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霧切「あの絶望的で最悪なコロシアイから一年」

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  1. 1 : : 2014/10/05(日) 22:09:10
    ゴメンなさい。SS自体は二レスで終わります。

    あと二時間くらいしたら投下しまーす。
  2. 2 : : 2014/10/06(月) 00:10:16
    十月 五日 二十三時五十六分

    霧切(あれから私達は未来機関に保護され、所属を決意し……第十四支部に、私達生き残った六名は身を置くことになった)

    霧切(そしてそれからもう一年も経つというのに……未だに、絶望の残党は消える気配を見せない)

    霧切(どころか、ますます勢い付いていて、絶望を伝播させようという動きはとどまるところを知らない)

    霧切「ふう……」

    霧切(おかげでこんな時間までデスクに向かう羽目になった、というのは少し気が滅入るわね)

    苗木「お疲れみたいだね、霧切さん」

    霧切「そりゃあ、来る日も来る日も同じような内容の書類の纏めばかりやっていたら疲れもするわ。その書類に何の意味も無い事が分かりきっていれば特に」

    苗木「あはは、何の意味も無いって、またスッパリ斬り捨てちゃうね」

    霧切「だって、そうでしょう」

    苗木「まあ、そうだけど」

    霧切(実際書類の内容は、色んなことをもっともらしく書き連ねているけれど、要約すれば「絶望の残党はまだまだ多数確認されている」「掃討にはかなりの時間を要する」という、進捗しているのだかしていないのだか分からないものが大半なのだから、本当に意味がない)

    霧切「第一、私はデスクワークよりフィールドワークの方が好きなのよ」

    苗木「フィールドワークって言葉はちょっとニュアンスが違うんじゃないか、って思うんだけど……」

    霧切「別にいいのよ、いちいち細かい所にツッコむわね」

    苗木「あはは、まあ、それはそれとして、でも他の四人が出払ってる以上ボクらがデスクワークに従事しないといけないのは確かでしょ」

    霧切「それは、そうだけど……」

    苗木「ま、落ち着いてよ。少し休憩でも挟もうか。コーヒー、淹れて来るよ」

    霧切「……そうね。お願いするわ」

    霧切(こういう時、別の誰かではなく、私の好みをある程度把握してくれている苗木君が残ってくれて良かったと思う。他の飲み物と迷う事なくコーヒーを淹れてくれる彼の心遣いが有り難い)
  3. 3 : : 2014/10/06(月) 00:10:29
    霧切(ふと、時計を見る)

    十月 六日 零時二分

    霧切「日付、もうまたいじゃったわね……」

    霧切(今日はここに泊まった方がいいかしら?)

    霧切(そんな風に考えた時だった)

    苗木「そうだね。もう六日だ。はい、これコーヒー」

    霧切「あら、苗木君。ありがとう……って、何よそれ」

    苗木「……見て、分からない?」

    霧切「いえ、それ自体は分かるけれど。何故そんな物を持ってきたの、と訊いてるのよ」

    苗木「今日、霧切さん誕生日でしょ? だから、そのプレゼントに、って思ってさ」

    霧切「あ……」

    霧切(そういえばそうだ。今日、十月六日は私の誕生日。そんな事、すっかり忘れていた)

    苗木「その顔、すっかり忘れてた、って顔だね」

    霧切「……悪かったわね。でも仕方ないじゃない、ここしばらく忙しかったんだし。それで、なんでそんな物をプレゼントにチョイスしたのよ? まあ、私の趣味からは外れていないけれど」

    苗木「……去年、さ。あの“コロシアイ学園生活”で。霧切さんに初めてプレゼントした時、ボクはその意味をちゃんと理解していなかったから」

    霧切「それは、そんな事だろうと思っていたけれど……何故今更……」

    苗木「霧切さん。今度は、意味をちゃんと理解した上で、これを霧切さんにプレゼントしたいんだ。受け取ってもらえるかな……?」

    霧切「……っ!?」

    霧切(おかしいとは、思った。何か事件が起こって、その沈静化のために十神君が出動するのは分かる。腐川さんがそれを追っていくのも理解できる。けど、それと同時に葉隠君と朝日奈さんまでが出動して、私と苗木君だけが残るというのは違和感のある話ではあった)

    霧切「もしかして、苗木君。この状況、貴方が仕組んだものだったの?」

    苗木「あ、あはは……やっぱりさすが霧切さんだ。分かっちゃうか」

    霧切「……はあ。全く」

    苗木「えっと、それで……?」

    霧切「……受け取るに、決まっているじゃない」

    霧切(ああ、きっと今の私の顔は途轍もなく紅潮しているんだろう――)

    霧切(苗木君の赤みがかった顔を見て、心の奥底ではそう考察してしまう冷静な自分がいる事に嫌気がさす。けれど、苗木君はきっと、そんな事すらもお見通しなんだろう)

    苗木「はは、嬉しいけど……やっぱり、ちょっと恥ずかしいね」

    霧切(そう言って照れたように笑う彼を見て、私は苗木君の差し出したプレゼントを手に取った)

    霧切「今更、何言ってるの? というか、伝えるのが遅すぎよ、もう出会ってから何年経ったと思ってるのよ」

    苗木「え、っと……三年くらいかな?」

    霧切「そうね。二年間の学園生活と、一年間の未来機関への在籍期間。そう。三年よ。三年も経ってようやくなの?」

    苗木「か、勘弁してよ……ボクだって、勇気振り絞ったんだからさ」

    霧切「学級裁判の時はあんなに勇気に満ちていたのに、今さら振り絞らないと出てこないなんて言い訳は通用しないわよ?」

    苗木「う……あ、あの時に必要だった勇気と今必要だった勇気は全くの別物だよ!」



    霧切(そんな他愛もない会話をしながら、お互い笑い合う。笑い合える時が、来た)

    霧切(自室に今も飾ってある、苗木君から去年、初めて貰ったプレゼントの隣に……今ここの瞬間に貰った“イン・ビトロ・ローズ”も飾るとしよう)
  4. 4 : : 2014/10/06(月) 00:19:04
    というわけで霧切さん誕生日おめでとうSSでした!

    ホントは作中時間に合わせて投下しようとしてたんですけど別の事やってて失念してました……。
    くっ。
  5. 5 : : 2014/10/06(月) 19:49:29

    面白かったです!!!
  6. 6 : : 2014/10/06(月) 20:05:39
    乙です!

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