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ベルトルト「絶対に帰るんだ、故郷に」

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  1. 1 : : 2014/03/28(金) 22:53:25
    これは作者によるベルトルトの心情の解釈です

    また原作が完結してないので作者のオリ設定で進めていきます

    都合に合わせてオリキャラなどが出てきますのでお願いします
  2. 2 : : 2014/03/28(金) 23:03:35

    キース「これより入団試験を始める」


    ライナー「...」

    アニ「...」

    ベルトルト(ようやく始まったか。長かった、ここまで来るのは)

    ベルトルト(いや、これからもまだ長い。だが、僕らが過ごした苦難に比べればたいしたことはない。)

    ベルトルト(そう、あの地獄に比べれば......)
  3. 3 : : 2014/03/28(金) 23:19:15
    訓練兵A「まじでひびったよな~、あの教官の罵倒には」

    訓練兵B「ああ、俺なんか存在否定されちまったよ。これからやってけるか心配だよ」

    ベルトルト「......」 チラッ

    訓練兵A「Bは家業継がなくて良かったのか?」

    訓練兵B「本当はこんなとここないで継ぎたかったんだけど、ほら、こんな世だしさ」

    訓練兵A「ああ、ここ来ないと周りから白い目で見られんもんな」

    ベルトルト「......」プイッ

    あの事件の後に訓練兵志願者が急増したと聞いてたけど、周りで進んで兵士になりたいという人はほとんどいない

    まあ、当然だよね

    誰も進んで命なんか捧げたくはないよね

    見たこともない王や漠然とした人類の危機という言葉に
  4. 4 : : 2014/03/28(金) 23:36:22


    立体姿勢訓練初日


    キース「いくぞ」

    キリキリ

    教官が装置のハンドルを回す

    段々と僕の体が宙に浮くのが体感できる

    人によっては腰のワイヤーだけで体を支えるのは難しいのかもしれない

    だが、僕は難なくできた

    キース「次、カロライナ」

    ベルトルト「ふうっ」

    ライナー「上手くいったな」ポン

    ベルトルト「よしてくれ。......あれくらいできなけるばここに来た意味がない」

    ライナー「ああ、そうだな。あれくらいはな」

    ライナー「みたところ、出来てない奴はいないな」

    ドスン

    ライナー「!?」

    ベルトルト「!?」

    エレン「...」

    ベルトルト(あれは確か......)
  5. 5 : : 2014/03/28(金) 23:52:12

    ちょうどその日の夜だった

    姿勢訓練で大回転を披露した男、そして入団初日にある訓練兵と騒ぎを起こしてた男、エレンが僕らにアドバイスを求めてきたのは。

    エレン「頼む、ライナー、ベルトルト。俺に立体姿勢のコツを教えてくれ!」

    ベルトルト「......」 チラッ

    ライナー「......コツと言ってもぶら下がるだけにコツがいるとは言えん」

    エレン「頼む。どんな些細なことだっていい」

    ベルトルト(確か巨人を見たことがあるシガンシナ区出身だったかな。巨人を見てこの人は怖くはなかったのか?)


    アルミン「二人はどこ出身なの?」

    ライナー「......」チラッ

    ベルトルト「......僕らはウォールマリア南東の山奥出身なんだ」

    アルミン「それって!」

    ベルトルト(そう、あの時は怖かった。初めて巨人に遭遇したんだから)

    ベルトルト「明け方だった。...やけに家畜の音がうるさいと思ったら......」

    ライナー「!?」

    ライナー「おい!」

    ベルトルト(!......何を喋ってるんだ、僕は。用意された解答以外まで)
  6. 6 : : 2014/03/29(土) 00:03:42
    ベルトルト「憲兵団の特権階級狙いでここを選んだ。それが駄目だったら全てを放棄するかも知れない」

    エレン「......」

    アルミン「......」

    ベルトルト(上手く修正できたかな。感傷に浸るなんて、僕らしくもない)

    エレン「そんなに気にしなくていいんじゃないか、巨人に遭遇したくないってのは当たり前だし憲兵で内地に行くのも手だと思う」

    ベルトルト「じゃあ、君はなんで......」

    エレン「......俺は超大型巨人がシガンシナ区を襲った日、母さんを失った」

    ベルトルト「......」

    ライナー「......」
  7. 7 : : 2014/03/29(土) 00:18:58
    エレン「母さんは奴が蹴り破った門の破片の下敷きになって動けなかった。そして外から来た巨人に......」

    エレン「助けかった。だけど出来なかった。俺が無力なせいで」

    エレン「俺は憎い。母さんを殺した巨人共が。そして無力な俺自身が。だから強くなって必ず奴らを駆逐したい。母さんを奪った恨みともうこれ以上奴らから何かしを奪われないために」

    ベルトルト「......」



    その日からエレンイェーガーという男を意識するようになった。

    もちろん、僕自身、僕が起こしたことで彼のような被害者はいるだろうと予想していたし、その日は動揺もしなかった

    だが、彼とは同室ということもあり嫌でも顔を会わせなければならなかった

    そして、彼と顔をあわせるのはとても苦手になった
  8. 8 : : 2014/03/29(土) 00:35:11


    対人格闘訓練


    ライナー「......」ダッ

    ベルトルト「......」ダッ

    ガシッ

    ベルトルト「...昨日、エレンとアニとで訓練してたね」ボソッ

    ライナー「ああ、アニにはこっぴどくやられたがな」

    ベルトルト「あまり、アニとは接触しない予定じゃなかった?」

    ライナー「いいだろ、俺は人気者になるんだからな」

    ベルトルト「......マルセルの役目だったね。......まだ後悔してるの?」

    ライナー「......ああ、あいつは俺のせいで死んだ」

    ライナー「俺のせいだ、あんなに優秀な奴だったのに」

    ベルトルト(......君は)

    ベルトルト「......エレンには口を滑らしてない?君は随分と彼に入れ込んでるようだけど」

    ライナー「......バカいえ、壁内の奴らに心を許すかよ」

    そういうライナーは、微かだが顔を歪めてた

  9. 9 : : 2014/03/29(土) 00:54:12
    訓練兵として半年が経った

    ライナーはあの日言ったように皆と積極的に関わり皆から信頼を得ていった

    どんな訓練も全て優秀で、しかしそれを鼻にかけることもなく、また訓練で悩んでいる人には真剣に悩みを聞き手助けをする男に誰もが惹かれる

    そしてライナー自身には人を惹き付けるカリスマ性もあった

    だが、それは少し不安でもあった

    ライナー自身があまりに壁内の人間と関わりを持つとこだ

    情にほだされて目的を見失っては困る

    性格が真っ直ぐなライナーではその危険性が強かったため、最初はこの役を外された

    今は大丈夫でも卒業時にどうなるかはわからない

    だから僕だけはライナーの側にいつもいなければ

    ライナーをここに染められないように

  10. 10 : : 2014/03/29(土) 01:17:58


    ある日の座学



    教官「であるから、現在わかっていることは巨人はうなじの部分が弱点であり......」

    ベルトルト「......」チラッ

    ライナー「ほら、昨日の部分写したやつだ」
    ボソッ

    コニー「悪い、ライナー」コソッ

    ベルトルト(ライナーは相変わらずか)チラッ

    アニ「......」カリカリッ

    ベルトルト(アニは任務通り寡黙な人間として淡々と訓練に臨んでる。まあ、隣りのミーナやもう一人の......誰だかに話しを少しする程度の関係は作ってるようだけど)

    ベルトルト(僕は、......任務通りに振る舞えてるよね。まあ、もともと大差ない性格だけど)

    ベルトルト(巨人の講義なんか聞いても仕方がない。一応試験の模範解答を答えるために写してはいるけど)

    ????「あの~」

    ベルトルト「?」チラッ

    後ろから声をかけられて振りかえる

    金髪蒼眼、小柄な女の子が僕にばつが悪そうに話しかけてきた

    ????「とって貰えませんか、ペン」

    その言葉を聞いて少しして理解した

    僕の足元に彼女のペンが転がっていたのが

    ベルトルト「はい、どうぞ」

    なるべく素っ気なく返す

    礼を言う彼女に気にもせず、僕は再びノートをとった



  11. 11 : : 2014/03/29(土) 01:29:11
    その日の座学を終えるとその彼女が再び礼を言いに来た

    少しめんどくさいと思いながらも、嫌な気はしなかった

    彼女はクリスタと名乗った

    また、いつも隣にいるユミルという少女が体調不良で休んだのでノートを貸して欲しいと言われたので貸してあげた

    ベルトルト(クリスタ、っか。随分と律儀な子だな。素直でいい子なんだろうな)

    最初の彼女の印象はこうだった

    恐らく大半の人もそうであろう

    それは間違いだと気づいたのは少し後だった
  12. 12 : : 2014/03/29(土) 01:44:27


    次の日クリスタに礼を言われた

    また、授業で写した所以外もいくつか書いてあったのでそこについて質問してきた

    別に任務のことを書いたわけでもなく、特に聞かれて不味いことでもなかったので試験に出るだろうと予想しているところに印をつけ、難しいところには補足をしてるだけだと話した

    すると、彼女は僕にノートを次の試験まで定期的に貸して欲しいと提案した

    断る理由もなかったので素直に承諾した

    そして、その日の夜ライナーが僕にその事について聞いてきた
  13. 13 : : 2014/03/29(土) 01:55:27
    ライナー「なあ、ベルトルト。今日、クリスタと何をあんなに話してたんだ?」

    ベルトルト「......ああ、別に彼女にノートを貸して欲しいといわれただけさ。特に関わったわけでもないよ」

    ライナー「......そうか」

    ベルトルト「?」

    ライナー「あっ、いや珍しいなと思ってさ。普段は人と特に女とは全くといっていいほど関わらないお前がな、クリスタと会話してるのが」

    ベルトルト「....別に僕だって事務的な会話をするさ」

    ライナー「......」

    ベルトルト(どうしたんだろ......!まさか......いや、考えすぎか)

    とっさにある考えが浮かんだが馬鹿馬鹿しいと一蹴した

    まさか壁内の女の子にそのような感情は抱かないだろう

    そう、彼らは悪魔の末裔なんだから

    そう思ったが僕は不安が拭えなかった

    いや、気づいてるんだ

    たとえ僕が今考えたことが気のせいだとしてもここにいる訓練兵たちが僕らと変わらないただの人だということに
  14. 14 : : 2014/03/29(土) 02:10:51

    座学の後、クリスタにノートを貸す際にライナーを数回見たことで僕の仮説は確信に至った

    ライナーは恐らくは無意識だろうがクリスタに惹かれている

    僕から見ても確かにクリスタは可愛い

    昔、本当に僕らが子供の頃にマルセルがライナーに好みの女の子はどんなかと聞いたところ守ってあげたくなるような可愛い子だと言っていた気がする

    ベルトルト(だけど、一目惚れはないだろう、僕らは戦士なんだ)

    ベルトルト(アニだっていいじゃないか、アニはいつも君を頼ってた)

    なんとも言えない不快感が身体中を込み上げる

    ベルトルト(ああ、でもこれもかなり昔だったな。アニとはもう昔のような間柄じゃないんだ)
  15. 15 : : 2014/03/29(土) 02:13:15
    続きは明日に

    読んでる人はいないでしょうが......
  16. 16 : : 2014/03/29(土) 03:17:21
    居るよ!読んでるよ!

    面白い!期待!
  17. 17 : : 2014/03/29(土) 09:02:07
    ベルトルト…この作品いいです‼︎大期待です
  18. 18 : : 2014/03/29(土) 10:28:23
    ありがとうございます

    時間は不定期ですが完結を目指して頑張ります
  19. 19 : : 2014/03/29(土) 11:43:47


    数日後の夜



    アニ「......」カサッ

    ベルトルト「......アニ」

    アニ「......ベルトルト」

    ベルトルト「急に呼び出すことになって、ごめん。でも、どうしても君に直接話さなければならないことがあるんだ」

    ベルトルト「......今日は月が完全に隠れてる。それに教官達もここ最近は内地に出払ってる」

    アニ「密会するにはいい時、ってことね。......ライナーに何かあったの?」

    ベルトルト「......」

    アニ「この場にあいつがいないってことはそうでしょ。こんな危険を犯してまであんたがあたしに接触してくるんだから」

    ベルトルト「......うん。実はライナーがここの、ある女の子に恋愛感情を抱き始めたようなんだ......」

    アニ「......は?」



  20. 20 : : 2014/03/29(土) 12:01:04
    ベルトルト「......信じられないのも仕方がないよ。でも、本当なんだ。当の本人はまだそれを自覚してないようだけど」

    アニ「......あいつ。それで......誰なんだい。あいつが興味を持った女って」

    ベルトルト「クリスタ.レンズ。ほら、座学で僕の後ろにいる小柄な女の子、って言ってもわかんないかな?」

    アニ「いや、知ってるよ。男子に人気があるって有名だからね」

    月の光がささない夜

    顔は見えないが、アニの気持ちは痛いほど僕にもわかる

    アニ「......」

    ベルトルト「アニ、......もしもの時は...」

    アニ「ああ、だけどしばらくは様子見にしよう。あんたはちゃんとあいつに釘を刺すんだよ。自分が今どんな立場にいるのかわかってんの、ってね」

    ベルトルト「......」

    アニ「あっ、それとクリスタの側にいるソバカスには気をつけな」

    去り際にふと思い出したかのように言ったアニの言葉の真意は僕にはわからなかった

    しかし、そこまで気にすることでもないのだろう

    なぜなら、僕らにとって最も危惧すべき懸念はライナーのことなのだから

    ベルトルト(ライナー、君は戦士だろ。君は忘れてはいけないんだ。あの日のことを。そしてあの時の誓いを......)
  21. 21 : : 2014/03/29(土) 14:11:23

    アニが最後に言い残した『ソバカス』に会うことになったのはそれから何日かした後だった

    その日は座学の試験日だった

    問われたのは巨人の知識と立体機動の知識

    最後に自由論文型で『今後の人類がとるべき巨人への対策』を字数無制限で記せというものだった

    テストに関しては予想していた問が的中し、難なく解け随分と暇を持て余した

    キース「これより解答用紙を回収する」

    教官はゆっくり、一人ずつ用紙を回収していく

    全てを回収し終えると教官は自由時間を与える、と言って教室を出ていった

    ライナーは隣りのライナーやジャンとテストについて話している

    耳を傾けるとコニーはどうやら分からないところを全て巨人と書いたらしい

    ジャンやライナーが吹き出しているのがみえる

    邪魔にならないよう静かにその様子を眺めていると、不意に後ろから『ソバカス』から声をかけられた



  22. 22 : : 2014/03/29(土) 15:53:17
    ???「よう」

    ベルトルト(......『ソバカス』)

    別段、訓練兵の女子でソバカスがあるのは彼女だけではない

    それでも、クリスタに服の端をつかまれた彼女を見ると僕はすぐに目の前の女がアニの言う『ソバカス』だと分かった

    ???「クリスタから借りたノート、あんたのだったんだって?あんがとよ。私はユミルって言うんだ」

    ベルトルト(ユミル......そう言えば最初はこの子のためだったんだっけ?僕がノート貸したの)

    ユミル「ほいっ、それとベルトルトだっけ?ゴロがいいんでベルトルさんってよばせてもらうから


    クリスタ「ちょっと、ユミル。あんまり馴れ馴れしくすると失礼じゃない?」

    ユミル「ああ、私は言葉を飾るのは好きじゃないんだよ」

    そういう彼女はいい意味でも悪い意味でも物事を自分に思った通りストレートに話すタイプのように思えた

    僕とは性格はまるで逆であったがその違いがそれほど煩わしいとも思うことはなかった

    ただ、アニの忠告もあり僕は彼女を僕が感じた通りの人間だと素直に受け止めることができなかった

  23. 23 : : 2014/03/29(土) 16:23:42


    その夜、ライナーにユミルと何を話していたのか聞かれた

    ライナーは口には出さなかったが、僕がユミルとどんなことを話したかよりも側にいたクリスタと何か話したのか、また彼女自身のことについて僕の口から話されるのを期待していたようだった

    ベルトルト(......ライナー)

    僕はこの日、ライナーとの会話を早々に切り上げ床についた







    静かな地響きがした

    目を覚ますと明け方だった

    その地響きは絶えず一定のリズムで聞こえ、次第にその大きさを増していった

    飼っていた鶏も騒がしく鳴いている

    不意に地響きが止まった

    起きたばかりの重いからだにむちをうち、何だろうと窓を開けると、そこには......



    僕は逃げた

    僕を窓から覗いていた巨人は僕の家を半壊させた

    なんとか馬小屋にたどり着き、飼育してた馬の一匹に乗りすぐさま馬を走らせた

    巨人は追ってきたがこちらの方がやや速いようだ

    なんとか砦まで逃げ切れることができれば......


    いや、駄目なのではないか......

    どうやって巨人がここに来たのか考えればそれでは駄目なのは当たり前じゃないか

    だって彼らはここまで『登って』きたにちがいないんだから

    僕らを補食するために......



    いつの間にか眼前に巨人が立っていた

    その巨人は異様なほど全身を毛で覆われていた

  24. 24 : : 2014/03/29(土) 23:07:45

    ベルトルト「はっ!」ガバッ

    ベルトルト「......」

    ベルトルト(......夢か)

    嫌な夢だった

    僕が見た夢は単なる夢じゃない

    過去に体験した出来事そのままだった

    ベルトルト「クソッ!」

    頭がぎんぎんする

    最悪の気分だ

    忌々しい記憶

    あの『猿』に出会ったことで僕の人生は変わった

    僕だけじゃない

    ライナーもアニも、そして死んだマルセルもだ

    いや、逃れられないことだったのかもしれない

    なぜならこの世界は破滅に向かっているのだから








  25. 25 : : 2014/03/29(土) 23:38:18





    アニから言われたように僕は暇があればライナーに僕らの使命を話し、クリスタのことは諦めるように諭した

    ライナーは最初は苦々しい顔をしていたが次第に僕とアニの注意を受け入れるようになっていった

    それからはライナーがクリスタに視線を向けることも、積極的に関わろうとすることもなくなりこの問題は解決したと思っていた

    しかし、僕がライナーに強いたことがこの問題を更に複雑にしてしまったと知ったのは随分後になってからだ

    それは、訓練兵として二年目が終わるころだった
  26. 26 : : 2014/03/29(土) 23:53:56


    雪山訓練


    エレン「ライナー、聞こえるかー」

    サシャ「ライナー、返事をしてください」

    ベルトルト「......」

    吹雪のせいで下が上手く見えない

    足場が崩れて落ちそうになったエレンを助けたライナーが崖から落ちてからもう数分は経つ

    エレン「くそっ、俺のせいでライナーが」

    ベルトルト「......サシャ、ライナーの声は聞こえない?」

    サシャ「吹雪が強くてなんとも......」

    サシャ「!?聞こえました」

    ライナー「はあ、はあ」

    見ると信じられないことに雪で覆われた崖をライナーが自力で登ってきた

    エレン「たっ、助けよう」

    サシャ「ええ」

    そして僕やエレンとサシャの助けを借りたライナーは無事僕らの前に帰ってきた

  27. 27 : : 2014/03/30(日) 00:07:55


    下山後の休憩所


    ベルトルト「ライナー、心配したよ」

    ライナー「心配かけたな。正直、死も覚悟した。だが、火事場の馬鹿力というやつか、自分でも信じられんほどの力が出た」

    ベルトルト「......あんまり、無理はしないでくれ。ライナーが死んだら僕らの使命は果たせなくなる」

    ライナー「......だが、一人の兵士としておれは仲間が危ないときに黙っていることは出来ない。自分の命と引き換えになろうとも仲間を守るべきだと思っている」

    ベルトルト「......ライナー、今はそんなこと言わなくていいよ。今は僕ら以外誰もいない。僕らにとって使命を果たすまでは命は粗末に扱うべきものではないんだ」

    ライナー「......何を言っているんだ、ベルトルト」

    ベルトルト「......え?」

  28. 28 : : 2014/03/30(日) 00:39:00

    ライナー「使命とは一体なんだ?」

    ベルトルト「......ライナー」

    ライナー「俺は別に命を無駄にするとは言っていない。ただ、兵士にはどうしても引けないときがあって、どうしても守りたいものはどんなことをしても守るべきだと言っているんだ」

    ベルトルト「それが君にとってはエレンであり、サシャであり、他の仲間だってこと?」

    ライナー「ああ、そうだ」

    ベルトルト「......」

    ライナー「どうした、ベルトルト」

    ベルトルト「君は忘れたのかい?僕達の課せられた使命を」

    ベルトルト「僕らは兵士じゃない。『戦士』だろ」

    ライナー「......」

    ベルトルト(ライナー......)

    ライナーは不思議そうな顔をして僕わまじまじと見つめた

    だけど、急にはっとした顔つきをして頭を抑え始めた

    ベルトルト「ライナー!!」

    ライナー「来るな!」

    僕は何が何だかわからなかった

    だけど、大丈夫だと言って頭を抑えたままのライナーはひどく悲しげな顔をしていた
  29. 29 : : 2014/03/30(日) 16:01:25




    アニ「二重人格?」

    ベルトルト「......うん」

    アニは今どんな顔をしてるだろう

    暗闇で隠れているけどその表情は想像に難くない

    ベルトルト「僕が最初に気づいたのはこの前の雪山訓練だった」

    ベルトルト「その日からライナーはどんどんとおかしくなってきてる。また、クリスタを遠くからずっと見るようになったし、僕と話すときは単なる幼なじみのように話すんだ」

    ベルトルト「それに、最近のライナーはエレンやアルミンと一緒に調査兵団に行きたいなんて言い始めた」

    アニ「......」

    初めてライナーに調査兵団も悪くないな、といわれたとき、僕は口を開けたまま暫く呆然とたちすくしてしまった

    ベルトルト「僕らは『戦士』だと言うとライナーははっとしたように黙ってもとのライナーに戻るんだ。......でも、次の日にはまた僕の知らないライナーになっている」

    アニ「......」

    ベルトルト「......今のライナーはまるであの中に二人のライナーがいるように思えるんだ」
  30. 30 : : 2014/03/30(日) 16:37:13
    私も居るよ♪
    けど。。。。。。らめえぇぇぇぇえええええ
  31. 31 : : 2014/03/30(日) 16:44:02

    すごい、惹き込まれてしまいました。
    続きも楽しみにしています。
  32. 32 : : 2014/03/30(日) 19:18:42
    アニ「......二重人格って相反する二つの感情をどうしても両立させることが出来なくなったときに精神の崩壊を防ぐためにできるってなんかの本に書いてあったよ」

    ベルトルト「......つまり、『戦士』であるライナーとそれを否定したいライナーが今のライナーを作ったってこと?」

    アニ「そうなんじゃない」

    アニ「あいつ、今の立場に相当悩んでたように思えるけど」

    ベルトルト「......」



    この日の密談は結局話がまとまらずライナーをしばらくはそのままにしておくということで終わらせた

    ライナーは、......僕らの知ってる『戦士』のライナーは自分がどうなっているのかがわかっているようだった

    でも、なんとかする、とライナーは言ったけど僕は彼の病気を僕らの手を借りずに彼自身の手で治せるとは思えなかった

    だって、『戦士』に戻ったライナーはあんなに悲しそうな顔をするんだもの

    本当は戻されたくないとでもいうように
  33. 33 : : 2014/03/30(日) 23:28:48



    とある日の夜



    ベルトルト「ふー」


    ガチャ

    マルコ「あっ、ベルトルト、どうしたんだいこんなところで」

    ベルトルト「マルコ、......君こそどうしたんだい。もう、就寝時間だよ」

    マルコ「ははっ、ちょっとね。眠れなくてさ。そういう時もあるだろ」

    ベルトルト「うん、......そうだね」

    マルコ「悩みでもあるの?僕でよければ何でも聴くよ」

    ベルトルト「......いや、たいしたことじゃないよ。マルコの手を煩わせるほど大きなことじゃないしね」

    マルコの言葉に一瞬ドキッとした

    ライナーの病気が僕を最近悩ましているのは事実なんだから

    マルコ「もし、本当に辛かったらいつでも言ってほしい。少しでも助けになりたいから」

    ベルトルト「ありがとう。もし、そうなった時は頼るよ」

    マルコはいつも優しい

    今の言葉も本心からだとわかる

    でもこの問題に関しては彼にも頼れない

    これは僕らの問題なんだから
  34. 34 : : 2014/03/30(日) 23:59:25

    マルコ「そういえばライナーってさ、最近明るくなったね」

    ベルトルト「えっ?」

    マルコ「あっ、いやいつもライナーが暗いっていうわけじゃないんだ」

    マルコ「ただ、僕やジャン、コニー、いや彼と親しい人全員かな。最近ライナーは僕らと話すとき本当に楽しそうなんだ」

    ベルトルト「......」

    マルコ「なんて言うのかな、今までライナーって僕らと話す時は若干距離を取っていたように思えるんだ」

    マルコ「誰でも人と接する時は相手と距離を作るけど、僕が言いたいのは、ライナーは信頼を寄せてる僕らに対してあまり僕らに踏み込みすぎないようにしてる、っていうことかな」

    マルコ「でも最近は僕らを頼るようにもなってきたんだ。僕が感じていた距離間も縮まってきた気がする」

    ベルトルト「......マルコはライナーをよく見てるんだね」

    ベルトルト(距離を取っていたのが『戦士』のライナー、そしてマルコがそう感じたのは『兵士』のライナー......)


  35. 35 : : 2014/03/31(月) 00:25:23
    マルコと別れた後、僕はベッドに横になって寝ようとしたけど寝れなかった

    目をつむればマルコの、言葉が頭に響く

    『僕らと話すとき本当に楽しそうなんだ』

    気付いてしまった

    いや、気付かないようにしていたんだ

    ライナーの病気は、『兵士』のライナーはライナー自身の願望の表れだということに

    初めから知っていて考えないようにしてたのは僕だ

    その方が楽だから

    そして僕が傷つけなくて済むから

    『兵士』であれば壁内のクリスタを好きになっても問題はない

    僕が諦めるように言ったときライナーは相当悩んだだろう

    『兵士』であれば皆と気兼ねなく接することができる

    僕らが起こしたらことの被害者であるエレンにライナーはどんな気持ちで接していたのだろうか

    そして、ここないる人達を自らの手で殺すかも知れないと知ってるライナーはどんな気持ちで彼らに接してきたのだろうか

    ことあるごとに任務を説きライナーを苦しめていたのは僕だ

    僕がライナーを苦しめた

    僕がライナーをあんな状態にしたんだ
  36. 36 : : 2014/03/31(月) 00:47:02




    翌朝



    ライナー「おい、大丈夫かベルトルト」

    ベルトルト「えっ?」

    ライナー「目の下に隈ができてるぞ。昨日は眠れなかったのか?」

    ベルトルト「......うん」

    ライナー「悩みでもあるのか?寝れなくなるほどの」

    ベルトルト「......いや、なんでもないよ」フラッ

    ライナー「おい、満足に立ち上がれもしないじゃないか」ガシッ

    ライナー「今日の訓練は休め。俺が教官に許可とってくる」

    ベルトルト「いいよ、ライナー。そんなことしないで」

    ライナー「いいから休め!」

    ベルトルト「......わかった」
  37. 37 : : 2014/03/31(月) 01:01:40


    休憩所



    コン、コン

    ベルトルト「......」

    ライナー「入るぞ」ガチャリ

    ベルトルト「......ライナー」

    ライナー「調子はどうだ、ベルトルト」

    ベルトルト「おかげさまで、......さっきよりは良くなってるよ。少し眠れたしね」

    ライナー「......すまん」

    ベルトルト「えっ?」

    ライナー「全て俺のせいだ。俺がこんな状態のせいでお前に心配をかけた」

    ベルトルト「ライナー、今はいつものライナーなんだね」

    ライナー「ああ、アニに戻された。アニもお前を心配してた」

    ベルトルト「......そう」

    ライナー「本当に俺は自分が情けない。俺が中途半端野郎だからお前をこんなに苦しめて......」

    ベルトルト「それは違う!」

    ライナー「なっ」ピクッ

    ベルトルト「それは違うんだ、ライナー」

    ベルトルト「ライナーを苦しめてたのは、僕なんだ」

  38. 38 : : 2014/03/31(月) 01:28:17
    ベルトルト「僕がライナーを......」

    ライナー「ベルトルト、それは違う」

    ベルトルト「違わないさ。君がクリスタが好きなのを知っててわざと引き離そうとした。君が同期の皆との対応に困ってたのに見てみぬ振りをした、僕は」

    ライナー「それが俺にとってもっともいいことだと思ってしたことだ。お前がしたのは。そしてその通りだと俺はおもっている」

    ライナー「俺達は『戦士』だ。そして俺達はやらなければいけないんだ、俺達の責務を」

    ベルトルト「でも、その結果君は」

    ライナー「ベルトルト、お前は疲れてるんだ。お前は俺たち四人の中で最も冷静に最適の選択肢を選べた。そしていつも、お前は慎重に物事を進められた」

    ベルトルト「臆病なだけさ、僕は」

    ライナー「そうかもしれない。だが、俺はそんなお前を頼りにしてる」

    途中から僕はライナーから顔をそむけた

    多分今顔を見たら涙を見せてしまうだろう

    それが嫌だった

    ライナー「ベルトルト、故郷に帰ろう」

    ライナー「絶対に、アニを含めた三人で帰るんだ、故郷へ」
  39. 39 : : 2014/03/31(月) 02:08:18
    夜はここまでに

    支援してくださった方々ありがとうございます

    21でライナーが二回書いてあるところがありました

    ライナーは隣りのライナー

    二回目はコニーです、すみません
  40. 40 : : 2014/03/31(月) 08:30:06
    ベルトルト「故...郷...」

    ライナー「そうだ!俺達はそのために今までどんな辛いこともしてきた。そうだろ」

    ライナーの顔を見る

    ライナーは静かに泣いていた

    ライナー「俺らがしたのはここのやつらからすれざ到底許されない最悪な行為だ。だが、それでも俺らはやらなければならなかった」

    ライナー「そしてこれからもやるんだ。『戦士』としてだけではない。あの平穏を取り戻し、失われた故郷に帰るために」

    ベルトルト「ライナー、それは」

    ライナー「はは、これはお前の言葉だったな。昔からそうだ、お前はあまり話さないくせに話す時はいつもいいこといいやがる」

    ベルトルト「......」

    嬉しかった

    本当は辛いくせに精一杯僕を励ましてくれたのが

    『兵士』でいれば楽なんだ

    こんな任務のことを考えないで済む

    ......僕も

    ここにいる皆を好きになったのは君と同じだ

    でも、いや、だからこそわかるライナーが言っていることは

    僕らはやらなければならない

    『奴等』に奪われた故郷を取り戻すために

    あの平穏を取り戻すには、そしてこの世界の破滅を防ぐのは僕らしかいないんだ
  41. 41 : : 2014/03/31(月) 09:04:43

    この日僕は誓った

    どんなことがあろうとも、たとえそれがどんなに辛いことでも僕は目的のために自分の手を血に染めることをためらわないと

    そしてどんな任務も最も辛い役目は僕が負おうと





    アニ「そう、ライナーがそんなことを......」

    ベルトルト「うん、僕はライナーに苦労をかけてばかりだ」

    ベルトルト「この前のことだけど、僕はライナーをこのままにするよ。それがライナーのためでもあるんだ」

    アニ「......それでいいと思う。任務の時に任務をきちんとこなせれば何も問題はないから」

    アニ「ライナーにはその方がいい。......『兵士』の時は少しでも忘れられるから。辛い思い出も、任務も」

    ベルトルト「アニも辛いんだね。アニもここが好きだから」

    アニ「......あたしはライナーのようにはならない。あたしはあいつみたいに単純じゃない、......それにあんたに負担をこれ以上かけたくない」

    ベルトルト「......アニ」

    アニ「本当は辛いくせにそれを見ないようにしてる。あたし達を気にかけられなかなるから。あんたは昔からそうだったね」

    ベルトルト「......」
  42. 42 : : 2014/03/31(月) 10:29:50
    アニ「......無理はしないで。あんたが倒れたは作戦はあ」
  43. 43 : : 2014/03/31(月) 10:30:27
    42失敗しました

    アニのセリフで初めから投稿します
  44. 44 : : 2014/03/31(月) 10:45:34
    アニ「......無理だけはしないで。少しは弱音だって吐いてもいい。人はそんなに強い生き物ではないんだから」

    アニ「......あんたのこと頼りにしてるから、......ベル」

    ベルトルト「!?......あっ」

    去っていくアニの姿を僕は呆然と見続けた

    ベルトルト(ベル......か)

    そう呼ばれたのは何年ぶりだろうか

    懐かしい記憶が甦る

    楽しかった記憶

    この世界のことをまだ何も知らず無邪気に子供時代を謳歌してた僕

    ベルトルト(......あのときは本当に楽しかった。アニやライナー、マルセル、それに故郷の皆と何も考えずに好きに遊べた)

    そして、あの頃の僕はいつも一緒にいたアニのことが......

    やめよう、楽しい思い出だけを思い出すのはただ空しいだけだ



    今はじっと耐えて任務をこなすだけだ
  45. 45 : : 2014/03/31(月) 22:44:10




    教官室


    コン、コン

    キース「入りたまえ」

    ベルトルト「失礼します」ガチャ

    キース「フーバー、その辺で待っていろ。他にも何人か呼んでいる。直に来るだろう」

    ベルトルト「はっ」

    教官に突然呼び出されたから何を言われるのか心配していたけどどうやら呼び出されたのは僕だけではないようだ

    暫くするとサシャがやたらおどおどした様子で部屋に入ってきた

    次はコニー、そして最後にエレンが入ってきたことで背を向けていた教官はゆっくりと僕らの方に意識をうつした

    キース「ようやく集まったか」

    ベルトルト「......」

    キース「」

    キース「フーバー訓練兵、イェーガー訓練兵、ブラウス訓練兵、スプリンガー訓練兵」

    一同「「「「はっ!!」」」」

  46. 46 : : 2014/03/31(月) 23:13:25
    キース「諸君らは訓練兵としてここにきて二年たった。君らはまだ訓練兵期間を修了していないとはいえ一人の立派な兵士だ」

    キース「そこで諸君らに兵士として初めての任務を与える」

    キース「ここにいる四人が班を組み、トロスト区から物資の輸送を命じる」

    キース「目標地点はトロスト区から北西にある駐屯兵団基地だ」

    キース「......フーバー訓練兵」

    ベルトルト「はっ」

    キース「お前がこの班の班長だ。班員をしっかりまとめあげ任務を成功させるように」

    ベルトルト「......はっ」

    キース「任務は明日に開始だ。詳細は後に報告する。ひとまず、諸君らは自室に戻れ」


    突然教官から下された任務

    自室に帰ると班を組むことになったエレンや同室のライナーやアルミンとこれについて話し合った

    ライナーもアルミンももちろん今回のことは初耳だった

    今回の任務は恐らくは抜き打ちのテストのようなものだろう

    ただ目立つことと人の上に立って指示することが嫌いな僕がよりにもよって班長をすることになるなんて



  47. 47 : : 2014/03/31(月) 23:33:52

    翌日、トロスト区とローゼを結ぶ門に僕らは集合した

    教官は僕らが揃ったところで任務の詳細を説明した

    トロスト区から目標の基地へは徒歩で一日半、馬で一日かからない程度

    徒歩では山の街道を使えるが馬を走らせるには至難の道なので帰りは輸送で使った馬にのっても遠回りしなければならない分、行きと帰りで所要時間がそこまで減らないようだ

    また、輸送物資、馬と僕らの水と食料で合わせて馬5頭に物資を載せて僕らが基地まで連れていくことになった

    キース「今回の輸送物資は馬五頭分のみとはいえリーブス商会が誇る嗜好品など単価が高いものが多く含まれている」

    キース「これが失われた場合その損害は計りしれない。必ず任務を成功させるのだ。それとここには3日後以内に帰るよう、期限厳守とする」

    ベルトルト「わかりました」

  48. 48 : : 2014/04/01(火) 00:04:29




    山の街道



    コニー「もう、随分歩いたなあ。ベルトルトー、少し休まねえか

    ベルトルト「待ってくれ、もう少ししたらちょうど半分になる」

    トロスト区からたって大分経った

    このベースでいけば日が沈む頃には街道を抜けるだろう

    ベルトルト「サシャ、この辺りは危険な野生生物とかはいるのかい?」

    サシャ「はあ、あのー、確かに私は山村出身ですがここには来たことがないのでなんとも......。ただ猪は東の山らしいのでここにはいないかと」

    ベルトルト「そう。でも考えてみるとここは駐屯兵が基地に行く時に使う道だ。危険はそんなにないはずだと思うけど......」

    エレン「あっ、そろそろじゃないか?中間地点」

    ちょうどその時だった

    突然僕らが引いてた馬の一匹が倒れたのは

    ドダン

    コニー「うわー!?」

    サシャ「えっ、コニー!?」
  49. 49 : : 2014/04/01(火) 00:37:33
    コニー「くっそ、動けねえ」

    ベルトルト「コニー!」

    倒れた馬にコニーが下敷きになっている

    エレン「お、おい、早くどかすぞ」

    サシャ「はい」

    三人がかりで何とか馬を立ち上がらせることができた

    コニー「痛てえー」

    ベルトルト(足を強く打ったのか)

    エレン「コニー、立てるか?」

    コニー「う、暫くは無理かもしんねえ」

    ベルトルト(コニーはしばらく無理か......馬は)

    ベルトルト「サシャ、......ちょっと馬を見てくれないか?」
  50. 50 : : 2014/04/01(火) 01:16:56
    サシャ「ええ、見てみましょう」

    ベルトルト「どうだい?」

    サシャ「窪みで足を挫いたみたいですね。けがは結構ひどいです」

    サシャ「恐らく一晩でどうこうできるようなけがでは......」

    エレン「コニーも同じだ。くそ、これじゃあ輸送が出来ない」

    ベルトルト「......」

    エレン「サシャ、馬に無理させられないか?物資をいくらか他の馬にわけて今日だけ山を抜けるまで歩かせるとか」

    サシャ「足を挫いたこの子じゃ絶対途中で駄目になりますよ」

    コニー「なあ、ひとまずは班長のベルトルトに決めさせた方がいいんじゃねえか」

    コニーがそういうとエレンとサシャが僕に振り向いた

    エレン「そうだな、ベルトルトはどう考えているんだ?」

    サシャ「何かいい案でもありますか?」

    そんなすがるような目で見ないでくれ

    でも、この状況じゃあ班長の僕が駄目だと班員全員が混乱してしまう

    ベルトルト「......一つだけ」
  51. 51 : : 2014/04/01(火) 23:41:16







    ガサガサ

    エレン「ここか」

    サシャ「ただいま帰りました」

    ベルトルト「......そろそろだと思ってたよ」

    コニー「おー、連れてこれたのか」

    ちゃんとエレンとサシャは馬を連れてきた

    正直近隣の村から馬を貸してもらえるか不安だったが、エレンもサシャも上手く借りれたようだ

    コニー「これで明日の朝には出発できるな」

    エレン「代わりにここで一晩過ごすけどな」

    サシャ「山は舐めたら痛い目見ますよ。特に夜は危ないんですから。あっ、ベルトルトうまそうなの持ってますね」

    ベルトルト「あ、これは夕飯だよ。どうぞ」

    サシャ「さっきからずっと歩いてばかりでお腹ペコペコです。早く食べましょう」

    エレン「ああ、俺も我慢できない」

    二人が僕の用意した石の椅子に座る

    全員が椅子に座ったところで僕らは食事をすることにした
  52. 52 : : 2014/04/02(水) 00:04:59



    パチ、パチ

    ベルトルト「......」

    エレン「......」

    食事を終えてから随分経った

    明日のことも話しをし終えてしばらく目の前の火を眺めてからどのくらいの時間が過ぎただろう

    いつの間にかサシャもコニーも寝ている

    ベルトルト(さすがに僕かエレンのどちらかは朝まで起きてないといけない)チラッ

    エレン「......」

    ベルトルト「......」

    エレン「......ベルトルト」

    エレン「ベルトルトってさ、結構すげえんだな」

    ベルトルト「......えっ?」
  53. 53 : : 2014/04/05(土) 23:01:29
    エレン「だってよ、色々予定外のことがあって元々の作戦が狂ったんだぜ。それなのにベルトルトは」

    ベルトルト「......買いかぶりすぎだよ。僕はそこまで大したことはしてない。僕の考えもただ任務の優先を重視したにすぎないし」

    エレン「それでも俺はベルトルトの考えを聞いたとき納得したんだ。それにベルトルトはとても冷静に話すもんだから妙に説得力があるしな」

    ベルトルト「......そうかな」

    エレン「そうさ、そしてそう考えてるのはおれだけじゃない。サシャもコニーもお前を信じてるから今日はこんなに無防備に寝れるのさ」

    ベルトルト「......」

    エレン「......そういえば、ベルトルトとこんな風に二人だけで話すのはあんまなかったな」

    ベルトルト「......そうだね。エレンと話すときはいつもライナーもいたから」

    エレン「なんか、お前とこうやって話すのも悪くないな。いつもはライナーにべったりしてる印象だったけどお前って結構いろんなこと考えてるし、そんなお前の考えを聞けると楽しいよ」

    ベルトルト「......」



    そのあとはよく覚えていない

    ただお互いにどうでもいい、ありふれた話題の話をした気がする

    エレンがこの時言ったことは僕にとって衝撃的だった

    そしてエレンは僕の本質も僕がエレンにあまり深く関わろうとしなかったことにも気づいていた

    エレンと話すとき、僕はいつもエレンの過去が頭にちらついた

    だからいつもエレンとは話しにくかった

    だけど今日あのあとエレンと話した僕はいつもと同じではなかった

    僕もエレンをただの同期として話した

    そして、それが今とても怖い

    自分が自分の犯した罪から逃げているようで

  54. 54 : : 2014/04/22(火) 02:01:27





    キース「今回の任務、誠にご苦労であった」

    ベルトルト「......」

    キース「輸送も報告の期限も守り此度の任務は成功だといえよう」

    キース「しかし、行動内容は減点ものだな」

    淡々と述べていたキース教官の声色が変わる

    キース「なぜだかわかるな、フーバー訓練兵」

    ベルトルト「......はい」

    キース「お前の行動は命令の穴をついたにすぎん。報告を1人だけで行い、全員トロスト区にもどったのはその次の日だった。馬の借用も上官の許可を偽って行った」

    キース「弁明はあるか」

    ベルトルト「......いえ、ありません」

    キース「......下がれ。任務の成功により今回は不問とする」

    ベルトルト「......はい」

  55. 55 : : 2014/04/25(金) 01:20:59
    期待
  56. 56 : : 2015/01/11(日) 16:23:07
    この任務は僕にとって忘れられないものとなった

    何しろ、僕自身の弱さを僕が自覚することになったんだから

    ライナーの精神状態の悪化を知っていて、僕がしっかりしようとあの時あんなにも誓ったのにも関わらず結局僕はエレンを受け入れていて・・・ 

    やらなければならない任務でさえも僕は迷い始めているんだから





    ライナー「いよいよ明日は上位10位の発表だが・・・十中八九俺たち三人はその中に入れているだろう」

    アニ「そうだね」

    ベルトルト「・・・」

    ライナー「それで所属兵団だが・・・3人とも憲兵団にいくことで異論はないな。憲兵団ならローゼが陥落した後も確実にシーナに留まれる。逆に駐屯兵、調査兵は切られる可能性が高い。マリア陥落後の奪還作戦のときみたいにな」

    アニ「私もそれでいいと思うよ。ただ、調査兵団の壁外調査の時期だね、問題は」

    ライナー「そうだな。まあ、俺らが内地に行った後にでもじっくりと機会を伺えばいいさ」

    ライナーが僕に目をむける

    確かにライナーの考えに問題点はない

    だけど・・・ひとつだけ僕には引っかかるものがある

    アニ「・・・はあ。あんたさ、違う考えがあるんならとっととしゃべりなよ」

    ベルトルト「えっ!?」

    アニ「ライナーの考えには私も賛成だよ。ただあんたにも考えがあるんなら私たちは聞いて3人で考えるべきだと思う。私たちは・・・3人で任務をおこなってんだからさ」

    それはアニの・・・彼女なりの僕への不器用な励ましだった
  57. 57 : : 2015/01/11(日) 16:24:10

    アニの言葉と僕に向けた彼女の微かな笑みに僕は驚いた

    アニは任務で僕らとはなるべく接触を断っているけれどもそうでなくてもここに来てから僕とアニとの間には見えない壁があるように感じていた

    僕には僕しか分からない苦しみや悩みがあるようにアニにもアニだけが知る悩みや苦しみ、アニの置かれた事情がある

    アニはお父さんのことで悩んでたことは少し知っていたけどそれをアニは他人に・・・僕らにも話していない

    いやそれは僕も同じだ

    このアニとの距離で僕はアニが何を考えているかわからなっかったし、いつしかアニは僕のことをただ同郷で任務が同じなだけの存在なのではないかと思い始めていた

    それがこんなにも僕を気遣い、信頼してくれていたのだから

    ・・・そうだ、一蓮托生の関係なんだ、僕らは

    ベルトルト「うん。僕の意見を言うよ。僕は僕らが憲兵に行く直前、そう今日から数日後にローゼを破壊するべきだと思う。いまはちょうど調査兵団が壁外調査を行っている時期だし」

    ライナー「なっ!?」

    アニ「えっ!?」

  58. 58 : : 2015/01/11(日) 16:25:06

    ライナーとアニが互いに顔を合わせた

    ライナー「いやいや待て待て。それは性急すぎる。第一、壁を破壊したらトロスト区に巨人が溢れる。俺らはそのとき実質まだ訓練兵だ。確実に巨人の足止めに駆り出される」

    アニ「・・・いや、ありかもしれないね。憲兵に所属した後に作戦を実行するとなると足がつく可能性がある。今ならローゼ陥落時にトロスト区にいても何も疑われることはない。それに巨人が襲ってきても私たちなら上手く逃げられる」

    ライナー「なるほど、一理あるな。敵がどれ程俺たちの持つ情報を持っているかわからんからな。少なくとも王政府は5年前の襲撃で超大型巨人と鎧の巨人の正体が人間で、その人間が壁内に紛れている可能性があることは知られているんだ」

    ベルトルト「・・・うん。その通りだよ。だけど、一番は・・・僕はこの世界が崩壊し始めていることのほうが怖いんだ。僕らはもう“故郷”に帰れなくなることが怖いんだ。“猿”の存在もある。早めに任務を進めたい」

    ライナー「・・・覚悟は出来てるんだな」

    ベルトルト「・・・うん。僕がやるしかないんだ。・・・やるよ」

    そう答えると、ライナーは短く、そうか、と一言だけ発すると静かに目を閉じた

    アニは視線を地面にむけて口を噤んでいる

    この作戦をその日に決行する意味を僕らは分かっている

    トロスト区の住人を、ローゼの住人を苦しめ、何の罪もない人たちの命を奪うだけでなく、僕らは今まで訓練を共にし、日々を共に過ごした104期訓練兵の仲間たちをも自らの手で殺すということを・・・

  59. 59 : : 2015/01/11(日) 16:26:25






    門付近にはエレンたちがいる

    サシャやコニーがいつものように騒ぎ、そんな二人にエレンもミーナもナックもミリウスも笑顔を向けている

    今からやるんだ、僕は

    あの無垢な笑顔を見せる同期の前で壁を壊し、絶望に変える

    手が震えている

    いや手だけじゃない、体全体がだ

    とっさに右手に持った短剣で左手を切り裂く

    血が流れてくる

    痛みと左手から流れ出る血を見ることで体の震えがだんだんと治まってくる

    やるんだ、僕が!

    誰かがやらなければならないんだ

    僕は自分に与えられた役目をやり通す!

    そして僕は壁から飛び降りた


  60. 60 : : 2015/01/11(日) 16:29:14
    取りあえず今日は4スレだけ更新します

    ずいぶんと感覚を空けてしまいましたがこれから続きを更新します

    次の更新は明日です
  61. 61 : : 2015/01/12(月) 01:31:44

    トロスト区の門が破壊されたことにより街に巨人が入り込んでくる

    住人の避難は駐屯兵団の精鋭が護衛について行うことになり、僕ら訓練兵は駐屯兵団の他の兵士とともに巨人の進行を食い止めることとなった

    ライナー「予想通りだな。運よく俺とベルトルトとアニの班はともに行動することになったし俺らは巨人には近づかないよう程よく距離をとって先遣隊の動向を伺うとしよう」

    ベルトルト「うん。それとライナーが巨人化する時期が鍵だね。マルコの班も共同となるけどもしもその時がきたら僕たちがライナーをうまく一人にするよ」

    アニ「後退の命令が来てローゼの門付近に来た時がいいね」

    ライナー「ああ、たとえ鎧の巨人対策として門が多少強化されていようとも俺が本気でぶち当たれば街と壁をつなぐ門など簡単にぶち破れる」

    アニ「期待してるよ、あんたのその力には。ベルトルトの巨人化が連続で出来ない以上最後はあんたにかかってるしね」

    ライナー「ああ、任せろ。ベルトルトにばかりつらい思いをさせるわけにもいかないからな」

    ベルトルト「・・・ライナー」

    ライナーのこの一言今の僕を励ますものはなかった

    作戦を互いに確認し終えると僕らは一時別れ班員たちのもとへと戻った


  62. 62 : : 2015/01/12(月) 19:12:11

    トリガーを引き建物にアンカーを引っかけガスを噴射させる

    十分進んだと感じるとアンカーを外しワイヤーをすぐに戻して別の建物にすぐさまアンカーを引っかけ、浮いた体の状態と機動による遠心力を生かしてガスの消費量を最低限に抑えて次の機動に移る

    前方に巨人は目視出来ない

    しかし地面に散らばる何人か分の死体はおそろくは中衛部隊のもので一度巨人がここを通り交戦したことを示している

    周囲の状況がわからない僕は一度建物に着地すると付近にあるちょうど良い高さの高台を見つけ、すぐさま立体機動装置を駆使して上り周囲を見渡す

    前方の遠くには巨人が何体もいるものの付近に巨人はいない

    しかしここから東の方向には異様なほど巨人が集まっており、ある建物に群がっている

    あの建物はたしかトロスト区の兵団本部のはずだ

    ライナー「かなり進んだな。おそらくは街の中心まできたんじゃないか。ベルトルト、周囲の状況はどうなっている」

    周囲の状況を確かめ終えると僕の班のみんなやライナー、アニ、マルコの班が追い付いてきた
  63. 63 : : 2015/01/12(月) 19:16:48

    ベルトルト「この付近に巨人はいないよ。奥にはたくさんいるけどね。それと東の方向にかなりの数の巨人がいる。東にある兵団本部に巨人が群がっているよ」

    ライナー「兵団本部か。ここから立体機動で十分かからないほどの距離だな」

    アニ「本部に巨人が群がっているとなると本部は墜ちると考えたほうがいいね」

    ライナー「ああ、そうだな。そう遠くないうちに撤退の合図が聞こえるだろうな」

    ライナーの言葉通り僕らがここに留まって少しすると撤退の鐘の音が聞こえた

    マルコ「ようやく撤退の合図か。だけど僕らには壁に戻るだけのガスはない。一度補給部隊と合流しよう」

    マルコの言う通り僕らはここまで来るのにかなりの量のガスを消費した

    一度補給は受けたい

    だけど、・・・おかしい

    ベルトルト「おかしいんだ。中衛の他の部隊が撤退しない。それに補給部隊の位地がわからないんだ。後方からも支援する部隊が来ない」

    ライナー「なんだと!?俺らにはもう戻るだけのガスはないんだぞ。支援が来ないはずがない」

    アニ「この区域の補給は本部のガス保管室で行われているからもしも本部がもう墜ちていたり放棄されているなら脱出した補給部隊が現区域で動いてる部隊に接触してくるはずだけどね。補給が来なくて巨人が本部に群がっているってことは本部の駐屯兵が迎撃してるけど脱出が遅れているのか迎撃の部隊が全滅して補給隊も出られず籠っているってことかもね」

    マルコ「籠っても逃げ場を失うだけじゃないか。補給を受けられない僕らはどうなるんだ」

    ベルトルト「今は情報が少ない。ここから東にすこしした位地に兵が集まっている。取りあえずそこに行って情報を交換するべきかもしれない」

    僕の言葉にライナーもアニもマルコも班のみんなもどうしようかと一度考え込むが何も言い考えが浮かばなかったので僕らは東の集団に一度合流することとなった
  64. 64 : : 2015/01/12(月) 21:52:49

    本部の見える位置に集まっていたのジャンやサシャを含めた訓練兵のみんなだった

    ジャンに話を聞くにどうやら僕らにガスを渡すはずだった補給隊は巨人の襲撃を受け本部に籠城したらしい

    僕はライナーとアニのもとに行きこれからどうするかについて考えた

    もう壁まで後退するだけのガスは僕らにない

    ライナーがここで巨人化し、この場にいるものをすべて消し、ライナーは巨人のまま門まで行き門を破る

    僕らこの場の人たちからガスを奪い壁まで立体機動装置で戻る

    この作戦がこの状況では最善のように思える

    ライナーやアニも僕と同じことを考えていた

    巨人化するタイミングに関してはライナーに一任することとなった

    しばらく機会をうかがってこの場にいるとコニーの班とアルミンがこの場にきた

    コニーは周囲の人に話を聞きこの状況を必死に理解しようとしている

    それなのにアルミンは絶望に染まった表情を浮かべたままふらふらと歩き回ったと思えば建物を背にして座り込み顔を下に向けている

    アルミンは心ここにあらずといった様子だ

    その様子でアルミンに何があったのかを僕は理解した

  65. 65 : : 2015/01/12(月) 21:55:23

    アルミンはエレンが班長の34班の班員だったはずだ

    それが一人コニーと一緒にここに来て何もせずにあんな表情を浮かべてぼーっとしている



    おそらくはアルミンの班は全滅したのだろう

    エレンの性格からしてたぶん先遣隊に遅れをとるまいと、巨人を狩ろうと中衛にも関わらず先行して巨人と交戦したのだろう

    そしてその戦いでエレン含めアルミン以外の班員は巨人に喰われた

    親友や仲間の死を目の当たりにしたアルミンはそれに絶望した

    迫りくる巨人に対して抵抗できず、アルミンは逃げまどいすんでのところでコニーの班に助けられてここに来たというところだろうか

    アルミン、・・・随分と悲しい目にあったんだね



    同情するよ



    だけど、僕は君に慰めの言葉はかけられない

    なぜなら僕らはこれから君を含めたこの場の全員を殺そうとしているのだから

    アルミンの姿は悲惨なものだったが近づくこともこれ以上見ることもしない




    僕には・・・僕の事情があるのだから


  66. 66 : : 2015/01/13(火) 00:09:43

    コニー「だったら、一か八かそこに群がる巨人をやるしかねえだろ!!」

    コニーの怒鳴り声が聞こえた

    コニー「俺らがここでうだうだやってても同じだ。ここにも巨人が集まる。いたづらに逃げ続けても残り少ないガスを使い果たすだけだ。機動力を失えば本当に終わりだぞ!」

    コニーの言っていることは合っている


    だけど・・・


    ジャン「珍しく頭を使ったなコニー。だが今の俺らの兵力でそんなことができると思うか。前衛の先輩方はほぼ全滅だ。訓練兵の俺らに誰がそんな決死作戦の指揮が取れる。まあ、指揮がとれたところで俺らじゃどうにも出来ねえ。おそらくガス補給室には3、4メートル級の巨人がわんさかいる。当然そんな中での補給活動は不可能だ」

    ジャンの言葉にコニーもようやく状況がわかったのか、だめかな、と項垂れている

    それに対してサシャは無理に明るい声を出してやろうとみんなに声をかけているが誰一人それに反応しない

    みんなジャンの言葉で現状を理解したようだ

    皆アルミンのように表情は暗い

    この状況は彼らにとって詰みに近い



    そろそろ潮時かもしれない



    僕はライナーに視線を向ける

    アニも僕と同じようにライナーの指示を待っている

    アニ「ライナー、どうする」

    ライナー「まだだ、やるなら集まってからだ」

    それは中衛部隊がここに集まってから一掃するということだろうか

  67. 67 : : 2015/01/13(火) 00:11:43

    マルコ「だめだよ、どう考えても僕らはこの街からでられずに全滅だ。死を覚悟してなかったわけではない。でも何のために死ぬんだ」

    僕が考え込んでいるといつの間にか隣にいたマルコが絶望に染まった表情でこの状況の理不尽を嘆いている

    ミカサ、という一人の声に後ろを振り向くとミカサがこちらに向かってくる

    ミカサはたしか駐屯兵団の精鋭とともに後衛にいたはず

    ミカサ「アニ、なんとなく状況は分かっている。そのうえで私情を挟んで申し訳ないけどエレンの班を見なかった?」

    アニ「私は見てないけど。壁を登れた班も」

    ライナー「そういえばあっちにアルミンがいたぞ」

    その言葉にミカサはアルミンのところへとんでいった



    話の途中でアニが目をそむけたのはおそらくミカサが必死になってエレンの生死を尋ねる姿が忍びなかったから・・・



    しばらくしてアルミンが34班がどうなったかを話始めた

    予想通りアルミン以外は全滅したようだ

    泣いているアルミンをミカサは慰めるけどその声は無機質で生気が感じられない

    ミカサは僕らの前に出ると突然僕らが動かないことを非難して決死作戦の先陣をきった



    だけど、おそらくミカサは本当にこの状況をどうにかしたいわけではない


     

    死に場所を求めに行ったのかな・・・ミカサは



  68. 68 : : 2015/01/13(火) 00:12:32

    そんなミカサの言葉に元気づけられたのかジャンは皆に来るように声をかけてミカサの後を追った

    サシャも続き他のみんなもそれに続き始めた

    ライナーに再び視線を向ける

    ライナー「まったく、仕方がねえな」



    僕は驚いた



    どうやらライナーは決死作戦に参加するようだ



    まさかライナーは今“兵士”になっているのか!?



    一瞬焦ったけれども冷静になる

    そんなはずはない

    僕らは今任務中だ

    今まで普通に過ごしているときに“兵士”となることはあったけどこんな時になることはなっかた

    ライナーは何か考えがあってそういっているんだ

    アニもどうやら僕と同じ考えのようだ

    アニと目が合うと無言でうなづく

    そうして僕らは先行したライナーの後を追った

  69. 69 : : 2015/01/13(火) 00:30:43





    本部まで辿り着いた僕らはアルミンの作戦のもと、ガス補給室にいる7体の巨人の殲滅を行うこととなった

    作戦内容はエレベーターに銃を持った者がエレベーターの四方を囲める人数だけ乗り込む

    ゆっくりと補給室までエレベーターを下げ、エレベーターと地面が巨人の頭部の高さくらいになったところで降下を止める

    こちらに気付いた巨人をぎりぎりまで引きつけたのちに一気に巨人の目に銃弾を放つ

    そして視界を失った巨人の背後から天井に潜んでいた7人が巨人のうなじを削ぐ

    アルミンは自信なさげに説明していたが僕は十分勝機のある作戦だと思う

    少なくとも僕は思いつかないと思う・・・こんなに短時間には



    気がかりなのはあの巨人



    本部の外にいる巨人だ

    巨人を襲う巨人なんて聞いたことがない

    それも人を襲わない巨人で、ミカサはその巨人に助けられたと話していた

    奇行種というには行動がおかしすぎる

    考えられるのはあの巨人が人間だということ

    僕らを支援するということは壁内の人間側の巨人という可能性がある



    もしかしたら“座標”に関わりがあるかもしれない



    この作戦が終わったらあの巨人を探らなければならない


  70. 70 : : 2015/01/13(火) 16:18:20

    アルミンの作戦により僕らは巨人の殲滅に成功した

    僕自身巨人のうなじを一撃で削ぐことができたことに少し驚いている

    立体機動装置を使って実際に巨人に攻撃することは初めてだったけど訓練通りの動きができたと思う

    最悪失敗しても僕らはライナーやアニが巨人化して周囲を一掃することができるのでプレッシャーも少なかったのも成功の要因かもしれない

    ガスを補給し終えるとみんなは我先にと外へ飛び出していく

    ライナーやアニと目で合図しあうとあの巨人を様子を見に行った

    ちょうどミカサやアルミン、ジャンもあの巨人を見ていた

    目標の巨人は他の複数の巨人にその体を喰われていて瀕死の状態だった

    ミカサはあの巨人を延命させたいと言い出した

    ジャンは馬鹿げた話しだと否定したけども僕もできれば延命させたい

    他の巨人に喰われてみすみす手がかりを失くすわけにはいかない
  71. 71 : : 2015/01/13(火) 18:57:42

    僕がそんなことを考えているうちに当の巨人はいつの間にか周りにいた巨人を倒してた

    だけどどうやらそれでその巨人は力を使い果たしたようだ

    巨人は倒れてゆっくりと体が消滅していく

    予想通りうなじの部分から誰かが出てきた


    あれは・・・



    えっ・・・まさか・・・



    ミカサが物凄い勢いで巨人のもとへと飛んでいき中から出てきたひとを抱きしめている


    あれは・・・エレンだ


    まさかあの巨人の正体がエレンだったなんて・・・

    一体どういうことなんだ



    なぜ彼が・・・



    疑問が尽きることがなかったがここにずっと留まるわけにも行かずエレンをミカサに背負わせ壁まで僕らは撤退することとなった
  72. 72 : : 2015/01/13(火) 19:28:36



    ライナー「あの巨人の正体がエレンだったとは・・・正直以外だったな」

    ベルトルト「・・・うん」

    ライナー「エレンは一体何者だ?奴は政府側の人間なのか?」

    アニ「あいつがあっち側の人間だなんて考えられないけどね。そういえば不可解なのはエレンはアルミンの前で喰われたとの話だったけどふつう喰われてから巨人化する?本当に死ぬ可能性だってあるのに」

    ライナー「うーむ、たしかにそうだな」

    ベルトルト「・・・もしかするとエレンは自分が巨人化できることを知らなかったのかもしれない」

    ライナー「知らなかった?」

    ベルトルト「うん。エレンは今まで自身の能力に気付いてなく今回喰われたことで無意識に巨人化したかもしれない」

    アニ「・・・ありうるね。それにエレンは巨人の能力を使いこなせてるようには見えなかったし」

    ライナー「ふむ、確かにそう見えたな。だが俺たち以外に巨人化できるやつが、むっ!?何だ!?」

    突然聞こえてきた地面を震わす音

    この音は砲弾が何かに当たった音だ

    音がした方向には黒い煙が昇っていた

  73. 73 : : 2015/01/13(火) 22:24:10

    煙の昇っているそこにあったのは巨人の出来損ないだった

    その周りを対巨人用の大砲や銃を持った兵士が取り囲んでいた

    兵士の集団より少し前にでてる指揮官と思われる男

    あの人は確か駐屯兵団第一師団隊長のキッツ・ヴェールマン

    指揮能力が高くて部下の信頼も厚いって噂だったんだけど今回の作戦で補給隊を見殺し同然で本部に置いて自分たちの部隊でけ壁内に逃げたから評価はガタ落ちしたらしいけど

    一体何があったんだろう

    あっ、巨人の出来損ないの中からアルミンが飛び出してきた

    アルミンは敬礼を行うとエレンは敵でないこととエレンの戦略的価値を説いた

    なるほど状況が読めてきた

    だけど無理だろうね

    必死に助命を訴えてるけど

    どうアルミンが説明しようと保身に走ったあの隊長の考えを変えることはできないよ

    しかし意外にもこの後キッツ隊長は駐屯兵団総司令のピクシス司令に止められエレンの助命が成功することになった

  74. 74 : : 2015/01/14(水) 23:36:38

    ピクシス司令の指揮のもとで僕らはトロスト区の奪還作戦が行われることになった

    作戦の主軸はエレン

    エレンは今まで兵団が密かに研究した巨人化できる人間の成功例とのことだけど・・・たぶん嘘だろうね

    この作戦で僕とライナーは壁近くで囮として巨人を引きつける任務を、アニは巨人化したエレンの付近の巨人を引きつける囮となるという任務を受けた

    ベルトルト「アニ、エレンの様子をしっかり見てきてね」

    アニ「わかったよ。だけど成功して穴が塞がれてもいいの?」

    ライナー「問題ない。エレンは俺らの目標の“座標”である可能性がある。そうでなくても何かしらエレンから敵の情報を得られるだろう。今壁を壊すよりはエレンを探ったほうがいいと俺は考えてる」

    アニ「ベルトルト、あんたは?」

    ベルトルト「僕は迷ってる。ローゼを陥落させれば政府は“座標”の能力を使わざる負えないだろう。世界の崩壊が始まっているからこそ僕は急いでローゼを攻撃した。だけど敵の戦力がどのくらいかは僕らは知らない。僕らにはまだ少しだけ時間がある。エレンを使って敵の出方を探るのも悪くないかもしれない」

    アニ「・・・確かにそうかもしれないね」

    ライナー「敵から“座標”を確実に奪える保障もない今は状況に身をまかせて情報を集めた方が得策だな。・・・アニ、頼んだぞ」

    アニ「任せといて」

    今後の方針を決め終えると僕らは訓練兵の集団へと戻った
  75. 75 : : 2015/01/14(水) 23:53:37

    作戦の成功を知らせる信号団が上がった

    どうやらエレンはうまく巨人の体を制御して穴を塞いだようだ

    しばらくしてアニが帰ってきた

    ベルトルト「お疲れ、アニ」

    アニ「ああ、どうも」

    ライナー「アニ、エレンはどうだった?」

    アニ「ああ。エレンだけど、どうやら本当に自分が巨人化できるってこと今まで知らなかったみたいだよ。それに巨人化もろくに制御出来てなかったし」

    ライナー「よく作戦が成功したな」

    アニ「運が良かったんだろうね。途中でエレンが正気に戻れたのも」

    ベルトルト「・・・」

    トロスト区奪還作戦の成功により翌日、壁外調査から戻ってきた調査兵団と壁内の駐屯兵団、訓練兵団の3兵団によるトロスト区内の巨人の掃討作戦が行われることとなった
  76. 76 : : 2015/01/16(金) 03:26:25


    マルコ「くそっ、こっちだ。こっちに来い!」

    囮となったマルコにうまく巨人が食いついてきた

    ライナー「もらった!」

    マルコを追いかけ無防備に背中を見せる巨人のうなじをライナーが正確に削いだ

    ライナー「ふう、これで2体か。ベルトルト、周囲の状況はどうだ?巨人は近くにいるか?」

    ベルトルト「大丈夫。ここから一番近い巨人も飛んで5分以上はかかる。この区域に巨人はいないよ」

    マルコ「はあ、やっと一息つける」

    ライナー「そうだな」

    担当区域の巨人を殲滅した僕らはほどなくしてこの区域担当の班長から休憩地点まで下がることを許可されガスの補給と次の任務に備えて一度下がることにした

    休憩地点でガスの補給と装備の整備を終えると僕らは任務を指定されるまでのわずかな休息をとっていた

    マルコ「周りを見るとつくづく巨人の恐ろしさを実感させられるよ」

    ベルトルト「・・・そうだね」

    マルコが見ていたのはここにいる負傷者たち

    負傷者たちのなかには体の一部がなくなってる人もいる

  77. 77 : : 2015/01/16(金) 03:26:59

    マルコ「さっきまで巨人と戦ってたと思うとぞっとするよ」

    ライナー「たしかにな。だが、俺らは2体も倒せた。しかも無傷でな。運もあるんだろうが俺たちの力が巨人に通用する」

    ベルトルト「マルコが上手く囮をしてライナーが正確にうなじを削いだことで倒せた。次の任務も同じようにすれば大丈夫だよ」

    マルコ「ベルトルトの索敵能力もあってのことだよ」

    ライナー「そうだな」

    ベルトルト「そうかな。ありがとう」

    ライナー「今ならどんな相手でも俺たちなら倒せる気がする」

    マルコ「はは、ライナーが言うとそんな気がするよ。それにしても今回は鎧の巨人が来なくてよかった。大砲の弾も聞かないんだっけ、噂では。あんなのがこの街にいたら僕らじゃどうしようもないし。超大型巨人も同じようにね」

    ライナー「ふっ、そうでもないぜ。鎧の巨人はたしかに硬いが弱点がないわけではない。手足の関節なんかは硬化できないからな。それに格闘術はそんな得意じゃないしな。あと超大型巨人なんか動きは遅いし、こいつは連続で巨人化できないから防ぐだけならいくらでも手はある」




    ・・・えっ




    マルコ「えっ!?初めて聞いたよ。・・・ライナー、よく知ってるね」
  78. 78 : : 2015/01/16(金) 22:42:27



    ライナー・・・君は何を言ってるんだ



    マルコは明らかにライナーの発言に疑問を抱いてる



    まずい・・・



    ベルトルト「確かにエレンがそういってたね。でもライナー、ちょっと言い方がおかしいよ。僕らは鎧の巨人も超大型巨人も実際に見てないじゃないか」

    ライナー「はあ?ベルトルト、何を言ってるんだ?」

    ベルトルト「少し疲れているようだね。少し休んだらいいと思うよ」

    僕は怪訝な顔をしているライナーにそういって半ば無理矢理仮眠をとらせてマルコにこれ以上ボロを出さないようにした





    ライナー「すまない、ベルトルト。俺は正気ではなかった」

    ベルトルト「・・・うん」

    ライナー「あれでは俺たちが巨人だと言ったようなものだ」

    ベルトルト「ライナー、君は時折ただの訓練兵になっている。でもそれを責めることは僕にもできない。僕もときどき任務のことも世界のこともなかったらどうだったのだろうと考えたことが何度もあるよ」

    ライナー「ああ。だけど俺たちはそうできない。この世界のためにも故郷に帰るためにも」

    ベルトルト「・・・僕らがこれからしなくちゃいけないこと・・・わかるよね」

    ライナー「・・・ああ」

  79. 79 : : 2015/01/16(金) 22:43:48


    ベルトルト「巨人が前方800メートル。二人とも目視できるね。ライナー、マルコ、ひとまずここで止まろう」

    僕らは前方にいる巨人を待ち伏せするため付近の建物の屋根へと着地した

    マルコ「よし、巨人がこちらに気付かずに近づいてきた。いつも通り僕が囮になる。ベルトルト、ライナー後は頼む」

    ベルトルト「・・・うん。マルコにはしっかりと囮になってもらうよ。ライナー」

    ライナー「ああ!」

    マルコ「えっ!?ライナー、こっ、これは一体!?」

    ライナーがマルコの両手を締め羽交い絞めにする

    僕はマルコに近づくとマルコの腰にある立体機動装置を外した

    ライナー「すまないな、マルコ。・・・こうなってしまったのは俺としても本当に残念だ」

    マルコ「なっ、何を言ってるんだ、ライナー」

    ベルトルト「マルコ、・・・さようなら」

    僕のその言葉と同時にライナーがマルコを地面へと放り投げた

    激しい音を立てて落ちたマルコはしばらく身動きが取れないでいた

    マルコにゆっくりと巨人が近づいていく



    ベルトルト「・・・」



    マルコが喰われたのを確認した僕らはその場を去った
  80. 80 : : 2015/01/23(金) 00:41:02





    マルコを殺したこの日、ちょうどトロスト区の巨人の殲滅が完了し全兵団が一度壁内へと下がることとなった

    僕ら訓練兵も長い任務を終え、この日は宿をとり束の間の休息をとることができた

    しかし久々の温かい飯を食えて野宿から解放されたというのに雰囲気は最悪だ

    104期生の半数近くに及ぶ帰らぬ同期を思えばそんな風にもなる

    僕も食事を平らげると身支度をしてすぐに床に就いた

    ライナーとはずっと一緒にいたし共同の部屋も同じだけどまったく話してない

    そんな余裕なんてお互いにないんだ

    作戦中も撤退の際も宿に来るときも飯を食うときも考えることは何もなかった

    だけど仰向けになり暗い天井を見つめている今になってマルコのことを思い出してしまう



    建物から落とされたマルコのあの時の顔



    体が激痛で動けずその間に近づいてくる巨人に気付き絶望したあの顔



    巨人に体を持ち上げられ動けなくなったときに僕とライナーに向けたあの目・・・



    マルコはあの時どう思って僕らを見たんだろうか



    信じていた仲間に裏切られたマルコは巨人に喰われる際に何を考えていたのだろうか

  81. 81 : : 2015/01/27(火) 23:05:19




    夢を見ていた




    自分が夢を見ていると自覚しながら夢を見続けることはたまにある

    僕が見ていたのはずいぶんと昔の出来事の夢だった

    “ネフィリム老師”がいたんだから夢だってすぐわかった

    ネフィリム老師は僕らを救った人だ

    老師が僕やライナー、アニ、マルセルを連れ塔の最上階のさらに上、屋上に連れて来た

    僕らは屋上に来たのは初めてだった

    老師は80階もある塔の最上階から外の様子を見せてくれた

    僕らは驚いた




    外から見えるのは闇だ



    遥か彼方に闇がある



    太陽が雲に覆われたとかそんな話じゃない

    そこは一筋の光も通さぬ闇だ

    そしてどんどん闇は侵食している

    ここからはかなり遠いためにわずかに動いているように見えるけど実際はもっと早いのだろう

    ネフィリム老師は驚く僕らにときが来たら力を与えると言った



  82. 82 : : 2015/01/27(火) 23:05:53





    トロスト区巨人殲滅の作戦が成功した次の日にはトロスト区内の復興を行った

    しかし復興といっても最初にやるのは巨人に喰われた仲間の死体の撤去だった

    巾を口に巻きながら仲間の死体を片付けるのは辛かった

    自分が起こした出来事を再確認することになるのだから

    アニ「ごめんなさい・・・ごめんなさい」

    ライナー「・・・アニ」

    アニが悲しんでる

    自分らがしでかしたことを直接見ることになって辛いんだ

    巨人化して殺した人たちは僕らとは無関係の人たちだったけど僕らが今回殺した人たちは僕らと3年間ともに過ごした人たちなんだ

    勿論3年間で話しをしてない人たちもいるけど3年間顔をあわせればそれなりに愛着も湧いた

    ベルトルト「・・・・・・」

    アニの気持ちは痛いほど解るけど僕は彼女にかける言葉が見つからなかった





  83. 83 : : 2015/01/27(火) 23:06:27





    巨人を2体捕獲したとの報が知らされた

    捕獲された巨人は今、調査兵団所属の分隊長ハンジ・ゾエの主導のもと実験を行ってるとのことだった

    ライナー「捕えられた巨人を始末しよう」

    ベルトルト「本気かいライナー。殺すメリットもそんなにないし足がついたらどうするんだ?」

    ライナー「調査兵団に情報をやるのはあまり良くない。それに足は付かないさ」

    アニ「どういうこと?」

    ライナー「ベルトルトがマルコから奪った立体機動装置がある。これなら犯行後に自分の立体機動装置を使ってすぐ逃げられるし身代わりにマルコのを持ってればガスの消費量や使用跡を調べられても足は付かない。作戦後にマルコの奴にも整備してただろ」

    ベルトルト「確かに目撃者がいなければ特定されないだろうけど・・・」

    ライナー「やるのはアニがいい。アニがこの中では一番立体機動がうまいからな」

    ベルトルト「・・・アニはそれでいいの?」

    アニ「私は別にいいよ」

    ライナー「決まりだな。・・・明日に決行しよう」

    ベルトルト「・・・・・・」





  84. 84 : : 2015/01/27(火) 23:06:53





    次の日の深夜、僕らは捕えられた巨人の排除を行った

    僕が見張りの位地と周囲の状況を確認し安全を確認したところでアニが立体機動装置を使って巨人のいる陣幕の内部に侵入し2体の巨人のうなじを削いだ後、立体機動でその場から脱出する

    ライナーは不測の事態に備えて待機だ

    作戦は予想以上に上手くいった

    見張りの一部が半ば寝ていた状態だったのも幸いし巨人が殺されたのが発覚されたのが僕らが作戦を行ってから随分とあとになってからだった

    調査兵団が主導となって捜査が行われたが本来は憲兵団の仕事のため個人の立体機動装置の使用跡を確認するという簡単な捜査だけにとどまった

    結局犯人の特定が出来なかった調査兵団はこの事件の捜査を憲兵団へと委譲することとなった

    けれども憲兵団は訓練兵が怪しいと考えていた調査兵団の考えとは逆にウォール教などの壁至上主義、巨人排他主義の宗教関係者が怪しいと考え、僕らが捜査の対象となることは少なくなった





  85. 85 : : 2015/01/27(火) 23:07:26


    ライナー「さて、ようやく明日が兵団を決める日だが・・・ベルトルト、アニ、わかってるな」

    ベルトルト「・・・うん」

    アニ「私が憲兵団で、ライナーとベルトルトが調査兵団だよね」

    ライナー「ああその通りだ」

    ライナー「エレンが“座標”の可能性がある以上俺ら三人が憲兵に行くわけにはいかない。俺らがエレンの動向を探り機会が来たらエレンを攫う」

    ベルトルト「壁外調査の時にアニが巨人化してエレンを攫うのが一番いいよ。アニが一番スピードがあるし兵士との戦闘経験もあるしね」

    ライナー「・・・5年前か。俺やベルトルトとは違い壁や門が崩壊した後も残って駐屯兵と戦ってたからな、アニは」

    アニ「・・・そうだね。私がやるよ」

    ライナー「頼むぞ。俺らも出来る限り手助けはする」

    ベルトルト「・・・・・・」


  86. 86 : : 2015/02/01(日) 00:17:13


    調査兵団団長のエルヴィン・スミスが僕らの前で演説をしている


    それは勿論僕ら訓練兵に対する兵団への勧誘に他ならないわけで初めは彼の言葉を半ば聞き流すつもりでいた

    しかし彼が壇上に立つ姿は実に威風堂々としていて演説で放つ彼の言葉の一つ一つが重い

    どれだけの修羅場をこの男が潜り抜けてきたんだろうかは僕にはわからないがきっと並々ならぬものに違いない

    そしてしばらく話した後話はエレンの話に移った


    エルヴィン「今回の襲撃で失ったものは大きいがこれまでにないほど人類は勝利へと全身した。それは周知の通りエレン・イェーガーの存在だ。彼と諸君らの活躍で巨人の侵攻は阻止され我々は巨人の招待にたどり着く術を獲得した」

    エルヴィン「彼に関してはまだ話せることは少ない。だが間違いなく我々の見方であり命がけの働きでそれを証明している」

    エルヴィン「そして彼の生家があるシガンシナ区の地下室には誰も知らない巨人のなぞがあるとされている」




    ・・・地下室?


    何だそれは・・・


    ライナー「地下室だと・・・」

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稀なグータ民

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