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真夜中の食堂

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  1. 1 : : 2014/06/14(土) 01:03:26
    …ぽた


    『あーぁ、まただ…何やってんだろ』


    やんなっちゃうよなぁ、
    こうでもしなきゃ落ち着けないなんて。



    遠征に出た後はいつもこうだ、


    仲間が居なくなる


    昨日まで確かに存在していたのに、


    消えてなくなる


    巨人ってのはホント残酷だよねー


    特に小型の巨人の補食の仕方のエグい事ったらないよ


    人間を多少大きくしたような体躯だから対象を丸飲みも出来ない、


    ちょっとずつ、けど確実に削っていくんだ



    肉を、臓器を。



    「…おい、なにしてやがる。」



    真夜中の食堂に私より少し小柄な影。

    あぁ、今夜は月が出ている

    月を背にしているから彼の顔は見えないけど、独特な低い声



    『やぁ、リヴァイ、

    珍しいね~、こんな夜更けに

    さてはハンジさんが恋しくてあちこち探しまくったかな?!』




    「…クソメガネ、俺の声はそのイカれた耳に届いたか?


    なにしてやがると聞いているんだ」




    『あはは、眠れなくてね。

    お茶でも飲んで落ち着こうかと』




    「ほぅ?そうか

    俺には茶の準備をしているようには見えんがな」




    『うるさかったかなー、ごめんねぇ

    こんな夜更けだし、少しは気を使ったんだけど』




    入り口の引き戸の辺りにもたれていた彼が椅子に腰掛ける



    「うるさくはなかった」


    「ただ、眠れなくてな」




    『へぇー驚きぃ、人類最強でも眠れない夜があるんだねぇ、

    あはは、今後の研究のテーマにしなきゃ』





    「…なぁクソメガネ。お前いつまでそこに居るつもりだ?」




    食堂の流しの隅に座りこんだままの格好でビクッと肩を震わせる



    「俺は椅子に座っている、お前も座ったらどうだ?」



    まずい、面倒だ、この男は普段は他人に無関心なのに、どうしてこう間が悪いのだろう




    ガタと椅子を動かす音がして

    彼がこちらに歩いてくる



    ここ、真っ暗なのによくも何にもぶつからないで歩いてこれるもんだよ


    月の光りも届かないってのに。



    障害物なんか何もなかったかのように私の前に彼はすっと座りこんだ。



    君、ケッペキだよね?


    床って汚いんだよ、皆土足だし、それにここは調理する場なんだから、生ゴミとか落ちてるだろーし、

    そしたらそれに集るあのテの虫だっているかもだし、


    そんな台詞を頭の中ではいた


    実際、そんなことベラベラ喋れる空気じゃなかったんだよ



    彼の眉間のシワが更に深くなったような気がしてさ




    「おい…これはなんだ?」



    『あはは、なんだろうね?間違い?

    お茶いれようとしてミスっちゃったかなー』



    「てめえは茶入れるのに、ナイフを使うのか?」



    『だからーミスちゃったんだって!

    暗かったから!

    たまたまナイフとかに当たったの!』






    「ほぅ…お前は肩や二の腕、鎖骨のあたりを同時にナイフに当てるんだな?」




    『……』



    「しかもただ当たっただけなのに、こんなに深く切れるんだな?」



    『……』



    「お前がこんな事しても巨人にはなれんぞ、巨人の妄想でもしすぎておかしくなったか」



    「なんとか言え」



    『…っ!
    しょうがないだろう!

    頭が!体が!沸騰しそうなんだよ!

    こうやって、沸いてるものを外に出さないと!

    生きていられる気がしないんだ!

    リヴァイはどうなの?!


    平気なの?!


    今回はリヴァイ班の皆も死んだ

    ペトラ、オルオ、グンタ、エルド、みんなみんな良い子達だったのに


    あんな、ただの臓物みたいにー…』
  2. 2 : : 2014/06/14(土) 01:13:04

    ここまで言って、しまったと思った。

    リヴァイが、気にしていたことを声を荒げて口に出してしまった


    彼が人類の糧となった部下達の死に何も感じない人ではないことを

    私は知っていたのに。




    『あの、その。

    ごめん、言い過ぎた』



    『…あの子達の事はあなたのせいじゃないよ?』



    彼の影がピクと動いた気がした。



    「…いいか、クソメ…ハンジ。

    お前の部下や、俺の部下はよくやった


    力の限り報いたはずだ


    …満足だったはずだ」



    彼の声が若干震えている



    あぁ、彼も恐かったのかな


    託されたものが多すぎて重すぎて、


    それに応えられるか不安で、


    人類最強なんて呼ばれちゃってさ


    弱音すら吐くことを許されない


    大変だね、人類の希望は。




    急に、彼が自分とダブって見えた。




    『…ねぇ、リヴァイ、抱き締めてくれる?』




    生きている実感が欲しい



    『お願いだよ』



    死に近すぎるから



    『お願い』



    あなたもそうなんじゃないかな。





    目の前の影が揺らいだ


    手が伸びてきて、

    私の傷口をなぞる、

    一つ一つ、ゆっくりと

    もう血は乾いているのだけど、

    潔癖症の彼は大丈夫なのかな




    『…っん』



    「痛むのか?」


    私は首を横に振る


    「そうか」


    痛くはない


    彼の手が触れた所が心地よいのだ


    力が、抜けていく



    「痛くても、痛くなくても、もうこれはやめろ」



    「頭が沸きそうな時は俺を使えばいい」




    傷口をなぞる指を首に回した

    そのまま首に舌を這わす

    片方の手は髪をすいて

    首から外した手は背中に



    私も彼の背中に手をまわす

    シャツの中に手を入れる



    彼が私の傷口を舌でなぞる

    痛くなんかない


    なんだろう、この気持ちは。




    どちらからともなく、口と口をあわせた


    舌を絡ませ、

    頬を撫でる



    強く抱擁しあう


    互いにの存在を確認するように




    お互い最後まではしないだろう


    いつ、どうなるかわからないのだから。




    けど今確かに私達は生きていて、

    あなたは、私の目の前にいる。




    あなたが私を求めてくれると


    生きている事を許されている気がしてくる





    …どのくらいこうしてたかな



    「少しは落ち着いたか?」



    『うん、ありがとうリヴァイ』



    「…お互い様だ、茶をいれるんだろう?

    俺の分も頼む」




    君の眉間のシワが少しだけ浅くなったような気がしたのは気のせいじゃないよね




    『オッケーまかせて!今度は何にもぶつからないよ!』






    終わり
  3. 3 : : 2014/06/14(土) 10:30:02
    いい話だ・・・((グスン

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