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硬い絆
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- 1 : 2014/08/05(火) 01:54:17 :
- 「ちくしょう……サシャ…コニー?」
「何ですか…?」
「ジャン………用件は何だよ?」
目の前には巨人の群れがあり、俺達はあと少しで巨人の餌食になりそうなんだ
逃げようって思っていても、足が動かないんだ。
「怖いです……私…今すごく怖いです」
サシャは小さな子供が泣くのを我慢してるような声で呟く
「死んだら………母ちゃんに会えるかな?」
コニーは何かを悟ったかのような顔をしてしまっている。
「死にたくねぇよ……糞が…」
立体起動装置のガスは残っているけれど、全員が助かる量じゃない
必ず誰かのガスがなくなってしまう
なくなって巨人に殺される友の屍を踏み越える選択か――――
ここで3人で死ぬかの選択に迫られた。
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- 2 : 2014/08/05(火) 01:54:49 :
- 「ちょっとだけ……俺の話するぞ?」
「ジャンの失恋の話はいいです………詰まんないんで」
「そんなんじゃねぇよ」
ミカサは俺が死んだら悲しんでくれるのかな?
足を引っ張ってたからな俺は…
アルミンに命を助けて貰ったしよ
「俺は死ぬなら綺麗に死にたい」
巨人の口のなかに入って、吐き出されるのだけは嫌だった
「………私もです」
「どうする?3人で一斉に切りあうか?」
「コニーにしてはナイスな案だな」
俺達は普通に生きたかったんだよ
ブレードを握って3人が立ち上がる
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- 3 : 2014/08/05(火) 01:55:13 :
- 「痛い……ですよね」
「頼むから、しくじるなよ?」
「ジャン……それは約束できねぇよ…俺の手さ……震えてるからよ」
3人の手は恐怖で震えてしまっている
ブレードを握ってる手が目で見て分かるほど震えている
「…」
ジャンは巨人の方を睨んだ
目の前に迫っている巨人は3人を見て微笑む
「気持ち悪い面しやがってよ」
巨人は俺達にとっては『悪』でしかない
例え元々が人間だったとしても俺達には『悪』であり『敵』なんだ
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- 4 : 2014/08/05(火) 01:55:38 :
- 「最後に何かお話しませんか?」
瞳に涙を見せる女の子が話し出した
「サシャの思い出はなんだ?」
「私ですか……そうですね」
走馬灯のように今までの思い出が甦ってくる
私は父に会えた時の話をしようとしたのに
「ライナーが私のことを誉めてくれたんですよ!」
声に出たのは『鎧の巨人』である『昔の仲間』の話だった
「何で誉められたんだよ?」
ジャンが興味深そうな顔をしてサシャに質問した。
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- 5 : 2014/08/05(火) 01:56:04 :
- あの時は簡単な訓練だったんですよね
別に私にとっては何も苦にならない訓練
「いやっほぉ!!!」
私は立体起動装置で山の中を飛んでいたんです
誰よりも早く目的地に着くことを目的とした訓練でした
私には得意な感じの訓練でしたので何も苦労せずに終われると思ってたんです
「……あぶないですよ!!」
とっさに右を飛んでいた訓練兵が体勢を崩して落ちていくのが見えたんで私はその人の所に戻って行ったんです
「大丈夫ですか!?」
駆け寄ってみると意識を失ってしまってる男子訓練兵の姿がありました
出血が酷く、ほっとくと死んでしまうと思った私は彼をおぶって連れていこうと思ったんです
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- 6 : 2014/08/05(火) 01:56:32 :
- 「へぇ……それで?」
「勿体ぶらずに教えろよ!芋女!」
「コニーはうるさいです!」
その後は私は結局、ビリになることを覚悟していました
私の上を誰もが見て見ぬふりをして行ってしまうので……
「はぁ……クリスタとかユミル達も同じ場所だったら力を貸してくれたと思いますけどね」
正直に言ってしまうと中々の重さで辛かったんです
でも休んでしまっていたら死んでしまうと思ったんです
教官のいるところまでの辛抱だと思って頑張ってたらですね?
「サシャ!よく頑張ったな!」
「ライナーじゃないですか!!」
誰よりも前にいたはずのライナーが戻って来たんですよ
どうも後からライナーに追い付いた人がライナーに怪我人がいることを教えたらしくて戻って来てくれたんです
「後は俺がおぶってやる!サシャは休んでろ……何なら今からでも先頭の奴等を追いかけろ!」
こんな事を言ってましたよ?
「そ、そんな薄情な事は絶対にできません!!」
「そうか……お前は優しい奴だな」
「優しい奴ってライナーに言われたら何か嬉しいですね」
素直にそう思っていたから言ったんですよ
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- 7 : 2014/08/05(火) 01:57:01 :
- そしたら……
「俺は優しく何かない……最低の糞野郎だよ」
「意味が分かりませんね?」
「………俺のこの両手も体も……全てが糞なんだよ」
「う~ん、言ってる意味が分かりませんね?」
「ライナーは今ですね?その糞と言ってる手と体で人を助けてるんですよ?」
私は自分が思った言葉を口に出したんです
彼は驚いたような顔をして
『そ、そうか………そうだよな』
何かを噛み殺すような声でですけど、そう言ったんです
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- 8 : 2014/08/05(火) 01:57:23 :
- 「終わりか?」
「ジャンは大人しく聞いてくれるんですね」
「………俺も大人しく聞いてたろ」
コニーが少しだけ寂しそうに答えた
巨人の方を見てみると、まだ少しだけ話すことが出来ると思いました
「サシャ……話の続きはねぇのか?」
「……私だけ話してても詰まんないです………次はジャンの番です!」
サシャは涙声でジャンに話をさせようとした、その気持ちを察したのか、ジャンは話を始めた
「俺もライナーの話をするか」
ジャンは訓練兵の時にライナーの事をどう思っていたかを話し出した。
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- 9 : 2014/08/05(火) 01:57:43 :
- 最初のイメージは体の大きい奴で俺達から距離をとってるような気がしてた
ベルトルトやアニと同じようにな
それでもライナーは俺達とすぐに仲良くなったんだよ
「ライナーは憲兵団に入るのか?」
成績上位の俺達なら憲兵団に入って内地で安全な暮らしをするのが普通だと思ってたんだ
ベルトルトも憲兵団に行くって言っていたからライナーも憲兵団だと思っていた
「俺は調査兵団でも良いと思ってる」
その言葉を聞いたときに1番驚いていたのはベルトルトだったよ
今考えてみたらさ、あいつら3人は憲兵団に行って何かを探ろうとしていたのかもな
だからライナーの言葉にベルトルトは驚いたんだろうな。
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- 10 : 2014/08/05(火) 01:58:09 :
- 「そんな事があったんですか?コニーは知ってましたか?」
サシャはコニーに話を降ったら、コニーは天才だから知ってたと答えた
今から自分達の命を絶とうとしているときに、何故か訓練兵の時のような雰囲気に包まれてしまった
「あの時も……」
ジャンが話の続きをし始めた
「ら、ライナー」
女型の巨人に……いや、アニに握られてエレンの居場所を教えたあの時のライナーは何だったのか
お前達が言う『戦士』だったのか?
それとも『兵士』だったのか?
「俺には分からねぇよ……馬鹿ライナー」
「今の言葉をライナーに聞かれてたらぶっ飛ばされてたかもな」
コニーはジャンを馬鹿にするような口調で話しかけた。
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- 11 : 2014/08/05(火) 01:58:31 :
- 「おいおい……次はお前の番だぜ?」
「俺様の話か………そうだな」
コニーは何かを言おうと考えてる様子を見せるが、言葉を発しなかった
「コニー?」
ジャンとサシャはコニーの方を見て、驚いた
彼の目からは大粒の涙が溢れていたからだ
「ど、どうしたんですか!?お腹が痛いんですか!?」
「ちげぇ…ちげぇよ」
霞む声で俺達に訴えるコニー
彼が何を思って2人に涙を見せたのか…
次の言葉を聞いた時にジャンもサシャも涙を流した
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- 12 : 2014/08/05(火) 01:59:01 :
「………死にたくねぇよ」
自ら命を絶とうとしていた
それでも生きたいと思う気持ちは強い
誰しもが好きで死ぬ訳じゃない
誰しもが好きで人を殺す訳じゃない
命の重さを知ってるからこそ、死にたくないと思うんだ
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- 13 : 2014/08/05(火) 01:59:29 :
- 「ちくしょう!」
「ジャン…死にたくないですよ」
「俺だって死にたくねぇよ………どうする?俺達の誰か1人でも助かる方に賭けるか?」
この賭けに出ると言うことは少なからず3人が助かる可能性はない
誰かが巨人の餌食になっている時に逃げることになるからだ
苦楽を味わった仲間
共に人間とも闘い、共に励ましあった仲間
そんな仲間を自分が助かる為だけに『捨てる』事ができるのか?
アニもアルミンを殺せなかった
それは『捨てる』ことが出来なかったからだ
自分自身の心の優しさを……
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- 14 : 2014/08/05(火) 01:59:54 :
『誰が僕達を見付けてくれ』
ベルトルトが言った言葉
3年間苦楽を共にしていた仲間を騙していたけど
その生活の中では自分達も苦しかったから思う言葉
俺達が分かってくれないのを知っているから
自分達を見付けてくれないのを知っているから
俺達も思うよ………
この世界は残酷だって
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- 15 : 2014/08/05(火) 02:00:16 :
「殺るか……お前ら」
ブレードを握る手に力が入る
ジャンの言葉に残りの2人もブレードを握り締める
「最後の闘いですね」
「母ちゃんに会えるかもな」
「俺は空からミカサを見れるな」
巨人達が迫ってくる方にブレードを向ける
最後の最後まで闘うことを選んだ3人
「行くぞ!」
ジャンの言葉に2人は巨人の方に目掛けて飛ぼうとした
そしたら……目の前に大きな体をした男が現れたんだ
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- 16 : 2014/08/05(火) 02:00:58 :
- 「馬鹿か!あんな巨人の群れにお前らが勝てるかよ!」
あの時と同じ声で
あの時と同じ振る舞いで
「………ライナー」
ジャンは驚いた顔をしていた
「な、何でここにいるんですか!?」
サシャは驚きを隠せずにライナーに質問してしまう
「…あ……何だよ?何でだよ?」
コニーは何も分からないって様子を見せる
そんな3人を見て
「行け!エレン達の所を目指して飛べ!闘おうとするな!」
「ひたすら逃げるんだ!」
今のお前は『戦士』なのか『兵士』なのか?
いったい何なんだ?
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- 17 : 2014/08/05(火) 02:01:21 :
「お前は……誰だよ…ライナー?」
ジャンの言葉にライナーは笑って答えた
「俺はライナーだよ……ライナー・ブラウンだ」
「俺の手は血塗れだよ………この手で何かを守れるなら……」
ライナーは自分の手を見て涙を流した、そしてサシャの方を見て答えた
「俺は今から……この手で人を……仲間を助けたいんだ」
嘘じゃないってすぐに分かった
その瞳に『偽り』は無いからだ
「ジャン……サシャ…コニー………お願いがあるんだ」
ライナーは3人の方を真っ直ぐに見つめて話し出しだ。
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- 18 : 2014/08/05(火) 02:01:59 :
「頼む…」
あいつらを見付けてやってくれ
アニを助けてやってくれ
ベルトルトを見てやってくれ
ライナーはそう言うと自らの右手を噛もうとした
「待ってください!」
サシャは慌ててライナーを止めた
「おい!ライナー!」
コニーが何かを言おうとした、ライナーは自分達がやった罪に対しての言葉だと思っていた
「お前も一緒に逃げるんだよ!4人で逃げれば助かるかもしれないだろ!!」
そのお前の馬鹿みたいな言葉が好きだった
サシャ「一緒にパン食べましょうよ!ライナーのパンを私にくださいよ!」
訓練兵の時にお前にパンをたくさん盗られたな……俺は楽しかった
「ら、ライナー」
ジャン……お前が先頭を飛んでいけば大丈夫だ
「…ベルトルトとユミルはアニを助けに行った……早く行って止めてくれ」
アニを助けたい気持ちは同じだ
俺達の大事な仲間なんだ
『仲間』
その言葉を俺が語っても良いのなら
俺にとったらお前達も『仲間』なんだ
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- 19 : 2014/08/05(火) 02:02:27 :
- 巨人の群れの方に歩き出す
その姿を見たジャンが叫んでくれた
その言葉を聞いた時に、心の奥底にある何千とある鎖の1つが解放された気がした
「アニはエレンと闘って負けてすぐにな!自分の体を結晶みたいな……高質化?よく分かんねぇけどよ!!アルミンが言ったような事にはなってねぇよ!!」
「いいか!!ライナー!絶対に死ぬんじゃねぇ!!」
そう言ってジャンはサシャとコニーに声をかけて空を飛んでいった
後ろから立体起動装置のガスを噴かす音が聞こえる
「そうか……無事だったか…良かった」
ライナーは巨人の群れの中に飛び込んだ、自らの右手を噛む
稲妻が落ちる
硬い鎧に包まれた巨人が現れる
鎧の巨人は走り出した
『人を殺す』ためでなく『仲間を守る』
そのために走る
大量の巨人に襲われながらも走る
少しでも多くの巨人を自分に引き付ける
少しでも多くの巨人を倒す
そんな時に彼の頭の中に浮かんだ光景
ベルトルトやアニの笑顔がある未来
皆で笑ってる未来を想像していた。
硬い絆
――Fin――
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- 20 : 2014/08/05(火) 02:04:17 :
- こんな話があっても良いのではないか?
そういう私の妄想が産み出したお話です
最後までお付き合いしてくれた皆様ありがとうございました。
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- 21 : 2014/08/10(日) 16:39:59 :
- 男気あふれるライナーと、彼らを仲間だと信じて共に過ごした時間を振り返る3人の描写に涙が出ました。
山奥組の境遇は彼ら自身にとっても、104期生全員にとっても単なる勧善懲悪では片づけられなくて、心の整理なんていつまでもつかないだろうなと思います。
もう一度、全員が同じ方向を向いて力を合わせる、そんな場面が原作でもあるといいなと思います。
素敵な作品をありがとうございました。
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- 22 : 2014/08/11(月) 00:10:09 :
- なすたま@ゆるゆるリハビリかなさん
ライナーみたいな兄貴の存在は同郷組にも104期組にも頼られる存在だったと思ってるんです。
そんな中にライナーとの絆があって、ジャン、サシャ、コニーの3人はその絆を感じ取ってくれるという妄想がこんな形になりました…
原作を読んでいると外国などにいる少年兵と思ってしまうんです
アニ、ライナー、ベルトルトも本当はまだまだ子供なのに闘わないといけないという使命を背負っているのが読んでいて心苦しくなります
104期も同じ境遇だと想います
私も彼らが同じ方向を向けるストーリーが来てくれるのを願ってます。
コメントもしてもらえて嬉しいです
星も本当にありがとうございます。
励みになります!本当にありがとうございました!!
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- 23 : 2015/01/07(水) 00:22:34 :
ライナー兄貴、本当に大好きです
原作にこういう救いがあれば感涙ですよ
基本的に絆云々で叫ぶジャンとコニーや、優しいサシャは原作でも頑張っていて、このSSをみてやってくれそうな気がしました( ^^)/
‘戦士’と‘兵士’の狭間でいきるライナー兄貴は全てにおいて大きくて、少し弱い生き物なんですよね
一直線に仲間のために戦えたらきっと鎧の巨人は最強ですよ
素敵な作品ありがとうございます
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- 24 : 2015/01/07(水) 09:32:30 :
- 影刻さん
原作でライナー達がジャン達を助けてくれたりするシーンが来てくれたら嬉しいですよね♪
ジャン、サシャ、コニーは何だかんだ山奥3人組の使命が明らかになってきたら協力して欲しいですよね…(泣)
ライナーは強く、弱く…もちろんベルトルトとアニも弱い人間なんだと思います
そうですね!鎧の巨人は仲間のために戦えたら最強ですね!原作でそうなるように祈ってます!!
こちらこそ読んで貰えて嬉しいです!暖かいコメントもありがとうございます♪
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