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自由の翼は前を向く

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  1. 1 : : 2014/08/25(月) 02:02:54
    とりあえず、何か書きたくなった。
    ので書くことにする。
  2. 2 : : 2014/08/25(月) 02:23:15



    852年調査兵団は巨人になれる兵士、エレン・イェーガーの働きによりウォール・マリアを奪還。
    しかし、多大な犠牲も払うことになった。

    ウォール・マリア奪還計画が本格的になってから2年で調査兵団は850年、104期生が入団した当時の人数の9割を失ってしまい、ウォール・マリアを奪還するまでにベテランの兵士を失ってしまっていた。





    852年 ウォール・マリア シガンシナ区



    「酷い有り様だ...」

    そう口に出したのは、調査兵団参謀のアルミン・アルレルトである。

    「...仕方ねぇよ。もう7年も巨人が居座っていたんだからな...」

    そう言うのは、調査兵団第14代団長のジャン・キルシュタインである。


    二人は今、数少ない調査兵団で2年以上生存している兵士である。
    彼らは104期生であり、今や、人類の英雄の呼ばれているエレン・イェーガーの同期でもある。


    「そういえば、エレンはどこへ行ったの?」

    アルミンがジャンに聞く。

    「知るか。大方、家にでも行ったんじゃねぇか?」

    「そっか。まぁ、そうだよね...」

    エレン・イェーガーは845年に超大型巨人がウォール・マリアに攻めこんで来たときに母親を亡くしていた。


    「こういう時くらいは、1人でいさせた方がいいのかもな」

    「まぁ、エレンにはいつも監視がついてるしね。今日くらいは羽をのばさせてあげたいけど...」
  3. 3 : : 2014/08/25(月) 02:39:23


    バシュ

    シュー


    立体機動装置を使い、壁を上っていく。

    この壁は7年前には一度超大型巨人により、壊されたものである。
    その壁の上に上がり、まずはシガンシナ区を見渡す。
    子供の頃に慣れ親しんだ町であった。


    「エレンさん!」

    ま壁の下に目を向ける。

    4人ほどの兵士が壁を上ってくる。
    彼らは105期生のエリートである。
    全員が全員が訓練兵団では10番以内に入っていた強者であり、この過酷な1年を見事生きて乗り越えた、本当のエリートである。


    「あんまり、単独で行動しないでくださいよ~」

    女性の兵士が壁の上に上がりながら言う。

    「悪いな...。けどよ、ここは俺の故郷...母親との思い出なんだ」

    「あ、まぁ、そうですよね。その気持ち分かります。...ですから、団長にばれない程度の行動でお願いしますね?」


    「ん、ああ。分かった。ありがとう」
  4. 4 : : 2014/08/25(月) 14:41:46
    超絶ミラクルゴッドヘブンプラチナダイヤモンドアルティメットスーパーハイパーマスター期待
  5. 5 : : 2014/08/25(月) 20:24:27
    俺も
    超絶ミラクルゴッドヘブンプラチナダイヤモンドアルティメットスーパーハイパーマスターやばいほど期待してます
  6. 6 : : 2014/08/25(月) 20:25:07
    「俺のほうが上かな‼︎」ドヤァ
  7. 7 : : 2014/08/25(月) 21:13:58
    ふっ…ならば…
    超絶ミラクルゴッドヘブンプラチナダイヤモンドアルティメットスーパーハイパーマスタートリプルスライディング土下座トリプルアクセル並みに期待!!!

    どうだ…

    真面目に期待してますよ!
  8. 8 : : 2014/08/25(月) 23:09:55



    次にエレンはウォール・マリアの更に外に目を向ける。
    そこには、かつてのエレンの夢である外の世界が広がっている。



    「...ミカサ。やっと、やっと、ウォール・マリアを奪還できたよ...。遅くなって悪い...」

    エレンはそう呟き、空を見て言った。

    「サシャ、コニー、マルコ...リヴァイ兵長、ハンジさん、エルヴィン団長...」




    「俺は...俺は...巨人を駆逐してやる...!」


    「だから...それまで見ていてくれ...!」







    「エレンさん」



    壁の上で外の世界を見ながら何分座っていただろうか。
    そんな事を考えていると声を掛けられた。


    「おー、兵長」

    エレンが兵長と呼んだその男。その名の通り調査兵団の兵長である。
    彼もまた105期生で、主席で訓練兵団を卒業した男でもある。
    そしてエレンは1つ年齢は下の彼の班に属していた。

    「団長と参謀がお呼びです。そろそろ地下室に...」


    「ん、わかった。行くよ」

    「くれぐれもお気をつけて」


    「ああ...。あ、それとお前のほうが年齢は下だけど、お前の方が階級的には上なんだからな。敬語なんて...」


    「いえいえ。確かに階級は上かもしれませんが、エレンさんは人類の...」


    「...俺は英雄なんかじゃ...ねえよ」



    そう言って、歩き出していった。
  9. 9 : : 2014/08/25(月) 23:12:28
    期待
  10. 10 : : 2014/08/25(月) 23:15:50
    コメントありがとうございます。
  11. 11 : : 2014/08/26(火) 01:33:41





    イェーガー邸の地下室。
    そこには、それまでこの世界の秘密や巨人に関することがあるのではないか、と言われていた。
    そして、それを目標として、調査兵団は行動してきたわけである。
    そして今、調査兵団の夢、とでも言おうか。

    イェーガー邸に調査兵団のトップ3が集まっていた。



    「...ったく。遅ぇよ。何分待たせやがる」


    ジャンがそう悪態をつく。
    二人に遅れてやってきたエレンは、悪いと謝罪をして言う。

    「早く行こう。この中になにがあるのかは知らないが、父さんのことだ。何か重要なことがあるはずだ」


    「じゃあ、入ろうか」


    アルミンがそう言って、瓦礫が排除されて露になった地下への隠し階段を降りていく。
    その後に二人も続いていった。
  12. 12 : : 2014/08/26(火) 01:39:42
    そして扉の前に着く。
    扉はそっとやちょっとのことでは、びくともしなさそうな、頑丈そうな作りになっていた。


    「じゃあ、エレン。鍵」

    アルミンが鍵穴を指差して言うのに対してエレンは首に付けていた鍵を取り、鍵穴に向けた。

    「さぁ...鬼が、蛇が出るか...」

    ジャンがそういうとすかさずアルミンが「ビビらせないでよ...」と迫真の演技で言うので、エレンとジャンは笑ってしまう。



    「じゃあ...開けるぞ?」

    エレンが笑いながら言うと、二人は頷いたのでエレンは鍵を回す。



    ガチャ
  13. 13 : : 2014/08/26(火) 01:53:24




    扉を開くと、そこにはたくさんの紙が散乱していた。


    そこには巨人に関するレポートが書かれていた。
    それらを一通り見てエレンは言った。


    「なんというか、普通だな。もっと人類に役に立つものばかりがあると思っていたんだがな...」

    「ここに書いてあるのは、ほとんど全部すでにハンジさんが発見していることだしな...」

    ジャンもそう言う。


    確かに7年前までの時点では知られていないことが書かれていたが、ここ一年で、調査兵団はかなり進歩し、ハンジ・ゾエの指揮の元で行われた実験により、かなりの事実を発見した。



    二人がそんな話をしている中、ただ1人、アルミンだけは資料に目を通していた。


    「おい、アルミン。ここはもう無駄だぜ。期待外れだ。早く上にあがるぞ」

    ジャンがそう言うが、アルミンは反応しない。


    「...?どうした。なにか発見でもあったのか...?」

    ジャンがそう言う。
    エレンもアルミンに疑問の目を向ける。


    少しの沈黙があり、そしてアルミンが口を開く。


    「...これが本当なら、人類は大きな進歩遂げられるかもしれない...!」


    エレンとジャンが同時に「はぁ?」というすっとんきょうな声をあげた。
  14. 14 : : 2014/08/26(火) 02:53:01


    「おい、アルミン。何が書いてあったんだよ...」

    そう言いながらジャンがアルミンの元に向かい 、アルミンの読んでいる資料に目を通す。

    「...おいおい、こりゃあ...」


    「...何があったんだよ。勿体ぶらずに言えよ」

    エレンがそう二人を急かす。


    少し間を置き、アルミンが言った。

    「...巨人化に関するレポートだよ」
  15. 15 : : 2014/08/26(火) 03:00:05
    エレンはそれを聞き、すぎにアルミンの元に向かう。

    そして資料に目を落とす。
    そこには巨人化について、書かれていた。

    そこには、これまで巨人化しているエレンでさえも知り得なかった事実が書いてあった。


    アルミンが口を開く。

    「このレポートはこれだけじゃないんだよ。次のページは更にすごいことが書いてあるんだ」

    エレンとジャンはその一枚の紙を覗き込んだ。



    「どうすれば、巨人になれるか...だと?」




    「うん...。でも、それだけじゃなく、エレンがグリシャさんから受けたって言ってた注射についても...」




    「...」



    その後、このレポート以外に重要なものは見当たらず、三人は地上に戻ってきた。


    人類の大きな一歩の助けとなるレポートを携えて。
  16. 16 : : 2014/08/26(火) 23:45:41
    期待
  17. 17 : : 2014/08/27(水) 01:41:56
    外に出ると、調査兵団の隊長格がアルミンたちを待っていた。


    「地下室は...」

    と、分隊長の1人が呟くとアルミンは言った。

    「とりあえず、地下室から得た情報は調査兵団の中でも内密にしていきたい。だから、ここにいるのと...」


    「特別作戦班の班長だな」

    特別作戦班とは、エレンが属している班であり、そこの班長とは、兵長のことである。

    ジャンが口を挟む。


    「うん。そうだね。とりあえず8人だけだ。くれぐれも、漏らさないように気を付けて欲しい」

    アルミンが言うと、4人の分隊長は頷いた。

  18. 18 : : 2014/08/27(水) 01:42:41










    ーーーーあれから、何年経っただろうか..
    .


    私が最後に壁外遠征に行ったのはいつだったか。

    私がエレンと最後に話したのはいつだっただろうか。



    ...私はいつもこんな事を考えながら、病室のベッドで寝ている。

    いわゆる、寝たきりという状態である。


    もう、私は歩けるどころか、体を動かすのも難しい。
    そしてこれからも動けない体になってしまっている、と医者に聞かされた。



    しかし、私に悔いはない。
    エレンを守った結果なのだから。





    けれど、もう一度、もう一度だけでいい。

    一緒に話したい。笑いたい。


    そして、私の名前を呼んで欲しい。

    ミカサ、と。
  19. 19 : : 2014/08/27(水) 01:44:12








    調査兵団特別作戦班に与えられた、ウォール・マリア内の土地。

    とりあえずは、仮設の住居を建てて、そこで生活することになっていた。


    ガチャ

    ドアを開けて入って、兵長は言う。

    「まだまだ、先は長そうですね...」


    エレンが「お茶かコーヒーだが」と言うので兵長は「俺がコーヒーを飲めないのは知ってますよね?」と笑いながら返す。


    エレンも笑いながらお茶を出す。



    「確かに、先は長いな」

    「今の調査兵団の化学力じゃ、お世辞にも巨人化できる人間を作れる、なんてことは言えないな」


    今は、二人以外の班員は寝ている。

    「あと、何年かかるんですかね...」

    今の現状からでは全く先が見えない。
    調査兵団は今、真っ暗の暗闇の中を歩き始めたところである。

    だが、一つ、分かっていることはある。

    「まぁ、先に進まなきゃ、現状のままだ。どんなに先が見えなくても、とりあえずは進まなきゃな」


    そう言っているエレンは、兵長の目には焦っているように見えた。
  20. 20 : : 2014/08/27(水) 02:16:11




    三十秒程だろうか。
    両者が黙りこみ、沈黙が訪れる。

    年上との話の中で沈黙が訪れるのはいやだな...と兵士長は思う。

    そこで、その沈黙を断ち切ろうと口を開こうとしたが、先にエレンが口を開いた。



    「なぁ...お前はなんで調査兵団を志願したんだ?」



    こう質問されると迷ってしまう。
    なぜ?確かになぜ二年前の自分は調査兵団を志願したのか。


    続けてエレンは問う。

    「巨人への復讐か?それとも外の世界を目指していたのか?英雄だと持て囃されたいがためか?」

    「...」


    更にエレンは息を吸う動作をも見せずに続ける。


    「俺はな、小さい頃から外の世界について知りたかった!だから、ずっといつかは調査兵団になって、俺を壁内に縛り付ける、このマリアの壁の外へ出たかった!」


    「...」


    そこで一つ間を置き、再度口を開く。

    「けど、目の前で母親を殺され、その後トロスト区の壁を破られたときは、仲間を失い、その後は...巨人を駆逐するために調査兵団に入った」
    そこで兵長が口を
    「俺は訓練兵団での自分の力を過信してしまったのか、巨人を殺すのも楽しそうだから、という理由です」

    「...」

    「その結果がこれです。...仲間や大事な人を失った。俺は今でも、二年前の選択を悔やんでますよ」



    「そうか...。...俺はさ、調査兵団に入って、人類の希望なんて言われて、このマリアを奪還したら英雄なんて呼あどよ、自分の大切な人を1人として守れないやつが、英雄なんて冗談だろ!?」

    「...」

    「...俺は英雄なんかじゃ、ないんだよ...」




  21. 21 : : 2014/08/28(木) 01:00:44




    兵士長は外を見る。

    太陽は今日も自分達を熱く照らしていた。
    雲ひとつない青空、快晴である。



    エレンと2人で話した日から2週間の時が経った。

    未だにあの日のエレンの最後の言葉が脳裏に写る。


    大切な人を守れないやつは英雄なんかじゃない。

    確かに、そうかもしれない。
    しかし、人を絶対に守るなんて難しい。

    それも巨人という、普通の人間なら、出会った瞬間死が確定してしまうような存在と対峙している調査兵団では特に。

    しかしエレンは、そんな状況でも守るものが英雄だと言った。


    そして首を振る。

    「そんな、完璧超人はいないだろ...」

    そう言って食堂に入っていった。



  22. 22 : : 2014/08/28(木) 01:01:12




    外の世界、というのは何なのか。
    この疑問を解決できた人は、僕が知っているなかでは1人もいない。

    そもそも疑問を抱いても、その疑問を解き明かそうとする人もそうそう見たことがない。

    それは当然といえば当然のことだ。
    外には自分達を殺す生物がいるのだから。

    壁の外に出たら殺される。だから出ない。
    当然のことであるし、それが僕たちの世界で常識になるのは当たり前だろう。

    しかし、どんな所にもそんな常識から外れようとする輩がいる。
    その理由なんて色々だ。

    興味本意、名声、復讐、自分の力を試したい、死にたい...などたくさんあるだろう。

    そんな、常識から外れる彼らには信念がある。


    それは僕、アルミン・アルレルトも同じだ。
    僕は外の世界をこの目で見てみたい。
    そう思っていた。

    だから、僕は調査兵団に入り、自由の翼を背負ってきた。


    しかし、それも一年前までのことだ。
    今は巨人への復讐心しか僕にはない。
    親しくなった友人、親友、そして大切な幼馴染みを失いかけた。

    それから僕は必死に巨人を駆逐しようと努力した。
    その結果、僕は参謀という役職についている。

    僕は調査兵団員を守る立場になった。
    今の団員には僕と同じにはなってほしくない。

    彼らは復讐に囚われずに自由の翼を背負ってほしい。
    それが僕の最後の願い。

    そしてその目で確かめてほしい。
    本当の世界。
    この世界の真実を。




  23. 23 : : 2014/08/28(木) 01:01:47






    翌週に迫っている壁外遠征。

    調査兵団の団長であるジャンは苦悩していた。

    マリアを奪われてからはずっとマリアの内側しか見てこなかった。

    マリアの外への初の遠征。
    そしてマリアの外を知っているものは、もういない。

    全くの事前情報がなしでの遠征である。

    何度も何度も参謀のアルミンと確認をする。
  24. 24 : : 2014/08/28(木) 01:33:25


    「今回はシガンシナ周辺の様子見だ。とはいえ、シガンシナの周りに高木は少ないし、森自体も少ないな」


    「ここで鎧の巨人や獣の巨人が出たら難しい戦いになりそうだね...」


    2年前以来知性巨人とは戦っていない。
    だから、今の調査兵団員は知性巨人の恐ろしさを知らない。

    しかし、マリアの外には何があるかも分からない。
    そもそも、調査兵団の中ではベテランのジャンやアルミンたち104期生でさえマリアの外は知らないのにも関わらず、そこに知性巨人が現れて攻勢ともなってしまったら、もうどうなるかも予想がつかないほど混乱してしまうだろう。

    それを彼らがカバーしていかなきゃならないのだが、難しい。
    彼らもまだ入団3年目なのである。


    「うーん...戦闘になったら、この資料にかいてある、東側の森に逃げ込んだ方がいいね」

    「そこなら、なんとか戦えそうだ」

    アルミンが提案するがジャンは難しそうな顔をする。

    「そこが、壁の門どれくらいの距離なのかは分かるのか?」

    ジャンが聞くとアルミンは資料のページを捲り、更にもう1ページ捲って顔をあげる。

    しかし、書かれていなかったようで首を振る。

  25. 25 : : 2014/08/28(木) 01:33:58


    「なら、最初にその東の森に向かおう。地図もあるんだし」

    アルミンが提案する。

    「うーむ...そうだな。そうするか...」



    「じゃあ、目的地は決まりだ。後は、知性巨人に遭遇したときの対処を...」





    壁外調査へ後4日と迫ったところで、ジャンとアルミンは隊長格と班長を呼び出し、会議を開くことにした。


    「今回の遠征の目的は周りの地理を把握することだ。そこで目的地はこの森ということにした」

    ジャンが言い、そこにアルミンが口を挟む。

    「この森は、巨大樹の森ほどじゃないけど高い木がたくさんある森なんだ。で、ここなら巨人と戦うことにも適しているし...」




    「また、この長ったらしい話をきかなきゃいけないのか...」

    アルミンとジャンが喋っている傍ら、エレンはふんぞり返って椅子に座っていた。

    「まぁ、確かに面倒ですけど...」

    「そうだろ?兵長よ。だから、早く帰りたいんだよ...。明日は用事もあるしな...」

    エレンがそう言うと、兵長は不思議そうに聞く。

    「用事...ですか...。どこかに行かれるのですか?」

    「おいおい、いつも壁外調査の前に行ってるだろ。トロスト区の...」

    「あ、ミカサさんのところに...!確かに今回はまだ行ってませんでしたね...」


    「だから明日行ってくる。明後日には帰ってくるからな」

    「はい。了解です」


    そんなことを話していると、ジャンに注意された。

    エレンは、兵士長がすみません、すみませんと謝っているところを笑いながら見ていた。
  26. 26 : : 2014/08/28(木) 17:04:13



    翌日、エレン達は朝早くから出ていった。


    「じゃあ、行ってくるよ」

    アルミンがそう言うと、女の兵士がお土産よろしくお願いしま~す。と言うので、アルミン達は苦笑せざるをえなかった。



    「では、お気をつけて」

    兵士長がそういうと、アルミン、ジャン、エレンの三人は頷き、馬車に乗り込んだ。




  27. 27 : : 2014/08/28(木) 17:05:25





    馬車に揺られること3時間。
    エレン達は少し話す程度でほとんど無言だった。

    疲れている者もいれば、考え事をしてる者もいるといった感じだった。



    そこでアルミンが呟く。

    「訓練兵の時は楽しかったなぁ...」

    「皆で馬鹿やって...一回ライナーがクリスタを覗こうしたこともあったよね...」



    「あいつらは...あの時何を考えていたんだろうな...」

    エレンがそういうと、再度場を沈黙が支配する。


    「そんなことは、あいつらにしか分からないだろ...」

    ジャンが口を開き、続けて言う。

    「けどよ、あいつらにも信念があったんだろうな...。多分だが、訓練兵の時のあいつらが素のあいつらなんだろう...」


    続けてアルミンが口を言う。

    「そうだね...彼らには、堅い信念があった。じゃなきゃ、そうは簡単に人を殺せないよ...」




    馬車はローゼへ向かっていた。


  28. 28 : : 2014/08/28(木) 17:06:36



    一度は巨人に侵入を許し、崩壊しかけたトロスト区の街。

    しかし、二年経ってみると、巨人が侵入した、と言っても信じられないほど復興した。

    これも全て、この壁の中の女王のヒストリア・レイスの奮闘があってこそだが。



    トロスト区はマリア奪還までは、調査兵団の主な活動地域であり、壁外調査の際はいつもここから出ていっていた。

    そのため、ヒストリアはこの街の復興には力を入れていた。
    そして、その一つに、現在の壁内の最先端技術と最高の医者を集めたと言っても、過言ではないほどの大きな病院がある。


    そこでミカサは入院していた。
  29. 29 : : 2014/08/28(木) 17:12:13



    「しかし...シガンシナ区で何週間か住んでからトロスト区に来ると、ここがいかにすごい所か分かる気がするな...」


    ウォール・ローゼ トロスト区の門をくぐり、ジャンがそう言った。


    「そうだね...。シガンシナもなんとか復興していかないとね...」

    アルミンがそう言い、病院を指差す。

    「あそこがミカサの入院してる病院だよね」


    「しかし、いつ見てもでかいよなぁ...。シーナにもそうそうないだろ...」

    ジャンがそう言うとエレンが言う。

    「ヒストリアに感謝しなきゃ、だな」


    それを聞いてアルミンが口を開く。

    「その通り。また、会える機会があれば会ってお話したいね...」




    そう言っている間に病院の前に着く。


    「それじゃあ、行くぞ」

    ジャンがそう言うと病院に入っていった後を二人は着いていった。



  30. 30 : : 2014/08/30(土) 01:53:00
    戻ってきてたんですね
    続き期待してます
  31. 31 : : 2014/09/01(月) 18:03:54
    ウルトラスーパーハイパー期待
  32. 32 : : 2014/09/19(金) 21:28:43
    久しぶりにサイトに来たら、死に急ぎ野郎さんがいたー!

    中学校編面白かったですー
    これからも期待
  33. 33 : : 2014/09/27(土) 10:01:24
    期待
  34. 34 : : 2014/09/27(土) 17:24:33
    期待!
  35. 35 : : 2014/10/13(月) 14:12:16
    あっ〜!ぐ!お、俺は負けない
  36. 36 : : 2014/10/13(月) 18:11:14
    超期待!!!!
  37. 37 : : 2014/10/17(金) 21:41:09
    期待です!
  38. 38 : : 2014/12/20(土) 16:38:35
    期待!超期待!めっちゃ期待です!
  39. 39 : : 2014/12/26(金) 16:27:43
    期待
  40. 40 : : 2015/02/20(金) 13:23:02
    こんなに面白い話を放置しないでくれよ(T^T)
  41. 41 : : 2015/03/05(木) 02:27:05



    もう、何度もこの病院を訪れた所為で彼女の病室は把握していた。

    病室の前で一つ深呼吸をしてから入る。





    突然、ノックもなしにドアが開いたので、少し驚いた。

    「あ...」

    「遅くなった。久しぶりだな。」


    私は彼を見ることしかできない。応えることはできない。

    「エレン、速いよ。」

    私の親友も続けて入ってくる。

    「ミカサ、ごめんね。いきなり訪ねたりして。」

    いいの。と心の中で思う。私にはそれしかできない。

    「ふぅ...お、ミカサ。顔色はよさそうじゃねぇか。」

    ほら、差し入れだ。と言いながら林檎を
    持ってきたのはジャンだ。

    「また、明々後日に壁外遠征だ。次は初めてのマリアの外だ。まあ、俺らなら大丈夫だ。心配はいらねぇからな。」

    ジャンが言う。

    「そういえば...。今日は女王様がローゼのトロスト区を視察しているってのは本当なのかな?」

    アルミンの問いに私は頷いた。


    今日はあのヒストリア・レイスがここ、トロスト区に訪れているのだ。
  42. 42 : : 2015/03/05(木) 02:31:51

    それから、少しの間ミカサと過ごし、病院を出た。

    「さて、ヒストリアにでも会いに行くか?」

    ジャンがそう言うとアルミンも賛同した。

    「ヒストリアとは全然会ってなかったし、本当に久しぶりだね。」

    「おい、あの人だかり...」

    そう言いながら指を指すエレン。
    その指の先を2人は確認する。

    「女王様のお通り〜...って奴じゃないか?」



  43. 43 : : 2015/03/05(木) 02:36:58
    「んー...ヒストリアは見える?」

    目一杯背伸びをしながら隣のジャンに聞くのは、アルミン。

    「んー...」

    目を細めながら見るが、見えるのは女王親衛隊のようなものだけ。

    「ヒストリアは見えねぇな。」


    「そう簡単には会えないだろ。」

    エレンがそう言うと、アルミンは深い溜息をついた。

    「やっぱり、そうだよね...」


    その言葉と同時に人々のどよめきが聞こえ、また背伸びをすると。

    「あっ...」

    「ヒストリアだ...」
  44. 44 : : 2015/03/05(木) 02:44:31
    ジャンがヒストリア〜!と叫びながら手を振る。
    それに気付いた女王、ヒストリアはこちらを見て3人を確認すると、笑顔で手を振った。


    「結婚しよ。」

    そんな言葉が人々から聞こえる。
    それにはエレンも苦笑した。

    「全く、こいつらはライナーかよ。」


    そう言いながら先程までアルミンとジャンがいた方を見るが、見当たらない。

    「どこいきやがった...?」

    エレンが辺りを探すと、すぐに見つかった。


    「結婚しよ。」





    「...馬鹿ばっか...」

    そう野次馬の最前列で求婚している団長と参謀に呟き、彼らとは逆の方を
    向き、歩き出した。
  45. 45 : : 2015/03/05(木) 18:34:59



    「本当に久しぶり!」

    満面の笑みでアルミンと握手しているのは、女王のヒストリア。
    周りには憲兵が立ち、ヒストリアの護衛に当たっている。

    「久しぶり。すっかり、立派な女王になっちゃって...」

    「えへへ...2人こそ。今や人類の希望じゃない」

    「エレンがな」

    ジャンが口を挟む。
    そしてヒストリアがハッと我に返ったように、辺りを見渡す。

    「どうしたの?」


    「エレンはどこにいるのかな?」
  46. 46 : : 2015/03/05(木) 18:46:15


    3年間、死に物狂いで訓練した場所を訪れる。
    グラウンドの方に目を向けると、相変わらず続いている新兵への恐喝が目に入る。


    「貴様は何者だ!」

    「トロスト区出身!.....です!」


    5年前、自分達の頃とは全く違う光景だ。
    マリアを奪還してからというもの、調査兵団を志す者が増えてきている。
    あそこにいる多くの訓練兵達の中の多くは調査兵団を目指している者が多い。

    「貴様は何者だ!」

    「ストヘス区出身!.......です!」

    「なんのためにここにきた!」

    「調査兵になって巨人共を駆逐するためです!」

    「貴様如きでは、巨人の餌だ!」

    そう言って、頭突きをお見舞いするキース。
    そしてうずくまる訓練兵を見ると5年前の自分たちが思い出される。


    「ジャンかよ...」

    苦笑しながらそう言って振り返ると、じーっと自分を見つめる人がいた。

    「やっぱり、ここにいたんだね。」


    「ヒストリア...」
  47. 47 : : 2015/03/05(木) 18:55:55


    「何の用だ?」

    エレンが質問するとヒストリアは笑いながら答える。

    「もうっ!その悪人面は変わらないなぁ...」

    「アルミンとジャンは?」

    「エレンのこと、探してたよ。」

    そう言いながらエレンの隣に立つ。

    「懐かしいね。私たちもこうやって。サシャがお芋を食べたり、コニーが...」

    「やめろ」

    エレンが制止する。


    風が吹き、間ができる。

    「エレンは、背負いすぎだよ。その背中が悲鳴をあげるほど、多くのものを背負ってるよ。」

    ヒストリアがそう言う。

    「...俺の人生は後悔ばかりだ。あの時、ああすれば、あいつは助かったのに...なんて事ばかりだ...」



    少し間ができ、その後ヒストリアが口を開く。

    「折角の、自由の翼なのに。そんなんじゃ、飛べないよ。」

    ヒストリアが空を見上げ、指を指す。
    エレンも顔を上げる。

    「あの鳥の群れみたいに。飛んでみなよ。」
  48. 48 : : 2015/03/05(木) 19:25:53




    -壁外調査 当日-

    シガンシナ区の壁門の前には調査兵が集合していた。
    出発まで残り3分というところだ。



    ジャンが調査兵全員の前に立つ。
    そして口を開いた。


    「あー、今回の壁外調査は未知の体験だ。」

    「実際、怖いやつは手を挙げてみてくれないか?」

    少しの間をおき、ジャンが手を挙げ、アルミンも手をあげる。

    続々と手を挙げる調査兵。

    「調査兵団の団長、なんて言っても未知を前にしたらこんなもんだ。」

    「お前らも怖いはずだ。だが、なぜ調査兵団を選んだ?」

    「何か、自分の信念があってこそだろう?」



    「野郎共!見せてやれ!人類の!魂ってやつを!」


    「...全軍!進めぇぇぇぇ!!!」



    「うおおおおおおおおおお!!!!」
  49. 49 : : 2015/03/05(木) 20:02:59


    シガンシナ区を出発して5分程。
    第一の目標である東の森に向かっていた。
    至る所から信煙弾が放たれている。


    「まぁ、今の所順調のようですね」

    兵士長がエレンに言う。

    「...」

    「エレンさん?」

    「なんだか、上手くいきすぎてる気がするんだよな...」

    そこで団長のいる2列目中央付近から信煙弾が放たれる。


    「......到着、みたいだな」
  50. 50 : : 2015/03/05(木) 20:07:02




    「よし、ここで一応記録しておこう。」


    アルミンがそう言い、メモを取り出した時、左翼側から信煙弾が放たれる。



    ジャンがふと見上げる。
    ジャンから何の反応もないのでアルミンも信煙弾の方を見る。



    「黒...」


    「知性巨人だ!」
  51. 51 : : 2015/03/05(木) 20:19:31





    黒の信煙弾が出た途端、特別作戦班は信煙弾の方に向かっていた。


    そんなエレン達の前に、フードを被った調査兵団が現れる。


    班員の一人が近付く。


    「...!」

    フードを被った男は班員の首を一閃。


    「!!!」


    猛スピードで近付いてくる。



    「一旦、退避だァ!」

    兵士長がそう叫ぶがエレンは向かっていく。



    「ライナァァァァァァァァ!!!」



    ガシィィンッッッ!

    ブレード同士が交わる。


    「...エレン。久しぶりだな。...だが。俺らはいつも2人だぜ...?」

    「...!」



    ザシュッッ!

    「ア゛ッ」


    ブシャァァッ!




    「ベルトルトォ!!」


    「エレン、余所見をしてる場合か...?」



    ライナーがブレードを振り被る


    (マズッ...)


    ヒュッ!
  52. 52 : : 2015/03/05(木) 20:25:36


    6人の班員の内、2人を殺され、かなり不利な状況に追い込まれたエレン。


    残されたのは巨人化のみ。




    「ライナー!君も巨人化を!」

    ベルトルトがそう叫ぶ。

    「分かってるよ!」




    ガブッッ!



    ピカッ!








    エレンゲリオン「ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛」




    「班員に告ぐ!そっちの男を食い止めろ!鎧の方は...俺たち2人でやる!」

    兵士長の命令が飛ぶ。

    「心臓を捧げよ!!!」



    「ハッ!」
  53. 53 : : 2015/03/25(水) 17:46:33
    jponblihrbrkthoibtkhiphktjhiuitkjl;


  54. 54 : : 2015/04/13(月) 22:28:10
    放置…?
    期待です
  55. 55 : : 2015/06/19(金) 17:29:27
    (久しぶりじゃねぇか...。ライナァ...)


    エレンの体はかつてないほどの熱気を放ち、関節からは蒸気すら上がっていた。


    「ハァッ....ハァッ...」


    「待ちやがれッ!超大型巨人ッッ!」

    そう言って刃を振りかざす。


    (あ...の...場所へ...あの場所へ...行けばッ!)



    「なんだ...超大型巨人が離れていくぞ...」


    兵士長は鎧の巨人と対峙するエレンの援護をしながら、ベルトルトを横目に見た。


    「...何を考えているんだ....!?」

    次に鎧の巨人を見ると、獲物は雄叫びをあげた。



    「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」


    ズドドドドドドドドドドドドッッッ!


    鎧の巨人がエレンにタックルを仕掛ける。
    エレンは避けきれずに直撃してしまう。


    「ヴア゛ッ」


  56. 56 : : 2015/06/19(金) 18:59:31
    しかしエレンは激突部分を硬質化させ致命傷を避ける。

    そしてライナーを蹴って引き離すと右の拳で強打。
    そのまま左でアッパーを食らわせる。


    「まぁ、なんにせよ鎧が先だッ!」

    バシュゥゥゥ

    兵士長も鎧のない関節部分を切り刻む。


    (ここまでは順調だ。さぁ、エレンさん!)


    援護もあり鎧の巨人はかなり疲弊していた。




    (ぐっ...まずい...)

    (エレンだけでも一人じゃあ手に負えないっていうのによ...ゼー...ハー...)


    ピキピキッ!


    エレンが右の拳を硬質化させる。


    (ッ!......エレンの野郎ッ!ここで決めるつもりかッ!......)



    エレンは右手を振り上げライナーに向かって放つ。


    ドゴォッ!


    バキキキキッ!



    バキィィィィッ!




    エレンの渾身の一振りにより、ライナーの顔面の鎧が剥がれる。



    「ア゛ッッッ」



    「今だーーーーッッッ!!!」



    バシュッ!ズバッ!ズシュッ!

    ズバァッ!


    視力を奪い、顎を削ぐ。

    鎧の巨人は口を大きく開けるほかない。


    エレンは完全に弱ったライナーの首を掴み固定する。


    「イ...マダ」


    「よし!」


    兵士長がうなじへ刃を–––––
  57. 57 : : 2015/06/19(金) 18:59:51
    「くっそ!」


    「待ちやがれッ!」



    (あの場所へ...あの場所へ...ハァハァ...)


    「待てッ!超大型巨人ッ!」





    (くっ...さすがに速い...。だけど......)


    「僕だって!あの化け物揃いの104期で3番だッ!」



    3人は猛スピードで立体起動を操る。
    しかし、それまで林立していた木々の終わりが見えてきていた。


    「ここを抜ければッ!ハァハァッ!」


    ベルトルトは更にスピードを上げる。



    「やったッ!」


    「遂にッ!辿り着いたぞッ!ハァハァ...」



    班員二人も林を抜ける。



    そこには




    50体はいるだろうか。





    巨人の群れ。

    そしてその中心にいるのは。



    「やっときたんだ...。まぁいいや」


    「みんな、あの二匹。殺していいよ...。」



    獣の巨人。





    「あ......あぁ...」


    「終わりだ...」





    ドドドドドドドドドドドドドドドド



    獣の巨人の許可が下り、巨人たちは二人にめがけて突っ込んでくる。

    周りに木もないこの地形で50体以上の巨人と戦うなど自殺行為に等しかった。


    グチャッ。グシャッ。


    あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛




    「...それじゃ、行こうか。座標のとこに」


    獣の巨人が歩き出す。
  58. 58 : : 2015/06/19(金) 19:18:49


    −次列中央 指揮−


    「あれは...エレンだッ!」


    エレン達がライナー、ベルトルトと戦闘を開始してから120秒ほど。


    団長、ジャンの指示で全団員は持ち場で待機することになった。


    「なに!?どこにいる!?誰と交戦中だ!?」

    ジャンが声を荒げて聞く。


    「ここから4時の方角!鎧の巨人と交戦中です!」


    ジャンはそれを聞くとすぐに馬に飛び乗った。



    「よし...じゃあこのまま南下するぞ」



    「待って!」


    ジャンが馬に飛び乗ろうとするとアルミンが大声をあげた。




    「なんか...大量の足音が聞こえないか?」





    ズシン ズシン ズシン


    ズシン ズシン ズシン ズシン ズシン


    ズシン ズシン ズシン ズシン ズシン ズシン



    ズシンズシンズシンズシンズシンズシンズシンズシン



    「団長ッ!」


    「前方から...それも全方向から一斉にッ!信煙弾がッ!おそらくッ!獣の巨人の仕業だと思われますッ!!!!」





    「な...なにィ〜ッ!」



    アルミンはすかさず馬に乗ると刃を抜く。

    「ジャン、戦うしか...」




    「ああ...。全団員に告げろッ!巨人を一匹たりとも逃がすなッ!」




    「エレンの元に近づけるなッ!!!」





  59. 59 : : 2015/06/20(土) 01:02:41


    「ここが...俺らの最後なのかもな...」


    森の周りは無数の巨人に囲まれていた。


    「諦めるわけには...ハァー...ハァー」


    「.........とは言うがよ。もうガスは尽きた...。刃もない」



    「それどころかよ.....もう....立つのも困難ってやつだぜ.......」


    そう言い倒れこむ。落下地点には巨人の大きな口が迫っている。



    「させるかァァァァ!!!」

    バシュゥゥゥ




    ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛




    「ッ...まただ!」





    ジャンの指示からまだ100秒も経っていないだろう。
    しかし、至る所から巨人の餌食になった団員達の悲鳴が聞こえてくる。


    ジャンとアルミンなど次列中央の精鋭達も馬から離れ立体起動装置での移動に入っている。



    「アルミン...これは想定していた出来事だったが...」

    ジャンが口を開く。


    「もう、あの、平和な壁の中に戻れないかもしれねぇ...」


    「うん...」


    「もし、俺が死んだら、だ。お前は、生き延びろよ...」

    「..........」


    「ミカサの悲しむ顔は見たかねぇんだよ......」


    「うん...」


    「それに...死に急ぎ野郎を上手く導くのは、俺とお前だけだ」









    「さて.....無駄話も終わりだ」






    「行くぞッ!人類の力をッ!思い知れッ!」






  60. 60 : : 2015/06/20(土) 01:12:14




    巨人は30体はいるだろうか。
    対してジャンたちは5人。


    とはいえ、彼らは精鋭だ。
    無理をせずに。一匹一匹確実に屠っていく。



    「へっ...アルミン。お前中々やるじゃねぇかよ.....ハァハァ...」


    「ハァハァ......ハァハァハァ......ぼくでも、驚きだよ...」



    精鋭3人が巨人を確実に殺していくものの、獲物を倒すだけに集中するのではなく、回りの巨人に捕まらないようにしているため、ガスの使用は激しい。





    「ふぅ...。残り1体か」

    スバァッ。


    「やっと終わったか...。もうガスも刃も残っちゃいねーよ...」



    ジャンがそう言って馬に戻ろうとする。
    その時アルミンが叫ぶ。



    「巨人がッ!更に...さっきより多い巨人がーーーーッ!」




    ズドドドドドドド
  61. 61 : : 2015/06/21(日) 14:36:54






    巨人の大群は先ほどの巨人とは違い、前方からしか現れなかった。
    そして、大群は人間を目指してやってきてる訳ではなく、先頭にいる小さな巨人を狙っているようにも見えた。



    「ジャン!」

    アルミンはさきほどの自分の考察をジャンに伝える。

    「やつらは僕らを狙っている訳ではない!よくは見えないがあの小さな巨人を狙っているッ!」


    周りの調査兵団員は既に刃を抜いていたが、アルミンの言葉を聞き、ジャンの指示を待った。




    「...................」



    ジャンは先頭にいる巨人を見つめる。


    確かに、その姿は2年前に見たものだった。



    「あれは、ユミルだ...」


    「!?」



    確かに、2年前見た巨人だった。


    「黒の信煙弾をあげろ」


    ジャンの声を聞きアルミンを除く全員が剣を抜く。


    アルミンは信煙弾を取り出す。



    パァンッ


  62. 62 : : 2015/06/21(日) 14:55:34





    団員がジャンの周りに集まる。




    「みろ、あの大群の先頭の巨人を。あいつは知性巨人だ。それも俺ら104期の同期だったやつだ」





    「あいつをエレンに近づけたら大変なことになる。エレンにだけは近付けないようにするぞ」



    ジャンがアルミンに視線を向ける。
    それに気付きアルミンが口を開く。


    「よし、じゃあ簡易的な班を作ったよ」

    そう言い、大きな紙を団員に見せる。


    「この小さな班で巨人の注意をひく。仕留めなくてもいい。作戦はエレンに近付けないようにする、それだけだからね」


    アルミンはそう言い、補給班から貰ったガスを補給する。


    「みんな、ガスと刃の補給は大丈夫だね?」





    みな、一様に頷き巨人の大群を見る。








    ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド





    巨人の大群が森に入る。






    「よしッ!全員散開だッ!!!」



    ジャンの声を聞き調査兵団は2.3人の集団を作り散っていく。


    それと同時に知性巨人は木を軽々上ってジャンに迫る。


    「全員ッ!なんとしてでも逃げろッ!」


  63. 63 : : 2015/06/21(日) 15:09:21




    ジャンの小隊もスピードを上げるが知性巨人に迫られる。



    「ジャンッ!今だッ!こっちに来いッ!」


    アルミンがそう言った瞬間、ジャン達は一気に方向転換し、巨人との距離を稼ぐ。



    「全速力だッ!」



    ジャンがそう叫び、更にスピードを上げる。




    しかし、アルミンはついていけず、遅れだす。
    そこに知性巨人の魔の手が迫る。



    「アルミィィィィンッ!!!」



    ジャンがそう叫ぶがアルミンは既に巨人の追いつかれてしまっていた。




    「捕まるッ!逃げきれないッ!」



    「でも、ここだッ!!!」



    アルミンは振り返り剣を巨人の目元に持って行き、そのまま引いていく。


    ズババババッ



    アルミンは巨人の目元を削ぎ、視力を奪う。
    その時、潜んでいた調査兵が巨人の背後に現れうなじへ。


    巨人は今にもアルミンを掴もうとしていた左手をうなじを防ぐために持っていく。


    調査兵はすぐにアキレス腱を削ぐ。


    巨人は木から落ちそうになる。
    なんとか木にしがみつくが下の巨人に足を掴まれ落ちていった。




    ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛




    「なんとか.....上手くいった....みたいだね...ハァハァ...」




    「ふぅ....作戦成功だ。赤の信煙弾をあげるぞ」



    そう言ってジャンは信煙弾を上げた。

  64. 64 : : 2015/06/21(日) 23:00:48







    なぜだ..........?
    俺は......鎧を仕留めたはずだ......。



    なぜ血を流して.....。









    「ほんっと...。使えないな.......」



    獣の巨人がライナーを見下ろして言う。


    「もうすぐでこの人にうなじを削がれて殺されるとこだったぜ」



    獣の巨人はそう言って、もはや虫の息の兵長を突き出す。





    「コ....ノ....ヤロウガァァァァッ!」


    エレンが叫び、獣の巨人に向かって走り出す。



    「うるさいなぁ...」


    「オア゛ア゛ア゛ア゛」



    エレンが殴った、が避けられる。
    その後獣は長い腕を生かしエレンが距離を取る前に顔面を殴った。



    ズドォォォンッ



    (が...ハッ)

    (く.....そが...)




    「ライナーとの闘いでかなり疲弊してたみたいだな」

    兵長を投げしててからそう言い、エレンの元へ歩を進める。




    「座標も思ったほど強くなかったな...」


    そう言ってエレンのうなじへ手を伸ばした。



  65. 65 : : 2016/01/31(日) 18:11:02
    え?おわり?え?え?
  66. 66 : : 2016/02/14(日) 17:10:39



    エレンは視界の隅にベルトルトを捉え、自分と同じ班員の状況を理解した。



    (また………守れなかった………のか……?)



    獣の巨人の右手がエレンのうなじに触れる。
    その時、エレンの頭の中ではこれまでの記憶が走馬灯のように駆け巡っていた。


    (これが………走馬灯……ってやつか……。はは………おれ、死ぬん……だな……)



    巨人体のエレンの目は今にも閉じようとしていた。目に光はなく、まさに死にかけという状態だった。
  67. 67 : : 2016/02/14(日) 17:11:48



    エレンが最期に観ていたのは母との記憶だった。

    巨人が侵入し、巨人に殺される直前の母との最期の会話。



    –––––– 母さん、オレも、今行くよ…。





    エレンの目は完全に閉じてしまった。もう獣の巨人には成す術も無く、ただ人類は蹂躙されるのみになってしまうのかッ!?






    「これで、座標も手に入れたし、後は虐殺するだけだ……」


    獣の巨人は笑いながらそう言い、エレンのうなじに手をかけた。


    「お疲れ……『英雄』くん…」



    右手に力を入れ、うなじを潰す––––––
  68. 68 : : 2016/02/14(日) 17:12:23




    どこだ……ここは………。

    っ………眩しいな………。


    ………なんだ?前から誰か………?



    ………あれ……ミカサ……? ミカサじゃないか!


    歩けるようになったのか……!?


    『エレン、もう諦めるの?』



    ………いきなり、なんだよ…。


    ……諦めるってなんだよ………。オレは、出来る限りのことはやったつもりだ………。


    『まだあなたは死んではいない』


    いいや、もう疲れたんだ………。


    『残ったアルミンやジャンはどうするの………? 見捨てるつもり………?』


    …………。


    『ヒストリアだって残ってる。それにおばさん達……あなたを守って死んでいった人々を無下にするつもり……?』


    ………!
  69. 69 : : 2016/02/14(日) 17:12:56





    『もう一度言う………あなたはまだ死んではいない』



    …………。



    『諦めるの?』



    …………そう…だな…。



    『それでこそ、エレン』


    『巨人を駆逐するんでしょう?』



    ………ああ、そうだ……!



    『もう、大丈夫?』



    ああ………戻ることにする。


    『………』



    ありがとな………。



    『………行ってらっしゃい』
  70. 70 : : 2016/02/14(日) 17:13:15





    駆逐………してやる………ッ!




    一匹残らずッ!








    ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド




  71. 71 : : 2016/02/14(日) 17:13:41




    エレンは目を開くよりも速く、自らの体のうなじに置いてある、獣の巨人の腕を掴んだ。



    ガシィッ



    「………ッ!?」



    予想外の出来事に獣の巨人も顔を歪め、掴まれた腕を引き抜こうとする。



    エレンはゆっくりと目を見開いたッ!


    その目には一度は完全に消えた希望の光がしっかりと、宿っていたッ!

    エレンは掴んでいた獣の巨人の腕をへし折った。



    「ガッ––––!?」



    すぐにエレンは立ち上がり、右手を硬化させた。



    「マズイッ ––––––!」


    ベルトルトが叫んだのも時既に遅し。
    エレンの右手は既に獣の巨人の脳天を目掛け、放たれていた。
  72. 72 : : 2016/02/15(月) 22:23:15




    ボゴォーーーーーッ



    メキメキィッ



    「な………なにィィーーーーーッ!?」



    獣の巨人の体は吹っ飛ばされ、後方に待機していた巨人の群れになだれ込んだ。



    (やっと………脳天に一発ぶち込んでやったぜ………。流石の獣の巨人でも今のを頭に食らえば……早々は動けないはずだ……)



    「あ………頭を………この………ッ。悪魔の末裔が………ッ!」


    獣の巨人はエレンに向かって叫ぶが、エレンの一撃の効果は抜群のようで、立ち上がることすらできないでいた。


    「う………動けない………だと……ッ? ふざ……けるな……ァ………」



    そう言った後、獣の巨人は震える右手の人差し指でエレンを指差し、ライナーと回りの巨人達に命令した。



    「お前……ら……あいつを……殺せ……ッ」
  73. 73 : : 2016/02/15(月) 22:24:00






    獣の巨人が命令すると、巨人達は一斉にエレンに向かって襲いかかってきた。
    エレンが最も恐れていたことが今、目の前に起こっていた。


    (向こうにはライナーもいる………ベルトルトもだ………!)


    通常の巨人ばかりに構っていると、ライナーやベルトルトまで襲ってくる危険がある。


    ここから逃れる方法をエレンは考えていた。



    (………一番楽なのは『座標の力』を使うことだが………)


    そこで一旦思考を止め、こちらに向かってくる巨人を見る。


    (……こいつらは通常の巨人とは違い、獣の巨人の影響を受けたある意味『座標の力』の影響を受けた巨人達だ……)


    (そんな奴らに『座標の力』が通じるのか………?いや、答えはNOだ……)


    (となると………まずはジャン達と合流したほうがよさそうだな………。ここで1人で戦うのは危険だ………)



    エレンは後ろに下がると、そのまま後ろを向き、逃げた。
    目指すは調査兵団の本隊がいる、森である。
  74. 74 : : 2016/02/15(月) 22:24:56




    エレンが森の方へ逃げ出し、巨人達がそれを追っていた後も、獣の巨人は動かないでいた。いや、正確に言えば、動けないでいた。



    「ま……まだ頭の傷が……!?」


    未だに座り込む鎧の巨人の肩の上からベルトルトが言う。
    獣の巨人の頭からはまだ蒸気が噴出していた。


    「アァァ〜〜………はぁ…はぁ………ァァ……。あのガキィ………俺を……俺を…こんなにしやがってェェーーーッ!」



    ベルトルト「………!?」



    ベルトルトは今までの、いつでも飄々とした印象のある獣の巨人とは違う彼の様子に驚きを隠せなかった。



    「アァァ………ぶっ殺してやるゥ………ハァーーッ!」



    ベルトルトは同時に彼の頭の傷が未だに治っていないのを疑問に持った。
    本来、巨人は圧倒的な回復力を持っている存在である。

    頭をやられたとしても、これだけ時間が経っていれば、既に元に戻っているはずなのである。



    「ライナーァ……ベルトルトォ………すぐにヤツを追え……ハァ……ハァ………」


    「ああ、わかった……」


    獣の巨人にそう命令され、ライナーは巨人化を解き、立体機動装置で森へ向かった。
  75. 75 : : 2016/02/15(月) 22:25:53








    エレンは大量の巨人を引き連れて森の内部にまでやってきた。


    それを視認したジャンは即座に団員に指示を飛ばす。


    「エレンを援護しろーーーーッ!」


    そう言われた団員達は巨人を次々と始末する。



    「…ライナーや獣の巨人はいないみたいだけど……」

    アルミンが周囲を見回し、ジャンに伝える。


    「だが、注意しろ……もしかしたら、俺らに紛れていきなり巨人化してくる場合も考えられる」



    そう言った直後、ジャンの視界は高身長で、ガタイのいい、金髪の、見覚えのある男を捉えた。


    思わず二度見した。


    あれはまさしく



    「鎧の巨人だァーーーーッ!!!」



    ジャンが叫んだ次の瞬間、ライナーが親指を噛みちぎり、巨人化する。



    ピカッ



    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



    蒸気を巻き上げ、鎧が出現したのだ。
  76. 76 : : 2016/02/15(月) 22:27:08





    全団員が、鎧の巨人に注目した。


    その時、ベルトルトの存在は完全に頭から抜けていた。
    団長のジャンやアルミンでさえも。

    それは当然である。
    人は警戒していれば警戒しているほど、それに注意を向ける。

    この場合は誰もが巨人化に警戒をしていたのだ。



    巧妙な視線誘導。


    彼ら2人にとって、ライナーは囮。


    本命は–––––––




    (死ねッ!ジャン!アルミン!)



    ジャンとアルミンの真上から現れたベルトルトは、刃を2人に––––––!
  77. 77 : : 2016/02/15(月) 22:29:38



    –––––––––––––




    ベルトルトとライナーは立体機動装置で森を飛んでいた。



    「正直………俺はエレンにやられて、もうだめかもしれん………」


    ライナーが言う。顔色は悪く、肩で息をしていた。


    「……ライナー…」


    「だから……俺を利用しろ」


    「………利用?」


    「俺が巨人化して奴らの気をひく……多分俺はそこで力つきることになるだろう……」



    ベルトルトが驚いたようにライナーの方を見やる。


    「……俺が巨人化をしたら、まずはジャンとアルミンを殺れ………その後巨人化し………」


    ライナーはそこで間を開け、目を閉じる。

    少しの沈黙の後、ライナーは再び目を見開き、口を開く。



    「俺を……食え」



  78. 78 : : 2016/02/18(木) 20:15:53




    ベルトルトの凶刃は2人の首元へ振るわれた。



    ズバァッ




    ーーーーーーーーーーーーーー



    鎧の巨人は巨人化はしたものの、仁王立ちしているだけで、動くこともなく、首をダランと垂らしたままその場にとどまっていた。



    エレンを含む鎧の巨人の周辺の団員は時間が過ぎるごとに警戒を強めていた。



    シュウウウウウウ………ウウウ……ウウ……



    蒸気が徐々に晴れ、やがて完全に消え、鎧の巨人の様子をようやく視認する。



    口を大きく開き、目には力がなく、虚ろな瞳ーーーー。




    「し……死んでいる…?」


    どこからか聞こえた声により、団員達は徐々に警戒を解き、困惑しながらも歓喜の表情に移り変わる。




    しかし、エレンは考えていた。


    何故、ライナーは巨人化をしたのか。巨人化をして突然死んだのではなく、巨人化以前には既に息絶え絶えだったのではだったのではないか?


    そう考え、更に先に思い当たる。




    (ライナーは………囮………。……ライナーは囮だッ!)


  79. 79 : : 2016/02/18(木) 20:16:54





    どんなに鍛えられた、軍隊……当然、肉体的にも、更には精神的にも鍛えられた軍隊でも指揮官を失えば、統率を失い、暴走する。


    人間も同じである。どんなに良い体を持っていても考えることができなければ、どんなスポーツをやってもダメである。



    それは当然、調査兵団も同じであった。







    ズバァっ




    2人に抵抗する間も与えず、躊躇なく、首を切り落とす。
    もうそこには、訓練兵時代の……自己のないベルトルトの姿はなかった。

    全てを覚悟し、すべての現実を受け入れ、理解していた。


    動かない鎧の巨人を見る。これから起こるであろう、悲劇の現実を考えると、涙が溢れる。


    ベルトルトはそれを止められなかった。…いや、止めなかった。

    仲間の死を悲しまないのではない。
    仲間の死を何とも思っているわけでもない。


    ただ、仲間の死を無駄にしたくないだけだ。





    3mほど前方…右斜め前の木にアンカーを引っ掛ける。上空に高く舞い上がり、周囲を見渡す。


    統率を失った調査兵団がベルトルトを殺すために、立体機動装置で追いかけてくる。

    不思議と笑みがこぼれる。


    訓練兵時代の記憶が呼び戻される。


    あの、『輝ける日々』が。
  80. 80 : : 2016/02/18(木) 20:17:41



    ベルトルトは考える。

    あの3年間は無駄ではなかった、と。



    ベルトルトは同時に感謝する。

    こんな自分とあのような『輝ける日々』を過ごしてもらった『仲間達』に。



    ミカサ エレン ジャン マルコ
    コニー サシャ クリスタ アルミン
    ユミル トーマス ダズ ミーナ
    サムエル フランツ ハンナ………



    「ありがとう………」



    そう呟き、親指を噛みちぎる。



    ピカッ



    ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド






  81. 81 : : 2016/02/18(木) 20:18:03






    エレンが気付くのは一足遅かった。


    気付いた時には、既に2人の首を切り落とし、親指を噛みちぎろうとしていたのだ。




    ピカッ



    一瞬、閃光を放った超大型巨人からは蒸気が噴出し、周囲を囲っていた調査兵団員はほとんどが即死。辛うじて生き残った者からは声にもならない声のようなものが微かに響いていた。



    嵐の前の静けさ、だろうか。
    その瞬間は永遠に感じるほどに長かった。
    煙の奥に60mのシルエットが映る。



    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ




    明らかに以前までの超大型巨人とは違った。
    雰囲気や顔つきなどというチャチな物ではない。



    超大型巨人は鎧を纏っていたのだ。
  82. 82 : : 2016/02/18(木) 20:20:27
    鎧纏った超大型とか怖っ

    期待です
  83. 83 : : 2016/02/18(木) 21:07:41


    (な……ッ!? ま…まさか……ッ! ベルトルトの奴………)



    (ライナーを捕食したのか……ッ!?)




    超大型巨人の目からは涙が流れていた。
    唯一、心の通じ合う仲間を自らの手で殺した。
    常人には計り知れないほどの重圧…罪悪感。


    ベルトルトはエレンを見る。



    (エレン………君は僕と対人格闘訓練をした時のことを覚えているかい…?)


    (……僕はあの時の怖かったよ……。母親の仇を討つと言って僕のことを殺してきそうだったから………)


    (正直に言って、君は5位だったけれど、君の目を見ていると、勝てるイメージができなかった……。ミカサよりも、リヴァイ兵長よりも)



    (でも今は負ける気がしない……。君と同じように、本当の意味で強い信念を持ち、『覚悟』をしたからだ)



    (君たちには感謝してる。だからこそ、今ここで君を倒すッ!故郷に帰るッ!それがライナーへの償いであり、君たちへの感謝の意を示すことでもあると思っているからだッ!)


  84. 84 : : 2016/02/18(木) 21:08:57









    超大型巨人は一度、目を閉じる。

    手の力を抜き、肩を落とす。体の全てを脱力し、もう一度、目を開ける。








    刹那、手を開き、テイクバックする。
    そのまま腰を回転させ、周囲の木々をへし折る。

    圧倒的パワー。


    超大型巨人が動くごとに、強い風圧を受け、吹き飛ばされそうになる。

    一撃でも食らったら、巨人体のエレンといえども即死とみて間違いはないだろう。
    元々の力に頑丈な鎧が加えられているのだ。

    攻撃面、防御面ともに穴がない、巨人の完成形といってもいいだろう。




    周囲の木々をへし折られた調査兵団員は足場を失い、地面に落下しかけるが、咄嗟の判断で超大型巨人に飛び移り、うなじを目指していた。




    「エレンさんの援護をしろォーーーーッ!!」




    事態は好転した。
    エレンからしてみれば、単純な1対1ならばこの超大型巨人には敵わないだろう。
    だが、今は数の面だけで考えれば圧倒的有利な状況である。彼らはまだ希望を捨てずに、この超大型巨人をなんとか倒そうとしている。



    彼らが超大型巨人の気を引いているうちに、ダメージを与えれば勝機は見えてくる。



    エレンは拳を握り、硬化させて超大型巨人に突っ込む。
    超大型巨人はまだ調査兵団員に気を取られていた。



  85. 85 : : 2016/02/18(木) 21:09:46




    (今なら……まずは足から奪ってやるッ!)




    ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ




    超大型巨人は近付いてきているエレンに気付く素振りも見せていなかった。
    エレンは右手を大きく後ろに引いた。

    これまで一度も見せたことのない、大振り。
    今、エレンが持つ最強の一撃を放つーーー




    その時、超大型巨人は右足を引いた。





    ド ド ド ド ド ド ド ド ド



    エレンは瞬時に状況を理解できなかった。
    理解した時には既に超大型巨人の右足が直撃した時だった。
  86. 86 : : 2016/02/18(木) 21:10:31







    人はバンジージャンプなどを跳んだ瞬間や交通事故に遭った瞬間において、全ての物事がスローモーションのように感じる。

    それは知覚の問題ではなく、記憶の問題である。人の脳は恐怖を感じる瞬間、その時のすべてのことを記憶しようとするのである。
    何か役に立つかもしれない全てのことを。




    この時、エレンの脳は全ての事柄を記憶し、エレンもようやく自分が置かれている状況を知覚する。




    超大型巨人の右足が直撃した。



    ド オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ッ



    エレンは後方に吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。周囲からは仲間達の悲鳴が聞こえる。




    (ア………ア…………うご………け……な…い……)



    意識は辛うじてあったものの、体は自由に動かせないという状況だった。



    巨人体からは蒸気が噴き出し続けていた。

  87. 87 : : 2016/02/18(木) 21:11:04







    渾身の一撃を与えたベルトルトだったが、油断はない。つい先ほど、獣の巨人がエレンの死んだふりに騙され、致命傷を負ったからだ。




    ベルトルトは気を取られてなどはいなかった。彼の獲物はエレンただ1人。
    その他は自分の周りを飛ぶハエのようなちっぽけな存在だった。



    要は、気を取られている振りをしていたのだ。




    (こんな簡単な策に嵌るなんて………やはり君は直情的で一直線にしか動かない存在だ………)



    ベルトルトは周囲のハエを払う。
    後はハエの後始末だけである。



    (………さあ、決着の時だ。君を連れ去り、壁内人類を殺す。君の母のように。自らで手に掛ける必要はない。僕は壁を破壊するだけだ……)



    (いや………僕が殺す。僕が全てを終わらせる………ッ!)






    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
  88. 88 : : 2016/02/20(土) 22:18:48




    ケリをつけようと超大型巨人が足を上げ、歩き出そうとしたその時だった。



    ピクッ



    エレンの右手がピクリと、例えるならばしゃっくりをしたかのような、驚いたかのような動きだった。


    ベルトルトはそれを見逃さなかった。


    上げた右足をそのまま垂直に落とす。



    ベルトルトは知っていた。
    エレンは強運の持ち主だということを。自分が彼らと共に過ごしていた2年前まででもなんども死にかけた。

    しかし、彼はそれらの危機を退けてきた。


    7年前のウォールマリアの惨劇時から始まり、2年前のトロスト区攻防戦では一時は巨人の腹の中に収まった。調査兵団に入り、ベルトルトらがエレンを誘拐した時には『座標』の力に目覚め、窮地を切り抜けた。



    ("また"何かがあるかもしれない……)



    そんな疑念が頭をよぎる。
    まだ動けるならば、警戒は怠ってはならない。

    そんな考えが体を固まらせる。




    依然、エレンの体からは蒸気が噴き出ていた。
  89. 89 : : 2016/02/20(土) 22:19:06




    数秒……数十秒ほどの全くの沈黙が走る。


    兵士は動きを止めた超大型巨人に疑問を覚えながらも、ただ剣を持ち、そこで佇むだけだ。






    何もない。


    世界から音が無くなったのかと錯覚するほどに静かだった。



    極限の緊張状態。




    バサッ バサッ



    長い静寂を破ったのは、1羽の鳥だった。





    直後、1人の兵士が動き出す。


    立体機動装置で超大型巨人に向け、動き出し、叫んだ。




    「まだ諦めるなァァーーーッ! 総員、前を向けッ! 下ばかり向くんじゃあないぜェーーッ!!!」



    その言葉に感化されたのか。下を向いていた兵士達は目線を上に上げる。


    そして、決意をする。


    次々と兵士が超大型巨人に突っ込んでいった。





    「心臓を捧げよッッ!!!」
  90. 90 : : 2016/02/20(土) 22:19:24






    「…『前を向く』………」




    巨人体の中でそう呟く。





    思えば、7年前のあの日からこれまでの中で『前を向く』ということはあまりなかった。

    常に後ろを振り返り、後悔してきた人生だった。




    エレンは在りし日に見た、自由の翼を思い出す。


    人間の自由を求める探究心の象徴。
    憧れ続けたそれを、今は背負っている立場である。


    何があっても前を見続けていた、彼らの姿に憧れていた。




    「………『自由の翼は前を向く』」




    エレンはそう呟き、目を見開いた。
  91. 91 : : 2016/02/20(土) 22:20:02






    パ キ ィ ィ ィ ン ッ



    鎧に弾かれた刃は、折れて使い物にならなくなってしまった。


    『前を向け』…彼のその言葉はまだ動ける全兵士の心を動かした。

    しかし、いくら前を向いて進もうとしても60mの厚い壁があっては進めない。


    今の彼は正にその状況だ。
    先陣を切って、うなじに切り掛かったものの、全く通用しなかった。



    「……ふ………ッざけんなァッ!」ブンッ

    右手を振り上げ、再度うなじに振り下ろしたものの、逆に刃が折れてしまった。


    「くッ………そォォォ!!」






  92. 92 : : 2016/02/20(土) 22:20:35




    叫び、立体機動装置で一時離脱を図る。



    が、彼の右手からは超大型巨人の右手が迫っていた。



    「うッ………わあああァァああぁアァッ」




    悲鳴のような声を出し、なんとか逃げようとするが、掴まれた。


    「は、離して……はなしてくれよォォーーーッッッッ!!!」




    叫んだのも虚しく、超大型巨人は躊躇する様子も見せず、紙を握りつぶすように、さも人を殺すのは当然かのような姿で握りつぶした。





    ブシャァァァァァッ




    鮮血が握り潰された勢いで高く舞い上がり、降ってくる。





    絶望の赤い雨が。




    ビチャッ ビチャッ ビチャッ ビチャッ




  93. 93 : : 2016/02/22(月) 18:11:34





    ある兵士は剣を離した。


    ある兵士は涙を流した。


    ある兵士は神を恨んだ。


    ある兵士は天を見上げた。







    そして




    ある兵士はエレンに叫んだ。







    「……………エレンさん、起き上がってくださいッ! 目を開けて………『前を向いてください』ッ!!!」







  94. 94 : : 2016/02/22(月) 18:11:56










    ゆっくりと目を開ける。


    光を少し眩しく感じた。久しぶりに光を見た感覚に襲われていた。


    徐々に目が慣れていき、立ち上がる。




    「………えれ……ん……さん……!」





    その姿に誰しもが涙する。

    安堵の涙である。
    そして、エレンならばどうにかしてくれる、という歓喜の涙でもあった。






    ベルトルトはエレンを見る。
    やはり、まだ動けていた。彼は何かを持っている、そう感じていた。



    (やはり、まだ動けたのか………。調査兵団の兵士も、エレンが動けるとあれば、また士気を取り戻してくる………)



    絶望していた兵士たちも、エレンの姿を見て、三度士気を取り戻す。
    剣を取り、超大型巨人を向く。



    調査兵団と超大型巨人。


    因縁の両者が向かい合い、対峙する。








    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ





  95. 95 : : 2016/02/22(月) 18:12:29






    先手を打ったのはエレンだった。
    つい先ほど、カウンターを食らった動きと同じ、直線的な単純な動きだ。

    当然、ベルトルトはカウンターを食らわせるために、構えていた。



    しかし、このエレンの動きはカウンターを誘い出しているようにも見えていた。
    直情的なエレンでも、一度やられたならば2回目は学習するはずである。




    迷いが生じる。





    (な……なにを考えている………ッ!? カウンターはまずいのか…ッ? 誘い出されているのかッ!!?)
  96. 96 : : 2016/12/13(火) 16:14:11
    期待
  97. 97 : : 2017/01/21(土) 10:45:44
    期待
    次の文も頑張って書いて
  98. 98 : : 2020/10/26(月) 23:07:46
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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