【9/5ハンジ生誕企画】ーお父様、お母様……ありがとう。大好き。
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- 1 : 2014/08/13(水) 19:21:41 :
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こんばんは~♪
愛に餓えて、餓えております砂糖楽夢音です
ページを開いて下さり、ありがとうございますm(__)m
今回は、蘭々さんが企画する9/5ハンジ生誕企画に参加させてもらえることになりました!!!!!
→→→ http://www.ssnote.net/groups/257/archives/13
執筆中のコメントはこちらにお願いします。執筆が終わったらコメント欄を解放します
→→→ http://www.ssnote.net/groups/570
相変わらずの超亀さん更新です
精一杯、頑張りますのでよろしくお願いしますっ(#´ω`#)ノ☆
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- 2 : 2014/08/13(水) 22:08:56 :
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ー嫌いで嫌いで仕方なかった……
その日は、指がかじかむぐらいの寒い真冬で粉雪がしんしんと降り積もるとても静かな夜だった。
粉雪がふわふわと降り積もる外の様子を窓からぼーっと、虚ろな瞳で眺める少女が居た。
その少女の目元と頬には、明らかに号泣したであろう涙の痕があった。
泣き晴らしたのだろうか、目元が赤く腫れていた。
「うぅ……もうグレてやる ! お父様とお母様のばああぁぁぁぁぁあか! ! ! ! ! ! 」
その少女は、自分しかいない部屋に向かってあっかんべーと舌を出した。
「は、ハンジ御嬢様、どうされましたか ! ! ! ! ?」
先程の叫び声が聞こえたのだろう、少女の家でメイドを勤める一人のメイドが部屋に入ってきた。
少女……ハンジ・ゾエは、琥珀色の瞳を見開き、部屋に入ってきたメイド達に怒鳴る。
「誰が勝手に入っていいなんて言ったのかしら?ねぇ?」
「で、ですが叫び声が聞こえましたので……何かあったのかと思いまして…」
よりによって新米メイドが来るとは……
「だから……何ですの?先程の出来事を貴方も見ていらっしゃったでしょう?その目は飾り物か何かなのかしら?何もないわけがないと思わないのかしら?
ねぇ……私は今、怒っているのよ?」
まだ9歳の子供であるハンジの気迫に負けたのか、メイドは口をもごもごと動かし何かを呟いている。
「はっきり言いなさいよ?じゃなければ、この部屋から出ていって下さらない?」
ついにメイドは、涙を浮かべこの部屋から出ていった。
……泣きたいのは、こっちよ…。
一息吐いた後にさっきの新米メイドや他のメイド達の指導者であるメイド長が直々に謝罪しに来た。
「本当に申し訳御座いませんでした。私の指導不足でハンジ御嬢様の気に障るようなことが起きてしまい……」
「貴方は悪くありませんの。貴方の指導は、この屋敷のメイドにしっかりと行き届いていますから。……私も少し頭に血が昇っていたみたいだし、謝っといていただけますか?」
メイド長らは、最後まで申し訳なさそうな複雑な表情をしていたが、もう寝るからと嘘をついて追い出した。
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- 3 : 2014/08/13(水) 22:28:30 :
ハンジとその家族はいわゆる貴族だ。
その御令嬢で御嬢様であるハンジは、外界の世界に干渉することを触れることを許されなかった。
生まれた時から、外に出たことはほとんどと言っていいほどになく、部屋に引きこもりの状態だった。
そんなハンジの友達は、テディベアの縫いぐるみと本だけ。
テディベアの縫いぐるみは、寂しい時には何時でも傍に居てくれた。
書斎(ライブラリー)によく引きこもっていた。
本を読む読まないに関わらず、書物を所持することが貴族の一種のステイタスだったため、腐る程本は沢山あったからだ。
自然と色々なジャンルを読み始め、世界史なども読み始めた。
常に本を読む生活を始めてから、三年。
ハンジはある違和感を抱き始めていた。
それは今まで読んできた本による影響なのだが、登場人物は皆、外の世界のお話だった。
外の世界を知らない私は話がよく分からなかった。
本の物語は全部、本当にあることで外の世界に存在することを私は使用人達に聞きまくって初めてそこで知った。
その違和感は徐々に無視出来なくなり、ついにハンジはその違和感に気づいた。
ー何で私はこの家に閉じ込められているのだろう?と。
当たり前であった世界が一変、非日常の世界に感じられた。
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- 4 : 2014/08/13(水) 22:39:46 :
本を読み進めて行く内に外の世界には、人類の天敵である"巨人"と人類をに隔てる壁の存在を知った。
何故、どうして???
そんな疑問が幼心にハンジの探究心に炎を灯した。
来る日も来る日も、毎日外の世界について調べ尽くした。
本という限られた書物の中だけで外の世界を知る術を身に付けた。
ーそして、何時からか外の世界で私も一緒に戦って、さらにその壁を越えた世界を見たいって……僅かな願いが生まれていた
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- 5 : 2014/08/14(木) 11:17:01 :
レディが結婚するには、身体だけでなく心も無垢でなければならない。
幼い頃から聞かされた歌われ文句だ。
13歳になれば、女子は社会から隔絶されたまま成長する。
ハンジにとっては今までと然程変わりはない、が……家庭教師に花嫁修行や礼儀作法を躾られ、針仕事や刺繍やダンスやピアノを強制的に学ばなければならなく、自分の時間が圧倒的に減る。
……三年経てば世界は一変、きらびやかな社交界で結婚相手を見つける必要がある。
ー私の願いを叶えるのは難しい………な
13歳になる前にこの家から出ないと、願いを叶えるチャンスは二度とないし、その一歩でもある訓練兵団にすら入れない。
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- 6 : 2014/08/14(木) 11:28:40 :
それで先程、「私は結婚なんてしないわ!!!」などと言ったら、お父様とお母様と喧嘩になってしまったということだ。
多くのメイドや使用人が何も言えずにその光景をただ見守っていた。
9歳であるハンジにとって今をどうにかする術を持っていなかった。
外界から隔絶されているなら、尚更だ。
まだ訓練兵団に入りたいとかは言っていないが何時かは、打ち明けなくてはならない時が来る。
家を出る覚悟で頼まなければならない。
ーでも、私は……絶対に諦めない
ハンジの願いはひどく執着深く、生きていく意思になっていた。
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- 7 : 2014/08/14(木) 12:06:15 :
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ー嫌いで嫌いで仕方なかった……だから…
何かを縛り付けようとするお父様とお母様が嫌いだった。
言いたいことをはっきりと言えない、意気地無しで情けない自分が嫌いだった。
沢山の使用人に囲まれ、温かい御食事にふかふかなベット、何一つ不自由ない家の中に閉じ込められるのが嫌いだった。
ーそれが嫌で全部捨てて来た。
お父様に殴られたのは初めてだった。
乾いた弾けた音と重たい痛み、使用人達の悲鳴、かなり重たい一撃で体が吹っ飛ばされたことで殴られたとそこで初めて気づいた。
お母様は今までに見たことがない程に憤怒の表情をしていた。
打ち明けたと思った途端、いきなりこの一撃だ。参っちゃうわね。
……本当は私なんてこの家に、お兄様だってお姉様だって居るこの家に居ていい存在じゃないのに。
ー貴方達だって、私が此処に居ることを望んでいないでしょ?
「誰が兵士になれと言ったんだ!!!?……この親不幸者がッ!!!」
「……私、知ってましたのよ?貴方達の本当の娘なんかじゃないって。今までありがとうございました。御機嫌よう?」
だから嫌いなんだ。
まだ寒さが厳しい春先の夜に齢12歳のハンジは地位も名誉も何もかもを全てを投げ捨てやり、自分の願いを叶える為の一歩、訓練兵団に入団したのだった。
過去に決別するように涙を流し、新たな未来を自らの足で歩むこと決意をした瞬間だった。
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- 8 : 2014/08/15(金) 21:15:58 :
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整理整頓の「せ」の字もない程、無惨に散らかった部屋に四人の女性が会話に花を咲かせていた。
……花というべきなのか。
「ん~、まぁ、そんなカンジで訓練兵団に入って、調査兵団すげーかっけーってなって入団して、巨人共調べ尽くして炙り殺しにしてやるってなって……今に至るってカンジかな?」
怠そうに自分の身の上話をするのは、ハンジ。
「……とっても激しい人生劇ですね!!!!」
ハンジを除く一同が延々とただ聞かされていた、その身の上話の反応に困っていた時、そう言い出したのはペトラ。
激しいと言えば、激しい……のか?
「さっすがはハンジさん!!!!これぞ、諦めない女の執念です!」
そんなペトラに何かしらの対抗心を燃やしたのか、褒めているのか貶しているのか分からないことを言ったのは二ファ。
少し失礼なことを言ってうるような気がするが、本人はまったく自覚なしでにこやかな笑顔を浮かべている。
「でも、アンタさ……お父さんとお母さん可哀想じゃない?いくら本当の御両親じゃないからって……」
冷静に大人の意見をばっさりと言いプライベートに乗り込んで来るのはナナバ。
少しお節介すぎるお姉さんだからか、有無を言わず自分のペースに持ち込もうとする。
「何言ってんのさ!!!!!もういいよ、あの人達なんてさぁ……」
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- 9 : 2014/08/17(日) 10:29:08 :
「でもハンジさんが内地に住む貴族の一人だったのは、知りませんでした!」
意外そうにペトラはそう言った。
「貴族どころか、普通の女性にも見えないしね」
「ナナバ、それ余計」
確かに人間版奇行種とか変人とか生きる弾丸とか言われてるけど、一言余計すぎる。
調査兵団に入ってから、性格も容姿も言動も全部変わってしまった。
以前の女性らしさや落ち着いたおしとやかさも今になっては皆無だ。
「……ハンジ分隊長。あの家出したってことですよね?」
何かを思い出したかのようにそう問うニファ。
「そうだよ」
「……どれくらいの間、御連絡取っていませんか?」
私が訓練兵団に入ったのが、12歳。
で今がー……。
「……15年以上、18年ぐらいかな。どうして?」
んー、家出してからかなり時間経ってるんだな、そういえば。
何故そんなことを聞くのだろうと首を傾げ問い返す。
「えっ、いや、あの、あ……それだけ時間経ってると、その生存してるのかなぁとか心配にならないのかなぁって…」
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- 10 : 2014/08/17(日) 12:57:24 :
「……特に、心配もクソもないね。私が家出した時点で向こうも連れ戻そうとかしなかったしね」
そう言うとニファは何だか申し訳なさそうに言う。
「何かすいません。変なこと聞いて」
「別にニファが謝ることじゃないよ。ね、ハンジ?」
私を代弁したかのようにナナバがニファに謝った。
「じゃ、もう夜分遅いですし……解散ってことで」
締め括るように席を立ち上がり飲んでいた紅茶を片付けるペトラ。
時計を見るともう夜中で遅い時間だった。
続いて、ニファとナナバが部屋を退室していく。
最後にペトラが退室しようとした時、突然ドアの前で立ち止まった。
「……あの、ハンジさんは多分、分かっているんでしょうけど…」
「ん、何?」
何かを遠慮するように言葉を選び、躊躇っているようだった。
俯いていた顔を上げ、私を見据えて言い放った。
「……もう二度と間に合わないこともあるんです。
伝えられないこともあるんです。 素直にいられなくて、傷付けることもあるんです。
でも、ちゃんと自分の気持ちに素直でいて下さい。ハンジさんは多分、私と同じできっと変なところだけ底意地強そうなんで」
その目は、揺らぐことなく強い意思を秘め、私をただ見つめていた。
そういえばペトラのお母さんって、巨人に喰われて死んだっけ?確かケンカしたままで、そのまま……
大分前にそんなことを言ってたね。
自らが体験したことあるから、そう偽りなく言えるのだろう。
……それに、ペトラちゃっかリヴァイと婚姻してるし、そう言われると説得力が増す。
「天使ペトラの助言だなんて、光栄だね。努力はしてみるよ」
「か、からかうのはやめて下さいっ ! 」
頬をぷくっと膨らませ怒るペトラを適当にあしらう。
「じゃ、明日の夕方に迎えに行きますので。おやすみなさい、ハンジさん」
軽くお辞儀して立ち去っていくペトラの背中に手を振りながら、見送る。
「おやすみ、また明日~」
……まったく、あの子には敵わないね。
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- 11 : 2014/08/22(金) 11:48:37 :
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「……ふぁ~わ、もう朝なのか…」
まだけだるくて重たい体をゆっくりと起こしながら、窓際まで覚束ない足取りで歩きカーテンを開ける。
眩しい陽光が部屋に満遍なく差し込む。
……悶々と複雑なことを考えてゆっくりと眠れなかった私には、丁度良い陽光で気分が落ち着いていく。
「何で身の上話とか昨日しちゃったのかな、私…」
お酒が少し入ってて勢い任せな気もするが、そんなプライベートなことをわざわざ喋る必要はない。
むしろ他の三人にとってはリアクションに困る、面倒くさい話だ。
……後で謝っておこう。
「……後から自分の首を締め付けるようになる話だって分かってるのに、ペラペラと喋っちゃってさ。私って本当に馬鹿だ…」
人間って不思議、と小さく呟き椅子に深く腰を下ろした。
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- 12 : 2014/08/26(火) 13:33:56 :
「……そう言えば、ペトラ達が迎えに来るって言ってたけど何の用事だろう?貴族のパーティーかなんかのやつかな?」
せめて何の用事かぐらいは聞いとけば良かったなぁ…。
まぁ、そんなたいしたことじゃないでしょ、多分。
ティーカップの取っ手を掴み、ほのかな紅茶の香りを楽しみながらゆっくりと紅茶を飲む。
目覚めの体に丁度良い温かさだった。
「ん~、寝るか」
久々の有休だし、特にすることもないしね。
何より寝不足がひどすぎる。
私は乱雑に散らかった床の物を踏みつけないようにそ~っと歩き、けだるい体をベットに吸い込まれるように倒れ込む。
……いつかは掃除もしないとなぁ。
あぁ、あのクソチビが掃除してくれたらどんなに楽なのかな…?
そんな下らないことを考えつつ私は毛布にくるまり、静かに寝付いていった。
*
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- 13 : 2014/08/26(火) 14:00:47 :
*
ー本当のお父様とお母様のことを私は未だに知らない……。
ただもう物心がつく前から、私はゾエ家という貴族のハンジ御嬢様だったらしい。
それが私にとって当たり前で普通のことだった。
「……あのね、おとうしゃま、おかあしゃまっ ! この絵本よんでくだしゃい ! ! ! ! 」
「ふふっ、もうたくさん喋れるようになっちゃって…」
「将来はお母様に似た立派なレディだな ! 」
沢山の使用人に囲まれ、おいしい御食事に、温かいふかふかなベット、御風呂だって毎日入れて、礼儀作法やマナーレッスンなどの高度な教育、外にはあんまり出してくれなかったけど、何一つ不自由など存在しない……御両親の愛情だって…。
……そう、確かに幼い頃は可愛がられてたのだと思う。
ただその不確かで曖昧な愛情は、幼い私には偽られたことに気づかなかっただけだ…
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- 14 : 2014/08/28(木) 15:14:25 :
それが偽られた愛情なのだと気づいたのは、いつ頃だっただろうか?
本を読む生活に慣れ始めた頃だろう、ほんの興味本意でお父様の部屋である執務室に入った。
皆で使う共用の書斎(ライブラリー)の本は読み尽くしたので、お父様の執務室にある本を読みたかったからだ。
『決して入ってはいけないよ』
その言いつけを破り、お父様とお母様がいない夜中の時間に私はこっそりと毎日執務室に通いだした。
思っていた以上に私が知らないジャンルの本や読んだことがない本がたくさんあった。
私はどんなプレゼントを貰うよりもとても嬉しかった。
本を読むのに夢中になりすぎて時間を忘れることもよくあった。
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- 15 : 2014/08/28(木) 15:42:08 :
それは、ある日の夜のことだった。
いつものように本を読み終え、そろそろ自分の部屋に帰ろうと思っていたときだ。
床から立ち上がり、後ろふと、執務室の立派な机を見た。
机の上には、何やら見慣れない封筒が置かれていた。
……嫌な予感がした。
真っ黒な分厚い封筒に数枚の書類と数枚のモノクロの写真と高価そうな紙に立派な筆で書かれた一枚の手紙。
パーティの招待状でもない。仕事関係の書類でもない。
そこには……
「……何よ…これ…」
一瞬、鼓動が強くなったのが自分でも分かった。
呼吸をするのも忘れてしまう。
目の前がチカチカするような不安定で謎の恐怖心が私を襲う。
嫌な脂汗が背中を伝った。
見間違いをした訳でもない。私の目が腐っている訳でもない。
「嘘…でしょ……?」
私ハンジ・ゾエという人間には戸籍どころか、名門貴族であるゾエ家にも、この世界にもそんな人間など……存在していないのだ !
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- 16 : 2014/08/28(木) 16:39:41 :
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それはゾエ家の戸籍が記された紙だった。
いわゆる家系図というやつだ。
だが何度見ても私の名前は記されていなかった。
きつく握り締める手に汗が溜まる。
「何で、どうして…」
持っていた家系図を机に置き、真っ黒な分厚い封筒を一目眺め、中身を漁る。
その中には数枚のモノクロの写真があり、赤ちゃんぐらいの幼子の写真が入っていた。
写真は年季が入っており、どれも古い。
他の写真にはその赤ちゃんや、大人と思われる二人の人物も写っていた。
「…写真……?」
真ん中に三歳か四歳ぐらいの幼子、両端には大人二人が居るが顔の部分が擦れ人相はまったくと言っていいほどに分からない。
服装からしてさほど身分は良くない、貧しい生まれの男性と女性だろう。
その男性の左手とその女性の右手が幼子の肩に置かれていた。
この子……すっごく嬉しそうな顔してる…
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- 17 : 2014/08/28(木) 16:58:24 :
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というか、見覚えがある顔な気が……
「あれ……私っ!?」
この子の首……鎖骨らへんに、ほくろがある。
ほくらだけで私だと思ったのは、同じ位置に少しハートの形をしたほくろを私もあるからだ。
ということは……この写真に写る子は、全部私なの !?
「……それにしても、訳が分かんないよ。どうして…」
私は、この家の子じゃない。
とにかくそれだけは分かった。
じゃあ、どうして私はこの家に居るのか、存在してるのか、本当の両親は居るのか……?
次々と溢れ出る疑問が私の思考を貪りつくす。
「この手紙は……何かしら?また封筒に入ってるけど…」
また小さい封筒に入った手紙を取りだし、読もうと手紙を開けようとしたが少し躊躇いその手を止める。
この手紙には、きっと真実が書かれているのだろう。
何となくそんな気がしてならない。
視界が滲みそうだ。
さっきから泣きたくて仕方がなかった。
ーそれでも泣かないのは、何か怖くいものがあり覗いてはいけない恐怖心と真実を突きつけられ揺さぶる不安と……溢れるほんの僅かな好奇心があるからだろう……。
そんな自分が何故か恐ろしくて、そして、少し驚きを隠せない。
弱虫で情けなくて意気地無しな自分が、私には今度胸ある他の誰かに思えた。
止めていた手を動かし、その手紙をゆっくりと開いた。
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- 18 : 2014/09/02(火) 18:38:14 :
カツ、コツ…
手紙を開こうとした時、やけに響く単調な音が聞こえた。
もしかしたら……お父様かしら?
誰にしろこの部屋に私が居ることがバレたらまずい。
咄嗟に手紙を握り締め、廊下に誰もいないことを確認して慎重に部屋から抜け出した。
(私は、この家の人間じゃない…)
夜中の静かな空気を感じながら、ひとりごちる。
これが真実でないと信じたい。
信じたいけれど……
豊かで恵まれた環境に生まれ、両親からも愛された御嬢様。
そんな私だった今の私には、胸にぽっかりと穴が開いたような何とも形容しがたい思いが底から沸き上がってくる。
(もし。もし、これが真実なら……私は…)
ー偽られた愛情なんて、クソくらえだ。
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- 19 : 2014/09/02(火) 18:54:50 :
ーそれからの私は、少し自暴自棄気味になっていたと思う。
どんなことでもお父様とお母様と話すことを拒むようになった。
怒っているわけじゃない。
少し距離を置きたかった、遠ざけたかっただけだ。
お父様にお母様、お兄様にお姉様……の四人家族、それがこの家名門貴族であるゾエ家だ。
私は "ここ" に居る必要などない。
ただ "ここ" に居ることを強制してくるお父様お母様の気が分からない。
……分かったところで、それは私にとって理解しがたいものなのだろう。
だから、私は "ここ" から離れたい。
ーそう考えてた矢先のことだ。
ある一つの願いが、運命を運ぶようにハンジの前に転がってきたのだった。
その願いはのちに、ハンジの執着深い生きる意思となる。
*
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- 20 : 2014/09/05(金) 19:49:17 :
- ◆◇◆
すいません……今日中に書き終わる自信がまったくないです。ありません。
学生という身で学校が始まり忙しく、ここ最近ssnoteにも来れませんでした。
そして受験生ということで勉強などがあり、中々執筆が進まないためいつも亀さん更新ですいません !
亀さん更新になりますが、最後までしっかりと書こうと思うので陰からでもいいんで応援お願いします ! 笑
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- 21 : 2014/09/11(木) 18:48:07 :
*
「…ふぬぅ……ふにゃあっ !?」
勢いよく毛布を蹴り、飛び起きると窓から見える景色は夕日に染まっていた。
「……寝過ごした」
急いで部屋着を脱ぎ捨て、私服に着替えようとするが物が散乱したこの部屋では、服を見つけるのも困難だ。
あぁ、もう何でこんなに散らかってんのさ !
それはお前が掃除しないからだと、一人でツッコミを入れてしまいそうだ。
無難な服に着替え終わったその時、あることに気づいた。
「あっ、そういや、手紙とか届いてるかな 」
今日は一度も覗いていない郵便受けの中を確認しようと、散乱した物をなるべく避けながら部屋の外に向かう。
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- 22 : 2014/09/11(木) 19:02:34 :
- 真っ黒の郵便受けの中を覗くと、そこにはいくつかの手紙が入っていた。
「…これは書類、これは……手紙?誰から?」
一つは仕事の書類、そしてもう一つは……、
きらびやかで上品な封筒に、見たことのある筆で私の宛名が記されており、手紙を封する留め具には……
正真正銘…、ゾエ家の家紋がはっきりと彫られていた。
頭の中が真っ白になった。
ハッとして我に返った時にはどれくらいの時間が過ぎただろうか?
目を閉じて、こめかみを押さえ、唾を呑み込み、そうしてまた手紙を見つめる。
やっとのことで出た声は、男のような低い声で掠れていた。
「…どうし、て」
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