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【改訂版】エレン「愛のままにわがままに俺は彼女にだけは背後を取らせない 」

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  1. 1 : : 2014/09/24(水) 14:24:56




    ある日曜日の正午過ぎ




    自室の頭身鏡の前




    着ていく服を選んでいた時のこと




    一本の電話が鳴った




    エレン「……よう、俺だ」




    そこには意図的な沈黙があった




    「私メリーさん……今、あなたの家の前にいるの……」




    スピーカーの向こうから可愛らしい声が聞こえる




    あの有名なフレーズと共に……




    電話はそれだけで切れてしまった




    エレン「……はぁ?」




    謎の電話に首を傾げ、携帯電話をポケットにしまった



  2. 2 : : 2014/09/24(水) 14:26:24




    それから部屋の時計に目をやる




    エレン「そろそろ出た方がいいな……」




    もう約束の時間まであまり無い




    迷いあぐねていた服を感覚に委ね、急いで部屋を出た




    数分後再び……




    「私メリーさん……今、あなたの部屋の前にいるの……」




    どうやら不法侵入されたようだ




    しかし……




    エレン「そうか、俺は今、電車の中だ」




    「……えっ!?」




    メリーさんは肩透かしをくらい、上ずった声を漏らした




    再び電話が切れる



  3. 3 : : 2014/09/24(水) 14:27:47




    エレンは電車に揺られながら、使い古しの手帳を見つめる




    そこには今日の段取りが事細かに記されていた




    「私メリーさん……今、駅にいるの……」




    相変わらず執拗なメリーさんの追跡は続く




    だが……




    エレン「駅? 俺は今、本屋にいるぞ」




    ターゲットはさらにその先を行く




    「なっ……なんでそんなとこに!?」




    またもや振り切られたメリーさん




    エレン「ちょっと調べ物があったんでね」



  4. 4 : : 2014/09/24(水) 14:28:34




    死神のメリーさんに対して、エレンには臆する様子が一切見られない




    「そこ動かないでよ!頼むから!」




    切羽詰まり始めたメリーさんの声で電話が切れる




    「はぁ……はぁ……私よ……メリー……」




    高速移動に定評のあるメリーさんも息が絶え絶えであった




    エレン「おう、今どこだ?」




    「本屋よ……アンタこそどこにいるのよ……」




    エレン「今は花屋の前だ」


  5. 5 : : 2014/09/24(水) 14:29:12




    こんな時に呑気に花屋……




    命のやり取りをしているというのにもかかわらず、この男の余裕は一体どこから来るのか?




    「アンタねぇ……動かないでって言ったじゃない!こっちも疲れるのよ!?」




    あの冷徹なメリーさんが、まるで駄々っ子のような有り様だ




    エレン「仕方ないだろ?大切な人への贈り物があるんだから」




    ブツッと電話を切ると、エレンは花屋へ入って行った



  6. 6 : : 2014/09/24(水) 14:29:59




    また、しばらくすると……




    「メリー……よ……アンタ、また移動したでしょ」ゼェゼェ




    エレン「あぁ、ちょうど今バスに乗ったところだ」




    その一言で、メリーさんへ絶好のチャンス到来




    「ふふふ、残念だったわね……私も今バスにいるのよ?」




    不気味な笑い声が勝利を確信する




    上手く切り抜けてきたエレンの命も、もはやここまでかと思われた



  7. 7 : : 2014/09/24(水) 14:30:59




    すると、エレンの電話に車内アナウンスの声が紛れた




    「え?……ちょっと待って、アンタどのバス乗ってるのよ……」




    メリーさんの声に隠しきれない震えが混じる




    エレン「俺は噴水公園に用があるんだよ、今そこに向かってる途中だ」




    今度はメリーさん側の車内アナウンスの声が響く




    エレン「ん? そっちは風水公園に用があるのか?どんどん距離が離れていくな」




    ここに来て致命的なミスが発覚した




    それぞれのバスの行き先は……




    エレンは『噴水』公園行き




    メリーさんは『風水』公園行き




    急ぐあまり、ややこしい公園名を取り違えてしまったのだ




    「うるさい! バカ! 今から行くから待ってなさい!」




    メリーさんの涙ぐむ怒号で通話は終了



  8. 8 : : 2014/09/24(水) 14:32:04




    エレン「お、次のバス停だな」




    荒ぶるメリーさんをよそに、エレンは落ち着いて降車ボタンを押した




    数十分後……




    やっとのこと噴水公園の青いベンチに辿り着くと、メリーさんは再び電話をかけ直した




    「私……メリー……ううっ」ヒック




    何度も置いてけぼりをくらったメリーさんは流石に涙目である




    エレン「あぁ、俺だ」




    乾いた気だるい返事をよこすエレン




    「アンタ今度はどこに行ってるのよ!?速やかに答えなさい!!」




    必死過ぎるメリーさん




    エレン「ん〜どうしようかな〜……」




    対して、言い渋るエレン




    「……お、教えてよ」ポロポロ



  9. 9 : : 2014/09/24(水) 14:33:22




    ターゲットに焦らされて、もはや号泣するメリーさん




    エレン「そうだなぁ、ちょうど今は……」
































    エレン「お前の後ろにいるよ」





























    「……え?」ピクッ



























    そう言って、公園のベンチの背後から一つの影が……




    エレン「……お待たせ、迷子のメリーさん」ギュ




    泣き虫な女の子の背中を抱きしめた




    「なっ!?///」ドキッ




    エレン「泣いて……いたのか?」スッ




    「バ、バカ!!別に寂しくなんかなかったんだからね!?」ゴシゴシ




    ツンデレ大爆発のメリーさんは、慌てて涙を拭う



  10. 10 : : 2014/09/24(水) 14:34:09




    エレン「はは、ゴメンゴメンお詫びと言っちゃなんだが……」ガサゴソ




    「な、何よ?」ドキドキ




    メリーさんの胸の高鳴りは最高潮を迎えようとしていた




    エレン「この花束……受け取ってくれるか、メリーさん?」サッ




    情熱的な真紅のバラを、真剣な眼差しで手渡すエレン




    そんなロマンチックな演出に、メリーさんの乙女チックハートはイチコロだった




    「……あ、ありがと///」パサッ




    メリーさんの頬は、そのバラに負けないくらい紅潮していた




    そして、二人は時が止まったように見つめ合う




    エレン「さっ、行こうぜ?」スッ




    その紳士的に差し伸べられた大きな手が、止まった時を溶かす




    「う……うん///」ギュ




    メリーさんはそれを満面の笑みで握り返した




    ーfinー



  11. 11 : : 2014/09/24(水) 14:36:28

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著者情報
777

オッドボール三等軍曹

@777

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