顔。
ゲルガー「な、なんだよ!別に俺は仮装しないと参加出来ないって言われてハンジに衣装を借りに行くわけじゃねえぞ!」
必死に訴えるゲルガーの肩にナナバは手を置いた。
ナナバ「ゲルガー…」
ゲルガー「あん?」
ナナバ「馬鹿がバレるから黙りなよ」
彼女は誰もが魅了されるような美しい笑顔をゲルガーに、向けた。それはゲルガーの反論の言葉を全て掻き消してしまうような効力があったという。
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- 14 : 2014/10/27(月) 20:59:23 :
ゲルガー「えっと、だな…ハンジ達はもう少し勧誘したら部屋に戻ると思うぜ。俺に衣装貸すために戻るって言ってたしな」
苦笑いを浮かべるゲルガーを余所に、
ナナバ「だってさ、どうする?」
リヴァイ「…はっ、今日はハロウィンだ」
リヴァイはパサリと自分の羽織っている白い布を翻し、ニヤリと意地悪く笑った。
リヴァイ「望み通り、イタズラしてやろうじゃねえか」
ナナバは其れを聞いて
ナナバ「おやおや、怖い怖いと」
微笑んだ。
ハンジとニファは、リヴァイが追いかけて来ない事を確かめると、兵団内を歩き回ってはハロウィンパーティーの勧誘を行っていた。
ニファ「ゲルガーさん!参加してくれそうでしたね!」
ハンジ「完璧にするさ!彼は酒があるところを無視して通り抜ける事の出来ない男だからね!」
ニファ「流石はハンジさんです!」
逃げる最中にちゃっかりとハンジの手を握っているニファは現在進行形で大満足であった。
ニファ「~♪」
鼻歌まで披露する辺り、どれほど嬉しいのかはお分かりになるだろう。
ハンジ「ニファも、楽しんでるようだし、最後の一人の勧誘に行って部屋に戻ろうか」
ニファ「最後の一人?ですか」
ハンジ「うん!」
ハンジはニコリと笑うと、
ハンジ「エルヴィンだよ♪」
と言った。
ニファ「団長ですか!?あの人が仮装って…」
ハンジ「どうせなら、私は彼にも少しくらいは楽しんで欲しいからね」
普段から仕事詰めのエルヴィンの休み時間として使って欲しいというのが、ハンジがパーティーを企画した理由の一つである。
ハンジ「さ、行こう!」
ニファ「はい!」
今更ながら、ハンジの優しさにニファは心を踊らせた。
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- 15 : 2014/10/27(月) 21:59:42 :
- エルヴィンの部屋というのは本部の最上階にあった。元々、本部は四階建ての造りになっている。
ハンジはウキウキしていた。ニファも同様ウキウキしているが、それは違うことでのウキウキだった。
エルヴィンの部屋にたどり着くと、ハンジは上機嫌にコンコンとノックをした。
中から、エルヴィンの声がした。
エルヴィン「どうぞ、入ってくれ」
ハンジは上機嫌に
「入るよー♪」
と言って、エルヴィンの部屋のドアを開けた。
エルヴィンの部屋はすごく清潔感溢れる部屋だった。
エルヴィンの部屋にはまだ一度しか入ったことがなかったニファは、エルヴィンの部屋をじっくりと見る。
壁には歴代の調査兵団団長の写真が飾られ、机の上にはたくさんの書類や本が置かれている。
エルヴィン「ハンジ、何の用だ?」
エルヴィンがそう訊くと、ハンジは待ってましたと言わんばかりに、言った。
ハンジ「今日はハロウィンだから、仮装パーティーをしようと思って、エルヴィンを誘いに来たんだよ♪」
エルヴィン「それは楽しそうだな、だが私は仕事がまだ終わっていないんでね、残念だけど断らせていただくよ」
エルヴィンは少し残念そうに笑った。
ハンジは少し不気味に笑いながら、
「超高級のお茶をもらったんだけどね、エルヴィンにあげようかと思ったけど、ハロウィンパーティーでみんなで飲むことにするよ」
ニファの目には微かだが、ハンジに悪魔のような尾が見えた。
エルヴィン「…わかった、参加しようじゃないか」
ニファは驚いた。こうも簡単に団長であるエルヴィンが参加することに。
そして改めて、ハンジをすごいなと感心したのであった。
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- 16 : 2014/10/27(月) 22:18:38 :
エルヴィン「だが、仕事は仕事だ。私はハロウィンパーティーの時間までは仕事をしているよ。構わないな、ハンジ」
ハンジ「うん、勿論さ。エルヴィン」
コクリと頷くハンジに、エルヴィンは申し訳無さそうに苦笑を浮かべた。
エルヴィン「気を使わせてしまったかな?」
ハンジ「ん?何のことかな?ね~ニファ♪」
ニファ「はい?ハンジさんが団長の心配をしてわざと此のパーティーを開催したことは内緒なんですか?」
仮面の笑顔を作るハンジに、ニファは少しだけ意地悪な顔をした。彼女はハンジの優しさが好きだが、何よりもハンジが好きなのだ。
ハンジは予想通り、慌てた顔をする。
仲間だと思っていた相手にネタばらしをされれば誰でも驚くものだ。
ハンジ「に!ニファ!?」
ニファ「ハンジさん。回りくどくてはいけません。団長は鈍感なのですから、直接言わなくちゃ!」
拳をきゅっと握ってパチリと片目を瞑る可愛らしい姿に、ハンジの中に抱き締めたいという欲求が生まれたが、すんでで抑える。
エルヴィン「…ハンジ?」
ハンジ「え、と…だ、だからね?その…貴方は頑張りすぎたから、少しは休めって、ててて、ことだよぉ!」
ハンジは顔を真っ赤にすると、ニファの後ろに隠れる。
ニファはそんなハンジを背にやると、嫌に自信満々に人差し指をぴんっとエルヴィンに向けた。
ニファ「そういうことですから!団長!ハンジさんの優しさを無碍にしないように、注意して下さいね!」
挑むようにニファはエルヴィンを見つめる。
ニファ「もししたら、私、黙っていませんから」
その強過ぎる眼力に、エルヴィンは降参だと両手をあげた。
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- 17 : 2014/10/27(月) 22:27:02 :
ハンジ「う~、別にエルヴィンの為だけじゃないからね?本当だからね!」
なおも背中で照れ隠しをするハンジに、ニファはよしよしと爪先立ちをして、彼女の頭を撫でた。
ニファ「分かってますから。さ、行きましょう」
エルヴィン「ハンジ、ニファ、」
二人が扉を開けたときに、エルヴィンはニコリと微笑む。
エルヴィン「ありがとう」
ハンジ「エルヴィン、喜んでくれたかな」
えへへと口元をにやけさせるハンジの気持ちはニファも分からんでもない。
ニファ「団長のあんな優しい顔、初めてみました」
ハンジ「ん~へへへ」
二人は暫くエルヴィンの笑顔への喜びに浸っていたが、ゲルガーとの約束を思い出した。
ニファ「あ!仮装の衣装、貸す約束でしたね!早く戻りましょう!」
ハンジ「ああ、そうだね。よし、行こう!」
自然に腕を差し出してくるシスターに、魔女はニコリと微笑んで、それに応える。
ニファ「はい!」
向かう先に何が待っているか、知らずにー
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- 18 : 2014/10/28(火) 05:56:16 :
- ハンジはエルヴィンを誘うことに成功してウキウキしていた。
そんなハンジを見て、ニファは顔がほころんだ。
ハンジの部屋へと着き、上機嫌にドアを開けると…。
いきなり、ハンジに何かが絡み付いた。
ニファ「ハンジさん?!」
ニファが慌ててハンジのもとへ行こうとしたが、ハンジは引っ張られ、吊るされる状態になる。
ハンジに絡まっているのは、蜘蛛の巣のような網目の網。
ハンジ「さては、リヴァイだな…?」
ハンジはリヴァイがやったことだと気づく。
ニファはハンジに絡まっている網をほどこうとするが中々ほどけない。
「ご名答だ、クソ眼鏡…」
すると、後ろから声がした。
ニファが振り返ると、そこにはリヴァイがいた。先ほどの白い布は被っていない。
ニファ「リヴァイ兵長っ!何をやっているんですか!?」
ニファがそう言うと、リヴァイはフッと鼻で笑う。
リヴァイ「〝何をやっている?〟そんなの決まっているじゃねぇか。悪戯だよ、悪戯」
リヴァイは最高の極悪人面で笑ったのだった。
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- 19 : 2014/10/28(火) 06:18:04 :
- リヴァイの後ろから、カボチャを被った人物がやってくる。
リヴァイ「てめぇはそれを選んだのか…」
リヴァイ呆れ顔で言うと、カボチャの被り物を被った人物は被り物を外す。
カボチャを被っていた人物は意外な人物だった。
ハンジ「ナナバ?何で…」
ハンジは少し驚き気味に言う。ハンジと同様、ニファも驚いていた。
ナナバ「私もハロウィンパーティーに参加したくてね」
そう言って、ウインクをする。そして、ナナバは美しい微笑みを浮かべた。
ニファ「ハンジさんを離してください!」
ニファがそう頼むように言う。
しかし、ナナバとリヴァイは不敵な笑みを浮かべる。
リヴァイ「ニファよ、言ったろ?」
リヴァイの顔には、悪魔のような笑みが浮かんでいる。
ナナバ「ハンジには悪いけど、悪戯をしなくちゃね…」
ナナバとリヴァイはどこからか、絵の具のようなものを取り出した。
ニファの額には冷や汗が垂れていた。
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- 20 : 2014/10/28(火) 06:20:01 :
- ニファが登場しただけで嬉しい俺って…
期待です!
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- 21 : 2014/10/28(火) 22:09:16 :
吊されているハンジは、先程の戸惑いを乗り越え、今では二人がどんなイタズラを披露してくれるのかを楽しんでいた。
しかし、である。
ニファとしてはこのまま黙っているわけにはいかなかった。
ニファ「ハンジさんは、私が守ります!」
ニファはハンジの前で両手を広げ、防御の体制に入った。
ハンジ「ニファ…なんて、良い子なんだ!」
ナナバ「ふふふ、いいかい?其処を退かなきゃ、ニファから悪戯しちゃうよ?」
ニファ「…か、覚悟の上です。」
リヴァイ「ニファ、お前の覚悟は受け取った…だが!」
リヴァイとナナバは一斉に絵の具を懐から出した筆に付けると、ニファに向かって其れは向けられる筈だった。
しかし、流石は歴戦の兵士と言えようか。
リヴァイとナナバはニファの隙を見つけ、素早く彼女の後ろのハンジへと筆を走らせた!
ハンジ「わひゃ!?」
ナナバの筆がハンジの頬に円を描く。
冷たくも柔らかな感触にハンジはびくりとする。
ナナバ「ふふっ、可愛い反応だね」
ニコリと笑みを浮かべるナナバに、見惚れそうになったハンジの顔面に新たな悪戯がやってくる。
びしゃあ!!
ハンジ「!!?」
それはバケツに溜められたら絵の具と水が混ぜられたもの。
赤や黄色といったハロウィンにピッタリの色がハンジの頭から下までを彩る。シスター服は黒であったからか、少し濃いめに作った絵の具は見事にその服へと浸食を始める。
リヴァイ「ざまぁみろ」
ハンジの目の前でそう言ったリヴァイはニヤリと口角を曲げる。
ハンジ「…」
其れを見ていたニファはあわわと口元に手を添える。
ハンジ「…ふっ、ふふふ」
濡れたまま笑い出すハンジは、自力で網から抜け出し、ポキリポキリと関節を鳴らす。
ハンジ「こんの…クソチビが」
ニファは初めて見た。
ハンジのキレ顔であった。
ハンジ「ぶん殴る!!」
リヴァイ「やれるもんならな!」
取っ組み合いを始めた二人を余所に、ナナバは肩を震わせて笑う。
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- 22 : 2014/10/29(水) 21:17:35 :
- やはり、いくらハンジと言えども、元ゴロツキのリヴァイには勝てなかった。
ニファはあることに気づいた。それは、ハンジの衣装が絵の具以外では汚れていないという点だった。
激しい喧嘩の中だったのに、破れてもいない。
これは、リヴァイが気を遣ったということなのだろうか。
ハンジ「リヴァイのクソッタレ!」
ハンジは仰向けに大の字に倒れ、リヴァイに罵声を浴びせる。
しかし、リヴァイの耳には入っていないようで、ナナバに不敵な笑みをやる。
ナナバは大爆笑し、腹の曲げて笑っている。しかし、そんな笑い顔でさえ、美しく見えるのは何故だろうと、ニファは不思議に思った。
ナナバ「ゲルガー、そろそろ入ってきなよ」
ナナバはゲルガーを呼んだ。
ゲルガーは扉を開けて入ってきた。いや、ゲルガーと呼べるのだろうか。
ニファ「ゲ、ゲルガーさん?」
ゲルガーらしき人物は包帯なのかトイレットペパーなのかはわからないが、それをぐるぐる巻きにしていた。
ゲルガー「ちょ、ナナバテメェ、これは酷ぇじゃねぇか?」
顔は巻かれていないため、ゲルガーの少し不機嫌そうな顔が見える。
リヴァイ「そりゃ、傑作だな」
リヴァイがクックッと笑った。それと同時にナナバも笑い出す。
ハンジが仰向けの状態からガバッと起き上がり、ゲルガーを見るなり、目を輝かせたのだった。
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- 23 : 2014/10/29(水) 22:27:26 :
ハンジ「ふわぁあい!ゲルガーはミイラ男だね!」
今にも抱きつかんばかりの勢いに、ゲルガーは危機感からハンジと距離を取った。
ゲルガー「しっかし、こりゃあなかなかカオスな面々だよな!魔女にシスターにかぼちゃにお化けにミイラ男!」
ナナバ「そう?メジャーな所だし、普通じゃない?」
ハンジ「エルヴィンも誘ったよ!衣装は何にしようかな…吸血鬼が無難だけど…、あ!いっそ狼男とかどうよ!?」
ハンジの提案にその場の全員が想像した。
そして、一言。
似合いすぎて面白くない。
ナナバ「いっそ、犯罪臭むんむんにミイラ男にすれば?ゲルガーひん剥いてさ」
ゲルガー「ナナバさん何言ってるの!?」
流石のゲルガーも愛する酒を喉に通すほどの余裕をなくし、勢い良く叫んだ。
ハンジ「あ、じゃあ私のシスターを…」
「やめなさい」
見事に全員がハモったのであった。
それにハンジは頬を膨らませた。
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- 24 : 2014/10/31(金) 18:53:01 :
- ハンジ「えーじゃあ、どうすんのさ?」
ハンジがそう言うと、一同は頭を悩ませた。しかし、1人の提案でそれは解決することになる。
ナナバ「エルヴィンにイタズラかお菓子か、それをたずねればいいんじゃないの…?」
その場にいた一同は納得したのだった。
ニファ「だけど、エルヴィン団長、お菓子持ってますかね…?」
ニファが恐る恐るたずねると、リヴァイが、
「持ってるだろ、多分」
と適当に言った。
本当に大丈夫なのだろうかと、ニファは思いつつも事は進んで行く。
ナナバは自分の出した案が意外に好評だったのと、エルヴィンがイタズラされることを想像し、1人で肩を震わせていた。
ゲルガー「しっかし、ハンジ分隊長に、リヴァイ兵長。エルヴィン団長がお菓子を持っていなかったらどうするんですかい?」
ゲルガーがそう訊くと、ハンジとリヴァイは悪魔のような笑みを顔に浮かべた。
リヴァイ「そんなの決まってんだろ…?」
ハンジ「イタズラをするんだよ、最高のね」
この時ゲルガーは思った。この二人は実は悪魔なのかもしれない、と。
ナナバ「イタズラってもねぇ、何をするの?」
しれっと悪気なく言うナナバに、ニファとゲルガーは顔を見合わせたのだった。
-
- 25 : 2014/10/31(金) 19:38:04 :
ニファ「…ううむ、団長にイタズラというだけでも恐れ多いですよね~」
ゲルガー「確かにな~、もう何が飛んでくるのか…いや、飛ばされるのか」
ニファ「何言ってるんですか?ゲルガーさん」
遠い目をするゲルガーに、ニファは首を傾げる。どうせ悪さをして酒でも取り上げられたのだろう。
さして重要視もせずに、ニファはニヤニヤと笑う尊敬する上司に目をやった。欲目なのか、ニファにはハンジの表情が意地悪というよりも幸せそうにみえた。
ハンジ「ふふっ、」
ニファ「ハンジさん、ほどほどにですよ?」
ハンジ「分かっているさ。何せ、調査兵団の長に悪戯しようってんだからね、半端な悪戯はしないさ」
ニファ「いや、…そうじゃなくて、…あれ?」
団長終了のお知らせがニファの頭に届いたとか、いないとか。
リヴァイ「エルヴィンへの悪戯をする前に、一つ聞きたいんだがクソ眼鏡。ハロウィンパーティーの準備の方はどうなんだ?」
ハンジ「…大丈夫だよー!食堂のおばちゃんにいつもより甘いものにってお願いしたからね!私の給料全て注ぎ込んだからいつもよりは豪華だよ」
リヴァイ「ほお、そりゃあ気分いいな」
ハンジ「でしょでしょ!」
えっへんと胸を張るハンジに、ナナバはニコリと微笑む。
ナナバ「じゃあ私もおばちゃんの手伝いに…」
ハンジ「いや。それはいいから」
ナナバ「…なんでよ?」
ハンジ「…お金が勿体なくなるから」
逃げるハンジをナナバは貼り付けた笑みで追い掛けた。
-
- 26 : 2014/11/02(日) 17:04:40 :
- ナナバ「さて、と。エルヴィンへの悪戯をどうしたもんかな…?」
ナナバは少し悩んだ顔で言った。先ほどまで追いかけられていたハンジはというと…。
ニファに湿布を貼られているところであった。
ゲルガー「ナナバ、おっかねぇ…」
ゲルガーはナナバに聞こえないようにボソリと言った。ナナバの耳がピクリと動く。
ナナバ「ゲルガー、何か言ったかなぁ?」
ナナバがそう訊くと、ゲルガーの顔から血の気がサッとなくなる。
ナナバのいつもの爽やかな笑みは残っておらず、不吉な笑みをしている。
ゲルガーは震えた声で、
「な、何にも、い、言って、ね、ねぇよ!」
ゲルガーがそう言うと、ナナバは「ふーん」と言って、また考えて始めた。
リヴァイ「難しいところだな、そういえば、テメェ等知ってるか?」
リヴァイがそう訊くと、ハンジを除く三名が首を傾げた。
リヴァイ「エルヴィンってヅラなことを」
そう言うと、ナナバが
「へー、エルヴィンってヅラだったんだ」
ナナバが面白そうに言った。
この時、ゲルガーは悟った。何か悪いことが起きる、と。
-
- 27 : 2014/11/02(日) 17:15:45 :
ニファ「そんな!団長がヅラだなんて!信じられませんよ!」
今にも泣きそうな表情で叫ぶニファに、隣のハンジは物憂げな笑みを浮かべた。それは今までで見た表情の、何よりもニファの心を痛めさせた。
ハンジ「ふっ、ニファ…信じられなくても、本当のエルヴィンを受け止めなきゃ…部下として…さ」
ニファ「ハンジさん…」
感動劇を余所に、発端のリヴァイは自分の時計を見た。
リヴァイ「おい、パーティーは何時からなんだ?」
ハンジ「んん?ん~9時辺りかな?」
ゲルガー「ならいっそ、9時ぴったに団長に悪戯しちまえばいいんじゃね?」
ハンジ「おお!名案だねゲルガーくん」
ちゅっと投げキッスを披露したハンジに、ゲルガーは遠い目をした。
ナナバ「ふむ、じゃあ少し意地悪して、ハロウィンパーティーの会場で皆の前で悪戯を受けてもらおうか」
ゲルガー「ナナバさん鬼!?」
目を見開くゲルガーの隣で、ニファは片手を挙げた。
ニファ「あの、流石に団長が気の毒では…」
-
- 28 : 2014/11/02(日) 17:22:08 :
ナナバ「気の毒なもんか!」
サド発動をしているナナバは、其れは其れは美しく口角を曲げる。
一瞬とはいえ、ニファはゴクリと生唾を飲みたくなった。
ナナバ「エルヴィンは、ヅラのことをずっと私達に隠して、重い業を背負い続けなくちゃいけなくなるんだ。そんなことは私がさせない」
キリッと瞳を輝かせて、ナナバは続ける。
ナナバ「私は彼を、救いたい」
ゲルガー「それって。ようは皆の前でエルヴィン団長のヅラをバラすってことか?」
ゲルガーは先程から感じていた予感を口にする。
ゲルガーの言葉に、ナナバにハンジとリヴァイの表情が極悪になるのを近くにいたニファは気づいてしまった。
リヴァイ「そうだなぁ、これは人助けだ」
ハンジ「うんうん、エルヴィンのためだよね」
ナナバ「私達が大好きなエルヴィンを救わなくては…」
こういうときだけは意気投合である。
ニファ「皆さん。怖いですよお…」
ニファは半泣き状態で呟いたのだった。
-
- 29 : 2014/11/02(日) 19:03:12 :
- ナナバ「じゃあ、九時まで何やるの?」
ナナバがそう言うと、ナナバを除く四名は時計を見た。時計の針は六時を指していた。
リヴァイ「確かに、暇だな…」
ニファ「そういえば、ハンジ分隊長。エルヴィン団長は何時から始まるとかご存知ないと思いますよ」
ニファがそう言うと、ハンジは
「忘れてた」
ハンジはその頭を悩ませ、そして閃いた。
ハンジ「ニファ、エルヴィンに伝えてきてよ」
そう言ったので、ニファは目を見開く。
「な、何で私なんですか?!」
ハンジ「ニファが一番適任だと思って」
ニファ「そんなのあんまりじゃないですか~!ゲルガーさんとかナナバさんに頼むのじゃ駄目なんですか?!」
ニファは膨れっ面でそう言った。その膨れっ面はまるで、欲しい物が勝ってもらえぬ幼児のようだった。
ハンジ「ニファ、頼むよ。君にしかできないんだ」
ハンジはニファの肩をガシリと掴んでそう言った。ニファは折れて、
「わかりましたよ…」
そう言って、ニファはエルヴィンのもとへ行った。
リヴァイ「お前も残酷だな、部下をこき使うとは」
そう言うと、ハンジは演技で、涙ぐみ
「これも、エルヴィンの為さ」
そう言うと、リヴァイはやれやれとこめかみを押さえた。ナナバの肩が震えていたことは、ゲルガーしか知らなかった。
-
- 30 : 2014/11/02(日) 19:12:56 :
- ナナバ「それより、九時まで私達は何をやっているの?」
ナナバがそう言うと、ハンジが
「ハロウィンらしく、飾りつけをしようじゃないか!」
ハンジ等はハロウィンパーティーの為に飾りつけをするのだった。
ニファはエルヴィンの部屋の前までたどり着いた。中から声が聞こえたので、ニファは扉にそっと耳を近づけた。
エルヴィン「しかし、ハンジが私のことを心配してくれていたとはな。全く、良い部下を持ったものだ」
その言葉を聞いたニファの心境は
「その部下が、団長に酷いことをしてますよ」
そう言いたいほど、団長を裏切っている気がして、心が少し傷んだ。
ニファは盗み聞きをするのをやめて、エルヴィンの部屋の扉をコンコンと叩き、
「ニファです」
そう言うと、中かから、
「入っていいぞ」
そう言う、エルヴィンの声がした。ニファは、
「失礼します」
そう言って、扉を開ける。本日、二回目のエルヴィンの部屋。
エルヴィンの机にはたくさんの書類があった。
エルヴィン「何の用かな?」
エルヴィンが訪ねると、ニファは
「ハロウィンパーティーの件なのですが、九時から行うそうです」
そう伝えると、エルヴィンは時計を見て、
「わかった、伝えに来てくれて、ありがとう」
ニファ「では、失礼しました」
そう言って、ニファはエルヴィンの部屋を去った。
-
- 31 : 2014/11/02(日) 20:19:19 :
廊下を歩いていたニファは、部屋を出る際に彼女を送り出したエルヴィンの最後の笑顔で心が痛んだままであった。
ニファ「悪戯なんかしたら…団長可哀想…かも」
思わず呟いたニファの顔は物憂げであった。
ナナバ「おーい、どうしたの?」
とんっ、と肩に後ろから手が置かれた。
ニファ「ひゃあ!!!?」
ニファは思わず飛び上がると、ナナバの姿を認める。
ニファ「な、な、何故!?」
ナナバ「何故って、飾り付けの材料をリーネに貰いに行ってたのさ」
ニファ「そ、そうでしたか…」
ナナバ「どうかしたの?」
ナナバと歩きながら、ニファは自分の抱えている罪悪感を話した。
ニファ「団長を休ませるために誘ったのに、なんだか…趣旨が違うような…気がして」
ナナバ「ハンジが言い出したのかい?」
ニファ「はい」
こくりと頷くニファにナナバは見惚れてしまうような嬉しそうな表情を浮かべた。
ナナバ「なるほどね、私とリヴァイはハンジにエルヴィンを休ませるための道具として呼ばれたわけか」
ニファ「ふぇ!?ち、違いますよ!企画するのは団長のためだけじゃないって言ってましたから!」
慌ててハンジのフォローに回るニファの頭をナナバはニコリと撫でた。
ナナバ「冗談だよ」
ニファ「へ?」
ナナバ「ハンジは優しい子だからね。そんな事を考えてるなんて思ってないよ」
ナナバは続ける。
ナナバ「それに、エルヴィンの悪戯だってそうさ。ハンジにとって彼は極めて特別な男なんだ。妬けちゃうけどね」
ニファ「…特別」
あの人の特別になれることは、なんて幸せだろうか。
ナナバ「だから、悪戯だなんだ言ってるけど、どうせは彼のために彼が喜ぶことしかやらないよ」
ニカリと笑うナナバの笑顔は、何処かハンジの笑顔に似ていて、ニファはぎゅっと胸を押さえた。
ニファ「確かに…イケメンだわ」
ナナバ「ん?何か言った?」
ニファ「いえ、なんでも…」
-
- 32 : 2014/11/02(日) 20:22:00 :
ナナバ「まぁでも、私は本気だけどね」
ニファ「は、はい?」
恐ろしいほどに真っ黒い笑みを浮かべるナナバにニファは震えた。
ナナバ「え?だから、エルヴィンのヅラの件!だってヅラだったら面白いじゃん」
ニファ「あ、あれ?さっきまで凄い感動な話でしたよね?」
ナナバ「ハンジはハンジ、私は私」
語尾にハートが付きそうな声に、ニファは思った。
ニファ「やっぱりナナバさんはサドですぅ!」
ナナバ「あはは!何を今更、当たり前のことを?」
-
- 33 : 2014/11/05(水) 20:43:39 :
- ナナバ「やっぱり可愛いねー、ニファは。ハンジにはもったいない」
ナナバがそう言うと、ニファの頬は軽く赤く染まる。
「か、可愛くなんか、ありませんよっ!」
そう言って、ニファはスタスタとナナバの前を歩いて言った。ナナバは面白そうに口笛をヒューと鳴らし、ニファの後をついていった。
ニファ「もう、ナナバさんったら…何を考えているのか、さっぱりわからないわ」
そうニファはブツブツと言う。そして、ハンジの部屋へと戻る。
ハンジ「お帰りなさい、ニファ。どうだった?ちゃんと伝えたかな?」
ニファ「はい、伝えましたとも」
ニファがそう言うと、ハンジはニッコリ笑って
「お疲れ様、ありがとね」
そう言って、ニファを見た。ニファの頬はだんだん赤くなる。
リヴァイ「何赤くさせてんだ、早く準備するぞ」
リヴァイにそう言われ、ニファはハロウィンパーティーの準備をするのだった。
-
- 34 : 2014/11/09(日) 11:02:35 :
ついに準備が終了し、ハンジ達は会場に集まった兵士が予想よりも多いことに気づいた。
ハンジ「集まったね~」
ニファ「それもこれも、ハンジさんの人望ですよ!」
ハンジ「え?いやぁ、へへへ///」
リヴァイ「よせ、ニファ。世辞は本人のためにならん」
ハンジ「むむっ」
頬を膨らませるハンジの頭に、ナナバはぽんと手を乗せて微笑んだ。
ナナバ「たまには素直にほめてあげれば?リヴァイ」
リヴァイ「…ちっ、」
舌打ちを披露したリヴァイは、なんとか誉め言葉を探すが、それが声になることは無かった。
ゲルガー「おーい!」
ハンジ「あ、ゲルガー!」
エルヴィンを呼びに行っていたゲルガーが帰ってきたことにハンジは頬を緩ませた。
ハンジ「エルヴィンは?」
ゲルガー「まだ掛かるから、先にパーティーを始めてくれだそうだぜ!」
ハンジ「ええ…」
分かりやすく肩を落とすハンジに、ニファは困ったような顔を浮かべる。
そして、あ!とひらめくと、
ニファ「ハンジさん!」
ハンジ「うん?」
ニファ「私と遊びましょう!」
首を傾げるハンジに、ニファはニヤリと笑ったのだった。
-
- 35 : 2014/11/16(日) 18:21:01 :
- ニファ「では、こちらとこちらの手のどちらかにはキャンディーがはいっています。当たればハンジさんにプレゼント…」
ハンジ「じゃあ、当たらなければ…?」
ハンジが不思議そうにたずねてきた。ニファはニヤリと笑う。
ニファ「もし、当たらなければ、ハンジさんの腕に落書きをここにいる誰かがします」
そう言うと、ナナバがニヤリと笑った。それを見逃さなかったゲルガーは体の芯が凍りついてきた。
ハンジ「何回やるの?」
ニファ「何回がいいですか?」
ニファの悪魔のような笑みはまだ消えない。リヴァイもだんだんと悪魔のような笑みになってくる。
ゲルガーは心で「悪魔じゃない奴はここにいないのか?!」と叫んだ。
ハンジ「じゃあ、十回。確率は二分の一ということか…」
ニファ「では始めましょう、ハロウィンの不思議なゲームを」
ニファは悪魔のように笑い、そしてゲームが始まったのだった。
-
- 36 : 2014/11/24(月) 00:08:39 :
キャンディーの入った手を当てるというシンプルなゲームではあるが、確率五分五分の割に正解率が運であるから選びにくい。
ハンジはうなり声を上げた。
彼女が悩むのを余所に、ナナバとリヴァイはどちらが先に落書きをするかジャンケンをしていた。
ナナバ「いいじゃん!どうせハンジの事だから七回くらいはへまやるって!最初は私に譲ってよ!」
リヴァイ「バカやろう。奴の人生の運を使い果たせば一回と言うこともあるんだ。俺が先にやる」
ほうほう、そんなに私の腕に落書きしたいか貴様等はとハンジは内心怒りを込めて文句を言った。
しまいにはセクハラで訴えるぞ其処!
ニファ「あ!私も落書きしますからね!」
リヴァイ「此処は上司に譲れ愚民共」
何やら必死な兵士長と、
ナナバ「此処は譲れないなぁ」
何やら必死な古株。
ハンジは二人を見て、
「ニファに落書きされたいなぁ」と呟く。
ニファ「ですよね!!」
ハンジ「うん」
一番安全そうだから、と心の中で付け足す。
ニファ「ハンジさん!」
ハンジ「ん?」
ニファはハキハキと瞳を輝かせる。
ニファ「優しくしますね!」
ハンジ「…お手柔らかに…」
彼女のあまりにも純粋な眼差しにハンジはそれしか言えなかった。
-
- 37 : 2014/11/24(月) 18:41:42 :
- ニファ「では、どちらを選びますか?」
ニファはそう言って、ギュッと握った手をこちらに見せる。ハンジは頭を悩ませ、直感的に決めた。
ハンジ「右!」
そう言うと、ニファは残念な顔をした。ハンジはその顔を見て嬉しそうにする。
ニファがパッと右手を開くと、そこには肝心のキャンディーがはいっていないのだ。
ハンジ「あれっ!?ニファが残念そうな顔をしたのに!なんで?!」
ハンジは少し取り乱すと、ニファは悲しそうに
「ハンジさんに落書きをしなくてはいけないと悲しくなってしまったのです」
そう言うと、ハンジはニファの頭を撫でる。
「ニファがそこまで気に病むことではないよ、存分に落書きをして」
ニファ「では、さっそく!」
ニファは先ほどの悲しい顔からは豹変し嬉々とした顔になり、オレンジ色のペンでハンジの腕に落書きをし始めた。
ニファは何を描くのだろうとしげしげと見る。すると、そこに描かれているのは、蜘蛛の巣。
ハンジ「なんで蜘蛛の巣なんて描いてるのっ?」
そう訊くと、ニファは
「ハロウィン=蜘蛛の巣じゃあないですか!」
そう元気に言った。
-
- 38 : 2014/12/09(火) 17:45:19 :
ハンジはなんともおぞましいオレンジの蜘蛛の巣を見やると「なんか微妙なんだけど」と溜め息をつく。
それに隣でハンジの腕を眺めていたナナバは「ふうん」と声を発する。
すると、すすす…と白い腕に目立つ蜘蛛の巣をなぞるように指を滑らせた。
ハンジ「う…っ」
くすぐったいのか、身体を震わせるハンジにナナバは耳元で囁いた。それはそれは意味深に、
ナナバ「似合ってるよ…」
ハンジ「~~っ!ちょっと!セクハラ禁止!」
慌ててナナバから遠ざかるハンジに、当のナナバは肩をすくめる。
ナナバ「セクハラだなんて人聞きの悪い。」
其の瞳は楽しい玩具を見つけた子供のようで。
反射的にハンジはニファの後ろに隠れた。
ハンジ「…うう、ナナバには書かせたくない」
次の自分への被害を想像してか、そんな言葉を漏らすハンジに、リヴァイが名乗り出た。
リヴァイ「なら、次は俺だな」
-
- 39 : 2014/12/09(火) 17:52:23 :
リヴァイの申し出にハンジはブンブンと首を振る。
ハンジ「ぜーったいヤダ!」
まるで駄々を捏ねる子供のようにハンジは抵抗の意志を見せる。
リヴァイ「んだとクソ眼鏡。俺じゃ満足できねえってか?ならナナバにするか?あ?」
意地悪く口角を曲げるリヴァイに、ハンジは其れも嫌だと心の中で叫んだ。可愛い部下が考えたゲームとはいえ、ドSの同期に遊ばれる筋合いはない。
そこでハンジははっと、顔を上げた。
ハンジ「次はゲルガーがいいな!!」
ゲルガー「うえ!?」
少し後ろの方でパーティー用の酒を味見していた彼は突然の指名におかしな声を上げた。
ゲルガー「え?いいよ、俺別に興味ねえし」
ハンジ「そこをなんとか!!」
必死なハンジの瞳と彼女の後ろで不満そうなオーラを出すナナバとリヴァイ、どちらを優先するべきなのかは言わずもがな。
ゲルガー「断る!!」
ナナバ「ゲルガーが嫌なら仕方ないよね」
リヴァイ「ああ、そうだな、なぁ?ハンジ」
ハンジ「あ…うう…」
ちらりとニファに助けを求めるが彼女はニコリと微笑むだけだった。
ハンジ「もう…やってやるよ!次はナナバ!」
ナナバ「お先に」
ハンジの指名にナナバはリヴァイへウインクを送った。
リヴァイ「ちっ」
ハンジは内心で必ず当ててやると決心したのだった。
-
- 40 : 2014/12/13(土) 07:14:10 :
- ニファ「さあ、もう一度やりましょうか。さぁて、どちらだと思いますか?」
ニファはそう言って、ギュッと握られた手がハンジの目の前に出される。 ニファの顔はニヤニヤしている。
右はやや大きく、隙間が空いていて、ギュッときつく握られていた。
ハンジは右だと確信し、
「右だー!」
そう言うと、ニファは笑って
「当てられちゃいましたねー、はい、どうぞ」
そう言って、ハンジにキャンディを渡した。
ニファが残念な顔をするかと思ったハンジだったが、予想外にあまり残念な顔をしてはいなかった。
何か嫌な予感がする…
-
- 41 : 2014/12/13(土) 07:24:49 :
- ニファ「では、3回目です。どちらでしょうか?」
そう言ったニファはニンマリと笑っていた。
左の方が右よりやや大きく、隙間からチラリと包みが見える。
ハンジは自信満々の笑顔で
「左でしょ?」
そう言うと、ニファは最高級の笑みをハンジに見せた。
ニファ「いいえ、違いますよ、ハンジさん」
ハンジ「えっ?何で?!」
ハンジは驚く。ゲルガーとリヴァイも不思議そうな顔をした。
ナナバ「左はキャンディではなく、何か別のものということかな?ニファ」
ニファ「ええ、そうです。流石、ナナバさん」
ナナバ「2回目はワザとやや大きく握り、包みが見えるぐらいにし、ハンジに当たりを引かせた。そして3回目も同じ条件にした、手の中にあるものは違うものにしてね」
ナナバがそう説明するも、私とゲルガー、リヴァイはちんぷんかんぷんといったところ。
ニファが左手を開くと、そこにあったのは、包み紙だけのもの。
そして、反対の手を開くと青い包みの水玉模様の可愛らしいキャンディーがある。
ハンジ「そんなのアリなの~?」
ハンジは少し悔しそうな顔を見せた。ニファは笑っていた。
ニファ「アリですよ。だって私は『キャンディーが入っている方の手を当ててください』と言いましたよ?」
ハンジ「うー、そうだったね」
ナナバ「私が落書きをする番だね。何を描こうかな。蜘蛛の巣…蜘蛛の巣……」
ナナバは考えるかのようにそう呟いた。ハンジはドキドキである。
ナナバ「そうだ、鎖を描こう」
-
- 42 : 2014/12/16(火) 07:25:03 :
ハンジ「え?なんでよ…はっ!ナナバ…私を拘束したいの!?私の心も身体も全て手に入れたいのね!?」
わざとらしく大袈裟に反応をみせるハンジにナナバもまたノリノリに頷く。
ナナバ「ええそうだよ。君の其の可愛いお顔も綺麗な身体も強さを秘めた心さえも全て手に入れたいな」
ハンジ「いやあ!助けてええ!」
調子に乗る二人をぺりっと離れさせるとリヴァイと、ハンジの腰に手を回すニファは口をへの字に曲げながら、二人を睨む。
ニファ「ナナバさん狡いです…」
リヴァイ「小芝居は其れくらいにしてさっさとやれ。後がつっかえたるんだ」
ナナバ「はいはい。じゃあハンジ、腕だして」
差し出されたハンジの腕に流れるように鎖を描いていくナナバはクスリと笑う。
ナナバ「ハロウィンてさ、何となくだけど悪戯心に火を点けるよね」
ハンジ「はい?」
ナナバはハンジの身体を抱き締めると、耳元に囁いた。
ナナバ「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?」
そう言いながらハンジの腰に手を回し、そっとくすぐりを始めた。
ハンジ「ぎゃっ!?」
其処は流石と言うべきか、くすぐりながらもちゃんと腕には鎖が描かれてゆく。
-
- 43 : 2014/12/16(火) 07:29:38 :
やっと描き終えた頃に、ナナバはハンジを解放した。くすぐられ続けてハンジは笑い疲れたのかへなりとその場に座り込んだ。
ハンジ「ねえ…いいかな」
ナナバ「なんなりと」
ハンジ「お菓子とか関係なくね!?」
ナナバ「だって私いらないもん」
ハンジ「何故ハロウィンの定型文言ったし!?」
ナナバ「何となく…ノリで」
ナナバの回答にハンジは顔を真っ赤にして叫んだ。
ハンジ「何となくでくすぐられてたまるかぁーーー!」
そんなハンジを余所に、一人の人類最強はやっとかと口角を曲げる。其れを感じ取りハンジは彼へと睨みを利かせた。
ハンジ「出たなラスボス!!」
リヴァイ「くくくっ、悪くない」
対峙する二人にニファは思わず苦笑いを浮かべた。
-
- 44 : 2014/12/28(日) 06:32:30 :
- ニファ「じゃあ、どちらにはいってるでしょーか?」
負けられない戦いが今、ここにある!
ハンジはニファの手をじっくりと見る。
そして、決めたのだろう、口を開いた。
ハンジ「左だー!」
するとニファは手の平を見せると…
ハンジ「良かった、キャンディーがある!へへーんだ!リヴァイのざまあみろー」
キャンディーがあるとわかるとハンジは楽しそうにした。
リヴァイが少し苛ついているのがわかる。相当悪戯をしたかったのだろう。
ニファ「ハンジさん、どうぞ!」
そう言ってニファはハンジにキャンディーを渡した。
それから、残る6回のうち5回はハンジはキャンディーを見抜くことができた。
果たして、最後はどうなるのか…?
-
- 45 : 2014/12/28(日) 22:26:14 :
- 緊張を胸に最後の選択を迫られた。流れ的には彼女の心にゆとりがあるものの、このゲームは所詮は‘運’なのだ。
いかにニファの心理を読もうともキリがない。
ハンジ「…」
もし間違えれば苛々を溜めているリヴァイの餌食となる。それは普通の時の彼よりも凶悪な悪戯が待つことを意味していた。
ハンジ「この選択…負けられない!」
ハンジの呟きにニファもまたごくりと生唾を飲み込む。
そして、彼女は最後の揺さぶりをかけた!
ニファ「ハンジさん…正解は‘右’ですよ」
ハンジ「!!」
ニファはニヤツく口元を隠しもせずにハンジに助言をした。それによりハンジの選択はより難しくなってゆく。
ハンジ「…右…いや、この顔は何か企んでいるから…実は左?ううん、待って…もしかしたら其れが狙いかも…」
眼を回しながらブツブツとぼやき始めるハンジを思いもよらない人物が助けた。
「うん、右で良いと思うぞ、ハンジ」
ハンジ「よぉし!じゃあ右!」
後ろからの助言にハンジは勢い良く従った。ニファはゆっくりと自分の握り拳を開くと其処には可愛らしいキャンディーの姿。
ハンジ「やったーー!」
ハンジは興奮から後ろにいる男、我等が団長エルヴィン・スミスに抱き付いた。
ハンジ「ありがとう!エルヴィン!」
エルヴィン「ふふふ、良かったな。ハンジ」
よしよし、とハンジの頭を撫でるエルヴィンはそのまま笑みを壊すことなく彼女の体を抱き締めた。
ハンジ「ふぁ!?」
ニファ「ななっ!?」
ハンジは彼の胸の中で一気に頬を赤くしたが、エルヴィンは真っ黒な笑みを浮かべる。
エルヴィン「そういえば…ある酔っ払いの噂話を耳にしたのだが…」
ニファ「よ、酔っ払い?」
その場の全員がゲルガーの姿を思い浮かべる。
エルヴィン「パーティーに参加する兵士達全員の前で団長を辱めようとする命知らずな輩がいるらしいんだ…逃げるなリヴァイ、ナナバ!」
いつの間にやら逃亡を試みる二人だが流石は兵団一の狸。そう簡単には逃げおおせられぬ。
彼は綺麗な微笑みで胸の中のハンジの背中をいやらしく撫でた。その動作に目の前のニファはぞくりと背中に悪寒が走るのを感じた。
エルヴィン「誰のことだと思う?ハンジ」
ハンジ「あ、はははは…そ、そのぉ…ニファへるぷ!!!」
-
- 46 : 2015/01/13(火) 21:25:50 :
- ニファ「無理ですよ!流石に!」
エルヴィン「さあ!どうしようかね?君らを…」
エルヴィンの不敵な笑みに、ハンジの顔から血の気がサッとひく。
リヴァイやナナバなんて悪魔なんていう生易しいものではなかった。
本物の悪魔はここにいたのだ。
エルヴィン「悪い子には悪戯ではなく、お仕置きが待っているのだよ…?」
フフフと笑うエルヴィン。
眉間にシワがよるリヴァイ。
曖昧な表情を浮かべるナナバ。
怯えた顔をするニファ。
血の気がサッとひくハンジ。
やはり、調査兵団の行事はこうなってしまう。
そして、ハロウィーンらしく、調査兵団本部には奇行種の悲鳴が響いたとか。
ハンジ「助けてぇぇぇぇぇ!」
おわり☆
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