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ジャン「5月11日?オレには何の日だかさっぱり分からねぇが。」

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  1. 1 : : 2014/05/10(土) 12:50:51
    こんにちは。執筆を始めさせていただきます。

    明日は母の日。

    ということで、ジャンとお母さんのお話です。

    ネタバレは13巻特典DVDです。このDVD及び原作第6巻嘘予告にて、ジャンの母親は登場しているため

    このSSで登場するジャンの母親も、オリキャラではありません。

    …ので、こちらのカテゴリーにて執筆させていただきます。よろしくお願いします。
  2. 3 : : 2014/05/10(土) 13:03:46
    アルミン 「5月11日はね、母の日だよ。」

    ジャン 「母の日?」

    アルミン 「日頃お世話になってるお母さんに、感謝の気持ちを伝える日だよ。」

    エレン 「家に母親がいるやつは皆、家に帰るみてぇだな。」

    アルミン 「ジャンも帰るんでしょ?」

    ジャン 「別に…そんな事でいちいち帰ってられるかよ…」

    エレン 「そんな事ってお前…」

    ミカサ 「ジャン…」

    ミカサに名前を呼ばれ、ジャンははっとして彼女の方をみる。

    ミカサ 「…帰ったほうがいい。」

    エレン 「そうだぞ、ジャン。」

    ミカサ 「ジャンにはまだ…お母さんがいて…伝えたい事をまだ伝えられるから…その…」

    アルミン 「僕もミカサの言う通りだと思うよ。」

    ジャン 「…分かったよ。その代わり、お前らも来いよ。」

    アルミン 「え?」

    エレン 「ジャンの家に!?」

    ミカサ 「…エレンが行くのなら…行く。」

    ジャン 「オレの母ちゃんは、オムレツ以外にも、うまいもん作るからよ。お前らと一緒のほうが、オレも顔出しやすいし。」

    エレン 「よしっ、行くか。」

    アルミン 「うん。」

    ミカサ 「…分かった。私も行く。」

    ミカサのその言葉に、ジャンが赤面したことに、誰も気づかなかった。
  3. 5 : : 2014/05/10(土) 13:16:10
    <ジャンの実家前にて>

    エレン 「…どうした、ジャン、早く入れよ。」

    ジャン 「」

    アルミン 「僕が戸を叩こうか?」

    ジャンがアルミンの申し出に応じようとすると、不意に扉が開く。

    ジャン 「あ。」

    ジャンの母 「…あら…」

    ジャン 「」

    ジャンの母 「ジャン…帰ってきてくれたんだね!」

    ジャンの母親はそう言うが早いか、ジャンを抱き締める。

    ジャン 「バッ…やめろよ。いちいち大げさなんだよ!」

    ジャンの母親はジャンを放し、涙を拭う。

    ジャンの母 「…あら、あなたたちは?」

    アルミン 「僕たちは、ジャン…くんと同じ兵団に所属している、同期なんです。今日はぜひ僕たちを自分の家に招待したいと誘いを受けて、うかがったのですが…」

    ジャンの母 「まあ、そうでしたか!それはそれはわざわざ…狭い家ですが、どうぞ上がってください。」

    アルミン&エレン&ミカサ 「おじゃまします…」

    ジャン 「」

    アルミン 「…ほら、ジャンには他に言うことがあるでしょ?」

    ジャン 「…分かってるよ。」

    ジャン 「」

    ジャン 「た…ただいま…」

    ジャンの母 「…おかえり、ジャン。」
  4. 6 : : 2014/05/10(土) 13:35:20
    家の中に入り、テーブルにつく一同。

    ジャンの母 「ちょっと待っててくださいね。今、お茶を出しますから…」

    アルミン 「あ、いえ。お構いなく…」

    エレン 「…ここがジャンの家か…」

    ジャン 「なんか文句あんのかよ。」

    エレン 「別に何もねぇよ。」

    ジャンの母 「こら、ジャン。お友達と仲良くしなきゃ、ダメじゃないか!」

    ジャン 「うるっせぇよ。さっさとお茶持ってこいよ。」

    ジャンの母 「…はいはい。」

    ジャンの母は、台所の奥へと消える。

    アルミン 「ダメじゃないか。お母さんにあんな乱暴な態度をとっちゃ…」

    ジャン 「は?別にいいだろ。人の家のことにいちいち口を出すなよ。」

    ミカサ 「…いいにおいがしてきた。」

    ジャン 「…ああ、たぶん、茶菓子でも用意してるんじゃないかな。」

    エレン 「お、あれは…」

    エレンの視線の先には、幼いジャンを抱く母親の肖像画が飾られている。

    ジャン 「ああ、あれか。ずっとあそこに飾ってあるんだ。」

    エレン 「ジャン…」

    ジャン 「なっ…なんだよ…」

    エレン 「お前の悪人面は…生まれつきなんだな…」

    エレンの言葉に、ジャンはカッとなり、立ち上がる。

    ジャン 「なんだてめぇ、ケンカ売ってんのか!?」

    エレン 「別にそんなんじゃねぇよ。いちいち熱くなるなよ。」

    ジャン 「んだと…」

    エレンにつかみかかろうとしたとき、ジャンの母親がお茶をもってやって来る。

    ジャンの母 「こら、ジャン!」

    ジャンはしぶしぶ席につく。アルミンがなにやら言いたげな表情でエレンを見つめる。

    ジャン 「…さあさ、どうぞ召し上がってください。」

    アルミン&エレン&ミカサ 「…わぁ…」

    ジャン 「…もう少し上等なのはなかったのかよ…」

    アルミン 「ジャン!」

    ジャン 「」

    ジャンの母 「…ごめんなさいね。今はどこも食料が不足していて…」

    アルミン 「いえ。とても美味しそうです…いただきます。」
  5. 9 : : 2014/05/10(土) 14:50:40
    お茶を飲み、お菓子を食べる一同。

    ジャンの母 「ジャンは…皆さんにご迷惑をかけるようなことは、していませんか?」

    アルミン 「いえ。ジャンは本当に頼りになるし、優秀な仲間をもって、僕は誇りに思ってます。」

    ジャン 「ア…アルミン…誉めすぎだろ。」

    エレン 「そうだぞ、アルミン。お前はジャンを評価しすぎだ。」

    ジャン 「お前なんなんだよさっきから!?」

    ジャンは立ち上がり、エレンにつかみかかる。

    アルミン 「やめなよ、ジャン。」

    ミカサ 「ジャン、落ち着いて。」

    ジャンの母 「ジャン!やめなさい!!」

    母の怒鳴り声に、ジャンはしぶしぶエレンを放す。

    ジャンと向き合う母。そして息子の頬を平手で打つ。

    ジャン 「………ちっ…」

    ジャンは舌打ちし、そのまま外へ出ていく。

    しばしの間、沈黙が続く。
  6. 12 : : 2014/05/10(土) 15:00:00
    ジャンの母 「…ごめんなさいね。」

    アルミン 「…いえ…こちらこそ…」

    ジャンの母 「あの子は…口では乱暴なことを言うけれど、本当は優しい子なんです。他人の立場を考えて、きちんと気持ちをくんでくれる子なんです。」

    アルミン 「もちろん…分かってますよ。僕たちにとって彼は、大切な友人であり、仲間ですから。」

    ジャンの母 「…ありがとう。」

    アルミン 「ジャンを捜してきます。…ほら、エレン。ミカサも、行くよ。」

    エレン 「お…おう。」

    ミカサも立ち上がり、3人は外に出た。

  7. 14 : : 2014/05/10(土) 15:16:11
    周りを見回すが、ジャンの姿は見えない。

    3人は、少し歩いた。

    アルミン 「…エレン…」

    エレン 「…なんだよ。」

    アルミン 「ジャンに…嫉妬みたいなのを、感じてたんでしょ?」

    エレン 「」

    アルミン 「ジャンには帰る家があって、迎えてくれる母親がいる。エレンには…僕たちには、それがない。」

    エレン 「」

    アルミン 「…にもかかわらず、ジャンはお母さんに対して邪険な態度をとっていた…自分には出来ない事が、ジャンには十分できる状況にあるのに…」

    エレン 「」

    アルミン 「…その思いが…ジャンに対するああいう態度に出たんでしょ。」

    エレン 「…悪かったって思ってる…大人げ無かったって。」

    ミカサ 「エレンの気持ちも分かる…エレンのお母さんが死んでから、色々な事がありすぎた…エレンの心も、疲れてるんだと思う。」

    エレン 「…かもしれねぇな。」

    エレンたちの横を、楽しげに笑い合う母子が通りすぎる。

    エレンの視線が、その母親に注がれる。

    エレン (…母さん…)

    アルミン 「とにかく、ジャンを捜そうよ。ジャンだってエレンの気持ち、きっと分かってくれるよ。」

    エレン 「ああ…そうだな。」

    3人は再び、歩き始めた。
  8. 16 : : 2014/05/10(土) 15:47:14
    <街の外れの路地裏にて>

    ジャン 「」

    母にぶたれた頬を、そっと撫でるジャン。

    ジャン 「…ちくしょう…」

    エレン 「…こんな所にいたのか。」

    エレンの声を聞き、息をつくジャン。

    ジャン 「…なんだよ。」

    エレン 「…別に…」

    ジャン 「じゃあどっか行けよ。」

    エレン 「なんだよそれ。」

    ミカサ 「ジャン…エレンの話を聞いてあげてほしい。」

    ミカサに言われ、ジャンは口をつぐむ。

    エレンはゆっくりとジャンに歩み寄る。

    エレン 「…さっきは…その…悪かったな…」

    ジャン 「」

    エレン 「オレ…お前がその…うらやましくって…」

    ジャン 「」

    エレン 「ほんとに…ガキみたいで情けねぇけど…笑っちまうよな、本当に…」

    自嘲気味に笑うエレン。

    ジャン 「…笑うなよ。」

    エレン 「…え?」

    ジャン 「お前の気持ち…分かるとは言わねぇ。そんな軽々しく言えるもんじゃねぇからな。でもお前は…お前らは、すごいと思う。目の前で親が殺されて…帰る家も無くて…それでも兵士として前向いて戦い続けてるなんてな…」

    ジャンは改めて、エレンと向き合う。

    ジャン 「ほんと、すげぇよ。オレには真似できないと思う…多分。」

    エレン 「…ジャン…」

    ジャン 「オレの方こそ、悪かったな。ま、おあいこだ、エレン。」

    手を差し出すジャン。

    エレン 「ああ…おあいこだ。」

    その手を握るエレン。その様子に微笑むミカサとアルミン。

    ジャン 「さ、帰ろうぜ。」

    4人は、ジャンの家へと歩を進めた。
  9. 17 : : 2014/05/10(土) 15:51:31
    <ジャンの家にて>

    ジャン 「…ただいま…」

    ジャンの言葉に、ジャンの母は笑顔で迎える。

    ジャンの母 「おかえり、ジャン。」

    遠慮がちに入ってくるアルミン、エレン、ミカサに、ジャンの母は笑顔で

    ジャンの母 「さ、あんたたちも今日は、うちでご飯食べてきなさい。遠慮はいらないからね。」

    アルミン&エレン&ミカサ 「…はいっ!」

  10. 18 : : 2014/05/10(土) 16:01:44
    そして、帰り際、ジャンの母は笑顔で

    ジャンの母 「それじゃあ皆さん…ジャンのこと、よろしくお願いしますね。」

    アルミン 「はい。」

    エレン 「任せといてください!」

    ジャン 「エレン…なんだよそれ。」

    一同に笑いが起こる。そしてふと、ジャンの母は真顔になり、息子の手を握る。

    ジャンの母 「…死ぬんじゃないよ。」

    ジャン 「…分かってるよ。」

    次にジャンの母は、アルミン、ミカサ、そしてエレンの手をとり、

    ジャンの母 「…あんたたちもね。」

    アルミン&ミカサ&エレン 「…はい。」

    ジャンの母 「また来るんだよ。そして次は、おじゃまします、じゃなくて…」

    アルミン&ミカサ&エレン 「?」

    ジャンの母 「…ただいまって…言うんだよ。」

    アルミン&ミカサ&エレン 「…はいっ!」

    4人は、ジャンの母に背を向け、歩き始める。

    …ふと、ジャンだけ立ち止まる。

    ジャン 「…母さん…」

    ジャンの母 「」

    ジャンは、母に背を向けたまま

    ジャン 「…ありがとな…」

    そしてまた、歩き始める。

    母は、いつの間にか息子が大人になったことを感じ、その広い背中にそっとつぶやく

    ジャンの母 「…いってらっしゃい…」



  11. 19 : : 2014/05/10(土) 16:05:18
    以上で終了とさせていただきます。
    数珠繋ぎとしては初の、ジャンがメインのお話でした。
    数珠繋ぎ自身、ジャンもとても好きなキャラクターなので、また活躍の機会をもうけたいと思います。
    読んでいただき、ありがとうございました。
    また、よろしくお願いします。
  12. 32 : : 2015/06/07(日) 09:07:16
    いい話だった…ありがとう!!!
  13. 33 : : 2015/06/07(日) 10:40:09
    おおっー!いい話だった!
  14. 34 : : 2015/06/07(日) 21:22:39
    >>32 名無しさん
    こちらこそ、1年以上前の作品に目を通していただき、ありがとうございます(^^)

    >>33Airiさん
    ありがとうございます(^^)
    作者でさえ過去の作品すぎて、あらすじがぼやーっとしてきた作品に、お気に入り登録までしていただき、感謝の気持ちでいっぱいです!!!

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kaku

数珠繋ぎ@引っ越しました

@kaku

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