このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
人類最後の二人
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- 1 : 2014/03/09(日) 15:30:04 :
- カップリングはジャンミカです。ミカサ視点で話を書きます。
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- 2 : 2014/03/09(日) 15:38:51 :
- ー人類滅亡、六日前ー
私はウォールシーナの壁上に座っていた。日没が近付いており、壁を美しい夕陽の光が照らしていた。そんな壁外の景色とは裏腹に、壁内では絶望が漂っていた。
先日、鎧の巨人と超大型巨人がウォールローゼを破り、人類の活動領域は、最後の壁、ウォールシーナのみとなってしまっていた。ウォールローゼの住民は地下都市で生活をしていたが、食糧の不足から、いつ暴動が起きてもおかしくない状況だ。
その上、鎧の巨人と超大型巨人がいつこのウォールシーナを破ってくるか分からない状況だ。こうなってしまえば誰もが絶望するしかなかった。人類滅亡へのカウントダウンはあと1になってしまっていたのだ。
でも、それは私にはどうでも良いことだった。エレンを失った私には...
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- 3 : 2014/03/09(日) 15:51:34 :
- エレンが死んだのは十日前の事だ。死因は刺殺だった。エレンを危険視する憲兵によって殺されたのだ。人類を勝利に導く可能性を秘めた英雄の死としては、あまりにあっけないものだった。
それから三日後、ウォールローゼに故郷に戻ったはずのライナーとベルトルトがやってきた。俗に言う鎧の巨人と超大型巨人だ。
彼らの当初の目的は人類への攻撃ではなく交渉だった。エレンを自分たちに差し出せば、人類への攻撃を止めるというものだった。しかし、エレンは既に死んでいた。私達はその事実を隠し通そうとした。でも、無駄だった。
訓練兵時代からエレンを知る彼らを変装でごまかすことも出来ず、彼らにエレンの死を気付かせてしまった。その事実を知った彼らは巨人化し、ウォールローゼの壁を破った。
エレンは人類を守る砦であったのだ。
そして、私は今ウォールシーナの壁上にいる。エレンのもとへ行くために。
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- 4 : 2014/03/09(日) 15:55:19 :
- 期待!
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- 5 : 2014/03/09(日) 16:45:07 :
- >>4さん、ありがとうございます
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- 6 : 2014/03/09(日) 16:45:16 :
- 私はエレンが死んでからすぐに死のうと思った訳ではなかった。いや、最初は死のうと思った。でもその時はすぐに考えを変えた。エレンは私が死ぬことなど望んでない。そう思ったからだ。
しかし、エレンが死んでからの十日間、私は生きているのが辛かった。歩くことも、話すことも、食べることも、息をすることさえも私にとっては面倒な作業になっていた。
私は気付いてしまった。自分がエレン無しでは生きていけないことを。エレンを守るためにしか生き甲斐を感じられないことを。
人類滅亡の危機に自ら死を選ぶという選択は、みんなに申し訳ないとも思った。正直な話、私を失うことは人類にとって大損失になるだろう。でも、私は死を選んだ。エレンのもとへ行くことを選んだのだ。
私は立ち上がった。壁から飛び降りるためだ。これでこの世界とはお別れかと思うと寂しい気もしたが、特に飛び降りることに躊躇はなかった。
そして、足を前に出そうとしたその時。
「ミカサ、こんなところで何やってんだ?」
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- 7 : 2014/03/09(日) 16:58:03 :
- 「...ジャン。」
私の足を止めたのは、ジャンだった。
「風に当たっていただけ。それに、夕陽も綺麗だったから。」
「嘘をつくなよ。お前、死のうとしてたろ。」
どうやら、同期であるジャンには私の自殺願望は気付かれてしまっていたらしい。もしかしたら、誰が見ても私が死のうとしていることはばればれだったかもしれない。それほど、私は衰弱していたのだろう。
「ええ、そうよ。」
今度はジャンの問いに、正直に答えた。
「何でだ?」
「そんなの当たり前、エレンのもとへ行くため。」
「あいつがそんなこと望んでると思うか?」
「いいえ、思わない。でも、私は、エレンのためにしか生きていくことが出来ないことに気付いてしまった。ので、私は死ぬ。」
「これから自分の為に生きていくことは出来ないのか?」
「出来ない。」
「なら、他人の為にしか生きていけないってことか?」
「ええ。」
「なら、俺のために生きてくれねぇか?」
告白とも取られかねない言葉を口に出したジャンは、頬を赤らめていた。
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- 8 : 2014/03/09(日) 17:49:14 :
- ジャンが私に好意を持っていることは知っていた。とは言っても私がそれを知ったのはつい最近、アルミンに言われてだ。アルミンの話だとジャンは訓練兵団入団当初から私に片思いをしていたらしい。しかし、私はこう答えた。
「それは出来ない。」
ジャンを傷付けるつもりはない。ただ本心を言った。
「...俺のこと、嫌いか?」
「嫌いじゃない。でも、好きでもない。あなたの兵士としての、特に指揮官としての力量は評価している。ただ、エレンに反抗的だったから、良い印象は持ってない。」
「はっきり言うじゃねぇか。」
そう言ったジャンは少し落ち込んでいた。
「勘違いしないでほしい、私はあなたが好きじゃないからあなたの為に生きられない訳じゃない。生きる気力を失っていることに気付いてから、今となっては唯一の幼なじみであるアルミンの為に生きようと考えたこともあった。でも、ダメだった。さっき他人の為にしか生きられないと言ったけど、その対象はエレン以外はダメらしい。」
「分かったよ。だけど一回宿舎に戻ろうぜ。死ぬのなんていつでも出来るだろ。」
「いやだ。」
「死のうとしてた事が知られたくないんなら秘密にしといてやるよ。ほら、帰るぞ。」
「私は帰らない。」
そう言って私は壁上から身を投げた。
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- 9 : 2014/03/09(日) 17:58:29 :
- ジャンの前で死ぬことには抵抗があった。彼に私の自殺を止められなかったと言う罪悪感を背負わせてしまうからだ。それでも私が身を投げた理由。それは今死ねなければ二度と死ねない気がしたからだ。
自殺という選択。これは覚悟のいる決断だった。生きることに未練があるわけではない。死ぬことに恐怖があるわけでもない。しかし、死を拒む生物の本能からか、なかなか死のうとすることが出来ないでいた。それでも意を決してここまで来たのだ。もしここで宿舎に戻ったら、自殺を決断することが出来なくなる。そう思った。
壁上から身を投げた私は少し落下した後地面にぶつかる前に意識を失った。高いところから落ちたとき、人間はぶつかる前に意識を失うと聞いたことがあったが本当だったようだ。
遠くから、立体機動の音が聞こえてきた。しかし、私にはそんなことはどうでも良かった。
そして、私の意識は闇へと沈んだ。
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- 10 : 2014/03/09(日) 19:05:03 :
- 私は意識を取り戻した。どうやら死後の世界は本当にあるようだ。そして、目を開けた。
私が見たのは、いつもの調査兵団の宿舎だった。
「やっと起きたか。」
その声の主はジャンだった。
「どういうこと?私は死んだはず。」
「立体機動で助けたんだよ。それにしても俺の前で自殺しようとするなんてお前はよっぽど俺を苦しめたいらしいな。」
「そんなつもりは...」
私はそれ以上言うのをやめた。事実、ジャンが苦しむのを承知で飛び降りたからだ。
「なあ。本当にお前は死ぬしかないのか?」
「ええ。次はあなたに迷惑をかけないようにしよう。」
ジャンはとても悩んでいるようだった。悩みの内容は、大方察しがつく。ジャンが私を生かそうとしていることは、単純に嬉しかった。それでも、私に生きようとする意志が宿る気配はなかったが。
「なら、敵討ちをしないか?」
ジャンが言った。突然の事に私は少し驚いた。
「一体、誰に?」
「決まってんだろ。エレンを殺した憲兵にだよ。」
エレンを殺したその憲兵は、牢屋に捕らえられていた。懲役年数は、3年。彼の刑は殺人としてはあまりにも軽いものだった。その原因は、憲兵団側の圧力だ。
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- 11 : 2014/03/09(日) 19:20:42 :
- 「でも、どうやって?彼は刑務所の中。殺しにいくことは出来ない。」
「俺に考えがある。アルミン程立派な作戦じゃないけどな。で、どうする。やるのか?やらないのか?」
私はその問いに「やる」と答えた。彼が敵討ちを提案した理由は分かっていた。当分の私の生きる理由を作るためだ。しかし私は、分かっていても彼の提案に応じた。理由は実際に、エレンを殺した憲兵に恨みがあったこと。そして、私を生かそうと必死に案を凝らしたジャンに応えようと思ったことだ。
その後、ジャンは作戦内容を私に告げた。作戦内容は明日、ジャンが憲兵に賄賂を送って刑務所内に入り、鍵の型を造り、次の日の夜、その鍵を使って忍び込んで例の憲兵を殺すというものだ。単純ではあったが、ベストな作戦だと思った。因みに、ジャンはもう少しゆっくり進めたかったらしいが、私がそれを急かした。長引かせればそれだけ死ねなくなると思ったからだ。
最後に予想の量刑を聞いた。ジャンの見立てでは懲役20年。死刑になることはまずないらしい。理由は、動機があること、それが殺人罪の本来の量刑であることからだった。
死刑にならない。それを聞いて私は安堵した。私自身は死刑で構わないのだが、ジャンまで死刑になるのは心が痛むからだ。最も、そうでなくてもジャンを巻き込んでいるのもまた事実であった。
それから、私は床についた。相変わらず寝苦しかった。
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- 12 : 2014/03/09(日) 20:43:26 :
- ー人類滅亡、五日前ー
敵討ちの計画をたてた次の日、私はアルミンと街に出かけていた。ジャンが刑務所に潜入している間、私が変な気を起こさないようにとアルミンに頼んだらしい。もちろん、敵討ちの計画については伏せてある。
アルミンとの街歩きの間、私は時間が経つのが今までで一番遅く感じた。そんなにも退屈だったのだろうか。それとも、自分が死を望んでいるからなのだろうか。
アルミンは私に、積極的に話しかけてきてくれた。私に気を使ってくれているようで、その事はやはり、嬉しかった。しかし、アルミンは過去の話をしなかった。いや、避けていた。私にエレンの事を思い出させない為なのだろう。そこで、私はエレンの話をしてみることにした。
「エレンが死んでから、十一日が経った。」
「...そうだね。」
そう答えるアルミンの表情は暗かった。
「だけど、くよくよしてもいられないよ。僕達は、最後の壁を守り抜かなければいけないんだ。」
アルミンはそう言ったが、それは本心からではないことは私にも分かった。鎧の巨人、超大型巨人をエレンなしで退けることはできない。その事は、私よりもアルミンの方が良く理解していることだった。
そして、私は自分の自殺願望を打ち明ける事にした。アルミンには伝えておくべきだと思ったからだ。
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- 13 : 2014/03/09(日) 20:55:04 :
- 「アルミン、聞いて。実は私は、死にたいと思っている。」
私の突然の告白に、アルミンは驚いた。しかし、驚いたのは告白という行為のみにであって、その内容には驚いていないように思えた。ジャンが気付いたのだ、幼なじみのアルミンが気付かないはずがない。
「何てこと言うんだ!」
アルミンは私に怒鳴った。
「エレンがそんなこと望んでるはずないだろ!」
「分かっている。でも、エレンが死んでから、私は生きることが辛いものになっていた。どうやら私はエレンのためにしか生きていけないようだ。」
「なら、僕のために生きてはくれないの?」
アルミンもまた、ジャンと同じ事を言った。二人とも本当に私の事を思ってくれているからこそ、同じような発言をしたのだろう。しかし、違うところもあった。それは、私との関係の違いから出たものであった。
ジャンの発言は、好きな女性へと向けたものだった。だから頬を赤らめていた訳だが、アルミンのそれは家族へと向けたものだった。アルミンの大きな目は真っ直ぐに私を見つめていた。それでも、私の答えは変わらない。
「それは出来ない。」
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- 14 : 2014/03/09(日) 21:51:46 :
- 「僕じゃダメなの?」
「あなただからダメなのではない。ただ、私はエレンを守ることでしか生きていけない。それだけの事。」
「じゃあ、それとは別に一つ質問していいかな?」
「ええ。」
「ミカサ、僕と街を歩くの退屈だったでしょ?」
「何故。」
「顔を見れば分かるよ、ずっと退屈そうな顔をしてたもん。」
退屈だったことまで顔に出ていたとは。私はとことんポーカーフェイスが苦手なようだ。
「僕と一緒じゃつまらない?」
「違う。アルミンと居るのが退屈な訳ではない。むしろ、アルミンといるときは安心できる。ただ、今の私にとって生きることそのものが退屈になってしまった。だから、決してアルミンが悪い訳ではない。」
「やっぱり僕一人じゃミカサを楽しませられないんだね...」
そう言ったアルミンの目は潤んでいた。
「何で、僕達を置いて死んじゃったんだよ...エレン。」
彼がポツリとつぶやいた。エレンの死にショックを受けたのは私だけではない。アルミンだってそうだ。その事を忘れて私は無責任な事を言ってしまった。そのことを私は反省した。それでも、私の自殺願望は消えなかった。私はなんて利己的な女なのだろうと内心自分に憤った。
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- 15 : 2014/03/09(日) 22:09:04 :
- このやり取りの後、私達は宿舎へと向かった。宿舎では食事が出された。私は、明日の敵討ちに備えてそれを食べることにした。アルミンは、敵討ち等知らずにその姿を見て安堵していた。
それから私は、することも無かったので部屋に戻った。小一時間程してから、誰かがドアをノックした。
「俺だ。開けてくれ。」
声の主はジャンだった。私はドアを開けた。
「ちゃんと生きててホッとしたぜ。あ、これが例の鍵の型だ。」
彼の右手には鍵の型をした石膏が握られていた。
「それだけの物を良く入手出来た。」
「憲兵の奴等なんざ、賄賂を送れば簡単だったぜ。全く、簡単な奴等だったよ。もうすぐ人類が滅亡するかもしれねぇってのに、何であそこまで金を欲しがるんだろうな。」
「さぁ。」
「とにかく作戦決行は夜だ。それまでまぁ、何て言うか...元気でな。」
「ええ。」
彼は私の部屋を出ていった。私は明日の計画が成功するか、少し緊張していた。それは、エレンが死んでから、忘れていた感情だった。それを思い出させてくれたジャンに、私は感謝したいと思った。
その後はこれと言って特別なことは無く、私は床についた。なかなか眠れなかったが、昨日とは違い、ぐっすり眠れた。
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- 16 : 2014/03/09(日) 22:21:47 :
- 期待です☆
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- 17 : 2014/03/09(日) 23:22:08 :
- >>16
壇ノ浦さん、期待ありがとうございます。
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- 18 : 2014/03/09(日) 23:22:20 :
- ー人類滅亡、四日前ー
「おい、起きろミカサ!」
ジャンが私を起こしに来たようだ。しかし、何故だろう。
「入っていいか?」
「どうぞ。」
私がそう言うと、ジャンが部屋に入ってきた。
「何故私を起こしに来たの?作戦は夜からのはず。」
「鍵職人の所に行くのについてきてもらおうと思ってな。どうせここにいてもやることないだろ。それに、作戦会議とかもしたいしな。俺と二人で出かけるのが嫌なら無理にとは言わねぇが...」
確かに、ジャンの言う通り、私は夜まで何もすることはなかった。
「分かった。ついていこう。」
「よし。なら着替えたら玄関に来てくれ。私服に着替えろよ。」
「どうして?」
「兵士の服来ていったら目立つだろ。どうせ捕まるけど、簡単に捕まるのもつまんねぇだろ。」
「...そうね。」
「納得してくれたみたいだな。なら、玄関で待ってるぜ。」
ジャンは部屋を出た。私はそれからすぐに着替えを始めた。久しぶりの私服だったので、いつもより少し時間がかかった。
着替え終わると私は、玄関へと向かった。
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- 19 : 2014/03/09(日) 23:56:35 :
- 「来たか。」
玄関にはジャンが既に到着していた。
「行こうぜ。」
「待って。その...ジャン、ありがとう。 」
私は昨日抱いたジャンへの感謝の気持ちを口にした。
「え...嬉しいけど...俺がなんかしたか?」
「私は今、人生の最後を楽しむことができている。それは、ジャンのお陰。」
「人生の最後って言われると何か複雑だな...まぁ、こちらこそありがとよ。とにかく行こうぜ。」
私達は鍵職人のもとへと向かった。その道中、私達は今夜の作戦について話し合った。とは言っても、作戦と言えるようなものはほとんど無く、ただの段取りの確認のようなものだった。
「あ、もう着いちまった。」
私達はいつの間にか、鍵職人の工房の前まで来ていた。その時の感想は私もジャンと同じようなものだった。それほど今夜の作戦が楽しみなのだろうか。アルミンとの会話のときのように退屈を感じることはなかった。それにしても、人殺しの作戦を楽しみにする自分に、少し引いた。
「すいません。造ってほしい鍵があるんですけど。」
ジャンが鍵職人を呼んだ。すると、白い髭を生やした老人が現れた。
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- 20 : 2014/03/09(日) 23:56:56 :
- 今日はここまでです。
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- 21 : 2014/03/10(月) 01:05:31 :
- バッドエンド?
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- 22 : 2014/03/10(月) 19:49:47 :
- >>21
なんとも言えないです。題名や話の中から察してくれればありがたいです。
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- 23 : 2014/03/10(月) 19:49:58 :
- 「この型の鍵を造ってほしいんですが。」
「どれどれ。」
鍵職人は慣れた手つきでその型を観察した。途中、鍵職人が笑みを浮かべたように見えたが、理由が思い当たらないので、取り敢えず気にしないことにした。
「なかなか良い型ですな。こちらとしても助かります。」
さっきの笑みの理由はこれだったのかと、自分の中で納得した。
「完成まで、どれくらいかかりますか?」
「六時間と言ったところですな。」
六時間...つまり完成予定は午後の五時。作戦に支障は出ない時間だ。
「分かりました。お願いします。」
「では、六時間後、取りに来てください。」
「はい。」
そう言ってジャンは工房を後にした。私もそれに従った。私達が工房を後にするとき、またしても鍵職人は笑みを浮かべていた。不気味ではあったが、それ以上詮索するのはやめた。職人と言うのは、我々が理解出来ない生き物なのだと、自分に言い聞かせた。
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- 24 : 2014/03/10(月) 20:06:53 :
- 鍵職人の工房を後にした私達は、昼食を兼ね、喫茶店を訪れた。喫茶店の中の雰囲気は、明らかに異常なものだった。
喫茶店とは優雅な時間を過ごすためにある、と私は思っている。しかし、その時来店していた客の目的は、現実逃避であると感じた。いつ自分が死ぬと分からない状況だ。誰だってそうなる。
私は、窓側の席に、ジャンと向かい合うかたちで座った。それぞれスープとパンを注文し、先程の作戦会議の続きをした。またしても、大した内容にはならなかったが、退屈にはならなかった。
スープとパンが運ばれてきた頃、作戦会議が終わった。これから何を話すのか、私は少し気になっていた。そこで、ジャンが持ち出した話題は驚くべきものだった。
「昔話、しねぇか?」
なんとジャンは、昨日アルミンがあれほど避けていた思い出話をしようというのである。
「どうしてそんなに驚いてるんだ?」
「意外だと思ったから。私を生かしたがっているから、てっきり昔話は避けると思って。事実、アルミンはそうしていた。」
「確かに、お前にエレンの事を思い出させるのは得策じゃないかもしれねぇな。でも、エレンの話をしてた方が、お前も生き生きするかなぁとか思ったんだよ。そもそも、俺とお前の共通の話題なんて、それしかねぇだろ。」
「確かにそうね。」
「キッパリ言うなよ。」
それから私とジャンは、思い出話をした。
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- 25 : 2014/03/10(月) 20:09:48 :
- 面白いです
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- 26 : 2014/03/10(月) 21:32:08 :
- >>25
藤子イェーガーさん、ありがとうございます。
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- 27 : 2014/03/10(月) 21:32:22 :
- 思い出話が終わったのは、喫茶店に来てから四時間後のことだった。
「かなり話し込んじまったな。」
「でも、これで丁度良い時間になった。」
私はジャンと話している間、時間が経つのを忘れていた。それだけ何かに熱中したのは久しぶりだった。その理由を考えると、「エレンの話だったから」や、「作戦を前に気持ちが高揚していたから」等、何個か思い付いたが、正解は分からなかった。
「とにかくもう出るか。長居し過ぎた。店に迷惑かけちまったかもな。」
私はそれに頷いたが、店内はほとんどが空席であり、実際は長居したことが迷惑をかけてしまったとは思わなかった。
スープとパンの代金は、ジャンが払ってくれた。私は遠慮したのだが、どうしてもと言うのでジャンにおごってもらった。
喫茶店を出た後は、少し早いが、鍵職人の工房へと向かうことにした。時間はたっぷりあるので、ゆっくり歩くことにした。
工房へ戻ったのは、鍵の作成をお願いしてから五時間後の事だった。
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- 28 : 2014/03/10(月) 21:39:35 :
- 「すいません。」
ジャンが鍵職人を呼ぶと、さっきと同じ老人が出てきた。
「お願いした鍵を取りに来たんですけど、早かったですかね?」
「いえ、もう完成しております。」
老人はそう言うと、近くの机に置いてあった鍵を手に取り、ジャンに渡した。
「こちらになります。良い型でしたので、早く完成させることができました。」
「それは良かったです。ありがとうございました。じゃあ、一旦宿舎に帰るか。」
「そうしよう。」
私達は鍵職人の工房を去った。鍵職人はまたしても、不気味な笑みを浮かべていた。
宿舎に戻ってから、私達は夕食を食べた。そこでの話し合いで、宿舎を出るのを夜の十時にすることにした。食べ終わると、九時半に食堂に集まることを約束し、それぞれの部屋へと向かった。
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- 29 : 2014/03/10(月) 22:49:31 :
- 時刻は九時を回っていた。そろそろ集合時間だ。私は兵団の服に着替え、部屋を出た。食堂には集合時間より五分程早く着いたが、ジャンは朝と同じく私より早く到着していた。
「ミカサ、早いな。」
「あなたの方が早い。」
「女を待たせる訳にはいかねぇからな。」
「そう。なら行こう。」
「せっかくカッコつけても無視かよ。相変わらずだな。」
私達は、予定より少し早いが、刑務所へと向かった。
刑務所に到着したのは十時半頃だ。見張りの兵士は一人しかいなかった。憲兵団の腐敗具合が伺えた。もっとも、今は刑務所の護衛なんてしていられない状況ではあるが。
私達は、見張りの目を盗み、刑務所内に侵入した。松明の灯りを頼りに、エレンを殺害した憲兵のところへと向かった。このまま、順調に作戦が成功すると思った。だが作戦は失敗に終わってしまった。
「動くな。武器を捨てて手を挙げろ。」
私達は、五人の憲兵に待ち伏せされていた。
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- 30 : 2014/03/10(月) 22:57:42 :
- 「待ち伏せ、俺達が侵入することがバレてたのか?」
「そう言うことだ。」
彼らのリーダーらしき人物がジャンの問いに答えた。
「どうやって私達の計画に気付いたの?」
「貴様らが合鍵造りを依頼した鍵職人からの告発だ。こう言うこともあろうかとウォールシーナの鍵職人には憲兵団所有の鍵の形を教えておき、合鍵造りを依頼されたら連絡するように伝えてある。もちろん、報酬を与える約束でな。」
鍵職人の笑みの理由がやっとわかった。恐らくその報酬を貰えるからだろう。私は彼の笑みの理由を詮索しなかったことを悔やんだ。
「さて、大人しく着いてきてもらおう。抵抗しなければ乱暴はせん。」
私達はその憲兵達に連れられ、目的を果たせないまま刑務所を後にした。憲兵が言ったように、特に乱暴な扱いはされなかった。その後、憲兵団本部へと連行され、取調室で一人ずつ、取り調べを受けた。
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- 31 : 2014/03/10(月) 23:46:50 :
- 取調室では、侵入目的や動機等、基本的な事を聞かれた。捕まった場合は嘘をつかないことをジャンと約束していたので、私はありのままの事実を話した。
取り調べにはあまり時間はかけられなかった。取り調べを担当した憲兵は「今はこんなことしてる場合じゃないのに。」と愚痴をもらしていた。時間がかけられなかったのはそう言うことだろう。
取り調べが終わった後、私は留置所に収容された。ジャンに会うことが出来ず、安否を確認出来なかったのが気がかりだが、あの取り調べの様子から、きっと大丈夫だろうと思った。
そして私は、留置所の固いベッドに入り、眠りについた。寝苦しかったが、一昨日に比べれば良く眠れた。
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- 32 : 2014/03/10(月) 23:59:26 :
- ー人類滅亡、三日前ー
「起きろ。」
私は看守の声で目をさました。
「これから貴様らの裁判を行う。ついてこい。」
昨日捕まったばかりなのに、随分急だと思った。しかし、昨日からの憲兵の様子から察していたように、今は人間の犯罪者を相手にしている場合じゃないのだろう。
裁判所の扉で、私はジャンと再会した。拷問を受けた様子はなく、元気であった。私はそれを見て安堵した。彼もまた、私を見ると安堵の表情を浮かべていた。
その後すぐに扉が開かれ、私とジャンは裁判所の被告人席へと座らされた。弁護人席にはアルミンを含む調査兵団員三人が座っていた。
「まずは憲兵団、求刑を。」
この裁判の行く末を決める、ダリス総統が憲兵団に尋ねた。
「我々憲兵団は、被告人を刑務所への不法侵入及び、殺人未遂の罪で懲役30年を求刑する。」
妥当な求刑だった。どうやらジャンの言った通りの判決になりそうだ。
「次に、弁護を担当する調査兵団。」
「はい。」
総統の問いかけに答えたのはアルミンだった。
「我々は被告人の罪名に関しては異論はありませんが、しっかりとした動機があること、彼らの人類にとっての有益性、そして未遂に終わったことから懲役5年及び執行猶予つきの判決を求めます。」
「ご苦労。では、被告人質問に入ろう。」
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- 33 : 2014/03/11(火) 00:10:39 :
- それから、被告人質問や証人喚問が行われた。被告人質問では私達は取り調べで答えた通りの事を言った。証人喚問では例の鍵職人が出てきたが、特別判決に影響が出そうな発言はなかった。
「他に何か質問及び要求はあるかね?」
「無いようなら、判決に移ろう。」
私は、判決は懲役10~20年になるだろうと予想した。上手くいけば、執行猶予がつく、そんな程度だと思っていた。しかし、ダリス総統の下した判決は、そんな私達の予想もつかないものだった。
「被告人ミカサ・アッカーマン、ジャン・キルシュタインに告ぐ。お主らには、明日行われるウォールローゼ奪還作戦に参加してもらう。」
その言葉に耳を疑った。その作戦は以前行われた口減らしを意味するものだった。
「異論は認めん。尚、生還した場合は成果に関わらず、お主らの罪を許そう。では、閉廷とする。」
ダリス総統は裁判所を後にした。ウォールローゼ奪還作戦の参加命令。これは事実上の死刑判決であった。
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- 34 : 2014/03/11(火) 00:10:59 :
- 今日はここまでです。
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- 35 : 2014/03/11(火) 19:37:04 :
- 「ふざけてる!あれじゃ、死刑判決と同じだ!」
アルミンが怒鳴った。私達は裁判後、ウォールローゼ奪還作戦のために仮釈放されていた。そこでアルミンと合流したのだが、アルミンは判決への怒りを露にした。
私もアルミン程ではないものの、あの判決には不服だった。もちろん、私はどんな判決が出ても構わない。むしろ、死刑判決が出ても良いくらいだ。しかし、ジャンにも同じ判決が下されたことが、ジャンを巻き込んでしまったという罪悪感を私に植え付けていた。
「待ってて二人とも。僕が控訴してくる!」
「落ち着けアルミン。控訴したって無駄だ。」
ジャンがアルミンをなだめた。
「でも、あれは未遂なんだ。死刑判決なんておかしいよ!」
「別に良いじゃねぇか。要は、生きて帰れば良いんだろ。」
ジャンは不適な笑みを浮かべて言った。
「君だってわかってるはずだ。今回の奪還作戦の本当の目的は口減らし、余分な人を殺すための作戦なんだ。そのなかで生き残ることがどれだけ難しいかを。」
「確かに難しいかもな。だけど俺達は何度も修羅場を経験した兵士だ。生き残る可能性は十分あると思うぜ。」
彼の言葉は強がりではなく、本心から出ているように感じた。
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- 36 : 2014/03/11(火) 19:50:24 :
- 「それに、ミカサにとってはこっちの方が都合良かったんじゃねぇのか?巨人に食われて死ぬんなら、誰も文句は言わねぇだろ。」
ジャンは私を見て言った。私は何も言い返せなかった。違うと言えば嘘になるからだ。
ここ最近、生きることに辛さを感じることは少なくなっていたが、私から自殺願望が消えた訳ではなかった。生きることへの退屈辛さは消えても、心のなかに大きな穴が空いたような感覚だけは消えなかったからだ。そしてその穴を埋めることが出来るのは、エレンだけだとも思っていた。
何も返さない私を、アルミンは心配そうな目で見つめていた。ジャンは黙って返事を待っていたが、私が返事をしないことを感じ取ると再び口を開いた。
「俺はこの奪還作戦から生きて帰りたいと思ってる。だが、俺一人で生き残ることはほぼ不可能だ。でも、ミカサと協力すれば必ず生きて帰れる。これは自信じゃねぇ、確信だ!」
ジャンの言葉は揺るぎないものだった。
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- 37 : 2014/03/11(火) 21:06:44 :
- 「それでどうなんだ?お前はそれでも死にたいのか?俺はどっちでも文句はねぇぜ。」
私は答えに迷った。ジャンを死なせたくないと言う気持ちが強かったが、それと同じくらい奪還作戦で死にたかった。その迷いを私は責めた。仲間を思うなら答えは一つに絞られている。それなのに迷っている自分を恥じた。
アルミンは私の答えを不安そうに待っていた。そしてジャンは...笑っていた。まるで、予め私の出す答えを知っていたかのように。そう、私の答えは...
「私は、ジャンと共に生きて帰る。必ず。」
その答えを聞いたアルミンの顔はほころんでいた。ジャンもホッと一息ついた。
その時、ジャン自身も気付いているかは分からないが、私が彼の思い通りに動かされたことに気付いた。今私は、「ジャンの為に生きている。」のである。しかし、私は自分の意志にそぐわぬ行動をさせられていることに、悪い気はしなかった。それは、その行動が私の深層心理と一致しているからなのだろう。
-
- 38 : 2014/03/11(火) 21:23:13 :
- ー人類滅亡、二日前ー
私は今、エルミハ区の門の前に来ている。目的はもちろん、ウォールローゼ奪還作戦のためだ。辺りを見回すと、どこからどう見ても一般人だと分かるものがほとんどだった。また、作戦に参加する兵士も年の若い駐屯兵が多く、この作戦が口減らしのための作戦であることを改めて痛感した。
元ウォールローゼ住民に、徴兵がなされたのは五日前のことであったらしい。その後、徴兵された住民は巨人との戦いかたや陣形の組み方等を頭に詰め込まされたと言う。私達に作戦内容が知らされたのは昨夜の事だったが、一晩で理解できた。それほどこの奪還作戦は単純なものであった。
それにしても、酷い有り様だった。ほとんどは馬に乗っているのではなく、乗せられていると言うような様子だった。また、闘志などまるでなく、怯えており、中には発狂している者もいた。それでも逃げ出す者が少ないのは、「敵前逃亡は死罪」が適用されるからである。
「皆の者、配置につけ!」
指揮官が叫んだ。聞いたことのある声だった。声がした方を見ると、そこにいたのはキッツ・ヴェールマン隊長だった。
-
- 39 : 2014/03/11(火) 22:42:23 :
- 「指揮官はあの小鹿隊長か。あの人なら、早めに撤退命令を出してくれそうだ。」
ジャンが皮肉を込めて言った。しかし、彼のような慎重派の男が指揮官であるのは、運が良いと思った。それと同時に、彼のような男が何故口減らしの作戦の指揮を務めているのかという疑問も湧いた。私はその事をジャンに尋ねた。ところが答えたのは彼ではなく、近くにいた駐屯兵だった。
駐屯兵の話によると、キッツはウォールローゼ奪還作戦に最後まで反対していたらしい。それがもとで、兵団の上層部から厄介者扱いされてしまい、厄介払いとして今作戦の指揮官に抜擢されてしまったのだそうだ。上の決定に意義を申し立てると言うのはとても勇気のいることだ。私は彼のことを少し見直した。
そうこうしている内に、門が開いた。私達は一斉に元ウォールローゼ地区へと足を踏み入れた。一般人を加えた陣形は、今まで経験したことが無いほどゆっくりと進んでいった。
-
- 40 : 2014/03/11(火) 23:01:48 :
- エルミハ区を出発して二時間。私達はここまで何事もなく進んでいた。しかし、それはあくまで私達陣形の中心周辺の者達の話だった。
通常の壁外調査の場合、我々はなるべく巨人との戦闘を避けて壁外を進む。だが一般人も交えた今回の作戦では、馬を駆けさせて巨人から逃げるということがほとんど出来ないのだ。これが何を意味するか。それは陣形の最前列の兵士が巨人を倒すことによって、陣形を保っているということである。つまり、この陣形の安否は、兵士の巨人討伐の腕前にかかっているのだ。このような不安定な陣形が長く続くはずはない。
そして、我々が予想していた通り、陣形が綻び始めるときがやって来た。
前方から赤い煙弾が上がった。巨人発見を知らせる煙弾だ。それから足音が鳴り響いてきた。それは徐々に近づいてきた。そしてその足音の主は、私達の前に現れた。
その巨人は通常種だった。私達はその事実に困惑した。通常種は途中にいる人間を無視せず、補食してから次の標的へと向かう。そのため、陣形の奥深くに侵入してくることはないはずだからだ。
その巨人の来訪が意味するもの。それは、前方の一般人を含めた兵力が、全滅したということだった。
-
- 41 : 2014/03/11(火) 23:12:05 :
- ジャンミカだって・・・?
期待するしかないだろ!
-
- 42 : 2014/03/11(火) 23:49:41 :
- >>41
正義の味方さん、期待ありがとうございます。
-
- 43 : 2014/03/11(火) 23:49:56 :
- 巨人はますます私達に近づいてきた。前方の兵士が巨人の討伐に向かった。しかし、一瞬で殺された。
「ミカサ、俺が足を削いで動きを止める。その隙にうなじを頼む!」
ジャンはそう言うと、馬を降り巨人へと向かっていった。私は彼が巨人の動きを止めることを信じ、後ろへと回り込んだ。
私が巨人の背後に回り込むことに成功したとき、丁度ジャンがアンカーを巨人の足に刺した。ジャンはワイヤーを巻き取り、巨人の足へと迫った。
「うおおおおお!」
ジャンは雄叫びと共に巨人の足の腱を削いだ。
「頼んだ!」
私は巨人のうなじにアンカーを刺し、すぐさま勢い良く巻き取った。そして、巨人のうなじへと剣を振るった。巨人のうなじの肉が宙を舞った。
「さすがの腕前だな。」
「あなたこそ。お陰で楽にうなじの肉を削げた。」
互いに誉めあっていたところに、煙弾が上がる音がした。煙弾の色は緊急事態が起きた事を告げる紫だった。
「キッツ指揮官に報告します!」
一人の兵士が緊急事態の報告をしに来た。
「前方の陣形は壊滅。さらに、南の方角より巨人の大群が出現しました!」
巨人側の人類への最後の攻撃は、この時既に始まっていた。
-
- 44 : 2014/03/12(水) 00:08:42 :
- 「撤退だ...総員、今すぐ撤退せよ!陣形を保つ必要はない!全力で壁へと戻るのだ!」
キッツが撤退命令を出した。
「不謹慎かも知れねぇが、ラッキーだったぜ。無事にエルミハ区に戻れそうだ。」
「いえ、そう上手くはいかないと思う。」
言葉の通り、簡単にはいかないのだ。もしこの帰還が、陣形を保った上でのものであれば、まず生還は確実だろう。しかし、陣形が崩壊した以上、巨人の存在は目視でしか確認できない。馬の速力を越える巨人が現れたら戦闘に持ち込まざるを得なくなる。
「とにかく、他のやつらは待ってられねぇ。俺達だけで先を急ぐぞ。」
「ええ。」
私達は全力で馬を駆けさせた。壁外調査慣れしている私達の速力に敵う者は、今作戦の参加者には一人も居なかった。
それから数分程走った。他の兵士との距離はかなり広がっていた。往路の陣形スピードから考えて、帰還にはあまり時間はかからないはずだった。順調に進んでいた私達であったが、恐れていた事が起きた。
エルミハ区の帰路。その道を塞ぐように、巨人の大群が立ちはだかっていた。
-
- 45 : 2014/03/12(水) 00:09:15 :
- 今日はここまでです。
-
- 46 : 2014/03/12(水) 19:42:03 :
- 「まずいな...一旦止まるぞ。」
私はジャンに従い、馬を止めた。ジャンはこの危機を脱出する方法を考えていた。
今の状況を整理すると、北と南から巨人の大群に挟み撃ちにされている。また、どちらの巨人も私達に接近しており、特に北側の巨人は真っ先に私達に襲い掛かってくると思われた。そのため、長く立ち止まっている訳にもいかない。私もこの危機を脱出するために考えを張り巡らせた。
先に案を思い付いたのはジャンだった。
「ミカサ、俺についてこい。」
ジャンはそう言って、馬を駆けさせた。
「どこへ向かうの?」
「あそこの巨大樹の森だ。」
ジャンは左前方を指差した。そこには小規模だが巨大樹の森があった。
「あの森で夜まで待つ。」
ジャンの考えは、巨人が動けなくなる夜にエルミハ区へと戻るというものだった。私はその作戦に同意した。
私達は、巨大樹の森へと馬を全速力で駆けさせた。
-
- 47 : 2014/03/12(水) 20:23:44 :
- 馬を駆けさせ約五分、私達は巨大樹の森に辿り着いた。馬を木に繋ぎ止め、立体機動で20メートルの高さまで上昇した。それから1分もしない内に、巨人が巨大樹の森に迫った。
「危なかったな。もう少し遅ければこの巨人達と戦うことになってた。」
ジャンがそう言った。それから私達は森の奥へと立体機動で移動した。巨大樹の木の枝は太く、私達が乗ってもびくともしなかった。
「この木を拠点にするか。あんまり奥に行っても戻れなくなったら嫌だからな。」
ジャンが示した木の枝に、私達は着地した。
「他の人たちは無事だろうか。」
私はふと口にした。
「多分、無事じゃねぇな。下手したら全滅してる。だけど俺達だって、人の心配してる余裕はないぜ。」
ジャンの言う通りだった。巨大樹の森に達して、私達は一先ずは安全を確保しているが、だからと言って壁内に必ず帰れるという訳ではない。
その理由の一つは巨人の学習能力だ。以前の壁外調査で私は木登りをする巨人を見た。その巨人は、初めは木に登れなかったにも関わらず、学習して木登りを習得していた。恐らく今の私達の前にも木登りを習得する巨人が現れるだろう。だから、私達は注意力を失ってはいけなかった。
もう一つの理由は、巨大樹の森を出発した後のことだ。夜に出発するため、巨人に襲われる心配はないが、周りが見えないため馬を駆けさせることができない。一般人を交えていた先程の往路よりもさらに時間がかかってしまう。また、月が見えなければ方角すらも分からない。そうなってしまえば壁内に辿り着くのは一気に困難になる。
私は空を見た。雲は多かったが晴れ間もあった。
-
- 48 : 2014/03/12(水) 21:46:45 :
- 「さて、今から出発のための準備をしておくか。必要なものは...出発前の腹ごしらえと、松明だな。」
「食糧と松明の木は良い。でも、火種と油は?」
「火種は火おこしするんだよ。訓練兵時代に習ったろ?やったことはねぇが、まぁ、何とかなるだろ。」
「油は?」
「良くぞ聞いてくれた。こんなことも有ろうかと、持ってきてたんだ。」
ジャンは腰に下げていた水筒を取り出した。どうやらその中身が油らしい。
「じゃあ、松明の方は俺がやるからミカサは食糧を集めてきてくれ。」
「分かった。」
私は食糧、主に果物の採取に向かった。巨大樹の森には豊富な果実が実っており、採取には苦労しなかった。
適当な量を採取すると、私は拠点としていた木に戻った。
夕日が雲を橙色に染めていた。
-
- 49 : 2014/03/12(水) 21:58:34 :
- 「戻ったか。」
ジャンは火おこしのための道具や松明に使う木の枝を揃えていた。
「まず、食べるか。」
私達は採取した果実を食べた。果物のみではあったが、いくらか腹が膨れた。
食べ終わった頃には完全に日は沈んでいた。巨大樹の森を月明かりが照らしていた。
「この分なら無事に帰還できそうだな。じゃあ、火おこしとするか。」
そう言うと、ジャンは木の枝を板状の木の枝につけて、擦り付け始めた。
「どれくらいかかるの?」
私は尋ねた。
「...二時間ぐらい。」
それから二時間、ジャンは黙々と火おこしに励んだ。静かに時は流れていった。
-
- 50 : 2014/03/12(水) 23:34:28 :
- 火おこし開始から、およそ二時間が経った。擦り付けている部分からは煙が上がっていた。
「よし、これを拾ってきた枯れ葉に移して...」
ジャンは火種を枯れ葉の束へと移した。枯れ葉からは炎が上がった。
「成功だ。次は...」
ジャンは木の枝の先に油をかけ、炎に入れた。木の枝の先端に火がついた。
「出来た。これはミカサの分だ。」
ジャンは松明を私に渡すと、もう一本の木の枝を同じように炎に入れた。
「松明の用意も出来たし、そろそろ出発しようぜ。」
「ええ。」
私達は立体機動で馬を繋ぎ止めていた場所へと向かった。松明を持っての立体機動は初体験だったが、何とか上手くいった。
目的地へと着くと、馬はちゃんと繋ぎ止められていた。私達は馬に乗り、馬を歩かせた。
目標は北。私達が出発したのは、月の位置からの予測だが、夜の10時頃だった。
-
- 51 : 2014/03/12(水) 23:54:36 :
- ー人類滅亡、一日前ー
馬を走らせて、言い直そう、馬を歩かせてかなりの時間が経った。私達は少し焦っていた。日の出の時が近付いているからだ。そして、ついにその時が来た。東の空が明るくなってきたのだ。それから日の出まではすぐだった。地平線から光が差したかと思うと、まばゆい光を発した太陽が現れた。
「きれい...」
私は思わず声に出してその光景を讃えた。
「ミカサ!これを見ろ!」
突然ジャンが叫んだ。私は振り返り、ジャンの指す方向を見た。私は感極まった。壁が私達のすぐそばにあったからだ。
「こんなに近付いてたんだな。それにしても、生還しただけで奇跡だっていうのに日の出と同時の帰還なんて、我ながらすげぇよ。」
私達は1分程、生還できたと言う達成感に浸った。
「壁を登ろう。巨人もそろそろ活動を始める頃だ。」
「そうだな。」
私達は立体機動で壁を登った。私の心の中は、生還出来た事の達成感、安心感で一杯だった。
「これからどうするんだ?無事帰ってこれたし、後はお前の自由だ。生きようが死のうがな。」
壁を登りながら、ジャンは尋ねた。
「私は...私は生きる。」
即答した。迷いはなかった。ジャンは唖然としていた。
「どうしたの?あなたの望み通りじゃないの?」
「確かにそうだったけど、本当に考えを変えてくれるとは思ってなかったよ。いつからそう思ってたんだ?」
「...いつだろうか。」
その答えは思いつかなかった。さらに言えば、生きようと決意した理由もだった。ただ私には死にたくないという思いがいつの間にか生まれていたのだ。何がそうさせているのかは分からなかったが、それが私に生きる意志を与えていた。
私達は壁を登りきった。壁上に立ち、壁内の街並みを見て私達は絶句した。
エルミハ区は、壊滅していた。
-
- 52 : 2014/03/13(木) 19:30:59 :
- 私達は目の前の光景に目を疑った。建物は至るところが壊され、人は一人もいなかった。
私は外側の扉の部分を壁上から覗き見た。扉はもうなく、そこには風穴が空いていた。内側の扉がなくなっているのも見えた。
「たく...酷すぎるぜ。ようやく生還出来たと思ったら、帰る場所がないなんてよ。」
ジャンはこう吐き捨てた。さらに続ける。
「思えば、あの巨人の大群は奴らが連れてきた巨人だったのかもな。そう考えると、壁が壊されたのは昨日の夕方頃ってところだな。」
「アルミンは...みんなは無事だろうか。」
私は言った。しかし、これは疑問ではなく反語だ。答えはジャンに聞かずとも分かっていた。ジャンはそれを察しており、この問いに答えることはなかった。
「人類は、滅亡してしまったのだろうか。」
これは本当に疑問であった。そのため、ジャンはこれに答えた。
「どうだろうな。」
「地下都市に逃げてれば、まだ生きてるかもしれねぇ。とは言っても、食糧はそんなにないから長くは持たねぇだろ。下手したら、暴動とかが起こってるだろうし...とっくに全滅しててもおかしくはない。」
ジャンの顔からは、希望が消えていた。
-
- 53 : 2014/03/13(木) 19:38:41 :
- 『グ~』
突然私のお腹が鳴った。恥ずかしさで顔が少し熱くなるのを感じた。
「思えば、昨日から果物しか食べてないな。」
ジャンは私のフォローをしてくれた。
「とりあえず、食べ物を取りに行くか。」
「どこから?」
「エルミハ区の家からだよ。ウォールシーナの家なんだ。貯蓄されてる食糧がけっこうあると思うぜ。」
「巨人は?」
「俺達なら巻けるだろ。ここなら建物がいっぱいあるから立体機動も楽だ。」
「そうね。」
「なら、善は急げだ。」
私とジャンは、壁上から降り立った。巨人の数はあまり多くなかった。恐らく、中心部にはまだ人がいて、そちらの方に集まっているのだろう。ちなみに、私達以外の人類はこの20時間後に全滅してしまうのだが、私達はそのことを知るよしもなかった。
-
- 54 : 2014/03/13(木) 21:28:37 :
- 食べ物を集めに向かってから約30分後、私は持てるだけの食糧を持って、先程までいた壁上へと登った。そこにはジャンもいた。彼が無事だったことに一先ずホッとした。
「さっそく食べようぜ。」
ジャンの呼び掛けに私は応じ、めた食糧の一部を食べ始めた。空腹時に食べる物は何でも美味しいもので、私は夢中でそれらを食べた。食事が終わる頃には太陽がちょうど南中していた。
食べ終わった後、私達は眠りにつくことにした。昨日から一睡もしておらず、眠気はピークに達していたからだ。それは、太陽が照りつける中でもすぐに寝付ける程だった。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。私が目を覚ましたときにはジャンは既に起きていた。太陽は大きく西に傾いていた。
-
- 55 : 2014/03/13(木) 21:47:06 :
- 「ジャン、いつから起きてたの?」
私はジャンに尋ねた。
「結構前からだよ。」
ジャンの表情は眠りにつく前より弱々しくなっていた。
「俺達、これからどれぐらい生き延びれるかな。」
ジャンが言った。
「食糧は充分にあるし、立体機動のガスも本部にいけば補給できるはず。ので、数ヶ月生き延びることも可能だろう。」
「そうか...あのよ、ずっと考えてたんだけどよ。今俺達が生きる意味って、有るのかな。」
「え?」
ジャンから放たれた諦めとも取れる言葉に私は耳を疑った。自殺しようとしていた私を引き止めてくれた。私にもう一度生きる意志を与えてくれた。そんなジャンが口に出すとは思えない言葉だったからだ。
ジャンは続けた。
「例えここでずっと生き延びれたとしても、誰の得にもならねぇ。そりゃあ、死にたくないとも思ってるけどよ...生きたいとも思えないんだ。全く、情けない話だよな。自殺しようとしてたお前を止めようとしたのは俺だってのに、何弱気になっちまってんだろうな。」
私は、何も言えなかった。
-
- 56 : 2014/03/13(木) 23:11:59 :
- それからは、無言の時間が流れた。日は完全に沈んでいた。
私は今までの人生を思い返していた。家族が殺されたこと、エレンとの出会い、カルラおばさんの死、訓練兵時代、トロスト区防衛戦、奪還作戦、壁外調査、アニとの戦い、エレン奪還作戦。それは、死の直前の走馬灯に似ていた。私の目からは涙が溢れていた。
その時私はまた死のうと思った。ジャンと一緒にだ。そして私はそれを伝えようとジャンを見て言った。
「まだ生きていたい。」
私は自分が発した言葉に驚いた。私は「一緒に死のう」と言うつもりだった。それなのに、それとは逆の事を言ってしまった。私はジャンを見たとき、死にたくないと思ってしまったのだ。
その時私は、何故私が生きようと決意したのかが分かった。それは、ジャンに会えなくなるのが嫌だったからだ。今までエレンに抱いていた感情を、私はジャンへと持つようになっていたのだ。それは紛れもなく、ジャンへの愛だった。私はいつの間にか、ジャンの事が好きになっていたのだ。
私は心の底から死にたくないと思った。
-
- 57 : 2014/03/13(木) 23:19:12 :
- 何か悲しい…タイトルからして悲しいのは当たり前だけどさ…
-
- 58 : 2014/03/13(木) 23:26:35 :
- >>57
迷子の達人さん。確かに悲しいです。書いてると心が沈みます。ミカサとジャンの行く末を、最期まで見届けてくれたら嬉しいです。
-
- 59 : 2014/03/13(木) 23:26:58 :
- 「そうか。なら俺も、死ぬわけにはいかないな。」
「まだ生きていたい。」という私の答えに対するジャンの答えはこれだった。ジャンはこう言ってくれたが、その顔からは生きる意志が完全に失われていた。以前の私も、こんな顔をしていたのだろうか。そんなことを思ってもみた。それと同時に、なんとかジャンを奮い立たせたいと思った。
私はジャンを奮い立たせるため、口を開いた。
「敵討ちをしないか?」
それは、ジャンが私に生きる意志を呼び覚ますきっかけを作ってくれた言葉だった。
「一体誰に?」
「そこら中にいる。」
「...もしかして。」
「そう、巨人。」
-
- 60 : 2014/03/13(木) 23:29:45 :
- 今日はここまでです。
-
- 61 : 2014/03/13(木) 23:35:08 :
- お疲れ様!後日も頑張って!
-
- 62 : 2014/03/13(木) 23:39:50 :
- >>61
ありがとうございます。頑張ります!
-
- 63 : 2014/03/14(金) 20:14:53 :
- 「でもそれじゃあ、死ぬ確率の方が高いぞ。」
「それで構わない。建物の多い壁内なら壁外より戦いやすいし、ガスやブレードも本部にいけばたくさんある。ので、生き残れる可能性も0ではない。0でないのならそれで十分。それで、やるの?やらないの?」
ジャンはその問いに「やる」と答えた。
私がこんな無茶な提案をしたのは、もう、死んでもいいと思っていたからかもしれない。しかし、死にたいと思っていた以前とは違う。私は生きる残れるかもしれないという微かな、100分の1パーセントも満たないような希望を捨てようとはしなかった。
「突撃決行はいつだ?」
ジャンは尋ねた。
「明日の朝。それまでは体を休めよう。」
「そうだな。」
私達は集めてきた食糧を再び食べ始めた。最期の晩餐になるかもしれない食事だが、特別何かを感じることはなかった。また、ジャンとは二人で生き残ったらどうするかとかそう言う話をした。思い出話は以前にしたからなのか、特に話題にならなかった。
私達は食事をして少し話した後眠りについた。満月の綺麗な夜だった。
-
- 64 : 2014/03/14(金) 21:59:08 :
- ー人類滅亡、当日ー
東の地平線から太陽が昇る。
私は日の出と共に目をさました。ジャンもほとんど同じタイミングで起きた。
「おはよう。」
「おはよ。」
まずはいつもと変わらず挨拶をした。
「飯にするか。」
「ええ。」
私達は朝食を食べた。昨日集めた食糧は、そろそろ少なくなってきていた。しかし、そんなことはもうどうでもいい。これから命を懸けて巨人に戦いを挑むのだから。
「食べたら、突撃しよう。」
「ああ。ミカサ、やるからには...勝つぞ。」
ジャンには確かに勝利への欲求があるのを感じた。昨日のような、全てを諦めたような顔はもうしていなかった。
朝食を食べ終わり、私達は突撃の用意を整えた。
「行こう。」
「ああ。」
私達は壁から飛び立った。
-
- 65 : 2014/03/14(金) 22:10:52 :
- 壁から飛び立った私達は、まず本部へと向かった。目的は、ガスとブレードの補給のためである。高い建物を伝っていくことで、巨人と接触することなく本部まで辿り着いた。
「本部の周りを巨人に取り囲まれる前に補給を終わらせるぞ。」
ジャンの言葉通り、ゆっくりしてはいられなかった。私達は迅速で、尚且つ冷静にガスとブレードの補給を行った。
短時間で補給を終えることができた私達は、本部から飛び立った。本部の周りには巨人は少なかった。だが...
「エルミハ区全体の巨人の数は昨日よりかなり増えたな。」
「中心部にもう生き残りは居ないのかもしれない。だから、最後に残った私達を補食しに集まってきたと言う可能性もある。」
「へ、上等だ。」
「ここからは分かれて戦おう。」
一緒にならず分かれて戦うことは昨日から決めていたことだ。理由はもちろん、その方が生き残れる可能性が高いと考えたからだ。
「ミカサ、夜になったら、また壁上で飯食おうぜ。」
「それは楽しみだ。では。」
私達は各々別々の方向へと向かった。
-
- 66 : 2014/03/14(金) 23:27:55 :
- ジャンと分かれてからすぐ、私の前に一体の巨人が立ちはだかった。巨人は私を掴みに掛かってきた。私はその手を避け、立体機動で後ろへ回り込み、うなじを削いだ。
その一体を倒すと今度は三体の巨人が襲ってきた。複数が相手の時は、一体一体の攻撃に時間差があり、巨人の攻撃を避けきるのは難しい。しかし、私はその全ての攻撃をかわし、一体、また一体と巨人を倒した。最後の一体も難なく倒した。
これが死ぬ気で戦うと言うものなのだろうか。私は今までで一番体を思い通りに動かせていた。これならもしかしたら生き残れるかもしれない。一縷の希望が微かに強くなるのを感じた。
それからも巨人が、時には二、三体同時に襲いかかってきたが、私はそれを全て迎撃した。時たまジャンの方を見てみると、彼も普段以上に力が出せているようで、襲いかかる巨人を次々に撃退していた。
巨人を倒すごとに生存への希望の光が少しずつ大きくなっていく。私は文字通り死ぬ気でその光を掴みとろうとした。
その光が途絶えたのは一瞬のことだった。
-
- 67 : 2014/03/14(金) 23:38:33 :
- 足を噛み千切られた。油断はなかった。人類は巨人には勝てないと言う、ただそれだけのことだ。右足を失った私は墜落し、地面に叩きつけられた。
巨人の足音が近付いてきた。いよいよ最期の時のようだ。悔いはない、私は最期まで勇敢に戦えた。ただ一つ、心残りだったのは、もう一度ジャンに会いたいということだけだった。でも、それは叶わないだろう。
足音の主の巨人が姿を見せた。大きい。15メートル級と言ったところだろうか。ああ、いい人生だった...私は目を閉じた。
『ドサッ』
何かが落ちた音に、私は目を開けた。そこにいたのはジャンだった。
「ジャン!」
「ミカサか。足...食われちまったのか。」
「ええ。私はもうだめ。あなただけでも」
私はこれ以上言葉を続けられなかった。ジャンは右腕を失っていたのだ。
「俺は右腕を食われちまった。肋骨も何本かいってる。もう...立つこともできそうにねぇ。」
巨人の足音はさらに大きくなっていく。
私は、心を決めた。
「ジャン、伝えたいことがある。」
-
- 68 : 2014/03/15(土) 00:16:36 :
- 「私は、あなたのことが好き。」
この言葉に、ジャンは頬を赤らめた。私は続けた。
「私が生きる意志を取り戻したのはあなたがいたから。あなたと生きていたいと思ったからだ。もしあのまま自殺していたら、私は死後の世界でエレンに合わせる顔がなかった。あなたが私を生かしてくれたお陰で、エレンやアルミン達に堂々と会いに行ける。」
「ジャン...今までありがとう。そして...大好き。」
こう言い終わると、ジャンが私を抱き締めた。そしてジャンは言った。
「ありがとよ。俺も好きだ。ミカサ...天国か地獄か、どっちにいくか知らねぇけど、これからもよろしくな。」
それから私は、ジャンと初めてのキスをした。
それからすぐに、私とジャンは先程の巨人に一緒に掴まれた。そして、巨人はその手を口元に近付けた。どうやら今度こそこの世界とお別れのようだ。でも、寂しくはない。
ジャンと一緒なら...
そして、壁内の人類は滅亡した...
ー終わりー
-
- 69 : 2014/03/15(土) 00:18:04 :
- これで終了です。小説風の文体で書きましたが、語彙力に乏しいので読みにくかったかもしれません。
読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
-
- 70 : 2014/03/15(土) 02:06:40 :
- 素晴らしい。泣いてしまった...
ジャンミカもっと増えるといいな。
感動をありがとう。
-
- 71 : 2014/03/15(土) 18:47:25 :
- 涙が止まらない...天国の二人に幸あれ...
-
- 73 : 2014/03/20(木) 02:09:23 :
- うわぁぁぁぁんかなしい。・゚・(ノД`)・゚・。ふたりが天国でずっと幸せでくらせますように。・゚・(ノД`)・゚・。
-
- 74 : 2014/03/24(月) 01:01:44 :
- やばい…超感動した…
泣きそう…
-
- 75 : 2014/10/01(水) 08:40:55 :
- リヴァイも死んだの?
-
- 76 : 2014/10/01(水) 22:05:04 :
- >>75
そうなります。
-
- 77 : 2014/12/07(日) 21:06:17 :
- 今更ですが泣いてしまいました・・よければいつか幸せなジャンミカ読みたいです
-
- 78 : 2015/01/08(木) 00:39:09 :
- この話凄くいい途中から涙が止まらなくなった
-
- 79 : 2020/10/06(火) 15:22:08 :
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害悪ユーザー筋力
http://www.ssnote.net/archives/84057
害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
http://www.ssnote.net/archives/85091
害悪ユーザー空山
http://www.ssnote.net/archives/81038
【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
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