この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
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密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの微睡』
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- 1 : 2014/10/20(月) 10:54:46 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『エルヴィン・スミス暗殺計画』
(http://www.ssnote.net/archives/2247)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスとの1週間』
(http://www.ssnote.net/archives/4960)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの苦悩』
(http://www.ssnote.net/archives/6022)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの審判』
(http://www.ssnote.net/archives/7972)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの否応』
(http://www.ssnote.net/archives/10210)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの溜飲』
(http://www.ssnote.net/archives/11948)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの流転』
(http://www.ssnote.net/archives/14678)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの渇望』
(http://www.ssnote.net/archives/16657)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの血涙』
(http://www.ssnote.net/archives/18334)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの証明』
(http://www.ssnote.net/archives/19889)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慕情』
(http://www.ssnote.net/archives/21842)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの天命』
(http://www.ssnote.net/archives/23673)
★巨人に右腕を喰われたエルヴィンと
最愛のミケを失うが、エルヴィンに仕えることになった
隠密のイブキとの新たなる関係の続編。
『進撃の巨人』の最新話に私の想像(妄想)を書き足した
オリジナルストーリー(短編)です。
オリジナル・キャラクター
*イブキ
かつてイヴと名乗りエルヴィンの命を狙っていた隠密の調査兵 。
生前のミケ・ザカリアスと深く愛し合っていた。
ミカサ・アッカーマンの年の近い叔母。
※SSnoteのルールに則り感想等を書いていただくグループコミュニティを作りました。
お手数ですが、コメントがございましたららまで
お願いします⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
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- 2 : 2014/10/20(月) 10:57:12 :
- 調査兵団に属するエルヴィン・スミスはただ眺めていた。自分が死ぬはずだった処刑台から、驚き
戸惑う民衆の顔を。
また多くの民衆も死ぬはずだった男が生きていているという事実だけでなく、信仰するがごとく心を傾けていた王が偽者だったと突きつけられ、ただ歪んだ笑みを浮かべていた。
3つの兵団を束ねるダリス・ザックレイ総統が現体制の崩壊を宣言する傍らでエルヴィンは自分の
命が死から免れたことに安堵することなく、ただ立ち尽くす。その眼差しは虚ろで力強さはない――
エルヴィンの働きをザックレイが民衆に諭した直後、二人は馬車でその場を離れることになる。
憲兵団師団長のナイル・ドークが多くの新聞記者に囲まれ、この革命の質問に答えていた。
エルヴィンが馬車に乗り込もうと、足先を踏み台に乗せたとき、ナイルの働きが視界に入り込み、思わず動きを止めていた。
兵士として少し痩せて窪んだエルヴィンの眼差しは、ナイルの背中を捕らえる。これからさらに険しくなるであろう、人類の方向性の説明に彼は苦慮しているのだとエルヴィンは睨んだ。
(これでよかったのだろうか……)
自分の命が助かったとしても、エルヴィンはこれからの人類を気遣えば虚ろな眼差しが変わることはなく、馬車にその身を滑り込ませた。
馬車が処刑台から離れていくと、エルヴィンは弱々しい声でその胸に抱える後悔をザックレイに向けて語りだす。
「王政がいくら浅ましく下劣であっても…今日まで人類を巨人から生き永らえさせた術がある……」
蹄の音は静かに鳴り響き、目的地に向かう。エルヴィンが険しい道を選択した理由を問い、口をつぐむ。ザックレイは腕を組みながら一呼吸置いた。
エルヴィンへの眼差しは冷めていて、呆れているようにも見える。ザックレイが胸の内を話すにつれエルヴィンは首をかしげ目は大きく見開いていく。それはザックレイの口調は愉快そうで、声に出して笑いたい気持ちを抑えていたからだ。
「――私は…昔っから王政(やつら)が気に食わなかった……」
「……はっ?」
王政へ忠実に勤めていたはずのザックレイの一言にエルヴィンは珍しく少しばかり頓狂な声を上げた。
ザックレイは自らを偽り長年に渡り王政に尽くしてきたのは、クーデターの準備のためだと告白した。
その頬は緩んでいて、まるで好きなものを手に入れた子供のようにも見えた。
エルヴィンは驚きで息を呑む。ザックレイの顔をまじまじと見つめているが、本心を話していく彼の表情は険しさを取り戻していく。
「私には、この革命が人類にとって良いか悪いかなどと興味がない…まぁ、私も大した悪党だろう……しかし、それは……」
ザックレイが乾いた声でエルヴィンに問いかける。エルヴィンは目を見開いて頬を強張らせた。
強さよりも弱さを滲ませる眼差しにザックレイは確信する。
「君も同じだろう…?」
「えぇ…そのようです……」
「君は死にたくなかったのだよ、私と同様に人類の運命よりも個人を優先させる…理由があるようだな? 君の理由は何だ? 次は君が答える番――」
「はい…」
「あぁ、そうだ、エルヴィン……」
エルヴィンが初めて己の夢への思いを吐き出そうとしたとき、それをザックレイが阻止した。わけ知り顔で腕を組んだまま正面を見据えている。
「悪党といえば……君の腹心、リヴァイに続いてもう一人、訓練兵にならず仲間に引き込んだ者が
いるそうだな――」
イブキのことを指しているのだろうと、エルヴィンはすぐさま気づく。正直に話すべきと思いながらも心なしか戸惑っていたとき、ザックレイはお構いなしに話し続ける。
「表向きは……調査兵団諜報部所属となっているようだが……」
「えぇ…」
「そういえば、かつて『切り裂きケニー』という殺し屋がいたのを覚えているか?」
唐突に話題を変えるザックレイにエルヴィンは腫れた左目を見開き、再び首をかしげた。
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- 3 : 2014/10/20(月) 10:59:18 :
- 「…はい、覚えています…『都市伝説』であると言われてましたが、現実に存在したという…」
「実際に殺された憲兵の中に…惚けた死に顔を晒した者もいたそうだ……男に手をかけられ、
そんな終わりを迎えるはずはない。 きっと女と何かをしていて、無様な最期を晒したんだろう……。
そういう殺し屋の女も――」
「いや、イブキは……」
「エルヴィン…!」
今度はため息交じりで半ば呆れた声のザックレイが、初めてイブキの名を口にする彼を遮る。
「いや、私は…ケニーだけでなく、『イヴ』という女の殺し屋もいたらしい、という話をしているまでだ…。
新たな腹心となったそのイブキとやらの働きは君ら調査兵団に、というか君個人に必要性があるようだな……」
遠くを見つめるようなザックレイの眼差しにエルヴィンは再び口をつぐむ。イブキとの関係を見透かされているようで、エルヴィンは戸惑いと微かに焦りの色を浮かべた。
「さて…長くなったが、改めて個人を優先させた君の理由を聞かせてもらおうか――」
ザックレイの尻目がエルヴィンに注がれる。イブキの話題を出され戸惑いそのセルリアンブルーの瞳は泳いでいたはずだが、今度は憂いの色に変った。傷つき腫れたその口元から子供の頃からの夢が語られた。
ザックレイはエルヴィンを連れ、移動の最中、御者に対し、不意に馬車を止めさせた。
「――エルヴィン、君は…少し休みたまえ、だが本当に少しだけだが…」
「いいえ、私は休まなくても…」
「いや、人前に出るとなると……」
ザックレイはエルヴィンの口元に冷めた一瞥をくれる。
御者がドアを開くと、二人は馬車から降りてエルヴィンは目の前の施設の休憩室に通された。
「仄暗くて小さな部屋はもう、君は好まないだろうが……ここの窓もドアも、君の自由にしなさい」
エルヴィンは一人、その部屋に残され、ザックレイは御者と共にその場を後にするが、しばらくして迎えの者をよこすという。静かに佇みながらエルヴィンは消毒液の匂いがその部屋で漂っていることに気づく。 処置室を兼ねた休憩室にエルヴィンは通されていた。
不在の休憩室の机にはいくつも薬が収められた箱が置かれていて、少し前にザックレイが自分の顔に視線を送ったことを思い出す。口元をおもむろに触れ、再びそこから出血していることに気づいた。
「総統は…傷の手当をしろと…言いたかったのか……」
自嘲気味に傷ついた口端を強張らせ、手早く薬をとって手当てし始める。
手当てをした後、しばらく経っても、ザックレイの部下が迎えに来る様子はなく、エルヴィンは壁際のソファに腰掛けた。
目の前のテーブルを少し隔て、向こう側には救護用のベッドが設置されている。
左手を軽く握って膝に起き、部屋を見渡しながらその部屋がイブキの部屋に似ている気がしていた。
(君は…リヴァイたちと共に…今頃、どんな作戦に挑んでいるのか…イブキ…)
イブキを想い、カーテンが開かれた窓の外をエルヴィンは眺める。久方ぶりの正午近くの自然の光を眩しがり、左手で目元をかざす。それでも暖かく包み込むような光にまぶたはゆっくりと下り、夢と現実の間の心地よさに浸ってるときだった――。
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- 4 : 2014/10/20(月) 11:02:27 :
- 『エルヴィン…! 大変!! こんなに傷ついて…!』
突然、イブキが目の前に現れ、顔の傷の手当てをしている。心配そうに眉をしかめ渋い顔で彼を見つめていた。
「イブキ……」
エルヴィンは彼女の名前を口にして抱きしめようとしたとき、その左手は空を切った。
目を覚ましたエルヴィンは驚きの色を隠せず、その手のひらに視線を落とす。
「俺は…夢に見るほど彼女のことを……」
微睡(まどろみ)の直後、視線を落としていた左手を強く握った。これまで多くの仲間たちを死に
追いやり今回もリヴァイたちと心中覚悟で挑んでいたはずだった。それでも本心はイブキだけは手放したくない、という気持ちがその覚悟とは違うところに存在しているようで、エルヴィンの心は複雑に入り乱れていた。
「すべてを失っても構わない…そのはずだが……」
失った右腕に一瞥をくれ、再び窓の外に目をやる。情けないほど、その眼差しは弱々しい。
「…失くして、得たものは……」
エルヴィンの脳裏からイブキの顔が浮かんでは、消えることはなかった。その直後、ザックレイの
部下が迎えにやってきた。エルヴィンはすっと立ち上がり、奥歯をかみ締めその本心を飲み込み再びザックレイと合流することになった。
隠密から調査兵に生まれ変わったイブキはハンジ・ゾエやリヴァイたちと同じ馬車に乗っていた。
特別に舗装されていない農道を駆ける車輪の轟音が夜明け前の静けさを蹴散らしていた。
イブキは自分の知らない世界の話すハンジに耳を傾ける。王政の裏の顔ために働いてきたが、
真の王のことはまったく知らなかった。見当がつかなくても、育ての親である頭(かしら)は人知れず何かを企んでいたのだろうとイブキは睨む。
また、これから向かう礼拝堂で初めて巨人に挑むかもしれない、そう思うとイブキは汗ばむ手のひらを強く握り大きく深呼吸した。
御者として手綱を握るアルミン・アルレルトはイブキの息使いに気づき肩越しに話しかけた。
「どうしたの、イブキさん…?」
「えっ…あぁ、私が巨人を見たのはあの実験場にいた2体が初めてで…」
「あの2体は調査兵団に捕らえられ、専用施設で固定されていたし、でも巨人は――」
アルミンは話しながら自分が巨人に飲み込まれそうになった瞬間を思い出す。手綱を握る手のひらに力がこめられ、縄が食い込むようだ。
「イブキさん…立体起動装置は簡単に扱えても巨人と対峙となれば…
これまでのように、うまくいくとは思えないよ! 覚悟すべきだよ」
本音を押し殺したようなアルミンの口調にイブキは静かにうなずく。それでも激しいままの胸の鼓動にそっと手のひらを添えた。
「落ち着け…」
再び大きく深呼吸して、胸の動きと共に手のひらが上下したとき、手の甲に温かく、柔らかなベールに触れられたような感覚が伝わる。
(ミケ…お願い、私だけじゃない…みんなを守って……)
イブキは自分を見守るミケ・ザカリアスの温もりを感じて、すがる気持ちで胸元のシャツをぎゅっと握った。目の前に屈むリヴァイは正面を見据えるが、相変わらず眼差しは厳しい。
彼が礼拝堂に向かう理由はエレン・イェーガーやヒストリア・レイスを奪還するだけでなく、頭でもあるケニーの命を奪うためではないか、とイブキは踏んでいた。
頭に育ててもらったイブキであったが、それは人を殺めることを教えられ、またその夫人からは女の身体を使った別の殺め方も教わっていた。
(私も…頭に会えば、リヴァイに加勢して……手にかけてしまいそう……)
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- 5 : 2014/10/20(月) 11:03:33 :
- 唇をかみ締めイブキは覚悟を決めて、背中で手綱を握るアルミンに再び話しかけた。
「ねぇ、アルミン…私が巨人と対峙したら、誰よりも早く命が危ぶまれるかもしれない……でも人相手なら私は再び殺めることだって……」
「僕だってもう…人を殺してしまった……一人殺せば何人殺しても同じとは思わない。だけど、人としての尊厳を失いながら挑まなければ、この世界は…何も変らないかもしれない…」
イブキを諭すアルミンの声は力強さの中に少し危うさも含むとイブキは感じる。またその確固たる
心積もりはエルヴィンにも似ている気がしていた。
「アルミン、あなたの命だって、大切よ…。 それじゃ、こうしない? もし敵の人間があなたを
襲うようなら、私はあなたを人間から守る。 巨人が私を襲いそうになったら…私を守って…」
「うん……でも、巨人が目の前に現れたら、僕らは…同時に――」
イブキはアルミンの背中を抱きしめたい気持ちを抑え、肩に手をそっと添えた。
「私たちは生き延びるの……きっと、それができる」
自分の背中でイブキの優しい声が響く。アルミンはその声が自分に向けられたものではないと目論み、咄嗟に口をついた。
「イブキさんは…生き延びて、団長によっぽど会いたいんだね……!」
照れながらいうアルミンの背中は少しずつ熱を帯びる。イブキは自分の心のどこかの本心に気づかれたようで、唇に微かな笑みを浮かべた。
「そうね……。だけど、エルヴィンを始め、私たちはみんなの想いに報わなければいけない…」
二人は前方を駆ける馬と暗がりに灯された松明を見据える。アルミンはイブキの温かい手のひらを感じて、今度はエレンを想った。
幼い頃、一緒に遊んでいただけでなく、故郷を追われてもずっと一緒に過ごしてきたはずなのに、
エレンと巨人を結びつける行動を見たことがなかった。それ故にハンジの話に耳を傾けながらも、
いつ誰を食べて能力を得たのか、いくら考えても心当てさえない。
松明のゆらゆらと動く炎を見つめる眼差しに力強さが宿る。エレンが巨人化すると知った直後、
駐屯兵団の砲弾を受けそうになりながらも、彼から頼りたい、と熱望されたことをアルミンは思い返す。
(エレン、今度は僕らを頼りにして……必ず助け出すから――)
アルミンを始め皆は目的地に近づくにつれ、口数が少なくなっていく。未知なるモノが待ち構えているであろう、礼拝堂を目指す道すがら、この中の誰が命を失うのか、と想像するだけで挑む覚悟が萎えそうになる。
しかしながらその想像が巡れば革命はいとも簡単に頓挫してしまう。
それでも壁外で感じた何者にも捕らわれない自由の風をこの狭い世界でも吹かせたいと挑む。
覚悟を支えるのは皆と一緒に平凡な日々を笑顔で過ごしたい、ただそれだけだった。
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- 6 : 2014/10/20(月) 11:03:54 :
- ★あとがき★
皆様、いつもありがとうございます。
今回の最新話は巨人の秘密の核心に迫る展開で、それに私の妄想がどれだけついていけるか、
というのがテーマでした。それでも、どうにか仕上げることが出来てホッとしたと同時に来月号が
楽しみであります!またエルヴィンが夢を語ろうとした、照れたような戸惑う表情は、非情な指揮官で
あるはずなのに、初めて人間臭さ垣間見たような気もします。それで、私のSSでもそうであってほしく、
命が助かっても、実はイブキへの思いは変らず、それが強かったのだと感じて戸惑うエルヴィンが
いてもいいのでは、と思いました。来月は二人は再会できるのでしょうか?
乞うご期待!またよろしくお願いいたします!
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまでお願いいたします!
⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
Special thanks to 泪飴ちゃん( ˘ ³˘)♥ ゚+。:.゚
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