Rebel forces 清書
46
-
- 1 : 2014/10/19(日) 22:13:31 :
- 清書用!
-
- 2 : 2014/10/19(日) 22:23:43 :
- ーーーーーーーーーーー時は、2061年
地球は、めざましい発展を遂げていた。
数人の科学者によって、人工知能まで開発され、世の中は機械主体の時代となっていった。
しかし、度重なる人口爆発によって、世界人口は120億人を突破。
地球は飽和状態になってしまった...
そんな事態を打破するため、世界政府が取った策は......
<人工知能による、死の管理>
つまり、人口が一定の値を超えると、人工知能によって<処分>される人間が決められ、処分対象になった者は後日殺処分される、というわけだ。
こうすることで社会の不利益にならないよう、合理的に人の死をコントロールし、人口を抑制している、というのがこの世界の現状である。
しかし、この政策は一般市民には知られていない。
何故なら、この政策は一般市民には伝えられていなく、<処分>も秘密裏に行われているからだ。
秘密裏...具体的に言うと事故に見せかけたり...と、言うわけだ。
そのようにして、政府はこの事実を隠している。
このようなことが人々に知れれば、人々が反乱を起こす可能性があるからだろう。
処分が決定された人間にだけ通知が届き、裏でコッソリと殺害する。
そして遺族等には事故死や行方不明等で片付けてしまう。
それが何度も繰り返され、何度も隠し通されてきた。
この政策で殺された人々が一体何人いるのか、もう政府の人間にもわからない。
毎日のように処分が行われているのだから当たり前だろう。
今も何処かで、人々が殺されているのかもしれない...
-
- 3 : 2014/10/19(日) 22:25:05 :
- ーーーーーーーポクポクポクポクポクポクチーンポクポク......
周りには木魚と鈴の音がこだましている......
ホープ・オースティンは葬儀場に立ち尽くしていた。
見送る相手は、彼の親友アデル・ベイカーである。
葬儀場には誰かのすすり泣く声も聞こえる。
そんな声にもらい泣きしそうになりながらも、ホープは親友に別れの言葉を述べる。
-
- 4 : 2014/10/19(日) 22:26:27 :
- (事故死...か...)
と、ホープは警察官から聞いた死因を反芻する。
ホープは【事故死】という死因に違和感を覚えたいた。
(最近、事故多すぎないか?)
そんな違和感が解消されることもなく、葬儀は進んでいく......
-
- 5 : 2014/10/19(日) 22:27:36 :
- 葬儀が終わり、帰路についても違和感は払拭されない。
(そういえば親父も事故死、だったっけ...)
そんな事を思いだしてしまい、さらに違和感は募っていく。
(交通ルール守らない人多くなってきてるもんな~)
などと適当に結論付け、違和感から逃れようとするが、それもうまくいかない。
そうこうしている間に、家に着いた。
-
- 6 : 2014/10/19(日) 22:29:26 :
- 家の中は気が滅入るほど静寂に包まれていた。
まあ、独り暮らしなのだから、当たり前といえば当たり前だが......
それでもホープには、いつもの何倍も静かに、この世界に独り取り残されてしまったかのようにも感じられた。
それが、親友を失ったための孤独感なのか、違和感に対する不安感なのかは、彼自信にもわからなかった。
「...寝るか。」
この微妙な感じから逃れたいと思ったのか、彼は早々に寝床についた。
-
- 7 : 2014/10/19(日) 22:31:06 :
- それから何時間経っただろうか...
(...寝れん...)
ホープは未だに、妙な違和感から逃れられていなかった。
(ネットでも見るか...)
ホープは立ち上がり、手を前に出す。
すると、大気中に画面が写し出された。
(さて...何を見ようか...)
等と、掲示板の画面をスクロールしていたホープだったが...
ピタッと、ある記事のところでスクロールが止まった。
(一年間に世界で起こった事故の件数?)
半分興味本意で、もう半分は違和感から逃れたい気持ちで記事を開く。
瞬間、
画面の中に膨大な量のデータが表示された。
恐らくどこかの誰かが、ハッキングして盗んできたのだと思われるそのデータには、実に20億もの事故を記録していた。
(なんだよ...コレ...)
ホープは震える手で画面をスクロールする。
とてつもない不安感に押し潰されそうになりながら...
これ以上近づいてはならない真実の片鱗に、触れようとしていることさえ気づかずに...
-
- 8 : 2014/10/19(日) 22:38:10 :
- ーーーーーーー
ホープは、朝の日差しの眩しさに目を覚ました。
あの日から、もう3日も経っていた。
結局、彼はあの後すぐに寝た。
そうでもして気を紛らわせないと、心が潰されそうだったから。
未だにあの不安感は拭われていなかった。
と、同時にどうしてもあの事実を忘れることができなかった。
忘れるつもりもなかった。
なんかしらの計画によって、世界中で事故が起こされ、それに巻き込まれて親友が殺されたのならば、それを許すわけにはいかなかったからだ。
ホープは決心した。
(...このままじゃ埒があかない。なんとしてもアベル、いや、世界中全ての事故の真相を解き明かしてやる!)
と。
ホープは家を出た。
(まずはアベルの家にでも行くか。何か手がかりがあるかも知れないし。)
彼は歩き出した。
たったひとり、この世界の真実を掴む為に。
-
- 9 : 2014/10/19(日) 22:39:49 :
- ーーーーーーーー
アデル・ベイカー様
おめでとうございます。
あなたは晴れて、<不要物>と見なされました。
なんの話だかわからないでしょう。
まあ、当たり前なのですが。
では、事情を説明します。
まず、この地球が飽和状態になってしまっているのは知っていますね?
もう7年くらい前からずっと飽和状態なのですが、
何故、この飽和状態で人口増加がストップしたのだと思いますか?
だってそうでしょう。
このまま人口増加が進んで世界中で食糧難。食糧を求めて世界中で戦争勃発し、世界が大打撃を受ける。
それが普通のシナリオのはずでしょう。
では何故人口増加が止まったか。
答えは簡単。
世界政府が人工知能を用いて人口をコントロールしているから、なんですよ。
つまり、人工知能が世界に不要な人間を計算で導きだし、その<不要物>を<処分>する。
こうすることで人口増加を抑制していたという訳なんです。
ご理解いただけましたか?
さて、では本題に入りたいと思います。
...あなたは<不要物>と見なされたので、とっとと<処分>されてください。
というわけで、9月23日 0時0分、カリアティード聖堂の前に来てください。
あ、もちろん拒否権はありませんよ?
拒否なんかしたら...そうですね、あなたの家族に夜道を歩くときは気をつけて、とでも言っておきますか。
では。あなたが約束通り来てくれると願っています。
だってこれは<不要物>のあなたが、世界に貢献できるチャンスなのだから___
-
- 10 : 2014/10/21(火) 19:50:44 :
- ホープがアデルの住んでいたアパートでこの文書を見つけたのは、家を出てから6時間ほど経ったあとだった。
もっとも、その内の3時間はアパートの大家さんに入れてもらえるよう交渉していたのだが。
(............)
ホープは暫く唖然としていた。
「くそっ...」
ホープは小さく吐き捨てると、アデルの家を出ていく。
後ろで大家が何か文句を言っていた気がするが...最早どうでもよい。
(じゃあ、親父も......政府の...奴らに...)
なんとも言えぬ怒りが込み上げてくる。
それは人を殺して平気な顔をしている政府の人間に向けられたものか、
それとも、近くの人間を失っておきながら、世界の現状に気づかずに平和に暮らしてきた自分に向けられたものか...
-
- 11 : 2014/10/21(火) 19:54:51 :
- (あれは...マーシャ?)
ホープは帰る途中、友人のマーシャ・アンクティルを見かけた。
話かけようとも思ったが、誰かを待っているようなのでそれはやめておく。
そもそも、今話かけて明るく話せる気もしなかった。
彼氏でも待ってるのかな、などと適当に推測するホープだったが...
次の瞬間、
突如、彼の視界に入ってきたトラックは、マーシャを撥ね飛ばし、そのまま視界から消えていった。
彼女の体が宙を舞い、10Mほど先に落下する。
「マーシャァァァァァァァァァァ!!」
彼は思わず叫んだ。
そして駆け寄る。
彼女の着ていた明るい色のワンピースは、もう既に赤く染まっていた。
救急車のサイレンが聞こえてくる。
どうやら近くを偶然通りかかったようだ。
彼女は大急ぎで運ばれて行く。
ホープはただそれを茫然と見つめることしかできなかった。
彼は確かに見た。
彼女に突っ込んだトラックが、政府の紋章を付けていたことを。
まあ、一瞬の出来事だったのでそれを見た者はホープしかいないだろうが......
プツッ_______
彼の中で、何かが切れる音がした。
-
- 12 : 2014/10/21(火) 22:23:27 :
- ーーーーーーーーーー
チリンチリン...
鈴の音が鳴る。
ここは下町の武器屋だ。
なかなか品揃えがよく、一部のギャングにはかなり定評があるらしい。
「いらっしゃい」
立派な髭を持ち、かっぷくのいい主人が野太い声で言う。
ホープは持っている金を全て出し、言った。
「この金で買えるだけ武器を売ってくれ...」
主人は驚いたような目で彼を見ると、
「お兄さん...相当黒いものを見てきたようだね...反乱でも起こすつもりか?」
と、言った。
「.........................」
ホープは何も言えなかった。
主人は少し間を空けると、
「まあいい。金があるんならあんたは客だ」
主人はそう言うと、店の奥へと入っていった。
-
- 13 : 2014/10/21(火) 22:24:57 :
- 「そうだな...だったらAR_258はどうだ?殺傷能力は高くないが、かなりの連射性能を持っている」
などと、よくわからない説明を受けながら、ホープは武器屋を回っていた。
「なんでもいい...とにかく殺せれば...」
主人はそうかい、などと適当に相づちを打ったあと棚からひとつの武器を取り出す。
「じゃあこれだ。M_256。一発で複数の弾を発射するグレネードランチャーと考えてくれればいい。ま、その分威力は落ちるがな」
「じゃあそれと...さっき見せてくれた、AR...278だっけ?それをくれ。あと、弾をたくさん頼む」
「258な。わかった。ちょっと待ってろ」
主人はそういって店のさらに奥へ行くと、何か小包を持ってきた。
中には幾つかの手榴弾が入っていた。
「餞別だ。貰ってくれ。......俺もこの国に絶望してここまで堕ちた身だからな。お前みたいな奴は放っておけないのよ。ま、生きて帰ってこれたら、一杯付き合ってくれ」
「おっさん...ありがとう...」
ホープは礼を言うと店を出た。
もう後戻りは、できない。
-
- 14 : 2014/10/22(水) 23:00:53 :
- ーーーーーーーーーー
ホープは武器を隠し持って、バスに乗っていた。
バスの行き先は、世界政府のマドリード支部だ。
本当は本部のあるアメリカに行きたかったのだが......
空港の金属探知機を突破する手立てが思い付かなかったので仕方なく、という感じだ。
(...よし)
ホープは深く深呼吸する。
バスが停留所に着いた。
彼はバスを降りると、支部の入口へ向かって歩き出した。
-
- 15 : 2014/10/22(水) 23:03:54 :
- マドリード支部は、本搭といくつかの建物から成っている。
本搭は完全防音なので、ここで少し騒ぎを起こしても問題ないだろう。
そう思い、ホープが入口をくぐると、早速何人かの黒服に囲まれた。
「何をしに来た。ここは一般人の入る場所ではない。そうそうに立ち去りたまえ。」
黒服の一人が無機質な声で言う。
黒服の人数は6人。
ホープは一呼吸おくと、銃を抜きこう言った。
「何をしに来たか? 決まってんだろ! この腐りきった政府を粛清しに来たんだよッ!!!」
-
- 16 : 2014/10/22(水) 23:05:13 :
- 引き金を引く。
それと同時に、小規模な爆発が複数起こり、黒服達をまとめて吹き飛ばした。
近くにいたホープも巻き込まれて多少吹き飛んだのだが...
「............」
ホープは立ち上がり、本搭に向かって走りだした。
周りの建物から、黒服がぞろぞろ出てくる。
それを見たホープは建物に向かい、ショットガンを発砲する。
放たれた銃弾は建物を爆破させ、無数の瓦礫をとばす。
それらは、一気に黒服へ降りそそいだ。
黒服たちは瓦礫を潰され、悲鳴をあげる。
ホープはそんな彼らの前を横切り、支部の本搭に入っていく。
-
- 17 : 2014/10/22(水) 23:06:59 :
- 本搭の中はいやに静かだった。
外の騒ぎに気づいていないのだろうか。
まあ、完全防音なので気づかないのも無理はないのだが...
「確かこの時間は会議中だったな...会議室は何処だ?」
ホープは取り敢えず右に曲がる。
すると、また複数の黒服がいた。
黒服は彼の姿を見るや否や拳銃を抜こうとする...
が、もう遅い。
黒服が銃を抜いた頃には、ホープは引き金を引いていた。
爆音と同時に黒服は吹き飛び、そのまま絶命した。
その数秒後、声が聞こえた。
「おい!あそこに銃を持った男がいるぞ!!」
ホープがゆっくり振り返ると、そこには数十人の男がいた。
まあ、本搭のなかで銃声が聞こえたら、集まってくるのも当然だろう。
格好からして、政府の人間なのは間違いない。
ホープは銃口を彼らに向ける。
それと同時に、男たちは「ヒッ!」、と声をあげる。
ホープはゆっくりと口を開く。
「お前らの所為で...あいつはッ!!アベルはッ!!」
彼は強く奥歯を噛み締める。
自分の力で、歯が砕けそうになるほどに。
彼は引き金に指をかけた。
その時、一人の男が言った。
「すまなかった!!」
ホープの動きが止まる。
「お前の怒りはもっともだ。あの政策を知ってしまったんだろう? だが、仕方なかった。金ならいくらでも払う。だからどうか、許してくれんか...?」
「そんなに命が惜しいか...?」
その言葉に、男はビクッゥとした。
「所詮は誰かの命を犠牲に、永らえてきた命だろう? それの何が惜しいんだ」
男は黙ってしまう。
「今更謝ったってもう遅い。死んでしまった人はもう戻って来ないんだ。だから今度は、お前らが死んで償え!!」
ホープは今度こそ引き金を引こうとする。
しかし、次の瞬間、彼の左腕に激痛がはしった。
-
- 18 : 2014/10/22(水) 23:10:44 :
- 「ぐうぅ...」
腕が射抜かれていた。
焼けるような痛みに、ホープは思わず呻き声をあげる。
声が聞こえた。
「おいおい、なんだこりゃあ? ひでぇ有り様だ。」
声がした方を振り向くと、そこには機械兵をつれた30歳程の男がいた。
「なんだお前は...」
ホープは傷口を押さえながら問う。
「ん? 俺か? 俺はアーヴィン・バザルゲット、天才科学者だ。」
アーヴィンと名乗る自称天才科学者に、ホープは
「ハッ!! 全く天才には見えないね。」
と、毒づいた。
「お前結構傷つくこと言うね。これでも俺はあの<人工知能>を作ったんだぜ?」
「ッ!?」
男の口から述べられた言葉に、ホープは驚愕する。
だが、すぐに銃を構えこう言う。
「そうか。じゃあお前も、死んで償え。」
ホープは迷うことなく引き金を引いた。
銃声が響く。
しかし、アーヴィンが倒れることはなかった。
彼についていた機兵の一つが、盾となったからだ。
「へぇ、拡散型のグレネードランチャーか。いいもん持ってるねぇ?」
と、アーヴィンは軽い調子で言う。
「チッ!!」
ホープはもう一度引き金を引こうとする。
だが、彼の手によって引き金が引かれることはなかった。
機兵によって、腕を失ったのだから...
-
- 19 : 2014/10/22(水) 23:11:46 :
- 鮮血が飛ぶ。
「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
例えようのない痛みに、ホープは悶絶する。
しかし、そうしている間に機兵は2撃目を浴びせようとする。
どうやら敵と認識されたらしい。
ホープは2撃目を転がって避けると、外へ飛び出した。
「こんなとこで...死んでたまるかッ!!」
彼は走りだした。
-
- 20 : 2014/10/22(水) 23:13:07 :
後方から機械の駆動音が聞こえる。
振り返ると、機兵たちがすごいスピードで迫ってきていた。
彼らはホープに銃口を向けながら狙いをさだめている。
「くそっ」
ホープは、餞別に貰った手榴弾をばらまき、振り切ろうとする。
が、その威力では彼らの動きを阻害するに至らなかった。
「チィッ!!装甲固すぎんだろ!!」
ホープは舌打ちをしながら走る。
「あった...!門だ!」
外に飛び出る。
しかしその時、無数の機兵が彼に向かって発砲していた。
体中を痛みが駆け巡る。
それでも彼は走り続けた。
生き延びて、いつか必ず報いるために。
-
- 21 : 2014/10/22(水) 23:14:04 :
- 門を出ても、機兵たちは追いかけてくる。
「ハァッ...ハァッ...」
ホープにも、疲れが見えはじめてきた。
(ここから西に、いりくんだ森があったはずだ... そこに逃げ込む!)
本来なら彼は、倒れていてもおかしくない状況だった。
左腕からは滝のように血が流れ、先程の銃撃でさらに負傷。
下手をすれば出血多量で死ぬ可能性もある。
そんな状況で彼を支えているのは...
執念。
ただそれだけが彼を支え、突き動かしている。
彼は全力で走る。
後ろで銃声が響き、体に痛みがはしる。
それでも彼は、ただただ走り続ける。
-
- 22 : 2014/10/22(水) 23:15:23 :
- ーーーーー森についても、機兵は追ってきていた。
「くそっ...しつけぇ!!」
ホープは手榴弾をばらまく。
それでもやはり、機兵の動きは止まらない。
「くそぉ!」
とにかく逃げる。
走りはじめて30分程経った頃だろうか...
ついに、機兵の砲弾がホープを襲った。
まともにくらい、吹き飛ばされたホープは近くの崖を転がり落ちる。
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
-
- 23 : 2014/10/22(水) 23:17:37 :
- 落ちたところは、崖から13M程の所だった。
枯れ葉がクッションとなり、助かったらしい。
機兵が上から見下ろしている。
ホープが死んだと判断したのか、機兵たちは去っていった。
(へへ...ラッキー...)
ホープは安堵した。
それと同時に
(はやくここから離れないと...)
と思い、立ち上がろうとするが...
力が入らない。
「あ...れ?」
もう一度立ち上がろうとするが、やはり力が入らない。
「おか...しいな...」
やがて意識も朦朧としてきた。
視界がぼんやりとしている。
(まさか...俺死ぬ...のか? こんな...とこで...?)
もうほとんど前が見えない。
薄れゆく意識の中で、彼は言った。
「アデル...親父...ごめん...仇...打てなかった......」
そしてホープは、静かに目を閉じた。
-
- 24 : 2014/10/22(水) 23:27:35 :
ーーーーーーーーーー
ホープは薄暗い光の中で目を覚ました。
「あれ...?」
彼は困惑の表情を浮かべた。
「生きてる... もしかして、夢...?」
彼は自分の腕を見る。
彼の腕は切断されていた。
(夢じゃない... じゃあ、ここは?)
「おっ、起きたか!」
困惑する彼に、声がかけられた。
彼が声のした方を向くと、そこには金髪ボサボサヘアーで、いいかげんな服装の男が立っていた。
「ここは...?」
と、ホープが問うと男は
「ここは反乱軍の支部だ。そして俺は反乱軍のリーダー、エドガー・アウデンリートだ。」
と答えた。
「反乱軍...?」
「あぁ、お前もこの世界で行われてる政策は知ってんだろ?」
「ああ......」
「ここにはその事実を知ってしまい、世界政府を恨む連中が集まる。ここにいるやつはみーんな、世界政府の粛清を目指しているわけだ。お前もそうだろ?」
「....ああ...まあ...」
ホープは戸惑いながら答える。
「だよなぁ、じゃなきゃ一人であんな反乱起こさねぇよな? なら、お前は今日から仲間だ。一緒に世直ししようじゃねぇか」
「え...?」
事態を理解しきれないホープに男は一言、こう言った。
「歓迎するぜ。ホープ・オースティン」
1話ーーー完ーーー
-
- 25 : 2014/10/27(月) 08:53:24 :
- ーーーーーーーザッザッザッ...
足音が響く。
アーヴィン・バザルゲットは森の中を機兵たちとともに歩いていた。
目的は先の反逆者、ホープ・オースティンの回収である。
しかし、いくら探しても彼は見つからない。
痺れを切らしたアーヴィンは
「おいおい... ホントにここなのかよ?」
と、機兵たちに問う。
「ハイ。アノ反逆者ハ、我ラノ砲撃ヲ受ケ、コノ地点ニ落下シマシタ。彼ノ状態カラ見テ、ココカラ離レルコトハ不可能デショウ」
機兵の一人が無機質な音声で答える。
「...てことは、誰かがここから連れてったってことかよ。あー...嫌な予感しかしねぇ...」
アーヴィンは気だるそうな声で言う。
「嫌ナ予感、ト言ウト?」
「反乱軍の奴等が関わってるんじゃないかと思ってな。だとしたら、ホントにめんどうだ」
彼は溜め息を吐く。
「ホントにめんどくせぇ... なぁ、エドガー。お前もそう思うだろ?」
そう言うと、彼は歩き出す。
「行くぞ。居ないもんを探してもしょうがない。居なかったって報告して、早く帰ろうぜ?」
いつも通り、彼は軽い調子で言った。
しかし、その目だけは何処か殺気を孕んでいた。
-
- 26 : 2014/10/27(月) 08:57:18 :
ーーRebel forces 第2話 『A Brief Rest』ーー
-
- 27 : 2014/11/02(日) 08:03:14 :
- ーーーーーーーーーー
「ハァ!?」
閑散とした部屋に、ホープの声がこだまする。
「どうした。変な声出して」
「どうしたって... あんたが変なこと言い出すから...」
「え... 変なこと言ったか? お前を歓迎するって言っただけだぞ?」
エドガーはきょとんとした顔でホープを見る。
「歓迎するって... 反乱軍にか!? 何で俺がそんな物騒な組織に...」
「何言ってんだ。一人で反乱起こす方が物騒じゃねぇか」
「うぐぅ!?」
核心を突かれ、彼は言葉につまる。
-
- 28 : 2014/11/02(日) 08:05:59 :
「け、けど俺が入る理由なんてねぇじゃねぇか。第一、俺はあんたを信用できない」
「ははっ、まあそうだろうなぁ。けど、お前一人でどうするつもりだ」
「一人でもなんとかできる... 実際一人でもあそこまで健闘できたんだ... もっと修行すれば...」
「ムリムリ。お前が殺してきたのは、平和で鈍りきった黒服たちだろ? 本物はあんなのの比じゃねぇぞ」
必死に弁解しようとするが、それも遮られる。
「ああもううっさい! とにかく入らn」
「あーあー。誰かさんを森から運んで来るの疲れたなー。重かったなー」
急にエドガーは妙な棒読みで恩を売ろうとする。
「てめっ... 恩を売りやがって!!」
部屋の中で、こんな話が小一時間も続いた。
-
- 29 : 2014/11/02(日) 08:07:03 :
- 「あー、もうわかった!仮入軍だからな!!」
____結局、ホープが反乱軍に仮入軍する、という形で話は決着した。
お互いがお互い、譲歩しあったというわけだ。
「おうおう、仮入軍な。ま、すぐに入軍したくなるさ。単純なお前のことだし」
「なんだと!!」
ホープはまたも噛みつきにかかる。
見てわかる通り、この二人の相性は最悪のようだ。
「もういいから噛みついてくるな。はやく皆にお前を紹介しなきゃだろ。新しい仲間なんだから」
「だから仲間じゃね...」
「あーもう、うるさいうるさーい」
もう一度噛みつこうとしたホープだったが...
今度は出鼻を挫かれた。
口論では勝てないと悟ったのか、彼はエドガーにおとなしくついていった。
-
- 30 : 2014/11/03(月) 16:07:27 :
- エドガーについて行きたどり着いた場所は_____
とても反乱軍の支部とは思えない賑わいであった。
「なんだここ...!」
驚きの色を隠せないホープをよそに、エドガーは収集をかける。
「おいてめぇら!集まりやがれぃ!!」
爆発音。
比喩表現抜きでそのような声であった。
(うるさっ... どんな喉してるんだよ...)
などと、ホープが適当に考えている間に、人がわらわら集まってきた。
「リーダー、一体なんのご用で?」
彼らのうちの一人、ドレスを着た女性が問うた。
「いやな、新しい仲間ができたもんだから紹介しようと思って...」
いやだから仲間じゃねぇよ!
と、思ったホープだったが口論では負けるので黙っておく。
すると、
「「「「「「だーっはっはっはっはっ!!!!!!!!!」」」」」」
一同が一斉に爆笑しだした。
「新しい仲間ができたから紹介って... 転校生かよ! 相も変わらず、リーダーのギャグはキレッキレだねぇ!!」
彼らの内の一人が言う。
それに対し、エドガーも
「そうだろぉ。」
などと言って笑い合っている。
(なんだよコレ... イメージと全然違うぞ...?)
そこでやっとエドガーが本題に入る。
「まあとにかく、今日このホープ・オースティンクンが入軍したわけだ。入ったばっかだから色々教えてやれよ?」
その一言に、さらに周りは爆笑する。
「だから転校生かっての!! ヒィー、腹痛ぇ」
いや何が面白いんだよ!!と、困惑するホープにやっと声がかかる。
「まあ、なんだ。よろしくな!」
彼らが言う。
そこは雑だな、と思ったがもう気にしないことにする。
(取り敢えず、今のでわかったことがある......)
(......反乱軍馬鹿だ...)
-
- 31 : 2014/11/03(月) 16:08:39 :
- 「なんだ... 反乱軍馬鹿だ、とでも思ったか?」
ホープの顔を見て、エドガーが問う。
「いや、別にそんなこと思ってねぇよ...」
と、見え見えな嘘をつく。
...が、
それを聞いたエドガーは
「お前、わかりやすいな」
と言った。
やはり嘘は一瞬で見破られたらしい。
......このやり取りが終わった辺りで、やっと周囲の笑いが途絶えた。
するとエドガーはまたもや爆発音を発する。
「さあこれで終わりだぁ!! てめぇら戻っていいぞ!!」
その言葉を聞き、彼らは各々の席へ戻っていった。
-
- 32 : 2014/11/03(月) 16:09:05 :
- ーーーーーーーーーー
あの後は特に何もなく、そのままホープは床についた。
...が
(やべぇ... 寝すぎて無駄に早く起きちまった...)
ご覧の有り様である。
(さっきカレンダー見たらあの日から4日経ってたよ!? 3日も俺は寝込んでたのか!?)
などと困惑しながら、仕方なく支部の中を見て回ることにする。
-
- 33 : 2014/11/06(木) 15:51:28 :
- それからいくらか経った頃だろうか。
(ここ何処!? ヤバい迷ったかな!? てか何ここ暗い怖い! 一人で冒険しなきゃよかった...)
先日世界政府の支部で暴れた奴とは思えない所業である。
(てか何でこここんなに広いし深いの!?今自分がどの辺りにいるかさえわからないよ!?)
などと、ホープが思索していると、前から人影が近づいて来た。
それに気づいたホープは前方へ視線を向ける。
そこにいたのは先程の紹介(?)の時も見かけた、ドレスの女性であった。
-
- 34 : 2014/11/06(木) 15:52:17 :
- 「あんたは...」
ホープはゆっくりと顔をあげ、問う。
それに対し、女性は答える。
「私? 私はローダ。ローダ・ベイツよ。」
「ローダ...さんですか」
ホープの言葉に対し、彼女は即座に突っ込みをいれる。
「あら... 別に敬語じゃなくていいのよ。何? そんなに私がおばさんに見えるの?」
ローダはジト目でホープを睨む。
ホープはその目にしどろもどろしながら
「い、いやぁ、まさか... ね、ねえお、お姉さん?」
と、誤魔化そうとするが、最早自白しているようなものである。
-
- 35 : 2014/11/06(木) 15:56:26 :
- そんなホープの様子を見て彼女は「クスッ」と笑うと本題に入る。
「...で、なんでこんな所にいるの?」
その問いかけにホープは顔を赤くしながら
「え... いや、その......道に迷ってしまって...」
と、答えた。
「ふぅん... まあここもかなり広いしねぇ...」
ローダは興味なさげに言う。
その態度にホープは
(なんでそんな興味なさそうなんだよ! 聞いてきたのそっちだろ!?)
と思ったが、わざわざまた空気を悪くするのもなんなので、そこには触れないでおく。
-
- 36 : 2014/11/06(木) 15:57:31 :
- 「..............」
「...............」
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
「そ、そういえばローダさn...ローダは何で反乱軍に?」
沈黙に耐えれなくなったホープは、純粋に疑問に思ったことを訊ねる。
が、その後すぐにホープは選択を失敗した、とも思った。
反乱軍に入った理由なんて暗い過去を進んで話してくれる人がいるだろうか。
悲しい過去を思い出させてしまうだけではないか、と。
そんなホープの心配を他所に、彼女はゆっくり語り始めた。
-
- 37 : 2014/11/06(木) 15:59:14 :
- 「人工知能の死の管理。それは知ってるでしょ?」
「ああ... 俺もそれを知って、反乱起こした奴だからな」
「あれって世界の不利益にならない用に殺す人を決めてるって言うけど、誰しもが不利益を被らない演算結果なんてでると思う?」
その言葉を聞き、ホープはおや?と思った。
確かに、全ての人が被害を被らないなんて、いくらなんでも無理なのではないか。
「そう。あれって結局政府や主要国家、政府が敵に回したくない国が不利益を受けないだけで、実際は結構...」
そこで彼女は一旦話を区切る。
束の間の静寂が訪れた...
そしてまた、彼女はゆっくり口を開く。
-
- 38 : 2014/11/06(木) 16:00:19 :
- 「私はね、後発発展途上国で生まれたの」
後発発展途上国______発展途上国の中でも鉱山資源に乏しく、開発の進んでいない国のことである。
「そこでもね、例の死の管理は行われてるんだけど...」
彼女は少し溜めてから
「労働人口が減りすぎて、子供でさえ苦役をしなかればならたくなっちゃって...」
「..................」
ホープは黙って彼女の話を聞く。
「ある日、苦役に堪えられなくなって......弟が死んだわ」
-
- 39 : 2014/11/06(木) 16:02:09 :
- 「え...?」
ホープは愕然とする。
そんなことも気にせず、ローダは続ける。
「それに、たくさんの子供たちが苦しんでるのも見てきた... 私はその事態に対して、何もしない政府が憎かった。それに子供たちを救いたかった... だから反乱軍に入ったの」
彼女は話終えるとふぅっと息を吐く。
「そうか... 聞いてしまってすまない...」
「ま、人工知能の死の管理のことを知ったのは、そのあとなんだけどね」
彼女はわずかに微笑む。
そしてわずかの沈黙の後、ホープの後方を眺めると
「あなたたち... いつまで隠れてるの? 出てきなさいな」
と言った。
すると...
ホープの後方の柱から複数の男たちが出てきた。
-
- 40 : 2014/11/06(木) 16:03:42 :
- 「あなたたち... 人の話を盗み聞きなんて、趣味が悪いんじゃない? ...で、そこで何してたの?」
ローダは強気な口調で問う。
それに対しエドガーはニヤニヤしながら答えた。
「いやぁ... やけに早い時間からホープ君がウロウロしてるからつけてたんだよ... なぁ皆」
「なっ......」
それを聞き、ホープは赤面する。
それもそうだろう。
半端じゃない馬鹿っぷりが露呈したのだから。
-
- 41 : 2014/11/06(木) 16:04:37 :
- 「いや~ 面白かったぜぇ。めっちゃテンパってるんだもん! おいちゃんと録画できてる?」
「ばっちりっす!!」
などと、彼らは笑いあっている。
「てめぇら!! 今すぐ消せ!! マジでお前らブッ飛ばすぞ!!」
ホープは赤面しながら大声を張り上げる。
「いやですぅー。 こんな貴重な映像、消しちまったら勿体ねぇだろ。 それに、交渉材料にもなるしな」
「てめっ...」
ホープがもう一度大声を張り上げようとしたところで、エドガーの持っていたビデオカメラが何者かにひったくられた。
ローダだ。
彼女は流れるような動作でデータを消すと、カメラをエドガーに返す。
「ああっ!! おい何で消しちまうんだよ!! いい交渉材料だったのにぃ!!」
「そこらへんでやめておきなさいな。 まだ夜中なんだし。 ほら、皆も部屋に戻りなさい」
ローダがそう言うと、彼らは去っていった。
もっとも、エドガーだけはなにやらブツブツ言いながらその場に残ったのだが...
-
- 42 : 2014/11/06(木) 16:05:15 :
- 静寂が訪れた...
そこで、ホープはあることに気づく。
(あれ? やべぇ道聞くの忘れた... どうしよう... こいつに聞くのも癪だしな...)
彼は、ブツブツ言っているエドガーを横目で見る。
その目線に気づいたエドガーは
「なんだ? 反乱軍入る気になったか?」
と、問う。
それに対し
「い、いや別に」
と、ホープが答えると、エドガーは適当に相づちを打ってまたブツブツ言い出した。
-
- 43 : 2014/11/06(木) 16:10:04 :
- 「なぁ...」
三分ほど経ったところで、エドガーが口を開いた。
「あいつの話、聞いたんだろ?」
あいつというのは、恐らくローダのことだろう。
「ああ...」
ホープは答える。
「どう思った?」
「どう思ったって... 俺は復讐の為だけに戦ってたんだ。けど、彼女は違って... 言葉にできねぇけど、とにかく私怨の為だけに戦ってるんじゃなくて、世界の不正を正す為に戦ってる... それがすごく尊敬できると思った」
「ここにいる奴は皆、誇れる過去なんか持っちゃいねぇさ。 けどあいつらはその過去と決別し、新しい未来を作るために戦ってる。その意志だけは皆一緒だ。 俺たちなら、必ず新しい未来を作れる。 俺はそう思ってるんだ。」
「そうか...」
薄暗い廊下に、彼らの声だけが響いていた...
-
- 44 : 2014/11/06(木) 16:11:16 :
- ーーーーーーーーーー
「ふあぁ...」
ホープは騒がしい物音に目を覚ました。
(てか、もう夕方じゃねぇか...)
結局、あの後は自力で自分の部屋に辿り着き、布団に入ったのだが...
そのときにはもう既に9時になっていた。
彼は目を擦りながら、食堂の扉を開ける。
すると________________
昨日と同じように、とても反乱軍の支部とは思えない賑わいであった。
「はは... 毎日のようにこの賑わいなのかよ...」
ホープは半ば呆れつつ食堂に入っていく。
-
- 45 : 2014/11/06(木) 16:13:02 :
- 「おぅ!! ホープ!! こっち来い!!」
ホープが声のした方を見ると、そこにはエドガーが座っていた。
「なんだよ...」
「まあ、座れ座れ」
エドガーは強引にホープを自分の隣に座らせる。
どうやら少し酔っているらしい。
「いつもこんなことやっているんだな...」
「ん、あぁ。 楽しい方がいいじゃねぇか」
「そうか... あ、そうだ。俺反乱軍入るから」
「そうかそうか... え?」
エドガーは気の抜けたような声を出す。
-
- 46 : 2014/11/06(木) 16:13:46 :
- 「なんだよ... 反乱軍入るって言っただけだろ?」
「え... いや... え? それは嬉しいんだが... なんで急に?」
「あんた昨日言ってたろ? 反乱軍なら必ず新しい未来が作れる、って。俺もそう思った。それだけだ」
ホープははっきりと答える。
「それに... その未来も見てみたいしな!」
彼は微笑んだ。
「そうか... じゃあ改めて、歓迎するぜ、ホープ・オースティン」
エドガーは手を差し出す。
「...ああ」
ホープもそれに応じた。
外ではいつの間にか、月が輝いていた。
- 作成者情報