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嘘の花

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  1. 1 : : 2017/04/01(土) 20:50:47
    エイプリールフールにこの話を書き始め、そしてズルズル五月になるでしょう。ごめんなさい。。

    夢野と王馬のお話です。あまり長くはならないかと。

    次からです!
  2. 2 : : 2017/04/01(土) 20:54:52
    期待してます‼エイプリルフールだけど、ウソじゃない。
  3. 3 : : 2017/04/01(土) 21:31:16



    「ゆーめのちゃん!何してんの?」

    「王馬…」



    一人で食堂にいると、無邪気な笑顔を向けながら王馬が入ってきて、隣に座った。



    「…別に、何もしとらんわ。ジュース飲んでただけじゃ」

    「へえ、そんな顔して飲んで…おいしいの?そのジュース」

    「見るでない鬱陶しい」




    今飲んでるのは何の変哲もないぶどうジュースだ。

    別段これが好きというわけでもない。あったから飲んでいるだけである。好みの味をわざわざ探すのは面倒くさい。




    …しまった。もう面倒くさいは言わないのだった。



    「…少し考え事をしておってな。疲れたので休憩しているところじゃ」


    「考え事、ね。まあ何考えてんのかめっちゃ簡単に予想つくけどさ」



    王馬はその予想した事柄については触れなかった。


    考えていたのはとある人物についてだった。


    それはとても大事で、大切な友人たちのこと。



    たった数日前に失ったばかりの友人たちのことだった。

    二つの顔を思い出し、夢野はきゅっと胸が痛くなった。



    王馬はしばらく夢野の顔を見つめた後、急に立ち上がった。


    「俺もなんかのもーっと」


    厨房へと消えていく王馬をなんとなく眺めながら、深くて透明な紫のぶどうジュースを口許に運ぶ。



    うん、悪い味じゃない。


    そうしていると、王馬は透明なグラスに飲み物と小さな箱を乗せたトレイをもって歩いて来、また夢野の隣に腰かけた。



    「なぜウチの隣に座るんじゃ。狭いわ」

    「べつに、なんとなく!それとも…夢野ちゃんは俺のこと、キライ…?」

    「ウソ泣きはやめい」

    「あはっ、バレた?」



    さっきまで泣きそうだった目はすぐに乾き、代わりに意地の悪い笑顔が向けられた。


    「ね。元気の出る贈り物があるよ」

    「なんじゃ。…どうせろくなものでもないだろうがな」

    「それは見ればわかるよ。これこれ。開けてみて!」



    渡されたのは、トレイに乗っていたいかにもイタズラグッズのような小さな箱だった。



    「中身見たら腰抜かすと思うから、心して開けてよね」

    「開ける気なくすわ…全く」



    そういいながらも身構えて、箱に手をかけた時のことだった。


    「わぁっっ!!!!!!」

    「んあぁぁぁー!!?」


    耳元で大きな声が聞こえ、予想外の出来事に仰天した夢野の手が暴れ、ジュースのコップがひっくり返った。


    幸い残りが少なかったため、大惨事にはならずに済んだが。



    「あっ…あーあ……」

    「はっはっは、騙された!!」


    声を立てて笑う王馬に本気で少しイラッと来ながら、そばにあったティッシュを数枚テーブルに散らす。


    後始末をしながら箱にちらりと目をやると、特に何も入っていなかったが、そこのほうに紙が貼ってあった。

    文字も見える。


    『嘘だよ♡』


    夢野は苛立った声を出した。


    「王馬ぁぁー……ほんっとお主は!」

    「にしし、夢野ちゃんは単純だからからかいがいがあるねー」


    王馬は楽しそうに笑っていた。
  4. 4 : : 2017/04/01(土) 21:36:23
    >>2
    期待ありがとうございます!
  5. 5 : : 2017/04/01(土) 21:40:39
    期待です!
    頑張ってください!
  6. 6 : : 2017/04/01(土) 21:50:49



    「……」

    「ええ……ごめんって。そんなにヤだったの?」



    無言で王馬を睨むと、王馬は珍しく困惑した表情を見せた。


    「お主には愛想が尽きるぞ本当に」

    「まあ、夢野ちゃんの愛想なんか要らないけどね」



    そこまでいうと、また嘘だよと言ってグラスの飲み物を啜った。


    つかみどころのないやつだ。



    「ぷはー!やっぱ炭酸はいいね!クッと喉を通るこの感じ?」

    「ウチは炭酸は嫌いじゃ…」

    「えっ、本当に言ってる?炭酸飲めないとか人生の半分損してるよ?」

    「ウチの人生じゃ。人の人生の価値観くらい放っておいてくれ」



    王馬は本気でショックを受けた顔をした。

    どれだけ炭酸飲料が好きなのか。



    「なんでキライだなんてことになったわけ…?普通好きになるよね?」


    「辛いから無理」

    「アッそうですか」



    会話が終了した。


  7. 7 : : 2017/04/01(土) 21:51:06
    >>5
    ありがとうございます!
  8. 8 : : 2017/04/01(土) 22:20:46






    しばらく、テーブルの上のソーダを眺めていた。

    次から次へと生み出され、上昇し、そしてはぜて消える泡を見ていた。


    まるで一つ一つが小さな宝石のようで、目を奪われる。


    食堂の白い光が、泡によって屈折し、コップの周りを明るく照らしている。


    コップの周りについた水滴が、いかにも涼しげだ。


    「飲みたいの?」

    「飲みとうなどないわい」

    「おいしいのにな」

    「むしろおいしく飲める神経がわからん」

    「ちぇー」


    口をとがらせる王馬。

    飲まないなら、と唐突に案を出してきた。



    「じゃあさ、代わりにマジック見せてよ!」

    「魔法じゃ!それと何故代わりなんじゃ理解できんわ」

    「炭酸好きな俺を否定した代わりだよ!」

    「お主を否定したわけではないわい」



    言いながら、夢野は渋々といった様子で懐からペンを取り出した。


    「おっ、そのペンをどうするの?」

    「まあ、見ておれ」


    言うと、右手の人差し指と親指でペンを持ち、口許までもっていった。




    ふぅ…と、柔らかく息を吹きかける。




    するとたちまち、ピンクと黄色のかわいらしい小さな花の小さな花束になった。



    「おお…すごい、きれいな魔法だね」

    「ふむ。こんなもんじゃ。MPとマナが足りておればもっと壮大な魔法がつかえたんじゃがな」



    環境と道具が整っていれば、という意味である。



    「これ、本当の花?」

    「いや、造花じゃ。魔法では生命を作り出すことはできん」

    「ああ、やっぱりそうか」


    そういうと、王馬は夢野の手から花を取った。


    そして問いかける。


    「夢野ちゃんは、本当の花のほうが好き?」

    「?うむ、まあな」

    「ふーん、そっか」



    手にした花を夢野の顔のほうに近づける。

    そしてそのまま髪をいじりだした。


    「……なにしとるんじゃ?」

    「俺はね、作られた偽の花が好きなんだよ」


    手が離れる。

    何をされたのかと手鏡で確認すると、先程出した花が髪飾りのように夢野の頭を華やかせていた。




    「うん。よく似合ってる」



    王馬にしては珍しく、やわらかで素直な表情で笑いかけた。



  9. 9 : : 2017/04/03(月) 10:36:34
    herthさんの新作だ…期待DEATH☆
  10. 10 : : 2017/04/03(月) 10:44:21
    >>9
    あざーっす!!
  11. 11 : : 2017/04/03(月) 11:19:14


    「偽の花ってさ、本物の花に劣っているように見える?」

    「まぁな…命があるってところで上回っているように感じるな」


    頭の造花をいじりながら、夢野は返答した。



    「ふーん、そっか。でもさ、偽の花ならずっと同じ形をまもってられるし、色あせもしないよ?それに、実際にない色や形の花も作れるんだ。ほら、偽物もいい気がするでしょ?」


    「枯れてしまうのも、一つの魅力だとも思うがな。じゃが…まあ、言い分は理解できる」


    「にしし、ありがとっ。俺さ、正直者だから嘘つけないタイプだけど、花だけは嘘のがお気に入りなんだよねー」


    「アホか。さっきから嘘ばっかりついとるじゃろ」


    ため息をつく夢野に対して、王馬は楽しそうに笑った。
  12. 12 : : 2017/04/21(金) 23:56:51
    部屋。

    何の変哲もない、ただの部屋。

    自分の安らぎの場となるこの寄宿舎、自分の部屋で、夢野はベッドに寝ころんでいた。


    別に眠いわけでも疲れたわけでもない。

    もはや習慣のようなもので、この部屋に入ると椅子ではなくベッドに向かうのだ。


    「……」


    自室だから何も言葉は発しない。ただぼーっと重力に身を任せ、寝ころんでいるだけだ。



    しかし、そういえば、と脱力した腕に力を込め、頭のほうへと持っていった。


    カサ、と音がして、ピンクと黄色の造花が白いシーツの上に落ちる。


    それを寝たまま眺めて、食堂での出来事を思い出す。



    王馬がこれを付けたのだった。別にそれは特別何かを意味するでもない。王馬もなんとなく夢野に付けたのだろう。


    分かってる。理解している。



    でも、何だろう…ちょっとだけうれしかった。


    王馬の手が頭に触れた。ぬくもりを感じて何かうれしかった。似合ってるといってくれたのがうれしかった。


    本当にちょっとだけだけど。


    やっぱり嘘ばっかでむかつくし、迷惑だ。でも彼のおかげで暗い気持ちから、あの時間抜け出せた。


    確かにあれは、元気の出る贈り物だったのだと夢野は思った。



    「……は」


    急に何故か、この花を頭に付けて喜ぶ王馬の姿を想像してしまい、似合ってなさ過ぎてちょっと笑った。
  13. 13 : : 2017/04/26(水) 21:34:21
    翌日。食堂にて。


    「いやーおはよう!今日もいい朝だね!あ、最原ちゃん。…く、首にキスマークついてるよ?えっ、まさか俺という人がいながら誰かと熱い夜を過ごしたっていうの!?」


    「えッ?な!そ、そんなわけないだろ!大体僕はそんな不誠実な人じゃ__…って違うよ!誤解されるから止めてくれない」


    「にししっ、こんなくだらない嘘に過剰に反応しすぎでしょ。ま、つまらなくなくていいけどさ!」


    「……いつまでくだらん事やっとるんじゃ。外に行け。うるさくて飯がすすまんわ」



    全く、くだらない。これから朝食を食べようというのに騒がしくしないでほしいものだ。


    ふぅ、とため息をついて食事を開始する。


    王馬は二つ左に離れた向かい側のほうに朝食のロールパンと目玉焼きとカルピスソーダ(朝にまで炭酸?)をもってきて座った。


    …今日は隣に来ないのか。いや、別に来てほしいわけではないが。


    パチッと、王馬と目が合ってしまう。


    「え、何々夢野ちゃん。もしかして隣にいてほしかった?」

    「……そんなわけがなかろう。むしろ来るでない、鬱陶しいから」


    意地の悪い笑みにそっぽを向いて、千切ったパンを口許に運びつつ夢野はいった。


    「えー、そんな悲しいことは言わないでよ。俺はこんなに夢野ちゃんのこと、好きなのにな!」

    「えっ……?」

    「なぁーんて、嘘だよ!本当は好きでも何でもないよ。むしろ嫌いかな…大っ嫌いだね」

    「………」


    一瞬でも心が揺らいだ自分に嫌悪し、それからちょっと傷ついた。

    「…夢野ちゃんは何でも真に受けすぎでしょ。嘘だよ、本当は嫌いじゃないよ?」

    「…何なんじゃお主。もうよい。ウチは飯を食うからのぅ…」


    王馬の本意はどうなんだろうか。好き?嫌い?

    こんなことを考えている自分が馬鹿馬鹿しい。だから頭を振って千切ったまま千切りっぱなしだったパンを口に放り込んだ。


    王馬はなぜか、何か言いたそうにこちらを見ていた。

  14. 14 : : 2017/05/19(金) 23:48:29





    ちょっと最近、自分がわからない。



    口の中でクタクタになったパンをアイスティーで流しながら思った。

    そう思うのは何かと言うと、奴、王馬のことを考えてのことだった。


    自分は王馬がウザったいと思うし、ちょっとムカツクだとか、そんなマイナスのイメージを持っていたはずなのだ。

    が。


    ごく最近は、それだけではなくなってきている。

    いや勿論うざいとは思うのだが…
    なんだか見てると、モヤモヤするというか。

    なんとも形容しがたい妙な気持ちに襲われるのだ。




    いつからだろう?こんな感情を抱くようになったのは。


    さぁ、細かいことは知らない。ただひとつ言えるのは、自分が取り出したあの造花を彼が彼の手で自分につけてくれたことが嬉しく感じたのは、本当だ。


    嘘じゃない。

    そして彼もまた、似合ってると言ってくれたのは嘘じゃないと感じる。


    嘘だらけの彼を見続けた中での素直な気持ちの表現に、もしかしたら揺らいでしまったかもしれなかった。


    (ギャップ萌え?……まさかのぅ…)


    ふー、と息をつく。


    一体自分はなんなんだろう。何がしたくて、何をしてもらうことを望んでいるのだろう。



    考えると頭の隅っこに王馬のあの意地悪い笑顔が浮かぶからムカつく。


    だから別に好きとかじゃない。

    別に、好きじゃない。



    でも、ほら、こうしてたまに目が合うとドキリとしてしまうのだ。


    本当、一体なんなんだ…

    「んあー……」

    「夢野さん大丈夫!?具合悪いんだったらゴン太が何とかするよ!」

    「…ありがたいが、別に具合は悪くないんじゃ。じゃが礼はいう…。お主紳士になりよるな。かーっかっか」

    「ありがとう!ゴン太は今ね、紳士に近づくためにこーひーを飲んでるんだ。ゴン太は砂糖入れてないのに、美味しく感じるんだ!もう紳士になるのも近いかもしれないよ!」

    「…よ、よかったのぅ」


    …さっき白銀がこっそり砂糖を入れてたのを見てたけど、ゴン太のために口はつぐんでおこう。


    夢野は残りの食事を消費しにかかった。
  15. 15 : : 2017/05/31(水) 19:21:19



    「んあー」


    自室のベッドでゴロゴロと転がりながら、特に意味もなく言葉を発する。





    暇だ。

    だからと言って魔法を行うのは疲れるのでやりたくない。


    しかし限りなく暇である。あいにく今日は眠くもない。これでは昼寝も出来ないだろう。むしろ疲れるだけだ。



    既に見慣れた自室の風景を、ぐるりと見渡してみる。代わり映えがなく、安定したただの部屋だ。


    「んあー…」


    本当に何もすることはなし、やりたいこともなし、出来ることも特になしで心底つまらない。


    ベッドに立てかけてある箒を指で撫でながら、ぼんやりとしていた。


    これは最原がくれたものだ。他にもこの部屋は、最原にもらったもので溢れかえっている。


    どうやってこんなもの入手するのかと聞くと、どうやら道に落ちてたり隠れているメダルを使い、購買部のガチャを回すそうだ。


    夢野はそのコインを見つけられたことはない。一体どうやって見つけているのだろうか、つくづく不思議だ。


    他にも夢野が喜ぶものばかり沢山、沢山。





    その中に、一つだけ。

    最原からではない物が飾ってある。

    相変わらず色褪せず、萎れず、可愛らしくそこにたっている。


    王馬が夢野に手向けた小さな造花だ。

    正しくは王馬がくれたものでは無い。自分が用意し、魔法を使う際の小道具にしたものだった。


    しかしこれは夢野にとって何か特別な意味を持つ。


    夢野は目をそっと閉じた。

    ありありと浮かぶ。あの時の王馬の珍しく素の顔、想像より大きく、しかしやわらかい手、高めの体温──


    「んあー!やめんか!ウチは別にあやつの事など…っ!」


    自分ながら乙女らしく気持ち悪いことを考えていると思った夢野は、気恥しさにブルブルと頭を振った。


    「だ、ダメじゃ……散歩。散歩に行くしか…」


    そうだ、暇ならとにかく外に出よう。

    ここにいても何も無いし、なんだか今は歩き回りたい気分だ。


    夢野は勢いよく起き上がると扉を開けて外へ出て行った。
  16. 16 : : 2017/06/07(水) 16:41:19



    相変わらずの晴天で、しかし暑くはなく寒くもない、管理されたかのような温度の中、夢野はただ歩いていた。



    来たばかりの頃は萌ゆるどころか茂って荒れてすらいた緑たちは、今では少し整備されている。


    近くではやはりエグいサルが草刈りしたり何らかの工事をしていてやけにうるさい。





    これでは穏やかのんびりと散歩、と言おうにも難しい。夢野はそう思った。



    まず普段から、なんの意味もなくただ歩くという行為をしない為、散歩自体を楽しめるかといえばそうでもない。



    でも取り敢えず歩いていた。



    よく見れば、普段気にかけない小さな花とか小石が無数にあって、少し面白い。




    下を見て歩いていた。




    下を見ながら歩いていると、なんだか自分がとてつもなく大きな、巨人になったような気がする。

    それがまたちょっと面白い。





    ああ、何だ、散歩も悪くないな。

    そう思った時、突如人影が現れ、夢野はノンブレーキでぶつかってしまった。


    「わぷっ」

    「…『わぷっ』なんて珍しい悲鳴の上げ方だね。珍獣なの??」

    「んなっ、う、ウチは珍獣なんかじゃな、……王馬か。なんだ王馬か…」


    「えー、何その反応!ぶつかっておきながらそれなの?ちょっと人としてどうなの?謝んないの?何なの?」

    「ん、んあー…すまんかった……」

    「にししっ、別にそんな怒ってるわけじゃないんだけどね!まぁ許してあげるよ」




    ぶつかった相手は王馬だった。


    何だかホッとしてしまうのは、夢野が王馬を舐めているからとかそういうことではない。多分。



    しかし取り敢えず王馬相手ならぶつかっても問題はないと思ってしまう夢野であった。



    「あれ、夢野ちゃん顔赤くない?え、何。俺にぶつかって興奮でもしてるの!?うわぁ~、夢野ちゃんは俺のことが好きだったんだ…。お断りだけどねッ!」


    「んあー!?べべべ別に全然何も違うんじゃが!ウチは王馬なんか好きじゃないわい!!?」

    「ああ、はいはい、オッケー。分かったからそんなに動揺しないでよ。そんな夢野ちゃんも可愛いんだけどさ?」

    「!!!」

    「嘘だよ!例のごとく嘘だよ!にししっ、やっぱ小学生みたいだねー。反応が!」

    「………んあー、そうか…それは良かったのぅ…」

    「そんな落ち込まないでよ…。まあ、危ないから今度は前見て歩いてね。じゃ!」


    「あっ、王馬!待てつのじゃ!」




    別れようとする王馬を、夢野は思わず呼び止めた。


    「んー、何?俺今忙しいんだよね」

    「あっ…あぅ…えーっと」



    呼び止めてしまったことを後悔しつつ、口から零れた言葉は夢野が意識したことではなかった。




    「う、ウチと…友達になって欲しいのじゃ!」



    はぁ?何いってんの?

    自分でもそう思って、激しい自己嫌悪を感じつつ、夢野は返答を待つ。







    対する王馬は。



    「……っ、ぁー…」



    おそらく夢野が見たことのない、王馬の困惑した表情のまま、何かを言いあぐねているかのようにうめき声を漏らしていた。



    「……?」


    予想外の反応に、夢野も困惑したように首を傾げる。


    てっきり馬鹿にされるかおちょくられるかだと思っていたが、どうやらどっちでもない。



    そしてようやく返ってきた言葉は。

















    「ごめん……無理だ」











    それだけを言い残し、王馬は校舎へ入っていった。
  17. 17 : : 2017/06/08(木) 22:14:06














    ……。


















    無理?



    無理ってどういう事なんだ?自分のことがそんなにも、友達になることさえ無理なほど嫌いということなのか?



    うっかり口から漏れだした言葉は、決して変な意味は持たない。




    ただ『友達になってくれ』と言っただけである。




    付き合ってくれ、だとか、そんなことを言った訳では無いのに。



    返ってきた言葉は、一言の謝罪と『無理』という拒絶の言葉、それだけ。




    「………うそ、じゃろ…?」




    しかし、いつも通り、嘘だとほうけて笑ったりしなかった。



    彼は…王馬は本気で、夢野とは『友達になれない』と言ったということだ。





    「…っ、そ、そうじゃ、ウチは別に王馬の事などどうでも良いのじゃ。だから…友達になれなくても、どうでも───」






    一人呟いて、しかしその言葉を言い切ることは出来なかった。







    予想以上にショックだったのだ。



    王馬に本当の拒絶をされたということが。




    そしてそれが、夢野の胸をきつく締め上げることになることが。





    「っ、何でじゃ。何でここまで苦しくて、…悲しいんじゃ…?」




    震える手で帽子をぐしゃっと握って目深に被りながら、自問する。



    何故友人になることを拒否されただけで、胸がいたんだのか、目頭に熱いものを感じるのか。












    「………部屋に戻るか」





    夢野は自答はしなかった。






    認めてしまうのが怖かった。





    既に拒否されているのに、自分が、王馬を『好き』だと感じてしまうのを認めることが、恐ろしかった。





    脚を引きずりつつ、夢野は自分の寄宿舎へと戻っていった。





    散歩なんか、しなければ良かった。









    相変わらず日は照っていて、緑は萌ゆり、花は綺麗に咲いていた。




    でもそれらは夢野の心を癒すでもなかった。
  18. 18 : : 2018/03/05(月) 22:38:39

































































  19. 19 : : 2018/03/05(月) 22:40:25























    ある日、入間と獄原が、死んだ。
















  20. 20 : : 2018/03/05(月) 23:08:52




    唐突の殺人に、衝撃のクロ。
    前回の学級裁判は、最悪の最悪であった。


    気づけば入間は死んでいて、獄原は自分はやっていない、知らないと叫んでいた。


    この学級裁判を混乱せしめたのは、なんといっても獄原の記憶の喪失。



    そしてそれは夢野の発言のせいでもあった。

    それが何となくずっとお腹の底で、つかみどころのない罪の意識として渦巻いている。

    気分はやっぱり最悪だ。





    それから、夢野の気持ちをもっと重く苦しくさせているのは……他でもない王馬小吉のこと。







    現時点の結論として、奴は最低の屑人間という評価を与えざるを得ない。


    無垢な獄原を騙しそそのかし、自分の手は汚さず入間を死に至らしめたその手腕。

    最後に見せた狂気的で邪悪な高笑い。




    どれをとっても最悪としか言いようがないのだ。


    あの意地悪くゆがんだ顔が脳裏に焼き付き、終わって数日たった今でも離れない。



    夢野は低く唸ると頭を振って嫌な記憶を追い払おうとした。

    奴はここにいない。いないのならば、忘れてしまうのが一番だ。



    がばっと頭まで布団をかぶり、きつく目を閉じる。








    何故か分からないが閉じた目のわきに涙が浮かんできた気がした。




    今、食堂での出来事を思い出してしまったのは何故だろう。


    あんなに酷い光景を見た後で、それでも頭の片隅、どこかで『あれさえも嘘じゃないか』とか思うのは。

    大切な誰かに裏切られたように胸が締め付けられる気持ちになるのは、何故。何故?






    言いようもない絶望感がしみこんだ布団にくるまり、夢野は浅い眠りにつく。

  21. 21 : : 2018/03/06(火) 20:34:48
    いつものようにチャイムが鳴り、夢野は気怠そうに食堂へ向かった。


    扉を開けると、生存者の皆がいる。


    いや……一人だけいない。

    王馬である。


    「あちこち探してみたんですけど……やはり、どこにも姿が見えませんでした」

    「……噂通りのかくれんぼの達人じゃな」

    キーボの言葉に、夢野はふー、とため息をついた。


    白銀とキーボが、もしかしたら先に外に出て行ったかもしれない、などと話している。


    だがそこで、無駄に存在感のある百田の声が食堂に響いた。


    「アイツのことなんざ放っておけ。それよりよ……俺の話を聞いてくれねーか?そろそろ俺の考えを話しておきてーんだ」



    百田の考え?いったい何だろうと思っていると最原が気まずそうに百田に続きを促した。

    やり取りがぎこちない。
    先日の学級裁判から、喧嘩というわけではないが仲たがいが起きているらしい。

    それを発達させたのは、百田の『最原』よびであるが……今はそれはいいだろう。


    百田は周囲をうかがうと何か独り言ち、それから夢野達に言った。



    「昨日言ったな。テメーらをここから出してやるって。でも、そのためにはテメーらの力が必要だ。……頼む。俺と一緒にモノクマと戦ってくれ!」


    「も、モノクマと戦う……?」


    百田は夢野達を必死に説得した。

    モノクマーズがいなく、エグイサルが動かない今がチャンスだと。
    俺たち全員で力を合わせてモノクマをぶっ倒すのだと。


    百田は自分たちならば可能だとさも自信気に言っているが、夢野は様々に不安に思った。


    「モノクマにはスペアがおる。倒してもキリがないのではないか?」


    そう不安の声を漏らすと、ならなくなるまでつぶせばいいと返ってきた。


    「で、でも奥の手を隠しているかもしれないし……この学園はモノクマの支配下だもん……」

    白銀も弱気につぶやく。

    そうだ。自分たちには到底できるはずがない───


    うつむきかけた時、頭上から声が降りかかってきた。





    「だったら、このままでいいのか?テメーらは、まだこのコロシアイを続けんのか?それでいいのかよ!?」

    「………」

    「状況を変えるには、戦うしかねー。終わらせるには、やるしかねーんだ。今立ち上がらなければ、いつ立ち上がんだよ!」



    この大声に、パッと目が覚めた気がした。


    皆の目から不安の光が抜け、闘志の炎が宿っていくのを感じ取った。

    士気が上がっていく。

    やる気が満ちていく。

    各々が、覚悟の台詞を口に出す。


    「決めました……ボクは、モノクマと戦います!」


    キーボがそういった時、夢野はわずかに燻っていた迷いを打ち消し、声をひねり出した。


    「……その言葉を待って居ったぞ。良かろう。ウチの力を貸そうではないか!」

    「……え?本当に待ってた?」


    白銀が訝しげに言ってきたが気にしない。



    最後に最原が頷き、満場一致でモノクマと戦うことに決まった。



    「今度こそやってやろうぜ。皆で、あの憎たらしいモノクマをぶっ潰すぞ!」

    「ボク達の力を見せつけてやりましょう!」

    「ウチの力を使うまでもないわい!」


    皆が力強く頷いた。




    「で。いつから始める?私は今からでもいいんだけど……」

    春川の問いに、百田が答える。


    「まずはしっかり準備する。それは俺がやっとくから、テメーらは夜時間になったら心の準備して体育館に集合だ!」





    そのあとは戦いに向けて、朝食をたらふく食べた。

    皮肉なことにこの学園に来てから規則正しくなったこの生活にも、終わりは近い。


  22. 22 : : 2018/03/06(火) 21:29:21

    自由時間は眠って過ごした。

    不安を吹き飛ばし、満腹に食事をしたためか、久しぶりに何もかも忘れて睡眠をむさぼれた気がした。



    そして迎えた夜時間。


    体育館にいる一同の目の前にあるのは、山のような武器の数々。

    どうやらすべて、春川の研究室にあるものらしい。


    殺傷力は、ご察しの通りである。

    夢野は緊張でゴクリと喉を鳴らした。


    覚悟を決める。戦って、勝つ覚悟。


    「今まで俺らは、何度挑戦してもうまくいかなかった……それは、俺らが諦めたせいだ。でも今回だけはあきらめるわけにはいかねー!今度こそモノクマをぶっ倒して、このふざけたコロシアイを終わらせ──」


    その時突然割って入ったとある人物の声で、戦慄が走った。





    「奇遇だねー。オレも終わらせようと思ってたんだー」



    振り返った視線の先に、いつのまにかその悪魔は立っていた。




    「お、王馬君!?」

    最原の焦ったような声が聞こえる。

    百田は怒ったようにつめよった。



    「て、テメー!何しにここへ──」

    「あ、動かないで。コイツの餌食になりたくなかったらさ」


    王馬は真顔で淡々と言い、爆弾を見えるように掲げた。


    躊躇なくそれを投げそうな様子に一同がたじろぐ。


    「ま、これでふっ飛ばされたくなかったらおとなしくオレのはなしを聞けってことだよ」



    王馬はやはり真顔。だがそれがとてつもなく恐ろしいように夢野は感じた。




    「で、何の話をするの?」

    「お、お主が言い出したんじゃろ!?」



    恐ろしいとは思いながらも突っ込んでしまったのは自分の悲しい性だ……。


    そんなことを考えながら、王馬の話を黙って聞く。


    『自分ともう一人生存者を選び、その人物以外を皆殺しにしてこのコロシアイを終わりにする』

    要約するとこうである。


    誰がそんな話に乗るものか。ろくなことにはならないに決まっている。

    案の定誰も肯定しなかった。


    だが王馬は残念そうなそぶりも見せずに言ってのけた。


    「いやー、びっくりだねー。ここまで思い通りの展開になるなんてさー」


    本当は皆にコロシアイを終わらせる覚悟があるのか確かめたかっただけだという。

    またおなじみの嘘、であった。


    実は今手に持っている爆弾も、けったいな色のハンマーも入間が作った〝対モノクマ用最終兵器”らしい。



    だらだらと話を続ける王馬に怒った春川がとびかかり首を締めあげた。

    危険を感じた百田が慌てて春川を制止すると、王馬は床にどさりと倒れこんだ。


    「ま、全く……酷いな。仲間にこんなことをするなんて」


    何を言うか。もうお主なぞ仲間でも何もない。

    夢野はそう思った。いつの間にか王馬に対する胸が締め付けられるようなあの感情は霧散していた。


    王馬はは苦しそうにあえぎつつ、自分はもう干渉しない、自分の信じたい道へ進めと言い残し、覚束無い足取りでフラフラと去って行った。




    残されたのは、あのエレクトハンマー。

    夢野達は疑いつつもそれを握る。




    目指すはあの地下道。何度も挑戦して挫折した、あの地下道だ。

    確固たる覚悟をもって意気揚々と、一斉に裏庭へ駆け出した。
  23. 23 : : 2020/10/25(日) 21:28:48
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

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    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…


    72 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:59:38 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    お願いです
    本当に辞めてください


    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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