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Segen der' Göttin -Anfang-

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  1. 1 : : 2014/02/12(水) 02:21:37
    初投稿です。
    至らない点が多いと思いますので、注意点に目を通してから
    読んで頂くことを、強く推奨致します。


    ・世界観は完全にオリジナルです。(現パロというものでしょうか?)
    ・作者は原作を認知していません。(SSの知識のみで思案構成)
    ・登場人物の言動・性格がよくわかっていません。(違和感等ありましたらご指摘願います)
    ・更新速度遅いです。(月単位の放置有りと御認識下さい)
    ・執筆期間中に頂いたコメントへの返答等は基本致しません。(無礼を承知でご了承下さい)
    ・指摘・質問等ありましたら、遠慮なくお願いします。(なるべくお答え出来るよう善処します)
    ・性的描写はありません。(不得手の為)


    これらの点をご理解頂いた上で閲覧よろしくお願い致します。


    ※お詫び
    作者の個人的トラブルにより、前スレは削除されました。
    こちらは、新たに書き直したモノになっております。
    前スレにてコメントを頂いた方々には、大変ご迷惑をお掛けしました。
    申し訳ありませんm(_ _)m
  2. 2 : : 2014/02/12(水) 02:29:41


    ―――私は、ずっと一人だった…



    ―――そうでなきゃいけないと思っていた…



    ―――私は、悪い娘だから…






    ――――――――――――――――――でも、――




    ―――あの日、アナタに出逢った…




    ―――アナタは優しい人だった…




    ―――アナタはとても温かい人だった…




    ―――アナタといると優しい気持ちになれた…




    ―――アナタといると穏やかな気持ちになれた…




    ―――アナタといると楽しかった…




    ―――アナタといると幸せだった…






    ―――――――――――だから、私は……





    ―――アナタと…










    ――――出逢うべきじゃなかった…


  3. 3 : : 2014/02/12(水) 02:32:16
    2014年4月15日


    私の名前は、クリスタ・レンズ。
    明日から『私立ハイリヒアゼーゲン学園』に転入する事になった16歳。

    家庭の事情で、今はバイトをしながら一人暮らしをしている。



    今私は、明日から通う為の手続きをする為に、学園を訪れている。

    ここ『私立ハイリヒアゼーゲン学園』は、市内でも屈指の進学・就職率を誇る名門校で、
    生徒は皆、敷地内にある寮で3年間を過ごす。

    私も来月からは、ここの寮に入る事になる。

    なぜ来月からなのかというと

    どうやら、学園側の手違いで、空き部屋を用意出来なかったようで…
    私は部屋の用意が出来るまで、今の家から通学する事になった。

    そして今は、その他の手続きが終わり、家へ帰る途中である。

    4月とはいえ、まだ路肩に雪が残るこの街で、私は手を擦り合わせながら歩いていた。
    吐いた息が白く染まり、今日の寒さを目で感じさせる。



    しばらく歩いたところで、私はある事に気付き、足を止めた。

    クリスタ「…………ない…!?」

        「…なんで……どうしよう…」

    クリスタは、狼狽えて辺りをキョロキョロしていた。

    クリスタ「…落ち着いて。…学園に行くまでは確かにあったはずなんだから…」

    私は、深く深呼吸をして今日の自分の行動をよく思い返した。



    ――結局、思い当たる節もなく、私は来た道を引き返す事にした。



  4. 4 : : 2014/02/12(水) 02:33:03
    -ハイリヒアゼーゲン学園校門付近-

    1人の少年が、身を縮込ませながら歩いていた。

    エレン「ハァ~…何だってこの寒い中、買い出しなんか…」

       「つくづく、自分の勝負弱さに腹が立つね!」

    ブツブツと、誰に当てる訳でもない愚痴を呟きながら、エレンは街へ向かって歩いていた。

    エレン「……ん?…何だアレ?」

    エレンは道端に、何か光輝く物を見つけ、足早に駆け寄るとソレを手に取った。
    道端に落ちていたソレは、どうやら髪飾りのようだ。

    エレン「綺麗な髪飾りだな~…しかも、高そう…」

    蒼い羽をモチーフにしたような形で、細部に小さい宝石が散りばめられていた。

    エレン「…しょうがねぇ。交番に届けるか~」

    そう言って、エレンは髪飾りを上着のポケットに入れると、そのまま歩き出した。

  5. 5 : : 2014/02/12(水) 02:35:24
    クリスタ「……はぁ、……はぁ…」

    クリスタは息を切らしながら走っていた。
    もともと体が弱く、体力の無い彼女には、ここまでの道のりを引き返すだけでも
    それなりに応えるものがある。
    加えて、この凍える寒さの中を走って来たのもあって、クリスタは既に疲労困憊の状態であった。

    クリスタ「…はぁ、たぶんこの辺りに落としたと…思ったんだけどなぁ…」

    クリスタは肩で息をしながらも、ハイリヒアゼーゲン学園の校門付近まで戻って来ていた。
    彼女は転入手続きが終わり、帰路へつく時に、この辺りで車に轢かれそうになり、急いで路肩へ避けた際に、転倒した事を思い出していた。
    それ故、あるならこの辺りに違いないと思っていた。

    しかし、ある程度探してみても見つからなかった。


    クリスタ「…はぁ~……ここじゃなかったのかなぁ…」

    落胆して空を見上げるクリスタ。


    クリスタ「……もしかしたら、学園の中に…?」

    僅かな希望を胸に、クリスタは学園の校門を見つめていた。

    学園の周りは敷地に沿って4mの壁で囲われていて、出入り口は正面の正門と、今クリスタのいる関係者専用門(通称・裏門)の2つだけである。
    どちらの門も、電子制御で正門は鉄格子だが、この裏門は鋼鉄製の観音扉で、外から中を見ることはできない。

    学園の関係者は全員、カードキーを持っており、自由に出入りが可能で、
    生徒達は、学生証がカードキーになっている。
    当然、クリスタも既に学生証を受け取っており、中に入る事が可能なのだが、
    なぜかクリスタは、校門前に立ち尽くしたまま、一向に動こうとしなかった。

    クリスタ「…別に、悪い事をしようとしてるわけじゃないんだから…大丈夫!……なのに…」

    手を胸の前で握りしめながら、自分に言い聞かせるように、呟くクリスタ。
    しかし、彼女の手は小さく震えていた…
    それは恐らく、寒さのせいではないだろう。

  6. 6 : : 2014/02/12(水) 02:41:14
    しばらくの間、クリスタが立ち往生していると、不意に校門が開いた。

    ???「~♪」
    「――って、あれ?…あなた、そんな所で何してるの?」

    クリスタ「!!-え、えっと…私は…」

    急に校門が開いたことに、驚いていたクリスタを不思議に思ったその女性は、
    クリスタに声を掛けた。
    しかしそれが逆に、クリスタを更に狼狽えさせていた。

    ???「ああ!…えぇっと、ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだけど」

    クリスタ「あ…い、いえ!!私の方が勝手に、取り乱しただけですから…すみません…」

    ???「あはは。何もそんなに謝らなくても大丈夫よ。」

    深々と頭を下げているクリスタを見て、とりあえず落ち着かせようと、笑顔でその女性は答えた。

    ???「私は、ここの学校の3年で、名前はペトラっていうの――あなたは?」

    クリスタ「えっ!わ、私は…ここに明日から通う事になりました…」

        「2年のヒs…じゃなくて、クリスタ・レンズです…」

    ペトラ「ホント~!じゃあ、私の後輩ちゃんになるんだね!!」

       「――あれ?でも、明日からってことは…もしかして転入生?」

    クリスタ「えっと…はい。そうです」

    ペトラ「そっか~。じゃあ、色々わからないことだらけで大変だよね~」

       「困った事があったら、何でも私に聞いてくれて良いからね。」

       「明日から通学ってことは、今日くらいから寮に入るんでしょ?」

    クリスタ「…あ!いえ…どうやら、手違いで部屋が用意できなかったみたいなので…しばらくは、家から通う形になります…」

    ペトラ「あ~そうなんだ…それは災難ね。家は近いの?」

    クリスタ「…アングリフ中学校の近くです」

    ペトラ「えぇ!?アングリフって…ここからだと結構あるじゃない!」

    クリスタ「…はい。…でも、仕方ないですから」

    ペトラ「…とは言ってもね~…さすがにあそこから毎日通うのは酷でしょ」

    クリスタ「あの辺りに詳しいんですか?」

    ペトラ「そうよ。一応、あそこは私の母校だから」

    クリスタ「!!そうだったんですか…」

    ペトラ「うん。それよりも、やっぱり大変よ!何なら私がいって、空き部屋がないか調べてもらいましょうか!」

    クリスタ「あ!…いえっ…なにもそこまでして頂かなくても大丈夫ですから」アセアセ

        「今日も歩いて来ましたし…」

    ペトラ「あの辺からだと~…30分位?」

    クリスタ「その…私、人より歩くのが遅くて…」

        「………1時間…くらい…」

    ペトラ「えぇっ!!それじゃ、尚の事なんとか部屋を探さないと!」

    クリスタ「あ…いえ…本当に大丈夫ですから」

    ペトラ「遠慮しなくても大丈夫よ!…とはいえ、空き部屋があればこんな事にはならないだろうし…」

       「う~ん、どうしたものか~~」

    クリスタ「…あ、あの―――」

    ペトラ「――あ!そういえば、私の部屋今1人だから、学校に言って部屋が用意できるまで入れさせてもらいましょうか」

    クリスタ「えっ…そんな、悪いです…」

    ペトラ「そんなに遠慮しないでよ~こんなにかわいい後輩だったら、私も大歓迎だから!」

    クリスタ「いぇ…あの、そうじゃなくて…」

    ペトラ「そうね!そうしましょ!うん。決定~」

    クリスタ「え…あ、あの…えっと…」

    ペトラ「あ~でも、寝る所とかどうしよう…クリスタちゃん小さいから、一緒のベットでも大丈夫か…」ブツブツ

    クリスタ(……聞いてない…)


  7. 7 : : 2014/02/12(水) 02:42:20
    エルド「おいペトラ!そんな所で、何騒いでるんだ?」

    ペトラ「!!――って、なんだエルドか~」

    エルド「なんだとはなんだ!」

    「お前が買い出しに出たっきり、いつまでも戻らないから…
    俺が、心配してわざわざ探しにきたっていうのに…」

    ペトラ「――あ!そうだったね。ごめ~ん」テヘッ

    エルド「…ったく、早くしてくれないとオルオがうるさくて……ん?…その子は?」

    クリスタ「!!」ビクッ

    ペトラ「あ!そうだった…この子はね――」

    ???「―――おいっ!お前ら!」

    クリペトエル「!!!」ビックゥ

  8. 8 : : 2014/02/12(水) 02:43:44
    ???「いつまで裏門を開けっぱなしにしてやがる…」

    ペトラ「…あ、リヴァイ先生」

    リヴァイ「…何だ、お前らだったか…」

        「おいエルド!お前がいながら何で、俺がわざわざこんな事を注意しにくるハメになる?」

    エルド「すっすみません。俺も、今来たところでしたので…」

    リヴァイ「…チッ……言い訳はいい!とにかく、さっさと門を閉めろ!何か問題が起きてからじゃ、遅ぇんだからな」

    そう言いながら、リヴァイはペトラに睨みを利かせる。

    ペトラ「は、はいっ!」アセアセ

    それに気付いたペトラは、急いで校門横の電子キー認証装置へと駆け寄る。

    エルド「――あ!おいペトラ!」

    門を閉めようとしていたペトラを、制止するようにエルドが呼び止める。
    その声に、ペトラは出しかけた生徒証を鞄に戻し、エルドの方へ振り返った。

    ペトラ「何よ?エルド」

    エルド「いや、俺が中から閉めるから、お前は早いとこ買い出し済ませてこいよ」

    ペトラ「――!!忘れてた!」

    そう言うと、ペトラはエルドに駆け寄り、自分の鞄から何かを取り出し、
    それを無理矢理エルドに手渡した。

    エルド「な、なんだっていうんだ??」

    エルドは、自分の手に握らされた物を確認する。

    エルド「………はぁっ!?」

    それを見てエルドは、目を丸くする。
    彼の手に握られていたのは、お金の入った封筒と買い出し用のメモだった。

    ペトラ「私、急用ができたんだった。だから、代わりに買い出しよろしくね♪」

    エルド「…はぁ!?なんで、俺が!?…ってか、急用ってなんだよ!?」

    未だに状況がいまいち呑み込めていないエルドの質問を無視して、
    ペトラはクリスタの方へ駆け寄ると、彼女の手を取った。

    ペトラ「じゃ、行こっか♪」

    クリスタ「ふぇ!?」

    リヴァイ「…ん?――おいペトラ、そいつはなん―――」

    ペトラ「先生も!門閉めますから、中に行きましょ!」

    リヴァイ「って、おい…」

    エルド「おい!ペトラ、俺の話がまだ…」

    少々怒り気味のエルドを余所に、ペトラはクリスタとリヴァイの手を引き、
    半ば強引に、学園の敷地内に入ると、さっさと門を閉めようと、生徒証を認証機に翳した。

    すると、認証の電子音の後に、重く鈍い回転音が鳴り響くと、ゆっくりと門が閉まりだした。

    エルド「…ちょ…ペトラさん…?」

    閉じてゆく門の隙間から、困惑したエルドの顔と声が、僅かに見えた。
    そんなエルドの心情もお構いなしに、ペトラは満面の笑みを向けながら――

    ペトラ「じゃあエルド、よろしくね~。」

    エルド「お…おい…」

    校門が閉じきる間際に、ペトラの上機嫌な声だけがエルドに届いた。
    そして門が閉じ、1人残されたエルドは、暫しの間立ち尽くしていた。

    エルド「………まじかよ…」



  9. 9 : : 2014/02/12(水) 07:06:29
    期待
  10. 10 : : 2014/02/12(水) 17:22:16
    期待なのだよ☆
  11. 11 : : 2014/02/12(水) 17:46:26
    ペトラ「…さてっと♪」

    そう言って、胸の前で手を合わせるペトラ。

    ペトラ「それじゃあ、行きましょうかクリスタちゃん」

    クリスタ「え!?」

    リヴァイ「おい…ペトラ…」

    ペトラ「ほら!部屋の件、学園長に交渉してみないと~」

    リヴァイ「……おい。」

    ペトラ「ここだけの話だけど、学園長って可愛い子に目が無いんだって!」

    クリスタ「…えっ…」

    ペトラ「だから、クリスタちゃんくらいの子にお願いされたら、イチコロだって♪」

    リヴァイ「………ペトラよ…」

    ペトラ「大丈夫!心配しなくても私が全部上手い事やるから~」

    クリスタ「あ…あの…ペトラさん?(さっきから先生が…すごい形相で睨んでる…)」

    ペトラ「クリスタちゃんは、ただ私と一緒に来て居てくれるだけでいいから♪」

    リヴァイ「…」

    クリスタ「ぺ…ペトラさん…(怖い…)」

    ペトラ「それじゃ早く行きまs―――」

    リヴァイ「ペトラァ!!!」

    ペトラ「ひっ…ひゃいっ!!!」ビックゥ
  12. 12 : : 2014/02/12(水) 17:50:11
    リヴァイ「お前…さっきから俺を無視しやがって…いい度胸だな…」ギロ

    ペトラ「-!!も…申し訳ありませんでした~~(マ、マズイわ!先生の事すっかりわすれてた~)」

    ペトラはようやくリヴァイの怒りに気付くと、もの凄い勢いで姿勢を正し頭を下げる。
    その動きはまるで、熟練された兵士の様であった。
    しかし、リヴァイの怒りは治まる気配はない。

    リヴァイ「…これは持論だが、躾に一番効くのは痛みだと俺は思う…」

        「…だが、今のご時世教師が生徒に手を挙げる事は問題になる」

    ペトラ「そ…そうですね」ガクガク

    リヴァイ「なら…痛みよりも辛く…苦しい罰を…」

        「教育的に…しつk…もとい、指導してやらねぇと…なぁ!」ギロッ

    ペトラ「ひ、ひぃぃ~~」ガクガクブルブル

    クリスタ「-!あ、あのっ!」

    リヴァイの圧倒的な威圧感に気圧され、まるで猛獣に睨まれた小動物のように縮こまり震えるペトラ。
    それを見兼ねたように、二人の間にクリスタは割って入った。
  13. 13 : : 2014/02/12(水) 17:52:47
    リヴァイ「…あぁ!?」

    クリスタ「!!ぅあ…えっと…その……」

    しかし、怒りが頂点に達しているリヴァイの威圧感は想像以上のもので、
    それを直接体感したクリスタの体は、恐怖に震え動けなくなった。

    リヴァイ「…何だお前は?(そういや、こいつが居たのを忘れてたな)」

    クリスタ「あ…わ、私は…(…どうしよう…怖い)」

    ――――――怖い?

    ―――――何が?

    ―――――――――――この人が?





    ―――――――――――――違う…


    ほんの数秒、しかし確かに、得の知れぬ沈黙がこの場を支配した。
    そして場の空気が戻った時、僅かにクリスタを取り巻く空気が変わった。

    いや、正確には露わになったと言うべきなのか…

    ここへ来て、不安と緊張に隠れて見えなくなっていた、彼女の本質…
    心境からくる異様な雰囲気と表現した方がいいのか…

    とにかく、言葉では言い表せない何かが彼女の中にあって、
    それが一瞬露見したようだった。

    ――だが、その場の誰もその事に気付くことはなく、
    今まで、色々な生徒達を見てきたリヴァイでさえも、僅かに違和感を覚える程度だった。

    クリスタ「…」スゥ

    リヴァイ「…何だ?はっきり言え(何だ…コイツの目…)」

    クリスタの中に潜む闇の様なものを、一瞬感じ取ったリヴァイだったが、
    それを追究しようと考える前に、それは再び彼女の中に隠れてしまった。

  14. 14 : : 2014/02/12(水) 18:03:54
    クリスタ「―――uタです」

    リヴァイ「………はっ?」

    クリスタ「明日からこの学園の2年Aクラスに編入することになりました…」

        「ク、クリスタ・レンズです…」

    リヴァイ「………あ…あぁ、そうか…」

    妙な緊張感に見舞われていたリヴァイだったが、
    彼女の低姿勢で自信無さげな口調と態度に拍子抜けし、中身のない返事を反射的に返す。

    ペトラ「…先生?どうかしましたか?」

    らしくない態度のリヴァイを不審に思ったペトラが、不思議そうに訊ねた。

    リヴァイ「…あ?……いや、何でもない。」

    ペトラ「?」

    リヴァイ(気のせいだったか…?)
  15. 15 : : 2014/02/13(木) 20:07:04
    一呼吸置いて、冷静さを取り戻したリヴァイが口を開く。

    リヴァイ「…なるほどな。明日からウチに来る転入生っていうのは、お前だったか…」

    クリスタ「え?」

    リヴァイ「俺が2-A担任のリヴァイだ」

    クリスタ「え!そ、そうだったんですか!?」オロ

    リヴァイ「……俺が担任じゃ不満か?」

    クリスタ「!!…い、いえ!そんなことは全然ないです!」

    ペトラ「…フフ」

    リヴァイ「なに笑ってやがる…ペトラ」

    ペトラ「あ、いえ!そんな笑うなんて滅相もありません!」ビシッ

    リヴァイ「…チッ…まぁ、いい」

        「それで、お前らは二人でなにしてやがった?
         部屋がどうこう言っていたようだが…」

    ペトラ「あ~それはですね~」

    ペトラはここまでの経緯(いきさつ)を、リヴァイに説明した。

  16. 16 : : 2014/02/13(木) 20:10:25
    リヴァイ「……なるほどな。事情はわかった。」

        「それで、レンズを一時的にお前と相部屋にしようと?」

    ペトラ「はい!」

    リヴァイ「…だが、お前は3年だろ?こいつとは学年が違うじゃねぇか」

    ペトラ「それは……やっぱり難しいでしょうか?」

    リヴァイ「……お前はどうしたい?」

    クリスタの方へ向き直るリヴァイ。

    クリスタ「えっ!?」

    リヴァイ「ペトラの話を聞いてる限りじゃ、お前の処遇を聞いたこいつが勝手に話を進めているだけで、お前自身の意思が無いように感じられるんだが…」

    ペトラ「アハハ…」

    クリスタ「…わ、私は…」

    リヴァイ「…どうなんだ?はっきりしろ」

    クリスタ「…先輩や先生方に、これ以上ご迷惑をお掛けしたくありませんので…」

    リヴァイ「…」

    クリスタ「ここまで、色々として下さろうとしてもらって、ありがとうございます…」

        「当初の予定どうり、自宅から通学しようと思います…」

    ペトラ「クリスタちゃん!!」

    クリスタ「すみません先輩。…ありがとうございます」

    ペトラ「そんな…」

    終始俯きながらそう話すクリスタを、険しい表情で見ていたリヴァイが、
    小さく舌打ちをした。


    リヴァイ「…別に礼や謝罪を聞きたいわけじゃない…」

    クリスタ「…え?」

    リヴァイ「俺は、お前が“どうしたいか”を聞いているんだ」

        「他人の意思も意見も関係ねぇ、お前自身の意思をな!」

    クリスタ「私の………意思?」

    よくわからないといった様子のクリスタ。
    それを見て、再び舌打ちをするリヴァイ。

    リヴァイ「…もういい」

        「どうせ充分迷惑はかかってんだ」

        「ならここまで来て、帰らせるってのも気分が良いもんじゃない…」

    クリスタ「?」

    リヴァイ「取り合ってやるよ…俺が直接」

    クリスタ「!?」

    ペトラ「ホントですか先生!」

    リヴァイ「…まぁ、今回の事はこっちに非があるからな」

    クリスタ「でも…今は部屋がないって担当の方が…」

    リヴァイ「…チッ…どうせ対応したのはキッツ辺りだろう」

        「あいつは頭が固ぇ上に、柔軟な対応ができねぇからな…」

    ペトラ(あ~あの小鹿か…)

    リヴァイ「…まぁ、エルヴィンに言えば何とかなるだろう…」

        「…それで問題ねぇな?」

    クリスタ「え!?…いや、その…」

    リヴァイ「じゃあ、これからエルヴィンに会って話してきてやるから…
         お前らは中で待ってろ」

    クリスタ「あ!…ちょ…」

    ペトラ「はーい♪ありがとうございます!」

    クリスタの言葉を遮るように、上機嫌な声でペトラが答えた。

    リヴァイ「………フン」

    対照的に不機嫌そうな態度でリヴァイはその場を後にした。
    離れ際に、一瞬だけ視線をクリスタの方に向けたが、彼女はそれに気付かなかった。

  17. 17 : : 2014/02/13(木) 20:15:18
    期待!
  18. 18 : : 2014/02/13(木) 20:15:46
    リヴァイが去って、緊張が解けたのかクリスタが安堵の溜息のようなものを吐く。
    瞬間、ペトラが彼女の後ろから抱き付いてきた。

    ペトラ「よかったね~クリスタちゃん!」

       「エルヴィン副校長だったら優しいし、きっとなんとかしてくれるよ」

    クリスタ「そ、そう…ですか…」

    ペトラ「フフ…緊張した?」

    クリスタ「えっ!?」ドキッ

    ペトラ「怖いからね~リヴァイ先生」

    クリスタ「あ…そ、そうですね…」

    何か虚を衝かれたかのような反応を見せたクリスタだったが、
    そのあとの、ペトラの言葉に安堵した様子で答えた。

    ペトラ「でも、誤解しないでね」

       「リヴァイ先生、あんな感じだから怖がられやすいけど…
        凄く優しい人だから」

    クリスタ「…はい。…なんとなく、わかります」

    ペトラ「でも、あの目で睨まれたらヤバいけどね~」

       「もうホント、蛇に睨まれた蛙状態よ~」

    クリスタ「…ふふっ…そうですね」

    ぎこちない笑みながらも、今日初めてクリスタの表情が和らいだ。

    ペトラ「――あ!!クリスタちゃん、初めて笑ってくれた~」

    クリスタ「あ…ほんとですか…」

    ペトラ「そうよ~!やっぱり、笑った方が可愛いよ~」

    クリスタ「ペトラさん…」

    ペトラ「あ~も~ほんと、こんな妹が欲しいな~~」

    クリスタ「ぺ、ペトラ…さん(く、苦しい…)」

    ペトラは強くクリスタを抱きしめると、愛らしそうに頬擦りをした。
    あまり慣れない行為に、クリスタは困惑していた。
  19. 19 : : 2014/02/13(木) 20:18:37
    その後、リヴァイがエルヴィンに交渉し、結果特別処遇として、
    空き部屋ができるまでの期間、他学年であるペトラとの相部屋を許可された。


    グンタ「ほぅ…そんな事があったのか」

    諸々の経緯を経て同日の夜、ペトラたちは同級生であるグンタの部屋に集まっていた。

    ペトラ「そうなの。もう、大変だったんだから~」

    部屋の端にある小さなキッチン。
    そこで、紅茶の入ったティーポットを片手に、ペトラは今日の出来事を話していた。

    エルド「何言ってんだ…一番大変だったのは俺だぞ」

    グンタ「はは…エルドはとんだとばっちりだったな!」

    エルド「全くだ!」

    ペトラ「だから、さっきから謝ってるじゃな~い」

    そう言いながら、4人分のティーカップを持ったペトラが、グンタ達のいるテーブルの方へやってきた。
    そして、その内の一つをエルドの前に置いた。

    ペトラ「はい、エルド♪」

    エルド「…ああ。」

    ペトラ「こっち、グンタの分ね」

    グンタ「おお、サンキュウ」

    貰った紅茶を一口飲んで、エルドが気怠そうに口を開く。


    エルド「はぁ~結局あの後、俺が代わりに買い出しに行ったはいいが、
        貰った金が足りなくて引き返すハメにあうわ…」

    ペトラ「そ、それは私のせいじゃないでしょ!」

    エルド「…忘れた財布を取りに戻れば、学生証も財布の中で中に入れないわで…」

       「…ほんと、災難だったぞ…」

    ペトラ「だ、大体、外に出るのに財布ぐらい持っていきなさいよ!」

    エルド「…元々、外へ出るつもりじゃなかったからな~」

       「その上、ろくな準備も出来ない内に、誰かさんに置き去りにされて~」ジト

    嫌味を含めた言い方で、ペトラを見つめながらカップを口元に運ぶエルド。

    ペトラ「うぅ…それは…悪かったわよ…」

    グンタ「まぁ、ペトラにもそれなりの事情があったみたいだしな」

       「そう言ってやるなよ!」

    言いながら、エルドを宥めるように彼の肩を叩くグンタ。

    エルド「…わかってるさ」

       「別に本気で根に持ってるわけじゃないさ」

       「…ただ、そういう事情があったなら、あの場で説明してくれればいいものを…
        そうすれば、俺だって…」イジイジ

    ペトラ「ホント、ごめんってば~」
  20. 20 : : 2014/02/13(木) 20:20:55
    オルオ「…ふん。さっきから聞いてりゃお前たちは…」

       「なんて、程度の低い話をしているんだ…っと」ヒョイ

    不意に話に入ってきたオルオは、ペトラの持っていた二つのカップの内の一つを、
    彼女の後ろから、取り上げた。

    ペトラ「あ!ちょっと、誰があんたの分なんていったのよ!」

    オルオ「ほぅ…それじゃあ何か?」

       「お前は一人で、二つも飲むつもりだったのか?…ペトラよ」

    ペトラ「っそ、そうよ!だから返しなさいよ!」

    オルオ「フン…見え透いた嘘を…全く可愛くない奴だ…」

    ペトラ「…はぁ?」

    オルオ「…まぁ、照れ隠しでそういう態度をとるのもいいが…」

       「俺の本妻ポジションを獲得したいなら、もっと素直にならないとな」

    ペトラ「…うざっ」

    オルオ「ふっ…相変わらず素直じゃないな、ペトラよ」

    グンタ「…それは、お前もだろう」ハァ

    ペトラ「…もういいよ」

       「こんなのに付き合ってても、時間の無駄!」

    オルオ「おいおい…何をそn――」

    ペトラ「うるさい、黙れ!」

    エルド「…はぁ、全くお前らは…」

    グンタ「まぁ…いつもの事だけどな」

       「…ところでペトラ?」

    ペトラ「…何よ…」

    ペトラは、明らかに不機嫌な声のトーンで答える。

    グンタ(俺にまで当たるなよ…)

       「その、クリスタちゃんだったか?
    その子は、今どうしてるんだ?」
  21. 21 : : 2014/02/13(木) 20:24:02
    ペトラ「あ~そのことね」

       「一応、私と同じ部屋でってことにはなったんだけど…」

       「荷物とか、色々と準備があるからって、今日は自宅に帰ったわ」

       「本格的な引っ越しは、明日からね」

    グンタ「なるほどな…それもそうか」

    エルド「…しかし、大丈夫か?」

    ペトラ「何が?」

    エルド「いや、あまり可愛いからって…」

       「…お前、襲うなよ?」

    ペトラ「なっ…お、襲うかー!!」

    エルド「いや…なんかお前、危なそうな目でみてたからな」

    グンタ「そ、そうなのか」ヒキ

    ペトラ「だだだ、大丈夫よ!」

       「いくらなんでも、本人の合意無しにそんなこと、するわけが――」

    グンタ「…合意したら、するのかよ!」

    ペトラ「うぅ…だ、だってぇ~ホントに可愛いんだから~」

    グンタ「お前なぁ…」

    エルド「…まぁ、それは否定しないがな」

    ペトラ「――でしょ!!」

    オルオ「…ほぅ、そんなに可愛いのか?」

    ペトラ「そうよ!まるで天使のようなかわいらしい容姿と…」

       「絹のようにきめ細かい髪と、マシュマロみたいに柔らかい肌…」

       「それに、とっても甘くていい香りが…」

    うっとりとしながら語るペトラを、若干引き気味に見ているエルドとグンタ。
    しかし、オルオだけはその話を興味無さげに聞いていたが、彼の瞳の奥にはどこか怪しい光が宿っていた。

    そして、クリスタの可愛さ自慢に満足したペトラは、紅茶を一口飲むとようやく落ち着いたようで、皆のカップが空になっているのを確認すると、それを受け取ってキッチンの方へ向かった。

    オルオ「お、おいペトラ!俺の分は!?」

    ペトラ「自分でやれ!」

    グンタ「はぁ…ようやくいつもの感じに戻ったか」

    エルド「そうだな」

    エルグン(何かペトラが心配だが…)

  22. 22 : : 2014/02/14(金) 16:52:17
    期待♪───O(≧∇≦)O────♪‼
  23. 23 : : 2014/02/14(金) 18:39:38
    期待なのだよ☆
  24. 24 : : 2014/02/18(火) 21:29:53
    -アングリフ市内の古いアパート-

    アングリフは、ハイリヒアやその周辺の土地が都市開発化されていく中で、
    取り残され、近年では地域高齢化と過疎化が進む田舎町である。
    その一方で、近隣仲の良さと地域愛に溢れる、住民にとっては住み心地の良い町である。

    そんな町の、閑静な住宅街に佇む、年季の入った木造のアパート。
    壁板は所々腐り、建具は風に吹かれガタガタと音を立てている。

    陽がすっかり暮れて、町の静けさが際立つ中、
    このアパートへと向かう、小さな足音が響き渡っていた。

    そして、アパートの前まで来ると、足音がピタリと止んだ。

    クリスタ「…ここに帰ってくるのも、今日までか…」

    足音の主は、クリスタだった。
    彼女は、アパートを見上げて呟くと、ゆっくりと階段を上がり始める。
    小柄な彼女が乗っただけで、鈍く軋む音を響かせる鉄製の外階段。
    段板も手摺も、錆と塗装剥げでボロボロである。

    その階段を上がりきり、突き当りにある扉の前で足を止め、鞄から鍵を取り出す。
    どうやらここが、彼女の部屋らしい。
    彼女の部屋の他にも、部屋が3つ程あるが、どの部屋の窓からも灯りが点いている様子は窺(うかが)えなかった。
    このアパートの住人は、どうやら彼女だけのようだ。

  25. 25 : : 2014/02/18(火) 21:40:16
    クリスタ「…」

    無言で自分の部屋に入るクリスタ。
    一人暮らしで、出迎てくれる人もいないのだから、当然なのだが。

    四畳半の簡素フローリング貼りの1Kで、部屋の隅に綺麗に畳まれた布団があるだけの、
    16歳の女子高生の部屋にしては、質素過ぎる飾り気の無さであった。

    着ていたコートを、クローゼットに掛け、畳まれた布団の傍に腰を下ろすクリスタ。

    クリスタ「……………はぁ…」

        「結局、見つからなかったなぁ…」

    深いため息を吐き、崩れる様に布団に倒れ込むクリスタ。

    彼女は、ペトラと別れた後、学園内とその周辺を、陽が落ちるまで探し回っていた。
    しかし、結局探し物は見つからず、落胆していた。

    クリスタ「……仕方無い…よね…」

        「私が、しっかりしていないから…」

    そう呟きながら、彼女は虚ろな瞳で自分の手を見つめていた。

    クリスタ「…お風呂…入らないと…」

        「明日から学校だし…準備もしなくちゃ…」

    しかし、彼女の身体は動かない。
    今日一日に起こった出来事で、心身共に疲れており、
    更に寒空の中、時間をかけて家まで戻ってきたことにより、
    強い疲労感と睡魔が彼女を取り巻いていた。

    クリスタ「………学校かぁ…」



    ----何も気にすることはない---


    ------今まで通り…二年間過ごせば良いだけ---





    ------それだけ----











    -----------------私--



    「----何の……ために……」

    そこで、彼女の意識は途絶えた。

    静かに眠る彼女の瞳には、涙が滲んでいた。

  26. 26 : : 2014/03/14(金) 23:52:25
    まだかな~
  27. 27 : : 2014/07/21(月) 02:04:43
    夜が更け、学園は静けさに包まれていた。
    この学園は、町の高台に位地しているため、周囲の建物の光が届きにくい。
    その為、夜になると敷地内にある外灯と、月の明かりが唯一の光源になる。

    この日は、厚い雲に覆われて月が見えなくなっているせいか、少し闇が深いように感じられる。
    闇が深くなる程、光は一層輝きを増すようで、
    暗くなった学園の敷地内で、明かりの灯った建物が一つ浮かび上がるように、聳(そび)え立っていた。



    ―ハイリヒアゼーゲン学園 学生寮棟―


    学園の敷地内、学舎棟から少し離れた場所に立ち並ぶ二つの建物。
    在籍している生徒達は、原則としてここで3年間の学生生活を送る事になっている。

    その建物の一つに、近づく一つの人影。
    影が建物の入り口まで近づくと、立ち止まった。

    全面ガラス張りのエントランスドアから屋内の光が溢れ、
    長く綺麗な黒髪と真っ赤なマフラーを、風に靡(なび)かせる少女の姿が照らし出された。

    その少女が、冷たい夜風に身を震わせながら、口元に近づけた両手を擦り合わせて寒さを凌いでいると、エントランスの自動ドアが開き、建物内から一人の少年が現れた。

  28. 28 : : 2014/07/21(月) 02:08:04
    その少年は、真っ直ぐ少女の方へと近づく。
    それに気付いた少女も、少年の方へと向き直る。

    ???「やぁ、ミカサ!
    ごめんね、待たせちゃったかな?」

    ミカサ「…アルミン…大丈夫、今来たところだから」

    アルミンと呼ばれたこの少年は、この学園に通う2年生で、
    ミカサと同様に、この学生寮で生活している。

    アルミン「あはは…何だかデートの待ち合わせみたいな受け答えになっちゃったね」

    ミカサ「………そう…」

    アルミン「ま…まぁ、ここで立ち話も何だし…行こうか?」

    ミカサの素っ気無い返事に、僅かに焦燥を見せるも、
    あどけない笑顔でそれを隠し、彼女に手を差し出す。

    ミカサ「……そうね」

    しかし、そんなアルミンの横を素通りして、ミカサはさっさと建物の中へと入っていった。

    そんなミカサの背中を見つめながら、アルミンは小さく溜息を吐くと、足早に彼女の後を追いかけた。

  29. 29 : : 2014/07/21(月) 02:11:03
    寮の廊下を並んで歩く二人の少年と少女。

    少年の方が背が低く、男性にしては長めの金髪と、華奢な体型に中性的な顔立ちで、
    一見、女性と見間違えてもおかしくはない程だ。

    対して、少女の方は長身で、細見ながらも鍛えられた肉体が服の上からでも窺える。
    だが、決して男性らしい訳ではなく、女性らしい綺麗な黒髪と、端整な顔立ちが、
    彼女の女性としての魅力を、際立てている。


    エントランスからエレベーターに乗り込み、降りるまで二人の間に会話と呼べるものは、一つもなかった。

    エレベーターを降りて、部屋へと向かう道中、若干気まずそうな表情でミカサの隣を歩くアルミンが、その沈黙を断ち切ろうと口を開く。

    アルミン「ね、ねぇ、ミカサ!」

    ミカサ「………何?」

    ミカサはアルミンの方に顔を向ける事無く、答えた。

    アルミン「え、えっと~…ど、どう?作業の方は?」

    ミカサ「…問題ない」

    アルミン「そっか~流石ミカサだね!
    僕達の方は、あまり進んでなくてさ~」

    ミカサ「…そう。またエレンが我儘(わがまま)を言ってるの?」

    アルミン「いや…エレンはいつも通りだよ。
    寧ろ、作業に入ってからは、僕の方が足を引っ張っちゃってるかな…」

    若干、言葉を濁しながら、ばつの悪そうな表情で答えるアルミン。

    ミカサ「…大丈夫。アルミンはやればできる子…エレンと同じ」

    アルミン「あはは…ありがとう」


    その時、廊下を歩く二人の背後から二人のモノとは別の声が、二人の何と無い会話に割り込んできた。

  30. 30 : : 2014/07/21(月) 02:14:55
    ???「――お前は、俺達の母親かなんかのつもりか?」

    その声に反応した二人は、足を止めて後ろに振り返った。


    アルミン「あ、エレン!」

    エレン「よう!」

    振り返った先には、両腕に大量のジュース缶を抱えたエレンが立っていた。

    アルミン「――あれ?どうしたのエレン。
    そんなに沢山、缶ジュース抱えて?」

    エレン「ん?…あぁ、これはな――」

    ミカサ「缶…パシリ……っは!!
    エレン!…まさか、誰かから苛めを……」

    エレン「違ぇーよ!!」

    二人の会話に、的外れな見解でカットインをしてきたミカサに、やや強めに反論するエレン。


    アルミン「あはは…でも、本当にどうしたの?僕等の分なら3本あれば十分だよね?」

    エレン「あ~、それはな…さっきアルミンが出て行ったのと入れ違いで、ジャン達が部屋に来たんだよ…」

    ミカサ「―――っ!!…まさかジャンに苛めを…?」

    エレン「だから違ぇって言ってんだろ!!」

    相変わらず、的外れな見解のミカサに、先程より声を荒げるエレン。
    しかし、そんなエレンの様子を気にも留めないミカサ。

    そんな二人のやり取りを、やや呆れ気味に見ていたアルミンが、
    二人を宥(なだ)めるように、会話に割って入る。
  31. 31 : : 2014/07/21(月) 02:18:05
    アルミン「まぁまぁ、エレン。ミカサも、ジャンがそんな酷い事するような人じゃないのは知ってるでしょ?」

    エレン「――いや、あいつは結構そういう事をする奴だぞ!」

    アルミン「…あまり話を面倒な方向へ持っていかないで欲しいな…エレン?」

    ミカサ「やっぱり、ジャン達に…!?」

    アルミン「うん、ミカサも少し落ち着いてね…」

    おかしな方向へとヒートアップしていきそうな二人の会話を、呆れ目で仲裁するアルミン。

    傍から見ると、ちょっとした修羅場にも見えるこの情景もこの3人にとっては日常茶飯事なのだろう。
    それとなく二人をあしらっているアルミンを見る限り、そのことが窺える。


    アルミン「はぁ…大方、飲み物の買い出し役を決めるジャンケンでもして、エレンが負けたとか、そんなところでしょ?」

    エレン「お、おぅ…そんなところだ…さすがアルミンだな!
    まるでその場にいたみたいだ」

    アルミン「はは…まぁ、この状況から考えられる可能性なんて、そんなにはないからね」

    ミカサ「いいえ、アルミンは凄い…その観察力は、誇りに思っていいと思う」

    アルミン「あはは、ありがとうミカサ」


    エレン「それより、そろそろ部屋に戻ろうぜ?さすがに、腕が疲れてきた…」

    長い時間3人が廊下の真ん中で立ち止まって話していたという状況を、ずっと缶を抱えていた事による腕の疲労感によって気付かされたエレンが、二人を促した。

  32. 32 : : 2014/07/21(月) 02:19:25
    アルミン「あ、ごめん。半分持つよ?」

    エレン「いや、大丈夫だから、さっさと行こうぜ!」

    ミカサ「…エレン、無理をして落としたりしては意味がない…ので、半分持とう」

    そう言ってミカサは手を伸ばすが、エレンはそれを拒絶する。


    エレン「大丈夫だって言ってるだろ!俺はもう子供じゃないんだからな!」

    ミカサ「そう言っている時点で、まだまだ子供…」

    エレン「くそっ…いちいち、ああ言えばこう言いやがって!」

    アルミン「もう、いい加減にしなよエレン!ミカサも!」

    再び険悪な雰囲気になりそうな二人を見兼ねたアルミンが、少し強めの口調で強制的に会話を断ち切った。

    その時のアルミンの気迫に圧され、エレンは渋々ながらも納得した。

    ミカサも、特にそれ以上何も言うこと無く、3人はようやく部屋へ向かって歩き出した。

  33. 33 : : 2014/07/26(土) 12:38:53
    4月16日

    -アングリフ市内-


    午前5時、早朝の閑静な住宅街を郵便配達のバイクが、エンジン音を響かせながら走り抜ける。
    その音に、路上にいた小鳥達が逃げるように飛び去っていく。

    その中に佇む小さな古アパートは、そんな微かな音でさえ、建物内に鮮明に伝えてしまう。

    そんなアパートで暮らす一人の少女は、外から聞こえる朝の音に目を覚ます。


    クリスタ「―――あれ?………私…?」

    寝惚け眼で体を起こしたクリスタは、目を覚まそうと、カーテンの隙間から差し込む光の方へと無意識的に目を向ける。
    そして、ある程度に脳が覚醒し出した時、ある事に気付く。



    ――身体が気怠い。


    寝る直前の曖昧な記憶を思い出そうと、鈍く痛む首を押さえながら、部屋の中を見回す。

    すると、自分の後ろに丁寧に畳まれた布団を見つける。
    それを見て、クリスタは自分が昨晩、布団に凭(もた)れ掛かったまま眠ってしまった事に気付いた。

    深く溜息を吐いたクリスタは、壁に掛けられた時計に目を向ける。
    時計の針は、5時10分を指していた。


    クリスタ「…お風呂に入るくらいの時間はあるかな…?」


    そう呟(つぶや)くと、昨日の疲労の抜けきらない身体を、何とか動かす。
    そして、部屋の隅に置かれた籠を手に取ると、そのまま部屋の外に出た。

  34. 34 : : 2014/07/26(土) 12:41:48
    籠の中には、入浴道具一式と着替えが入っていた。

    このアパートには、各部屋ごとに入浴設備が無く、主に住人は1階にある共用の浴室を使用している。

    今現在、ここで暮らしている住人はクリスタだけなので、自由に使用する事ができる。


    共用浴室と書かれた扉を開けると、脱衣所につながる。
    脱衣所に入ると、着ていた服を脱ぎ丁寧に畳んで、籠に入れるクリスタ。

    浴室に入ると、2畳程のスペースに小さな浴槽と、シャワーが1つ設置されていた。

    鈍い金擦り音を響かせる蛇口の取っ手を回すと、シャワーから温(ぬる)いお湯が出てくる。

    給湯設備が不調の為、シャワーのお湯はお世辞にも温かいとは言えなかった。
    特に今日のような気温の低い日は、お湯の温まり加減も悪く、精々人肌程度の温かさしか望めなかった。

    小刻みに体を震わせながら、シャワーを浴びるクリスタ。
    浴室にある小さな窓の隙間から、外の冷たい風が流れ込み、彼女の身体を更に縮込ませる。

    長居をする程、逆に身体が冷えてしまう為、シャワーを早々に切り上げて、する事だけしたらすぐに浴室を出た。


    髪をタオルで乾かしながら部屋に戻ったクリスタは、壁の時計を見遣る。


    クリスタ「…6時前かぁ……」

    ここから学園までは、彼女の足で1時間程かかる。
    朝のHRは8時から始まる為、6時半に家を出れば間に合う。

    髪を乾かし終わったクリスタは、クローゼットに近づき扉を開ける。
    中には、白いコートと真新しい制服が吊るされていた。

    彼女は制服を手に取ると、どこか物憂げな表情で制服を見つめていた。

    白を基調としたブレザーに、用所に銀の装飾が施されており、左胸の所に翼を模(かたど)った校章が付いていた。

    シャツに袖を通し、7~8分丈程のロングスカートを履き、紐タイを結ぶ。
    そうして、制服に身を包んだ自分の姿を、姿見鏡で確認するクリスタ。

    その、鏡に映った自分を見つめる彼女の表情からは、新たな場所で学園生活を始めるという期待感や不安を一切感じられなかった。


    彼女は、鏡の前で目を閉じると、自身の胸に手をやり深く深呼吸をした。

    そして、目を開けた彼女の表情は、凛としたものだったが、瞳の奥にはどこか暗い光が宿っているように見えた。


  35. 35 : : 2014/07/26(土) 17:09:15
    久しぶりに再開してた。期待です
  36. 36 : : 2014/12/25(木) 00:30:29
    外に出たクリスタは、冷たい風に吹かれて身を震わせる。
    吐いた息が真っ白に染まり、今日の寒さを目でも知らしめられる。

    4月半ばをすぎても、この街にはまだ春はやってこないらしい。

    どんよりとした曇り空を遠くに見ながら、コートの襟元をきゅっと締めて、
    クリスタは歩き出した。


  37. 37 : : 2014/12/25(木) 00:33:38

    ―ハイリヒアゼーゲン学園 高等部2学年Aクラス―


    朝のHR前、大半の生徒が登校し、学園が賑わいを取り戻すこの時間。
    このクラスも、担任教師到着前の僅かな時間を楽しむ、生徒達の笑い声で賑わっていた。

    そんな空気の中、一人不機嫌そうに頬杖をついて窓の外を眺める少年がいた。

    エレン「っはぁぁぁ…」

    肺の中の酸素を全て吐き出しきったような、深い溜息を吐くエレン。

    アルミン「随分と深い溜息だね、エレン」

    そんな様子のエレンの心中を知ってか、心配半分茶化し半分な感じでアルミンは彼に声を掛けた。

    エレン「ん?…あぁ、アルミンか……遅かったなぁ~」

    少し遅れてやって来たアルミンに対し、振り返る事もせずに適当な返事を返しつつ、
    未だエレンは外をぼんやりと眺めていた。

    アルミン「はは、おはよう」

    若干、苦笑気味にアルミンはそう言いながら、エレンの後ろの席に腰を下ろした。

    その直後、エレンの隣から椅子を引く音が彼の耳に届いた。
    それに反応したエレンの肩がピクリと動き、彼の眉間に深く皺(しわ)が刻まれる。

    しかし、そこから自分に向かって放たれた声は、彼が予想していたものとは違っていた。

    ミカサ「エレン、おはよう。…アルミンも」

    ――ミカサだ。


    エレン「お~う」

    声の主が分かった瞬間に、エレンから肩の力が抜け、脱力した適当な返事を返す。

    アルミン「あ!おはよう、ミカサ!って言っても、僕はついで…かな?」

    ミカサ「……大丈夫、そんな事はない…はず」

    アルミン「ははは…」

    自傷気味に笑うアルミンを気にも留めず、ミカサはエレンに話し掛ける。

    ミカサ「エレン?…少し、元気が無いように見える…
    もし、体調が優れないようなら、今日は早退をするべき」

    エレン「だぁぁ~もう!!朝一からしつこく俺に絡んでくんじゃねぇよ!」

    お節介を焼くミカサに苛立ち、強く反発するエレン。

    しかし、そんなエレンの言葉を気にする様子もなく、ミカサはいつも通り淡々とした口調で、会話を続ける。

    ミカサ「それは仕方のない事…なぜなら私はエレンの事を常時見守る義務がある」

    エレン「そんなものはねぇよ!!」

    然も当然であるかのように言い切るミカサに、段々と苛立ちが募ってきたエレンは、自分の机を叩きながら言葉を荒げた。

    ミカサ「エレン…物に当たるのは良くない」

    エレン「うがぁぁ~~」

    相変わらずの様子で話すミカサに、エレンは頭を抱えながら怒り悶える。

    ミカサ「エレン!?どうしたの?頭が痛むの?…なら、すぐに保健室へ――」

    アルミン「はいっミカサ、ストップー!」

    流石に居た堪れなくなったアルミンが、ミカサを制止するように二人の間に割って入った。

  38. 38 : : 2014/12/25(木) 00:35:43
    このようなやり取りは、この教室においても日常なのだが、
    これ以上は、あまり良い方向に話が向かわないだろうと判断したアルミンの咄嗟の行動であった。

    結果的に、この行動が功を奏し、エレンから熱が冷めていくのを感じたアルミンだったが、
    同時に、綺麗な黒い瞳を怪しく輝かせながら細められた視線を、目の前の女性から感じ、背中に嫌な汗を掻いていた。


    エレン「…はぁ、つうかミカサ、そろそろHRが始まるぞ」

    幾分か落ち着きを取り戻した、エレンが口を開いた。

    ミカサ「知っている」

    僅かに首を傾げながら、ミカサは答える。


    エレン「…なら、とっとと席に着けよ」

    ミカサ「もう、着いている」

    アルミン「あはは…」

    そう、既にミカサは席に着いていた――



    エレン「そこは、お前の席じゃねぇだろ!!」


    ――自分の席ではない、エレンの隣の席に。


    恍(とぼ)けた反応を見せるミカサに対し、エレンは再び怒りを覚え、
    折角、下げた彼の怒りの熱を、再炎上させた彼女の行為にアルミンは、内心深い溜息を吐いていた。


    ???「――そうだな、確かにそこは俺の席だ」

  39. 39 : : 2014/12/25(木) 00:38:00
    不意に、三人の会話に一人の男の声が割って入った。

    その声の主を認識すると、エレンの眉間に更に深く皺が刻まれる。
    そして、先程までとは違う、低く不機嫌な声でその男の名を呼んだ。

    エレン「…なんだよ、馬面」


    ――固有名称では、呼んではくれなかった。


    ジャン「ハッ!随分とご機嫌斜めみてぇじゃねぇか、死に急ぎ野郎」

    二人の間に険悪な空気が漂う。
    そう、エレンが朝から不機嫌だった原因は、紛れもなくこの男だった。

    その事を知っていた、アルミンは問題が起こる前に何とかしなければと、
    こういった事に関しては、全く役に立たないであろうミカサを横目に、一人で頭を悩ませていた。


    今現在、アルミンの目の前で火花を散らしている二人の青年。
    エレン・イェーガーとジャン・キルシュタインは、昨年この学園で知り合った。

    しかし、出逢って早々一悶着起こし、それ以来何かといがみ合いが多く、
    二年に進級した今でもそれは変わっていない。


    アルミン(どうしてこの二人は、こうも馬が合わないんだろうか…)

    ジャン「大体、昨日の事は明らかに、お前に非があるくせして逆ギレとは、随分と“いい性格”してんじゃねぇか」

    エレン「ああ?誰に非があるって?昨日の記憶すら曖昧なんて、脳みそまで馬並みなんだな」

    ジャン「てめぇ…」

    アルミン(それより、そろそろ本当にHRの時間になっちゃいそうなんだけど…
    どうするんだよ、こんな状況をアノ先生に見られて、上手く誤魔化せる自信なんて、僕には全くないぞ!)

    アルミンがそんな心配をしている事など露知らず、二人は今にも一触即発しそうな状態で、睨み合っている。


  40. 40 : : 2014/12/25(木) 00:40:21
    ミカサ「ジャン、そこまで」

    ミカサが二人の間に割って入った。

    あの、触れたら切り裂かれそうなほど張りつめていた二人の間の空間に、
    いとも簡単に入っていく事の出来る人間が、この世界に果たして何人いるのだろうか。

    そんな事を考えると同時に、そういった事に関するミカサの心強さを、噛み締めるアルミンだった。


    ジャン「ミ、ミカサ…」

    ミカサ「そろそろ、先生が来てしまう…ので、あなたも早く席に着くべき」

    ジャン「え?…あ、いや俺の席はそこ――」

    ミカサ「は・や・く、席に着くべき」

    たじろぎながらも主張するジャンの言葉を、強制的に遮るミカサ。

    その時、彼女の後頭部を鈍い痛みが襲った。
    振り返ると、そこには自分の頭に手刀を振り下ろしたエレンの姿があった。

    エレン「いい加減にしろ…お前の席は向こうだろ」

    そう言いながら、エレンは教室の後ろの出入り口の前にある席を指さしていた。


    ミカサ「エレン…暴力は良くない」

    頭を擦りながら、悲しげな瞳でエレンを見つめるミカサ。

    エレン「いいからさっさと戻れよ…リヴァイ先生が来たら、マジで洒落にならないんだからよ…」

    ミカサ「フン。あんなチビなんか…」

    不貞腐れたように、呟くミカサを早く戻る様に手で促すエレン。
    それを見て、ようやく観念したミカサは渋々自分の席に戻っていった。

    その一部始終を、睨むような目付きで見ていたジャンは、静かに自分の席に着いた。
    そんなジャンの様子に気付いたエレンは、軽く溜息を吐くと席に着いた。


    ジャン「何だ?何か言いたそうだな」

    エレン「…別に」

    互いに目も合わせずに、相変わらず険悪なオーラを漂わせていたが、
    とりあえず、事態が収束した事に安堵したアルミンは胸を撫で下ろした。



  41. 41 : : 2014/12/25(木) 00:59:38
    しかし、最も役に立たないであろうと踏んでいた人物が、結果的に事態を収めた事に、複雑な心境を抱いていたアルミンは、その場に立ち尽くしながら、自分の存在価値について苦悩していた。

    アルミン(はぁ…まさかこの手の事でミカサに救われるだなんて…
    僕が二人の役に立てる事って何かあるのかなぁ…)


    エレン「おい、アルミン!」


    アルミン(よくよく考えてみると、昔から僕は二人の重荷になるような事ばかり…)


    エレン「おい!」


    アルミン(それに、ミカサからはぞんざいな扱いを受けてる気がするし…)


    エレン「アルッ――」

    自分の世界を放浪中のアルミンを呼び戻そうと、エレンが彼の名を呼ぼうとした瞬間、教室の扉が開いた。

    そして、このクラスの担任教師であるリヴァイが静かに入って来た。


    エレン「あ…」


    リヴァイ「…おい、アルレルト」


    アルミン「…はい?」

    リヴァイ「HR始業の鐘はとっくに鳴っているはずだが…」

    アルミン「え?」

    ようやく我に返ったアルミンだが、いまいち状況が把握できず目を丸くして周囲を見渡していた。
    そして、前の席で額に手を当てながら首を横に振るエレンを見て、一気に現実に引き戻される。

    リヴァイ「いい度胸だな」

    アルミン「は…はぃぃっ!」

    怒りを含んだ低い声と、恐怖に支配された高い声(と言うよりも悲鳴)が、教室中に響き渡った。


    身長160cmと、成人男性としてはあまり高くない彼だが教壇に上がり、
    情の欠片も見受けられない瞳から放たれる眼光は、射抜いた者を恐怖のどん底に陥れるには十分過ぎるものだった。

    実際にその眼光に射抜かれたアルミンは、
    体内の水分を全て放出してしまうのではないかと思うほどの冷や汗を流していた。


    暫しの沈黙が教室内に流れるが、リヴァイの舌打ちによって破られた。

    リヴァイ「まぁ、てめぇの処分は後だな
    とっとと、席に着け!」

    アルミン「はいっ~~!!」

    アルミンは急いで席に着いた。


    リヴァイ「…今日はHRの前に、先週伝えておいた転入生の紹介をする」

    「おおぉ~~!!」

    静寂に包まれていた教室に、僅かながら活気が戻る。
    そんな様子を見ながら、廊下に佇む人影に入ってくるようリヴァイは促した。

    開いた扉から、ゆっくりと小さな影が現れる。
  42. 42 : : 2014/12/25(木) 01:32:30

    エレン(転入生…かぁ)

    自分にはあまり関係の無いといった様子で、窓の外を眺めていたエレンだったが、
    その転入生が、入室した事によって起きたであろうざわめきに、
    軽く視線だけを教壇の方へと向けた。

    その瞬間、彼はその人物に目を奪われた。



    無風の教室の中で、風に靡くように流れる金色の髪が、窓から差し込む光に照らされて、宝石のように輝く。


    純白の制服に、見劣りしない白くきめ細かい肌と、深く吸い込まれそうな程澄んだ、碧い瞳。


    身長は、高校生にしては低めだが、それが逆に人形のような可愛らしさを醸し出す。
    かと思えば、要所要所に女性らしい魅力を備えていて。


    誰がどう見ても、絶世の美少女だった。


    そんな彼女の登場に、各々の期待値を遥かに超えた喜びを隠せない男子生徒達が騒ぎ立てていた。



    しかし、そんな彼女を一人静かに見つめる少年がいた。


    ―――エレンだ。

    彼もまた、他の男子生徒達同様に、彼女に目を奪われていた。

    しかし、彼が気になっていたのは、その美しい容姿でも雰囲気でも無く、
    彼女の深く澄んだ碧い瞳だった。


    エレン「…何だ?…あいつの瞳(め)」


    その後、リヴァイの一括により、教室は落ち着きを取り戻し、
    何事もなく、HRを終えたのであった。


  43. 43 : : 2014/12/25(木) 11:49:55
    期待!

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Lefaner

L.Sfhiearlld

@Lefaner

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