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この作品は執筆を終了しています。

クリスマスにサンタクロース(シュウ)

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  1. 1 : : 2014/03/15(土) 00:51:10
    今回、私が執筆を行いましたこちらの作品『クリスマスにサンタクロース』は、 【進撃SS作家陣による制限SS執筆大会!】というグループにて開催された『制限付きSS投稿企画』へ向けて執筆した作品となります。


    今回の制限内容は『題名(タイトル)縛り』で、指定は『クリスマスにサンタクロース』となっております。


    こちらのグループに詳細が記載されてありますので、
    詳しく知りたい人や興味がある方、また他の参加者の作品を閲覧したいという方がいらっしゃいましたら、以下のURLからご覧になってください。


    http://www.ssnote.net/link?q=http://www.ssnote.net/groups/132
  2. 2 : : 2014/03/15(土) 00:53:09




    We wish you a MerryCristmas.


    We wish you a MerryCristmas...








    「クリスマスは、苦しみます・・・か。」



    机に向かいながら、もうすっかり冷えてしまったコーヒーを啜る。


    今年の冬は例年よりも冷えると聞いた。





    窓の外を眺めると、みんな背を丸め、小さくなって道を歩いている。


    窓に映る自分の口元からは吐息が白い煙となって現れる。




    ・・・今夜は雪が降るかもしれない。




    節約をしろ、と団員に呼びかけている手前、暖房を充分につけてはいられない。


    団服の下に沢山着込んではいるが、それでも寒い。


    膝に毛布をかけて寒さをしのぐ。





    この執務室に独りでいると、様々な思い出が蘇る。




    良いことも



    そして、



    思い出したくないことも。








    額縁に飾ってある写真を眺める。



    配属先が決まった後に撮った、仲間との写真。



    ・・・今、この写真に写っている仲間で生きているのは片手で足りるほど。



    それぞれが妻をもち、家庭をもった。






    私は・・・。





    もう一度、窓の外を見る。



    暗闇に朧げながら見えてくる、50mの壁。



    夜にも関わらずその輪郭が見えるのは、他ならぬ街の光のためだ。






    今宵はクリスマス。




    食事は質素でも。お酒はわずかでも。


    あの足音に怯えていても。





    この日だけは希望がいつも溢れてる。


    この日だけは優しさに包まれている。



    この日だけは・・・



    愛する人を想っても咎められはしない。







    「・・・ふっ。」


    鼻で笑う。


    自嘲。






    何を言っているのか・・・。


    そんなものは、この写真を撮る時に、とうに捨てた筈だったではないか・・・。








    コンコン



    扉がノックされる。





    「どうぞ。」




    「失礼します。」



    心臓を捧げる敬礼。




    「エルヴィン団長。定刻となりましたので、所定の場所までご案内します。」




    「ご苦労様。よろしく頼むよ。」




    若き団員は、歯切れのよい返事でそれに応えた。






    ・・・今夜は市長との会談が控えていた。



  3. 3 : : 2014/03/15(土) 00:54:18

    ・・・




    馬車に揺られながら、小窓から街を眺める。



    道行く人の顔には、笑顔・・・笑顔・・・笑顔・・・。


    いつも閑古鳥が鳴いているようなお店にも人だかりができている。




    幸せが溢れる街。





    その中を馬車が一台駆けていく。





    轡を握る彼の背中に、


    「すまないね。こんな日に仕事を頼んでしまって。」



    そう私は話しかけた。





    「いえいえ。私が好きで入った団なわけですし。それに・・・。」



    「昨日はお休みをもらいましたから。」


    そう言って恥ずかしそうに笑う。




    「そうか・・・。」



    少し、気が楽になった。


    団員にまで私と同じ思いはさせたくなかった。




    やがて馬車が止まる。


    「エルヴィン団長、着きました。」


    そう言って馬を降り、扉を開けてくれる。




    「今夜は冷えるから、こんな寒空の下で待たなくていい。近くの店にでも入って暖をとっていなさい。」


    「いや、しかし・・・!」


    「団長命令だよ。」



    そう言い残し、私は市長の私邸に入っていった。









    飾り気のない部屋に座って市長を待つ。





    「失礼・・・。」



    ノックもせず市長は入ってくる。


    軽い会釈をした後、資料を渡す。




    「・・・こんな日に君と話をするなんて憂鬱だよ。」



    「初めて私と意見が一致しましたね。」





    互いに視線が交錯する。




    「・・・手短に済まそう。」




    「はい。」


    「ではまず、こちらの内容についてですが・・・」





    ・・・ ・・・


    ・・・








    通りに面した店が次々に店仕舞いをしていく。


    大通りの往来も寂しい。


    私邸の一室を見上げると、そこだけ明かりがついている。




    「団長・・・。」


    彼はそう呟き、かじかんだ手を吐息で暖めた。






    ・・・




    「・・・以上です。」


    散らばった資料を集め、机でトントンと底を揃える。



    「・・・商人どもが喜ぶよ。彼らにとっては金が流れてくれれば何でもいいのだから。だが・・・」

    「その税を扱う、我々の気持ちも少しは分かってくれるとありがたいがね。」

    「ま、話は通してみるよ。」




    「ありがとうございます。」



    そう言って席を立つ。




    「・・・随分と団服の下が膨らんでいるようだが・・・、それは筋肉かね?」





    「・・・。」





    「外ばかり見ている奴らは気が楽でいいな。私なんぞは、肉をつけたくてもつかないよ。」




    「・・・失礼します。」



    一秒でも、この場所に長居したくなかった。







    私邸を出ると、団員が敬礼で迎えてくれた。



    「・・・お店で待っていろ、と命じたはずだが?」



    「命令違反をしました。お咎めはいくらでも受けます。」



    胸に置いている拳を見る。


    拳は真っ赤になっていた。




    「・・・もう充分だ。早く馬を出しなさい。」


    「はっ!」




    彼は颯爽と馬に乗る。





    馬車が動き始めた時、たまらなく胸がいっぱいになる。


    目頭に集まる感情を私は頭を振ってごまかした。

  4. 4 : : 2014/03/15(土) 00:54:55
    ・・・



    自室に戻る。



    彼には「時間だから」と言って、家に帰した。




    市長から質問されたことと、会談中に気づいた隊列の穴を修正すべく私は筆を手にとった。







    街の光が一つ・・・また一つと消えていく。


    窓越しでもそれがわかるほどに・・・。






    この部屋にあるのは、紙に筆を走らせる音と、時計のチクタクと時を刻む音だけ。




    いつもの習慣で机の端にある燭台を手元に寄せる。





    まもなく全館消灯の時間。


    全ての明かりが消える時間は時計を見なくても体が覚えてしまっていた。





    3・・・



    2・・・



    1・・・




    ・・・




    ・・・






    辺りが暗闇に包まれる。




    その中にポツンと浮かび上がるマッチの炎。




    最初は一つだけだったのが、燭台の蝋燭に次々と灯されていく。



    微かな炎が集まって、花のような明るさになる。






    ゴーン・・・ゴーン・・・



    教会の鐘が鳴る。





    まもなく今日が終わる。




    椅子に座り、続きを始める。









    ・・・筆の走りが悪い。



    目を凝らしてみると先が潰れている。



    使い続けた万年筆も寿命を迎えたようだ。



    引き出しを開けて換えを出そうとした。






    ・・・。



    机の中に見慣れぬものが入っている。



    引き出しを目一杯前に広げる。



    あるのは、写真と蝋燭とケーキと・・・



    ・・・手紙。





    手にとって手紙を開く。
















    『 団長へ


      いつもはあなたの下で、橇を走らせているトナカイ役の僕たち。


      でも今宵はクリスマス。

      
      トナカイは、クリスマスにサンタクロースとなって、あなたにささやかなプレゼントをいたします。


      メリークリスマス。そして良い年を。



      
      

      
      追伸 疲れた時には甘いものがいいと聞きます。街でも評判のあの店から仕入れてきました。

         大事に食べてくださいね。  』









    名前の欄には『リヴァイ』と書いてあるが、その上に二重線が引かれ、横に『ハンジ』と乱雑に書かれてあった。




    写真を見るとサンタクロースの赤い帽子を被った団員たちの姿。



    中央には今年、訓練兵から卒団したばかりの104期生の笑顔。





    クリームを指でとり、口に入れる。


    「・・・甘い。」




    口元が緩む。




    ふと、窓を見る。


    外が白んでいる。




    窓を開けるとしんしんと雪が降っていた。




    この雪の中を団員たちは楽しげに過ごしてくれている。



    そう思うと嬉しかった。






    ふと、想い人の笑顔が思い浮かぶ。



    彼女の住まいの方を向く。



    そして、




    「・・・メリークリスマス。」


    空に向かって優しくそう呟いた。






    カラーン・・・カラーン・・・



    12時を告げる鐘が鳴る。




    その鐘が鳴り止むまで、私はクリスマスの余韻をいつまでも、いつまでも感じ続けた。



                                              ― Fin ―







  5. 5 : : 2014/03/15(土) 01:11:04
    シュウさん最高です!!
    もう最高です!文章が素晴らしい!!
    リヴァイ兵長とハンジさんのやり取りが凄く好きです!!イベント万歳ですね!!
  6. 6 : : 2014/03/15(土) 01:30:27
    うわぁぁ!!
    わたしの大好きなエルヴィンを、シュウさんが書いてくれるだけではあきたらず、こんなに素敵に、こんなに切なく…
    目頭が熱くなりました…
    素敵なエルヴィンをありがとうございます♪
  7. 7 : : 2014/03/15(土) 01:58:45
    マリンさんの作品読んでからこれを見たら、またもや大泣きしてしまいました


    素敵な作品をありがとうございましたっ!
  8. 8 : : 2014/03/15(土) 02:27:30
    今まで団長主役のSSは、あまり見かけませんでしたが、団長の部下を想う気持ちや部下たちの団長への敬意、愛情がひしひしと伝わってきた素晴らしい作品でした!

    思わず手を口に当てて感極まってしまいましたよ!
  9. 9 : : 2014/03/15(土) 02:45:47
    おつかれさまでした〜!
    シュウさんの物語全てに言えることですが、なにか読み手を引き込むような雰囲気がありますね。
    それがこの作品には特に顕著にあらわれてるなあと感じました。わたしも見習いたい…!
    短いストーリーの中に、団長と団員たちの信頼関係が間接的に描写されていて、エルヴィンの表情が手に取るように見えてくるようでした。
    素敵な作品でした。ありがとうございました☻
  10. 10 : : 2014/03/15(土) 03:24:49
    素敵です!
    団長の熱い想い!団員たちの想い!
    どちらもがサンタさんであり、素敵な贈り物をしあっている構図が手に取るようにわかりますね!策士は人望を得ずと言いますが、天才策士のエルヴィンが団員から信頼される裏にはこういう思いがあったのかと納得させられました^ ^変に重厚すぎず、読みやすい文体で満足感がある、シュウさんらしいSSでした!楽しませていただきました(≧∇≦)
  11. 11 : : 2014/03/15(土) 08:16:41
    たったの3レスなのにこれだけ深みを持たせるとは・・・凄過ぎです!
    短い中にも起承転結がしっかりしていて、勉強になりましたよ〜(∩´∀`)

    外で待っていた部下の姿や、引き出しの中にケーキと共に入っていた手紙と写真から団長への信頼を感じ、

    逆に団員達がどんな風に過ごしているのか思いを馳せらせる団長の姿からは、いつもは見せる事の無い部下を大切に想う気持ちを汲み取る事ができて素敵でした(๑′ᴗ‵๑)

    執筆お疲れ様でした!
  12. 12 : : 2014/03/15(土) 23:32:12
    コメントが遅くなって大変申し訳ありませんでした(>_<)


    >>5 EreAniさんへ
    いの一番のコメントありがとうございました!
    あの一文でハンジたちのドタバタを想像して欲しかったので、とても嬉しいです!


    >>6 88さんへ
    私自身、エルヴィン団長をメインに据えた作品は初めてだったので、88さんのお眼鏡にかなってとても安心しました。
    理想の上司ですよね〜♪( ´▽`)

    >>7Aniっちさんへ
    ありがとうございます!
    マリンさんの作品はまさしく、団長がそうあって欲しいと願っていたような団員達の光景でしたからね(≧∇≦)
    作品がリンクしていてとても想像の幅が広がりました。
    私でも涙腺にくるような作品が書ける、ということが分かって嬉しいですよ(>_<)

    >>8ミロさんへ
    ミロさんに感極まった、と言ってもらえるなんて光栄ですよ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
    団長と団員の心が通いあう様子を感じていただけて嬉しいです!

    >>9マリンさんへ
    マリンさんに見習われるなんて、めっちゃプレッシャーを感じるくらい嬉しいです!
    やはり読んでいただいての作品なので、引き込まれる力がある、と仰っていただけるとすごく自信になりますよo(^▽^)o

    >>10店員さんへ
    お互いに気持ちを送りあっている様子を感じていただけてとても嬉しいです!
    単なる人気取りではなく、まごころで団長が接しているからこその信頼なのかな、と、思い筆をとりました。
    素敵な作品と仰っていただけてありがたいです(>_<)

    >>11ゆきさんへ
    何度も申しあげていますが、今回の企画を始めグループの運営、コメントなど心配りをしていただき誠にありがとうございました。
    今まではだいぶ長めの作品だったので今回はどれだけ短いなかに物語としての要素を成立させるかを試してみました。
    参考になったならばとてもありがたいことです!
    お疲れ様でしたm(._.)m
  13. 13 : : 2014/03/19(水) 23:10:31
    SSにコメント戴き、ありがとうございます。

    拝読させて戴きました!
    原作では冷徹さが強調されがちな団長の、人間味あふれる部分が描かれていてとてもよかったです^^
    表現に関しては、行間を広めに取ってあるのと、言葉が多くは無いのが、作品世界の静寂と、時間の流れが緩やかであることを効果的に表しているなあ、と感じました。
    私は文が長くなりがちなので、羨ましい限りです。

    『制限付きSS投稿企画』なるものがあるのですね!そうしたお題に沿って書くのも面白いですね♪

    次回作も心待ちにしております。
  14. 14 : : 2014/03/19(水) 23:23:08
    あら!泪飴さん、ありがとうございます!(≧∇≦)


    私がはじめてSSを投稿した際に、一番最初に応援のコメントをいただいた、ゆきさんのグループの企画なのですよ(*´∀`*)


    私はどうしても動きのある作品が描けなくて、静かな作品になってしまうので、泪飴さんの躍動感のある作品は素晴らしいな、と思います。


    私も別の作品はかなり長い文を書いたりしています( ̄▽ ̄;)
    今回は「短編」に挑んだのでこのような文になりました。


    私も泪飴さんの続き、お待ちしてます♪

    ありがとうございましたm(_ _)m

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