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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

江ノ島「さぁ…終わりなき絶望の始まりだぁ!」【CHAPTER1】

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  1. 1 : : 2014/06/18(水) 08:39:24
    江ノ島「CHAPTER1……第一話です」

    江ノ島「序章を見てない方は此方からどうぞ〜!」





    【PROLOGUE】

    http://www.ssnote.net/archives/15903
  2. 2 : : 2014/06/18(水) 11:29:37
    モノクマ「…………………」

    モノクマ「アーーーー・・・・」



    『ザ……ザザザ……ザ…ザ……』


    『ブォン』



    江ノ島『やぁ、ご機嫌如何かな?超高校級の読者である諸君……』

    江ノ島『前作に続き、このシリーズを見てくれていること……大変感謝するよ』


    江ノ島『え?コレは何かって?』

    江ノ島『そうだね……シンプルに言えば「余興」ってところだよ』

    江ノ島『アニメや漫画にもあるだろう?OPが始まる前にあらすじを軽く流すシーン……アレと殆ど大差ないさ』

    江ノ島『コレからこう言った「余興」が入ってくるけど、無理に見ることは無いよ』

    江ノ島『あらすじを見なくても内容を理解できる読者は星の数ほどいるからね』


    江ノ島『……さて、じゃあ早速本題に入ろうか』

    江ノ島『おっと、言い方が悪かったね……あくまで「余興」での本題さ』

    江ノ島『ここで話すことは、簡単にまとめるとこんな感じだ』



    【前回のあらすじ】

    【現在の生き残り人数】

    【???】



    江ノ島『ん、やっぱり【???】が気になるかい?』

    江ノ島『スマないね……今はまだ秘密だ』

    江ノ島『だけど安心してくれ、物語が進めば自然と明らかになるさ…』

    江ノ島『じゃあ、とりあえず現在公開可能な情報を教えるよ?』



    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



    【ゲームは開戦した……どちらかが生き、どちらかが死ぬまで終わらない、悪魔のゲーム……】

    【光と闇。2つの存亡を賭けた殺し合いが……始まった】



    ●━━┫生き残り人数 : 30人┣━━●



    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



    江ノ島『これだけさ、想像以上に簡単だろう?』

    江ノ島『さて、「余興」はここまでにして……そろそろ本編を始めようか』





    江ノ島『《Darkness・Encroachment》【終わりなき絶望と希望の高校生】CHAPTER1………』

    江ノ島『君は希望と絶望……どちらに微笑むのかな?』


    江ノ島『さぁ……始まりだ………』



    『パチンッ』

  3. 3 : : 2014/06/19(木) 04:21:40
    書き方がかっこいい‼︎
    期待です!
  4. 4 : : 2014/06/19(木) 09:53:45
    >>3

    ありがとうございますっ!
    精一杯頑張ります(* ̄∇ ̄)ノ
  5. 5 : : 2014/06/19(木) 20:33:29
    とても面白いです!!
    期待します!頑張ってください!!
  6. 6 : : 2014/06/20(金) 18:51:10
    >>5

    ありがとうございますっ!
    これからも応援よろしくお願いしますっ!
  7. 7 : : 2014/06/20(金) 18:51:18
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    [AM : 7 : 34]



    苗木「う……うぅん………」



    ふと目が覚める。



    視界に入ったのは見慣れないコンクリート製の天井。



    苗木「ここは………?」



    辺りを見回すと、そこは何処かの一室のようだった。


    そして いま自分はその部屋に置いてある粗末なベッドに横になっている。



    (あぁ、そうだ。)


    (確か昨日………江ノ島の話を聞いたあの後、霧切さんの案でこの廃屋に泊まったんだっけ………)



    「泊まった」と言っても、店員どころか人一人居ないのでは「勝手に泊まらせてもらった」に近いけど



    苗木「…………………」

    『さぁ…終わりなき絶望の始まりだぁ!』



    まだ鮮明に覚えてる。


    昨日の出来事を……


    悪夢が始まった……あの瞬間を。



    苗木「……いや、今は忘れよう」



    ほんの少し思い出しただけで吐き気がする。頭痛がする。目眩がする。


    そんな重度の風邪のような症状に侵されてはたまったものではない。



    ひとまず別の話題を考えようと、頭の中大急ぎで整理した。



    苗木「そういえば……朝に招集をかけられてたっけ……」



    何時何分までにかは聞いていない。


    とりあえず枕元に置いてある目覚し時計は7時40辺りを指している。



    苗木「ここでやることも無いし……早く行こう」



    ベッドから降り、ガタついたドアを強引に開けて、苗木はその一室を後にした………。




  8. 8 : : 2014/06/20(金) 22:50:35
    CHAPTER1
     ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
     惨劇と悲劇。困惑と誘惑。
    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 
  9. 9 : : 2014/06/20(金) 23:40:04
    凄すぎる........
    雑草さん話作るん上手いわ。
    羨ましい!
    書き方もカッコええし........神やな。

    期待しかない!
  10. 10 : : 2014/06/21(土) 13:22:28
    >>9

    神ですかw
    ありがとうございますっ!
  11. 11 : : 2014/06/21(土) 23:57:51
    大部屋と思わしき一室には、丸いテーブルを囲うように一同全員が腰掛けていた。



    霧切「おはよう…苗木くん」



    ひと足早く霧切が苗木の入室を確認する。



    苗木「おはよう、霧切さん」

    石丸「遅いじゃないか苗木くん!遅刻とは何事かね!?」

    霧切「いいわよ…別に時間を決めてた訳じゃ無いし」



    早朝から大声を出す石丸を制す。


    正直こんな状況で規律とかどうとか言われても面倒である。



    霧切「とりあえず空いている席に座って」

    苗木「うん」



    見つけた空席を確認し、苗木も腰を下ろした。



    大和田「おう苗木、随分寝てたな」

    苗木「はは…ちょっと疲れてたのかな……」

    舞園「大丈夫ですか?」



    左側には船こぎをする大和田くん。右側には優しい笑みを送る舞園さんが座っていた。



    苗木「だ、大丈夫だよ!少し寝すぎたってくらいで……」

    舞園「そうですか?でも無理はしないでくださいね」

    苗木「はは、そうするよ」



    一段落ついた所を確認し、霧切は咳払いをする。



    霧切「じゃあ…話を始めてもいいかしら?」

    十神「一体何のようだ?くだらん話だったらただじゃ済まんぞ?」

    澪田「霧切ちゃんが言うんすからきっと重要な話っすよ!」

    十神「フン、どうだかな」


    霧切「心配無用よ、皆も気になるような話だから……」



    そう言って霧切が懐から取り出したのは、ホッチキスで挟まれた薄い冊子。


    そう……昨日モノクマから渡された「解説書」である。



    日向「それって……!」

    朝日奈「な、なんか解ったの!?」

    霧切「ええ…ある程度は」

    大神「それを伝える為に呼んだのか……」

    澪田「どうっすか!?可愛くない方の白夜ちゃん!これでもくだらない話っすか!?」

    十神「チッ…オイ、話を続けろ」

    霧切「言われなくてもそのつもりだわ」



    表紙をめくりあげ、霧切は淡々と話し始めた。



    霧切「ここに書かれていたのは、主にこのゲームの説明のようなものだったわ……」

    霧切「最初のページにはこう……」


    霧切「『これは希望と絶望の最期のコロシアイです。どちらかがシニキルまで終わることはありません。』」

    苗木「最期のコロシアイ………」



    つまり江ノ島も本気で、全てを賭けて挑んできている……。


    こんな大掛かりなゲームまで作って……。



    霧切「ここからが本題ね……」

    霧切「解説 : その一……」



    【勝敗の条件】

    ・基本、どちらかが全滅したら終わりだが ゲームを有意義に進める為、以下のルールを提案する。


    1 : 自分が破滅するまで抗い続ける。

    2 : 江ノ島盾子を倒す。

    3 : 仲間を殺し、救済される。


    ※尚、3を適用した場合、絶望の勝ちとなるが 生き残った者には最高のもてなしを約束します。



    苗木「…………………」



    ここまでは昨日聞いたとおりだが、
    やはり何度聞いてもふざけている。


    3番目のルールは明らかに裏切りが目当てだ。


    そうやって憎き希望が全滅していくのを絶望は楽しみたいのだろう……。



    日向「相変わらずフザケたルールだ……!」

    大和田「イカれてるぜ……」

    霧切「続けるわね?」



    次のページをめくり、霧切は変わらぬ口調で続けた。



    霧切「解説 : その二……【侵食者】」


  12. 12 : : 2014/06/22(日) 00:03:18
    侵食者.......だと.......!
    めっちゃ気になるやんか‼︎

    期待♪
  13. 13 : : 2014/06/22(日) 19:03:43

    「「侵食者?」」



    聞き慣れぬ単語に一同の声が一斉に被る。



    霧切「Darkness・Encroachment……」

    霧切「私達が『D・E』と呼んでいた者の正式名称よ…」

    霧切「別名、『闇黒に侵されし者』とも言うみたいね」

    十神「名称などどうでもいい、問題はその侵食者が何だと言うのだ?」

    大神「それは昨日我らが倒したはずだが……?」

    終里「もしかして食えるのか!?」



    終里のぶっ飛んだ発言はひとまずスルーし、霧切は話を続ける。



    霧切「彼らの体内、遺伝子は全て絶望病で構成されていると分かったの」

    舞園「!? そ、それって……」

    霧切「えぇ、つまり彼らから一度でも傷を負わされたらその場で絶望病に感染するわ……」

    「「!?」」

    大神「なんと……!?」

    山田「ど、何処かのゾンビ映画のような話ですな……」

    七海「だよね!!やっぱりそう思う!?」

    日向「分かった分かった!お得意のゲーム話は後でな?」

    七海「むぅ〜………」



    このまま口を開けさせたら永遠に話し続けるかもしれない。


    いっそのことガムテープで固定してしまおうかと考えたが、流石に良心が痛むので止めた。



    霧切「……勝敗条件同様、侵食者のデータをまとめるとこんな感じよ」



    【侵食者】

    ・希望を皆殺しにする生体兵器。その強さは以下の通りに分類されます。


    銅色の首枷 : (C級)

    危険度 : ☆☆

    特徴 : 一部の部位に特化しており、基本的自我は無し。



    銀色の首枷 : (B級)

    危険度 : ☆☆☆

    特徴 : ありとあらゆる技能に特化しており、自我を持つ。



    金色の首枷 : (A級)

    危険度 : ☆☆☆☆

    特徴 : 自我は無いが、最終段階まで進行した絶望病により異形の生物と化した者。



    霧切「……以上よ」

    苗木「昨日戦ったアレが一番弱い……?」



    じゃあその他のB級やA級はどれ程の力を持っているんだ……?


    そう考えただけで全身に悪寒が走る。



    葉隠「じ、じゃあ……そのA級ってのがきたらオーガでも勝てないんか?」

    霧切「分からない……何せ敵の実力は未知数過ぎる」

    霧切「いくら情報があっても、実物を見ない限りは対処の仕様が無いわ……」



    葉隠の質問は謎に包まれたまま終わり、一同の内心は不安と恐怖に支配されていく一方だった。


    何と言っても、解説書に記載されているのはどれも嫌な情報ばかりだ。


    こんな心境になっても無理は無かった。



    霧切「……これが一番重要ね」



    次のページを見開き、霧切の顔が今まで以上に真剣になる。



    霧切「恐らくコレが、江ノ島盾子がこのゲームの為に用意した最悪のサプライズ……」

    苗木「……最悪のサプライズ………」



    これ以上の最悪があるのか?


    想像すら出来ないその言葉に絶望感すら覚えてしまう。



    霧切「解説 : その三…………」

    『キーン、コーン……カーン、コーン……』

    「「ッ!?」」



    全くと言っていい程に虚を突き、一同を驚愕させたのは突如街に鳴り響く鐘の音。


    その音は普通の学校と何ら変わりなく、どこにでもあるような普通の音。


    だからこそ……より一層に不安だ。



    苗木「な、なんだ!?」

    霧切「……始まったわ」


  14. 14 : : 2014/06/22(日) 23:12:07
    チャイム.......なんか怖いな......
  15. 16 : : 2014/06/25(水) 13:10:46
    『アーッ、アーッ、マイクテス!マイクテス!』

    『大丈夫?聞こえてるよね?』



    鐘が止んだ直後、静寂な廃街に流れるのはマイク越しの音声。


    何処から放送されているのかは分からない。


    恐らくこの街の彼方此方に拡声機が設置されているのだろう。



    しかし、場所がわからなくともその声の主はすぐに解った。



    苗木「江ノ島……盾子!」

    江ノ島『昨日はぐっすり眠れたかな?寝不足は体に毒だからね〜うぷぷ!』



    初っ端から腹立たしい台詞だ。


    誰のせいで寝不足みたいな症状に魘されてると思ってる……


    そんな憤怒を何とか押し殺し、聞こえてくる声に耳を傾け続けた。



    江ノ島『解説書を読んだ皆は分かるよね〜!』

    江ノ島『解説書に記載どうり、皆さんお待ちかね!アレの時間だよ〜ん!』

    苗木「アレ……?」



    それはまだ会得していない情報だ。


    なんせ僕らはまだ解説その二までしか聞いていない。



    苗木「霧切さん、アレって……」

    霧切「『絶望ミッション』」

    霧切「私が言おうとしていた、解説その三に書かれていたものよ……」

    大和田「絶望ミッション?」



    大和田が意味不明と訴えんばかりに復唱する。



    ソニア「ミッション……指令?」

    九頭龍「絶望からの指令か……また物騒な名だな」

    霧切「絶望ミッション……恐らく、コレが最も最悪なゲーム……」

    霧切「下手をするとコレだけで私達は全滅するかもしれない……」

    「「ッ!?」」



    【侵食者】や【絶望病】という脅威がありながらもまだそんな危険が存在するのか……?



    舞園「霧切さん、それはどういうモノなんですか?」

    霧切「日時不明、場所も不明……つまり、不定期間隔で行われる自由参加型ゲームよ」

    霧切「ミッションに応じ、クリアした者には様々な報酬が与えられる」

    霧切「具体例をあげれば、食料や武器といった類ね……」

    終里「飯っ!?」

    九頭龍「武器だと!?」

    大和田「んだよ願ったり叶ったりじゃねえか!早速行こうぜ!」

    十神「焦るなプランクトン」



    やる気満々になった大和田を止めたのは、十神の毒舌。


    聞き慣れた悪口でも、短気な大和田にとっては十分な程だった。



    大和田「あぁ?今テメェ何つった?」

    十神「少しは疑心を抱いたりしないのかお前は?」

    大和田「疑う?何をだよ」

    弐大「そのミッションとやらの仕組みじゃ。いくら何でも話が旨すぎるとは思わんか?」



    確かに……そんな簡単に食料や武器が貰えては希望が負ける確率は限りなく低くなる。


    怪しい……。


    その優しすぎるような、ありがたすぎるようなルールは……何処となく不気味過ぎた。



    霧切「どうやら第一ミッションの説明が始まるみたいよ……」

    江ノ島『まぁ最初は易しいミッションにしてあげるよ』

    江ノ島『ミッションの情報、通知はオマエラの電子手帳にインストールしておいたぜ!こまめに見ろよぉ?』

    江ノ島『じゃあね〜♬』


    『ブツッ』



    回線が切れる音。


    どうやら放送はここで終了のようだ。



    苗木「電子手帳……?」



    そういえばまだ持っていた。


    あの悪夢を思い出させる為だけにあると言っても過言ではない……


    絶望の産物を……何故今でも持っているのか、


    まぁ、そんなことは今気にしていても仕方ない。



    とりあえず言われた通り、苗木は電子手帳に電源を入れた。



    苗木「『ミッション』…これかな?」



    待受画面に表示されていたのは、見慣れない真っ黒なアイコン。


    タッチすると、次のような文面が出てきた。



    【チュートリアル】

    ・このアプリケーションでは、主に新ミッションお知らせ、現時点でのミッションの確認が可能です。


    ・全ミッションに強制権はありません。全て自由参加となります。


    ・報酬はミッション終了時に受け取りが可能です。




    苗木「自由参加のミッションか……」

    霧切「解説書に書かれている事がそのまま記載されてるわね……」



    『ピピピピピッ』



    不二咲「わわっ!」

    豚神「どうやら、第一のミッションがきたようだな」



    着信音と思わしき機械音が鳴った直後、画面が切り替わり、【MISSION】と書かれた文面が表示された。



  16. 17 : : 2014/06/25(水) 13:31:07
    盾子ちゃんはなにをさせる気なんやろ...


    期待です!
  17. 18 : : 2014/07/01(火) 01:24:55
    すごい面白い!超期待です!
  18. 19 : : 2014/07/03(木) 12:23:58
    期待してるよ♪うぷぷぷ♪
  19. 20 : : 2014/07/05(土) 16:12:51
    >>17

    >>18

    >>19


    期待ありがとうございます!
    最近再起動不足でスイマセン…!
  20. 21 : : 2014/07/07(月) 17:19:36
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    荒れ果てた廃街。


    改めて見ると酷いものだ。



    窓ガラスの全壊したビル、中の鉄骨が剥き出しになった建造物。


    中には大穴の開いた高層ビルがある。


    一体何をすればこうなるのだろうか……。



    まぁ……一通りの感想はここまでにしよう。


    今はやるべき事をするだけだ。



    苗木「霧切さん?言われた場所まで来たよ」

    『分かった……じゃあ合図があるまで、そこで待機してて………』

    苗木「わかった」

    大和田「チッ!面倒ごとばっか押し付けやがってあのアマ!」

    終里「あ〜……腹減った……飯食いてぇ〜」



    崩れた建造物に身を潜め、苗木達は外の様子を伺っていた。


    三人の眼が捉えているのは、巨大な円柱型の水槽……。


    そしてその中に浮かぶ黒い麻袋……
    アレが今回の報酬である。





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    ミッションの内容はこうだ。





    【MISSION】


    種別 : 回収ミッション

    危険度 : Lv.1

    制限時間 : 48時間

    報酬 : 食糧(3日分)


    ・街の広場に円柱型の水槽を配置した。その中にある黒い麻袋、それが今回の報酬である。





    霧切『これが絶望ミッション……』

    十神『なるほど……取りに行くだけで食糧3日分貰えるという訳か』

    ソニア『Lv1……どうやら難易度が低いというのは本当のようですね』

    終里『おっしゃ!そうと決まればとっととセッションとやらに行こうぜ!』

    日向『ミッションだよ!ミッション!頭一文字で偉い違いだバーロー!』

    霧切『待って…』



    想像と大きく異なった内容に霧切は疑問を抱いていた。



    霧切『何も考えずに行くのは危険すぎるわ』

    霧切『罠…って場合の可能性もあるかもしれない』

    舞園『わ、ワナ……?』



    そうだ、あの霧切さんが用心するくらいだ。


    ただ荷物を回収して終わりだなんて にわかに信じ難い……。



    山田『というと……あれですかな?開けたらドーンとか……』

    葉隠『ひいいい!?そんなん御免だべ!』

    大和田『んじゃあどうすんだよ!?食糧捨てて生き残ろうってか?』

    霧切『まだ誰も行かないとは言っていないわ…』

    霧切『ただ、闇雲に行くのは自殺行為に等しい』

    大神『それは同感だな……』

    十神『フン、そう大層な口を聞くということは何か策でもあるのか?』

    霧切『ええ、あるわ…』



    策がある。


    その言葉は一同の意思を引向けさせるには十分すぎる言葉だ。



    大神『それは本当か……?』

    霧切『えぇ…だけどコレには時間が必要……』

    霧切『丁度時間は48時間、決行日は二日後よ』

    桑田『はぁ!?一日無駄にするのか!?』

    田中『フハハッ!愚かなる獅子だな!そんな簡単なことにも気づかぬのか?』

    桑田『んだとっ……!』


    田中『このオペレーションには大量の時が贄が必要とされる……つまり!初日である今日は!そのオペレーションを発動するに相応しい土台の創造に費やすという事だ!』


    弐大『早い話が今日は準備、明日決行という事じゃな』

    ソニア『流石です田中さん!』

    田中『フハハハッ!我が氷の魔王に不可能など無い!』

    左右田『ぬぐぐぐ………!!』

    日向『張り合うな、お前とアイツじゃ比べ物にならん』

    左右田『うっせえ!うっせえ!バーカバーカ!』

    日向『小学生かよ…』

    七海『見た目は高校生、頭脳は小学生……うん。クソゲーだね』

    日向『ぶふっ…!』

    左右田『笑うなあぁっ!!!』




  21. 22 : : 2014/07/08(火) 12:30:30

    霧切『じゃあ言うわね』

    霧切『まず、三人組のグループを三つ作る必要があるわ』


    霧切『一つ目、障害や敵などが来た時のための戦力組』

    霧切『二つ目、罠トラップ等を処理できる……言わば罠を処理する組』

    霧切『三つ目、各組が障害を除去してる間に改修する回収組……以上の三つよ』


    弐大『む?それで、その組のメンバーは決まっておるのか?』

    霧切『そこはまだ決めてないけれど……ある程度はすぐに決められる』

    霧切『まずは障害等を排除する戦力組』

    霧切『大神さん、弐大くん、桑田くん……お願いできるかしら?』

    霧切『排除と言っても倒すまで戦うのではなく、あくまで時間を稼いでほしいの』



    確かに、大神さんと弐大くんなら戦力として申し分無いくらいに文句無しだ。


    二人の実力は既に先日の戦いで証明され、ここにいる誰もがその力量を知っている。



    大神『分かった』

    弐大『縁の下の力持ちという奴じゃな!了解じゃあ!』

    桑田『ちょ、ちょっと待てよ!なんで俺まで戦力組!?』

    霧切『貴方の肩で投げる投球は十分な力になる……』

    霧切『だからこそ、万が一の為に貴方には後方から大神さん達を支援してほしいの』

    桑田『へ?じゃあただ遠くの方から投げるだけでいいのか?』

    霧切『単刀直入に言えばそう言うことね』



    単刀直入に言うと空気みたいな存在だな……。


    屈指の思いで笑いを抑え、引き続き霧切の説明に耳を傾けた。



    霧切『二つ目は罠の処理組』

    霧切『これは不二咲さん、左右田くん、辺古山さん……お願いできるかしら?』

    辺古山『……超高校級のプログラマーにメカニック……なるほど、罠の処理などには欠かせない才能だな』

    辺古山『しかし私には何の関係が?』

    霧切『罠の類いがプログラムや時限爆弾とかだとしたら時間はかかるはず』

    辺古山『用心棒ということだな、心得た』

    霧切『えぇ、話が早くて助かるわ』



    これで二つ目の組員が決定した。


    残るは一組、物資を回収する組だ。



    霧切『大和田くん、終里さん、苗木くん……やってくれる?』

    苗木『!?』

    大和田『ちょ、ちょっと待てって!何でそこで俺たちが出てくんだよ!?』



    え?なんで僕?


    全く意味がわからない……霧切さんは何を考えているんだ?


    僕が言ったところで足引っ張るに決まってるじゃないか



    霧切『もし物資が個別で分けられてるとしたら問題ないわ』

    霧切『だけどもし食糧が一つまとまりになっていた場合、その重さはかなりの筈よ』

    霧切『その場合は大和田くん、貴方の力を借りたいの』

    大和田『あー運び屋か、なるほどな』



    運び屋……なんか大和田くんが言うと犯罪の臭いがするんだよな……。



    大和田『あぁ?んだ苗木!俺の顔になんかついてんのかぁ?』

    苗木『う、ううん!そんなことないよ…!!』

    終里『ん?じゃあ俺の役目も荷物持ちか?』

    霧切『…………』



    終里の質問を聞くと霧切は懐から何かを取り出す。


    だけどそれを見せることなく霧切は取り出した物を背中に隠してしまった。



    霧切『問題、私は何を持ってるかしら?』

    大和田『はぁ?なに訳の判ら……『チョコレートだああっ!!』

    大和田『うごぉっ!?』



    大和田の巨体を軽々と吹き飛ばし、子供のような笑みで終里が叫ぶ



    霧切『ええ、正解よ』



    背中から姿を出したのはよく市販に売っている板チョコ。


    それを放ると瞬間的な速度で終里が食らいついた。



    苗木『よ、よくわかったね終里さん』

    終里『匂いがしたからな!』

    霧切『そう、彼女は食べ物の匂いやその他の匂いを嗅ぎ分けることが出来る』

    霧切『もし食糧が偽物だったり、毒が含まれていたとしても彼女ならすぐに分かる……これが理由よ』



    凄い……一見適当な感じに思えてちゃんと筋が通っている。


    流石霧切さんだ。


    改めてそう思う。だけど……




    苗木(あれ?僕の入ってる理由は?)






  22. 23 : : 2014/07/12(土) 20:49:47

    苗木『あ、あの霧切さん…僕の選ばれた理由は……』

    霧切『各組の構成員は以上よ。何か意見はあるかしら?』



    無視されちゃった……。



    田中『フッ、異論はない』

    大神『我も同意見だ』

    豚神『現状況において、最も妥当な案だと言えるな……』

    左右田『おいおいおい!俺の意見も聞けって!』

    左右田『弐大とか終里のとこは安心かもしれねえけど、俺達の組は危な━━━━



    『ヒタッ』



    左右田『……くないですね。超安心です』

    辺古山『そうか、それは何よりだ……』



    クスッと微笑し、辺古山は首筋に当てた刀を引いた。


    音も気配もなかった。


    もしかしたら彼女が一番殺しに向いてるかもなぁ……


    仲間と思っていても、軽く身震いを覚える僕がここにいた。



    霧切『今日は出来る限り明日に関しての作戦を練るわ』

    霧切『実行日は明日の午前8時。今から計算すると丁度24時間前ね』


    霧切『さぁ…始めるわよ』

    霧切『誰一人死なずに……希望が勝つために…!』



    その言葉に誰一人として異論は無かった。



    『誰一人として死なずに』



    それが最も望む結末なのに……何故だろう。



    『それは絶対不可能だ』



    ……希望の真逆のその言葉が、絶えず僕の耳に囁いている……。



    どことなく腑に落ちない苗木を余所に、その日の空は…不快に満ちた心の様に………曇天だった。



  23. 24 : : 2014/07/12(土) 22:52:08
    めっちゃ面白いです!!
    超超超期待です!!!
  24. 25 : : 2014/07/13(日) 13:00:22
    >>24

    ありがとうございますー!!
    これからも応援よろしくお願いしますです!
  25. 26 : : 2014/07/15(火) 19:35:46
    あ・・・霧切って、結果を求める主義だからな。頭はいいけど、簡単に仲間を見限るし、結果さえよければ、後がどうなろうと構わない主義。しかも、独断行動・・・苗木を選んだ理由が、戦力を失いたくないと言うのが目に見える。
  26. 32 : : 2014/07/15(火) 21:11:30
    先が気になります!
    期待です!
  27. 33 : : 2014/07/15(火) 22:03:27
     あぁ・・・霧切って、頭いいし、観察力はあるけど、結果主義者だからな。それに、独断行動が目につく。
     まぁ、確かに、メンバーは問題ないけど、苗木を入れたのが、だいたい、失っても問題ない人間だからだろうな。それに、一人一人弱点を見抜けない分、結果が見えてくる。全滅する可能性が高いな・・・
  28. 34 : : 2014/07/15(火) 22:20:38
     まぁ、確かにな。霧切って、結果さえよければ、過程はとわないタイプですからね。全滅する可能性大・・・まぁ、これからの展開に期待したいです。
  29. 35 : : 2014/07/16(水) 07:30:48
    >>32

    ありがとうございますー!

  30. 36 : : 2014/07/16(水) 07:30:54

    組の配置、時間毎の行動、周囲の把握。



    丸一日を費やしたその作戦は、極めて繊細にきめ細かく、済から済まで無駄なく計画されたものだった。



    霧切『…作戦の内容は以上よ、後は明日に備えるだけね……』

    十神『なるほど…中々マシな内容をたてられるじゃないか』

    大神『うむ……見事だ』

    葉隠『俺でも分かるべ……霧切っち凄えなぁ…』

    霧切『感想はこの作戦が成功してからよ』

    霧切『何が起こるか分からない……ここはそういう世界なのだから』



    念には念を……か。


    霧切さんらしいな……。



    そう言われ、僕らは明日に備え 身体を休めることにした。






    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    翌朝、各組に渡されたのは受話器程の大きさの無線機。


    多分学園にいた武装隊が使っていた奴だな……いつの間に持ってきたのだろうか。



    霧切『その無線機は私、もしくは他の組に連絡できるように設定してもらったわ』

    霧切『くれぐれも…気をつけて……』



    朝日奈『サクラちゃん…!け、怪我とかしないでね!?』

    大神『心配するな、朝日奈よ……我には頼もしい友がいる』

    舞園『苗木くん……』

    苗木『はは、大丈夫だよ!たかが荷物を運ぶだけだから』

    霧切『……時間よ』

    大和田『おっしゃあ!行くぞテメエら!』




    『『おおおーーっ!!』』



  31. 37 : : 2014/07/17(木) 06:57:02
    おぉ~♪興奮が収まらないです!
    続きが楽しみです!
  32. 38 : : 2014/07/17(木) 18:51:18

    >>37

    ありがとうございますー!
  33. 39 : : 2014/07/18(金) 19:09:18
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    そして、各組がそれぞれの持ち場へと別れ、
    現在に至るというわけだ。



    苗木「特に何も起きないね……」

    大和田「だったらあのガラス管ぶっ壊してとっとと帰ろうぜ」

    苗木「そ、それは流石に危ないよ!」

    『ザ…ザザザ………苗木くん……聞こえる?』



    腕をまくりあげる大和田を落ち着かせる苗木を余所に、懐の無線機が声を受信した。



    苗木「あ、霧切さん?聞こえるよ」



    三人は取り出した無線機を囲み、聞こえてくる声に集中する。



    『大神さん達の組が安全な退路を確保したわ……今そこに左右田くん達が向かっているからもう少し待機していて……』

    苗木「うん、わかった」

    大和田「んだよっまた待機かよ…!」

    終里「あ〜腹減ったな……」

    大和田「テメェはさっきチョコ食ってただろうが!?」

    苗木「はは、まぁまぁ……」



    今のところは作戦通りに進んでいる。


    このままなら皆無事で帰れそうだな……。





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    江ノ島「……うぷぷ、やってるやってる」



    監視カメラで映し出されている映像に見入りながら江ノ島は不気味な笑みを浮かべる。



    江ノ島「さぁ〜てと、皆クリアできるかな〜?」



    コンッコンッ



    江ノ島「ん?誰?何か用?」

    『盾子様……例の者を連れてきました』

    江ノ島「あー!入って入ってー」



    待ってましたとばかりに陽気な声を上げる江ノ島。


    そして許可を確認し、部屋に白衣とガスマスクを身に着けた二人の男が入室した。



    「っ…!くそっ離しやがれ!」



    そして、二名の間には両手を後ろで縛られた男。



    江ノ島「ご苦労さん♬もう行っていいよー」

    「失礼しました……」



    男を投げ捨て、白衣を纏った者達は静かに退室していった……。



    「ウグッ…!」

    松田「あぁ?なんだソイツ?」

    江ノ島「学園で苗木達を捕まえそこねた未来機関のおマヌケ隊長さん♪」

    「も、申し訳ありません!つ、次こそは必ず……!!」

    江ノ島「あー無理無理。二回目とか超シラケるから」

    江ノ島「オマケに大っ切なD・E……侵食者……えっと………?」

    松田「正式には【D・E】だ。お前がカッコつけて訳わからん名前を生み出すからこんがらがるんだろうが」

    江ノ島「えー!だって侵食者の方がカッコいいじゃーん?」



    テメェの好みなんか知るかっての……。



    江ノ島「まぁ、細かい話は後にして……」

    江ノ島「勝手にD・E使ったあげく壊すとか……どう償ってもらおうかなぁ」

    「ひいっ!」

    松田「おいおい、ここで殺るなよ?片付けとかソレこそ絶望的に面倒くせえんだからよ」

    江ノ島「……へ?」



    あっヤベ。俺、今絶望的とか言ったか?



    江ノ島「き……」

    江ノ島「きゃーーっ!松田くんが絶望的って言ったー!絶望的に幸せーー!!最高ーーー!!」



    チッ……だったら……。



    松田「よーし、ならもっと言ってやる。お前は絶望的にドブスだ」

    江ノ島「キャーーーー!!!もう幸せーー!松田くんに罵られるとか絶望的に感激ーーー!!」



    んだよそう来るかよ、面倒くせぇ………。


    床で悶える江ノ島を放置し、唖然としてる男に松田が近寄る。



    松田「お前……死にたいか?」

    「そ、それだけは許してください…!何でも致しますから…!!」

    松田「……何でもか?」

    「は、はい!」

    松田「へぇ〜………」







    何でも……か、


    丁度いい……コイツにするか……。




  34. 40 : : 2014/07/23(水) 22:48:31
    頑張れ~
  35. 41 : : 2014/07/24(木) 01:25:04
    >>40

    ありがとうございますー!
  36. 42 : : 2014/07/24(木) 01:25:10
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    苗木「あっ来たみたいだよ!」



    霧切との通信から数十分が経過した頃、
    遠くの方でコチラに向かってくる三人の姿を苗木の目が捉えた。


    左右田くん、不二咲さん、辺古山さん……罠の処理組のメンバーである。



    大和田「おっせぇぞテメェら!」

    不二咲「ご、ごめんねぇ」

    左右田「仕方ねえだろ、コイツがゆっくり行ったほうが良いって煩いからよ…」

    辺古山「焦りは死角を作り、死角は死を意味する……」

    辺古山「こういう状況だからこそ、より慎重に動かねばならない」



    正論………いや、極論だ。


    焦っても焦るだけぶつかったり躓いたり時間の無駄遣いになりかねない。



    苗木「……そうだね、それで大神さん達は?」

    左右田「後ろからゆっくり此方に向かってるぜ」

    不二咲「じゃ、じゃあ早速始めよう…!」

    辺古山「私達が来る間、何も起きなかったか?」

    終里「いや、何も起きてねえよ?特に変な臭いもしなかったしな」

    辺古山「そうか……感謝する」

    不二咲「あ、あれって……水槽の中で浮いてるのぉ」



    遠くから見ても、食糧が入ってる黒い麻袋は間違いなく水槽の蓋と底の間で停止している。



    苗木「うん。僕も気になってたんだけど、きっと釣り糸か何かでぶら下がってるんじゃないかな?」

    辺古山「いや、それにしては袋の形が不自然ではないか?」

    左右田「ありゃあ多分、磁力で浮いてんだな」

    大和田「磁力だぁ?」

    左右田「あの水槽の上と下に磁力機みたいな物が取り付けてあってソレが互いに反発して真ん中の物体が浮かんでる」

    左右田「それならあの袋が微動だにしないのに納得がいくしな」

    苗木「なるほど……」



    超高校級のメカニック……左右田和一。


    見ただけで機械の様子や形状を見極めることができる能力……。


    やはり超高校級の名は伊達ではない。



    左右田「まぁ、そんくらいの機械ならよく組み立ててたしな、分解するくらいどうってことねえよ」

    左右田「不二咲はあの機器が正常に稼働してるかどうかスキャンしてくれるか?」

    不二咲「わ、わかった…!」



    そう言い捨て、慣れた様子で進む左右田を先頭に罠処理組は巨大なガラス管へと向かう。


    超高校級の才能を持つ者達が行う神業の技術をこの目で見てみたい。


    ……だが、正直苗木は焦っていた。


    この場所は皆が泊まったあの廃屋からは想像以上の距離があったのだ。



    その為、既に半日はとうに過ぎている……。


    空は薄暗く、もう次の太陽の光が奥の方で頭を出しかけていた。



    故に、霧切から予め受け取っていたミッション終了までのタイムリミット……。



    苗木「残り……4時間57分……」



    時間は限られている。


    下手したらミッション終了の直後この辺り一体が爆発するかもしれない。



    死の可能性を秘める瞬間は……刻々と迫っていた………。








    MISSION終了まで

    [残り : 4時間56分]



  37. 43 : : 2014/07/24(木) 08:11:33
    おぉー‼︎

    絶望的に期待ですッ‼︎
  38. 44 : : 2014/07/24(木) 14:54:52
    絶望的に面白いね……!
    頑張ってね…?期待だよ…?
    ……最近ウィード!って聞かないね…
  39. 45 : : 2014/07/30(水) 14:31:22
    絶望的に期待です!
  40. 46 : : 2014/07/31(木) 03:42:50
    >>43

    >>45


    絶望的な期待ありがとうございまーす!
    これからも絶望的にがんばりますっ!


    >>44


    ウィードッ!懐かしいですねww
    これからも応援よろしくお願いしますっ!

  41. 47 : : 2014/07/31(木) 03:42:57
    左右田「どうだ、不二咲?」

    不二咲「……うん、そうだねぇ」

    不二咲「特に変なプログラムとか異質な物は見当たらないよぉ」



    ケーブル接続し、画面に様々な記号が表示されるノートPCに目を凝らしながら不二咲は危険がないことを告げる。



    左右田「うし、じゃあとっとと終わらせるか……」



    予め持参していたマルチツールを握り、左右田は早速解体作業に取り掛かる。


    その動きに無駄はなく、まるで玩具で遊んでいるような慣れた手つきだ。



    左右田「えっと……ここがこうで……ここがこうなってて……」

    辺古山「不二咲、タイムリミットまであとどれくらい残っている?」

    不二咲「えっと……残り4時間34分だよぉ」

    辺古山「この区域から離れるのに最低でも1時間以上はかかる……実質3時間半といったところか……」



    周囲への警戒も大事だが、時間は有限。


    一刻も早くこの場から立ち去らなくては……。





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    『ザ……ザザ………ザ………』

    『……苗木く……ん……状況は……?』


    苗木「霧切さん?うん。順調だよ」

    苗木「特に今のところは異常は見つからない……かな?」

    『そう……分かった。時間はあと4時間弱しか残っていないわ……時間には注意して……』

    『最悪の場合、途中で任務を放棄してもいいから……危なくなったらすぐにそこから逃げる事……いいわね?』

    苗木「わかった」

    『それじゃあ………』



    無線機を懐に戻し、腕時計に視線を移す。



    苗木「……あと、4時間13分……」



    既に40分が経過していた。


    時間が経つのはどうしてこう速いのだろうか……。



    苗木「ふぅ〜………」



    不安と恐怖をため息で誤魔化す。


    何としてもこのミッションは成功させないと……食糧の有無は今後の生存率に大きく影響する筈だ。



    大和田「なにシラケた顔してんだよ苗木」

    苗木「痛っ!」



    不意の背中への平手。


    服越しとは言え力加減が滅茶苦茶なのでかなり痛かった。



    苗木「あいたたたた………」

    大和田「下ばっか見ててもいい事は起きねえぞ?」

    大和田「死んだ俺の兄貴が言ってたんだけどよ……人生死ぬ気で生きてりゃあ何とかなんだよ」

    大和田「下向いて歩いてたら、目の前幸運も通り過ぎちまうぜ?」

    苗木「大和田くん…」

    大和田「だからお前も…終里「ちょっと待て」



    突然の終里の声に会話が止まる。



    大和田「んだよ急に!コッチは話してる途中……!」

    終里「変な臭いがする……」

    苗木「え……?」

    大和田「あ〜?屁でもこいたんじゃねえのか?」

    終里「いや、違う……なんだ?この臭い………」



    そう言いながら空気を嗅ぐように辺りを彷徨く終里。



    終里「少なくとも俺の知ってる臭いじゃねえ、全く違う別の誰かだっ!」

    苗木「それって……!」

    大和田「敵か!?」


    「うわあああああああああああああああああああああああっ!!?」


    苗木「ッ!?」



    突然の悲鳴。


    不二咲さん達の方からだ!



    辺古山「くっ…!まさかこんなに一度に来るとは…!」



    彼らを囲うように現れたのは、数十人はいるであろう絶望の軍勢!



    「キボウ………ミツケタ………!」



    その顔色に生気は無い。まるで動く死体だ。



    左右田「どどどどどどうすんだよおおっ!!?」

    辺古山「いや……幸い首枷がついていない……ただの感染者だ」



    通常の感染者なら動く速さは常人よりも遅い……爪や歯に気をつければ……勝機はあるはず……!



    辺古山「お前たちは作業を続けろ!ここは……私が食い止める!」



    殺気を全開にし、背中の竹刀を抜き放つ!



    辺古山「はああぁぁぁぁぁっ!!!」




    『ザ……ザザ……どうしたの……?』

    苗木「き、霧切さん!?辺古山さん達が危ないんだ!僕達も加勢に……!」

    『……駄目よ』

    苗木「え?」







    MISSION終了まで

    〔残り3時間43分〕

  42. 48 : : 2014/08/06(水) 19:27:42
     出た切り捨てさん・・・霧切は、やっぱりこうなる事を見越して・・・腹黒アイドルよりも、黒いよ
  43. 50 : : 2014/08/07(木) 19:54:03
    神SSですね♪
    辺古山×刀=最強!
    負けなしの戦いになる!
    ここから先も頑張って下さい
  44. 51 : : 2014/08/12(火) 21:54:01
    >>48

    >>50


    コメント、応援等のお言葉ありがとうございます!
    それでは再起動です…!
  45. 52 : : 2014/08/12(火) 21:54:55
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    『ザッ、ザッ……』



    歩む足が地面の砂利や小石を踏み潰し、不気味で斬新なメロディを奏でる。



    大神「………異常無しか…」



    歩む足を止め、大神は周囲に視線を散らす。



    今のところ特に問題は無い…。


    だがその静寂過ぎる状況がより一層警戒心を高まらせる。



    大神「はやく苗木達と合流せねば……」

    弐大「そうじゃな、ここに敵がいないとなると苗木や霧切達が危険になってるかもしれん」

    桑田「……!」



    再び歩み始めた途端、桑田の体が痙攣と同時に停止した。



    大神「? 桑田よ、どうかしたのか…?」

    桑田「いや、何か急に靴紐が切れて……」

    弐大「しっかり結んでおいた方がいいぞ、絡まって転んだりしたら怪我するからのぅ」

    桑田「おっかしいな〜、つい最近買い換えたばっかだったんだけど…」



    靴紐が切れる……。


    よく不吉な事が起こる前兆と言われるベタなアレだ。



    大神「……………」



    いくら有りがちな出来事とは言え、この状況で起きるとは縁起が悪すぎる……。



    大神「先を急ごう……」



    その一言だけを呟き、三人はその場を静かに立ち去った。







    MISSION終了まで

    〔残り3時間28分〕

  46. 53 : : 2014/08/19(火) 03:17:53
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    松田「あー、マジで面倒くせぇ……」



    かれこれ2時間近くは打っていたキーボードから指を離し、松田は閉ざしていた口を開いた。


    そのモニターに写っているのは、見たこともない不気味な形をした細胞の組織図。



    画面の隅では「結合率99.8%」と表示された数字が点滅している。



    江ノ島「あ、流っ石松田くん!あの歪な細胞をよくぞここまで!」

    松田「はぁ?何処がだよ、全然流石とか言うレベルじゃねえっての……」



    舌うちを鳴らしながら松田は機嫌悪そうに江ノ島を睨む。


    まぁ睨んだところで「きゃー痺れるぅ!」と逆に喜ばせてしまうことぐらい分かってはいるが………何とも憎らしいジェンマである。



    江ノ島「なんで?試作としては上出来だと思うけど?」

    松田「100%じゃないからだ。……ったく超高校級の神経学者の名が泣けてくるぜ」

    江ノ島「相変わらず一級品のプライドだね〜松田くんは……」

    江ノ島「でもそこに痺れる憧れるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」

    松田「だから部屋で転がりまわるんじゃねえって言ってんだろ!」



    室内の機材をことごとく薙ぎ倒していく江ノ島のローリングをサッカーボールの如く地と足で挟み込む。


    すかさずその挟み込んだ頭部を蹴り上げようとしたが、難なくかわされた。



    松田「チッ……」

    江ノ島「ひど〜い松田くん!乙女の頭を蹴り上げようなんて……あぁ!絶望的ぃ………」



    起き上がると両腕で自身を抱きしめ、体をくねりながら江ノ島は絶望の快感に浸る。


    頬を染め、涎までたらしている。


    まったく、一体どこまで絶望を愛せばここまで異常になるのか……超高校級の神経学者でも検討すらつかない。



    江ノ島「あっそう言えば!」

    松田「あ?」



    いきなり向こうの世界から戻ってきたかと思えば……なんだよ。



    江ノ島「例の隊長、どうなった?」

    松田「あぁ……アイツか」

    松田「それなら40分ぐらい前に地下の独房に閉じ込めといた」

    江ノ島「え?なんで?」

    松田「新作の細胞試したんだが……まだ試作レベルで副作用が起きちまってよ」

    松田「面倒だから後で毒ガスでも使って処分し━━━━━━

    「夜助様!」



    不意に扉が勢いよく開かれ、ガスマスクをつけた研究員らしきものが息を荒げている。



    松田「ア?なんだよ、今は話し中……」

    「研究対象だった『ゴーレム』が脱走しました!」

    松田「はぁ!?何やってんだ間抜け!」

    江ノ島「え!なになに!何の話?」



    チッ……無知なガキ見てぇな笑顔しやがって………。


    シカトしてても永遠に聞いてきそうだしなぁ……ったく



    松田「……被験体番号 : 0815……CODE : ゴーレム」

    松田「金の首枷……つまりA級のD・Eだ」

    江ノ島「ふぅ〜ん、A級かぁ……どんな奴なの?」

    松田「確か……」



    手元にあるモニターを起動させ、手慣れた手つきでキーボードを迅速に叩く。



    松田「あぁ、コイツだ」

    江ノ島「ん?」

    江ノ島「……………」

    江ノ島「……へぇ……ゴーレムかぁ……」

    「本当に申し訳ございありません!直ちに駆除部隊を送り込みますので!」

    江ノ島「いや、いいよ。行かなくて」

    「え?」

    松田「おいおい、何言ってんだお前?」

    江ノ島「どうせコイツ等じゃ歯が立たないだろうし、それに……」



    江ノ島「なんか……面白そうじゃん?」

    松田「……!…」



    この不気味な笑み……いつ見ても慣れねえな……。


    こっちまで絶望しそうだぜ……。



    松田「……好きにしろ。責任は取らねえからな」

    江ノ島「はいはーい!」

    松田「………………」



    全く、希望の癖に運が無いな……。



    これじゃあゲーム初めて直ぐにボスキャラと戦うようなもんだぜ……。




    ……だけどまぁ………確かに、面白くなりそうだ………。




  47. 54 : : 2014/08/22(金) 12:02:58
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    「アアアアアアアアッッッ!」

    辺古山「クッ……はああああっ!」



    『ザンッ』



    「アガァ……!?」



    一撃、また一撃。


    これでもう何人目だ?もう軽く20人は超えている。


    竹刀ではどう足掻いても 致命傷を与えられない。



    辺古山「これではキリが無い…!何かよい打開策を考えねば……」

    「アアアアアッ!!」

    辺古山「ッ!」



    突っ込んでくる感染者を身を低くして回避。


    そしてガラ空きになった首目掛けて強烈な斬撃を叩きつける!



    「ガフッ……!?」



    男はそれ以上襲ってくることなく、膝から崩れるように地に沈んだ。



    辺古山「はぁ……はぁ……!」



    「峰打ち」


    両刃ではない刀剣、また日本刀の背面にあたる峰の部分で相手を叩くこと。棟打ち(むねうち)とも言う。


    今はこれが唯一の対抗策。


    竹刀である分 威力には欠けるが、刃が元からないため峰打ちが狙いやすい。



    ……しかし、それには今のような決定的なチャンスや致命的な急所に直接与えられなければ意味はない。



    辺古山「真剣さえあれば……」



    このままではスタミナ切れも時間の問題だ……早くこの場から撤退しなければ……。



    辺古山「左右田、作業終了まで後どのくらいだ?」

    左右田「あと少しだ!コイツを外せば磁力機の内部に到達できるはず……!」



    四方に埋められた螺子を外し、鋼鉄の外壁を外す。


    内部にあったのは指の入る隙間も無いくらいに張り巡らされた無数の銅線。



    左右田「チッ……やっぱり手作業じゃ直せないタイプかよ…」

    左右田「不二咲!早く指示してくれ!どの線をどうすりゃこの機械が止まるんだ!?」

    不二咲「え、えっとぉ………!」

    不二咲「な、中にある黒と白の線ある?」

    左右田「ッ……黒と白黒と白……」



    なんせ中は赤だの青だのカラフルな線のオンパレード。


    ペンライト一つで照らすにはとてもだがすぐには見つけられるはずも無かった。



    左右田「クソ!どこにあんだよ!?」



    制限時間にも少なく周囲は危険……そんな環境内で集中力や冷静さなどとうに失せていた。







    MISSION終了まで

    〔残り2時間44分〕



  48. 55 : : 2014/08/24(日) 13:00:11
    松田「なぁ」

    江ノ島「ん?」

    松田「少し気になったんだけどよ……この絶望MISSION。時間切れになったらどうなるんだ?」



    単純に気になった。


    コイツのことだから難易度1とか言いながら クリアそのものが不可能とかやりそうだしな……。



    江ノ島「う〜ん……バリエーションは様々だけど……」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    不二咲「えっ!?そ、そんな……!」

    左右田「な、何だよ急に!」



    慌てて振り返ると青白い顔でモニターを凝視している不二咲がいた。



    不二咲「た、大変だよぉ……こ、この磁力機……時限爆弾がプログラミングされてる!」

    左右田「なっ……!」

    辺古山「何だと!?」

    左右田「い、何時だ!」

    不二咲「そこまでは分からない……だけど、この爆発でこの街一体が吹き飛んじゃうよ…!」



    左右田「くっそ…!早いとこ その黒と白の線を探さないと…!」



    ガザガサガサ。ゴソゴソゴソ。


    見つからない……全っ然見つからない……


    マズイ……このままでは本当にヤバすぎる!



    松田「えげつねえ真似するなぁ……いきなりそんな仕掛けをしやがって」

    江ノ島「だって罰が怖い方がみんなやる気出るでしょ?」

    松田「んで?その解除方法は?」

    松田「まさか希望だから白の線切れば解除とかつまらねえこと言わねえよな?」

    江ノ島「大丈夫大丈夫〜!その辺もバッチリ対策済みよ〜ん!」

    松田「……?」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    苗木「へ……?」



    今なんて言った?


    「駄目」……そう言ったのか?



    苗木「な……何言ってんだよ霧切さん!このままじゃ辺古山さん達が……!」

    『だからって……貴方達が言った所でどうにかなるの?』

    『無駄な犠牲が増えるだけよ……馬鹿な真似はしないで……』

    苗木「っ……」



    言ってることに間違いは無い。


    確かに武器もなんにも無い僕が闇雲に挑んだところで足を引っ張るのは目に見える………



    (僕では……仲間を救えない………?)



    大和田「霧切テメェ!仲間がどうなってもいいのかよ!?」

    『今そっちに大神さん達が向かってるわ……だから、貴方達はそこで待機よ』

    『感情的になるのも分かるけど、今は指示にしたがって……』



    大和田「ッ…!この!」

    終里「……おい、苗木は?」

    大和田「アァ?そこにいん……」

    大和田「ッ!?あのバカ!」

    『どうしたの…?そこに苗木くんはいるの?』

    大和田「どうやら……お前の指示に従いたくない奴がいたみたいだな」

    『………』



    「ハァ……!ハァ……!」



    確かに、僕なんかの力じゃ人一人救えやしない………


    誰も救えない挙句に僕自身が危険に合うかもしれない………



    だけど……それは可能性。しかも悪い方のだ。



    人一人救えるかもしれない。


    自分が危険に合わず誰かを救えるかもしれない……!



    苗木「ネガティブな思考でいられるか……!」




    苗木「人より少し前向きなのが……僕の唯一の長所なんだ!」







    MISSION終了まで

    〔残り2時間21分〕




  49. 56 : : 2014/08/27(水) 13:00:12
    更新まだかなー♪
  50. 57 : : 2014/08/28(木) 23:20:20
    >>56

    お待たせしましたです!
    今夜もちょこっとだけ再起動です!
  51. 58 : : 2014/08/28(木) 23:20:30

    『どういうこと?まさか苗木くん一人で……!?』

    大和田「そういうことだな、終里!俺達も行くぞっ!」

    終里「よっしゃあ!面白くなってきたぜ!」

    『ちょ、待っ……ブツンッ』



    無線機の電源を落とし、強制的に会話を終わらせる。



    大和田「ルールだの命令だの……もうウンザリだ」

    大和田「ダチが危険なら意地でも助ける……それが漢ってもんだろうがぁっ!!」

    終里「おぉっ!何か今のおっさんっぽいぞ!」



    初めてあった時から何となく思ってたけどよ……



    大和田「話は後だ!今はアイツラ助けんぞ!」

    終里「おっしゃあ!」



    コイツ……強え……!





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






    『ザーザ……ザザザザ………』



    大神「ヌゥ?」

    桑田「どうした大神?」



    『ミ……サン………大……神さん……聞こえる……?』



    大神「霧切から連絡だ…」



    それを聞いた途端 桑田と弐大も口を閉じて無線機に耳を傾けた。



    大神「聞こえるぞ、何かあったのか?」

    『苗木くん達の組が危険だわ……すぐにコチラにこれる……?』

    桑田「げっ!?不吉な予感大当たり!?」

    大神「…わかった。すぐにそちらに向かおう…」

    『ええ…事は一刻を争うわ……急いで……ブツッ』

    大神「……………」

    弐大「確かあの組には終里がいたはず、そう簡単には殺られんじゃろうが……」

    大神「急ぐぞ……何としても仲間を守るのだ!」



    ダダダダダダダダダダッ



    三重に重なる足音が廃街に木霊する。



    足跡だけを残し、三人はその場を後にした……。










    MISSION終了まで

    〔残り1時間56分〕




  52. 59 : : 2014/08/30(土) 03:34:47
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    辺古山「うおおおおおおおおっ!!」

    「アガぁっ…!?」

    「がハァっ!」



    辺古山「ハァッ……!ハァッ………!」



    なぜ……私は戦っているのだろう……。



    目の前にある食料を手に入れる為?

    絶望に屈しない為?

    生き残る為?



    目の前の脅威と交えながら、辺古山の脳裏にそんな疑問が頭を過り続ける……。



    「超高校級の剣道部」辺古山ペコは戦いながらその疑問と葛藤していた。



    超高校級の才能を活かせばこの境地から脱出など容易いことだ。


    しかし、左右田達を庇っている影響でいつもの様に戦えない……



    辺古山(私は……何故戦っているんだろう……)



    この二人を見捨てれば助かる。そして坊ちゃんと一緒に生き延びれる……


    ならば何故私は早くここから逃げないんだ?



    何かが……何かが………この場から去ろうとする私の心を鷲掴み、押さえつけてる……。



    辺古山(なんだ……このモヤモヤした感じは……私は……坊っちゃんと生きたいのでは無いのか…?)


    分からない……何故こうもハッキリと決断できないんだっ!!



    中途半端な気持ちではこの場から脱出は出来ない……。しかし、早く決めねば私のスタミナが尽きてしまうというのに!



    辺古山「ッ……アアアアアアアアアッ!!!」



    こみ上げてくるイライラを口から何もかも吐き出すように叫び続けた。



    分からない……!私は何のために……戦って……!!



    しかし、その怒りと焦りは……彼女にとって最大の天敵を生んでしまったことに……彼女自身は気づかなかった。



    辺古山「はっ!?」

    「キボウ……カクゴオオオ!!!」



    死角。


    それは、彼女が最も出合うことを避けていた最悪の相手。



    辺古山「ッ…!?」



    死角とは真反対の方向に目をやっていた辺古山に男の丸太のような上腕が炸裂した!



    『ゴキィッ!!』

    『メキ、メキメキメキ……!!』



    辺古山「ガッ……はッ……!」



    肋骨が悲鳴を泣き叫ぶ。


    爪や歯での攻撃ではない為、感染はしていない……だが



    辺古山「あ…ぐっ………う……うあ……!」



    起き上がれない。


    腹部に炸裂した渾身の一撃が肋骨が砕け、叩きつけられた大地によって右肩が脱臼していたから……。



    辺古山「うっ…!……刀……竹刀は……!?」



    右腕も使えない……地べたを這うことすらままならない……しかも刀まで無くしてしまった……!



    辺古山「っ……こんな……こんな……!」

    「「ハアアアアア〜〜ッ」」

    辺古山「ヒィッ!?」



    後ろを振り向かなくてもわかる……何十人もの吐息が自分にかかってくるのが……



    辺古山「い……嫌だ……!坊っちゃん……助け……!」



    逃げなくては……早くこんな地獄から……!!



    『ズキィッ!!』



    辺古山「うああッ!?」



    痛い……痛い!痛い!痛い!


    這れば這うほど、砕けた肋骨に砂利や石が容赦なく体当たりをかましてくる


    そして砕けた肋骨が体内を無残に切り裂き、とうとう口からも大量の吐血が溢れ出す



    辺古山「がフッ!?げホッ…ゴホッ!!」



    嫌だ……嫌だ……!…嫌だ……!!


    死ぬ……死ぬ………!!



    剣道家としてのプライドなんてどうでもいい……誰か……誰でもいい……!助けて……!



    涙が止まらない……!

    震えが止まらない……!




    脳から骨の髄にまで忍び寄る恐怖……


    その重度のストレスとプレッシャーによって……辺古山は徐々に侵食され始めていた………






    底知れない恐怖………


    永遠の悪夢………






    …絶対なる闇……………絶望に………












    MISSION終了まで

    〔残り1時間21分〕

  53. 60 : : 2014/08/30(土) 21:42:10
    ペコぉぉぉぉ!
    え、これ助かるやんな?!
    助かりますよね?!



    超絶期待っす‼︎‼︎
  54. 61 : : 2014/09/05(金) 13:06:33
    私は……坊っちゃんの道具だ。



    別に変な意味での道具ではない、道具……武器であってもいい。



    とにかく私は、坊っちゃんと主従関係であり、坊っちゃんの専属召使いだ。



    だが 私が組に所属し、今に至るまで……坊っちゃんは私という道具を否定し続けていた。



    召使いであること、道具であることに私は全く異論はない。むしろ存在意義だとすら考えている。



    ……やはり、「あの事件」が全ての引き金なのだろうか……。



    ならば…私の敵はコイツ等ではなく……




    いや、よそう……。



    今更誰を恨んで誰を憎もうが……もうなにもかも遅すぎた。



    (結局……何のために戦っていたのが、分からなかったな……)


    (さようなら……坊っちゃん……)

    「希望……シネエエエッ!!」



    もはや彼女に意識はない。


    ただ それでも男は、その綺麗な背中目掛け、豪腕を力一杯振り下ろした。



    『ズガアァァッ!!』



    地面が砕け、男の豪腕が抉りこんだ。


    恐らく、昨日の雨で地面が柔らかくなっていたのだろう……



    男の右腕は肘より下が見えなくなるほ深々と、地面に突き刺さっていた。



    (………地面?)



    消え行く意識を無理やり引き戻し、ぼやける視界に目を凝らすと……男の豪腕は自分の顔のすぐ横で炸裂していた。



    辺古山「…え……?」

    「ウウウウッ……!!」



    男が巨大な唸り声を鳴らす。


    それに続き、他の感染者も次々に雄叫びを吐き出し始めた。



    それは辺古山にでは無く、まるで獲物を横取りしようとする敵を威嚇する獣のようだった……。



    「おらおらおらおらぁっ!バトりてえ奴はかかってきな!」

    「喧嘩上等だゴラァっ!!」

    辺古山「終里……大和田……!?」

    「アアアアアアアアアアアッ!!!!」



    威嚇という忠告を無視した彼らに、男は全力の殺意で戦闘態勢に入る



    大和田「チッ…やっぱ数が圧倒的に不利か」

    終里「何だ、大和田?ビビってんのか?」

    大和田「あぁ?何言ってやがる……」

    大和田「数が多い敵なんざ族にいた頃に何度もぶつかってんだよ、」

    大和田「そんなんでビビるってたら強さを名乗る資格が無くなっちまうだろが!」

    終里「面白え……やっぱお前強いな、今度勝負しようぜ!」

    大和田「これが終わったらなぁ!」

    「キボウ……ジャマ……シネエエエッ!!」











    MISSION終了まで

    【残り54分38秒】




  55. 62 : : 2014/09/21(日) 21:56:03
    久々に見に来ましたがすごいですね!キラキラ

    やっぱ雑草さんの作品には憧れます!!

    期待期待!!
  56. 63 : : 2014/09/25(木) 12:54:47
    左右田「あった!あったぞ!」



    ようやく見つけた!と言わんばかりの歓喜の声。
    左右田の手には黒と白の銅線がしっかりと握られていた。



    左右田「不二咲、次はどうしたら良いんだ!?」

    不二咲「……わからない」

    左右田「は?」

    不二咲「多分、この線がこの機器の根本であることは確かなんだけど……その、何方かがダミー。つまり偽の線なんだよぉ」

    左右田「それって……もし切断したりしたら?」

    不二咲「残り時間関係なく……起爆すると思う……」

    左右田「なっ……!?なんだよソレ!?お前でも分からないのか!?」



    予想外の事態。


    ここは現実。そんな何処かの映画やドラマのように一か八かで成功するはずがない……

    どうする?黒か白か……



    左右田「ち、畜生!!」



    左右田は思い切りガラスを殴りつけた。

    痛い……けどそんなこと言ってる場合じゃ……!



    左右田「ダメだ……もう、お終いだ……」

    不二咲「あ、諦めちゃ駄目だよ!」

    左右田「!」

    不二咲「まだ、終わってない……最後まで諦めちゃ駄目だよ!ボク達は最後の希望なんだから!」

    左右田「不二咲……」

    不二咲「だから……最後まで頑張ろうよ!これを処理できるのはボク達二人だけなんだよ!」



    一生懸命な眼光。

    無理しやがって……震えてるのが丸わかりだぜ?



    左右田「これが成功したら、ソニアさん……俺の事を男として見てくれるかな?」

    不二咲「よくわかんないけど……ボクは、凄くカッコいいと思うなぁ…!」

    左右田「……そうか。じゃあ……頑張るしかないよな!」

    左右田「必ず成功させようぜ!俺達の盾になってくれた辺古山や苗木達の為にもよ!」

    不二咲「うん…!」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    苗木「辺古山さん!大丈夫!?」

    辺古山「苗木……お前たち……どうし……て………?」

    苗木「例え、この場を生き残る為だとしても……危険に晒されてる人を見捨てるわけにはいかないよ」

    苗木は「僕らは、最後の希望なんだから」

    辺古山「…………」

    苗木「とりあえずここは大和田くんたちに任せて避難しよう?僕が背負うよ」

    辺古山「苗木……お前は……おかしいやつだな」

    苗木「え?そうかな……言われたことないけど」

    辺古山「見ての通り、私はもう戦えない……この有り様だ。酷い醜態だろう?」

    辺古山「そんな私を助けて何になる……?無駄に皆の足を引っ張り、邪魔になるだけだ……私のことは放っておけ……」



    フッ……散々命乞いをしたのにな……今考えてみれば見苦しいの言葉に尽きる。

    道具なら道具らしく……壊れれば捨てられて処分されるのが私には似合……



    苗木「よいしょっと」

    辺古山「!?」

    苗木「大丈夫?きつかったり痛かったりしない?」

    辺古山「何を……してるんだ……?」

    苗木「おんぶだけど?」

    辺古山「お前……私の話を聞いていたのか…!?私はもう戦えない。この場に捨ててい……」

    苗木「やだ」

    辺古山「なっ…!」

    苗木「例え死にたいと言っても……捨てて行けと言われても……僕の前では、誰も死なせたりなんかしない!」

    苗木「仲間はさ、一人でも欠けちゃいけないんだ。戦えないのなら…その人の分まで僕が戦ってみせる!」

    辺古山「……苗木……」




    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    「アアアアアアアアアアッ!!!」

    大和田「うおっ!?」



    ミサイルの如く放たれる豪腕。
    大和田は長年の喧嘩経験だけを頼りに見を低くして回避。


    そしてその直後、鋭い風が頭上を通過し、後ろから感染者の悲鳴が聞こえる。



    大和田「コイツ……ただの感染者じゃねえ!」

    終里「言葉を話せるのも、辺古山に重症を負わせられるのもコイツだけみたいだな」



    明らかにこの感染者だけが何か違う。

    D・E?いや、もしそうなら首枷が付いているはず。奴には首枷は付いていない。



    大和田「もしかしたらアレかもな、感染者の例外って言われてる奴ら」

    終里「だとしても変じゃないか?コイツの歳はどうみても俺たちと同い年くらいだしよ」



    この感染者より歳をとっていてガタイの良い者や強そうな者など沢山いる。

    にも関わらずコイツの強さは比べ物にならない。明らかに何かある。



    大和田「大体、コイツの着てる服装……どっかで見覚えがあんだよな…」



    上半身に服は纏っておらず、下半身はヒラヒラした青い短パンのようなのを履いている。


    そしてあの豪腕。腕しか使ってこない戦闘スタイル………



    大和田「っ!まさか…!!」

    『うぷぷ……!そう、その通り!そのまさかなのじゃ!』
  57. 64 : : 2014/09/25(木) 12:58:58
    >>62

    ありがとうございますです!
    最近別サイトにて小説書いているので更新がナメクジ化してますww

    これからも応援よろしくお願いします!
  58. 65 : : 2014/10/02(木) 19:06:22
    まさか、戦刃か? それとも、弐大か、朝日奈あたりか?
    どちらにしても、絶望的だな・・・
  59. 66 : : 2014/10/05(日) 11:47:40
    大和田「っ……江ノ島!?」

    終里「落ち着け、例のホロなんとかって奴だ」



    半透明の身体で再び希望の前へ現れた絶望の根源にして、最凶の絶望。


    その姿が現れた直後、周囲の感染者が攻撃を止め、ホログラム映像の江ノ島に跪く。



    苗木「な、なんだ!?」

    辺古山「霧切の言っていた通りだな……希望には敵意を。絶望には忠誠を……か」


    まるで王に忠誠をささげる国民のような光景。


    江ノ島は「あ〜苦しゅうない苦しゅうない」とふざけ半分に感染者をあしらっている。


    そしてコチラに目線を移し、にんまりと意地の悪い笑顔を見せつけた。



    江ノ島『やあやあ、元気にENJOYしてるかな?希望の諸君』

    大和田「何しに来やがった!テメエの遊びに付き合ってる暇なんか一欠片も無えぞ!?」

    江ノ島『うぷぷ……酷い扱いようだね〜折角お得な情報を持ってきてあげたのにさ?』

    終里「情報……?」

    江ノ島『大和田、アンタは薄々気づいてるんじゃない?絶望的に遅いけど』

    大和田「ッ………」

    終里「大和田……?」

    大和田「この世界がイカれる前の話だ……俺、はコイツと会ったことがある」

    大和田「名前は覚えてねえ……けどコイツは、この男は……超高校級の才能を持った、希望ヶ峰学園の生徒だ」

    苗木「!」

    辺古山「希望が……絶望に堕ちた……?」

    江ノ島『そういうことだね。正解だよ!100点中80点ってところかな?』

    江ノ島『唯一のミスは……『超高校級』では無いってところだね』

    大和田「はぁ!?何言ってやがる!コイツは超高校級の才能を持ってこの学園に来た、『超高校級のボクサー』のはずだ!」

    江ノ島『違うよ。彼はもう希望の超高校級なんかじゃない……』

    江ノ島『絶望に酔いしれた…『超絶望級の高校生』だよ……』

    大和田「!?」

    苗木「超絶望級の……高校生……?」

    江ノ島『言うなれば彼は、その青年は、絶望から生まれた才能の持ち主。超絶望級のボクサーってところね』


    「ウウウウウゥゥ……!」

    江ノ島『苗木ー、アンタ私に言ったよね?』

    苗木「えっ?」

    江ノ島『希望は伝染するって』



    言った。確かに覚えている。


    あの最後の学級裁判で、僕は確かに、江ノ島盾子にその台詞を浴びせた。



    苗木「それが……どうしたってんだよ?」

    江ノ島『結局希望ってさ、伝染したの?しなかったの?』

    苗木「したさ。お前がこの世界をこわすまではな……」

    江ノ島『じゃあ今はしてないんだ。希望も面目丸潰れね』

    苗木「ッ…」


    江ノ島『けどさぁ苗木……』



    声がワンオクターブ下がり、地に這いつくばるような低声が辺りに響き渡る。



    江ノ島『アンタら希望がさ……私らに勝てるわけ無いじゃん?』

    苗木「それは違う!希望はお前ら絶望なんかには屈しない!絶対にな!」

    江ノ島『ふぅ〜ん、じゃあこの超絶望級のボクサー君にはどう説明つけるのかなぁ?彼だって立派な元希望だよ?』

    苗木「……それは……!」

    江ノ島『苗木ぃ……所詮、希望なんてそれっぽっちのモンなんだよ……』

    苗木「違う!希望は……負けたりなんか……!」

    江ノ島『まだ分かってねえ見てぇだなぁ……』







    江ノ島『希望を圧倒し!敗北させ!絶望させるから……』







    江ノ島『絶望なんだろうがよおおぉぉっ!!!』

    「アアアアアアアァァァァッ!!!」



    その言葉に解き放たれるが如く、周囲の感染者が一斉に地を蹴り、押し込めていた敵意を開放する。



    終里「チッ……数が多すぎるぞ!」

    大和田「畜生…!」

    「二人共、伏せよ」

    大和田「!その声……!」

    「ヌウウウウンッ!!!」



    身をかがめた直後、頭上を砲弾のような大腕が貫き、目の前の感染者を豪快に蹴散らす!



    「ガッ……!?」

    「アグぁっ!!」

    江ノ島『およ?』



    流石の江ノ島も目を点にしている。



    大神「これ以上仲間には……指一本触れさせんぞ…」

    苗木「お、大神さん!」

  60. 67 : : 2014/11/06(木) 17:51:11
    希望に期待です!頑張ってください!
  61. 68 : : 2014/11/24(月) 00:31:21
    ちょ、ちょっと大神絶望的ぃ~!!
    手加減してよ!!
  62. 69 : : 2014/11/24(月) 01:54:31
    江ノ島『へぇ……オーガ参上………か。少しは面白くなるかなぁ?』

    江ノ島『あの二人が来るまでの間……せいぜい死ぬなよ?希望共ぉ!!』



    ━━━━━プツンッ



    不敵な笑みと、突き立てた中指を最後に、江ノ島のホラグラムは砕け、空気中に消散した。



    大和田「…消えやがった」

    大神「あの二人……まだ奴らには策があるということか」

    終里「ん、ちょっと待てよ?大神がいるってことは……」

    大和田「馬鹿っ、よそ見すんな終里!」

    「アアアアアアアアアアッ!!!」

    終里「やべっ…!?」

    「ぬおおおりゃあああ!」




    『バゴオオオッ!』




    「ギャバァッ!?」

    弐大「情けんぞ終里!しっかりと周囲にも気を配らんかぁ!」ザッ

    終里「おっさん!やっぱり来てたのか!」


    桑田「俺もちゃんといるぜ」

    苗木「桑田くん!」

    桑田「っても、遠距離からの援護投球しか出来ないけどな……あ〜あ、俺カッコ悪い」



    髪をクシャクシャにしながら桑田はがっくりと肩を落とす。



    苗木「で、でも凄く助かったよ!桑田くんなら辺古山さんを運べるんじゃないかな?」

    桑田「おっ、何その代打みたいな展開!マキシマムかっけえじゃん!」

    苗木「辺古山さん、ちょっと動かすけど大丈夫?」

    辺古山「あぁ……問題ない。だがなるべくゆっくり動かしてくれ……」



    慎重にゆっくりと背に抱えた辺古山をずらし、苗木は辺古山を桑田の背へと移した。



    桑田「おっし、任せときな!何としてもコイツを守りきってみせるぜ!」ダダダダダダダダッ

    苗木「桑田くんの脚力と体力があれば、なんとか逃げ切れるかな……」

    苗木「……あとは」



    左右田「ッ…どっちを切ればいいんだ……!」

    不二咲「今解析してみたけど…やっぱりコードの中まで………」

    苗木「二人共」

    左右田「うおおぅ!?」ビクッ

    不二咲「お、驚かさないでよ苗木くん!」

    苗木「あっ……ご、ごめん!作業はどうかなっ……て」

    左右田「見ての通りマジやばい状態だぜ」

    不二咲「この2つの線が、命運を握ってるんだからねぇ」

    左右田「…………」



    運……?



    左右田「……不二咲、残り時間はあとどれくらいだ?」

    不二咲「え?え、えっと……37分と21秒だよ…!」

    左右田「苗木……お前の才能って………幸運だったよな?」

    苗木「う、うん……一応」



    謙虚気味に頷くな否や、左右田は両手に持った二本の銅線を苗木に押し付けた。



    苗木「わっ!?ちょ、左右田くん!?」

    左右田「苗木……頼む!お前のその幸運で、この場を救ってくれ……!」

    苗木「え……?」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    霧切「二本の銅線?」

    狛枝「うん、よくあるでしょ?アクション映画とかで」

    セレス「二本のうちの一本だけが、起爆を止められる……というベタなアレですか?」

    狛枝「うん。苗木くんからの情報によれば、食糧は機械の中に入ってたんでしょ?」

    狛枝「だとしたらさ、そんな展開があってもおかしくないと思わない?」

    十神「くだらんな、結局お前は何が言いたいんだ?」

    狛枝「ハハッ、ごめんごめん。話がそれちゃったね」

    狛枝「要はさ……もし、二本の銅線があった場合……どうするかってことだよ」

    狛枝「ヒントも手がかりも無い。君達なら、こんな絶望みたいな状況……どうやって希望に塗り変えるかな?」

    葉隠「お、俺は右利きだから……右の線を切るかも」

    狛枝「うん。そういうのもあるね」

    山田「鉄板な「どちらにしようかな」的な……」

    狛枝「うん。それもあるね」

    狛枝「でも、僕の考えは違うんだ………」


    狛枝「僕だったらね……こう考えるんだよ」




    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    苗木「…………………」














    MISSION終了まで

    〔残り29分47秒〕 




  63. 70 : : 2015/05/11(月) 14:51:40
    今自分は、仲間の命を背負っている。



    二本の内の何れかを切断する。


    たったそれだけの動作で、仲間の命を救う、仲間の命を奪う………どちらかの可能性が実現してしまう。



    リミットは20分を切っていた。
    極限の状況下で仲間の命運を左右する銅線を、苗木はただじっと睨みつけることしか出来ずにいた。


    ドッと溢れだす汗が頬を伝い、緊迫した空気がのしかかってくる。



    苗木「やっぱり……僕には出来ない……!」

    左右田「頼むぜ苗木!超高校級の幸運なんだろぉ!?」

    不二咲「……苗木くん」



    涙目で懇願してくる二人……無茶言わないでくれ!僕は、「彼」とは違う………


    同じ才能を持ちながら、苗木とは違い如何なる状況下でも己の才能を発動できる彼……「狛枝凪斗」とは違う。



    稀に開花する?いや、開花したことすらない分からない才能では……ここにいる命を救うことはできない。



    苗木「くっ……どうすれば……!」



    命運を握る少年を余所に、またある場所では状況は大きく変わりつつあった……。







    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






    「グオオオオオッ!!」



    頑丈な筋肉で構成された、強固な右腕が頬をかすめ、そこから己の血が滲み出る。



    大和田「チッ……!」

    「ヌアアアァァァァッ!!!」



    超高校級……もとい、超絶望のボクサーから放たれる一撃はどれも即死になりかねない。


    ただでさえ鋼のように鍛え上げられた筋肉はさらに張り詰め、極限まで圧縮された血管が全身を走っている。



    大和田「ドーピング効果もあるってことかよ……あのウイルスは!」

    終里「大和田!そいつを引きつけろ!」



    バッと後方より終里が自慢の脚力で高く舞い上がる。



    「ウゥ……?」

    大和田「チャンス!」



    ボクサーの注意がほんの僅かに揺らいだその一瞬を大和田は見逃さない!


    瞬時に男の両腕ごと抱きしめ、渾身の力でベアバッグを決めた。



    大和田「ぬおぉぉぉぉらぁぁぁっ!!!!」



    血管が張り裂ける気張りで締め付ける。
    男も負けじと脱出を試みるが、大和田は引かない。



    大和田「今だ終里っ!!」

    終里「任せとけ!」



    近くのへし折れた信号機を反動に利用し、重力と勢いが加算される。



    終里「おらぁっ!!」




    バギィィッ!!!




    渾身の蹴りが男の顔面に炸裂!
    あまりの衝撃に男の首は不気味な角度へと折れ曲がった



    「ゴッ……ギャ………!」



    膝から土砂崩れの如く崩れ落ちた超絶望級のボクサーは、もう二度とその身体を立て直すことは無かった。



    終里「へへっ…どんなもんだ」



    華麗に着地すると終里は自慢気な笑みで大和田へと振り返る。



    終里「どうだ大和田!アタイって強えだろ?今度、絶対勝負してくれよな!」

    大和田「ゼェ……!ゼェッ……!」

    終里「お、おい!大和田、大丈夫か?」

    大和田「あ……あぁ………なんとかな………」



    大和田の息は大きく上がっており、ゾッと青ざめた表情と大量の汗が、終里に不安感を漂わせた。



    終里「ちょ、お前……凄え顔色悪いじゃねえか!本当に大丈夫なのか!?」

    大和田「へ……へへっ……心配すんな、ちょっと疲れちまっただけだっつの………」

    終里「帰ったら罪木に見てもらったほうがいいって、な?」

    大和田「…あぁ…そうだな………」



    大神「ヌゥんっ!!」

    「ガッ……!?」




    ドシャッ!




    弐大「……ふぅ、どうやら今のが最後だったみたいじゃのう」

    大神「うむ……そのようだな」



    辺りには無数の感染者が横たわる中、二人はほぼ無傷という屈強な功績を生み出した。


    それは同時に、超高校級格闘家とそれを育成する超高校級のマネージャーの実力を、改めて驚かせられる光景だった。



    終里「おっさん!」

    弐大「おお!どうやら、終里の方も無事だったみたいじゃな!」

    終里「そんなこと言ってる場合じゃねえって!大和田が……!」

    弐大「何?」




  64. 71 : : 2015/06/06(土) 16:49:36
    おお…‥俺の好きな大和田君が…‥
    希望!希望!希望!希望!
    なんてね 笑 期待っす!
  65. 72 : : 2015/06/11(木) 17:22:08
    期待!!!更新待ってます(σ≧▽≦)σ
  66. 73 : : 2015/06/15(月) 10:06:01
    >>71

    大和田好きなんですか!

    大和田死なないと良いですね……(震え)


    >>72

    期待の言葉、ありがとうございますです!
    やっと時間に余裕が出来そうなので、今後は更新期間が早まると思います!
  67. 74 : : 2015/06/15(月) 10:06:15








    松田「………………」



    部屋中に敷き詰められた機器の熱によって温められた生温かい空気が、ヌッと頬を這いずる。


    足場もろくに確保出来ないほど狭い一室で、四六時中モニターと睨み合いをする作業………。

    こんなこと続けていれば気がおかしくなっても誰も不思議に思わないだろう。



    松田「……毒素に近い組織だな……α式溶液で中和しとくか……?」

    松田「いや……変に化学反応起きても面倒だからな………あえてΩ系統の組織で圧縮するか………」



    が、この男はむしろ楽しんでいた。
    超高校級の神経学者による知識が、環境の有無を全て取り払ってくれる。

    それだけで松田 夜助はモニターと睨み合うことに、何の不満も抱かないのだった。



    江ノ島「でねでねー?そいつったら惨めに命乞いなんかしちゃってさ〜!」



    さっきから後ろで騒いでる「この女」さえいなければの話だが………。



    松田「うるせえんだよドブスっ!こっちはお前に頼まれた組織の改良をしてやってんだから少しは静かにしろ!」

    江ノ島「私もう興ざめしちゃってさ〜?なんかどうでも良くなったから餓死寸前の獣の檻にぶち込んでやったわけ!アハハハハハハハッ!!」

    松田(完全に一人相撲だな……)



    呆れてモニターに視線を戻そうとした時、ふと腕時計に目が止まる。



    松田「……あと9分弱ってところか」

    江ノ島「あっ、もうそんな時間?時間が過ぎるのって本当に早くね?あぁ〜!絶望的ぃぃぃぃっ!!」

    松田「………つーか、まだアイツラ来ねえのか?」

    江ノ島「うん?あー……何処かで道草食ってんじゃない?草なんて生えてないけど……アハハハハハハハハッ!!!」

    松田「はぁ……」

    江ノ島「さってと、この部屋にいるのも飽きてきたし……苗木達の様子でも見てこよっかな〜!」



    一人相撲にようやく飽きたらしく、部屋から出ていく江ノ島を見送ると、松田は再び重いため息を吐き捨てた。



    松田「ハァ……付き合ってられないな、俺一人には荷が重すぎるっての……」



    実際のところ、江ノ島との会話は目の前の緻密な作業の何十倍もキツく感じる。



    松田(……まぁ、「俺は俺のすべきこと」をやるとするか………)



    フッと不敵に息を漏らし、松田は再びモニターへと意識を集中させた……。








    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━








    霧切「なるほど……ずいぶん独創的な考えね」

    セレス「貴方らしいと言うか何と言いますか……」

    葉隠「期待を裏切らねえなぁ〜狛枝っちは」

    狛枝「ははっそれほどでもないよ。あくまで仮定の話だしさ」





    ブチッ





    狛枝「そう……あくまで「僕の考えた」仮定……」




    苗木「……………」

    左右田「…うぅ…!?……」

    不二咲「…………!……」





    狛枝「もし……二本の導線があったとして、そのどちらかが命運を左右するとしたら…………」





    江ノ島『おっ!』

    苗木「これが、僕の選択だよ……!」

    不二咲「に、二本同時に……!?」

    左右田「いや……むしろ正解かもしれねぇ…!回線を同時に遮断することで止まる機器も無い訳じゃないからな」

    苗木「はぁ……はぁ……」




    ………静寂だった。

    風も、瓦礫の崩れる音も、耳で唸る空気の音さえも……全ての音が失われたような感覚。




    苗木「………………」



    その選択が良いのか悪いのか、うんともすんともしない機械を前に……苗木はただジッと待つことしか出来ずにいた。


    鼓動が高まり、しだいに呼吸が苦しくなってくるのを感じる。



    そして、口に溜まった生唾を飲み込んだその時…………









    江ノ島『あ〜あ……殺っちゃった♬』

    ビィィーーーーーーーーーーーーーー
    ーーーッ!!!!










    苗木「えっ……?」










    絶望のファンファーレが………聞こえた気がした。




  68. 75 : : 2015/06/16(火) 08:51:26

    苗木「………えっ?」



    ビイィィィィーーーーーーーーッ!!!



    突如、機械から鳴り響く警告音。
    それに何の意味があるのか、言うよしもなかった。



    不二咲「あ……うぁ……」

    左右田「あ、あわわわわわわ……!も、もうおしまいだァァァァ!!!」




    江ノ島『あ〜あ、まだ五分ちょっと考えられたのに……勿体無いねぇ』

    江ノ島『正解はどちらも切るんじゃなくて……』

    狛枝「僕の推測だと……」




    江ノ島『どちらも「切らない」んだよ〜ん♪』
    狛枝「どちらも「切らない」…んじゃないかな?」




    大神「ぬぅ?」

    桑田「な、なんだ!?なんなんだ!?」

    辺古山「これは……」



    霧切「なに、この音……リミットまでまだ残っているはずよ!?」

    十神「どうやら……何処かの馬鹿がしでかしたようだな」

    朝日奈「そんな…じゃあ、サクラちゃんは!?」



    青ざめく朝日奈を余所に、不気味な警告音は絶えず叫び続ける。



    江ノ島「はぁ〜、これだからゆとり世代は……ダメだねぇ。すぐに結果を求めるんだから」

    江ノ島「果報は寝て待て。慌てる乞食は貰いが少ない……ってね?」


    松田「お前もその世代の一人だろうが……」

    江ノ島「あっ松田くん!研究ほったらかして何処行くの〜?」



    「お弁当つけてどこ行くの?」見たいなノリで聞くんじゃねえよ。



    松田「いや?なんか面白そうなことが起きてるからよ……」

    松田「でっ、この後どうなるんだ?予定通り爆殺か?」

    江ノ島「爆発オチなんてサイテー」

    松田「ア?」

    江ノ島「あははは!そんな怖い顔しないでって、別に松田くんに言ったんじゃないわよ」

    松田「じゃあ何だってんだよ」

    江ノ島「何って………」



    江ノ島が振り向いた途端、ゾワッと一瞬にして空気が黒く染まる。

    重く、息苦しく、吐き気を誘う禍々しさが体の芯まで這い寄ってくる感覚に、思わず身が酔わせられる………。



    江ノ島「ただ大爆発して終わりだなんて、B級映画だけの特権だよ………」

    江ノ島「絶望は、そんなに甘くねぇよ?松田 夜助……!」



    ニィッと鋭い弧を描く微笑みは……一言では言い表せない、どこまでもどこまでも這い寄ってくる広大な「暗黒」。


    コイツにだけは絶対に逆らってはならないと、松田の本能が脳裏に囁いた気がした……。



    松田「………俺はある意味、お前を敵に回さなくて良かったと思ったかもしれねえ」

    江ノ島「そりゃどうも〜♪」

    松田「………………」







    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━








    ビイイィィーーーーーーーーーーッ!!!!




    苗木「ど、どうしたら……」

    大神「苗木!」

    苗木「お、大神さん……」

    大神「何なのだ?一体何が起こっている……!?」

    左右田「終わりだ!!もうお終いだァァァァァァァ!!!」

    大神「落ち着け!一体……何があったというのだ!?」

    不二咲「こ、この辺り一帯を吹き飛ばしちゃうかもしれない爆弾、が起動しちゃったんだよぉ……!」

    大神「なんだと……!」




    ドオオォォォォォォォォンッ!!




    苗木「!?」

    不二咲「こ、今度は地震だよぉ!?」

    左右田「もうみんな死ぬんだ……おしまいだ……!」

    大神「いや、待て!」

    終里「なんだ?確かに今なにかが爆発する音が……」

    弐大「この地響きに爆発音……まさか!」




    江ノ島「うぷぷ、確かに爆発はしたけどけど……そこじゃないのよね〜?」

    松田「……?」

    江ノ島「さぁ……噴き出せ!灼熱地獄ぅ!!」




    ドオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!




    轟音が唸った次の瞬間。
    頑丈なアスファルトを貫き、その内から巨大な火柱が噴き出す!



    終里「なっ!?」

    不二咲「あ、あれってまさか………」



    待機している面々も、その異変に気づいていた。



    葉隠「き、霧切っち!あれって……」

    霧切「そんな……まさか………」



    遠目からでも分かる。
    赤黒く煮えたぎり、怒涛のごとく燃え盛る火柱が………。



    霧切「…マグ……マ………?」




  69. 76 : : 2015/06/23(火) 13:10:41
    マグマ……溶岩。

    実物を見たことは一度も無いが、触れるもの全てを溶かし尽くし飲み込んでいくさまは正に灼熱の津波。


    至るところから噴き出してくる灼熱の火柱によって、周囲は瞬く間に赤く染まり変わる。



    桑田「うぉ!な、なんだなんだ!?」

    辺古山「こ、これは……」



    背に感じる尋常ならざる熱と、あちこちから噴き出す紅蓮の塔。

    グジュリグジュリと赤黒い波が瓦礫を支配していく光景は、見るものに絶対なる恐怖を与えた。



    不二咲「ば、爆弾って……地下のマグマを刺激するためだったんだ……!」

    左右田「ど、どどどどうすんだよぉぉぉぉ!?」

    大神「ぬぅぅ…!」



    おびただしい感染者の次は、全てを粉塵に還す紅蓮の悪魔。

    まだ膝下にも及ばない小さな波ではあるが、その威力は絶大。
    触れただけで皮は焦げ、肉は焼け爛れ、骨は粉塵に帰すだろう。



    大神「とにかく上へ登るのだ!」



    慌てふためく左右田と不二咲、そして青ざめる苗木を抱えると、大神は鍛え抜かれた筋肉で荒廃した建築物へ舞い上がる。



    ジュウゥゥゥゥ…………



    大神「む?」



    焼き焦げるような臭いと妙な異臭を感じ取り、怪訝な顔で先程までいた場所を横目で睨む。



    「ァ……アァァ……!?」

    「ウゥゥ………!」



    そこには溶岩の業熱によって焼けただれていく感染者達の群れ。

    かつては人だったと言う武士の情けで峰打ちに留めておいたのが仇となってしまった。


    意思はなくとも痛みは感じている。

    生きたまま溶かされていくことがどれほどの苦痛なのかは分からない。大神はただ「すまぬ…」と口惜しそう唇を噛んだ。



    弐大「ん?…おぉ!大神、お前さん方も無事じゃったか!」



    見定めていた着地ポイントには既に弐大、そして項垂れた座り込む大和田を心配そうに見つめる終里の姿があった。



    大神「…桑田達はどうした?」

    弐大「渡しておいた通信機から連絡があった。もうマグマの届かぬ域まで逃げたようじゃ」

    大神「そうか…」



    ひとまず安堵の息を吐くが、事態はかなり深刻だ。

    周囲が瓦礫や倒れた建築物で密集してる為にマグマが広がらずに留まり、この辺り一帯が紅い海と化そうとしている。


    足場としている建物も半分近く飲み込まれ、不安定なグラつきと焼けそうな熱気が恐怖心を煽った。



    弐大「あまり時間は残されておらんか……」

    大和田「くっ……万事休す……か?」

    終里「おいあんまり喋んなって!おっさん、大和田は助かんだよな!?」

    弐大「さっきも言ったじゃろうが。ただの疲労じゃ、大事には至らん」

    終里「そ、そうか…」



    ザーザザッ………ザッザッ………



    大神「!」

    苗木「……あっ…」



    不意にポケットから耳障りな雑音が響く。
    それが通信機による音だと理解していた苗木は自然と耳に当てた。



    『……ザッ……苗木……くん……ザザザッ……』

    苗木「あっ……霧切さん…」

    『良かった…繋がったようね……ザザッ……そちらは一体何が起こってるの?』

    苗木「うっ……」



    自分のせいで、仲間を危険に晒している……胃に穴が開きそうな罪悪感が胸を締め付けた。



    大神「苗木よ、我が変わろう」



    苗木の心情を察したのか、大神は苗木から通信機を取り上げる。



    大神「我だ。そこら中から噴き出した溶岩に退路を塞がれた……犠牲者は今のところ出ていない」

    『そう……ザッザザ……先ほど、こちらに桑田と辺古山さんが来たわ……ザザ…二人のことは心配しないで………』

    大神「そうか……それは何よりだ」

    『それよりも………あっ!ちょっと…!ザッ……サザ……』

    『ザッザッ……サクラちゃん!大丈夫なの!?』

    大神「…朝日奈か」



    聞き覚えのある声に、不思議と安心感が湧き出てくる気がした。



    『その…ザザッ……マグマって凄……ザく熱いんだよね?…ザザザ……サク……死な……ザーザッ…ザザ…ね……』

    大神「ん?なんだ?……よく聞こえないが……」

    『……ら……えって…ザザザッ……ぎで…………ザザザーーーーーッ』

    大神「朝日奈っ」

    『ザーーーーーーーーーーーーーッ』

    大神「く……!」

    弐大「この熱気で通信機がやられたか……」

    左右田「クソッ……もうダメだ……!どうせ俺たちみんな死ぬんだぁ!!」

    苗木「ごめん……僕が判断を間違えたせいで……」

    大神「話はあとだ。まずはこの状況を打破しなくてはならぬ」

    苗木「………うん」







    …………ォォォォオオオン……







    終里「……ん?」



    煮えたぎるマグマが視界を歪ませる中、終里が何かを察知した………。
  70. 77 : : 2015/07/09(木) 12:14:58
    ズズ……ズズズッ……



    死後硬直。
    読んで書いて字のごとく。死した肉体の全筋肉が固まり、体が硬直状態に陥る症状。



    ズズズッ……ズズ……



    医学的に証明された結果、一度硬直した身体は二度と戻らない。けれど松田夜助は、それに一寸の閃きを見た。

    常人は意図的に筋肉を硬直させることは出来るが、せいぜい1分か2分。もって3分といった短い間だ。おまけに回数を重ねれば重ねるほど力も耐久時間も衰えていく。


    だが、だがもし……死後硬直に陥った肉体をそのまま動かせることが可能だとしたら……?




    常に100%の力で……捻り潰せるッ!




    これが松田夜助の叩き出した結論。
    死した肉体と圧倒的力を持った、改造生物。

    各関節に埋め込まれた人工機と絶望病のドーピング効果によって可能とされたソレは、かつては人であり、人ならざる者。


    異の細胞により山の如く巨大化した肉体と、内側から裂けそうな程に膨れ上がった硬直状態の筋肉。 その力故に与えられたのは、金色の首枷。A級の称号。




    「オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!」




    被験体番号:0815

    CODE : ゴーレム

    危険度 : ☆☆☆☆








    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━








    終里「なんか来るな……ヤバそうな臭いだ」

    大神「新手…追撃か。奴のやりそうなことだな」

    左右田「ど、どうすりゃあいいんだよぉ!このままじゃ全員死んじまうぜ!?」

    苗木「……………」



    ◇◇◇



    朝日奈「そこを退いて、霧切ちゃん!」

    霧切「退いてどうするの?一人で助けようなんて自殺行為よ……それに今行ったところで間に合わないわ」

    朝日奈「だからなんなの!?サクラちゃんが……皆が死んじゃうかもしれないんだよ!!」

    辺古山「朝日奈の……言うとおりだ………」

    九頭龍「お、おい!無理すんなペコ!」

    罪木「だ、ダメですよ辺古山さんっ、折れた骨が臓器に刺さったりしたら大変ですよぉ……!」

    辺古山「気にするな……苗木たちには借りがある。この命に代えても……!」



    緊急処置直後の身体に鞭を打ち、辺古山は強引に立ち上がるも、生まれたての子鹿のようにガクリと崩れ落ちる。



    辺古山「うぐっ……!?」

    日向「辺古山!?」

    罪木「ああぁっ、また傷口が開いて……無理はダメですよぉ!」

    霧切「………………」



    ギリッ…

    布地を超えて、肉を噛み裂くような歯軋りを霧切が鳴らす。



    (………まさか一斉に襲いかかってくるなんて、誤算だったわ)



    ここで戦力の一部である辺古山が倒れたのは、かなりの損失だった。

    いくら大神と弐大の腕がたつとは言えど
    、送ったメンバー全員を庇いながら脱出するのは至難の業だ。



    霧切「ッ……」

    十神「随分と焦っているようだな……霧切」

    霧切「!?」

    十神「人員を選んだのも、指揮したのも、お前がやったことだろう。この程度のことで指導者が取り乱してどうする」



    ハァ……っと呆れ混じりの口調で、十神は目を瞑った。



    霧切「……そういう貴方こそ、やけに冷静ね?てっきり私を責めるのかと思ったけれど」



    その返しに対し、十神は鼻を笑わせた。
    まるで「馬鹿だなお前は」と言わんばかりに余裕じみた失笑だ。



    十神「霧切、俺はあの殺し合い学園生活を通して、一つだけ分かったことがある」

    霧切「?」

    十神「結果は……最期まで見届けるまでに、何度でも塗り替わる。という事だ」

    霧切「………………」

    十神「それに、犠牲なくして勝利は得られん。生き残るために何人もの者を蹴落としてきた、この俺のようには」

    霧切「……そう」



    ◇◇◇



    ゴオオオオオォォォォ………



    大神「くっ……!何という熱さだ」

    弐大「もうこの足場も、長くは持たぬか……」

    大和田「チッ……万事休すかっ……!」




  71. 78 : : 2015/11/23(月) 09:44:12
    久々に再起動!
    だと思った人には申し訳ない
    ただのコメントです!
    頑張ってください、他のとこで書いてるのも見てますがこっちも楽しみにしているので
  72. 79 : : 2015/12/07(月) 20:57:51
    江ノ島も所詮雑魚キャラにすぎない。
    人に頼ってウイルスで絶望させてるくせにいつものようにそのお口で絶望絶望絶望いいながら絶望させてみろ。まあ、別に嫌いな訳ではないけど毎度おなじ江ノ島って言うのは正直嫌だね。
    それ以上に匹敵する絶望とかいないかな、男で。
    朝日奈は絶対に生き残ってほしいもちろん全員。
  73. 80 : : 2015/12/09(水) 06:07:03
    すみません、どうでもいい事を書いてしまいました。
    続き楽しみに待ってますので最後まで諦めずに書いてください。
  74. 81 : : 2015/12/09(水) 13:17:46
    期待
  75. 82 : : 2015/12/11(金) 10:07:26
    >>78

    期待、ありがとうございます!
    最後まで頑張りますです! ( ̄  ̄)ノ



    >>80

    いえいえ、作品の内容を踏まえた上での批評は大歓迎ですよ!

    こんなノロマ更新の作品にコメントいただき、ありがとうございますです!


    >>81

    期待、ありがとうございます!
    頑張ります!
  76. 83 : : 2015/12/11(金) 11:08:59
    朝日奈「それ、本気で言ってるの……霧切ちゃん」



    その眼光には、彼女からこれまでに感じたことのない感情が感じられた。


    ━━━━殺意。
    今、彼女は本気で激怒している。
    それは超高校級の探偵の肩書きを持つ、霧切 響子が一番理解していた。
    しかし彼女はその殺意を前にしても、決して口を閉じようとはしない。



    霧切「……ええ、本気よ。彼らはここで切り捨てるわ」

    朝日奈「助けるのが無理だから……ここで、死ねって……こと?」

    霧切「……そうよ」



    霧切は、そっけなく答えた。
    彼女に胸ぐらを掴まれながらも、その冷徹な表情は揺るがない。



    朝日奈「何それ……一緒にあの学園生活をくぐり抜けてきた友達を、見捨てるって……ふざけてるの?いい加減にしてよ!!」

    霧切「……その手を離してくれないかしら?服が伸びてしまうわ」

    朝日奈「ッ……このっ……!!」



    朝日奈が右手を振りかぶったところで、咄嗟に見かねた数名が二人を取り押さえる。



    葉隠「お、お、おお落ち着くべ朝日奈っち!」

    舞園「そ、そうですよ!ここで争っても問題が解決するわけじゃないんですよ!?」

    朝日奈「なら、そいつの口を誰か閉じてよ!私は友達を悪く言われて我慢できるほど、図太くないの!」

    霧切「別に悪口を言ったつもりはないわ。リスクが大きすぎるから、ここで見捨てるといっただけよ」

    九頭龍「テメェもいい加減にしやがれ霧切!いきなりどういうつもりだ!」

    霧切「……状況が変わったのよ。あの境地に置かれている彼らを助けるのは愚策だわ」

    九頭龍「あっ?じゃあペコは骨折り損って訳か……?危うくテメェの作戦のせいで死ぬところだったんだぞ!!」

    辺古山「ぼ、坊っちゃん、私なら大丈夫です……!それに今は争っている場合では……」



    もはや誰に何を言っても聞く耳を持つ者は一人としていなかった。
    焦り、不安、恐怖、怒り……様々な感情が交差する心に、他者の意見を聞く余裕など誰もが無いに等しいと言えた。



    狛枝「……………」

    十神「……………」

    セレス「……………」



    極一部の人員を除いて……。



    狛枝「あれ?君たちはあの討論に参加しないのかい?」

    十神「生憎、あんな愚民ども相手に口を開くほど、俺の口は安くは無いんでな」

    セレス「わたくしも九割九分、十神くんと同意見ですわ。こんな状況は何度も体験しておりますし……」

    狛枝「へぇ……流石は超高校級の御曹司とギャンブラーだね、この程度のアクシデントは想定内ってことなのかな?」

    十神「フンッ、言うまでもない……だが、お前はどうなんだ?」

    狛枝「どうって……何が?」



    狛枝がそう返すと、十神の表情が少し強張る。



    十神「俺を相手にしてとぼけるつもりか?あの争いを見ていた時のお前の顔、実に不気味だったんだがな」

    セレス「ウフフッ……まるで手の平で遊ぶ駒を見ているような、下衆な笑みを浮かべていたことはご存知ですのよ?」

    狛枝「あっははは……なんだ見られちゃってたんだね、別に大した意味はないよ。思わず希望に魅入っていただけさ」



    霞んだ愛想笑いを浮かべながら、彼はヘラヘラと弁解をする。
    彼が何を考えているのかサッパリ不明だが、少なくともあんな不気味な笑み、魅入った人間がつくる表情では無い。



    十神「……まぁいい、お前と話してても面白くないしな。何より時間の無駄だ」

    狛枝「はは、それは残念だなぁ……。じゃあ今度話すときはもっと面白い話題を用意してくるよ」



    そう言い捨てると、狛枝は討論の輪へと混ざっていってしまった。



    セレス「…フフッ……流石は十神くんですわね、あのまま彼の話に食いついていたら、警戒されてしまうところでしたわよ?」

    十神「……もう遅いかもしれないがな」



    あれだけポーカーフェイスを崩しておきながら心理が読めないのは、おそらく彼もまた、仮面をつけている。己を偽る仮面を。

    こちらも同様に、彼への警戒は怠らないようにした方が得策だろう。十神は密かにそう決めたのだった。



    十神(狛枝凪斗……苗木と同じ、超高校級の幸運の肩書きを持つ生徒……か)


  77. 84 : : 2015/12/11(金) 11:10:57

    ◇◇◇




    大神「……恐らく、助けはこないだろう」



    大神の予想は的確に的を得ていた。
    当然、彼女は霧切たちの会話を聞いてなどいない。
    しかし状況から見て、この場を救う手は絶望的だった。



    左右田「は、はぁ!?なんでだよ!仲間がピンチなら助けに来るだろ普通!」

    大神「……作戦を仕切っているのは霧切だ。彼女の冷静さを考えれば、ここで切り捨てるだろうな」

    左右田「そ、そんな……」



    SAN値が極限まで達してしまっただろう。顔面蒼白となった左右田は、そのまま泡を吹きながら卒倒する。



    不二咲「そ、左右田くん!」

    大和田「ほっとけ……どうせ起きてても五月蠅えだけだ」

    弐大「この建物ももうじき飲みまれるじゃろう……それまでに、ワシらが熱気溶ダウンしなければの話じゃがな」

    大神「………弐大猫丸、と言ったか?」

    弐大「んっ?」

    大神「超高校級のマネージャーの才能とお主の実力を見込んで、一つ聞きたいことがある」

    弐大「なんじゃ?改まって」



    目をパチクリさせる弐大を余所に、大神はある方向を指差す。
    10メートルほど離れたそこには、今足場にしている建物よりも一回り大きく、まだマグマの侵食に飲まれていないビルが建っていた。



    大神「………ここにいる者達を抱え、あそこまで飛べるか?」

    弐大「むぅ……試したことがないから分からんが、多分無理じゃろうな。多くても一人が限界かのう……重さで飛距離が殺されてしまう」

    大神「そうか…」



    その質問で、弐大は大神が何を考えているのか大凡の検討がついた。
    おそらく、大神は自分と協力してここいるメンバーを別の場所に移そうと考えているのだろう。

    終里はそのズバ抜けた運動神経故に、飛ぶことは可能だろうが、誰かを抱えることは不可能だ。
    彼女には俊敏さがあっても、誰かを支えるパワーが決定打に欠けてしまう。

    一人しか抱えられないのは、おそらく大神も同じのはず。
    飛べない者は四名、それを抱えられるのは二名。
    その容量だと、当然ながら二人が確実に取り残される。残念ながら……その作戦は不可能だ。



    大神「……では、残りは我が補おう」



    大神は、決断した。
  78. 85 : : 2016/04/04(月) 01:01:47
    今更ながら、下から五行目の

    飛べない者は三名、それを抱えられるのは二名。



    飛べない者は四名、それを抱えられるのは二名。


    一名欠けてましたので、修正しました。
    近々再起動致しますので恐れ入りますがもうしばしお待ちください!
  79. 86 : : 2016/04/04(月) 16:09:08
    お疲れ様です!
    楽しみに待ってます。頑張って下さい!

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Deviltaiki

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《Darkness・Encroachment》【終わりなき絶望と希望の高校生】 シリーズ

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