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「おめでとう、君は選ばれた!」
- 東京喰種トーキョーグール
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- 1 : 2017/01/10(火) 22:50:45 :
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「おめでとう。君は選ばれた。」
暗い地下牢に響き渡る、老人の喜々とした声。
唐突に始まった『コレ』に、俺は黙って見ているしかなかった。
「何に選ばれたんだ?って顔をしているようだね。それじゃあ教えてあげよう。」
「君は『成功体』だったんだよ!80人以上収監されている実験体の中で、唯一の成功体だったんだよ!」
相変わらず…という表現が正しいのだろうか。やはり老人は喜々として語っているのをやめない。
そもそも俺は何の成功体になったんだよ?収監されていた80人はどうなった?
疑問は沢山残った。
「ところで、君は顔に大きな火傷の痕があったはずだねぇ。」
「そのバンダナ、取ってみなさい。」
「なぜ?俺がお前の意見に従う義理も必要もないはずだが。」
「そんな固いこと言わないでさ。ほら。」
バッと、素早く俺のバンダナを取り、目の前に鏡を置く。
「………。」
「おや、反応が薄いね。火傷の痕が『治っている』というのに…」
目の前に映っていたのは、原型を留めた、普通の人の顔だった。
自分が自分じゃない、だなんてこと、世の中にあったんだな、と改めて思い知らされた。
「改めて…おめでとう!君は今日から『喰種』だ!!」
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- 2 : 2017/01/10(火) 22:59:16 :
- はじめまして。つい先程登録を終えた新参者です。早速作品を書かせていただきました。
ご感想などは→http://www.ssnote.net/groups/2300/archives/1
このスレッドにしていただけるととても助かります。
文才も想像力もないですが、やる気と根性でどうにかしたいと思います。
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- 3 : 2017/01/10(火) 23:08:55 :
- 「それで、俺に何をさせたいんだ?」
「何をさせたいか?ははっ、喰種になったんだから、それくらいは分かっておかなくちゃねぇ。」
「君には『カネキケン』になってもらいたい。」
「…カネキケン?」
「聞いたこともないような名前だな。誰だそいつは?」
「…喰種の世界じゃ名の知れたような、結構凄い人物なんだけどねぇ…。今や推定SSSレートの隻眼の王…つまりは、今東京に君臨する喰種の中で、最も強いと言っても過言じゃあないね。」
…それを、俺にやれって?
なんで俺が、そんな強さを手に入れなくちゃならないんだ?
なんで俺が…強くならなくちゃいけないんだ?
「それで?俺をカネキケンにしてどうするんだ?」
「どうもしないさ。…私はね、『確実なカネキくんを作ること』を目標としていてね…その後君がどうなろうと、私には知ったこっちゃないのだよ。」
「…随分なマッドサイエンティストだな。」
「ははっ、よく言われるよ。」
悪意のこもったようなその笑いに、俺は不快感を覚える。
それに、世の中に喰種なんてバケモンを作り出して、それを送り込み、本人は高台で見物ってか…随分ご立派なものだ。
「さて、そこで君には選ばせてあげよう。」
「俺が…選ぶ?」
「さっきは私が選んだからね。今度は君に選ばせてあげようと。」
「そいつは光栄なことだ。…んで、何を選ばせるって?」
「君は、強くなりたいか、弱くなりたいか…さあ、どっちだ!?」
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- 4 : 2017/01/10(火) 23:18:02 :
- 強く…なりたい…。
人一倍強さに固執しているわけではないが、俺が弱いせいで今こんな地下牢に閉じ込められていたっていうのは事実だろう。
だとしたら、もっと強くなって…俺を守れる俺になりたい…。
俺に、胸を張れる俺になりたい。
…弱くは、なりたくない………。
「さあ、決断はできたね?」
「俺は…俺は………」
「カネキケンになる。」
「よく決断したね!!それじゃあ、今の状況を説明させてもらおうか。」
「君の身体に埋めてあるのは仮の赫包…『クインケ』っていうのなんだけどね…。それを今から取り除いて、君が望む『強い赫包』を埋めてあげようと思うんだ。」
「地行くんの考えた『Qs施術』も大変素晴らしく、80体の実験台全てが『初期段階においては』成功をしていた。」
「しかしね…あのQs施術は、弱点が多すぎた。本来の喰種の力を使えない。…ということで、成功した君だけは特別、『生の赫包』を使って、埋め込んであげようと思ったってことさ!」
「難しい話はわかんねえよ。…それで、赫包を選ばせてくれるんだよな?」
「あぁ、みんなSSレートは超えるような良質な赫包だぞ。アオギリ幹部のノロ、エト、タタラの3体に…ヨシムラやリゼもある。さあ、どれを選ぶ?」
「全部だ。」
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- 5 : 2017/01/10(火) 23:29:00 :
- 「…本当に?」
「あぁ、本当だ。全部ぶっ込んでやるよ。それが『カネキケン』なんだろ?」
「あはは…カネキケンはリゼの赫包だけなんだがねぇ…まあ複数の別の赫包を持ってみるのも面白いかもしれないね!尽力させてもらうよ。」
「…これは、カネキくん以上の大物になるかもしれないね。」
まるで子供のように目を輝かせる目の前の老人。これ程までに気持ちが悪いものはないとは思うが、それすらも耐える。
それが、俺が力を手に入れる、最善で最速な道だから…。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
その苦痛や激痛をも超えるような、死ぬレベルの痛みと恐怖心に、思わず絶叫した。
「はぁ、これくらいで音を上げるのが…がっかりだね、さっきまでの威勢はなんだったのやら。」
やれやれという表情で見つめるそいつに、俺は何を思ったか、必死で絶叫するのを耐える。
そうだ、ここを耐えきれば、俺は力が手に入る。俺は自由が手に入る。俺は…俺は…俺は…
「さて、一つ目のリゼちゃんの赫子は、あるでー度慣れてきたみたいだね。それじゃあ、次の赫子、いってみようか。」
「…!!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
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- 6 : 2017/01/10(火) 23:37:37 :
それから、何日…何週間…何ヶ月と経っただろうか。
それすらも記憶にない、曖昧で、意識すらはっきりとしたい日々が続いたんだと思う。
老人…嘉納がやっていることは、最早人間ですらない。常識や道徳、人間性すらもない、ただ己の好奇心を満たすために人を利用する、最低で最悪な人間だった。
だけれども、これを耐えきった俺は、今までとは違う力を手に入れた。
「俺が…カネキケンだ。」
嘉納から最後に貰ったのは、小さな手鏡のようなものだった。
自分が喰種だといつでも認識できるように…と。
「…忘れるものか。嘉納。」
「俺はもっと強くなって、お前を殺す。」
恨んでいる訳じゃない、はず。
事実、俺のこの力は嘉納によってさずけられた。むしろ感謝するべきだ。
…だからどうした。俺は俺が正しいと思ったから、あいつを殺すだけだ。
「好奇心に溺れて死ね。嘉納。」
そう吐き捨てると、俺は地下牢から出て、街中へと出ていった。
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- 7 : 2017/01/10(火) 23:44:47 :
「せ、隻眼…ッ!?」
隻眼…俺のこのオッドアイのことを言っているのだろうか。
確かに、喰種は両目に赫眼が宿ってはいるが、片目だけ赫眼だったところで、然程大差はないだろう。
そもそも、こいつはどうして、隻眼なんてものを知っているんだ…?と考えれば、答えは一つしかなかった。
目の前にいるコイツは、まさに喰種…。今を必死に、死にものぐるいに生きている喰種だ。
「……危害は加えない。『喰種』について教えろ。」
「は、はぁ…?アンタ、自分が喰種なのに、喰種のことを知らないのか?」
「…あぁ、その通りだ。俺は俺のことも、俺の置かれている状況も知らない。」
「…アンタ、名前は………?」
「俺は………」
「カネキケン、だ。」
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