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ペトラ「我儘なお騒がせ御坊っちゃんと」リヴァイ「生意気でクソ可愛い世直し執事」

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  1. 1 : : 2014/07/30(水) 12:06:14
    *







    ー"一人ぼっちは嫌だ……"。






    男の子がそう言って泣き喚いたのは、随分と昔のことだ。


    「どうして?」


    彼よりも少し年上の私は泣きじゃくる彼の涙を手で拭いながら、どうしてなのか聞いた。
    泣いているところを見られて悔しいのかそれとも私が嫌いなのか、彼は私を睨み付けながら言葉を紡ぎだそうと必死に泣く。


    「……だって、お母さんとお父さんが…ひくっ。いないっ、僕生きていけないもん……ひっく」


    ただをこねるように私の襟元を掴み引っ張る、まるで子供のようだ……いや、まだたかだか6歳の子供だったことに気づく。
    普段の彼では絶対に見せないような、表情や態度で彼もまだ子供だ。
    無愛想だったが、彼は御両親が大好きだった。
    それは使用人の皆、私も知っていた。

    だから、御両親が死ぬことはいなくなることは……彼には到底堪えられないことなのだ。

    ましてや、6歳の幼い彼の精神では……。


    「情けないことを吐かないで。御坊っちゃんが……貴方が泣いてどうするの?」


    尚更、甘やかすことなんて出来ない。
    御両親はもう生き返らないのだ。……彼は何がなんでも、一人でもこれからを生きていかないといけないのだ。
    私の両親だって…………。
    自分の身の上話をうっかり喋りそうになった口を閉じる。


    「何で、僕はっ……だって」


    「しっかりしなさいッ ! いつまでも泣いて、意気地ないッ !!!!貴方が泣いても御両親は喜ばないわ」


    彼の肩をしっかりと強く抱く。
    と、私は少し驚いた。彼の全身が細かに震えていた。それほどにまで、"一人ぼっち"に怯えていたのだ。


    「だって、だって……怖いよっ。嫌だ、嫌っ……嫌だ」


    それでも泣くことをやめない、次々と涙が溢れだしている。


    「甘えたこと言わないで。貴方は生きていかないといけないの。例え一人でも」


    「無理だよっ。僕は、一人じゃぁ……」


    私だって、本当はこんなに現実を突き付けたくない。もっと優しく甘やかしてあげたい。こんな境遇に運悪く会ってしまった彼を慰めてあげたい。
    でも、私は同情なんて出来ない。そんな資格はない。
    所詮はただの他人にすぎないのだ。





    「……一人じゃない、私がいる。それとも、私じゃ嫌かな?」





    違う。
    本当に言いたかったことは、こんなことじゃない。
    ……違う、違うのに、何で。……これじゃあ、甘やかしてるのと同じじゃない。
    唇をきつく噛み締める。


    「……嫌じゃない…っ」


    彼は私に抱きついて来た。
    何かを我慢していたかのように溜め込んでいたものが、堰をきって涙となりさらに溢れだす。
    私よりも小さいその体を、温めるかのように包み込む。


    「ねぇ……?」


    しばらくして泣き止んだ彼は、私を見上げて声をかけてきた。その瞳を眺めるように視線をやると、上目づかいで見上げてきたその瞳は、まだ涙で潤んでいた。


    「ん、何?」






    「……絶対に俺を一人にするな、約束しろ」






    やっといつもの我儘な彼に戻った。
    我儘でお騒がせで暴君ですっごくムカつく御坊っちゃん。そんな彼に従う私は、馬鹿。


    「ーかしこまりました……リヴァイ御坊っちゃん」


    憎たらしいほどにその時の彼の笑顔は、幼い子供のそれだった。









    ーそれから三年の月日が過ぎた。あの日以来、彼の頬に涙が溢れ落ちたことはない………。









    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆(//∀//)☆


    こんにちは!!!!
    今回は、愛に飢えた砂糖楽夢音が某・執事漫画に刺激され、服従系・男女逆転世直し学園ラブコメストーリーでも執筆していこうと思います!!!!
    タイトルを見て「何じゃこりゃ!?」って思った方、こういう訳のわからないssです。
    CPは見て分かりますね、リヴァペトです、はい(#´ω`#)ノ♪
    本っ当に、いつも亀さん更新ですが、さらに亀さん更新の予感がします……。
    複数もss投稿してる馬鹿ですが、応援をこちら http://www.ssnote.net/groups/570までいただけると嬉しいですっ!!!!
    執筆中は、コメントを制限します。すいませんm(__)m
    では、よろしくお願いします☆
  2. 2 : : 2014/07/30(水) 15:29:50

    *



    ー切り裂くような鋭い風が私の頬を掠る。



    ふと後ろを振り返れば何とも言いようのない……大きい、大きい手の平が刻一刻と目の前に迫っていた。


    あぁ、あの手に捕まれば私は消えてしまう……。


    誰かがそう言った訳でもない、私が本能的にそう思った。全身に感じた。


    言わなくても思わなくても、感じなくても分かる。見るだけで……このべったりとした鮮やかな鮮血が舞い踊る、踊る。


    私の顔に降りかかった仲間の血が、否応なくに逃走心を駆りたたせる。


    戦えない、皆消えた。私が戦っても意味などない。消えていくだけだ。助けてくれる人もいない。


    あぁ、いよいよ最後の一人だ。一人か。それもまたいいわね……。


    『逃げないと』


    何処によ……、逃げ場なんてないじゃない。


    『そのまま真っ直ぐ走り抜けて、きっと貴方はー……』


    くぐもって声が聞こえなかった、けど、何をすればいいか。それだけは分かった。


    向かう先に、ぼんやりとした輪が見えた。


    そこへ必然的に何かに吸い込まれるように走る。


    その時だった。






    ーちらりとその世界が顔を出した瞬間……、私の意識は途切れた。







    *
  3. 3 : : 2014/07/30(水) 16:01:41

    ***


    ペトラside


    騒がしいタイマーの音と共に、私は飛び起きた。


    こめかみに汗が伝う感触が何故かぞわりと背筋を凍えさせる。
    何度も瞬きをして、汗を拭った。


    「……っ、はぁ」


    肩が上下に激しく揺れる。
    息をゆっくりと沢山吸い込み、そうしてようやく溜め息をついた。

    昔からだ。
    訳の分からない"夢"をかれこれ10年以上も長い間、見続けている。
    明日も見るかもしれない、明日は見ないかもしれない……いつ見るかも分からないたかが"夢"に、私は怯えている。
    しかも必ず決まって、意識が途切れる瞬間から目が覚める。
    その先は、まだ一度も見たことがない。
    まったく……寝起きの気分は、最悪だ。


    「ひどい顔……」


    ベットの真正面にある鏡には、自分とは思えないようなぐったりとした顔をした少女が写っている。
    これからも"夢"に振り回され続けるのか……。


    「……支度、しないと」


    時間に遅れてはならない。
    しっかりしないと、両頬を叩き、気合いを入れた。


    *
  4. 4 : : 2014/07/30(水) 22:08:38
    1、絶対服従の美



    ー執事の朝は、早い。



    まず、5:50までに、起床・身支度を整える。
    次に6:00からは、御屋敷の中に使用人専用のホールがあり、家令(ハウススチュワード)から指示を仰ぐ。


    「今日は……で…よ。…が……だから、……で。後はその書類読んで使用人に指示出して」


    「はい」


    ちなみに、家令は執事より上の立場だ。
    ホールに集まった使用人達へ迅速に且つ的確に指示を出し、少し与えられた仕事をこなし終わったころには、私の主人……御坊っちゃんの起床時間だった。


    *


    私は、ペトラ・ラル。
    一応、16歳の女子高校生。
    この偉そうな濃紺の燕尾服を着ているのでお分かりだろうか、この御屋敷の現・当主様の御孫様の執事その一である。
    何故女が執事と思った人も多いのではないだろうか?
    答えは簡単、女だって執事はいる。普通に。
    ……まぁ、私の場合は、ちょっと色々な事があって仕方なくこの職務についたというところだ。



    ー間違っても好きであんな我儘でお騒がせで暴君な御坊っちゃんの執事になった訳ではないことをお分かり頂けただろうか?

  5. 5 : : 2014/07/30(水) 22:36:48
    掃除をするのも億劫になる長い長い廊下を、朝の紅茶(アーリーモーニングティー)やアイロンをかけた新聞などを入れたカートを押しながら歩く。
    廊下の両壁には、有名な画家が描いた絵や彫刻が所狭しと立ち並んでいる。
    この御屋敷にある全ての物は、高価なものばかりだ。
    ……例え、埃をかぶっていてもだ。
    メイド達に掃除するよう後で促しておくか。

    そして、長い長い廊下の一番端の御屋敷の南側にある御坊っちゃんの部屋の前についた。


    「御坊っちゃん、失礼します」


    当然、返事はない。
    ドアノブを捻り、カートを押しながらゆっくりと部屋に入る。
    御坊っちゃんが寝ているベットの近くにカートを置き、窓側に行く。
    閉じきったカーテンを開けベランダの繊細な宝飾がちらつくガラスドアを開けると、眩しい太陽の光とこの時期には丁度良い暖かなそよ風が入ってきた。
    いつもなら、この時点で御坊っちゃんは目を覚ますが今日は起きない。
    ベットへ駆け寄り、声をかける。


    「御坊っちゃん、お目覚めの時間ですよ。御坊っちゃん!」


    気持ち良さそうに熟睡しているらしい御坊っちゃんの肩をシーツの上から掴み、揺らす。
    が、一向に起きる気配はない。
    こんな時間まで呑気に寝てられる御坊っちゃんを羨ましく感じたのは秘密だ。


    「御坊っちゃん!起きてくださいっ!!!!」


    伸びた髪の毛をかきあげ、耳元で大きめの声をかける。
    というか叫んだに近い。

    すると叫び声に少し遅れて飛び起きた御坊っちゃんは、私を睨み付け、いきなり我儘発言を口走った。






    「うるせぇな!!?もっと静かに起こせ、馬鹿っ!!!!!」






    その発言を華麗にスルーした私は、御坊っちゃんに優しく微笑みかけ御辞儀する。


    「御早う御座います、リヴァイ御坊っちゃん」




    ー我儘でお騒がせで暴君ですっごくムカつく御坊っちゃん……それが私の主人、リヴァイ御坊っちゃんその人である。


  6. 6 : : 2014/07/31(木) 21:01:55


    「……っ!!あぁ、おはよう……」


    挨拶ぐらいはしっかり返してくれるのでリヴァイ御坊っちゃんは少しぐらいは成長した方だと思う。


    「まったく少しぐらいは早く起きてくださいよね、もうっ!」


    毎回何度起こしても熟睡しきっていて、御坊っちゃんが自分から朝に起きていることなんて、ほとんどない。
    今日は数回声かけただけで起きたが、ひどい時は両頬を叩かないと起きない。
    どうやったらそんなに熟睡出来るのか……、こっちの身にもなってくれ。


    「し、しょうがねぇだろ……!」


    「あー、はいはい。じゃあ着替えましょうね」


    無駄に広い御坊っちゃんの部屋は、前室、寝室、ドレスルーム、バスルームとドア一枚で繋がっており、この部屋だけでも十分に過ごすことが出来る。
    御坊っちゃんが寝ているベットがある寝室から隣のドレスルームへ移る。
    ドレスルームの両壁には沢山のクローゼットが置いてある。
    さすがお金持ちと言ったところか……そのクローゼットも宝石などの宝飾が施されており、やはり高価そうだ。


    「さて、今日はどんな御洋服にしようかしら……」
  7. 7 : : 2014/07/31(木) 21:14:46


    クローゼットに収納されている御洋服を引っ掻きまわし、本日のコーディネートを考える。


    「よし……、これでいっか!」


    何枚かの御洋服とアクセサリーを抱え、寝室に戻る。
    御坊っちゃんはベットの上で優雅そうに私が持ってきた新聞を読んでいた。


    「遅い。早くしろ」


    我儘自己中発言は無視するのが手っ取り早いのである。
    こんなのにいちいち付き合っていたら、時間のロスだし執事などやっていられない。
    ……私が執事になる前、何人かがリヴァイ御坊っちゃんの執事をしていたらしいがあまりにも我儘な子供(ガキ)で衝突が多々あったらしく、執事が見つからなかったらしい。


    「じゃ、上脱いでって……ボタン外せますか?」
  8. 8 : : 2014/07/31(木) 21:24:57

    「は、外せるっ!!!!」


    実はこの御坊っちゃん、先週まではブラウスやシャツのボタンを外せなかったのである。
    今年で9歳になる御坊っちゃんとしてそれはどうかと思うので、ボタン外しを先週まで猛特訓していたのは、記憶に新しい出来事だ。

    器用に何でも出来るクセして今までこの御坊っちゃんは何にもしていなかったのだ。
    努力という言葉を知ってほしい。

    何とかボタンを外し終わりパジャマを脱いだ御坊っちゃんの腕にワイシャツを通す。


    「今日も学校か……、つまんないな」


    「そんなこと言っちゃって……、本当は楽しいんでしょ?」


    返事はなく、何処かを黙って見つめている。
    黙り込んでいるところがまだ子供特有の幼さだと思う。


    「ブラウスは淡い水色にして、リボンは落ち着いた茶色で甘く仕上げました。後は制服のジャケットをその上に着て、ハットかぶればいいよ」


    「……」


    我ながら中々のセンスである。うむ。
  9. 9 : : 2014/07/31(木) 22:04:45
    着替えが終わり、テーブルに座った御坊っちゃんが口を開いた。


    「今日はセイロンか……」


    「香りだけで分かるようになったのね……、さすが天才児」


    まぁ、御坊っちゃんは天才児である前に無類の紅茶好きでもあるので香りだけで分かって当然である。
    熱いものが苦手な猫舌の御坊っちゃんの為に丁度良い温度で朝の紅茶(アーリーモーニングティー)を用意されたティーセットに淹れる。


    「……おいしい。紅茶、淹れるの上手くなったな」


    私に誉め言葉(?)らしきものを呟くと、御坊っちゃんはティーカップをテーブルに置いた。
    見てみると、多めに淹れたはずの紅茶には、水の一滴でさえ何も入っていなかった。
    一気飲みした。


    「もう茶葉まで飲んじゃって……」


    御坊っちゃんの奇行に呆れつつティーカップを片付ける。


    「朝食はもう用意されているはずだから、当主様……御婆様のところへ行こうっか?」


    カートを押し部屋を出ようとした時、後ろから何か強く掴まれた。
    後ろを振り向くと、私よりもかなり身長が低い御坊っちゃんが燕尾服を掴み、上目遣いで私を見つめていた。
    物言いたげなその表情に私は「ん?」と首を傾げながら、問いかけた。


    「い、いつもの……やつ」


    唐突に言われた"いつものやつ"を今まで忘れていたことに気づく。
    物欲しそうな顔を見るとまだまだ子供だなと思う。


    「あ、あはは……ごめんなさい。忘れてました」


    燕尾服の胸ポケットから、ものを取り出す。
    それは、ガラス細工のように細かく吸い込まれるような淡く澄んだ碧色の宝石のピアスだ。
    それを片方だけ御坊っちゃんの左耳につける。
    動くと揺れ、キラキラと静かに輝く……素敵な代物だ。



    ーそして少し伸びた前髪をかきあげ、額に優しく口付けをした。


  10. 10 : : 2014/08/01(金) 19:36:40
    *


    「お前は相変わらず、燕尾服か……」


    いつもどおり御婆様の待つ食堂(ダイニングルーム)へ向かうため、御坊っちゃんの後ろについていきながら長い廊下を歩いていると、御坊っちゃんは突然そう呟いた。


    「仕方ありませんね。……まぁ、学校では制服なので宜しいのではないかと思いますけど」


    私が着ている燕尾服は男性が着るべき服として作られていたので、私のサイズに合うようオーダーして作ってもらった。
    動きやすいし、何よりもデザインが少しだけ女性らしく甘く作られているので結構気に入っている。


    「俺的には、メイド服とかドレスとか女性らしい洋服を着ているところを見たい……。見せろ」


    出た、我儘発言。


    「御坊っちゃんの好みを押し付けられましても……」
  11. 11 : : 2014/08/01(金) 21:48:14

    「まぁ、いつか見てぇと思っただけだ」


    これが9歳児の考えることなのだろうか。


    「……いつかじゃなくても御坊っちゃんは、いつも強制的にそうしますけどね」


    ぼそっと聞こえないように小さめの声で呟いたが、御坊っちゃんには聞こえていたらしい。
    クソ、地獄耳め……。


    「ほぉ、よく分かってんじゃねぇか……」


    後ろを振り向き、私を見据えニヤリと口角をつり上げ大胆不敵に笑うその姿は、……悔しいけれどそこらへんの生意気な子供には見えないことを私はよく知っている。
    そう憎たらしい程にそれは一番私がよく知っていて、分かっていて、認めている。
    けれど、まだ幼いあどけなさの残る彼を私は"子供"としてしか見ることが出来ない。


    「そりゃあ、そうです。私、御坊っちゃんに何されたと思ってんですか?それとも覚えていないとでも言うのですか?」


    すると、今度は笑いを吹き出し、笑い続けながら止めていた足を動かし歩き始めた。
    私は御坊っちゃんを追いかけるように足早に歩く。


    「んなわけねぇな ! あれは面白かったしな。昨日のことのように鮮明に覚えてる」


    今すぐ忘れてくれ。
    そう怒鳴り付けてやりたいぐらいに恥ずかしい記憶を思い出してしまった。

  12. 12 : : 2014/08/13(水) 14:47:38

    *


    「御早う、リヴァイ君」


    食堂(ダイニングルーム)に入室すると、すでに御食事を始めていたらしい当主様……御婆様は、にこやかに微笑み挨拶をした。
    それにならって、私も頭を下げる。
    長いテーブルの端と端に対峙するように置かれた、御坊っちゃんの椅子を引き、布ナプキンを首にかけさせる。
    他の使用人達は部屋の隅で待機しているが、私は少しだけ御坊っちゃんに近い場所で待機する。

    御坊っちゃんは軽く御辞儀をした。


    「あぁ、御早う御座います。アンカ御婆様、お久しぶりです」


    この方は、この御屋敷(カントリーハウス)の現・当主様であるアンカ・ラインベルガー様。
    甘栗色の髪の毛はふんわりとしたショートカット、同じく甘栗色をした目は揺らがない意思を込めている。身長は私とさほど変わらない。
    お歳を召され、かの若い日の美貌は衰えてしまわれたが、歳を重ねるごとに温厚で気品の漂う、優しい包容力を持つ御婆様になられた。
    でも意外とお茶目だったり、強気な態度で、責任感が強かったりと還暦を越えた今でも御仕事をされている元気な人だ。
    強きで意思が揺らがない性格は、アンカ御婆様の息子の子供、つまり御孫であるリヴァイ御坊っちゃんに受け継がれたのだなと思う。


    「ふふっ、そうね。しばらく会っていない間に………あんまり成長してないわ、ね?」


    「何故、疑問形なんだ……、成長した。身長3mm伸びた」


    ちなみに、御坊っちゃんに身長の話はタブーだ。
    御婆様だから怒られるなんてことはないが、あまりその話題には触れない方が賢明だ。
  13. 13 : : 2014/08/13(水) 15:15:23

    「え~、そうかしら?あんまり変わんないけど……まぁ、いいわ」


    少しむっつりした顔をして、千切ったパンを口に運ぶ御坊っちゃんにバレないように、笑いを堪えた。


    「そういえば、学園の方は、どうなの???確か入学して一ヶ月経ったわね。飛び級制度でもう高校生の御勉強してるって聞いたけど……すごいわね」


    「えぇ。正確には、大学生の分野を。まぁ、そこそこに頑張ってる」


    悔しい事に私よりもこの御坊っちゃんは頭の出来が宜しい。
    天才児、恐ろしや……。


    「……学園の方は、まぁ、適当に楽しんでる」


    「それはもう、リヴァイ御坊っちゃんは存分に楽しんでおいでですよ。安心なさって下さいませ、アンカ御婆様」


    私は御坊っちゃんの責めるような視線を無視して、皮肉を言うようにすかさずそう言った。


    「あら、まぁ~良かったわ~。ちょっと心配してたのよ……人付き合い苦手そうだし」


    人付き合い苦手というか、愛想がないだけだと私は思う。
  14. 14 : : 2014/08/13(水) 15:27:08

    「……」


    お?
    見るからに不機嫌になっていってる。


    「……御婆様は、次は何処へ行く予定ですか?」


    あ、敬語喋ってる。あの御坊っちゃんが………!?
    口の悪さだけは、一人前のあの御坊っちゃんが……少し成長してる。


    「次はヨーロッパの各地を回りながら仕事ね……あ、お土産買ってきたから後で渡すわねリヴァイ君。あと、ペトラちゃんにも」


    「わ、私にですか!!!?……そんな私は」


    「いつも可愛い孫の御世話をしていただいてるからね、気遣わなくていいわよ?」


    た、確かに御坊っちゃんの世話が私の今の生活の全てであり、中心となっているが……御婆様から、お土産なんて、恐れ多い……


    「あ、ありがとうございます……!!!」

  15. 15 : : 2014/08/13(水) 15:41:52

    「やっぱりアメリカは落ち着くわね……」


    「田舎ですけどね」


    周りは畑や原っぱ、木々が生い茂っていて、自然豊かで過ごしやすい気候だ。


    「ふふっ、田舎の実家だからよ」


    「……そういえば、まだ御伝えしていなかった。今日からペトラと学園に近い高層マンション…あ、御婆様が結構前に買い取ったやつですよ?そこに引っ越します。この御屋敷からだと学園に通うのが遠くて大変なので……」


    え、えええっ!!!!?
    手紙で伝えるって言ってましたよね、御坊っちゃん……うおぉい。
    しっかりして下さいよ。


    「へ~、あのマンションね。ペトラちゃん、孫の世話また御願いしちゃってごめんなさいね……宜しく頼みます」


    「お、御任せ下さい!!!!!」


    こんなに御婆様と会話したのは、久しぶりだわ……御坊っちゃんもそうなのだろうけど。
    もっと楽しく話せばいいのに、もう。

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naorin2004

砂糖楽夢音@復活

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