この作品は執筆を終了しています。
少女と見る世界【エレミカ】
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- 1 : 2018/03/16(金) 00:41:11 :
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ようやく現パロじゃない作品を書きます!
注意事項を読んだ上でご覧ください。
注意事項
・エレミカを中心とした作品です。苦手な人は逃げてください。
・原作とは全く関連性のない話です。
・年齢操作してます。
エレン(27)
ミカサ(12)
・キャラ崩壊が多々見られます。
・不快な気分になるようなこと、迷惑行為などはご遠慮ください。
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- 2 : 2018/03/16(金) 01:24:48 :
今から3年前
シガンシナのとある一家を襲った、人買いによる殺人があった
両親は死亡
生き残ったのは娘一人だけだった
名は「ミカサ・アッカーマン」
彼女の心の中には、3年前に命を救ってくれた恩人のある言葉が深く刻み込まれていた。
844年
???「すぐに憲兵団を呼んでください!」
私を助けた兵士(兵服を着ていたので分かった)の男性はすぐに近くの村の人にそう言うと、憲兵団が来るまで私のそばにいてくれた。
火は灯しているのになぜか顔はよく見えなかった。
ミカサ「お兄さんは…誰?」
声からしてそこまで歳には思えなかったので一応そう呼ぶ。
???「しがないただの…一兵士だ」
ミカサ「これは…?」
そう言って指さしたのは背中の翼のようなエンブレム。
???「これか?これは自由の翼って言うんだ」
ミカサ「自由の…翼」
???「そう、調査兵団である証だ」
ミカサ「調査兵団って…巨人と戦う?」
???「そうだよ」
ミカサ「じゃあお兄さんも大切な人を失ったりしたの?」
???「……ああ、もちろんしたよ…何度も」
ミカサ「なのになぜ戦えるの?なぜ前を向いていられるの?」
???「夢があるからだ」
ミカサ「夢?」
???「そうだ、よく聞いとけよ」
そう言って語り出すその人の声は、子供のようにはしゃぐ少年のようだった。
???「この壁の外には…海っていう広大な湖があるんだ」
ミカサ「海…?」
???「この壁の中より何倍も広い湖なんだぞ!」
ミカサ「それが、海」
???「俺はそれを見るまでは死ねない、立ち止まるわけにはいかない」
???「俺がいつか君にも海を見せてあげる、だから君もそれまで前を向いてくれないか?」
ミカサ「海を…見せてくれるの?」
???「ああ」
ミカサ「絶対?」
???「絶対だ」
その日から、私はその人と海を見るという約束と、貰ったマフラーを常に忘れずに前を見て進み続けてきた。
憲兵団に引き取られた後、私はその人の知り合いの家だというイェーガー家の養子として迎え入れられ、近所に住むアルミンという少年とも仲良くなり平和に過ごしてきた。
そして、847年
私はその人と同じく調査兵団に入団するため、訓練兵団に志願した。
キース「只今より、104期訓練兵団の入団式を行う!!」
キース「私が運悪く貴様らを担当することになったキース・シャーディスだ!そして、ここに並ぶのが貴様らを面倒見る他の教官になる!!」
キース教官が視線を向けた先には何人もの訓練兵の教官が立ち並んでいた。
一人一人が自己紹介をしていく中、私が目を奪われた人が一人いた。
エレン「エレン・イェーガー、対人格闘が主な担当だ」
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- 3 : 2018/03/16(金) 01:38:39 :
- おっ!
予想もしてない展開ですね!!
期待してます!!!
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- 4 : 2018/03/16(金) 02:39:06 :
- 期待ですよ!
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- 5 : 2018/03/16(金) 22:46:38 :
- おぉこれはとても面白そうです!(((o(*゚▽゚*)o)))期待です(○`・^・○)
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- 6 : 2018/03/17(土) 00:31:03 :
- >>3
今作にも、ありがとうございます!
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- 7 : 2018/03/17(土) 00:31:13 :
- >>4
ありがとうございます!
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- 8 : 2018/03/17(土) 00:31:37 :
- >>5
期待に答えられるよう頑張ります!
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- 9 : 2018/03/17(土) 01:04:45 :
(イェーガー…?)
その名は、今の私の家族のカルラおばさんやグリシャおじさんと同じ名。
おばさん達は前に、大きくなりもう兵士になった息子がいると話していた。
聞いても詳しくは教えてくれなかったが、私はその息子が私を救ってくれた兵士なのではないかと見込んでいた。
イェーガーという姓も中々いない。
(彼が…?でもなんで訓練兵の教官に?)
頭の中に様々な疑問が浮かぶ中、既に兵士たちに教官による恫喝が始まっていた。
キース「オイ貴様」
アルミン「ハッ!」
キース「貴様は何者だ!?」
アルミン「シガンシナ区出身!アルミン・アルレルトです!!」
キース「そうか!バカみてぇな名前だな!!」
意味の分からないことを馬鹿にし続ける教官に少し嫌味を覚えたが、それを抑え込む。
キース「3列目、後ろを向け!」
新兵たちが恫喝されていく姿を遠くから眺める。
教官「やってるな、お前も訓練兵の時は初っ端からあれだったろ」
エレン「懐かしいです、しかし…あれには何の意味が?」
教官「お前は今期が初めてだったか?」
エレン「はい」
教官「あれは通過儀礼だ、兵士に適した人材を育てるために必要な過程だ」
エレン「なるほど…」
すると次にキースに声を掛けられたのは、珍しい黒い髪をした少女だった。
キース「貴様は何者だ!」
ミカサ「シガンシナ区出身、ミカサ・アッカーマンです」
キース「何しにここへ来た!」
ミカサ「調査兵団に入り、壁の外へ出るために来ました」
エレン「!」
教官に怯え、黙ってばかりだった兵士たちの中に少しの騒めきが起こる。
キース「他の者は静かにしろ!」
キース「アッカーマン、貴様は壁の外に出たいのだな」
ミカサ「はい」
キース「では精々、巨人のエサにでもなることだな!4列目、後ろを向け!」
教官にそう言われた後でも、その少女の目の中にある闘志は消えてなどいなかった。
教官「今期は面白い奴が多いな、内地で暮らしたいというのもいれば、壁の外に出たいってのもいるとはな」
教官「特にあの少女…なんだかお前みたいだな」
エレン「昔の話ですよ…」
教官「そうだったか?」
確かに言われた通りだ。
あの少女の姿はまるで、訓練兵時代の俺そのものだ。
外の世界に憧れを抱き、自由を求めて戦っていたあの時に。
エレン(でも…今の俺は…)
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- 10 : 2018/03/17(土) 01:31:39 :
アルミン「ミカサ!」
ミカサ「アルミン、首は大丈夫?」
アルミン「ああ…なんとか」
アルミンは教官に後ろを向く時に思い切り捻られた首をさする。
ミカサ「あの教官は少しやり過ぎだし言い過ぎだと思う」
アルミン「でもそれが兵士に必要なことなら仕方ないさ、そう言うミカサは何とも無さそうだね」
ミカサ「あの程度で私の夢が朽ちることはない」
アルミン「さすがだね…前からずっと言ってるもんね」
ミカサ「約束があるから…」
貰ったマフラーに触れる。
これに触れると、あの人のぬくもりを感じることができる気がする。
ミカサ「そういえば、教官の中に…」
ジャン「なぁ…お前ら」
ミカサ「?」
アルミン「?」
声をかけてきたのは、やや長身の刈り上げの男だった。
ジャン「アンタら、調査兵団に入りたいんだってな」
ミカサ「あなたは……確か頭突きの」
ジャン「そうだけどよ!ジャンってんだ、よろしくな」
アルミン「僕はアルミン、よろしくね」
ミカサ「私はミカサ、内地に行きたい人には興味ない」
ジャン「いやあれはなんつーか…調査兵団も少し興味あるっていうか…何で壁の外に出たいんだ?」
ミカサ「私?」
ジャン「ああ」
ミカサ「私は……海を見たいから」
ジャン「海?」
アルミン「この壁内よりも広い湖のことだ」
ジャン「はぁ!?そんなのあるわけないだろ!」
ミカサ「分からないから行く」
ジャン「そんなのがあるなら俺も一目見たいものだ」
ミカサ「あなたも調査兵団に来る?」
ジャン「それは遠慮しとくわ…」
そう言ってジャンは兵舎へと戻っていった。
ミカサ(内地に行きたいとは言ってたけど、外の世界にも少し興味があるのだろうか?)
アルミン(ミカサに興味があるみたいだな…)
アルミン「そういえばさっき何か言いかけなかった?」
ミカサ「そうだった!」
アルミン「教官がどうとか…」
ミカサ「教官の中に、私の恩人がいるかもしれない」
アルミン「もしかして、エレン・イェーガー教官?」
ミカサ「アルミンもやっぱりそう思った?」
アルミン「確証はないけど、その可能性は高いと思うんだよね」
ミカサ「でもなんで訓練兵に…」
アルミン「やっぱり本人に聞くのが一番だよね」
ミカサ「じゃあ…」
アルミン「でも率直に聞いて違かったら色々面倒だから、まずは調査兵団にいたかどうか聞くのはどうかな?」
ミカサ「さっそく聞きに行こう」
アルミン「ちょっと待ってよ!今日はもう遅いし、明日は早いよ?」
ミカサ「でも…」
アルミン「明日は立体起動の適正訓練があるだろ?その後アドバイスを聞きに行く形でどうかな?」
ミカサ「…分かった」
男女では兵舎が別なのでここで別れる。
アルミンは昔から頭がキレる。
まさかアルミンの知恵をこんな形で借りることになるとは思わなかった。
この方法ならきっと上手く行く気がする。
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- 11 : 2018/03/17(土) 01:48:00 :
- 期待です!!!
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- 12 : 2018/03/17(土) 23:45:58 :
- 期待です!
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- 13 : 2018/03/17(土) 23:54:49 :
- 期待!
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- 15 : 2018/03/18(日) 01:22:36 :
キース「今日はまず、貴様らの適性を見る!」
今日行われるのは、立体起動の適正判断。
両側の腰にロープを繋いでぶら下がるだけの簡単なものだ。
教官「しかし、この段階から立体起動の素質は見てとれる」
エレン「ここで脱落した奴も少なくなかったです」
教官「お前は最初、反転して地面に頭をぶつけてたな」
エレン「あれはベルトが故障してたからですよ!」
キース「お前ら二人!話ばかりしてないで訓練兵を見ろ!」
エレン「ハッ!すいません!」
エレン(それにしても…)
最初はできないものだと思っていたが、今期は適正のある者が多そうだ。
少なくとも10人以上は完璧に姿勢を保っている。
特に、あのアッカーマンという少女は一ミリのブレもないように見える。
ミカサ(どうしよう…)
立体起動の適正を測るものと言っただろうか。
ぶら下がるだけなんて簡単すぎて、アドバイスを聞く部分なんてどこにもない。
ミカサ(このままではアルミンのアドバイスを無駄にしてしまう…)
エレン「………」
ミカサ(…!エレン教官が私を見ている)
このままではエレン教官と話をするための口実が無くなってしまう。
ミカサ(それならいっそ…!)
エレン「なっ!」
突然ミカサが足を振り切り、状態を崩す。
腰が浮いている状態なので頭をぶつけることは無かったが、そのまま一回転するような形になった。
キース「何をしているアッカーマン!貴様はただぶら下がることもできないのか!?」
ミカサ「申し訳ありません…」
キース「明日までにできなかったら開拓地行きだ!次の者と代われ!」
そのままミカサは次の者と交代し、戻っていく。
エレン(なんなんだあいつは……上手いのか下手なのかどっちだ…)
ミカサ(これでエレン教官と話ができる…)
アルミン「ミカサ!」
ミカサ「アルミン、適正はどうだった?」
アルミン「僕はなんとかできたよ…ミカサも大丈夫だった?」
ミカサ「私は……一回転した」
アルミン「ええ!一回転!?適正は大丈夫なの!?」
ミカサ「適正は問題ない、今日エレン教官にアドバイスを聞いてくる」
アルミン「アドバイスを聞いてどうにかなるようなものではないと思うけど…」
ミカサ「……下手に見せる調整が難しかった」
アルミン「なんの話?」
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- 16 : 2018/03/18(日) 01:55:16 :
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今日の適正判断が終了し、エレンはキースに抱いていた疑問を問いかける。
エレン「キース教官!」
キース「何だ、イェーガー」
エレン「あのアッカーマンという訓練兵、俺には適正は問題ないように見えましたが」
キース「確かに安定していたように見えるが、立体起動とは兵士が常に行動手段とするものだ」
キース「常時安定させることができなければ戦場に出すことはできん」
エレン「確かに…」
キース「分かったら貴様もとっとと兵舎に戻れ」
エレン「はい」
「あいつ、昨日調査兵団に入るって言ってた人だよね」
「あんな訓練で一回転するなんて」
様々な声が飛び交う中、ミカサは平然と夕飯を頬張る。
アルミン「他の人が言うことなんて気にしなくていいよ」
ミカサ「何か言ってるの?」
アルミン「君がそういう人だってこと忘れてたよ…」
ジャン「俺らがぶら下がるコツ、教えてやろうか?」
アルミン「ジャンと…コニー?」
空いている目の前の席に二人が夕飯を持って座る。
コニー「つっても俺は天才だからな、感じろとしか言えん」
ミカサ「別に聞いてない」
ジャン「そうだよな、こいつなんてアテにできないよな」
コニー「一緒に教えてやろうって言ったのお前だろ!」
ジャン「ばっ…!言うんじゃねぇ!」
ミカサ「私はこれから教官のところへ聞きに行くから、二人は何も言わなくていい」
ジャン「わざわざ教官のとこまで聞きに行くのか?」
ミカサ「就寝時間までに行かないと…!」
ジャン「あ、おい!」
そのままミカサは食堂を颯爽と出て行く。
ジャン「なんなんだ…?」
アルミン「ミカサはその…勉強熱心なんだ」
コニー「よく分からんが、面倒事が好きってことか?」
アルミン「なんでそうなるのかな?」
教官たちも食事を済ませ、宿舎へと戻ってきた頃、ドアにノックの音がする。
キース「誰だ」
ミカサ「訓練兵、ミカサ・アッカーマンです」
ドアを開けると、敬礼をしたミカサの姿があった。
キース「何用だ」
ミカサ「エレン教官とお話をしたいのですが」
キース「なぜだ?」
ミカサ「今日の立体起動の適正についてのアドバイスを伺いたいのです」
キース「貴様、昨日の兵団式の話を聞いていたか?奴は主に対人格闘を専門としている、聞くなら他の教官でも良いだろう」
ミカサ「エレン教官が、私の行動の一部始終を見ていたからです」
キース「ふむ、立会いの許可はそれが真実かどうか確かめてからにしよう」
ミカサ「ありがとうございます」
そう言って宿舎の中へと戻っていく。
キース「おい、イェーガー!」
エレン「はい、なんでしょう」
キース「お前、今日のアッカーマンの動きをどの程度見ていた?」
エレン「訓練終了後も少し話しましたが、安定した状態から姿勢を崩すまでの一連の流れは見ていました」
キース「なるほど、アッカーマン訓練兵が貴様との面会を要求している」
エレン「俺ですか!?なぜ…」
キース「貴様に今日のアドバイスを貰いたいとのことだ」
エレン「はい…」
エレン(一部始終を見ていたとはいえ…なんで俺なんだ?)
様々な疑問を抱きながらも、ミカサが待っているという所まで向かう。
ドアを開けると、ミカサと目が合う。
その目はどこか、輝いているように見えた。
エレン「アッカーマン訓練兵、俺にアドバイスを聞きたいらしいが…」
ミカサ「エレン教官」
エレン「なんだ?」
ミカサ「あなたは前に……調査兵団にいましたか?」
エレン「え…」
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- 17 : 2018/03/18(日) 13:24:05 :
- おーー!
すげーーー期待です!!!、
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- 18 : 2018/03/18(日) 22:11:27 :
- あなた神ですk((
期待です(*^▽^*)
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- 19 : 2018/03/18(日) 22:38:36 :
- 期待です!
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- 21 : 2018/03/19(月) 00:45:04 :
エレン(このマフラーに入団式のセリフ、やはりこの子は…)
確信を持ちながらも、平然を装い対応する。
エレン「なぜいきなりそんなことを聞く」
ミカサ「あ…」
ミカサ(しまった…!うっかり…)
ミカサ「教官に少し見覚えがありまして…」
エレン「もうこんな時間だ、あまり私情を持ち込むな」
ミカサ「あの…せめて、このマフラーに見覚えはありませんか?」
そう言ってミカサは身につけているマフラーを指差す。
ミカサ「それだけは教えてください…」
エレン「……ある」
ミカサ「!!やはりこのマフラーは教官の!?」
エレン「質問はこれだけだと言っていただろ」
ミカサ「すみません…」
エレン「…まぁいい、それは俺の知り合いが身につけていたものだな」
ミカサ「知り合い…?ではそのお知り合いの方は…」
エレン「お前は訓練に関係のない質問ばかりだな…!」
ミカサ「どうしても気になってしまって…」
ミカサ「これさえ聞けば訓練にも集中できると思うのですが…」
エレン「………」
いかにもワザとらしい言い分だが、仕方なく答えることにする。
エレン(これには俺にも責任があるから…)
エレン「そいつは……死んだ」
ミカサ「え…」
エレン「前回の壁外調査でな」
ミカサ「そん…な…」
エレン「おい、アッカーマン?」
ミカサが膝を落とす。
その表情から酷くショックを受けていることが分かる。
エレン「早くしないと就寝時間だぞ」
ミカサ「………」
エレン「ほら立て」
ミカサ「私には……もう…」
腕を掴んで無理やり立たせようとしても、膝に力が入っておらず、すぐに崩れてしまう。
正直、これ程までになるとは思わなかった。
エレン(でもこれで…)
エレン「兵士を目指す気は、無くなったか?」
ミカサ「…!」
エレン「海を見るなんて約束はもう…忘れるんだ」
ミカサ「海……なぜ教官がその約束のことを?」
エレン「っ!そ…そいつから聞いたんだ、そのマフラーの持ち主に!」
ミカサ「………」
エレン「で、どうなんだ?このまま開拓地に戻るか?」
ミカサ「……いえ、私は訓練を続けます」
エレン「なんでだ?もうその兵士はいないんだぞ?」
ミカサ「だからこそ、私はその人が憧れていた海を見に行きたいのです」
こうなってしまってはもう誰にも止められない。
俺には分かった。
人が一度抱いた夢や探究心は、他の誰かの言葉で簡単に抑えられるものでない。
ミカサ「だから私は、兵士になります」
エレン「そうか、ならまずは適正判断を合格しなければ話にならない」
ミカサ「分かっています」
エレン「一瞬の心の乱れが姿勢を崩したんだろう、そのいきなら明日は上手くいくだろう」
ミカサ「ありがとうございます」
ミカサは一礼して、元の兵舎へと帰っていく。
と思ったが、途中で引き返し戻ってきた。
ミカサ「あの、エレン教官」
エレン「なんだ?」
ミカサ「明日私が適正判断に合格したら、また教官に話を伺いに来てもよろしいでしょうか」
エレン「え…?」
ミカサ「このマフラーの兵士の方の話を聞きたいのです」
そう言い残し、俺の返答も聞かずに再び兵舎へ戻っていった。
次の日、ミカサはなんの問題もなく適正判断を合格した。
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- 22 : 2018/03/19(月) 02:20:52 :
- ミカサのために嘘ついたんですね...
期待してます!!!
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- 23 : 2018/03/19(月) 13:11:16 :
- ミカサのために…
エレンあなたはかm((
期待です!
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- 25 : 2018/03/19(月) 23:25:45 :
アルミン「ミカサが合格できて良かったよ!」
ミカサ「あんなの問題ない」
アルミン「それで昨日はエレン教官とお話しできたの?」
ミカサ「できた、けど…」
アルミン「けど?」
ミカサ「教官はあの人では無かった」
アルミン「え!?」
ミカサ「このマフラーの持ち主は、前回の壁外調査で亡くなったと聞いた」
アルミン「そんな…」
ミカサ「でも私の目指すものは変わらない」
アルミン「うん、僕たちは海を見るんだもんね」
カンカンと鐘の鳴る音が聞こえ、夕食が来たことを知らせる。
アルミン「夕食の時間だ!ミカサ行こ」
ミカサ「昨日、エレン教官とあの兵士について話しをする約束をした」
ミカサ「だから今日は教官のところへ行く」
アルミン「ちょ…ミカサ!?さすがに夕食の時間は…」
アルミンが忠告するよりも早く、ミカサは食堂へと向かって行く。
アルミン(いくらなんでも執着心が強すぎる)
ジャン「おいアルミン、ミカサはどこ行った?」
アルミン「ミカサならもう食堂に行ったよ」
ジャン「はぁ?ミカサはそんなに腹が減ってたのか?」
アルミン「教官と一緒に夕食を食べたいみたい」
ジャン「どこまであいつは真面目なんだよ…」
アルミン「もしかしたらミカサ、エレン教官のこと……」
ジャン「な、なんだと…!」
アルミン(ジャンは面白いなぁ)
エレンの部屋に着き、扉をノックする。
ミカサ「訓練兵、ミカサ・アッカーマンです」
それから数秒後に扉が開き、エレンが顔をのぞく。
エレン「何の用だ、今は夕食の時間のはずだが」
ミカサ「はい、教官と一緒にいただきたいと思いまして」
エレン「そんなの、ダメに決まってるだろ」
ミカサ「昨日、あの人の話をしていただくと約束したではないですか」
エレン「お前が一方的に押し付けただけだろ…」
ミカサが明らかに落ち込んだ顔をする。
こんなことを言ってはいても、俺には彼女の頼みを断ることはできない。
一つため息をついてから、扉を開く。
エレン「…俺から勉強熱心な兵士がいるとキース教官には伝えておこう」
ミカサ「!ありがとうございます」
一瞬だけだが、ミカサに笑顔が見えた。
訓練中ですら顔色一つ変えない彼女が、俺の言葉一つ一つで様々な表情を見せる。
エレン(彼女はちゃんとした女の子だ…)
彼女を兵士にしてしまったのもまた、何気ない一つの言葉だ。
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- 26 : 2018/03/19(月) 23:57:31 :
普段は無口な彼女だが、興味のあるものだとこうなるのだろうか。
ミカサ「どんな人だったんですか?」
エレン「とにかく熱心だった、実力は無かったが……分隊長補佐までしていた」
ミカサ「その人は何歳だったのですか?」
エレン「俺と同じだ、生きていれば今年で27だ」
ミカサ「ということは、私が会った時は24…」
エレン(歳なんか聞かなくても…)
ミカサからの質問攻めを食らっていた。
こんなことまで聞くかというところまで追求してくる。
普段との差が凄すぎる。
ミカサ「あの、その人やその兵士と呼ぶのが少し面倒に感じるので……名前を教えて欲しいのですが」
エレン「ダメだ」
ミカサ「どうしてですか!?」
エレン「名前なんか聞いてどうする」
ミカサ「刻みつけておくんです、彼は私の恩人です」
エレン「恩人…ね」
ミカサ「だから教えてください」
エレン「君は…聞くべきじゃない」
ミカサ「どうしてですか?」
エレン「聞いたら、きっと失望する」
ミカサ「なぜです?」
エレン「そいつは君が思っているような奴じゃないからだ!」
思わず声を荒げてしまう。
エレン「すまん…」
ミカサ「いえ…」
エレン「夕食は食べ終わっただろ、食器は片付けておくから今日はもう部屋に戻るんだ」
ミカサ「エレン教官、明日も来ていいですか?」
エレン「なんで俺なんだ…キース教官だって元は調査兵団の団長だ、聞くならキース教官の方がいい」
エレン(正直、俺は君に嘘をつき続けるのが辛くて仕方ない…)
どうか…
エレン「お願いだ…」
ミカサ「落ち着くんです」
エレン「は…?」
ミカサ「エレン教官の声を聞いていると、話を聞いていると落ち着くんです」
エレン「お父さんみたいとか…そういうやつか?」
ミカサ「分かりません…けど、落ち着きます」
エレン「なんなんだそれは…」
ミカサ「だから私にもっと話を聞かせてください」
エレン「………」
俺は断れない。
彼女の頼みを。
せめて、彼女の中にある恩人を…夢を壊さないでいてやるのが最善なのか?
ミカサが部屋を去り、俺も食器を片付けに部屋を出る。
キース「訓練兵と二人で仲良くお食事か?しかも少女と」
エレン「き、キース教官!彼女は訓練のアドバイスを聞きたいと熱心に…」
キース「それにしては全く違う話をしていたように聞こえたが?」
エレン「盗み聞きですか…」
キース「部下を見守るのは常に上官の仕事だ」
エレン(マシなことを言ってるように聞こえるな…)
キース「くれぐれも、問題を起こさんようにな」
エレン「そんなことにはなりません、まして相手は10以上も離れた少女ですよ?」
キース「世にはロリコンというものがあってだな…」
エレン「キース教官からそんな言葉聞きたくないです…!」
エレン(そもそも教官は盗み聞きしてたんだから内容も知ってるはず…)
この人の冗談は分かりにくい。
ミカサ(なぜこんなにも……エレン教官の声は心地よいのだろう…)
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- 27 : 2018/03/20(火) 00:34:08 :
- どーなるんだー!!
期待してます!!!
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- 28 : 2018/03/20(火) 12:07:26 :
- 期待です!
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- 30 : 2018/03/21(水) 01:12:25 :
今日は対人格闘訓練が行われる。
訓練を行う広場に行く途中でアルミンと合流する。
アルミン「今日は対人格闘訓練だね」
ミカサ「うん」
アルミン「最近エレン教官とはどんな話をしてるの?」
ミカサ「どんなって……あの人が生きていた頃のこと」
アルミン「そうなの?僕はてっきり、エレン教官がその人本人じゃないか探ってるんじゃないかと思ってたんだけど」
ミカサ「え…?」
アルミン「ん?」
ミカサ「そんなこと考えもしなかった…」
アルミン「そうだったの?」
今まで考えもしなかった。
ミカサ(エレン教官が…あの人)
ミカサ「そもそも、エレン教官が元調査兵団だったかもしっかりは聞いてない」
アルミン「ええ!?」
ミカサ「あの人のことばかり考えてたから…」
アルミン「ミカサは一つのことに集中し過ぎると周りが見えなくなるよね…」
アルミン「とりあえず、話してる内容を少しだけ教えてよ」
ミカサ「わかった」
そうしてアルミンにエレン教官との話の内容を簡略化して話した。
ミカサ「何か分かった?」
アルミン「色々引っかかる部分はあるけど、確信的なものは何もないかな…」
ミカサ「名前を教えてくれないのはなぜだろう」
アルミン「そういえば、カルラおばさんも名前は教えてくれなかったね」
ミカサ「口止めされてた…?」
アルミン「うーん…」
話し込んでいるといつのまにか広場に着く。
広場ではエレン教官が兵士たちに集合をかけていた。
エレン「もうすぐ始めるぞ、お前たちも早く並べ」
アルミン「は、はい!」
ミカサ「………」
エレン「……?」
エレン(アッカーマンから何やら視線を感じる…)
ミカサ(エレン教官があの人かもしれない…)
考えを改め、教官と接するとミカサは決めた。
全員の集合が完了し、エレンが説明を始める。
エレン「内容は簡単、二人組のペアを組み、一人が木剣を持ち、もう一人がそれを奪う」
エレン「この流れを繰り返しやってもらえればいい」
説明が終わると、各自がそれぞれペアを組み訓練を開始する。
アルミン「ミカサ、僕とやらない?」
ミカサ「いいけど」
アルミン「じゃあ僕が最初ならず者をやるね」
訓練を始めて数秒後、アルミンは空を舞った。
ミカサ「アルミン!大丈夫!?」
アルミン「………」
気絶したアルミンはそのまま医療班に運ばれていった。
ジャン「おいおいマジかよ…」
ライナー「とんだ化け物がいたもんだ…」
エレン「アッカーマン訓練兵は他の者とペアを組んで訓練を続行しろ」
ミカサ「はい…」
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- 31 : 2018/03/21(水) 01:48:17 :
ミカサはペアを組む相手を探すが、組んでくれるような相手は中々現れない。
ジャン(ミカサが困ってる…俺が組むか?でもあの力はちょっと…)
ジャンが深刻に悩んでいる中、ミカサはエレンの方へ真っ直ぐ向かって行く。
ミカサ「エレン教官、私と組んでいただけないでしょうか」
ジャン(なんだって…!)
よりにもよって教官を選ぶとは思いもしなかった。
思えばミカサは、エレン教官に執着し過ぎに思える。
夕食、就寝時間前と常に一緒にいるのだ。
ジャン(アルミンの言ってたこともあながち間違いじゃないんじゃ…!)
エレン「ダメだ」
ミカサ「どうしてですか!?」
エレン「いくらお前でも体格の差があり過ぎる、相手がいないならこちらから相手を選定してやる」
ミカサ「わかりました…」
エレン「時には力を抑えることも訓練の一環だと思え」
ミカサ「はい」
そう言われ、ミカサは他の兵士とペアを組み訓練に戻る。
次は手加減をしているようで上手くいっている。
エレンは安心したように他の兵士の指導に回る。
ジャン(あの教官…少し女子に好かれてるくらいで調子こきやがって…!)
マルコ「おいジャン!訓練中によそ見するなよ」
ジャン「なぁマルコ」
マルコ「なんだよ」
ジャン「ちょっと場所移動しないか?」
マルコ「?いいけど…」
そう言ってジャンが移動した先はエレンの背後になる場所だった。
マルコ「なんでこんなところにするんだよ」
ジャン「別にどこだっていいだろうが」
マルコ「なら移動しなくても…」
ジャン(所詮、こんな訓練得点になんかならねぇ)
エレン以外の他の教官を見ても、真面目に訓練を見ている者はほとんどいない。
それほど、この訓練には価値が見出されていない。
ジャン(だが、この状況が今の俺にはラッキーだ)
ジャンは木剣を持ったまま目標へと突進していく。
相手はもちろんマルコ、ではなくエレンだった。
マルコ「おいジャン!どこ行く!」
ジャン(他の教官も見てねぇし、俺がぶつかってもただの事故だと思われる!)
ただの八つ当たりに過ぎないことは分かっている。
ジャン(それでも…!)
完全に背後は取った。
このままぶつかると思ったその時…
エレン「ふん!!」
ジャン「なっ…!」
咄嗟に足音で気づいたのか、瞬時に振り返り、木剣を持っていた腕を掴まれそのまま地面に叩きつけられる。
ミカサ「!!」
それを見ていた一部の兵士たちが「おおー!」と歓声を上げる。
ジャン「いてて…」
エレン「少しは格闘術の重要性を分かってもらえたかな、キルシュタイン訓練兵」
手を掴まれ、そのまま起き上がる。
ジャン(クソ…!情けねぇ……ミカサも見てるっつーのに…)
ミカサ「………」
あの格闘術には見覚えがあった。
それは三年前のあの日。
私を救ってくれたあの兵士が見せたものだった。
両親を殺した強盗を無力化するため、格闘術を駆使して武器を奪い、相手を地面に叩きつけた。
同じような格闘術を使う人なんて沢山いる。
けど、私には分かった。
ミカサ(やはり……エレン教官が…)
-
- 32 : 2018/03/21(水) 02:17:48 :
- そうだよって言ってあげたい…
期待です
-
- 33 : 2018/03/21(水) 09:06:09 :
- 期待!!
-
- 34 : 2018/03/21(水) 19:38:23 :
- おおーー!
わかったかー!
期待です!!!
-
- 36 : 2018/03/22(木) 01:19:15 :
訓練終了後、気絶したアルミンの様子を見に医療室に向かった。
ミカサ「アルミン大丈夫?」
アルミン「ああ…もう大丈夫だ」
ミカサ「私が強く投げてしまったから…」
アルミン「ミカサは悪くないよ!あれくらいで気絶してしまう僕の貧弱さがいけないんだ」
ミカサ「でも…」
アルミン「それより、なんだか今のミカサは何か話したそうにしてる」
ミカサ「!」
アルミン「良かったら話してくれないかな」
ミカサ「うん…」
アルミンに対人格闘の訓練中に起こった出来事を話した。
ジャンが教官に突っ込み、反撃された一連の流れ、そして、その教官の動きがあの人にそっくりだと思ったこと。
アルミン「独特の格闘術か…」
ミカサ「私はあの日のことを今でも鮮明に覚えている、見間違いはまずない」
アルミン「すごい自信だね…」
アルミン「でもそうなると、エレン教官があの人という可能性はほぼ確実かも…」
ミカサ「でもどうすればそれが分かるだろう…」
アルミン「うーん…」
アルミンは少し考えるような動作をすると、今までに見たことのないくらいゲスい笑顔を一瞬浮かべる。
ミカサ「アルミン…?」
アルミン「……なに?どうしたの?」
ミカサ「今顔が…」
アルミン「顔?何かついてた?」
ミカサ「いや、笑ってた?」
アルミン「まさか!なんで僕が笑うのさ」
今のアルミンはいつも通りの笑顔だ。
ミカサ(見間違いだろうか…)
アルミン「それよりいい案を思いついた」
ミカサ「本当!?」
アルミン「あまり良い方法とは言えないけど、ほぼ確実に教官の嘘を暴けるはずだ」
ミカサ「真相が分かるなら何だっていい」
アルミン「じゃあ教えるね…」
夕食の時間。
すぐに食堂に行き、当たり前のように食事を持ってエレンの部屋の前に立つ。
ミカサ「アッカーマンです」
扉が開き、エレンがまた不服そうに顔を覗かせる。
エレン「……今日も来たのか」
ミカサ「はい、今日の訓練のアドバイス、それと…」
エレン「あの兵士の話か?」
ミカサ「はい」
エレン「………」
エレンは何か警戒しているのか、周りを見てからミカサを部屋に招く。
エレン「今日は格闘術もあったし、教えられることもあると思うからな」
ミカサ「ありがとうございます」
エレン「建前だとしても一応訓練のことを聞きに来ているていることになってる、あいつのことばかり聞くようなことをやめろよ」
ミカサ「はい、善処します」
ミカサ(エレン教官は文句は言いながらも必ず私の頼みを聞いてくれる)
教官はとても優しい人だ。
-
- 37 : 2018/03/22(木) 02:13:35 :
エレン「………」
ミカサ「………」
私たちは部屋に入ってから食事を食べている間は終始だんまりしている。
食事を食べ終えると、エレンの方から口を開く。
エレン「さて、今日は何が聞きたい?」
ミカサ「今日教官が見せた格闘術についてお聞きしたいです」
エレン「珍しいな、訓練についての質問からなんて」
ミカサ「あれはどこで身につけたものなのですか?」
エレン「あれは俺が訓練兵の時代に身につけた独自の技だ」
ミカサ「教官自ら考えたものだったのですか?」
エレン「ああ」
ミカサ「すごいですね…私には到底マネできそうにはありません」
エレン「確かに、マネできたやつはいなかったかもな」
ミカサ「その上でお聞きしたいことがあるのですが」
エレン「なんだ?」
ミカサ「3年前、私を助けたあの日にもその格闘術を使いましたよね?」
エレン「な…!」
エレンが明らかに動揺の表情を見せる。
エレン「あの日って……何のことだ」
ミカサ「両親が殺され、私が強盗に捕まったあの日です」
エレン「そんなことがあったのか、お前も大変だったな」
ミカサ「私を救ってくれたのはエレン教官です」
エレン「そんなの……身に覚えがない」
ミカサ「私は見たんです…あの日、あの格闘術を使って強盗を捕らえた瞬間を」
エレン「3年前なんだろ?そんなはっきり…」
ミカサ「私は鮮明に覚えています!」
エレン「っ!」
ミカサ「私があの日を忘れることは、一生ありません」
エレンの反応を見れば、私の考えていることが全て真実であることは分かる。
それでもエレンは一向に頷こうとはしない。
ミカサ(もう一息なのに…)
彼の口から真実を聞くまでは、引き下がるわけにはいかない。
ミカサ(こうなったらもう…アルミンの策を)
ミカサ「教官」
エレン「なんだ?俺じゃないぞ…」
ミカサ「実は私、聞いてしまったんです」
エレン「聞いた?何を…」
ミカサ「カルラおばさんに、全部…」
エレン「な!そんなわけ……っ!」
エレンが咄嗟に自らの口を封じる。
ミカサ「本当はおばさんに会っても言うなと言われていたんですが…」
エレン「……なんのことだ」
ミカサ「まさか、こんな形で再会できるとは思いもしなくて…つい」
ミカサ「キッカケも無しにいきなり知らない上官に話しかけるのも、私には無理です」
エレン「………」
2日目にしてミカサは俺に話しかけてきた。
ミカサの言う通り、キッカケが無ければ困難なものだろう。
そして、俺が母さんに口封じをしていたことも事実。
それが暴かれたとなれば、もう言い逃れはできない。
エレン「俺が………お前を助けた本人だ」
ミカサ「!!」
エレン「失望したか?俺はもう、お前の憧れていた調査兵ではない」
ミカサ「失望してません」
エレン「え……」
ミカサ「むしろ、あなたが生きていて本当に良かったです…」
ミカサが手を強く握る。
この時、俺は初めてミカサと向き合うことができた気がする。
3年前のあの日から、彼女は夢を与えてくれた恩人としてではなく、一人の人間として俺と向き合ってくれていたのかもしれない。
ミカサ(やっと伝えることができる…)
ミカサ「私に…生き方を教えてくれて、ありがとうございます」
-
- 38 : 2018/03/22(木) 20:51:00 :
- ゲスミンやーー笑
すごくいい!!!
期待です!!!
-
- 39 : 2018/03/22(木) 21:06:17 :
- おー!すごく面白いです!
期待です(((o(*゚▽゚*)o)))
-
- 41 : 2018/03/23(金) 02:14:43 :
エレン「何で俺が調査兵をやめたのか知りたくないのか?」
お互いが落ち着いてから少し経ち、エレンがそう言った。
ミカサ「なぜですか?」
エレン「……怖くなったんだ」
ミカサ「怖い?」
エレン「ああ、俺も2年前まではまだ夢を見ていたんだ…」
初めて壁の外に出た日、俺は巨人の恐ろしさを知った。
それでも夢を見ることは諦めなかった。
必死に抗ってやる、そう思った。
けど、目の前で何百人もの熟練の兵士が次々と死んでいった。
俺を庇って死んだ上官だって沢山いる。
彼らは人類が生き残るために心臓を捧げた兵士だ。
だけど俺は、自分のためだけに戦っているんだ。
自分の欲を満たすためだけに戦っている。
そんな俺に、彼らの死を踏み台にして進み続けていい権利なんてあるわけがない。
この地獄の世界に、あるかも分からない場所を夢見ることはもうやめた。
エレン「せめて俺のために死んでいった人たちに報いるためにも、俺は訓練兵の教官になったんだ」
ミカサはただ、エレンの話を静かに聞いていた。
エレン「さっき生き方を教えてくれたと言うけど、俺はその夢を諦めてしまったんだ」
エレン「そんな大層な人には、なれない」
ミカサ「そんなことありません、少なくとも私はあなたが教えてくれた夢があったから今まで生きてこれたんです」
エレン「壁の外は地獄だ…ただ人を食う巨人がいるだけの世界だ」
ミカサ「教官が教えてくださったことを、なぜそんなにも否定なさるのですか!?」
エレン「君に…調査兵団に行ってほしくないからだ!!」
ミカサ「っ!」
エレン「救ってやった命なんだから、もっと大事にしろよ…!」
自分でも酷いことを言ってると分かる。
幼き頃に両親を殺されてから、この子には世界が悲しいほどに残酷に見える。
これ以上、残酷にしてしまうことなどあってはならない。
エレン(それなのに、なぜ彼女の瞳には光が…)
ミカサ「それでも私は、海に行きます」
エレン「なんでだ…」
ミカサ「…両親が殺されてから、この世界は残酷なのだと、そう思っていました」
ミカサ「けど、あなたに夢を…マフラーを与えられ、世界はこんなにも美しいのだと知りました」
エレン「………」
ミカサ「あなたの夢見た世界はもっと美しいのだと…そう信じているからです」
エレン「例えその世界があったとしても、地獄を乗り越えなければそこには辿り着けない」
ミカサ「大丈夫です、私は強いですから」
エレン「強い?お前はまだ幼いし何より女性だ、俺でも辿り着けなかった場所に…」
ミカサ「なら戦いませんか?」
エレン「は…?」
ミカサ「明日の格闘術訓練で私と組んで勝負してください」
エレン「…本気か?」
ミカサ「私が勝ったら……私と一緒に海に行ってください」
勝負にならないことなど、やる前から分かっていることだ。
これで彼女を止められるなら…
エレン「…分かった」
キース「イェーガー…」
エレン「ヒッ!」
突然部屋の扉が開き、キース教官が鬼の形相で覗いてくる。
キース「貴様……もう就寝時間も過ぎたというのにまたこいつと二人きりで…」
エレン「す、すみません!すぐに帰します!」
そう言ってすぐにミカサを部屋から追い出す。
キース「おい、イェーガー」
エレン「は、はい」
キース「アッカーマンについて行ってやれ」
エレン「え…でも…」
キース「食器なら私が片付けといてやる」
エレン「そうではなくて、なぜついて行くのかと…」
キース「勘だ、早く行け」
エレン「わかりました…」
キース(たく…二人はずっとここで話していたのか…)
-
- 42 : 2018/03/23(金) 02:41:27 :
ミカサ(やはり…エレン教官はあの人だった)
しかし、今の教官と前の教官は違う。
今の教官は、私に夢を与えたことで私が調査兵団に入ることを恐れている。
それほどまでに、壁の外が地獄だということが分かる。
それでも、私は海へ行く。
ミカサ(そして明日教官に勝ち、次は私が教官の希望になりたい…)
もう既に暗くなった兵舎までの帰り道を一人歩く。
誰もいないはずの道に、微かに人の気配を感じた。
ミカサ(誰か…いる?)
すると段々と足音が近づいてくるのが分かる。
ミカサ(もしかして…エレン教官?)
ミカサ「な!!」
瞬間、複数の人影に手足を拘束される感覚があった。
エレン(なんでキース教官はついて行けと…)
なんだか嫌な予感がした。
もしかしたら教官は何か事情を知っている上で、俺を送り出したのではないか?
そう考えると、自然に駆け足になった。
「………!」
エレン(!!)
人が暴れているような音や声が微かに聞こえてくる。
急いでその場所まで走って行く。
エレン(やはり…何か…!)
エレン「アッカーマン!!」
兵舎の角を曲がるとそこには、
倒れた3人の男訓練兵と、平然とした顔で立っているミカサの姿があった。
ミカサ「エレン教官…?」
エレン「お、おお…アッカーマン、これはどういう状況だ?」
ミカサ「いきなりこの3人に襲われたので、取り敢えず気絶させました」
エレン「そ、そうか…」
ミカサ「教官はなぜここに?」
エレン「いや…キース教官に様子を見に行くように言われてな」
ミカサ「でしたらこの3人の身柄は教官にお任せしてもよろしいでしょうか」
エレン「ああ…」
灯りを照らし3人を確認すると、ミカサが言った通り3人とも白目を剥いて完全に気絶していた。
エレン(いきなり3人、しかも男に襲われたのによく対処できたな…)
エレン「お前…強いんだな」
ミカサ「さっき、私も言ったと思うのですが…」
エレン「そうだったな、明日が楽しみだ」
彼女はもう、あの日のように守られるだけの存在ではないようだ。
そして、与えられた夢をただ見ているだけでもない。
夢を実現するための力を磨き続けている。
もう十分に、自分の考えで生きている。
エレン(少しは彼女に任せてみても…いいのか)
ミカサ「それでは、私は戻りますね」
エレン「ああ」
本当に、明日が楽しみだ。
-
- 43 : 2018/03/23(金) 14:03:28 :
- エレン負けるのかなー?
すごく楽しみです!!
期待してます!!!
-
- 44 : 2018/03/23(金) 15:28:39 :
- ミカサにはぜひ勝って欲しいけどそしたらエレンが…w
-
- 46 : 2018/03/24(土) 01:02:16 :
ミカサ(今日はエレン教官と勝負…)
正直、勝てる自信は大いにある。
なぜなら私は強い。
昨日の男3人にも余裕で反撃できた。
男だろうが女だろうが関係ない。
勝って、エレン教官より先の世界を目指せることを証明する。
ミカサ(そして、今度は私が教官を海に連れて行く…)
朝食を持って席につくと、その隣にアルミンが座る。
アルミン「おはようミカサ、今日は何だか張り切ってるね」
ミカサ「おはよう、今日は勝負の日だから」
アルミン「何の勝負なの?」
ミカサ「エレン教官と、対人格闘の」
アルミン「ええ!?ミカサ、教官と勝負するの!?」
アルミンが大声で叫ぶと、それを聞いた周りの人たちが騒めき出す。
ジャン「ミカサが教官と勝負だって!?」
コニー「マジかよスゲェ!!」
サシャ「夢のカードが…!」
マルコ「やっぱり教官かな…」
ジャン「は?俺はミカサに晩飯全部だ!」
アルミン「ちょっと皆、そんな勝手にそんなことするとミカサが…」
そんな騒ぎを静かに聞いていたミカサが突然音を立て、立ち上がる。
ミカサ「私は負けない、私は…強い!」
アルミン「ミカサ…?」
そんなやる気満々なミカサを後押しするように、周りがどんどん歓声を上げていく。
ジャン「そうだいいぞミカサ!あの教官をボコしてやれ!」
コニー「俺もミカサに晩飯賭けるぜ!」
「ミカサ!」「ミカサ!」「ミカサ!」
やがて皆は一つの円となり、ミカサを囲んだ。
アルミン(どうしてこんなことに…)
キース(今日の朝食はやけに騒がしいな)
そして遂に、対人格闘訓練の時間が訪れた。
エレン「来たな、アッカーマン」
ミカサ「よろしくお願いします」
エレン「勝負と言うからには手加減はしないぞ」
ミカサ「望むところです」
エレン「ところで……」
エレン「この周りの奴等は何だ…?」
気づくと、二人の周りには訓練兵たちの野次馬ができていた。
その中には教官の姿も見える。
エレン「ちょ…キース教官!何やってるんですか!」
キース「何か問題があるか?」
エレン「見てないでこの野次馬をなんとかしてくれませんか!?」
キース「貴様ら二人の勝負は他の者に対人格闘を学ばせる良い機会だと思ってな、これは見学だ」
ミカサ「私は構いません、勝負には一切支障はありません」
キース「どんな状況であれ対応してみせるのが兵士というものだ」
エレン「分かりましたよ…」
エレン(そうだ、俺のやることは変わらない)
俺はもう決めた。
この勝負…
-
- 47 : 2018/03/24(土) 01:41:58 :
勝負が始まった。
エレン「………」
ミカサ「………」
二人はただ構えの姿勢で睨み合う。
コニー「何で二人とも何もしないんだ?」
ジャン「バカかお前、んな無鉄砲なことしたらすぐに足元すくわれるだろうが」
コニー「じゃあどうするんだよ」
ジャン「この勝負…一瞬で決まる」
エレン(始まってから一向に手が出せない…)
一見胴体は無防備に見える。
しかし、何故か隙が無いようにも見える。
俺もどこに入れられても反撃ができるようにしているため、ミカサも出方を伺っている。
ミカサ(やはり教官は強い…でも!)
ミカサが一気にエレンの方へと突っ込む。
エレン(来た…!)
身長差を利用してか、狙ってきたのは足元。
そこを一気にすくって押し倒す気だろう。
一瞬の隙を突いたミカサは、エレンの足を捉える。
ミカサ(いける!あとは力で…)
ミカサ「…!?」
しかし、エレンの足はビクともしなかった。
ミカサの力では押し切れない、圧倒的な力だ。
ミカサ(このままでは…!)
そう思ったのも束の間、気づいた時には目の前に青い空が広がっていた。
キース「…勝負はついたな、他の者は訓練に戻れ!」
先程まで群がっていた野次馬がバラバラと散っていく。
エレンに手を引かれ、立ち上がる。
エレン「大丈夫か?」
ミカサ「……はい」
何もかも負けていた。
技術も、力も。
何一つ及ばなかった。
ミカサ「私の…負けです」
エレン「そうだな」
ミカサ「なぜ……私は負けたのでしょうか」
エレン「最初から分かりきっていることだ」
エレン「経験量の差だ」
ミカサ「経験…」
エレン「俺ただ無意味に歳を取ってる訳じゃないからな」
考えれば私にも分かることだった。
性別や歳以前に、教官と私の間には圧倒的な差が存在していることくらい。
ミカサ「私にもやはり…無理なのでしょうか」
エレン「………」
ミカサ「私よりも遥かに強いあなたが、行けなかった海に行くことなど…」
エレン「何を言っているんだ、お前は」
ミカサ「え…?」
ミカサの頭に手を置く。
そして、泣いている子供をあやすように優しく撫でる。
ミカサ「え…え?」
エレン「お前はまだ若いだろ、経験を積むのはこれからだ」
ミカサ「…!」
エレン「まずはこの訓練兵団で力をつけろ、そして俺に勝て」
エレン「でないと、海にはまず辿り着けないだろうな」
ミカサ「てことは…」
エレン「待ってるよ、お前が俺に勝てる日までな」
ミカサ「っ!…はい!」
彼女を見て思い出した。
調査兵団にいた頃の俺は、恐怖に駆られても、外の世界のことを考えると力が湧いてきた。
彼女のこの年、性別に見合わない強さはきっとそれと同じだ。
ただ、彼女はまだ弱い。
でもきっと俺より強くなる。
そして、きっと海に辿り着いてくれる。
彼女が強くなって、調査兵になるまで俺が見守り続けてやるんだ。
ミカサ「訓練兵を卒業するまでに教官に勝てたら、約束…守ってくれますか?」
エレン(ああ…そうだった、少し違ったな)
俺も一緒に、海に行くんだ。
エレン「ああ、もちろん」
-
- 48 : 2018/03/24(土) 01:45:56 :
- 次からは話の主軸とは少しズレて、エレン教官が気になって仕方ないミカサと、ミカサに振り回されるエレン教官の話になります。
エレ(→)(←←)ミカ
くらいです!
-
- 49 : 2018/03/25(日) 00:20:49 :
アルミン「わぁ…久しぶりだなぁ」
ミカサ「うん」
アルミン「もうここを出てから2年も経ったんだね」
ミカサ「うん…」
今日、104期訓練兵団は街の襲撃想定訓練のため、シガンシナ区へ来ていた。
トロスト区にある訓練所からシガンシナ区までは距離があったため、ミカサたちがシガンシナに帰ってきたのは約2年ぶりとなる。
ジャン「ここが最前線の街か…随分と田舎臭いな」
サシャ「いいんですかジャン、ミカサの故郷なのにそんなことを言って」
ジャン「やべ…」
ミカサ「別に大丈夫、それに私の本当の故郷はシガンシナではない」
サシャ「え!そうなんですか!?」
ミカサ「元はこの近くの山育ちだから」
アルミン「でも今の家はシガンシナなんだし、故郷ってことでいいじゃん」
ミカサ「うん、私はそう思っている…」
やはりここの空気はなんだかとても気持ちが良い。
一年しかいなかったのに、ずっと育ってきたようだ。
ミカサ(それに、ここは教官が生まれ育った場所…)
サシャ「ミカサは家に帰らないんですか?アルミンは帰るって言ってましたけど」
ミカサ「エレン教官と約束があるから」
ジャン「今日もかよ、入った時からよくそんなに続くよな…」
ミカサ「エレン教官は優しいから」
サシャ「確かに!エレン教官って他の教官と比べても優しいですよね、食べ物もくれるし…」
ミカサ「え…」
コニー「そうそう!俺もエレン教官の話聞いて調査兵団に志願しようか迷ってるし」
ミカサ「………」
今までずっと、教官の優しさを知っているのは自分だけだと思っていた。
優しくしてくれるのは私にだけだと思っていた。
ミカサ(だけどサシャには食べ物を、コニーには調査兵の話を…)
2年前、私と約束を交わした日からエレン教官はどこか吹っ切れた様子だった。
いつも何かを隠して明るく振舞っていたようだったのが、自然と微笑むようになった。
それはとても嬉しいことだ。
だけど…
キース「これからシガンシナ区襲撃想定訓練を開始する!各班はそれぞれの持ち場につき、敵を素早く索敵し、討伐せよ!」
キースの指示で訓練兵たちが一斉に散らばっていく。
前衛にはミカサの姿があった。
エレン(アッカーマンならしっかりやってのけるだろう)
ミカサは教官たちの間でも、数年に一度の逸材との評価を受けている。
正直、まさかここまで成長するとは思いもしなかった。
キース「それでは訓練、開始!!」
開始の合図と共に巨人の模型が何体も現れる。
その模型は次第に、足並みを揃えてウォール・マリアへと向かっていく。
エレン(さてと…)
俺も訓練兵を評価するため、全体を見渡せる場所で監視する。
すると中衛の班で何やら揉めているところが見える。
マルコ「おいジャン、先行し過ぎだ!」
ジャン「前衛にはミカサがいるんだぞ!?前衛に巨人を全部殺されたら俺たちは終わりだ」
アニ「私は憲兵団になれればそれでいい…」
マルコ「ちょ…みんなも止めてくれよ!」
ジャンのいる班がどんどん前衛へと向かっていく。
恐らく討伐数を稼ぐことが評価に繋がると思い込んでいるんだろう。
エレン(そうやって突っ込んでいくところは2年前から変わんないな、さてとアッカーマンは…)
ミカサの班へと視点を移すと、そこもまた何やら揉めているようだった。
アルミン「ミカサ!一人で突っ走ると班がまとまんないよ!」
ミカサ「大丈夫、私が全部倒す」
サシャ「ミカサ早すぎますよ!」
ミカサ(………)
エレン教官にどうやったら認めてもらえる?
どうすれば私だけを見てくれる?
考えるたびに訳が分からなくなる。
ミカサ(私は教官に何を求めてるのだろう…)
悶々とした中、気づくと目の前には壁があった。
ミカサ「しまった…!」
壁に強く身体をぶつけ、そのまま地上に倒れ込む。
ミカサ(やっぱり私は…)
エレン「アッカーマン!!」
-
- 50 : 2018/03/26(月) 00:02:58 :
アルミン「ミカサ大丈夫?」
ミカサ「平気だから…早く配置に…」
サシャ「私たちの場所は取り敢えずジャンたちの班が加勢してくれてます」
ミカサ「ジャンたちは確か中衛のはず…」
アルミン「まぁ偶然というか、ミカサが平気なら僕たちも戻ろう」
再び巨人模型へと刃を向ける。
次はそれのみに集中して、確実に。
ミカサ(私の失敗は私が…!)
キース「イェーガー、今何をしようとした?」
立体機動装置のトリガーを引こうとした手を、キースが握りしめる。
キース「それが教官としてどれ程いけないものなのか、お前も重々承知のはずだか…」
エレン「…はい」
横目でミカサの方を見やると、アルミンたちに助けられたのが分かり安心するが、目の前のキースの怒りは収まりそうになかった。
キース「お前には、アッカーマンへ強い感情を抱いているように感じる場面が多々ある」
エレン「そんなことは…!」
キース「何を約束したか知らんが…」
エレン「っ!」
キース「今のお前は中途半端なクソ野郎だ、どう生きるか自分で決めろ」
エレン「はい…」
今の俺は、訓練兵の教官だ。
キース「これにてシガンシナ区襲撃想定訓練を終了とする!夜までにシガンシナ兵舎に集合すること、解散!」
キースの指示で各々、行きたいところへ向かって行く。
半日の休養となったので、街に買い物に出る者も多く見えた。
ジャン「それじゃあ買い物にでも行くか」
サシャ「美味しい食べ物ありますかね!?」
周りが盛り上がっている中、そこにミカサの姿は見えなかった。
アルミン「ミカサ、どこに行っちゃったんだろう…」
サシャ「もう実家に帰ったんじゃないですか?」
アルミン「ミカサが一人で勝手に帰るとは思えないんだけど…」
コニー「家族が恋しくてすぐに帰ったんじゃねーの?」
アルミン「うーん…」
結局ミカサは見つからなかった。
アルミンも半日しかない休養を充実して過ごす為、早めに家族の元へ向かうことにした。
その時、ミカサは既にシガンシナ兵舎へと向かっていた。
ミカサ(今日は私の失敗で班のみんなに迷惑をかけた…)
二度とあんな失敗を繰り返さないためにも、1秒も無駄にせず身体を鍛える。
兵舎に到着すると、そこにはエレンの姿があった。
その表情はいつにも増して暗く見えた。
ミカサ「エレン教官」
エレン「…!アッカーマン、今日は大丈夫だったか?」
ミカサ「見てたんですか…」
エレン「教官だからな」
こんなのは嘘だ。
教官の仕事上、訓練兵全体を監視すること自体は事実、けどあの場面を見れたのは明らかに俺の意思によるもの。
ミカサ「…何かありましたか?」
エレン「ああ……ちょっとキース教官に叱られてな…」
ミカサ「教官でも叱られるんですね」
エレン「もちろん」
ミカサ(言ってしまいたい…ここで)
教官のことを考えてたから今日のミスをしてしまったと。
教官が他の人にも同じように接するのが嫌だと。
ミカサ「教官と私の関係って…なんですか?」
エレン「は…?」
-
- 51 : 2018/03/26(月) 00:43:37 :
エレン「何って……教官と訓練兵だろ」
ミカサ「そうですよね、でも私はそれが嫌です」
エレン「嫌って…」
ミカサ「エレン教官は、私だけを特別視してくれてると…そう思っていました」
エレン「!!」
エレン(まさか……バレてた!?)
ミカサ「でも教官は誰にでも優しい、そういう人だと知りました…」
エレン「つまりそれは……どういうことだ?」
ミカサ「嫉妬……?」
エレン「なんで疑問形なんだ!?」
ミカサ「とにかく教官が他の人と同じように私とも接するのが嫌なんです」
エレン「それは仕方ないだろ、俺は教官だぞ?」
エレン(本当にさっきからこの子は何を言っているんだ!)
昔から鈍感と言われていた俺にだって分かる。
彼女は少なからず、俺に何か特別な感情を抱いている。
ミカサ「私はやっと気付きました……エレン教官は私にとって…」
エレン「………」
ミカサ「家族、ですよね」
エレン(………え?)
正直、この流れは「好きな人」だったり「憧れの人」だったりそういうのが来るものだと思った。
しかし実際は…
エレン「家族?」
ミカサ「え…違いましたか?」
エレン「そりゃ…」
エレン「………」
そもそも今のミカサの家族は、俺の親のカルラとグリシャ。
つまり、イェーガー家の養子。
つまり、俺の…
エレン「家族……だな」
ミカサ「!!私とエレン教官は…家族」
俺と家族と分かっただけで、ミカサは微笑む。
エレン「ところで、お前はなんで兵舎に…」
ミカサ「今日のようなミスを…二度と繰り返さない為です」
エレン「つまり、自主練をしに来たのか?」
ミカサ「はい」
エレン「………」
ミカサは時々、強さに盲目だ。
そして考えすぎる。
そんなミカサが心配で心配で仕方ないのだ。
エレン(そう…家族として!)
決して他の特別な感情があるわけではない。
エレン「今日はやめておけ」
ミカサ「でも…」
エレン「それより、俺と一緒に寄って行かないか?」
ミカサ「え…」
エレンに連れられ、目的地に到着する。
イェーガー家、つまり俺たちの家。
連れては来たものの、足が止まる。
ミカサ「?エレン教官…?」
エレン「もう何年も帰って来てないんだ」
ミカサ「大丈夫です、私もいます」
扉を開く。
すると食欲をそそるいい香りが鼻をくすぐる。
ミカサ「おばさん、おじさん…」
カルラ「ミカサ!アルミン君が帰ってきたって言うから待ってたのよ」
そのミカサの背後から、俺も家に入っていく。
カルラ「!エレン…?」
エレン「久しぶり…母さん」
カルラ「久しぶりって……何年も顔見せずに何してんだかこのバカ息子は…!」
頭をガツンと殴られる。
しかし顔は怒っておらず、むしろ嬉しそうだった。
カルラ「さぁ料理ができてるから二人ともお食べ」
エレン「…ああ」
それは、今までのどんな食事よりもあたたかかった。
エレン「じゃあ俺たちは戻るから」
カルラ「今度からはちゃんと顔出すようにね」
エレン「………」
黙って頷き、兵舎の方へと歩き出す。
後から出たミカサは、何やらカルラと話しているようだった。
ミカサ「ねぇ、カルラおばさん」
カルラ「なに?」
ミカサ「家族を……好きになることは変かな」
それを聞き、カルラはミカサの頭をそっと撫でた。
カルラ「ミカサがうちに来た時言ったでしょ、自由に生きなさいって」
カルラ「だからどんなことも、ミカサの自由よ」
ミカサ「うん」
別れを惜しみながら、先に帰っていったエレンを追いかけた。
ミカサ「教官!」
やっと追いつき、エレンの袖を引っ張る。
エレン「どうした?」
ミカサ「私のこと……呼んでください」
エレン「え…?アッカーマン」
ミカサ「それです」
エレン「何がだ」
ミカサ「家族に、アッカーマンっておかしくないですか?」
エレン「え」
ミカサ「私のことを、ミカサと呼んでください」
俺は、彼女の頼みは断れない。
ただ…
エレン(これはダメだろ)
エレン「ダメだ」
ミカサ「なぜですか」
エレン「それに、お前も教官としか呼べないだろ」
ミカサ「では私も変えます」
何を言っているんだこいつは。
エレン(イェーガー…?この流れだとやはりエレンか…?)
ミカサ「エレン…お兄ちゃん?」
エレン「却下」
-
- 52 : 2018/03/26(月) 01:09:07 :
- いやーーー、良い!!
すごく良いです!!!
めっちゃ期待です!!!
-
- 53 : 2018/03/26(月) 06:21:37 :
- ミカサ可愛いっ
期待!
-
- 55 : 2018/03/27(火) 01:28:57 :
エレン「ミカサ…」
ミカサ「エレン…」
エレンが私の手をぎゅっと握る。
エレン「お前、こんなにも強くなったんだな」
ミカサ「エレンのお陰です」
エレン「これでやっと、俺も我慢する必要がなくなったな…」
ミカサ「え、エレン!?」
エレンの腕が背中まで回ってきて、優しく抱きしめられる。
エレン「ずっと我慢してたんだぞ」
ミカサ「私もです…!」
私もエレンを抱きしめると、エレンが耳元で囁く。
エレン「ミカサ……愛してる」
ミカサ「私もです…」
エレンに触れようとした手はただ空気を掴んでいる。
私の腕の中にあるのはただの毛布。
サシャ「ミカサ、起きないと朝食食べられないですよー」
ミカサ「………夢」
サシャ「早く起きてくださいよ、私も早く食べたいんです!」
ミカサ「サシャ」
サシャ「何ですか!」
ミカサ「これは……夢?」
サシャの頬を強くつまむ。
サシャ「いひゃい!いひゃいへすみかは!」
ミカサ「はぁ…」
自分の欲望丸出しのあの夢を思い出すだけで、恥ずかしさが込み上げてくる。
ミカサ(私は何て夢を…)
サシャ「夢から帰ってきたなら早く食堂いきますよ…」
ミカサ「…うん」
食堂に着くと、先にアルミンが食事を持って座っていた。
アルミン「二人ともおはよう」
ミカサ「おはよう…」
サシャ「おはようございます…」
アルミン「食事だって言うのにサシャが元気ないなんて、それに頬が真っ赤…」
サシャは食事を頬張りながらも頬を手で押さえる。
サシャ「聞いてくださいよアルミン、今朝ミカサが寝ぼけて私の頬をつねってきたんですよ!」
アルミン「ええ!?」
ミカサ「それは申し訳なかった」
アルミン「ミカサが寝ぼけるなんて珍しいね…」
サシャ「そうですね、珍しく夢を見てたみたいです」
ミカサ(!!)
アルミン「何でわかるの?」
サシャ「だって寝言も言うし、何より顔がにやけてて……正直ミカサのにやけ顔は怖いです」
ミカサの顔色を伺いながら、サシャの声は段々と小さくなっていった。
アルミン「寝言って…何言ってたの?」
サシャ「………聞きたいですか?」
ミカサ「サシャ!」
サシャ「エレン、エレンって言ってました」
ミカサ(取り敢えず後でサシャは絞ろう)
それを聞いたアルミンは驚愕の顔を浮かべている。
それと同時になぜか溜息をついた。
アルミン「はぁ…」
ミカサ「何か言いたいことがあるなら言って」
アルミン「いやね?そこまで言ってるのに未だに認めないところがねぇ…」
サシャ「ほんとにそうですよ!」
アルミン「いい加減認めればいいのに」
たしかに、私は今まで幾度となく質問されたエレン教官への想いや関係性に対し、「ただの教官」や「家族」と返していた。
じゃあなぜいつも一緒にいると言われても、「アドバイスを貰っているだけ」や「家族だから」と返してきた。
アルミン「教官も教官だから、ミカサから考え方を変えていかないと今の関係性は変わっていかないよ?」
ミカサ「でも…」
アルミン「でもって…またただの家族だとか言うの?」
ミカサ「言わない」
アルミン「え?」
サシャ「え?」
ミカサ「私はエレンが好き、でも…今の関係が崩れてもっと離れた存在になってしまうのは怖い…」
言い訳をしてきたのもずっとこれが理由だった。
訓練兵と教官、家族という関係であることに安心感を得ていた。
ミカサ「でも今はそれ以上の関係になりたいと…思っ…てる」
真っ赤になって小さな声でそう呟いたミカサは、本当に恋する乙女だった。
アルミン(まるでこっちが告白されてるみたいだ…)
アルミン「じゃあ、僕も精一杯応援するよ」
サシャ「もちろん私も協力しますよ!」
ミカサ「ありがとう…二人とも」
ミカサが立ち去ると、隣に座っていたサシャが肘で突いてくる。
サシャ「しかし、アルミンも良いところがあるんですね!」
アルミン「何のこと?」
サシャ「だって見れば分かりますもの」
アルミン「さぁ、何のことだか」
サシャ「私の野生の勘、舐めないでくださいよ?」
僕はただ、ずっと幼かった幼馴染の成長がこんなにも早く、虚しいものとは思わなかっただけなんだ。
-
- 56 : 2018/03/27(火) 01:56:16 :
- 夢かーい笑
期待です!!!
-
- 57 : 2018/03/27(火) 23:55:23 :
- >>56
夢でした!笑
ありがとうございます!
-
- 58 : 2018/03/28(水) 00:31:21 :
立体起動での巨人討伐訓練。
正直、手も足も動かせない模型相手に戦っていても実践では役に立たないと思う。
調査兵団に入るつもりだから順位も気にする必要はない。
それでも私が本気も出す理由は…
エレン「今日の訓練の、最優秀成績者を発表する」
エレン「アッカーマン、お前だ」
ミカサ「………」
エレン「おいアッカーマン、聞こえてるか?」
ミカサ「………」
エレン「おーい…」
ミカサ「………」
エレン「…………以上で訓練を終了する、解散」
アルミン「さっき、何でエレン教官に呼ばれたのに無視したのさ!」
ミカサ「…呼んでくれなかったから」
アルミン「え?呼んでたじゃん」
ミカサ「違う、名前…」
アルミン「え?」
立体起動訓練ではいつも最後に、最優秀成績者が名前を呼ばれる。
私は以前に、エレンと名前で呼び合う約束をした。
ミカサ「今日こそ呼んでもらえると思ったのに…」
アルミン「そんなことできるわけないじゃないか…」
ミカサ「どうして?」
アルミン「だって、君たち二人の関係が疑われたらどうするの」
ミカサ「?私は構わない」
アルミン「エレン教官が構うでしょ!」
ミカサ「私は呼んでるのに…」
本当は分かっている。
特別だと思っているのは自分だけなのだと。
けど、いつも約束をくれるのはエレンだ。
ミカサ(私からも、エレンと約束をしたい…)
最近の夕食にミカサはやって来ない。
本来ならばそれが普通だが、今はそれが寂しく思える。
エレン(なんだか本当に家族みたいだな…)
消灯し、寝る準備に取り掛かるとドアを叩く音がした。
エレン(誰だこんな時間に……)
他の教官だろうかなど考えながらとドアを開くと、そこにはミカサがいた。
エレン「なっ…お前こんな時間に…!」
ミカサ「………」
既に灯りが消えているため、表情は分からないがミカサは黙ったままだ。
エレン「今日の訓練の時もそうだったな、何で何も言わない…」
ミカサ「……エレン」
ミカサ「私は、あなたに嘘をつきました」
-
- 59 : 2018/03/28(水) 01:12:33 :
エレン「まぁ入れ」
暗い部屋の中、手探りで取った椅子に座らせる。
椅子に座るなり、ミカサはポツリポツリと話し出した。
ミカサ「ごめんなさい…」
エレン「何のことかまず分からない」
ミカサ「あなたを、家族だと言いました」
エレン「本当のことだろ、なにが嘘なんだ?」
ミカサ「私はただ……エレンの特別になりたいんです」
俺は一体なにを言われたのだろうか。
エレン(特別……特別?)
エレン「は…?」
ミカサ「どうしたら、私はエレンの特別になれますか?」
エレン「ちょっと落ち着け」
ミカサ「落ち着いてます」
エレン(意味がわからない…)
エレン「家族だって、特別じゃないか」
ミカサ「だってエレンは、私を家族だと思ってないじゃないですか」
エレン「そんなことは…!」
ミカサ「じゃあ、何で名前を呼んでくれないんですか?」
エレン「あ…」
エレン(そういうことか)
名前を呼び合うという約束。
訓練の時に俺の呼びに反応しなかったのはこれが原因だったのか。
エレン(それにしたって、全員の前で名前を呼ぶのは難易度高いだろ)
そして今ミカサが悩んでいる原因もこれにある。
俺が約束を守らなかったせいで、家族だということも否定されたと思っているのか。
エレン「ミカサ」
精一杯優しい声で名前を呼んだ。
ミカサ「!!」
エレン「……これで満足か?」
ミカサ「もっと呼んでください」
言われるがままに名前を呼ぶ。
窓から差し込む月明かりが、ミカサの笑みを映す。
朝。
気づけば俺はベッドで寝ていた。
昨日はあれからどうしてたか、記憶を巡らす。
それに辿り着く前に、隣に眠るミカサの姿を見つけた。
しかも、俺に抱き着くような形で。
ミカサ「ん…」
エレン「え………」
エレン(何をしたんだ俺は!!)
訳が分からず困惑していると、ミカサも目を覚ます。
ミカサ「………あれ」
エレン「お、おはよう……」
ミカサ「?おはようございます…」
幸い服を着ていたことに、ホッと胸をなで下ろす。
ミカサ「どうして教官が…」
エレン「その様子じゃお前も覚えてなさそうだな…」
ミカサ「確か……教官に名前を呼ばれていたら安心してそのままウトウトと…」
エレン(それだーー!!)
思い出した。
昨日ミカサの名前を呼んでいると、気づけばミカサは椅子に座りながら眠っていた。
起こそうとしても反応がなく、このまま女子兵舎まで運ぶのも問題だと思い、俺はベッドに寝かせることにした。
その経緯をミカサに説明すると、ミカサも思い出したように頷く。
エレン(でも俺は床で寝てたはず…)
ミカサ「今日は普段より安心して眠れました」
エレン「…それは良かった」
ミカサ「夜中、エレンをベッドに持ち上げるのが大変でした」
エレン(それかーー!!)
エレン「とにかくお前今すぐ兵舎に戻れ」
ミカサ「はい」
ミカサが部屋から出ると、変な疲労感から再びベッドにつく。
エレン(ミカサの香りがする…)
その香りに、どこか安心している自分がいた。
キース「…何をしている、イェーガー」
エレン「あ…」
ベッドから顔を瞬時に離す。
エレン(ミカサを帰す時、鍵かけるの忘れてた…)
エレン「そ、それよりキース教官、こんな早朝から何用ですか?」
キース「貴様に客人だ」
エレン「客人?」
-
- 60 : 2018/03/28(水) 08:00:21 :
- 春風師匠 お久しぶりー!
今作も期待だよー
ってか、ミカサ夢かいなっ!でも夢、、、。夢
イーッヒヒヒヒヒヒヒヒ、アッーヒャヒャヒャ( ゚∀゚)
↑
久しぶりのssで期待しまくって頭イカれた人(笑)
-
- 61 : 2018/03/28(水) 15:25:05 :
- ベットに持ちあげるとか
ミカサらしいですね笑
期待です!!!
-
- 63 : 2018/03/29(木) 01:34:53 :
サシャ「ミカサ!」
部屋に戻るなり、サシャが勢いよく抱きついてくる。
サシャ「一体どこに行ってたんですか!?」
ミカサ「エレン教官のところ」
サシャ「こんな朝早くから行くなんて、本当好きですよね…」
ミカサ「朝じゃない、夜から」
サシャ「ん…?んん?」
サシャ「あの、私の聞き間違いじゃなければ、ミカサは夜から朝まで教官の部屋にいたんですか?」
ミカサ「?うん」
サシャ「ええ!?それってやっぱりその……アレ、ですか?」
ミカサ「アレ…?」
サシャ「そんなぁ…ミカサには早いですってぇ…!」
ミカサ「???」
エレン「これより立体起動の訓練を始める」
「おいあれって…!」
「マジかよ…」
訓練自体は普段と何ら変わらない。
しかし、エレンの横に立つ2人の存在が、訓練兵たちをざわつかせた。
エレン「今日はお前らの訓練を、このお二方にも見てもらう」
エレン「調査兵団のハンジ・ゾエ団長とリヴァイ兵士長だ」
ハンジ「ハンジ・ゾエだ、みんなよろしくね〜」
リヴァイ「……リヴァイだ」
それを聞いたアルミンが横に立つミカサの肩をつつく。
アルミン「まさかあの人たちが訓練を見にくるなんてね!」
ミカサ「……うん」
アルミン「あれ?意外と興味ない?」
ミカサ「別に、誰が見ようとやることは変わらない」
アルミン「でも調査兵団のトップに認められれば、昇格もしやすいかも」
ミカサ「ここで認められなくても、入ってから成果を出せば問題ない」
アルミン「僕はミカサのそういうところがたまに羨ましいよ…」
エレン「訓練開始!」
合図とともに訓練兵たちが一斉に飛びかかる。
今期は調査兵を志す者も多いためか、今日は一段とやる気に満ち溢れている兵士が多い。
エレン「それにしても、お二人がなぜここに…」
ハンジ「大事な部下がどんな風に成長したのか気になってさ」
エレン「部下なんて……俺は逃げたのに」
リヴァイ「……俺は、お前の選択は正しかったと思う」
エレン「え…?」
ハンジ「そうだね」
リヴァイ「お前にはここで何か得たものがあったらしい、それが何かは分からないがな」
俺がここで何か得たもの。
心当たりがあるとすれば、それは一つしかない。
ハンジ「エレンが朝、話してくれたことが関係しているんだろう?」
エレン「…はい」
-
- 64 : 2018/03/29(木) 02:26:21 :
-
朝
客室まで行くと、そこで待っていたのはハンジとリヴァイの二人だった。
この二人が俺の元へ来たということは、"この前"のことについてだと察した。
ハンジ「朝早くからごめんね」
エレン「いえ、こちらこそご足労おかけしてしまって」
ハンジ「ついでに訓練兵の子たちも見たいと思ってたから丁度良かったよ」
エレン「そう言っていただけると助かります…」
するとハンジは笑みを消し、真剣な顔つきで俺を見つめる。
ハンジ「でだ、この前エレンが言っていた件についてだ」
エレン「…はい」
ハンジ「その意思は、本気か?」
エレン「…本気です」
リヴァイ「つまりお前の要望は、調査兵団に再び入団したいってことでいいんだな?」
エレン「はい」
俺が前に、二人に話をしたこと。
それは再び俺が調査兵団に入団することだった。
無理なお願いだということは分かっている。
エレン「成さなければならないことが、あるんです」
リヴァイ「…それはお前が前に語ったことと同じか?」
前にリヴァイ兵長に、「お前はなぜ調査兵団にいる」と聞かれた。
その時に俺は、海を見たいという夢とそこに連れていかなければならない人がいると言った。
その夢は変わらない。
エレン「変わりません」
リヴァイ「そうか…なら諦めろ」
ハンジ「ちょ…リヴァイ!?」
リヴァイ「一度諦めた夢だ、もう一度やろうたってどうせまた…」
エレン「いいえ、次は諦めない……いえ、諦められません」
リヴァイ「…何でそう言える」
今まで、俺は一人だった。
いつか夢の世界を見せてやろうと必死だった。
しかしそれが地獄だと知ってしまえば、俺一人では到底乗り越えられなかった。
でも今は…
エレン「一緒に戦って、一緒に海に行こうって言ってくれる奴がいるんです」
あの後、二人は何故か納得したように頷いた。
まだ調査兵団になれるか決まったわけではないが、二人には分かってもらえたのだろうか。
ハンジ「エレンは変わったね」
ハンジ「今まで一人が抱えてきたことを、支え合うことができる人を見つけたんだね」
エレン「はい」
エレン(お前のおかげだよ)
訓練中のミカサに、心の中でそう呟いた。
リヴァイ「ほう…」
エレン「な…なんですか?」
リヴァイ「あいつか」
ハンジ「もしかして、エレンの言ってた人って訓練兵なの!?」
エレン「いや…」
ハンジがリヴァイの指差す方をまじまじと見つめる。
ハンジ「あれ、しかも女の子じゃん!」
リヴァイ「…悪くない」
エレン「悪くないってどういうことですか!?」
リヴァイ「ああ?立体起動のことに決まってるだろ」
エレン「そ、そうですよね…!」
ハンジ「もしかしてエレン、嫉妬〜?」
エレン「違いますって!てかハンジさんくっつき過ぎ…!」
リヴァイ「クソメガネ、エレンから離れろ」
ミカサ(あの女……エレンにあんなにくっついて…!)
ジャン(ミカサの動きがいつもより早い!?)
-
- 65 : 2018/03/30(金) 00:03:44 :
エレン「今日は本当にありがとうございました」
ハンジ「いいのいいの、エレンの元気な姿も見られたしね」
リヴァイ「入団のことだが…」
エレン「は、はい」
リヴァイ「俺らに任せておけ」
エレン「はい!」
ハンジとリヴァイが馬車に乗り込む。
その時、リヴァイがふと足を止める。
リヴァイ「エレン」
エレン「なんでしょう」
リヴァイ「あいつと、上手くやれよ」
エレン「え…?」
リヴァイ「後で後悔しないような選択をすんだな」
エレン「は、はい!」
それを言い残し、二人を乗せた馬車は走り去っていった。
エレン(あいつと上手く……?後悔しないように…?)
さっきはよく分からなかったが、これはもしや…
エレン(兵長なりの、恋愛アドバイスなんじゃ…!)
ハンジ「まさかリヴァイがあの二人に恋のアドバイスをするなんて!」
それからというもの、隣に座るハンジは爆笑していた。
リヴァイ「いい加減黙れ」
ハンジ「ねぇ、リヴァイ」
リヴァイ「なんだ、いきなり真剣な顔になりやがって」
ハンジ「それって経験則?」
リヴァイ「………さぁな」
ハンジ「ふーん…」
リヴァイ「………」
ハンジ「………」
沈黙が続く。
沈黙を嫌うハンジは何か話題を振ろうと、訓練後のことを思い出した。
ハンジ「そういえばリヴァイさ、訓練の後あの子と話してたよね」
リヴァイ「あ?」
ハンジ「ミカサだよミカサ!」
リヴァイ「ああ……少しな」
ハンジ「あの子やたら私のこと睨むから近づかなかったんだよね……何話したの?」
リヴァイ「エレンとの関係性だ」
ハンジ「ええ!?あなたがそんなこと聞くなんてね…」
リヴァイ「…悪いか?」
ハンジ「別に悪いとは言ってないよ!ただ意外で」
リヴァイ「そうか」
ハンジ「で、何か答えたの?」
リヴァイ「エレンとは家族だと言っていた」
ハンジ「家族ぅ?でも姓は違うじゃない」
リヴァイ「養子なんだと」
ハンジ「へー…」
本当にリヴァイが普通の質問をしていることに意外性を覚える。
ただ、やはりリヴァイがこのまま終わるとは到底思えなかった。
ハンジ「何か意地悪したでしょ」
リヴァイ「意地悪はしてねーよ」
ハンジ「意地悪は?」
リヴァイ「ただ…」
訓練後
リヴァイ「家族…だと?」
ミカサ「はい」
リヴァイ(まさかこいつ……もう婚約を!!?)
リヴァイ「そ、そうか…」
ミカサ「エレンの家族に引き取られ、養子に」
リヴァイ「ああ、養子か」
リヴァイ(なんだよ養子かよ!!)
俺の部下はいつもいなくなってしまう。
だから部下の結婚式にも呼ばれたことがない。
俺も部下の結婚式に呼ばれてみたい。
リヴァイ(エレンにはその希望があると思っていたのに…)
リヴァイ「まぁ、今日は盛大に祝ってやれ」
ミカサ「今日…?」
リヴァイ「まさかお前……知らないのか?」
ミカサ「え!?今日がエレンの…誕生日?」
-
- 66 : 2018/03/30(金) 00:14:07 :
- おお!!
誕生日どうやって祝うのかなー!
期待です!!!
-
- 67 : 2018/03/30(金) 01:15:42 :
夜
いつものように扉を叩く音が聞こえてくる。
扉を開けると、そこに立っているのはもちろんミカサだ。
いつもはどこかわくわくしているように入ってくるのに、今日はなぜか悲壮に満ちた表情を浮かべている。
エレン「ど、どうした?」
ミカサ「エレン……ごめんなさい」
エレン「いきなり謝罪?」
ミカサ「私、エレンが今日誕生日だったなんて知りませんでした…」
エレン「え…」
言われて今日の日付を見ると、3月30日。
エレン(本当だ…)
ミカサ「私……何も用意できなくて…」
エレン「そんなの気にすることないだろ、俺も忘れてたし…」
ミカサ「でも、私はエレンに貰ってばかりで…」
どうしたものかと頭をかく。
エレン「そもそも今は訓練兵だから、物を買えないのは当たり前だろ」
ミカサ「買えなくても作った…」
エレン(器用なんだな…)
エレン「別に物にこだわらなくていいんだ、言葉だけでも十分だ」
ミカサ「言葉…」
エレン「お前まだ俺に一度も祝いの言葉、言ってないだろ?」
ミカサ「あ!…お誕生日、おめでとうございます」
エレン「お、おう…」
ミカサ「やはりこれでは納得いきません」
エレン「俺はもう十分だ…」
ミカサ「さっきエレンに言葉と聞いて思い出しました」
ミカサ「私からエレンに、約束をします」
エレン「約束…?」
ミカサ「はい、私はこれまで何回もエレンに約束を貰いました…」
ミカサ「だから今度は私がエレンに約束をします」
エレン「じゃあそれにしてくれ…」
正直なんでも良かった。
ミカサがそれで納得してくれればそれでいいと思っていた。
けど…
ミカサ「私の全てを、エレンに捧げます」
エレン「おま…!何言って…」
ミカサ「だから…あなたに立ちはだかる敵も、心の弱さも私が排除します」
エレン「………」
このまま捉えると、俺にはミカサが何を言っているか分からない。
けど、ミカサが言っていることはきっと、巨人を倒す時も、挫けそうになった時も、ミカサが支えてくれる。
その力の全てを、俺の夢のために捧げてくれる。
エレン(そういうことだよな…)
ミカサ「エレン…?」
エレン「……ありがとな」
ミカサ「!!」
エレン「凄く嬉しいよ」
ミカサ「よかった…」
ミカサが安堵したように胸を撫で下ろす。
エレン(俺が何よりも欲しかったものはきっと、これだったのかもしれない)
でも年に一度の誕生日だ、もう少し欲張ってもいいだろう。
エレン「ミカサ」
目の前にいるミカサを、抱きしめた。
ミカサ「え、エレン!?」
エレン「お前がずっと、俺のそばにいてくれるんだよな」
段々と落ち着いてきたミカサも、俺の背中に腕を回す。
ミカサ「はい…」
ミカサと出会えて、全てが変わった。
15歳も年下の訓練兵の彼女は、少女と言うにはあまりにも強く、だけどとても優しく。
俺はいつだって、ミカサに支えられていた。
ただの教え子でも、家族でもない。
ミカサ「家族としてじゃ、ないです」
ミカサ「私はエレンが…好きです」
歳?訓練兵と教官?
そんなのは関係ない。
いつだって彼女は、俺の中にある何もかもを覆してきたんだ。
エレン「俺もだ」
エレン
Happy Birthday!!
-
- 68 : 2018/03/30(金) 01:17:07 :
- >>66
ありがとうございます!
誕生日っぽくならなかったです笑
-
- 69 : 2018/03/30(金) 11:48:42 :
- いやいや!
いい感じです!!!
期待です!!!
-
- 70 : 2018/03/31(土) 00:51:52 :
- >>69
良かったです!
今日はお休みします…
明日からまた更新していきますm(_ _)m
-
- 71 : 2018/04/01(日) 02:01:44 :
とある噂が訓練兵たちの間で広まっていた。
サシャ「なんとミカサとエレン教官は、恋人として付き合っているらしいです!」
発端は分からないが、主にサシャがこの噂を広めていた。
しかし、この噂に対しほとんどの兵士は…
ライナー「まぁ、あの二人なら付き合うと思ったがな…」
クリスタ「やっとくっついたんだ!」
アニ「まだ付き合ってなかったの?」
と、当たり前のように流していた。
ただ一人を除いて…
ジャン「嘘だろ…!ミカサが、ありえねぇ…」
コニー「お前に希望はこれっぽちも無かっただろ、そんなんバカにでも分かんぞ」
ジャン「うるせぇ!こんなんデマに決まってるだろ!」
アルミン「僕もそう思うよ」
ジャン「やっぱアルミンは分かってくれるかぁ…」
ライナー「アルミン、お前にしては珍しいな」
アニ「あんたのことだから、何か根拠があるんじゃない?」
アルミン「うん、このサシャが流してる噂…」
アルミン「これって、エイプリルフールのネタなんじゃないかな」
サシャ「ギクッ」
コニー「おい、こいつ今口でギクッって言ってたぞ」
ライナー「なるほど、そういや今日はそんな日だったな」
ジャン「さすがアルミン!よっ、名推理!」
アルミン「普通に考えれば分かることじゃないかな…」
ライナー「取り敢えずこいつは締めておこう」
サシャ「ちょっとライナー!ごめんなさい!謝りますからぁ…!」
そうしてサシャは縄で縛り付けられ、目の前にパァンが置いてあるという生殺し状態。
サシャ「ん〜!ん〜!」
ジャン「ひとまずこんなもんか」
ライナー「ところで例のミカサはどこにいるんだ?」
アルミン「ミカサならもうすぐ……あっ!」
噂をすればと、ミカサが部屋に戻ってきた。
ミカサ「……?なぜみんなこちらを見てるの?」
アルミン「サシャがちょっとね…」
ミカサ「サシャ?」
そう言われサシャの方を見ると、縄で縛り付けられながらも必死にパァンを食べようと足掻く無様なサシャの姿があった。
ミカサ(………)
ミカサ「サシャは何をしたの?」
ジャン「本当にひでぇ野郎だったぜこいつは」
ジャン「なんでもミカサとエレン教官が付き合ってるってデマを…」
ミカサ「え…?なぜそれを…」
ジャン「え?」
アルミン「え?」
ライナー「は?」
コニー「ん?」
沈黙。
みながミカサの言葉を理解するには数十秒の時間を要した。
ジャン「つまり……ミカサとエレン教官は本当に付き合って…?」
ミカサ「皆もう知っているのではないの?」
ジャン「そ、そうか!ミカサもエイプリルフールに乗っかってんだな!」
アルミン「そそそそうだよね!今日はエイプリルフールだもんね!」
ミカサ「エイプリル…フール?それは何?」
アルミン「この顔はマジだ…」
ジャン「 」
ミカサ「つまり、エイプリルフールは嘘をついていい日」
アルミン「でも人を傷つけてしまうような嘘はダメなんだ」
ミカサ「私は傷ついた…」
アルミン「でもまぁ…もう既に付き合っていたように見えてたしあまり驚くようなことではないよ」
ミカサ「それにしてはアルミンは驚いていた」
アルミン「まぁ、もう付き合ってるとは思ってなかったけど…」
アルミン(相談されたのもついこの間のような…)
ミカサ「そういえばジャンは大丈夫?」
アルミン「一応医療室に運ばれたけど、すぐ治るよ」
ミカサ「良かった…」
アルミン「………」
ミカサのその無自覚な優しさは、時に周りの人を傷つけてしまうこともある。
アルミン(なんて、言えるわけもないね)
夜の恒例行事
個別講習(仮)
エレン「……であるから、ここのガスの節約を…」
ミカサ「エレン教官」
エレン「ん…?」
エレン(ミカサが俺を教官呼びなんて…)
ミカサ「私、教官のことが嫌いです」
エレン「………」
一瞬驚いたが、すぐに把握した。
これはエイプリルフールだ。
エレン(なんと言ってもミカサの顔が分かりやすい…)
エレン「……そうか、俺も実はアッカーマンが嫌いだった」
ミカサ「な…!ごめんなさい、本当は好きです…」
エレン「知ってる」
必死にしがみつくミカサを抱きしめた。
ミカサ「傷つきましたか?」
エレン「…まぁな」
エレン(結果、幸せだからいいけど)
-
- 72 : 2018/04/02(月) 23:25:08 :
850年
キース「これより、第104期訓練兵団解散式を行う!!」
キース「訓練兵団を卒業した諸君には、三つの選択肢がある」
キース「無論、憲兵団に入れるのは先程発表した上位10名だけだ!」
集団の中で先頭に立っている10人。
それが憲兵団へ入団する権利を手に入れた者たち。
その中でもズバ抜けて優秀な成績を収めたのが、
エレン(首席、ミカサ・アッカーマン…)
正直に言えば、このままミカサには憲兵団に入って欲しい。
エレン(けど…)
敬礼をするミカサと目が合う。
ミカサ(エレン、私は強くなった)
エレン「………」
あの調子じゃ調査兵団に入り、巨人と戦う気満々だ。
何より、彼女と俺には約束がある。
キース「所属兵科は後日問う、解散!」
解散式を終えた兵士たちは、訓練兵としての最後の晩餐を迎えていた。
コニー「やったー!遂に卒業だ!」
サシャ「これで憲兵団ですよ!もう食べるものに困りません!」
コニー「………」
サシャ「コニーどうしたんですか?」
コニー「いや…」
ライナー「コニーは調査兵団に入るつもりらしい」
サシャ「ええ!?あんなに憲兵団がいいって…」
コニー「そうだよ、けどよ…」
アルミン「エレン教官の話を聞いたんだよね」
サシャ「教官の話?」
ライナー「俺とコニーとアルミン、それとジャンの四人で聞いたんだ」
皆が和気あいあいとする中、ミカサは一人食事を取っていた。
そこにジャンが席を立ち、寄ってくる。
ジャン「ミカサは調査兵団なんだよな」
ミカサ「ジャンは憲兵団?」
ジャン「いや…」
ミカサ「?」
ジャン「俺も調査兵団に入る」
ミカサ「でもあんなに憲兵団がいいって…」
ジャン「少し前に四人でエレン教官の話を聞いた」
ミカサ「!」
ジャン「お前が憧れてた気持ちが、少しだけだが分かった気がする」
ミカサ「………」
いつもの部屋。
そこにエレンはいた。
扉が叩かれる音がする。
ミカサ「失礼します」
エレン「ミカサ、卒業おめでとう」
ミカサ「ありがとうございます」
今日でこのやり取りも終わりだと考えると、少し寂しさを感じる。
ミカサ「今までありがとうございました」
エレン「あまり大したことはできなかったけどな…」
ミカサ「それより、なぜ皆に話したのですか?」
エレン「話?何を?」
ミカサ「海の、夢の話を」
エレン「ああ…」
この前のことを思い出す。
あの日、アルミンを含む四人が、なぜ俺が調査兵団にいたか聞かせてほしいと押しかけてきた。
それまで罪の意識から夢を語ることのなかった俺が、あの時は何時間も話し込んでしまった。
まるで、調査兵団を目指していた頃のように。
エレン「話したいと思ったからだ」
ミカサ「今までは話したくないって…」
エレン「全部ミカサのお陰だ」
ミカサ「そんなことは…」
エレン「俺はミカサに、もう一度生きる希望をもらったんだ」
ミカサ「!」
その時、私は6年前のあの日に戻ったような感覚に陥った。
夢を語っていた、憧れの人そのものだった。
ミカサ「同じですね」
エレン「ああ、同じだ」
ミカサ「でも、私はあなたと一緒に海を見ることができない」
ミカサ「エレンを調査兵団に戻す力が、私にはない…」
エレン「………」
ミカサ「一緒に見るって、約束したのに…」
エレン「いや、一緒に見る」
ミカサ「え…」
エレン「巨人を駆逐した、その後の世界でな」
その時のエレンは、何か企んでいたのかもしれない。
次の日、私は調査兵団に入団した。
-
- 73 : 2018/04/03(火) 00:30:11 :
- エイプリルフールもいい感じやー!
エレンも調査兵団へ戻るんですよね!?
期待です!!!
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- 74 : 2018/04/04(水) 00:43:26 :
- >>73
ありがとうございます!
続きです↓
-
- 75 : 2018/04/04(水) 01:27:41 :
まず調査兵団に入団して取り組むのは、二週間後に行う壁外調査で使う長距離索敵陣形を頭に叩き込むことだった。
ハンジ「まずは新兵の皆に指定された班に分かれてもらおう」
説明は各班の班長やその他隊長が担当する。
ミカサ(アルミンはネス班長と言う人みたいだ、私は…)
配られた紙に目を通す。
そこには、「特別作戦班・リヴァイ班」と書かれていた。
ミカサ(特別作戦班…?)
事前の説明にはなかった名に、団長のところまで直接聞きに行く。
ミカサ「団長」
ハンジ「なにかな?」
ハンジ(なんでこの子はこんなに睨んでくるの…)
ミカサ「この、特別作戦班とは?」
ハンジ「それは私が考案した作戦の中で、最も重要な位置になる班だね」
ミカサ「私以外には見当たらないのですが…」
ハンジ「ああ、君の成績はあまりに優秀だと、ある人から何度も聞いてるからね」
ミカサ(エレンのことだろうか…)
ハンジ「君の実力、ぜひそのリヴァイ班で発揮してほしい」
ミカサ「…はい」
この特別作戦班についてはまだ分からない。
けど、私が夢と約束のために力を尽くすことに変わりはない。
それと…
ミカサ「あなたにはあのチビがお似合いですよ…」
ハンジ「え?何か言った?」
ミカサ「なんでもありません」
ハンジに指示された場所へ向かうと、そこにはその例のチビがいた。
リヴァイ「遅い、クソでも長引いたか?」
ミカサ「………」
リヴァイ「おい、さっさと答えろ」
ミカサ「…あ、すいません…背が低くて見えませんでした」
リヴァイ「随分肝が座ってるようだな…」
ミカサ「生半可な気持ちでここへは来てませんので」
リヴァイ「まぁ、そんだけ度胸がありゃ十分だな」
そう言ってリヴァイは胸元の懐中時計で時刻を確認する。
リヴァイ「しかしもう一人はもっと遅かったな」
ミカサ「え、私以外にも誰が…」」
リヴァイ「知らなかったのか?もう一人お前と同じ新兵がいるぞ」
リヴァイ「やたらデケェ新兵がな」
リヴァイの目線の先を追って行く。
エレン「遅くなりました、リヴァイ兵長」
そこには教官服ではない、自由の翼を背負ったエレンの姿があった。
ミカサ「エレン!?」
リヴァイ「遅いぞ、さっさと行くぞ」
エレン「はい」
あまりに突然の登場に拍子抜けした私を見てエレンは笑い出す。
エレン「どうした?ミカサ」
ミカサ「な、なんでエレンがここに…」
エレン「なんでって、お前と同じリヴァイ班だからだ」
ミカサ「でも…!」
エレン「言っただろ、一緒に外の世界を…海を見るって」
エレン「俺はもう二度と、お前との約束を忘れたりはしない」
ミカサ「エレン…!」
リヴァイ「おい何をチンタラしてる」
エレン「す、すいません!ほらミカサ、行くぞ」
ミカサ「…はい!」
いつしか夢見た場所に、憧れの人の隣に私は立っている。
生を諦めた少女は、彼に生きる希望を与えられ、夢を諦めた彼は、少女に約束を与えられた。
エレン「俺はお前とだったら、どんな残酷な世界でも怖くない」
与え与えられ、二人は共に生きていくことを決めた。
ハンジ「第57回壁外調査を開始する!!」
その門をくぐり抜けた時、世界は広がる。
エレン「見ろ、ミカサ」
「外の世界だ!」
少女と見る世界
fin
-
- 76 : 2018/04/04(水) 01:33:13 :
- ここまでご覧いただいた方々、ありがとうございました!
私、新生活がスタートしましてこれから多忙な日々が続いていきます。
その前にこの作品を完結させたいと思った所存でありました。
この作品は、こんなシチュエーションもあったらいいなと思ったものでした!
次回作から亀更新でも何か書いていきたいと思っております!
期待コメなど下さった方、本当にありがとうございました!
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- 77 : 2018/04/04(水) 09:20:17 :
- シメまで完璧ですね!!
いい作品をありがとうございます!!
更新遅くても次からの作品にも期待してますよ!!!
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- 78 : 2018/04/04(水) 10:07:12 :
- とても良かったですよ!(^_^*)
-
- 79 : 2018/04/04(水) 10:55:36 :
- とても面白かったです!
少しリヴァハンを期待してました(すみません…
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- 80 : 2018/04/04(水) 20:52:50 :
- >>77
ありがとうございます!
また頑張りたいと思ってます!
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- 81 : 2018/04/04(水) 20:53:07 :
- >>78
ありがとうございます!
そう言っていただけると嬉しいです!
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- 82 : 2018/04/04(水) 20:53:56 :
- >>79
ありがとうございます!
自分の中の裏設定でリヴァハンは既にできてます笑
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