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クリスタ「記憶の彼方のわたしの騎士さん」
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- 1 : 2014/03/08(土) 21:26:56 :
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俯いているわたしの頭に、そっと乗せられる温かくて大きな手。
顔を上げると、男の人がわたしを覗き込んで笑っている。
…いや、顔はいつも逆光になってしまっていて見えないのだけれど、なんだか笑っているような気がするの。
『大丈夫だよ、ヒストリア。私がついているから。』
その人はそう言って、わたしの頬を撫でた。
それだけで、なんだか元気になれるの。
ねえ、わたし
あなたの顔も名前も忘れてしまったけれど
強く願っていれば、また会えますか?
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ご覧いただきありがとうございます☻
・コミックス10巻までのネタバレを含みますので、アニメ派の方はご注意ください。
・捏造設定満載です。苦笑
最後まで楽しんでいただけるよう尽力致しますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 2 : 2014/03/08(土) 21:35:00 :
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ー 840年 エルミハ区 ー
ヒストリア「お母さん、眠れないよう。」
枕を抱えて、リビングにいるお母さんのもとへ行く。
母「あら、しょうがないわね。こっちへいらっしゃい。」
ヒストリア「うん!」
わたしはお母さんに物語を読んでもらうのが大好きで、眠れない夜はよくせがんでいた。
特に好きだったのは、勇敢な騎士がお姫様を魔物から助けるお話。
お母さんの膝の上に座って、絵本を広げる。
そうして始まる、物語の世界への小旅行。
ヒストリア「…ねえ、お母さん?」
母「ん?」
ヒストリア「もしわたしが困った時は、騎士さんは助けに来てくれるかな?」
母「そうね、みんなに優しくして、みんなに愛されるような人になったら、きっと助けに来てくれると思うわ。」
ヒストリア「本当に?」
母「ええ。」
お母さんはわたしに、人に優しくしなさいと口うるさく教えた。
それがわたしの今の性格を作ったのかもしれないな。
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- 4 : 2014/03/08(土) 21:38:23 :
- 期待です
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- 11 : 2014/03/09(日) 00:00:59 :
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母「ヒストリア、本当に大丈夫?1人で行ける?」
ヒストリア「大丈夫だよ、行ってきます!」
その日、体調を崩していたお母さんにかわって買い物に行くために、わたしは家を出た。
ヒストリア「えっと…」
買い物メモとにらめっこしながら細い通りを歩く。
「お嬢ちゃん、可愛いね。1人?」
その声に顔を上げると、おじさんがニヤニヤしながらわたしを見つめていた。
ヒストリア「え、あの…」
おじさん「ちょっとこっちにおいで。お菓子をあげるから。」
ヒストリア「いや、いいです。いらないです。」
人攫い…
そんな言葉が頭を過る。
おじさん「大丈夫だから、おいで。」
ヒストリア「いや!離して!」
おじさんがわたしの腕を引っ張る。
必死に抵抗するも、大の大人に5歳そこそこの子どもが敵うわけがない。
ずるずると引きずられていき、裏路地に連れ込まれそうになった。
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- 12 : 2014/03/09(日) 02:01:00 :
そのとき
反対の腕を誰かに掴まれた。
「私の妹に何か用かな?」
凛としたその声に振り返ると、若い男の人がおじさんを睨みつけている。
おじさん「…連れがいたのか。」
おじさんはそう吐き捨てると、わたしの腕を離して去っていった。
それを確認した男の人は、ふう、と息を吐く。
男の人「…危なかったね。怪我はない?」
ヒストリア「は、はい。」
男の人「よかった。」
そう言うとその人は、わたしの頭を撫でた。
…顔はよく思い出せないんだけど、その笑顔がはっとする程美しかったことだけは覚えている。
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- 20 : 2014/03/09(日) 17:04:24 :
ヒストリア「あ、ありがとう、ございます…」
男の人「買い物に行くの?1人だと危ないよ。お母さんやお父さんは?」
わたしが首を横に振ると男の人は、そっか、と言ってしばらく何かを考えていた。
男の人「…もし嫌じゃなかったら、私も同行してもいいかな?また変な人が声をかけてくるかもしれないし、心配だからね。」
ヒストリア「え、いいの…?」
男の人「もちろん、さあ。」
そのひとはそう言って、わたしに手を差し伸べた。
その姿はまるで、物語の中でお姫様を助ける…
ヒストリア「…騎士さん。」
男の人「え?騎士?」
ヒストリア「い、いや!なんでもない、です。」
わたしの焦った様子を見た男の人は、はははと軽やかに笑った。
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- 23 : 2014/03/09(日) 20:40:59 :
男の人「なるほど、ピンチのプリンセスを助けるナイトか。悪くないね。」
そういうとその人は、わたしの手を取った。
男の人「…では行きましょうか、お姫様。」
歩きながらわたしに向けられた笑顔は、とても眩しかった。
その人はわたしが買い物をしている最中、ずっと隣にいてくれた。
その間いろいろな話もしてくれたし、買い物を済ませると、家まで送ってくれた。
…少し脚を引きずっているのが気になったけど、聞かなかった。
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- 24 : 2014/03/09(日) 22:05:42 :
男の人「ここが君の家?」
わたしが頷くと、男の人はとても驚いた様子でこう続けた。
男の人「私の家の隣だ。こんな近くに住んでいたなんて、素敵な偶然だね。」
ヒストリア「えっ、本当に?」
男の人「うん、そこの赤い屋根の家だよ。こんなに近くだったら、いつでも遊びに来れるね。」
そう言うと、天使のように微笑むその人。
当時ほんの子どもだったわたしの心臓が、大きく高鳴った。
ヒストリア「い、いいの?」
男の人「もちろん。君ならいつでも大歓迎だよ。」
頬が赤く染まるのを感じる。
そんな様子を見たその人は、照れちゃったかな、と言ってからかうように笑った。
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- 25 : 2014/03/09(日) 22:58:50 :
母「…ヒストリア?」
ヒストリア「お母さん!」
わたしたちの話し声を聞いたのか、お母さんが家から出てくると、男の人はお母さんに会釈をした。
男の人「初めまして。隣の家に住んでいます、…と申します。偶然街でお嬢さんにお会いしたもので、ご一緒させていただいておりました。」
ヒストリア「この人が、悪い人から守ってくれたんだよ。」
母「まあ、そうでしたか!それは…ありがとうございます。」
深々を頭を下げるお母さんに、男の人も深くお辞儀を返す。
男の人「では、わたしはこれで。またね、ヒストリア。」
わたしの頭を優しく撫でると、その人は背を向けて帰っていった。
その後ろ姿が隣の赤い屋根の家に消えるまで、わたしは目を離すことができなかった。
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- 26 : 2014/03/10(月) 16:37:15 :
それからたまに、その人の家に遊びに行くようになった。
人目をはばかるようにお母さんと2人でひっそりと暮らしていたせいで友達がいなかったので、わたしにとってとても楽しく貴重な時間だった。
ヒストリア「…ねえねえ。」
男の人「ん?」
ヒストリア「この絵本、読んで!」
この日持ってきたのは、わたしの1番のお気に入りである、騎士がお姫様を助ける絵本。
いつもお母さんの膝の上で聞く物語を、今日はあの人の隣で聴く。
文字を追う瞳は憂いを含んだように潤み、長いまつげが中性的な雰囲気を醸し出していた。
薄い唇から紡ぎ出される声は透き通るような響きを持ち、物語となってわたしの耳に吸い込まれる。
…素敵だなあ。
その人の横顔を見つめながら、幼心にそう思った。
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- 32 : 2014/03/10(月) 20:27:30 :
男の人「…トリア…ヒストリア?」
ヒストリア「!」
男の人「大丈夫?なんだかぼうっとしてるみたいだけど…」
ヒストリア「う、ううん!大丈夫。」
男の人「そう…じゃあ、続けるよ。」
話の内容は、正直何回も聞いていたからどうでもよかった。
ただ、わたしのために本を読んでくれているその人の横顔を、ずっと眺めていたかった。
男の人「…こうして騎士とお姫様は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。…素敵なお話だね。」
ヒストリア「わたしもこの話が一番好きなんだ!」
男の人「へえ、だから最初に会った時、私のことを『騎士さん』って呼んだんだね。」
ヒストリア「…あ。」
男の人「ふふ、やっぱり私が騎士で、ヒストリアがお姫様だ。」
思い出して恥ずかしくなるわたしを見て、いたずらっ子みたいに笑う綺麗な瞳。
なんだかあったかい気持ちになったのを、わたしははっきりと覚えている。
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- 33 : 2014/03/10(月) 21:29:37 :
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男の人「…そろそろ夕食の時間だね。お家に帰ろうか。」
ヒストリア「ええ〜、もうちょっとだけ…」
男の人「だーめ、また明日おいで。」
ごねるわたしを玄関まで送り出してくれたその人は、わたしの頭をぽんぽん、と優しく叩いてそう言った。
ヒストリア「…はあい。」
男の人「うん、いい子だ。」
いつもその人は、わたしが自分の家に入るまで見送ってくれる。
その日もわたしが振り返ると、ドアの陰からこちらに手を振ってくれた。
何時ものようにバイバイ、と手を振り返して、わたしは家に入った。
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- 37 : 2014/03/10(月) 22:57:35 :
ヒストリア「ただいま〜!」
…返事がない。
いつもなら、おかえり、という返事と一緒に漂ってくる夕食の香りもしない。
ヒストリア「お母さん…?」
外は薄暗くなってきているのに、部屋の明かりもついてない。
おかしいな。
ヒストリア「…!!」
キッチンの陰から、脚がのぞいている。
ヒストリア「お母さん!!」
思わず悲鳴をあげる。
お母さんは、キッチンで倒れていた。
呼びながら揺り動かしても、返事をしない。
どうしたの?
目を開けてよ…!!
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- 38 : 2014/03/11(火) 00:00:04 :
ヒストリア「…っ!!」
わたしは家を飛び出して、隣の赤い屋根の家へと走った。
あの人なら、お母さんを助けてくれるかも知れない…!!
先ほど出たばかりのドアを、何度も激しく叩く。
男の人「ヒストリア!どうしたの?」
ヒストリア「お母さんが…!」
ドアを開けたその人は、わたしの様子に目を丸くした。
わたしはろくに説明もせず、男の人の手を引いて自分の家へ連れていく。
男の人「!!」
倒れてるお母さんを見て、その人は一瞬驚いたような表情を見せて、すぐ駆け寄った。
お母さんの首に手を当てて、拍動を確認する。
…その手が、力なく降ろされた。
男の人「…ヒストリア、今お医者様と憲兵さんを呼んでくるからね。」
泣きじゃくるわたしの頭に手を置いて、そのひとは脚を引きずりながら外へ出ていった。
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- 40 : 2014/03/11(火) 01:30:11 :
- 期待してますよぉ~
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- 46 : 2014/03/11(火) 22:44:46 :
暗い部屋に、お母さんと2人取り残された。
お母さんの頬に触れると、冷たさが伝わってくる。
幼かったわたしでも分かった。
…お母さんは、もう帰ってこない、と。
しばらくした後男の人が、憲兵さんとお医者様を連れて戻ってきた。
お医者様はお母さんの手首を取ったり瞳を確認したりして、首を横に振った。
憲兵さんは、部屋をぐるぐる見て回っている。
その間、男の人はずっとわたしの肩に手を置いて、傍にいてくれた。
先ほどお母さんに触れた時とは違って、その手からは温もりが伝わってくる。
…温かい。
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- 47 : 2014/03/11(火) 23:05:32 :
医者「お嬢さん、お母さんは何か病気にかかっていたかな?」
ヒストリア「いえ…でも、最近ずっと体調がよくなくて、よく頭が痛いと言っていました。」
医者「そうか…」
憲兵「部屋にも特におかしなところはありませんね。」
医者「うむ。死因にも不審な点はない。恐らくは、その体調不良が引き起こした突然死だろう。」
憲兵「登記簿によると、このお嬢さんと2人暮らしだそうだ。女手ひとつで育てていたから、きっと心労が祟ったんだろうな。」
医者「まだこんな小さい子を残して逝くなんて、さぞ心残りだろうに…」
お医者様と憲兵さんが、わたしを哀れなものを見る目で見つめる。
医者「登記簿には、父親の名前はあるか?」
憲兵「いえ、ありません。」
医者「そうか…」
憲兵「施設に連絡をしてみます。今夜から入れるところがあればいいのですが、昨今の状況からすると、厳しいかと…」
医者「確かにな…」
男の人「…では、うちでしばらく預からせていただくというのはどうでしょうか?」
ずっと黙って様子を見ていた男の人が、はじめて口を開いた。
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- 50 : 2014/03/12(水) 00:20:08 :
ヒストリア「え…?」
憲兵「い、いえ!あなたはただの隣人ですし、そんなご迷惑はかけられませんよ。」
男の人「迷惑だなんてとんでもない。私はただ、今夜からいきなりこの子を知らない人だらけの施設に入れるのは可哀想な気がするだけです。彼女も戸惑うでしょうし…施設が見つかる僅かな時間だけでも、親代わりをさせていただきたいのですが。」
憲兵「し、しかし…」
男の人「…ヒストリア、どうかな?しばらくの間、私と一緒に暮らさないかい?」
…いきなり知らない人だらけの施設に入るのは嫌だった。
わたしは首を縦に振った。
それを見た憲兵さんとお医者様は、顔を見合わせる。
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- 55 : 2014/03/12(水) 16:25:08 :
憲兵「お嬢さんがそうおっしゃっても…」
医者「大丈夫だよ、私は彼が子どもの頃から知っているが、誠実な人間だ。心配することはないさ。」
男の人「ありがとうございます。」
男の人がお医者様と憲兵さんに頭を下げる。
憲兵「お母様のご遺体は、こちらで預からせていただきます。」
医者「…じゃあお嬢さんのことは、任せるよ。」
憲兵さんたちがお母さんを家から運び出す。
それを、わたしと男の人は静かに見送った。
担架に乗せられたお母さんに、布が被せられる。
その表情は、まるで眠っているようだった。
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- 56 : 2014/03/12(水) 18:17:47 :
男の人「…ちょっと待っててね。」
男の人の家にやってきたわたしは、ソファに座ってぼうっとする。
ついさっきまで、あの人にここで本を読んでもらっていたときとは、全然違った気持ちだった。
…いつも隣にいたお母さんが、急にいなくなる。
そんなこと、想像したこともなかった。
ヒストリア「…うぅ…」
少し落ち着いていた涙が、また零れてくる。
止めようと思っても、止まらない。
男の人「ヒストリア…」
部屋に戻ってきた男の人が、わたしの様子に気付いて声をかけてくれる。
その手に持つ盆には、温かそうに湯気をあげるカップがふたつ乗っていた。
その盆をテーブルに置き、わたしの隣に座る。
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- 63 : 2014/03/12(水) 21:25:19 :
男の人「辛かったね。」
ヒストリア「…ごめんなさい。」
男の人「ううん、泣くのは当然だよ。むしろ泣いてくれてよかった。」
ヒストリア「え…?」
男の人「涙が全て悪いものだとは限らないんだ。お母さんを想って泣くのは当たり前のこと。君は小さいから分からないかも知れないけど、涙を流すことで気持ちが少し軽くなることもあるんだよ。」
男の人「それに…泣き顔をみせるのは、私を信頼してくれているからでしょう?」
男の人はそう言うと、わたしの涙で濡れた頬を拭ってくれた。
男の人「だから今は我慢しないで、たくさん泣いていいんだよ。」
その言葉に、わたしは声を上げて泣き出した。
ずっと我慢してた寂しさや不安が、堰を切ったようにいっぺんに流れ出てきた。
そんなわたしを、男の人はそっと抱き寄せてくれる。
…いつもお母さんが、そうしてくれたように。
温かい。
生きてるひとって、温かいんだね…
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- 69 : 2014/03/12(水) 22:54:47 :
どのくらい泣いていたんだろう。
気付いたときには、カップの中の紅茶はすっかり冷め切っていた。
男の人「落ち着いた?」
ヒストリア「…うん、ありがとう。」
そう言うと、その人はふわりと笑った。
男の人「よかった。さ、冷めても美味しい葉っぱで紅茶を淹れたんだ。いただこうか。」
カップを手に取って、口へ運ぶ。
すっかり冷めていたけど、豊かな紅茶の香りが鼻を抜けた。
男の人「どう?美味しい?」
その言葉に頷くと、男の人はほっとしたように微笑んだ。
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- 73 : 2014/03/12(水) 23:17:27 :
男の人「…この紅茶、おまじないをかけて淹れたんだ。」
ヒストリア「おまじない?」
男の人「うん。ヒストリアのこれからの人生の中で、たくさんのいいことがあるように、ってね。」
カップの水面に映る自分の顔を見つめる。
ヒストリア「…ありがとう。」
紅茶を飲みながら、ぼうっと考えた。
いいこと、あるといいな。
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- 76 : 2014/03/12(水) 23:35:10 :
ヒストリア「…ねえ。」
男の人「ん?」
ヒストリア「脚、どうしたの?」
ずっと気になってたことを聞いてみた。
男の人は、ああ、と言うと話し始める。
男の人「仕事で怪我をしてしまってね。…調査兵団、って知ってるかい?」
ヒストリア「ちょうさへいだん?」
男の人「うん。簡単に言うと、壁の外に出て、巨人と戦う仕事だよ。」
ヒストリア「えっ!!」
わたしの驚いた様子に、その人は優しくこう続けた。
男の人「壁の外に出ることは…想像出来ると思うけど、とても危険なことなんだ。こんな風に怪我もしてしまうしね。だから、あまりなりたがる人はいないんだ。」
ヒストリア「どうして、その仕事をしようと思ったの?」
男の人「…兄の影響なんだ。」
そう言うと男の人は、どこか遠いところを見るようにして口を開いた。
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- 80 : 2014/03/13(木) 16:00:14 :
男の人「私の兄は歳が離れていたんだけど、とても優秀でね。調査兵団の中でも、トップを争うくらいの実力者だったんだよ。その兄に憧れて、私も調査兵団に入ろうと思ったんだ。」
ヒストリア「お兄さん、強いんだ。」
男の人「うん、とても強かった。」
男の人「でもつい1週間前に、巨人に喰われて死んでしまったんだ。」
ヒストリア「え…?」
男の人「私の父と母も調査兵団の団員だったんだけど、私が幼い頃に巨人に食べられて死んだ。」
ヒストリア「それじゃあ、家族は…?」
男の人「誰もいないよ。」
男の人「…もう、1人ぼっちだ。」
男の人が、膝の上で拳をぎゅっと握った。
ヒストリア「…でも、わたしがいるよ。」
男の人「え?」
彼の拳の上に、自分の手を乗せる。
…わたしの温もりが、伝わるように。
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- 81 : 2014/03/13(木) 17:36:32 :
男の人のびっくりしたような視線と、わたしの目線が交差する。
するとその人は、少し涙の浮かんだ綺麗な瞳を細めて笑った。
男の人「…そうだね、1人ぼっちじゃないね。」
ヒストリア「うん。」
男の人「私が君を慰めてたはずなのに、まさか反対に慰められるなんてなあ。…今度はヒストリアが、私を助ける騎士になってくれたみたいだ。」
ふふふ、と笑った男の人につられて笑顔になる。
ひとときだけでもそれぞれに起きた悲しい出来事を忘れたかったわたしたちは、その夜は早めに床に就いた。
男の人「…じゃあ、おやすみ。」
ヒストリア「おやすみなさい。」
布団をかぶって横になる。
窓から入ってくる月明かりが、ぼんやり部屋を照らした。
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- 84 : 2014/03/13(木) 20:21:13 :
目を閉じると、寂しさがよみがえってきた。
…お母さん。
どうして急にいなくなっちゃったの?
これからわたし、どうなるんだろう。
施設が見つかったら、知らない人たちと一緒に暮らさないといけないのかな。
そう考えると、不安でいっぱいだった。
…眠れない。
隣をみると、男の人が目を閉じて横になっている。
その金髪に月の光が反射して、淡い光を放っていた。
ヒストリア「…起きてる?」
男の人「起きてるよ。眠れないの?」
ヒストリア「うん…」
男の人がベッドから降りてきて隣に座り、わたしの髪を撫でる。
…なんだか心がくすぐったくなるような感じがした。
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- 87 : 2014/03/13(木) 21:59:00 :
ヒストリア「ねえ」
男の人「ん?」
ヒストリア「…あの絵本、読んで?」
眠れない夜、いつもお母さんが読んでくれた絵本。
…騎士がお姫様を助けるお話。
男の人が絵本を開いて、読み始める。
その優しい声が、静かな部屋によく通る。
悪い人に連れて行かれそうになった時
わたしを預かりたいと言ってくれた時
…どうしてこの人は、わたしを助けてくれたんだろう。
やっぱり彼は、騎士さんなのかな。
そんなことを考えながら、いつの間にか眠りについていた。
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- 88 : 2014/03/13(木) 23:15:13 :
翌日。
お母さんの葬儀が行われた。
憲兵さんとお医者様が、全て段取りをしてくれたみたい。
棺に入れられたお母さんの顔は、まるで生きてるみたいだった。
その周りにはたくさんの花が敷き詰められていて、近寄ると、ふわりといい香りがした。
神父様が何か言葉を述べて、棺の蓋が閉められる。
そして、お母さんはお墓に埋められて、土へと還っていった。
石に刻まれた、お母さんの名前を見つめる。
…改めて、お母さんはもういないんだと知らされたような気がしていた。
男の人「夜ご飯は何にしようか。」
ヒストリア「…」
その帰り道、元気のないわたしに男の人が話しかけてくれる。
けど、わたしの気持ちは沈んでいた。
悲しみと、昨日の夜に感じた不安が、また心の中に渦巻いていた。
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- 94 : 2014/03/14(金) 02:36:25 :
男の人「…ヒストリア。」
男の人は立ち止まると、俯いているわたしの頭に手を乗せた。
顔を上げると、その人はわたしを覗き込んで笑顔を見せてくれる。
男の人「大丈夫だよ、ヒストリア。私がついているから。」
そう言って、わたしの頬を撫でる。
…なんだかわからないけれど、身体の真ん中から元気が湧いてくるような気がした。
お母さんは、もういない。
けど、お母さんのようにわたしを大切にしてくれる人がいる。
それが、幸せだと思うことができた。
ヒストリア「…うん!」
笑顔でそう言うと、その人も笑顔で応えてくれた。
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- 95 : 2014/03/14(金) 02:38:03 :
男の人に手を引かれながら赤い屋根の家へ戻ると、家の前に綺麗な光沢を放つ馬車が止まっていた。
引いているのは、この辺の貧しい街ではまず見ないような、立派な白い馬だ。
男の人「…なんだろう。」
家のドアをノックしている執事のような服装をした初老の男性に、男の人が声をかける。
男の人「あの、すみません。うちに何かご用でしょうか?」
初老の男性「おお、これは失礼致しました。こちらのお宅で、ヒストリアを預かってくださっているとお伺いしたもので。」
初老の男性は、男の人の方に向き直ると、恭しくお辞儀をしてこう言った。
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- 100 : 2014/03/14(金) 17:47:32 :
男の人「…ヒストリアのお知り合いの方でしょうか?」
ヒストリア「わたし、こんな人知らないよ…?」
わたしは男の人の服の袖を掴んで、影に隠れた。
「ステファン、後は私が話そう。」
後ろを振り向くと、30代くらいの貴族のような立派な服装をした男性が、馬車から降りて来てこちらに向かってきていた。
初老の男性「はっ、かしこまりました。」
ステファン、と呼ばれた初老の男性は、わたしたちに一礼して馬車へと戻っていく。
男の人「…レイス卿?!」
貴族のような服装をした男性…レイス卿の姿を見た男の人は、驚いた様子で敬礼をした。
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- 101 : 2014/03/14(金) 19:48:23 :
レイス卿「いやいや、そんなに固くならなくて結構ですよ。この度はヒストリアがお世話になったようで、感謝致します。」
男の人「い、いえ!」
レイス卿「…実はヒストリアは、私の妾の子どもなのです。今回その母親が死去したと聞いて、彼女を引き取りに伺った、という訳でして。」
男の人「では…あなた様が、彼女のお父上であると?」
レイス卿「まさしくその通り。ヒストリアは、正真正銘私の娘です。」
ヒストリア「え…?」
わたしは男の人の影から、レイス卿の姿を覗き見た。
綺麗に整えられた口ひげに、優しそうな表情。
…確かに瞳の色は、わたしと同じ碧色をしている。
その瞳が、わたしをとらえて話しかける。
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- 102 : 2014/03/14(金) 21:21:39 :
レイス卿「…ヒストリア。」
レイス卿「大きくなったね。小さい頃に何度か会ったことがあるんだけど、ヒストリアは覚えていないだろうね。」
ヒストリア「…」
レイス卿「急にびっくりしたと思うけど、今話したことは全て本当のことなんだ。君は私の家族…レイス家の一員だ。」
ヒストリア「か、ぞく…」
男の人の顔を見上げると、いつもの優しい眼差しでわたしを見つめていた。
男の人「よかったね、ヒストリア。君は1人ぼっちじゃなかった、家族がいたんだよ。」
ヒストリア「でも…」
男の人「昨日の紅茶のおまじないが、もう効いたのかな。」
おまじない…
『いいこと』がありますように、って?
お父さんがいたことは嬉しい。
一緒に暮らそう、って言ってくれたことも嬉しい。
…けど、純粋に喜べないのはなんでだろう。
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- 103 : 2014/03/14(金) 23:13:14 :
男の人「さあ、そうと決まったら支度だ。荷物をまとめて、家を出る準備をしよう。」
ヒストリア「…うん。」
レイス卿「本当に、君には迷惑をかけたね。母親が亡くなった時も、いろいろと世話をしてくれたと聞いたよ。もう何とお礼をしたらいいか…」
男の人「いえ!お礼なんて。隣人としての務めです。」
では、と言って、男の人とわたしは家に入った。
男の人「さて、お洋服は全部まとめてあったよね。あとは絵本と…」
ヒストリア「…ねえ」
男の人「ん?」
ヒストリア「わたし、行かなくちゃ駄目?」
わたしがそういうと、男の人は驚いた様子でわたしを見つめた。
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- 108 : 2014/03/15(土) 16:54:04 :
男の人「駄目って…レイス卿はヒストリアのお父さんなんだよ?一緒に住むのは、家族として当然のこと。今までは事情があって一緒に暮らせなかった分、これからはきっと楽しい毎日になるよ。」
ヒストリア「でも…」
男の人「…私なら大丈夫。もうすぐ怪我も治るし、そしたら兵団に戻って仲間たちと楽しく暮らすから。」
わたしの心を読んだかのようにそう言う男の人。
その柔らかな表情は、夕日に照らされていた。
ヒストリア「…また会える?」
男の人「会えるさ。」
ヒストリア「本当に?」
男の人「…私はヒストリアの騎士だよ。困った時は、いつでも会いに行くから。ね?」
男の人は、わたしの手を握ってそう言った。
その瞳の奥に、少し淋しさが見えたのは気のせいかな。
男の人「さ、お父さんをあまり待たせてはいけないよ。支度をしよう。」
ヒストリア「…うん。」
鞄に洋服や絵本やおもちゃを詰めて、ドアを開ける。
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- 109 : 2014/03/15(土) 19:57:44 :
男の人「お待たせしました。」
レイス卿「いやあ、こちらこそ急にすまなかったね。ではヒストリア、彼にきちんとお礼を言いなさい。」
ヒストリア「…ありがとう、ございました。」
男の人「…またね。」
ぺこり、と頭を下げると、男の人はいつもの美しい笑顔を見せてくれた。
レイス卿に手を引かれて、馬車に乗せられる。
ステファン「お嬢様、最初は揺れますから、しっかりつかまっていてくださいね。」
ヒストリア「…はい。」
お嬢様、なんて呼ばれたことは勿論なかったから、なんだか心地が悪かったのをよく覚えている。
馬車の窓から外を見ると、男の人がこちらを見ていた。
わたしの視線に気付くと、微笑んで手を振ってくれる。
…本当に、また会えるよね?
馬車が走り出した。
赤い屋根の家が、車窓から消える。
窓から身を乗り出すと、男の人はまだこちらを見ていた。
その表情は、よく見えなかった。
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- 116 : 2014/03/16(日) 13:54:32 :
・
・
・
「タ……リスタ…クリスタ!!!」
クリスタ「!!!」
わたしを呼ぶ声に、はっと目が覚める。
目の前に飛び込んできたのは、切れ長の目に頬のそばかす…ユミルだ。
ユミル「いつまでも寝てるから、置いてこうかと思ったよ。」
クリスタ「ごめん、ユミル…」
ユミル「早く支度しな。結団式に遅刻だなんて、そのあと上官方に何言われるか分かんねぇからな。」
クリスタ「う、うん。」
…ゆめ、か。
たまに見る昔の夢。
『大丈夫だよ、ヒストリア。私がついているから。』
夢の中で聞いた、男の人の声が蘇ってくる。
優しく乗せられた手の感覚が残っているような気がして、頭に手を置いた。
そのままぼうっと考え込む。
夢の中に出てきたあの人の顔には、靄がかかっていたり逆光になっていたりしてよく分からなかった。
…どうして、顔も名前も思い出せないんだろう。
これまでにも何度も思い出そうとしたけど、記憶の彼方に消えてしまっていた。
はあ、とため息を漏らす。
-
- 117 : 2014/03/16(日) 16:25:13 :
ユミル「おい、クリスタ!遅れるぞ!」
クリスタ「あ、待って!」
…レイス家にきてからは、散々な日々が待っていた。
お父様である貴族のレイス卿と、その執事のステファンはとても良くしてくれたけど、レイス卿の奥様…義理のお母様を始め、わたしのことを嫌な目で見る人の方が多かった。
『妾の子のくせに』
『あんたも死んでしまえばよかったのよ』
『よく生きていられるわね』
そんな言葉、何度言われたかわからない。
そんなとき、心の中で男の人に何度も何度も助けを求めたけど、あれ以降一度も会っていない。
…また会えるよって、言ってくれたのにな。
-
- 118 : 2014/03/16(日) 19:56:54 :
3年前にお父様が亡くなって家の跡継ぎ問題が勃発すると、それはさらにひどくなった。
わたしに家を継がせないため、いっそ殺してしまおうというような計画までされていたらしい。
その時にステファンが、身分を隠して訓練兵に志願させ、そこで一般人として生活させるから、どうか命だけは助けてやってくれと嘆願してくれた。
家を継ぎたかった義理のお母様をはじめ、親族たちはそれを了承した。
…ただし、レイス家の名を捨てることをわたしに求めた。
わたしはそれに応じる他なかった。
家を出る時ステファンがわたしに、これからの人生がクリスタルのように輝きますように、という願いを込めて
『クリスタ』
という名前をくれた。
こうしてわたしは、『訓練兵 クリスタ・レンズ』として第二の人生を歩んでいる。
そして今日から、『調査兵団兵士 クリスタ・レンズ』としての生活が始まろうとしていた。
-
- 122 : 2014/03/16(日) 21:22:24 :
エルヴィン「…では改めて、君たちの入団を心より歓迎する。以上だ。」
なんとか遅刻せずに間に合って、調査兵団の結団式に出席する。
今期の入団者は例年よりも格段に多いらしいけど、それでも20人弱だった。
エルヴィン団長の挨拶に続いて、上官方の紹介が行われる。
分隊長のハンジさんが目をキラキラさせてわたしたちに挨拶をしてくれたのが、とても印象的だった。
…その後ろにいた副官のモブリットさんは、終始ヒヤヒヤしているように見えたけれど。
かなりの変人って噂を聞いたことがあったから、何か変なことをしないか心配していたのかな。
そうして何人かずつ壇上に上がって、一人一人挨拶をしていく。
そして
その人が壇上に上がった時、わたしの心臓は止まりそうになった。
-
- 129 : 2014/03/16(日) 22:59:32 :
「今日からはみんなは私たちの仲間だ。どうぞよろしく。」
ぐるりと部屋の中を見渡して、簡単な言葉で挨拶を済ませる男性。
その声は、凛とした響きをもってわたしに伝わった。
ただぼうっとその人を見つめてしまう。
あの人は、もしかして…
ユミル「…おい、お前ああいうのがタイプなのか?」
クリスタ「え…ええ?!」
ユミル「見れば分かるさ。口が半開きになってるぞ。」
隣にいたユミルがわたしに耳打ちをして、値踏みするようにあの人を見た。
リヴァイ「…おい、そこ。うるせぇぞ。」
クリスタ「は、はい!」
ユミル「失礼しました!」
リヴァイ兵長がわたしたちに気付いて注意をしたとき、その男性の視線がわたしの視線とぶつかった。
その瞳からは、何も読み取れなかった。
-
- 130 : 2014/03/16(日) 23:58:42 :
挨拶が一通り終わると、そこからわたしたち新兵の歓迎パーティーが始まった。
食堂のテーブルには、普段は絶対食べられないようなご馳走の数々が所狭しと並んでいる。
サシャはお皿ごと食べてしまうんじゃないかという勢いで、食べ物を口に運んでいた。
サシャ「クリスタ!このお肉、とっっっても美味しいですよ!!」
クリスタ「ありがとう、サシャ。でもわたし、なんだか食欲がないんだ。」
サシャ「ええっ?!!?もったいない…」
そう言うとサシャは、お皿からこぼれ落ちる程たくさんのお肉を乗せて、次のテーブルへと移っていった。
せっかくのお料理を食べても、味がよくわからない。
…そんなことより、ついあの人を目で追ってしまう。
だから余計に食欲がないのかな。
-
- 137 : 2014/03/17(月) 16:06:17 :
ユミル「…ほんと、あんなやつのどこがいいんだか私にはさっぱり分からないね。」
クリスタ「?!…ユミル。」
いつの間にかユミルが隣にいて、フルーツを頬張っている。
クリスタ「…そんなんじゃないよ。」
ユミル「ん?じゃあなんで、さっきからずーーっとあいつばっかり見てるんだ?」
クリスタ「そ、それは…昔お世話になった人に似てるなって。」
ユミル「なーーるほど、女神クリスタの初恋の相手ってわけか。妬いちゃうなあ」
クリスタ「だ、だから違うってば!!」
そう言いながらも、顔が赤くなっているのが自分でも分かった。
ユミル「そっかそっか。ま、せいぜい頑張りな。」
ユミルはにんまり笑うと、わたしの肩をぽんと叩いてフルーツのお代わりを取りに行った。
…もう、ユミルったら。
-
- 138 : 2014/03/17(月) 18:11:14 :
「あれ、君はもう食べないの?」
その声にドキっとして振り向くと、笑顔のモブリットさんがいた。
クリスタ「あっ、いえ。いただきます。」
モブリット「うんうん、たくさん食べてね。」
クリスタ「ありがとうございます。あの…」
モブリット「ん?」
クリスタ「モブリットさんって、調査兵団に入団されてどのくらいになるんですか?」
モブリット「そうだなあ、もう12年になるかな。」
…それなら、あの人のこともよく知ってるかも知れない。
思い切って尋ねてみた。
モブリット「ああ!あいつは僕と同期なんだ。立体機動の腕もすごく良くてね。一部では特別作戦班入りも噂されてたんだけど…」
クリスタ「けど、どうされたんですか?」
モブリットさんは、少し声を落として言葉を続けた。
-
- 139 : 2014/03/17(月) 20:28:57 :
モブリット「10年くらい前、右脚に大怪我を負ったんだ。無事に怪我は治ったんだけど、その後遺症で今でもたまに痛みがあるらしくてさ。」
クリスタ「10年くらい前…ですか。」
10年前。
わたしと男の人が出会った時期とぴたりと一致する。
足を引きずっていた、男の人の後ろ姿を思い出した。
もしかしたら…いや
きっと
絶対
あの人が、わたしの騎士さんだ…!
クリスタ「そうですか…ありがとうございます。」
モブリット「あ、ねえ!彼と話をしなよ。せっかくなんだし、ね?」
去ろうとするわたしを呼び止めて、モブリットさんがウィンクをする。
-
- 143 : 2014/03/17(月) 22:13:23 :
クリスタ「え、えええ!いいですよ、そ、そんな…」
モブリット「彼はあの顔立ちだから、毎年新兵にも人気があるんだ。かと言って浮いた話は聞いたことがないけど…でも君は可愛いし、期待できるかもね。」
クリスタ「ち、ちが…!」
わたしの制止を振り切って、モブリットさんはあの人を呼びに行った。
どうしよう!!!
おろおろしている間に、モブリットさんがあの人に話しかけるのが見えた。
自分のお皿に目を落としていたあの人が、モブリットさんを見て、次にわたしを見る。
そしてモブリットさんにひとつ頷くと、2人でこっちにやってきた。
ど、どうしようどうしよう!!!
困り果ててユミルの方へ目をやると、彼女はにやりと笑って親指を立てた。
もう〜〜〜!ユミルったら!!
-
- 144 : 2014/03/17(月) 23:14:33 :
モブリット「この子だよ、君と話したがっていたの。」
男の人「へえ…可愛い子だね。」
戻ってきたモブリットさんとその人を前に、わたしはとうとう固まってしまった。
あの人の視線がわたしに注がれる。
クリスタ「あ…の、えっと…」
男の人「君、名前はなんていうの?」
クリスタ「ヒ…あの、クリスタ…レンズです。」
男の人の茶色の瞳を見上げるも、そこからはやはり何も読み取れなかった。
男の人「…クリスタか。よろしくね、クリスタ。」
クリスタ「は、はい!えっと、よろしくお願いします。」
緊張でかちかちの身体を無理矢理倒してお辞儀をすると、今にも吹き出しそうなユミルとモブリットさんの姿が目に入る。
恥ずかしい…!!
湯気が出るんじゃないかというくらい、顔が熱かった。
-
- 147 : 2014/03/18(火) 12:29:45 :
モブリット「…っあ!ぶ、分隊長!!何してるんですか全く!!!」
モブリットさんの顔が急に驚きと呆れの表情に変わる。
ちらりと目をやると、ハンジさんがアルミンに、このまま取って食うんじゃないかという勢いで話しかけていた。
アルミンの動揺がここまで伝わってくる。
モブリット「あの人に巨人の話をさせたらああなるんだよなあ、君も気をつけてね。」
クリスタ「は、はい。」
モブリット「じゃあ後は2人で楽しんで。またね!」
クリスタ「ええ?!モブリットさ…」
呼び止める間も無く、モブリットさんはハンジさんをアルミンから引き剥がしにかかっていた。
男の人と2人、取り残されるわたし。
と、とりあえず何か話さなくちゃ…
-
- 150 : 2014/03/18(火) 16:13:07 :
クリスタ「も、モブリットさん、大変そうですね…」
男の人「そうだね。でも彼も長い間ハンジ分隊長に仕えてるから、もう慣れっこなんじゃないかな。」
クリスタ「そうなんですか…」
…会話が続かない。
何か話しかけようにも、まず目をまともに見ることすら出来なかった。
男の人「…クリスタは、どうして調査兵団に入ったの?」
クリスタ「え?」
男の人「事前に貰ってた新兵のリストを見たんだけど、君、今期の10位なんだってね。どうして憲兵団行きの権利を捨ててまで、うちに来たんだい?」
突然の質問に顔を上げると、男の人のガラス玉のように透き通った瞳がわたしをじっと見つめていた。
なんで、調査兵団に入ったのか。
…そういえば、なんでだっけ。
とりあえず何か答えなくてはと思い、口を開く。
-
- 151 : 2014/03/18(火) 18:23:23 :
クリスタ「…っと、人類の進撃の糧になれたら、と思いまして…」
男の人「そっか。今期の入団者は何故か成績上位者が多いから、私たちも期待しているよ。頑張ってね。」
クリスタ「は、はい!」
そう言うと男の人は、にこりと笑ってどこかへ行ってしまった。
…残念だけど、少しほっとしているわたしがいた。
それと入れ替わるように、ユミルがやってくる。
ユミル「よう、どうだった?初恋の人との会話は。」
クリスタ「も、もう!違うったら!」
そんなわたしの様子を見たユミルは、愉快でたまらないといった様子でけらけら笑った。
…そういえばあの人、わたしのこと覚えてないみたいだったなあ。
10年前だし、名前も違うし、まだすごく小さかったっていうのもあるかもしれないけど…
今度、思い切って聞いてみよう。
ヒストリアという女の子を覚えていますか?って。
-
- 152 : 2014/03/18(火) 20:45:31 :
それからの毎日は、エルヴィン団長の考案した長距離索敵陣形を頭に入れることに尽力した。
いよいよ壁外に出るのか…
配られた陣形の紙を改めて確認する。
わたしは右翼中央、伝達の位置。
近くにはジャンやアルミン、ライナーがいる。
ユミルと真反対の配置になってしまったのが、少し不安だけど…
ユミル「なんだ、私とは少し離れたな、クリスタ。」
クリスタ「そうだね…」
紙に目を落として残念そうに話しかけてきたユミルの口角が、ある名前を見てにやりと上がる。
ユミル「おい、お前あの上官の近くの配置じゃねぇか。やったな!」
クリスタ「ちょ、ちょっとユミル?!声が大きいよ…」
ユミル「はは、悪い悪い。けど、これチャンスなんじゃねぇか?しっかりアピールしてきな。」
クリスタ「!!もう、ユミルったら…」
『…初恋の相手ってわけか。』
歓迎パーティーのときにそう言ったユミルの言葉を思い出して、恥ずかしくて顔を紙に埋める。
それを見たユミルはまた愉快そうに笑って、わたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
-
- 158 : 2014/03/18(火) 22:53:13 :
・
・
・
町人「おい、朝より人数が少なくなってないか?」
町人「かなり減ってるな…」
町人「朝から騒ぎ回って出て行ったかと思えば、夕食時にはもう帰ってきやがった。何しに行ったんだ?」
ぼろぼろのわたしたちに、容赦ない言葉が浴びせられる。
一月後、壁外調査に出かけたわたしたち調査兵団は、知性を持った女型の巨人に襲われて大損害を負い、命からがら帰還した。
ただただ飛んでくる罵声に、わたしたちはじっと下を向いて通り過ぎることしか出来なかった。
わたしは今回初めて、死ぬということがどういうことなのか、分かった気がした。
目の前で巨人に食べられた同期や、叩き潰された先輩方。
ぜんぶ、ぜんぶ、一瞬だった。
お母さんが死んだ時も、お父さんが死んだ時も、そうだった。
何の前触れもなく、急に命の炎は消える。
…もちろん、きっとわたしが死ぬときも。
それをとても恐ろしく感じた。
なにも残せないまま、消えるなんて嫌だ。
ちらりと斜め前を行くあの人の姿を盗み見る。
唇を噛んで、悔しそうな表情をしていた。
…わたしが消えてしまう前に、きちんと話をしておかなくちゃ。
そう心に決めて、わたしはまた俯いた。
-
- 159 : 2014/03/18(火) 23:30:48 :
それから数日後の夜。
月明かりが照らす廊下を、1人歩く。
ひとつの部屋の前で立ち止まって、深呼吸をした。
…落ち着いて。大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、ドアをトントンとノックする。
一呼吸あってから、どうぞ、と言う通る声がドアの向こうから聞こえた。
クリスタ「…失礼します。」
部屋に入ってきたわたしにその人は、書類に落としていた目線をこちらに向けて微笑んだ。
男の人「やあ、クリスタ。どうぞ座って。」
クリスタ「あ、ありがとうございます。」
促されてソファに腰掛ける。
…やっぱり顔を見ると緊張するな。
まず、どうやって切り出したらいいんだろう?
-
- 160 : 2014/03/19(水) 14:06:43 :
なんだか落ち着かなくて部屋をぐるりと見渡すと、出窓のところにシンプルな枠に入れられた1枚の写真が置いてあるのが目に入った。
少し色あせた写真の中から、調査兵団の兵服を着た2人の男性が、こちらに眩しい笑顔を向けている。
その写真を見て、10年前のことをまたひとつ思い出した。
クリスタ「あの、この写真って…」
男の人「ああ、右が私だよ。左は私の兄だ。」
書類を片付けながら答えたその人の方を見ると、窓から差し込む柔らかな月光が、彼の金髪に淡い光を与えていた。
…あの時と同じだ。
『兄の影響なんだ。』
なぜ調査兵団に入ったのか尋ねた幼い頃のわたしにそう答えた男の人の姿と、目の前にいる上官の姿が重なる。
-
- 164 : 2014/03/19(水) 18:52:26 :
クリスタ「…お兄さんがいらっしゃるんですか?」
男の人「…いた、んだ。」
疑惑が確信に近付く。
クリスタ「…ごめんなさい…」
男の人「ううん、もう10年も昔のことだからね。」
あの人もまた、調査兵団の兵士であったお兄さんを亡くしていた。
しかも、今から10年前に。
疑惑が確信に変わる。
わたしは唾を飲み込んで、口を開いた。
クリスタ「…調査兵団に入団されたのは、そのお兄さんの影響なのですよね?」
男の人「…?そうだけど、どうしてそれを…?」
クリスタ「10年前、あなたからお聞きしました。」
それを聞いた彼は手を止め、驚いた表情でわたしをまじまじと見た。
その瞳をまっすぐ見つめ返しながら、わたしは言葉を続ける。
-
- 165 : 2014/03/19(水) 20:40:00 :
クリスタ「…わたし10年前に、悪い人から調査兵団の男の人に助けてもらったことがあるんです。」
男の人「…」
クリスタ「家が隣だったから、そのあとも仲良くしてもらってて…」
クリスタ「えっと、お母さんが死んじゃったときも、その人は面倒を見てくれて…」
クリスタ「あの、えっと…」
必死に言葉を紡ごうとするも、うまく伝えることが出来ない。
その間もその人は、わたしのことをじっと見つめていた。
クリスタ「あの…その男の人って、あなたですよね…」
クリスタ「…ナナバさん。」
ナナバさんはわたしの言葉を聞くと、何かを思案するように目を伏せた。
長いまつ毛が、その瞳の色をわたしから隠す。
-
- 166 : 2014/03/19(水) 22:09:09 :
ナナバ「…申し訳ないけど、それは私じゃないよ。」
クリスタ「え?」
ナナバ「私は女の子を助けた覚えはないし、人違いじゃないかな。」
クリスタ「そ、んな…」
ナナバさんは、ごめんね、と言って申し訳なさそうにわたしを見つめている。
本当に、違うの…?
ナナバ「…そうだ、ちょうど紅茶を淹れてたところだったんだ。クリスタも、少し一緒にどう?」
クリスタ「…いただきます。」
席を立って戻ってきたナナバさんの手には、お盆の上に乗せられたカップが2つ。
その1つが、わたしの前に置かれる。
ナナバ「…はい、どうぞ。」
クリスタ「ありがとうございます。」
一口飲むと、豊かな茶葉の香りが鼻を抜けた。
温かな紅茶の香りとしばしの沈黙が、わたしたちを包んだ。
-
- 171 : 2014/03/20(木) 00:07:53 :
ナナバ「…クリスタは、その人を探して調査兵団に入ったの?」
クリスタ「え?」
予想外の問いに、顔を上げる。
ナナバ「いや…パーティーの時にも調査兵団に入った理由を聞いたけど、あんな模範解答みたいな答えだと、ね。」
クリスタ「わたしは…」
また俯くと、カップの中に沈んでいる自分の顔が映る。
クリスタ「…そうかもしれません。」
ナナバ「そうか…」
なんで調査兵団に入ったのか。
…正直、わたし自身もよくわからなかった。
けど
『調査兵団って、知ってるかい?』
そう言った男の人の面影をずっと追いかけて、知らず知らずのうちに入団を決めていたのかも知れない。
それ以降わたしもナナバさんも、しばらく口を開かなかった。
-
- 172 : 2014/03/20(木) 01:36:26 :
ナナバ「…そろそろ消灯時間だ。宿舎に戻った方がいいよ。」
静寂を破って、ナナバさんがわたしに話しかける。
わたしはひとつ頷くと、すっかり冷めてしまった紅茶のカップに手をかけた。
ナナバ「その紅茶は冷めても美味しい葉っぱで淹れたからね。最後まで美味しかったでしょう?」
クリスタ「!!その言葉…」
ナナバ「え?」
あの男の人も、お母さんが亡くなった夜に紅茶を淹れてくれたとき、同じようなことを言っていた。
クリスタ「い、いえ…なんでもないです。」
ナナバ「?そう…」
そのまま挨拶をして、もやもやとした気持ちを抱えたままナナバさんの部屋を後にした。
-
- 173 : 2014/03/20(木) 18:20:29 :
部屋に戻ってくると、ユミルがドアの前で待ち構えていた。
ユミルにだけは幼かった頃の話や、あの男の人との話、実は貴族の家の出であることを話していた。
…そして今日、ナナバさんに話をしに行くことも。
ユミル「おう、どうだった?逢引は。」
クリスタ「ゆ、ユミル!!」
ユミル「悪い悪い。…で、どうだったんだ?」
クリスタ「うん…人違い、だったみたい。」
わたしが俯いて答えると、ユミルはひとつ息を吐く。
ユミル「そっか…ならクリスタの勘違いだったってことだな。また探せばいいさ。その騎士さんとやらを、よ。」
クリスタ「うん…」
部屋に戻っても、もやもやした気持ちは晴れなかった。
…本当に人違いなのかなあ。
ベットに潜り込んでそんなことをぼんやり考えているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。
-
- 180 : 2014/03/20(木) 20:41:56 :
その翌日。
わたしたち新兵は、講堂に集められた。
分隊長のミケさんが、結団式の時より少し人数の減ったわたしたちをぐるりと見渡す。
ミケ「…急に集めて、すまなかったな。」
ミケさんが低い声で話し始めた。
ミケ「本日より君たちには、ウォール・ローゼ南区の施設へ移ってもらうことになった。」
サシャ「南区ですって?!」
コニー「俺の故郷の近くだ!母ちゃんたちに会えるかも知れねえな。」
にわかに騒がしくなる新兵を手で制し、ミケさんは話を続ける。
ミケ「…まあ簡単に言えば休暇のようなものだ。訓練のことは忘れて、しばらく壁外調査の疲れをゆっくり癒してくれ。」
ミケ「夕刻にはここを出発する。それまでに支度を整えて、またここに集合するように。以上だ。」
その言葉で解散になったが、わたしは何か引っかかるものを感じていた。
-
- 181 : 2014/03/20(木) 22:37:42 :
ユミル「…おい、なんかおかしいと思わないか?」
クリスタ「うん、わたしも思った。」
訓練をしない。
常に身体を鍛えておく必要がある兵士にとって、そんなことはあり得ない。
しかもミケさんは、その期間を明らかにしなかった。
ウォール・ローゼ南区は、お世辞にも栄えているとは言えないような辺鄙なところ…
何かからわたしたちを守りたいのかな?
それとも…
何かからわたしたちを隔離したいのかな。
日没から馬を走らせて、ウォール・ローゼ南区の施設に着いたのは、次の日の夜も深くなった頃だった。
リーネ「みんな、今日は長距離の移動で疲れたでしょう?ゆっくり休んでね。おやすみ。」
上官のリーネさんが部屋の灯りを消しに来る。
わたしを含めみんな長旅で疲れていたので、すぐに床に就いた。
微睡む意識の中、ふと気付く。
…リーネさんの腰にはしっかりと、立体機動装置が装備されていたことに。
-
- 182 : 2014/03/20(木) 23:40:00 :
何日も何日も
施設で何をするでもなく過ごす。
ただ朝を迎えて、日が沈むまで何もしない。
最初は休暇気分だった新兵も、だんだんと不安を感じざるを得なかった。
ライナー「…なんで何日も私服で待機なんだ?戦闘服も着るな、訓練もするな、だぞ?」
ライナー「なぜだ、俺たちは兵士だぞ?」
全員集められていたテーブルの席で、ライナーが疑問を吐き出す。
ライナー「さらに疑問なのは上官たちの完全装備だ。ここは前線でもねぇ壁の内側なのに、何と戦うってんだ?」
コニー「う〜ん、この辺りはクマが出るからだな。」
サシャ「ええ、クマですね。」
いまだに呑気なサシャとコニーが、退屈そうな様子で答える。
サシャは眠くなったのか、ぺたんとテーブルに耳をつけて横になった。
サシャ「あれ?!!?」
サシャ「足音みたいな地鳴りが聞こえます!!!」
みんな「?!?」
起き上がってそう叫んだサシャに、わたしたちは驚きの目を向ける。
-
- 183 : 2014/03/21(金) 00:52:20 :
コニー「は?」
ライナー「何言ってんだサシャ?ここに巨人がいるって言いたいなら、そりゃあ…」
ライナー「…ウォール・ローゼが破壊されたってことだぞ。」
サシャ「ほ、本当です!確かに足音が…」
サシャがそう言って立ち上がるのと同時に、立体機動装置を身につけたナナバさんが窓から入ってきた。
ナナバ「全員いるか?」
クリスタ「ナナバさん?!」
ナナバさんの目が、部屋全体に向けられる。
ナナバ「500m南方より、巨人が多数接近。こっちに向かって歩いてきてる。」
ナナバ「君たちに戦闘服を着せてる暇はない。直ちに馬に乗り、付近の民家や集落を走り回って避難させなさい。いいね?」
みんな
その言葉に呆然とした。
壁が…壊されたってことなの?
ナナバ「残念だけど、仕事が終わるまで昼飯はお預けだ。」
ナナバ「さあ動いて!ぼけっとしてられるのも、生きてる間だけだよ!!」
わたしたちを鼓舞するナナバさんと目が合う。
も、すぐに逸らされてしまった。
…わたしが部屋に行ったあの日から、なんだかナナバさんに避けられているような気がする。
寂しい気持ちもあったけど、今はそれどころではない。
みんなに続いて、急いで馬小屋へと向かった。
-
- 188 : 2014/03/21(金) 16:06:18 :
馬を走らせて、西の方の集落の人々に避難を呼びかけて回る。
壁の近くの人の住んでいない地域まで来ると、進路を南へ変更して壁の穴を探すことにした。
既に日は落ちて、辺りは暗くなってきている。
夜は普通の巨人は活動できないけれど、奇行種にそれが当てはまるのかは分からない。
松明の炎が風に揺れる。
その明かりが届くのは、ごく狭い範囲だ。
このまま壁に空いている穴に近付いていけば、いつ暗闇の中から巨人が姿を現すか分からない。
…そして、遅かれ早かれその時はやってくる。
頭がおかしくなりそうだった。
わたしの心臓も早鐘を打っていた。
嫌な汗が額に浮かぶのを感じる。
そんな緊張感の中、前を行くナナバさんの後ろ姿を見つめた。
『大丈夫だよ、ヒストリア。私がついているから。』
そう言った男の人の声と、ナナバさんの背中を重ねる。
松明に照らされたナナバさんの金髪が、妖しげに輝いていた。
-
- 189 : 2014/03/21(金) 20:22:39 :
ナナバ「…ん?」
前から松明の明かりが近付いて来るのが見える。
南班だ。
班長のゲルガーさんは、緊張で汗びっしょりになっている。
ゲルガー「…お前らも壁に沿って来たのか?」
ナナバ「ああ。それで…穴はどこに?」
ゲルガー「…は?」
ゲルガーさんの顔色が変わる。
ナナバ「こっちはかなり西から壁沿いを迂回してきたんだけど、異常は何もなかった。」
ナナバ「…こっちじゃないとすれば、そっちが穴を見つけたはずでは?」
ゲルガー「…いいや、こちらも穴など見ていない。」
…え?
どういうこと?
壁に穴がないのに、巨人が壁内に…?
その場にいた全員に、緊張が走る。
ゲルガー「…もう一度確認してみるか?」
ヘニング「そうすべきだが…さすがに馬も我々も疲労が限界に来てる。今以上の集中力は期待できない。」
ナナバ「せめて月明かりがあればな…」
その声に呼ばれたかのように、雲の隙間から月がのぞいた。
そしてその明かりに、朽ちかけた城跡のような建物が浮かび上がる。
わたしたちは、今夜はそこで夜を明かすことにした。
その建物は塔のような形をしていて、天井は高く吹き抜けのようになっている。
…最近まで、誰かが住んでいたような跡があるなあ。
-
- 192 : 2014/03/21(金) 22:59:25 :
ゲルガー「お前たち新兵は、しっかり休んでおけよ。」
ゲルガーさんが、塔の階段を登りながらわたしたちに話しかける。
ゲルガー「日が沈んでから結構経ってるからもう動ける巨人はいないと思うが、我々が交代で見張りをする。出発するのは日の出の4時間前からだ。」
クリスタ「あの…もし壁が壊されてないとするなら、巨人はどこから侵入してきているのでしょうか…?」
ゲルガー「それを突き止めるのは明日の仕事だ。今は身体を休めることに努めろ。」
わたしの質問にそう答えると、ゲルガーさんは塔の外へ見張りをしに行った。
焚き火の温かさが、疲れた身体に沁み渡る。
今にも閉じてしまいそうな視界の中に、上官方と会話をするナナバさんの姿が目に入った。
リーネ「…ナナバ、脚の傷が痛むの?大丈夫?」
ナナバ「ありがとう。このくらいもう慣れっこだよ。」
ヘニング「無理はするなよ。動けなくなったりしたら困るからな。」
その横顔をぼんやり見つめながら、眠りの世界へ引き摺り込まれていった。
-
- 193 : 2014/03/22(土) 00:04:31 :
リーネ「全員起きろ!!屋上にきてくれ!!すぐにだ!!!」
うとうとしかけた頃、リーネさんの叫び声が聞こえて目が覚める。
急いで階段を駆け上がって屋上へ出て、息を飲んだ。
リーネ「月明かりが出てきて、気付いたら…」
ゲルガー「なんでだよ!?」
そこには、城跡を取り囲む無数の巨人の姿があった。
ゲルガー「なんでまだ動いてんだ?!日没からかなり時間が経っているのに…!!」
もう夜も深いのに、なぜこんなに…?
わけがわからなかった。
身体が小刻みに震えるのを感じる。
ヘニング「くそっ…やるしかねぇか。」
リーネ「そうね。ガスも刃も補給出来ないから、慎重に使いましょう。」
ゲルガー「ちくしょう、酒ぐらい飲みたかったぜ…」
上官方は塔の縁から下を覗き込んで口々にそう話すと、巨人の討伐へと向かった。
ナナバ「新兵たち、下がっているんだよ。」
ナナバ「…ここからは、立体機動装置の出番だ。」
ナナバさんもわたしたちにそう声を掛けると、ブレードを抜いて他の上官方に続く。
そのときも目が合ったけれど、またすぐに逸らされてしまった。
-
- 196 : 2014/03/22(土) 18:43:00 :
わたしたちは塔の中に入り、巨人が入って来ないように守りを固めた。
それでも入ってきてしまった巨人に大砲の砲台を食らわせて、怪我を負ったライナーの手当てをしていた時だった。
突然大きな音と地響きがして、塔が大きく揺れる。
ライナー「な、なんだ?!」
ベルトルト「上だ!」
屋上に上がると、ナナバさんとゲルガーさんが、横たわるリーネさんとヘニングさんの隣で膝をついていた。
ゲルガー「駄目だ…2人とも、即死だ。」
ゲルガー「気をつけろ…壁の方から岩が飛んできて、そいつにやられた。」
ゲルガーさんが悔しそうに顔を歪める。
クリスタ「そんな…」
コニー「うお!」
コニー「巨人多数接近!!さっきの倍以上の数は…」
コニーの声にそちらを向くと、遠くの方に巨人の群れが見えた。
…一直線にこっちに向かってくる。
ゲルガー「なんだと!?」
ナナバ「巨人が作戦行動でも取ってるようなタイミングだね…」
ナナバ「…まるで最初っから、遊ばれているような気分だ。」
言葉を噛み締めながら、ナナバさんがよろりと立ち上がる。
-
- 197 : 2014/03/22(土) 20:16:52 :
ナナバ「新兵、君たちはここでじっとしていなさい。」
クリスタ「…っ、あの!!わたしも戦います!!」
ほとんど無意識のうちに、ナナバさんの後ろ姿に声をかけていた。
ベルトルト「えっ?!」
コニー「はぁ!?」
ユミル「おい!立体機動装置も付けないで何ができるってんだよ!?」
クリスタ「えっと、リーネさんのをお借りして…」
そんなわたしたちの様子を見たナナバさんは、少しだけ口元に笑みを見せる。
ナナバ「クリスタ。気持ちは嬉しいけど、ここにいてくれ。リーネの立体機動装置を使うにしても装備する時間はないし、使い慣れていない装置でのいきなりの実戦は危険すぎる。第一、君とリーネでは体格が違いすぎるから、ベルトが合わないよ。」
クリスタ「で、でも…わたしも力になりたいんです!!」
-
- 198 : 2014/03/22(土) 21:12:05 :
こんなにたくさんの巨人に対して、戦えるのはナナバさんとゲルガーさんだけ。
しかも、残りわずかのガスも刃も補給できない。
…敵うわけがない。
ナナバ「…ヒストリア。」
…え?
いま、なんて?
ナナバ「いい子だから、ここで待っていて。」
ナナバさんは優しい笑顔のまま、わたしをじっと見つめてそう言った。
そしてブレードを抜くと、既に巨人の海と化している塔の下へ、ゲルガーさんの後を追って飛び込んで行った。
その後ろ姿は小さい頃読んだ物語の中に出てきた、お姫様を助ける騎士そのものだった。
-
- 203 : 2014/03/23(日) 00:14:07 :
いま
ナナバさん、わたしのこと…
『ヒストリア』
って、呼んだ?
何度も見た夢の、靄がかかっていたり、逆光だった部分が修正されていく。
悪い人からわたしを守ってくれたときの、鋭い目つき。
わたしの無事を確認した時に見せた、はっとするような微笑み。
家が隣だと分かった時の、驚いたような丸い目。
本を読んでくれた時の、伏し目がちな瞳にかかる長い睫毛。
お母さんが亡くなった夜、憲兵さんたちにわたしを引き取りたいと言ってくれたときの真剣な瞳。
泣いているわたしを、そっと抱きしめてくれたときの身体の温もり。
お兄さんのことを話してくれた時、目元に微かに光っていた涙。
わたしが手を握ると、驚いたように、だけど嬉しそうに見えた柔らかな笑顔。
夜の光に照らされて輝く、しとやかな金髪。
微睡みの中で聴いた、物語を紡ぐ優しい声。
そして最後に馬車の中から見た、どことなく寂しそうな表情。
やっぱり、あの人は
ナナバさんだったんだ。
クリスタ「ナナバさんっ!!!」
塔の縁に駆け寄って名前を叫ぶも、その姿は既に見えなくなっていた。
コニー「おい。今ナナバさんクリスタのこと、なんか違う名前で呼ばなかったか?」
ユミル「…」
どうしよう
どうしよう
このままだと、ナナバさんたちも死んじゃう…!!
わたしはリーネさんの亡骸に飛びつくと、立体機動装置とベルトを外しはじめた。
-
- 207 : 2014/03/23(日) 09:00:03 :
ユミル「おい、クリスタ?!」
気持ちが焦って手元がおぼつかない。
ユミル「クリスタ、落ち着け!!」
ユミルがわたしの肩を両手で掴んで、諭すように声をかける。
クリスタ「離して!早く助けに行かないと…!!」
ユミル「無理だ!冷静になれよ!!」
クリスタ「無理じゃない!離して!!」
ユミル「クリスタ!!」
ユミルが怖い顔をしてわたしを見つめている。
…ユミルのこんな表情、初めて見た。
その表情を少し緩めて、優しい声でわたしに話しかけた。
ユミル「…ナナバさん、だったんだな。」
黙って首を縦に振る。
するとわたしの瞳から、涙が零れ落ちた。
それを見たユミルは、ふう、と大きく息を吐いた。
ユミル「…コニー、ナイフを貸してくれ。」
-
- 212 : 2014/03/23(日) 16:30:13 :
コニー「…?ほらよ。」
ユミル「ありがとよ。」
コニーからナイフを受け取ると、ユミルはコニーの頭をぽんぽんと叩く。
コニー「何に使うんだよ、それ?」
ユミル「まぁ…そりゃあ、これで戦うんだよ。」
ライナー「おい、ユミル?何するつもりだ?」
ユミル「さあな、自分でもよくわからん。」
ユミル…?
ユミルはわたしに向き直ると、まっすぐにわたしを見つめて言った。
ユミル「クリスタ…お前の生き方に口出しする権利は私に無い。だからこれはただの私の願望なんだがな…」
ユミル「…お前、胸張って、本当の名を名乗って、堂々と生きろよ。」
クリスタ「え…?」
ユミル「そして、幸せになれ。」
そういうとユミルは、少し笑って塔から飛び降りた。
クリスタ「ユミル!!!」
その刹那。
ユミルの身体が眩い光に包まれて、その中から巨人が現れた。
そしてその巨人は次々と、塔に群がっていた巨人を倒していく。
コニー「嘘、だろ…?」
ユミルが、巨人だったなんて。
みんな、信じられない気持ちで塔の下を見つめていた。
その間にもユミルは、次々と巨人にとどめを刺していく。
こうして、長かった夜が明けようとしていた。
-
- 213 : 2014/03/23(日) 18:07:15 :
夜明けとともにエレンやハンジさんたち調査兵団の方々がやってきて、巨人の討伐に加わった。
昼過ぎには全ての巨人を掃討し、わたしたちはそのままハンジさんの質問攻めに遭っていた。
モブリットさんが何度か止めに入ってくれようとしたんだけれど、今回ばかりはハンジさんの方が強かったみたい。
わたしは、ユミルは必死にわたしたちを守ってくれたから敵ではないとハンジさんに力説したけれど、どれくらい分かってもらえたかな…
ハンジ「…そうだ。本名はヒストリア・レイスって言うんだって?」
ヒストリア「!!はい…そうです。」
ハンジ「レイスって、あの貴族のレイス家?」
ヒストリア「…はい」
ハンジ「…そう。よろしくね、ヒストリア!」
ヒストリア「は、はい!」
ハンジさんはそう言うと、わたしの肩をぽんと叩いてどこかへ行ってしまった。
…やっぱり、よく分からない人だなあ。
それを確認したモブリットさんが、入れ違いにわたしのところへやって来る。
モブリット「疲れていたのに質問攻めにされて、大変だったよね?ごめんね…あとで分隊長にはちゃんと言っておくから。」
申し訳なさそうに眉を下げるモブリットさんに、わたしがいいえ、と答えると、彼はまた口を開いた。
モブリット「あと…ちょっと来てもらえるかな。」
ヒストリア「…はい。」
-
- 214 : 2014/03/23(日) 20:33:41 :
モブリットさんの後について壁の上を歩いていくと、横たえられているナナバさんの姿が目に入った。
その右脚には、しっかりと包帯が巻かれている。
モブリット「ナナバ、連れてきたよ。」
ナナバ「ありがとう、モブリット。すまないね。」
モブリット「いいや、じゃあ僕はこれで。分隊長をとっ捕まえに行かなくちゃ。」
モブリットさんはそう言うと、今度はコニーを尋問しているハンジさんのところへ向かっていった。
わたしがナナバさんの隣に座ると、美しい二つの瞳がわたしを見上げた。
ナナバ「やあ、ヒストリア。大きくなったね。」
ヒストリア「…ナナバさん。」
掠れた声で、わたしの本当の名前を呼ぶナナバさん。
その口元には、昔と同じ微笑みが浮かんでいた。
ヒストリア「…脚、大丈夫ですか?」
ナナバ「ああ、これ?少し無理をしてしまってね。だけど大丈夫、すぐよくなるよ。ありがとう。」
ヒストリア「そうですか…」
ヒストリア「…あの、どうしてわたしが部屋に行った時、自分じゃないって嘘をついたんですか?」
わたしの2つ目の質問にナナバさんは、ああ、と言って目線を逸らした。
-
- 215 : 2014/03/23(日) 21:26:00 :
ナナバ「それは…君に、調査兵団から去って欲しかったからなんだ。」
ヒストリア「え?」
どこか申し訳なさそうな顔をしながら、ナナバさんは言葉を続ける。
ナナバ「結団式で君を見た時、一目で君だと気付いたよ。…そしてとても驚いた。何故ヒストリアがここにいるんだろうって。貴族家の娘が、兵士になんてなるわけがないからね。」
ナナバ「パーティで君に話しかけられた時、どうして調査兵団に入ったのか聞いたでしょう?その時も、人類の進撃の糧になりたいだなんて言うんだもん。そんな模範解答みたいな答え、他に理由があるからに決まってる。」
ナナバ「その時、ふと思ったんだ。もしかしたらヒストリアは私のことを覚えていて、私を探しに身分を隠して調査兵団に入ったんじゃないか、ってね。」
ナナバ「でも正直その可能性は薄いと思っていた。なにせあの頃ヒストリアはとても小さかったから、私のことなんてもう覚えていないと思ったんだ。きっと私の自意識過剰で、君はヒストリアでもなく別人で、ただの思い違いなんだろうなって。」
ナナバ「けど…君はヒストリアで、昔のことを覚えてた。私が君を助けたことや、兄の話、何気無く言った紅茶の葉っぱの話まで、ことこまかにね。」
ナナバ「だからあの人がもう調査兵団にいないと知れば、君は調査兵団を辞めて、貴族としてまた安全に暮らせるんじゃないかと思ったんだ。」
ナナバ「…結局、私が我慢できなくなってしまったけれどね。」
そう言ってナナバさんは、自嘲的に笑った。
ヒストリア「…ナナバさんを探していたことは事実です。でも、身分を隠して兵士になったわけじゃないんです。」
ナナバ「…?」
そしてわたしは、レイス家にいたときに起きたことを全てナナバさんに話した。
話し終わると、ナナバさんは目を丸くしていた。
-
- 216 : 2014/03/23(日) 22:06:16 :
ナナバ「そう、だったんだ。知らなかった…」
ヒストリア「…」
ナナバ「…よく頑張ったね。」
ヒストリア「え…?」
ナナバさんの傷だらけの手が、わたしの頬に触れる。
ナナバ「何度も何度もとてもつらいことがあったのに、よく頑張って今日まで生きたね。偉いよ、ヒストリア。」
ナナバ「生きて、また私と出会ってくれてありがとう。」
ヒストリア「ナナバ、さん…」
零れる涙が頬を伝う。
それを優しく指で拭ってくれるナナバさん。
…生きていてよかった。
生まれて初めて、わたしはそう思った。
ナナバ「泣かないで、私のお姫様?」
ヒストリア「…まだ、それ言いますか…?」
わたしの答えにナナバさんは軽やかに笑うと、身体を起こしてわたしの頭をぽんぽんと優しく叩いた。
その光景は夢でも何度も見た、幼いわたしを励ましてくれたナナバさんの姿そのままだった。
ナナバ「もちろん。私はこれからもヒストリアを守り続けるつもりだよ。」
ナナバ「…ヒストリアの騎士さんとして、ね。」
ナナバさんが、わたしの瞳を覗き込んで微笑む。
…わたしの、騎士さん。
顔が熱くなるのを感じた。
そんな様子を見たナナバさんは声をあげて笑うと、わたしをそっと抱き寄せた。
そのとき、ハンジさんをコニーから引き剥がすことに成功したモブリットさんが、ゲルガーさんと一緒にこちらを見て驚きの表情を浮かべているのが見えた。
ゲルガーさんに至っては、にやにやと笑っている。
…恥ずかしい!!!
ヒストリア「ちょ、ちょっとナナバさん!」
ナナバ「あれ、嫌だった?」
ヒストリア「いえ、あの…モブリットさんたちが見てますよ。」
ナナバ「ああ、あいつらはいいよ。見せつけてやろう。」
ヒストリア「ええっ?!」
そう言うと再び、私の身体はナナバさんの腕の中にすっぽりと収まっていた。
…騎士とお姫様、か。
わたしたちもあの物語のようになるといいな。
こうして騎士とお姫様は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
ってね。
ー fin ー
-
- 217 : 2014/03/23(日) 22:07:24 :
これにて本編終了です。
最後までお読みくださいまして、本当にありがとうございました(*゚∀゚*)
この作品は『わたしの理想のナナクリ』というテーマで書きました。笑
実はギリギリまで、ハッピーエンドにするかバッドエンドにするか悩みに悩んでおりましたが、ハッピーエンドにしてよかったなと思っています。ナナクリ幸せになーれ☻
よく考えたら自分の作品のなかでは女性扱いのナナバさんを書いたことがないので、いずれ書いてみたいなと思っています。
重ねてのお礼になりますが、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
読んでくださっているみなさまのお陰でわたしの作品は成り立っているわけですから、本当に感謝しております。
またわたしの作品が目に止まりましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
submarine
-
- 218 : 2014/03/23(日) 22:10:39 :
- 良かった、良かったよー( ;つД`)ブワッ
原作では死んじゃったナナバさん達とユミルが無事に生きて帰ってきた上にクリスタとナナバさんが幸せに暮らせてほんとに良かった( ;つД`)ブワッ
マリンさんお疲れ様でした(」・ω・)」
-
- 219 : 2014/03/23(日) 22:32:15 :
- ナナバさんがてっきり亡くなるのかと思い、ハラハラしておりましたが・・・。
とても安心しました!!
ハッピーエンド万歳ですね(´∀`*)
「泣かないで、私のお姫様。」でときめきを持っていかれましたね。
キュンとしました(/ω\*)
途中で読みを誤り、とてもはずかしいコメントを残したのが心残りですが、末永くナナクリが幸せであることを私も祈っております。
素敵な作品、ありがとうございました。
-
- 220 : 2014/03/24(月) 02:21:41 :
- 最後には本当に涙が出ましたよ。
次の作品にも期待です。
-
- 221 : 2014/03/24(月) 05:43:11 :
- とても素晴らしい作品でした!
-
- 222 : 2014/03/24(月) 16:03:32 :
- 終わってた(泣)
相変わらすわの完成度ですね!
本当に素晴らしすぎますね!!
ナナバさん!!格好いいよぉ(泣)
本当に素晴らしい作品でした!!!
-
- 223 : 2014/03/24(月) 19:59:21 :
- 執筆 お疲れ様でした‼
ハッピーエンドで良かったぁ!最初は原作通りナナバさん達が死んでしまうのではないかとハラハラでした(o_o)
≫211様 マリンさん
はいっ!ナナバさん好きになりました…❤というより、前に書いていた
ナナバ『世界で一番好きなもの』の影響もありますね! そして、女性のナナバさんの作品もすっごい楽しみです(*^^*)
-
- 224 : 2014/03/26(水) 02:57:50 :
みなさまコメントありがとうございます!
すっかりお返事を返すのが遅くなってしまい、すみませんでした(。ω。;)
>>218 さま
アニ大好き野郎さん〜!最後までお読みくださって、本当にありがとうございました。
原作でもこうあって欲しかったなあというわたしの願望が、かなり大きく作用しましたね。笑
またわくわく読んでいただける作品を書くべく頑張らせていただきますので、よろしくお願いします(o'ω')ノ
>>219 さま
シュウさん!いつもお読みくださって、本当にありがとうございます(* 'ω')ノ
ナナバさん死亡→モブリットがナナバさんの遺体のポケットからクリスタ宛の手紙発見→クリスタそれを読み号泣ENDというバッドエンドとこちらとどちらにしようか本当に悩みました。笑 結果的には、ハッピーエンド万歳です☻
その台詞は完全にわたしが言わせたかっただけですね。へへ。笑
いえいえ!いろいろ推測していただけて嬉しかったですよ。
これからもよろしくお願いします(o'ω')ノ
>>220さま
人類最後の翼さん〜!投下を始めた頃から長きに渡ってご支援くださり、本当に感謝しております。ありがとうございます(* 'ω')ノ
涙が出るほど熱心に読んでいただけて、書き手として本当に嬉しく思います☻
次回作は未定なのですが、また目に止まりましたらぜひ宜しくお願いいたします!
ありがとうございました。
>>221 さま
白濁の悪魔さん、はじめまして。読んでくださっただけでなく、コメントまでありがとうございます(* 'ω')ノ
そう言っていただけるのが、作者として本当に幸せです!とても励みになります。
これからも精進してまいりますので、どうぞ宜しくお願いします。
>>222 さま
EreAniさん!どの作品も熱心に読んでくださって、ありがとうございます(* 'ω')ノ
EreAniさんも、ぜひナナバクラスタの仲間入りを…!笑
また素晴らしいと言っていただけるような作品を書いていきたいと思っていますので、どうぞ末長く宜しくお願いいたします!
>>223 さま
えりさん〜!いつもコメント、感謝感激です。ありがとうございます(* 'ω')ノ
そういえば、原作で死んでしまったキャラを生かしたという、原作に背いた結末にしたのは初めてかもしれませんね(OωO)
そして、えええ!わたしの処女作も読んでくださってたのですねΣ('ω'ノ)ノ!わあ、なんだか嬉し恥ずかしな気分です。照
女性ナナバさんの作品も、ひとつ案があるのでそのうち書かせていただきますね!
またどうぞ宜しくお願いします☻
-
- 225 : 2014/03/26(水) 19:21:42 :
- 執筆お疲れ様でした
いつも通りのクオリティの高さと、いつも以上の話の先の読めなさに、何度も読み返していました
ナナバさんがクリスタ…のために黙っていたというくだりが、凄くじんときました
最後はハッピーエンドで、清々しい気持ちでした
原作とは違う結末であっても、原作こうで良かったんじゃないかなあ、と思わせる作品でした
また新作期待しています♪
-
- 226 : 2014/03/27(木) 05:13:17 :
- 執筆、お疲れ様でした!
マリンさんらしい綺麗で素敵な作品でした♪
原作に則りシリアスなまま終わる作品が多い中、こうして原作とは違ってハッピーエンドで終わる作品と言う事もあり大変目を引かれましたね(∩´∀`)
次の作品の投稿も楽しみにしております!
-
- 227 : 2014/03/27(木) 18:31:40 :
- >>225 さま
88さん!いつも読んでくださって、ありがとうございます(o'ω')ノ
いやいやいや!そんな風におっしゃっていただけて、恐縮です(;゚ェ゚;)
何度も読んでいただけるような作品であったことが、書き手としてとても嬉しく思います。
ハッピーエンドは久しぶりに書いたのですが、やっぱり書いてる方も清々しいですね。笑
いつもありがとうございます、これからもよろしくお願いいたします!
>>226 さま
ゆきさん!いつもコメントありがとうございます(*゚∀゚*)
綺麗で素敵だなんて!勿体無いお言葉です(;゚ェ゚;)ありがとうございます。
シリアスばっかり書いてたので、たまには幸せになってもらおうかと…笑
けど、ハッピーエンドも悪くないですね。これからもこんな話も書いていこうかと思っております。
これからもよろしくお願いいたします!
-
- 228 : 2014/04/05(土) 21:50:27 :
- 涙が出ました!
面白くて感動しました!
-
- 229 : 2014/04/06(日) 18:35:42 :
- >>228 さま
ラーメンさん!こちらの作品も読んでくださったのですね、ありがとうございます(*゚∀゚*)❤︎
感動してもらえるような作品であったことを、作者として嬉しく思います。
これからも、そうおっしゃっていただけるようなお話を考えるべく尽力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします(o'ω')ノ
-
- 230 : 2015/02/22(日) 11:23:16 :
- 最高です!。°(°`ω´ °)°。
-
- 231 : 2020/10/06(火) 09:08:18 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
http://www.ssnote.net/archives/86931
害悪ユーザーカグラ
http://www.ssnote.net/archives/78041
害悪ユーザースルメ わたあめ
http://www.ssnote.net/archives/78042
害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
http://www.ssnote.net/archives/80906
害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
http://www.ssnote.net/archives/81672
害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
http://www.ssnote.net/archives/81774
害悪ユーザー筋力
http://www.ssnote.net/archives/84057
害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
http://www.ssnote.net/archives/85091
害悪ユーザー空山
http://www.ssnote.net/archives/81038
【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
http://www.ssnote.net/categories/%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA/populars?p=12
-
- 232 : 2020/10/26(月) 13:57:16 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
-
- 233 : 2023/07/04(火) 09:36:06 :
- http://www.ssnote.net/archives/90995
●トロのフリーアカウント(^ω^)●
http://www.ssnote.net/archives/90991
http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
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16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
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アカウントの譲渡について
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36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな
22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。
46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね
52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑
89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ
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