この作品は執筆を終了しています。
田中「貴様、真名を名乗れ」セレス「セレスティア・ルーデンベルクです」
-
- 1 : 2014/05/11(日) 20:59:39 :
- 息抜きに書いた短編(むしろ掌編に近いレベル)です。
たぶん十レス前後で終わりますので始まったと思ったら終わってると思いますが、一気に投下しちゃいます。
-
- 2 : 2014/05/11(日) 20:59:51 :
- ~ 希望ヶ峰学園・入学式翌日 ~
田中「聞こえなかったのか? 俺様は“真名”を名乗れと言った筈だが?」
セレス「ですから、セレスティア・ルーデンベルクだと申し上げているではありませんか」
田中「……フ、なるほどな。この田中眼蛇夢を前に真名を名乗る事の危険性を十全に把握しているようだ。人間にしてはやるではないか」
セレス「仰っている意味が分かりかねますが。セレスティア・ルーデンベルクこそがわたくしの本名ですわよ」
田中「何だと!? 貴様、もしやそのような戯言で誤魔化せると本気で思っているわけではあるまいな?」
セレス「誤魔化すも何も、それこそが真実なのです」
田中「ならば問おう、貴様の生まれ落ちし地は何処だ!」
セレス「出身地を問うているのですか? それなら宇都宮ですが」
田中「日本ではないか!」
セレス「それが何か?」
田中「フ、やはりこの俺様を恐れるがあまり言葉の端々に混乱が見られるようだな。だが無理もあるまい、この“制圧せし氷の覇王”田中眼蛇夢を前にしているのだ! ポーカーフェイスを貫いているだけでもさすがは“超高校級のギャンブラー”であると誉めてやろう! フハハハハハハハ!」
セレス(妙な人に目を付けられてしまったようですわね)
-
- 3 : 2014/05/11(日) 21:00:13 :
- ~ さらにその翌日 ~
セレス(あら、あの後ろ姿は……)
セレス「貴方、真名をお名乗りになって下さいな」
田中「何?」
セレス「昨日貴方はわたくしに『真名を名乗れ』と仰りましたが、“田中眼蛇夢”というのもなかなかに本名然とはしておりませんもの」
田中「フ、貴様、俺様の真名を問うか。たしかに田中眼蛇夢とは世を忍ぶ仮の名だ」
セレス「あら、そうだったのですか?」
田中「尤も、この世界に於いてはそれこそが俺様の名であると言わざるを得んが……様々な世界に於いて俺様は多種多様な名で呼ばれたからな」
セレス「……」
田中「だが、あらゆる世界に於いて俺様の通り名が“制圧せし氷の覇王”であった事は一つの共通項! 或いはこれこそが俺様の真名やもしれんぞ?」
セレス(……面倒ですわね。何故話しかけてしまったのでしょう)
-
- 4 : 2014/05/11(日) 21:00:46 :
- ~ 数週間後 ~
田中「貴様、まだ真名を名乗らぬつもりか?」
セレス「ですから、何度も申し上げている通りセレスティア・ルーデンベルクこそがわたくしの真の名です」
田中「クッ、強情もそこまで行くともはや芸術的だな……!」
セレス「強情も何も、それが事実だと何度も……」
田中「良かろう! この手だけは使いたくなかったが……行け、破壊神暗黒四天王! 彼の者の口を割らせよ!」
セレス「……何ですの、このハムスターは」
田中「なッ!? 効いていないだと!?」
セレス「……はあ」
-
- 5 : 2014/05/11(日) 21:00:59 :
- ~ 数か月後 ~
セレス(真名、真名ですか)
セレス(わたくしの名前はセレスティア・ルーデンベルク)
セレス(フランス貴族の父とドイツ人音楽家の母を持つ“超高校級のギャンブラー”)
セレス(だというのに、あの田中眼蛇夢という男はありもしない“はず”のわたくしの“真名”を聞き出そうとする)
セレス(意図が不明ですわね)
-
- 6 : 2014/05/11(日) 21:01:14 :
- ~ 翌年 ~
田中「貴様、結局この一年“セレスティア・ルーデンベルク”を押し通したようだな」
セレス「それが本名ですから、当然ですわ」
田中「その初志貫徹ぶりは褒めてやろう。だが、破壊神暗黒四天王の“エビルスフォース・アイズ”、禍々しき四ツ眼の前に見抜けぬものなど無いのだ……」
セレス「はあ」
田中「であろう? “安広多恵子”!」
セレス「! ……どこで、その名を?」
田中「さて、何処だろうな……」
セレス「……だいたいわかりましたわ。とりあえずあのクソブタにはお仕置きが必要のようですわね」
田中「な! 破壊神暗黒四天王をも震え上がらせる殺気だと……!?」
セレス「……ですが、その前に」
田中「な、何だというのだ?」
セレス「今度はわたくしが貴方の真名を伺う番ですわね」
田中「……フ、いずれ、俺様の武勇伝を聞かせてやるとしよう」
セレス「ええ、楽しみにしていますわ」
-
- 7 : 2014/05/11(日) 21:02:23 :
- ~ 時は流れ ~
仁「セレス君。もしかすると君はこの学園の中で一生を送る事になるかもしれない。それを良しとしてくれるかい?」
セレス「……ええ、夢、人生のノルマを達成できなかった事は心残りですが、こうなってしまっては致し方ありませんもの」
仁「そうか、すまないな」
セレス「よしてください、学園長が謝る事ではありませんわ」
仁「そうか、そう言ってもらえると少々心は楽になるよ。……この学園にいる限り、君達は私が全力で守ることを誓おう」
セレス「ええ、感謝いたしますわ」
セレス(“希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件”に“人類史上最大最悪の絶望的事件”ですか。何ともナンセンスなネーミングですが……世界に及ぼした影響は多大、ですわね)
セレス(……あの田中眼蛇夢という男は無事でしょうか?)
セレス(なんて考えてしまう事も、ナンセンスですわね)
-
- 8 : 2014/05/11(日) 21:02:38 :
- ~ 【入学式】・当日 ~
セレス「……っ、ここ、は?」
セレス(見覚えのない教室、ですわね)
セレス(わたくしはたしか……希望ヶ峰学園に足を踏み入れたところで、そう、眩暈がして倒れたんでしたわね)
セレス(となると誰かがここへ運んできてくださったのでしょうか?)
セレス(どうせなら保健室へ連れて行って欲しかったですわね)
セレス「ともかく、ここにいても自体は動きませんわね」
セレス(適当にうろついてみますか)
-
- 9 : 2014/05/11(日) 21:02:53 :
- ~ 同日・数分後 玄関ホール ~
セレス(あら、一名、女性の方がいらっしゃいますわね)
???「ん? アンタも新入生?」
セレス「ええ、そうですわね。……貴女、真名をお名乗りになって下さいな」
江ノ島「あ、うん。いくさ……いやいや、江ノ島盾子でっす! てか何、それ?」
セレス(いくさ……?)
セレス(いえ、それよりも。本当に何なのでしょう? 何故か口をついて出ましたが)
セレス「わかりませんわ。とっさに出てしまったのです」
セレス(しかし、この反応。“江ノ島盾子”は偽名の可能性が高いですわね。災い転じて福となす、というほど災いではありませんが、ともかく何やらいいカードが手札に配られたようです)
セレス(今回のディーラーには感謝が必要なようですわね)
-
- 10 : 2014/05/11(日) 21:03:19 :
- ~ 同日・数分後 体育館 ~
セレス(あのモノクマとやらはどこかへ行ってしまったようですが……)
セレス(それにしてもコロシアイ、ですか)
セレス(ふう、ナンセンスですわね)
セレス(けれど、こうなってくるとやはり怪しいのは江ノ島さん、ですわね)
セレス「江ノ島さん」
江ノ島「ん? 何、セレス?」
セレス「貴女の正体をお明かしになっていただけませんか?」
江ノ島「はあ? 正体って?」
セレス「先ほど真名を問うた際、貴女は明らかに別人の名を名乗ろうとしていました。それこそが本名なのではないですか?」
江ノ島「えっ? えー、と……」
十神「おいセレス、それは何の話だ?」
セレス「何の話も何も、そのままの意味ですわよ。江ノ島さんはたしかに、江ノ島盾子と名乗る前に“いくさ”と言っていました」
霧切「いくさ……なるほど、名乗る前の枕詞とも捉えにくい言葉ね」
大和田「するってェと、その女は偽名を名乗ってたって事か?」
セレス「そうなりますわね」
江ノ島「はあ!? てか、偽名ってならセレスの方こそ明らかに偽名っしょ!」
十神「偽名か偽名でないかはこの際問題ではない」
江ノ島「どういう意味よ!?」
十神「問題なのはその偽名が“わかりやすい偽名”か“わかりにくい偽名か”だ。セレスティア・ルーデンベルクなどと堂々と名乗られては偽名とわかっていてもそれで通してやってもいいと思えるが……」
セレス「わたくしは偽名を名乗っているつもりはありませんが。それにしても“江ノ島盾子”なとどまるで本名であっても違和感のない偽名を名乗られては、やはり怪しんでしまうのが人の常ですわ」
江ノ島「く……っ!」
桑田「あ、逃げやがった!」
苗木「えっ、それって……もしかしてホントに偽名だったって事!?」
舞園「ですけど、江ノ島さんは“超高校級のギャル”としてカリスマ読者モデルの活動をしていましたから、一般の知名度も高い人ですよ?」
霧切「別に江ノ島盾子という人間が存在しなかったとはならないわよ。考えられるだけでも二通りの可能性があるわ」
朝日奈「二通りって?」
霧切「一つは、“江ノ島盾子”が芸名であり、本名が別にあるという可能性」
十神「だが、奴は逃げたんだ。それならそうと説明すればいいだけの話だっただろう?」
霧切「そうね、ならこれは除外していいでしょう」
大神「ならば、残る一つの可能性とはいったい何なのだ?」
霧切「彼女が“江ノ島盾子”に成りすました別人の可能性よ」
苗木「えっ? でも、それはおかしいよ!」
腐川「お、おおおかしいって何がよ、私の存在が?」
苗木「いやそうじゃなくってさ……ボクは事前に希望ヶ峰学園の新入生スレで今年の新入生をある程度確認してるんだけど、その中にたしかに“超高校級のギャル”江ノ島盾子の名前はあったよ?」
朝日奈「それってつまり、江ノ島ちゃんは確実に新入生って事?」
霧切「そう。じゃあモノクマを操っているのが江ノ島盾子なんじゃないかしら」
苗木「えっ?」
十神「なるほどな。そしてそんな江ノ島に成りすましていた偽江ノ島は黒幕の内通者というわけか」
霧切「それなら筋が通ると思わない?」
セレス「……解決してしまいましたわね」
十神「のようだな。実にくだらん茶番だった」
モノクマ「こらー! 勝手に終わらせるなー!」
セレス「あら、負け惜しみですか?」
モノクマ「そんなんじゃないよ!」
葉隠「でも今の話、説得力あったし……間違いねーべ?」
モノクマ「んぐう」
セレス「ではあなたにもお尋ねいたしますが……“真名は何ですか”?」
モノクマ「ぶふぉう!? ……あぁーもう、田中の奴!」
苗木「た、田中?」
セレス「ありふれた苗字ですが……何やら妙に引っかかりますわね」
山田「たしかに、実にありふれた苗字ですな」
大和田「オメェは人の事言えねェだろ」
セレス(田中……田中。そのような名字の知り合いは、いないでもありませんが……さほど気に留めるような人物でもなかったはずです)
セレス(ですが、何なのでしょう。無性にその名を聞くと……)
セレス「いい加減に“真名”を名乗ったらどうなのです?」
モノクマ「だぁから! ボクはモノクマなの! オマエラの学園長なの!」
霧切「そのモノクマを操っているのは江ノ島盾子なんでしょう?」
モノクマ「違ぁう! 江ノ島さんならさっき走って行ったでしょ!」
葉隠「その江ノ島っちはニセモンって事で結論出たじゃねーか」
モノクマ「うあああああもう、何なのさこれ!? ホント何なのさ!?」
十神「実に間抜けだな」
-
- 11 : 2014/05/11(日) 21:03:33 :
- ~ 同日・数時間後 希望ヶ峰学園前 ~
セレス(こうして、“真名”を問うという自分でも何故そんな事をしたのか分からない行為のおかげで、“コロシアイ学園生活”なる巫山戯た茶番は終わりを告げました)
セレス(あのあと霧切さんや十神君がモノクマを問い詰めた結果、全てを白状させることに成功し……今、希望ヶ峰学園から脱出したわけですが)
セレス「結局、自分でも分からないことだらけでしたわね」
霧切「江ノ島盾子が言うには私達は二年間の記憶を失っているようだし、その間に何かあったのかもしれないわね」
十神「まあ、その線が濃厚だろうな」
セレス「まあ、そうでしょうね」
セレス(いったい、何があったんでしょうか)
???「おい」
苗木「……? 誰か来たよ」
霧切「あれは……誰かしら?」
???「貴様、真名を名乗れ」
大和田「あァ? その台詞っていやぁ……」
セレス「……セレスティア・ルーデンベルクです」
???「そうか。俺様の真名は“制圧せし――」
-
- 12 : 2014/05/11(日) 21:04:35 :
- ここで終わりになります!
最初はギャグのつもりだったのに書いてるうちにどの層に需要があるのか分からないシリアスな田セレと化してしまった……。
-
- 13 : 2014/05/12(月) 01:23:20 :
- とてもよかったです!
-
- 14 : 2014/05/12(月) 01:48:39 :
- 面白かったです!お疲れさまでした!!
-
- 16 : 2014/05/12(月) 10:19:14 :
- 意外な発想ですね!スラスラと読めました。
お疲れ様でした。
-
- 17 : 2014/05/12(月) 18:44:17 :
- >>16
ありがとうございます!
正直ギャグにしかならないと思って書き始めたんですけど、これはこれで、まあ……綺麗に纏まったので良かったです。
-
- 18 : 2014/05/12(月) 19:01:05 :
- 面白かったです!
すごく簡潔にまとまってて、楽しめました!
-
- 19 : 2015/12/24(木) 05:54:17 :
- 綺麗なまとまりのSSはちょっと自分の中では珍しいです!
執筆乙です!
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
短編集 シリーズ
- 「ダンガンロンパ 」カテゴリの最新記事
- 「ダンガンロンパ 」SSの交流広場
- 【sn公式】ダンガンロンパ交流広場