クリスタ「嘘が好き」
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- 1 : 2014/07/28(月) 20:12:15 :
- クリスタ「にゃー」
クリスタ「ふにゃー」
クリスタ「ふーっ!」
エレン「なにやってんだお前?」
クリスタ「ひょわっ!?」
クリスタが慌てて声のした後方へと首を振ると、黒髪直毛の目付きの鋭い悪人面な少年が、やけに大きな紙袋を両脇に抱えてクリスタを見下ろしているという、一歩間違えれば軽くホラーな光景が広がっていた。
その少年の高い位置にあった両の碧眼が、屈んだクリスタの手の甲に額を押し付けるソレに向けられる。
少年は、ああ、と一人納得した。
クリスタ「な、なにかなその生暖かな目は……? 違うから……! 別に猫とお話してたわけじゃないから!!」
エレン「え? 会話するつもりで鳴いてたのかよ」
クリスタ「ち、違うよ!! もしかしたら会話出来るかな……? なんて微塵も思ってなかったんだから!!」
エレン「で、そいつはなんて言ってた?」
クリスタ「んーとね、最近暖かくなってきて、毛が鬱陶しいんだって。……はっ!?」
エレン「お前下手したら馬鹿の括りに入っちまうぞ」
クリスタ「つい油断しただけだよ……」
エレン「思考回路も十分花畑だろ」
クリスタ「ぐぬぬぬ……」
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- 2 : 2014/07/28(月) 20:13:39 :
- エレンの発言に対して、反論する事が出来ずに唸るその少女の名は、クリスタ・レンズ。
一見、端から見れば博愛主義の女神様のような少女ではあったが、所詮は人間。
皆から認められたいと、人一倍、愛に飢渇しただけの、なんの変哲もないただの人間。
エレンはそんなクリスタの事を、可愛らしい、と不覚にも感じてしまっていた。
自身の趣味なのだから勝手だろう、などと的外れな主張を展開し始めたクリスタに、エレンは逃げるように背を向ける。
最早そういったクリスタの言動に免疫の出来てきたエレンは、今更一々指摘する事はせず、適当に、そうかそうか、と相槌を打っておく。
エレン「はよ帰るぞ」
クリスタ「うん。じゃあね猫さん!」
エレン「にゃー」
クリスタ「ていっ!」
エレン「うおっ!?」
わざとらしくクリスタをからかうと、エレンの背中へと勢いよくクリスタが飛び付いた。
少しバランスを崩しながら、二人は飛び付きの勢いで、エレンを軸にクルクルと回転する。
たたらを踏み、なんとか転倒を回避したエレンの背から、クリスタは軽い調子で飛び降りた。
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- 3 : 2014/07/28(月) 20:14:36 :
- エレン「あぶねえ! こっちは両手塞がってんだぞ!?」
クリスタ「でも大丈夫だったでしょ」
エレン「結果論でモノを語るなっての」
クリスタ「んぇ? けっか……ろん……? ……そうやって難しい言葉をつかって私を困らせる……、言語って面倒だね。もう私は言語を使わないで生きていくよ!」
エレン「お前は言語無しにどうやって生きていこうってんだよ」
クリスタ「……、……」
エレン「……、……」
クリスタ「……、……」
エレン「……、……」スタスタ
クリスタ「あー! ごめんなさい! ごめんなさい! 喋る喋る!! ちゃんと喋るから!!」
エレン「ったく、ほら帰るぞ」
クリスタ「はーい!」
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- 4 : 2014/07/28(月) 20:15:16 :
- こうやって、何気なくクリスタと会話するこの悪人面な少年の名は、エレン・イェーガー。
夢が、壁外の冒険、と言うちょっとした変わり者で、最近の消し去りたい過去は、「駆逐」という単語がどうやら自身の思ってた意味とは違ったらしい事、であった。
親友からそれを指摘され、赤っ恥をかいたのは記憶に新しい。
すると、そんなエレンの抱えていた荷物を、クリスタが強奪の勢いでエレンから奪い取る。
エレンはさして咎めるわけでも、声をあらげるわけでもなく、重いぞ、と短く気遣いの言葉を投げ掛ける。
対してクリスタは、明らかに平気ではない額に汗の浮き出た顰めっ面で、平気、と一言。
別に、不機嫌なのでアイツから荷物を奪ってやろう、イッヒッヒッヒ、などと言う理由でエレンから荷物を強奪したクリスタではない。
ただの優しさ、それだけであった。
エレン「大丈夫かよ、今のお前千鳥足もいいとこだぞ」
クリスタ「人の好意は素直に受け取りなさい……」プルプル
エレン「産まれたての子鹿みてえだな」
クリスタ「鹿って可愛いよね……」プルプル
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- 5 : 2014/07/28(月) 20:16:25 :
- まあなー、エレンは相変わらずの適当な相槌を打っておく。
別に普通に会話として繋げても一見、問題なさそうにも思えるが、それは甘い見解であった。
どこか虚空へと虚ろに視線を彷徨せ、エレンは記憶を掘り返してみる。
すると出てきたのは、動物談義なるものに丸々一日付き合わせれたという、これまた記憶に新しい出来事であった。
エレンは少しわざとらしい位に、話題を分かりやすく変えてみる。
エレン「そういえばクリスタ」
クリスタ「ん……?」プルプル
どうやらクリスタは、エレンの意図には気付いてすらいないらしい。
エレンは、クリスタがちょっと抜けてて助かったー、と胸を撫で下ろす。
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- 6 : 2014/07/28(月) 20:17:29 :
- エレン「ユミルから伝言だ」
クリスタ「なに……?」
エレン「クリスタに手を出したら挽き肉として人生を謳歌する事になっからな、だそうだ」
クリスタ「ごめん、それエレン宛の脅迫だよね?」
エレン「そうか? これは、俺がクリスタに手を出したらクリスタが挽き肉なるぞという意味での警告じゃないのか?」
クリスタ「なにそのスプラッタな関係!? なんなの!? 私達の間に何があるって言うの!?」
エレン「そりゃまあ、イェーガー(猟師の意)って言う位だしクリスタを美味しいハンバーグにでもすんじゃねえか? 確かに人生を謳歌出来るな」
クリスタ「しかも加害者がエレンだった!?」
クリスタが「え? え?」と、お得意の純粋無垢さ加減を発揮して、本気で戸惑い始めてきたので、エレンは、冗談だ、と快活に笑う。
エレン「クリスタの清潔な肉なら、若干生でも食えるって」
クリスタ「誰も焼き加減の話はしてないよ!?」
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- 7 : 2014/07/28(月) 20:18:17 :
- 揶揄いがいがあるなー、とエレンがいじめっ子の片鱗を垣間見せていると、クリスタは頬を膨らませ、これ持たないよ? とクリスタなりの脅しを展開する。
ただ、そこで別に一人で持てるし、なんて事を言ってしまっては火に油なのは、火を見るよりも明らかなので、エレンは、すまんすまん、と謝罪の言葉を二回並べる。
クリスタ「ダメだね、心がこもってないよ。そんなエレンにはこれあげないよ?」
エレン「うぐ……」
クリスタが両手で必死に抱えていた紙袋を少しだけ持ち上げた事により、エレンはつい言葉に詰まってしまう。
クリスタの、子供が頑張って悪戯をする様、の定例のような表情を見る辺り、先程の仕返しなのだろうが、クリスタの思惑通り、それは至極エレンに効果的であった。
クリスタのしたり顔が急いでる朝の寝癖のように鼻に障る。
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- 8 : 2014/07/28(月) 20:18:59 :
- クリスタ「オーッホッホッホ! いいのよ? 別にそんな反抗的な態度をとるなら、これを没収しちゃってもよくってよ?」
エレン「クソッ!! 貧民(人間)は富豪(巨人)には敵わないってのか!! ちくしょう!!」
クリスタ「あはっ! 足を舐めなさい。足の甲から指の先まで隅々とね」
エレン「え? マジで? 足から旋毛まで隅々までねっとりとドロドロに?」
クリスタ「いや、エレン、そこまで言ってない……。え? ちょ、ちょっと待ってエレン? なんでそんな真顔でこっちに迫るの? え、ちょ、あ、ばかッ!! 変態!!」
蛸やイカのような、骨や間接なるものを感じさせない流動的な動きでクリスタへと歩み寄ったエレンの鼻っ面へと、クリスタの小ぶりな拳が深々と突き刺さる。
バタリ、170cmの平均的な身長の男性が地面と接吻した音。
ただ、接吻と謳いながら、何故か心が1ミリたりとも高揚しない事が不思議でならない。
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- 9 : 2014/07/28(月) 20:19:46 :
- エレン「なあクリスタ、君は手加減って言葉を知ってるかい?」
クリスタ「その手加減を無視して掴みかかってきたのはどこの誰かな?」
エレン「なんだって!? そんな発情期の猿みたいな奴がいるのか!?」
クリスタ「………………」
エレン「あふんっ」
地面に俯せに身体を横たわらせていたエレンの背中へと、クリスタの素足が降り下ろされる。
ただそれが、蹴りという暴力的な物でありながら、わざわざ良心で靴を脱いでくれるというアクションを加えるだけでここまで優しげな物になるとは知らなかった。
エレンの知識に新たな駄知識が追加された瞬間であった。
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- 10 : 2014/07/28(月) 20:20:33 :
- クリスタ「まったく、あーあ、結構服汚れちゃったよ?」
エレン「お前のせいじゃね?」
クリスタ「元を辿ればエレンのせいじゃね?」
エレン「………………」
ごもっともです。
ぐうの音も出ない正論であった。
クリスタ「はやく帰ろ」
エレン「そうだな」
クリスタ「というか、荷物大丈夫?」
エレン「なんとか。そっちは?」
クリスタ「こっちもなんとか」
エレン「悪ノリって危険だな」
クリスタ「だね」
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- 11 : 2014/07/28(月) 20:21:53 :
- エレンは、先程袋の上から軽い確認は行ったのだが、念の為という事で、袋の口を開け、中身を覗いてみる。
なんとか問題はなさそうだった。
隣でも、同じように中身を確認しているクリスタが目に入る。
そちらも何とか無問題のようだ。
相変わらず腕が小刻みに揺れているので、兵士と言っても、小柄な体躯からか流石にひ弱なのだと再認識する。
持つぞ、と声をかけると、いい、と何故か妙な意地を張って突っぱねられる。
エレン「なあ、これ帰るだけで日を跨ぐ勢いなんだけど」
クリスタ「全力で……す……」
エレン「持とうか?」
クリスタ「大丈夫……、頑張る……」
エレン「言い方を変えるわ、渡しなさい」
クリスタ「言葉って、言い方次第でここまで意味が変わるんだね……」
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- 12 : 2014/07/28(月) 20:22:58 :
- クリスタは、渋々と言ったようにエレンへと紙袋を手渡す。
クリスタが苦労するだけあって、確かに中々の重量ではあったが、女性よりも肉体的に強靭な男性だと言うのもあるし、常人の中でも、更に兵士の中でも突出して鍛練をこなしてきた身なので、持てない事は無い。
エレンが軽い掛け声と共にそれを抱え上げると、クリスタから、おおー、と羨望の声があがる。
自身に無いものに憧れるのは人間では誰しもが当然の事なので、確かにクリスタの反応は当然の事なのだが、人には人の特長と言った物があるのだから、エレンとしては、クリスタはその弱々しさが魅力なのだから、今のままでもいいのではないだろうか、とも思っていた。
まあ、兵士なので力の象徴である筋肉に憧れるのは正常ではある。
なんだかなー?
エレンは首を傾げて呟く。
クリスタ「うぅーん、流石に力持ちだね!」
だがこうやって直接的に褒められると、それは素直に嬉しい。
調子にのって、上腕二頭筋、いわゆる力瘤を盛り上げてみると、クリスタは更に気持ちのいい声をあげる。
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- 13 : 2014/07/28(月) 20:23:39 :
- エレンの脳裏を、というか脳の中枢を【ロリータコンプレックス】という言葉が駆け抜けた。
………………。
いやいや、ロリコンではないだろー? だって確かに幼女染みた容姿してるけど、同年齢だしね? うん。
ろ、ロリコンではないだろー?
エレンは誰とも知れない誰かに向けて弁解してみるが、本当に誰に向けての弁解なのだろうか。
少しむなしくなってきたエレンは、その弁解という名の言い訳を中断する事にした。
すると、エレンの筋肉質な右腕に、年相応の細腕でありながら、兵士相応の引き締まりのある、エレンの守備範囲ドストライクなクリスタの柔肌が絡まってくる。
何の変哲もない。
今日は四季の中でも特に気温の高くなる朱炎。
おのずと服装は二の腕が露出するような薄着になり、肌同士の密着が起こっても不思議ではない。
そして先程入った通りが、人の往来の激しい大通りだった。
ただそれだけ。
何の変哲もない。
何の変哲もないただの正常。
………………。
俺ってロリコンかもな。
エレン・イェーガーは、この年でそんなアブノーマルな性癖を開拓した。
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- 14 : 2014/07/28(月) 21:24:14 :
- 期待
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- 15 : 2014/08/02(土) 16:13:07 :
- 期待!
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- 16 : 2014/08/03(日) 04:20:24 :
- 期待!
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- 17 : 2017/08/15(火) 01:49:04 :
- きとぅわい
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