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路地裏の孤児

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  1. 1 : : 2014/06/14(土) 23:48:04
    まったく、

    ここはいつでも薄暗い。

    建物ばっかに囲まれてるってだけじゃねーけど。

    腹にイチモツ抱えてる奴、

    頭の中がイカれちまってる奴、

    そもそも生きてるのかわからない奴。


    こんな奴らばかりだから、そりゃ暗くもなるさ、



    ま、お陰様で私みたいなもんでも、どーにか生きていける。
  2. 2 : : 2014/06/14(土) 23:52:37

    壁の外を何十年さ迷ったかなんて


    今更どうでもいい。


    もうすぐこの身体は訓練兵に志願出来る年齢に達する



    そうすりゃ


    こんな場所とはとっととおさらばだ。
  3. 3 : : 2014/06/15(日) 00:03:55

    いつものようにカモか客がいないかブラつきながら辺りに目をやる。



    ふと、この辺りでは見慣れない人影を見つける


    あれはー…、少年?



    近づいて見てみると顔立ちにはまだあどけなさが残るが、背丈は大人と変わらない



    「…おい、そこの背高のっぽ、ここで何してる?」


    私が声をかけると少年はびくっ!と体を震わせてこちらを見た。



    汗かきすぎだろ。
  4. 4 : : 2014/06/15(日) 00:08:28
    『あっ、あの!道に迷って、それで仲間とはぐれちゃって…』


    今にも泣きそうな声で、縮こまりながら迷子だと言うこの少年は身長180センチはあるだろうか



    見た目とセリフが合わない。
  5. 5 : : 2014/06/17(火) 23:21:36
    -…面倒ごとは勘弁だな、


    よし、ここはスルーで。



    背の高い少年『…ぅう』ウロウロ


    背の高い少年『…ぅ』ダラダラ


    背の高い少年『…っ』ポロッ





    「だぁぁああっ!!」



    背の高い少年『!!』ビクゥ!



    「なんなんだよ!お前!目の前で泣くんじゃねぇ!男のくせにみっともねぇ!」



    背の高い少年『ごっ、ごめ、ごめんなさい…』




    「まぁ、いい。先に話しかけたのはこっちだしな」



    「でかい声出して悪かった。私の名はユミル、お前は?」



    背の高い少年『ぼっ、僕はベルトルト』




    ユミル「ベルトルト、じゃあベルトルさんだな」ヘラッ



    ユミル「ここはガキの来るような場所じゃないし、迷子なら一緒に仲間を探してやるよ」




    ベルトルト『あ、ありがとうユミルさん』



    ユミル「ユミルでいい」



    ベルトルト『ありがとうユミル』ニコッ



    ユミル「…別にかまわない」
  6. 6 : : 2014/06/17(火) 23:33:01
    ユミル『そもそもベルトルさんはどうやってここにたどり着いだんだ?
    その格好を見る限りじゃここらへんの奴らの身なりじゃないが』


    …実際私の格好はひどい


    靴には穴が開いているし

    服もあちこち綻びだらけ

    髪でも伸ばしてなきゃ多分女なんてわかんねぇ




    ベルトルト『えっと』ガサガサ


    ベルトルト『仲間とは地図に印をつけて日付と時間を決めて印の場所に集合しようって決めてたんだ』


    ユミル「どれ、地図見せてみろー…って、全然違うじゃないか!」



    ベルトルト『!』ビックゥ!



    ユミル「あぁ、悪い悪い、でもよ、ベルトルさんの地図だと待ち合わせ場所が○○番地で、今居るここは○×番地だぞ?」




    ベルトルト『ぇ、あ、そうなの?』




    ユミル「ああ、けどそう遠くもないな、送って行ってやるよ」




    ベルトルト『悪いよ』



    ユミル「気にするな、どうせ暇だ」
  7. 7 : : 2014/06/17(火) 23:59:31
    ートコトコ




    ユミル「…少しは落ち着いたか?」



    ベルトルト『え?』



    ユミル「随分狼狽していたからな」



    ベルトルト『…うん、やっと仲間と会えると思って待ち合わせ場所にきたんだけど、誰もいなくて』


    ベルトルト『二人とも僕を置いて居なくなっちゃたのかと…』



    ユミル「どこらへんで二人と別れたんだ?」



    ベルトルト『…シガンシナ』



    ユミル「ほぅ、随分遠くから来たもんだ」



    ベルトルト『僕達はシガンシナの近くの開拓地に居たんだ、けど奪還作戦後に生産者の数が足りなくなって
    皆バラバラの場所におくられて』


    ベルトルト『だから皆で同じ地図を持って846年の今日、印の場所で待ち合わせをしていたんだ』


    ユミル「そうか、大事な仲間なんだな」





    ベルトルト『ユミルにはいないの?大事な人?』






    ユミル「…いない」






    ユミル「ずっと一人で生きてきたからな」



    そう、随分長い間。



    ユミル「生きるためなら何でもやったさ」



    何でもね。
  8. 8 : : 2014/06/18(水) 00:29:48
    …ーポツ、ポツ



    ユミル「げっ!降ってきやがった!」


    ユミル「ここらへんは振りだすとなかなか止まねぇ」


    ユミル「悪いがちょっと雨宿りさせてもらうぞ、あそこにちょうど教会がある」


    ユミル「あそこはこの時間、礼拝堂には誰も居ねぇ、行くぞっ」



    ベルトルト『う、うん!』




    ガチャ、ギィー、バタン



    ユミル「入った途端にドシャ降りだ、助かったな」


    ベルトルト『』



    ユミル「ん?どうしたベルトルさん、顔が赤いぞ、まさかこんな短時間で風邪ひいたーなんて…」

    ベルトルト『ちっ違う!』



    ベルトルト『あの、ユミルの服が少し濡れて、その、』




    ユミル「…あ」



    自分の服が濡れて体に貼り付いて、ラインが出ている


    ついでに少し透けている



    ユミル「ダッハッハ!気にするな、こんなのなんの価値もない」


    ベルトルト『そんなことないよ!』


    ユミル「?!」




    ベルトルト『…ユミルは女の子なんだから』



    ユミル「!」



    ベルトルト『だから、これ僕の上着で悪いけど、着て?風邪ひくといけないし』



    ユミル「…悪い」



    人間扱いされた


    酷く久しぶりに感じた。


    同時に醜悪な顔も思い出す


    あぁ、てめーのアソコも顔も同じ位醜いよ



    ベルトルト『…ユミル?』



    ユミル「…ハッ、何でもない。上着、ありが…ハックシュ!」



    ベルトルト『冷えると良くないね、こっち座りなよ、僕体温高いらしいから』



    ユミル「…じゃあお言葉に甘えて」






    ユミル「…あったけぇ」



    ベルトルト『でしょ?』



    ユミル「あー…なんかいいな人の体温て」


    ユミル「なぁ、ベルトルさん、もっと近づいていいか?」



    ベルトルト『どうぞ』



    ユミル「温かい」



    ベルトルト『そうだね、ぼくもだよ』

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