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とりとめのない二人の小話

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  1. 1 : : 2014/03/31(月) 15:05:19
    三作目ですね。

    エレンとクリスタの日常を書きたかった。

    ただそれだけなんです。

    ※エレクリ
    ※キャラ崩壊
    ※主に作者の妄想でできている

    以上が苦手な方はご遠慮ください。
  2. 2 : : 2014/03/31(月) 15:21:19
    『エレン・イェーガー』

    『クリスタ・レンズ』

    二人は訓練所でもわりと有名な人物だ。

    かたや、入団当初から調査兵団行きを宣言し、死に急ぎ野郎というなんとも不名誉な呼び名をつけられた少年。

    かたや、『神様』『女神』『結婚したい』など、同期の訓練兵男子の目を釘付けにする美少女。

    これから語られるのは、そんな彼と彼女の日常風景の一場面である。


  3. 3 : : 2014/03/31(月) 15:37:58
    《抱き枕》

    朝起きたら横にクリスタがいた。

    「………」

    周りを見る。ライナーが床で寝てる以外は、みんなまだ眠っているみたいだな。

    少し早く起きすぎたか。

    二度寝しよう……。ちょうど横に抱き枕もあるし。

    「あー……」

    さらさらした彼女の髪に、顔を埋める。

    ……どうしてこうも、男と女で違うんだろうか。

    いい匂いするし、気持ちいいし、いい匂いするし。

    「んぅ」

    抱き枕が動く。暑かったのか、俺から離れようとする。

    させるか。

    ぎゅ、と彼女の体に抱き付き、離れないようにする。

    ……うん、やっぱりいい匂い。

    それからすぐに、俺は意識を手放した。


  4. 8 : : 2014/03/31(月) 18:25:09

    《あつい》

    「ん……」

    目を開けたら、エレンに抱きつかれてた。

    「……暑い」

    それでも、彼の腕から逃れようとはしない。

    だって落ち着くし。

    「…………」

    ぐい、と彼の胸に耳を当てる。

    とくん、とくん、と心臓の音が聞こえる。

    ……うん、落ち着く。

    背中に手を回して、もっと強く抱きつく。

    「んー」

    ちょっとあっついけど。

    寒いよりは、いいよね。
  5. 10 : : 2014/03/31(月) 18:43:56

    《騒動》

    「うわあああああああ!!」

    「っ──な、なんだっ!?」

    突然の叫び声に目を覚ます。

    「きゃっ」

    胸元から可愛い悲鳴が聞こえた。

    優先順位変更。

    「なっなに、なにがあったの!?」

    「とりあえず落ち着こうクリスタ。はい深呼吸」

    言われた通り、スーハースーハー呼吸を繰り返すクリスタ。

    可愛い。

    「落ち着いたか?」

    「うん。あ、まだ言ってなかったね。おはよう、エレン」

    「おはよう、クリスタ」

    そしてお互いに笑みを浮かべる。

    「とりあえず、顔洗いに行くか」

    「そうだね」

    「ちょっと待てやああああ!!」

  6. 12 : : 2014/03/31(月) 21:25:06
    《叫ぶ》

    「エレン!」

    「うお、なんだよアルミン。急に顔近づけんなよ……それにどうした? さっきから叫んだりして」

    「叫びたくもなるよ! 朝起きたら幼なじみが女の子と一緒に寝てるんだよ!? 大人の階段のぼっちゃってたかもしれないんだよ!?」

    「落ち着けアルミン、急に叫ぶからクリスタが驚いてる。まずは深呼吸だ」

    隣にいるクリスタを見ると、目を丸くして俺の服の端っこを掴んでいる。

    ──うん、なんかいいな、これ。

    「いつから君はそんなに深呼吸を推すようになったんだい!? ああもうっ、とりあえず! なんでクリスタがここにいるの!?」

    「俺が連れてきたから」

    「ここ男子の宿舎! 女子は駄目だって知ってるだろ!?」

    「かたいこと言うなよアルミン。別に問題は起こしてないだろ?」

    「現在進行形で僕の中で起きてるんだよっ!!」

    「だから叫ぶなって。ほら深呼吸」

    「うがあああああっ!!」

    頭を掻きむしるアルミン。

    髪の毛抜けるぞ?

  7. 14 : : 2014/03/31(月) 21:56:34

    《叫ぶ、続行》

    「昨日夜遅くに抜け出してたのはそれか!」

    「ん? まあそうだな」

    「もう連れてきたことはこの際放っておくけど! なんで一緒に寝てたのさ!?」

    「いや、一緒に寝ようって──」

    「さすがにそれはまずいでしょエレン!」

    「クリスタが」

    「クリスタァァアア!!」

    あれはビックリしたな。

    首をコテン、と倒しながら「一緒に寝よ?」だもんなあ。

    ……思い出しただけで顔がニヤけそうになる。

    ガマンガマン。

    「なんなの!? 君たちは朝っぱらから僕の喉を潰したいのかい!? だったらそれは成功だよ! 大成功だよ!」

    「そんなつもりはねえよ……つーか、潰す前に叫ぶのやめればいいだろ」

    はっ、としたかと思うと、はあはあと肩で息をするアルミン。

    ……本当に大丈夫か、こいつ。

    あ、クリスタまだ服掴んでる。

    うん、やっぱいいな、これ。
  8. 18 : : 2014/04/01(火) 09:33:46

    《逃走》

    「落ち着いたか、アルミン」

    エレンがアルミンと話してるのを、私は黙って隣で見ている。

    普段はおとなしいアルミンが突然叫び出すから、ビックリして思わず彼の服を掴んじゃったけど。

    見た感じ、エレンは特に気にした様子もなくアルミンと話してる。

    ……少しくらい気にしてくれたっていいのになあ。

    ちょっと不満げにエレンの顔を見ると、彼の髪の毛が跳ねていることに気づく。

    寝癖……そういえば、まだ起きたばかりで顔も洗ってなかった──って。

    わ、私っ、寝起きの顔エレンに見られた!

    ああ! 髪もくしゃくしゃ! 櫛は──って、ここ男子の宿舎だった!

    どうしようどうしようどうしよう!

    意識したら急に恥ずかしくなってきて──っ!

    「あっ、ちょっ、クリスタ!?」

    突然駆け出した私の後ろで、エレンの驚いた声がしたけど、今はそれを気にする余裕はない。

    私は顔を真っ赤にしながら、急いで女子の宿舎に向かった。

    ……うぅ、恥ずかしい。
  9. 21 : : 2014/04/01(火) 10:37:18

    《尋問?》

    「さあ、いい加減話してくれないかな」

    「話してって……何を話せばいいんだよアルミン。あ、クリスタ、パンくず付いてるぞ」

    ひょい、とクリスタの口元についていたパンくずを取る。

    そしてそのまま自分の口に持っていく。

    「ありがと、エレン」

    「どういたしまして」

    ふふっ、と笑うクリスタに、俺の顔にも自然と笑みが浮かぶ。

    「可愛いなあクリスタは」

    「そ、そうかな? えへへ、ありがと」



    「…………なんだこれ」

  10. 22 : : 2014/04/01(火) 11:04:56

    《参戦》

    「エレン、何をしているの?」

    「何をって、飯食ってるだろ」

    なぜか頭を抱えているアルミンの横で、ミカサがじろりと俺とクリスタを見てきた。

    「それはわかってる。私が聞きたいのは、なぜさっきからクリスタとイチャ──仲良くしているのかということ」

    「? 仲が良いからだけど」

    なに当たり前のことを言ってるんだ?

    「私の知る限り、貴方とクリスタが一緒にいるところをあまり見たことがない。仲良くなる暇なんてなかった筈」

    「そ、そうだよエレン! いつクリスタと仲良くなったんだよ! そして二人の関係はなに!?」

    復活したアルミンが、いつになく凄みのある顔で俺を問い詰めてきた。

    ……今日のアルミン、なんか怖い。

  11. 25 : : 2014/04/01(火) 14:13:48

    《それはない》

    「俺とクリスタの関係って言われてもなー」

    隣に座るクリスタを見る。

    もふもふとパンを頬張りながら、関係? とでも言いたげに首を傾げている。

    やばい、今の可愛い。

    「っ──」

    思わず頬擦りしたくなるのを、なんとか押し止めることに成功。

    さすがに食堂で頬擦りするのはまずいよな……飯食う場所だし。やるなら二人きりの時にやろう。

    ちら、とクリスタの奥に座っていたライナーとユミルの、何一つ感情のない顔が目に入ったが、それは気にしないことにして。

    俺は改めてこいつとの“関係″について考える。

    「…………、仲の良い女友達?」

    「いやそれはない」

    即座にアルミンに否定された。

    なぜだ。

    それと俺がそう言った途端、クリスタが俺の太股をつねってきたのだが……。

    地味に痛いからやめてほしい。

  12. 28 : : 2014/04/01(火) 20:01:49

    《発覚》

    「私とエレン、付き合ってるんだ」

    クリスタの口から発せられたそれは、食堂内にいる者達の動きを見事に止めることに成功した。

    ……いや、聴こえてない奴らは止まることはなかったけど。

    「あっあのね、私の方からエレンに告白したの。そしたら、エレンも……好きだって、言ってくれてね」

    未だに動かないアルミンやミカサを前にしながら、クリスタは恥ずかしそうに指先を胸の前でもじもじさせる。

    ──可愛いなあ。

    まだ半日も経ってないのに、いったい俺は何度こいつを可愛いと思ったんだろう。

    「えへへ、あの時は嬉しかったなあ」

    あの時のことを思い出したのか、顔をほんのり赤くして、ほわんと柔らかい笑みを浮かべるクリスタ。

    ……なんなのこいつ、可愛すぎるんだけど。もうぎゅってしていいかな、思いきり抱き締めていいかな。


    あ、ライナーが椅子から落ちた。痛そうだな。
  13. 29 : : 2014/04/01(火) 20:35:25
    《硬直》

    俺がクリスタの可愛さに理性を失いそうになる前に、止まっていた奴らで一番に動き出したのはアルミンだった。

    「──はは、気のせいかな? いま二人が付き合ってるって聞こえたんだけど」

    「気のせいじゃないぞアルミン。俺とクリスタは付き合ってる」

    「な?」とクリスタに視線を向けると、にこやかに頷いて返してくれた。

    「…………い、いつから、その、二人は付き合ってるんだい?」

    「だいたい半年前からだな」

    「──は、んとし?」

    口を半開きにして固まるアルミン。

    その顔が面白くて吹き出しそうになるのを堪えて、もう一度同じ言葉を言う。

    「ああ、半年だ。そんくらい前から、俺とこいつは付き合ってる」

    「…………」

    固まったまま動かないアルミン。

    ……別にそこまで驚くことないと思うんだけどな。
  14. 35 : : 2014/04/02(水) 21:58:34
    《歓喜》

    エレンと話していたアルミンが、なんでかおかしな顔で固まっちゃったけど……今の私にそんなことを気にする暇はなかった。


    ──エレンが付き合ってるって言ってくれた……。

    エレンが、自分から付き合ってることを言ってくれた!

    やった! やったあ!

    「エレン!」

    「うおっ、クリスタ!?」

    私はエレンに抱き付き、彼の胸に額を押し付けた。

    うれしい! 凄いうれしい!

    「ど、どうしたんだ、クリスタ。急に抱き付いたりして……」

    「だって! 今まで私と付き合ってることを隠そうとしてたエレンが、自分から喋ってくれたんだよ!? それが嬉しくてっ」

    実際、初めにそのことを喋ったのは私なのだけれど、そんなことは今の私の頭にはなく。

    ただただ彼に甘えるよう、何度もぐいぐいと胸に額を押し付けたり、頬ずりを繰り返していた。

  15. 37 : : 2014/04/02(水) 23:32:59
    《理性、崩壊》

    クリスタとの関係を秘密にしていたのは──単純に、俺が恥ずかしかった、というのが主な理由だった。

    色恋沙汰に興味ないような態度をとっていた俺が、女の子を好きになって、さらには付き合ってるなんて周りにバレたら絶対からかわれるに決まってる。

    ……まあ、クリスタと付き合ってるのを男子にバレたら何をされるか分からないってのもあったんだけど。

    「ふふふ、エレンの匂いだあ」

    だが、こいつはそれが不満だったらしい。

    「みんなに話したい」と何度か言われたのだが、俺の方がどうしても恥ずかしくて、結局秘密にしたまま半年経っちまったわけだ……。

    「エーレン、えへへ」

    …………。

    「エレンー、大好き」

    ──あ、駄目だこれ。

    「クリスタッ!」

    「きゃっ」

    ぎゅうっ、と彼女の細い腰に手を回し、思い切り抱き締める。

    ──かわいすぎる! いやもう、なんなのこれ、こんな可愛いのが俺の彼女? 夢じゃないよな?

    「んー」

    「あぅ、ちょ、エレンー」

    あー、頬っぺた柔らかい。すっげえすべすべしてるし、病み付きになるなこれ。ずっと頬擦りしてたくなる。

    「あっ、くすぐったいよー」

    朝も思ったけど、なんでこいつの髪の毛こんな気持ち良いんだよ。良い匂いするんだよ。

    気になる。

    腰に回していた手の片方を、クリスタの尻のあたりに動かす。膝から落ちないようクリスタの体を支えながら、俺はこいつを目一杯愛でる。

    「エレンッ──」

    落ちないようにぐいぐいと腰を押し付け、クリスタは俺の首筋に顔を埋めて、体を密着させてくる。

    ──やばい、なんかくらくらしてきた。

    クリスタを見たら、こいつも俺のことを見つめていて。

    自然と、俺達の顔は段々と近づいていき──


  16. 43 : : 2014/04/03(木) 13:08:19
    《思えば》

    目の前で、クリスタとエレンがキスをしている。

    いったい何が起きているのか、俺は理解できなかった。

    ──思えば、今日は朝から何かがおかしかった。

    朝起きたら何故か部屋に天使がいて、その時は寝起きであまり頭が働かなかったせいか、特に深く考えたりはしなかった。結婚しよ。

    朝から天使クリスタに会えたことは素直に嬉しかった。それから食堂に向かう最中、天使がエレンに引っ付き、手を繋いでいたのは俺の見間違いだろう。結婚しよ。

    食堂に着いてからも、天使はエレンにベッタリだった。わからない、いったいあの二人に何があった?

    しかしエレンと話す天使の笑顔はヤバい、隣のユミルも鼻を押さえているが、そうなるのも無理はないだろう。結婚したい。

    だが、俺の至福の時はそこで終わった。

    『私とエレン、付き合ってるんだ』

    その言葉を聞いた直後、俺の目の前が真っ暗になった──。

    そして気がついた俺の目に入ったのは、天使がエレンの膝に座り、キスをしているというとんでもない光景だった。

    ──再び、目の前が真っ暗になった。

  17. 44 : : 2014/04/03(木) 18:25:23
    《放置》

    「ク、リスタ……そろそろ」

    ついばむようなキスを終え、唇を離す。

    つう、と透明な糸が互いの唇を繋ぎ、そして消えていく。

    荒い息づかいを落ち着かせながら、俺は同じように息を乱しているクリスタを少し体から離した。もちろん、落ちないように支えながら。

    「いやあ……エレン、もっと……」

    頬を紅潮させ、瞳を潤ませながらまた俺にキスをしようとするクリスタ。

    「ダメだ。そろそろ訓練の時間だし、遅れたら教官に怒られちまう」

    まあ、食堂でこんなことしてるのがバレても怒鳴られるだろうけど。

    「……むう」

    「そんな可愛く頬を膨らませてもダメ。訓練が終わった後ならいくらでもできるだろ? だから今は我慢だ。な?」

    「…………、ん」

    「よし、じゃあまず膝から下りてくれ」

    頷き、渋々俺の膝から下りたクリスタ。

    俺の方も、内心離れてしまったクリスタの温もりに寂しさを覚えたが、自分から言った手前我慢する。

    「確か、最初は座学だったな」

    「そうだよ」

    「じゃあ移動するか。ほら」

    クリスタに手を差し出すと、こいつは嬉しそうに「うん!」と笑顔を浮かべ、手を握ってきた。

    「俺苦手なんだよなあ、座学」

    「私もあまり得意じゃないなー」

    そんな他愛ないことを喋りながら、俺たちは食堂を後にした。

  18. 48 : : 2014/04/04(金) 12:11:01
    《座学?》

    座学の時間。

    俺の隣にはクリスタが座っている。

    今までは付き合ってるのを隠すために距離を置いていたけど、もう隠す必要なんてないから、周りの目を気にすることなく一緒に座ることができる。

    「ねえエレン、ここのところ解る?」

    「ん? ……あー、わかんねえ。後でアルミンにでも聞きにいくか」

    「そうだね」

    ──正直、ものすごく楽しい。

    普段なら、ただ小難しい講義を受けて、解らない問題に頭を悩ましたりしていただけの時間だったのに。

    隣にこいつがいるだけで、不思議と楽しい気持ちになってくる。

    「んー……」

    顎に指先を当てて悩んでいるクリスタを、黙って見つめる。

    ──笑ってる顔も好きだけど、こういう難しい顔をしているクリスタもいいな。

    そんなことを考えながら、じいっと見つめていたら。

    「? なあに、エレン」

    その視線に気づいたクリスタが、こてんと首を倒して俺を見てきた。

    「私の顔、なにか付いてる?」

    「いや、なにも。ただ悩んでるクリスタも可愛いなあって」

    「え……」と顔を赤くするクリスタ。

    「──ありがと、エレン」

    顔を赤く染めてはにかんだクリスタは、机の上にあった俺の手を覆うようにぎゅっと握ってきた。

    「あ──えへへ」

    手の平を返して握り返すと、嬉しそうに笑いながら、さっきよりも強く握ってきた。

    ──こんな座学だったら、ずっと受けていてもいいかもしれない。

  19. 50 : : 2014/04/04(金) 15:00:19
    《恋の力?》

    対人格闘術。

    クリスタに組もうと言われたが、「先にアニと約束してたから」と断った。

    その時にひどく寂しそうな顔をしたクリスタを見て、後で目一杯構ってやろうと心に決めながら、俺は異様に目がぎらついているアニと対峙する。

    「……なあ、アニ」

    「なにさ」

    いつもよりも低い声で返され、俺はアニの機嫌が悪いことを察した。

    「いや、その……」

    「用がないんなら、とっとと構えなよ。そして早く私に蹴られな」

    ──背筋が凍りつく。

    なんだか知らんが、今のアニはヤバい。

    以前、クリスタの前で他の女子の話をした時も似たような感じを味わったが……いや、あの時よりはまだマシな方か。

    あの時のクリスタは怖かった。いや本当に。

    初めてあいつの笑顔が怖いと思ったな……。

    その当の本人は、今は離れた場所でユミルと組んで訓練している。なんかクリスタは不満そうにユミルに詰め寄ってるけど……なんかあったのか?

    「……ねえ」

    「っ──」

    「やる気ないんなら、こっちからいくよ──っ」

    慌てて構えたが、すでに遅く。

    気づいたら、地面に転がって空を見上げていた。

    ──が、そんなことは今どうでもよくて。

    「……あれ?」

    「エレン! 大丈夫!?」

    一番気になるのは、さっきまで遠くにいたはずのクリスタが、俺の隣にいるということ。

    「あ、ああ、大丈夫だけど……」

    「ほんと?」

    頷くと、クリスタは安心したように「良かったあ」と息を吐いた。

    ──いや、心配してくれたのは嬉しいけど。

    こいつ、いつの間にここまで来たんだ? 走ったとしてももう少しかかるだろ。

    本人に聞いても「普通に来ただけだよ?」って言われたし。

    謎だ。
  20. 51 : : 2014/04/04(金) 19:19:53
    《少しは周りを気にしてほしい》

    ──今日はひどく疲れた一日だった。もう、ストレスやらなんやらで、よく倒れなかったと思うよ。

    その原因の二人は、そんなことは自分達には関係ないと言わんばかりにイチャついてるし。

    「……はぁ」

    僕、アルミン・アルレルトは、朝から始まった今日一日の地獄ともいえる出来事を思い返して、静かにため息を吐いた。


    一日の訓練が終わり、今は夕食の時間。

    いつもだったら腹を空かした人達で賑わう食堂が、今日は異様な空気が蔓延していて、殆どの人が無言で食事をしていた。

    「はい、あーん」

    「ん──。ほら、クリスタも、あーん」

    「あーん」

    原因は当然、あの二人だ。

    ──ていうかなにやってんのさあの二人は!

    付き合ってるのをバラした途端イチャイチャイチャイチャと! もうなんなの!? そんなに僕のストレスをマッハでぶっちぎりたいわけ!?

    「やっぱ味薄いよなー、たまには濃い味付けで食いたいんだけどな」

    「でも食べれるだけいいと思わなきゃ」

    「そりゃそうだけど……クリスタだって、たまには美味い飯食いたいだろ?」

    「それは、たまには食べたいなあって思うよ? けど私は、エレンに食べさせて貰えるだけで十分美味しいから」

    「クリスタ……」

    「だから、ね?」

    「……わかった。じゃあほら、もっと食べさせてやるから、口開けてくれ」

    「ふふ、あーん」

    ほんとなんなのさあの二人! 少しは周りのこと気にしろよ!

    ああっ! ミカサの握っていたスプーンが粉々に! てか目に光が宿ってないんだけどお!? 駄目だミカサ、気持ちはわかるけど早まっちゃいけない!

    あれは──いけないジャン! 今のミカサに近づいたらっ……あ…………。

    「天使……天使……」

    「クリスタ……何でだよクリスタ……」

    ライナーとユミルはなんかぶつぶつ言ってて怖いし……ってライナー? 急に立ち上がって何を……まさかっ! やめろライナー! 今の天使はエレンしか目に入っていない! 話し掛けたところで無視されるが落ちだっ──あ…………。

    ……ベルトルト、あの屍の回収お願い。ついでにジャンの方も。うん、ごめんね。

    「ごちそうさま。クリスタ、いつもの場所行こうぜ」

    「うんっ!」

    周りの惨状を見事にスルーして、二人は仲良く手を繋いで食堂から出ていった。

    ……いや、だから少しは周りのことを気にしてって。

  21. 55 : : 2014/04/04(金) 23:27:03
    《いつもの場所》

    「ほら、クリスタ」

    草地に胡座をかいて、俺は目の前に立つクリスタに腕を広げる。

    「うんっ……えへへ、やっぱりここが一番落ち着くなあ」

    嬉しそうに微笑みながら、ちょこんと胡座をかいた俺の前に座るクリスタ。

    腕を回して、彼女の小さな体を後ろから抱き締める。「んっ」と少しだけ身動ぎしたが、すぐに力を抜いて俺に身を任せてきた。

    ──今俺達がいるのは、俺とクリスタが仲良くなる切っ掛けになった場所。

    夜になると殆ど人が近づかない、馬小屋の裏側。

    そこに二人腰を下ろして、よく夜遅くまで話をしていた。

    内容は、馬術絡みのことから始まり、普段なにをしているのか、好きなもの、苦手なこと、いろんなことをクリスタと話した。

    ──そして気づいたら、俺はこいつを好きになっていて。

    それはクリスタも同じだったらしく、告白してきた時も「気づいたら好きになっちゃってた」と言っていた。

    それから半年間、誰にも喋らないで過ごしてきた訳なのだが──。

    「ふふっ、みんなにバレちゃったね、私たちのこと」

    「バレたんじゃなくてバラしたんだろ。まあ、その切っ掛けを作ったのは俺だけどさ」

    「部屋に誘ってくれたのはエレンだけど、一緒に寝ようとしたのは私だよ? どちらかというと、私の方が切っ掛けになったんじゃない?」

    「……いや、やっぱ俺の方だろ」

    「私の方だよ」

    「俺だ」「私だよ」と押し問答を繰り返した後、どちらともなく笑い声を上げる。

    「ま、どっちでもいっか」

    「そうだね、どっちでもいいよね」

    そう言って、また二人で笑う。



    《匂い》

    「でも、これでやっと、みんなの前でもエレンと一緒にいられるんだね」

    「ああ。俺も、普段からクリスタに引っ付いていられるんだな」

    ぎゅう、と抱き締める力を強めながら、俺はこいつの頬に顔を近づけ頬擦りする。

    「んっ──エレンって、よく私のほっぺたに頬擦りするよね」

    「ああ、だってお前のほっぺた気持ちいいし。あ、あと髪の毛もな。さらさらしてて良い匂いするし、好きなんだよなあ」

    「ありがと。私もエレンの胸に顔埋めたり、エレンに抱き締めてもらうの好きだよ。良い匂いがするから」

    「そうか? 俺男だし、そんな良い匂いなんてしないだろ」

    「うーん、なんていうのかな……良い匂いっていうか、エレンの匂いっていうか」

    「なんだそりゃ」

    俺の匂いって……。

    「とにかく! 私はエレンにこうしてもらうのも、こうやるのも好きなの!」

    腕の中で体の向きを変え、俺の胸に顔を押し付けるクリスタ。

    「……俺も好きだぜ。クリスタにこうするのも、されるのも」

    「……そっか」

    「ああ」

  22. 59 : : 2014/04/05(土) 09:24:15
    《本当に》

    「ねえ、エレン」

    「ん?」

    「私ね、エレンとこうして一緒にいられるのが、本当に大好きなんだ……。安心、できるんだ」

    「だからね」と俺を見上げたクリスタは、どこか懇願するような眼差しを向けてきて。

    「これから先も、私と一緒にいてくれる?」

    …………。

    「私の側に、ずっとずっと、いてくれる?」

    ……返事は、決まってる。

    「当たり前だろ。むしろ、俺の方からクリスタに頼みたいくらいだ」

    「…………」

    「これから先、ずっと俺の隣にいてほしい」

    ──言ったあと、ふと思う。

    あれ? これってなんか……。

    「……うん。ずっとずっと、エレンの隣にいさせてください」

    今まで見たことないんじゃないかってくらいの綺麗な笑顔を浮かべたクリスタに、俺の心臓が一際大きく高鳴ったのがわかった。

    ──あー、本当に。

    俺はこいつにベタ惚れなんだなあ、と自覚する。

    「エレンも、私の隣にずっと、ずうっといてね」

    ──ほんっと、ベタ惚れだなあ。

  23. 60 : : 2014/04/05(土) 09:52:41
    《とりとめのない二人の小話》

    目が覚める。

    静かに体を起こして、周りを見渡す。

    ライナーが床で寝ているのは気になるけど、他のみんなはまだ眠っているみたい。

    ちょっと早く起きすぎたかな……。

    「……二度寝、しよっかな」

    まだ眠いし。

    それに、ちょうどいい抱き枕もあるし。

    「んふー」

    引き締まった彼の体に抱き付き、胸に顔を当てる。

    ──いい匂い。

    彼の匂いを嗅ぐと、どうしてこんなに安心できるんだろ……。

    不思議だな。

    「んんぅ」

    暑苦しかったのか、抱き枕が私から逃れようとする。

    そうはさせない。

    ぎゅうっ、と彼の体を抱き締め、離れないようにする。

    ──んー、やっぱり、安心するなあ。

    しばらくそうしていたら、だんだんと瞼が下りてきて。

    私は、眠りに落ちた──。



    《とりとめのない二人の小話 END》
  24. 61 : : 2014/04/05(土) 10:05:51
    どうも、作者です。

    『とりとめのない二人の小話』はこれにて完結です。

    見てくださった読者の方々、最後までお付き合いして頂きありがとうございます!

    ……いやもう、我ながらよくこんな甘いもん書けたなあ、と。砂糖は吐きませんでしたけどね。

    今作は一作目や二作目と違い、初めから二人は付き合ってる設定で書いてみました。恋愛ものは過程が大事なのはわかってるんですけど、今回はただただ甘いエレンとクリスタが書きたかったんです。

    裏話……は特にありませんね

    次はシリアスにしようかな、と思ってます。

    ヤンデレでいこう。うん、ヤンデレで。

    そこまで詳しくもないんですけどね。

    では。
  25. 65 : : 2014/04/05(土) 16:59:21
    >>63依存だったら僕にもよめますね!!!!(いやヤンデレもも読めるんですけどね・・・・・)
  26. 66 : : 2014/06/16(月) 04:55:32
    エレクリ期待
  27. 67 : : 2020/10/06(火) 10:18:25
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

    http://www.ssnote.net/categories/%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA/populars?p=18

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