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下書き②投稿用(アサヒさん)

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  1. 1 : : 2014/05/06(火) 18:02:13
    相手から受け取った原稿を、今度はこちらで、自分のオリジナルで仕上げて行きましょう!
  2. 2 : : 2014/05/07(水) 01:34:41
    ――何だ…この音は…あぁ、俺は…喰われてしまったか…憎くて仕方ないヤツに…
    俺の身体はどうなるんだ…巨人の野郎に少しずつ食い千切られ、飲まれていく

     自分の体の中に『骨』が存在するという感覚がする耳障りな音。それは自分の体を
    バラバラにする不愉快な旋律を奏でる。まさに目の前の憎き巨人の憎い口元がその音を
    自分の体で感じている――

    ――俺が…俺でなくなっていく…こいつ、骨を砕きやがった…

     脈は打っているかもしれないが、その感覚も霞んでゆく。まるで幼い子供が
    無邪気に積み上げた積み木をイタズラにぶち壊される。そんな感覚に襲われる。
     すべてが、何もかもが、まるで存在しなかったように消えてゆく。

     わずかな命とわかっていても、心に沸いてくる感覚。

     痛み、疑問、畏怖と隣合わせの恐怖…そして不安――

     自分が消えそうだからこそ、沸いてくる普段なら感じないであろう感覚。
    かすかに視界に入り込む旧市街地の古びた街並み、
    その上にはどこまでも綺麗に晴れ渡る青空。 なぜか、苛立ちを覚える透明な青。
     悔しいくらい綺麗な晴れ空の下、消えゆく自分の命。

    ――…ビクリとも身体が動かない…力が入らない…

     巨人の口元を軸にして、体が上下に揺れる。痛みは伝わらない。それでも…
    握られた剣だけは手放してなるものか。

    ――あれ…なんで、こんなところに『木の実』が…?
    確か兄弟たちと、木登りしたとき食べたヤツ…なんで…? 違うこれは…そうか

     耐え難い痛みから唇から飛び出した自分の血の塊が噴出すと再び自分の顔に落ちる。
    紅くて生の証である血。まるで命の実でも落ちてきたかのような儚い願い。

     いつかは来るであろうと思っていた、生の終わりが迫るこの瞬間。
    小さな願いもむなしく、ほんの一瞬で終えると思っていたのに予想外に長引いている。

     きっと、これは罰なんだろう。
     人が死ぬとき、その人は故郷の懐かしい親兄弟を思い出すのだろう。
    そう、今までの俺は思っていた。確かに自分の血で懐かしい瞬間が少しだけ過ぎる。

     だが、いざ自分が本物のその立場になったとき、揺さぶられる脳裏に浮かぶ瞬間は
    全く違うものだった。
  3. 3 : : 2014/05/07(水) 10:01:04
     耳にわずかに残る調査兵団団長、エルヴィン・スミスの力強い演説の声
     
     皆の愛馬の蹄の音

     むせ返るような砂埃の匂い

     色に意味を持つ打ち上げられた信煙弾

     巨人の姿…人間のようになぜかそれぞれ違う顔…地響きのような足音、気持ち悪い匂い

     死んでいったかつての仲間たちの笑顔と、間逆で耳に残る断末魔。目の奥に焼きついた死に顔

    そして…それらをすべてをこの身体から押し流すように思い起こされるのは…

     あの人の声だ――

    ――あぁ…この世界の残酷さの中に…俺の手のひらに乗せられる一粒くらいの
    希望が転がっているのなら…誰か、お願いだ…あの人をここに呼んできてくれ…

    ――――
    ――

  4. 4 : : 2014/05/07(水) 10:03:34
     壁外調査前日。壁の中から見上げる空は相変わらず広い、と見上げていると
    リヴァイ兵長が俺に声を掛けてくださった。

     正直、嬉しさよりも驚きを隠し切れなかった。

     壁外調査の前日で多忙を極める兵長が、こんな末端の兵である俺たちの訓練を
    視察目的で、わざわざ足を運んでくださるなんて――。思いも寄らなかった。

     兵長は、他の兵士たちに目もくれず、真っ直ぐ俺のところに歩いて来た。
    視線も真っ直ぐ俺に向けらると、その鋭さにしり込みする。
     心のどこかで、兵長から褒めて頂けるのかと期待していた。
     理由は単純で今回の模擬巨人戦闘訓練では、他の誰よりも俺は多くの討伐数を
    稼いでいたから――

     兵長の感想は思いのほか短かった。


    「…なってない」

     氷で出来た刃のような声が俺のプライドにゆっくりと突き刺さる。

    「え…」

    「あんなスピードで飛んでたら、後衛がおいてかれちまうだろうが…」

     兵長の舌打ちがさらに追い討ちをかけるようだった。
     ただ…ショックだった。俺の一番の強みは立体機動のスピードなのに。
     
     プライドが傷ついたと実感しながら、自分を根底から否定されたような気がして
    思わず反論の言葉を投げかける。口の中は渇ききっても、口答えをせずにはいられなかった。

    「…お言葉…で、ですが……立体機動中はスピードを落とせば落とすほど、
    巨人に捕まりやすくなる……わざわざ失速するなんて………いや、すいません……一般兵の分際で――」

    「…お前の立体機動の能力の高さは知っている…もちろん、書類上じゃない。
    今まで壁外で見てきたんだよ、おまえの飛ぶ姿を」

    「こ、光栄です…!」

     先に空振りの期待に終わった褒めて頂ける瞬間が思いかけずやってきたと思うと
    俺の頬は自然に綻んだ。

    「そして…それ故に…お前に何が足りないのかもわかる」

     兵長の鋭い眼差しが再び復活しかけていた傷ついたプライドに再び亀裂が走る。
    冷たい声が何と発するか、凍えるような心を抑え息を飲む。

    「…そ、それが…」

    「お前には…仲間との連携能力が足りない――。いや、正確には連携しようとする努力が足りない」

    「努力…ですか…」

     俺が死に物狂いで重ねてきた努力は見ていたのか、と言いたくなっても喉元で止め
    噛み砕き兵長の口元を見つめる。鋭い眼差しは見られなかった。

    「俺達は、一人で戦っているわけじゃない…そもそも、巨人なんて、
    本来一人で戦う相手じゃねぇ…違うか?」

    「は、はい…」

    「己の力を信じても、仲間の判断を信じても…結果は誰にもわからない…
    だからこそ、お前は周りの人間と協力すべきだ…そうしなければ――」

    「リヴァイ、急げ」


     突然、兵長の発言をさえぎる声が響く。馴染みのある声の主に視線を送ると、
    佇むエルヴィン団長が兵長を呼び寄せていた。
     属する兵団の長の登場に心臓を捧げる敬礼をすると、片手に鞄を抱えていることに気づく。
     二人がこれからどこかに出かけるのだろうと踏んだ。兵長は舌打ちすると、団長に向って
    右手を軽く上げ、直ちに合流する、という合図を送った。

    「とにかく…、精進しろ、訓練に励め」

     くるりと背中を向け自由の翼を風になびかせると、兵長は足早に去っていった。

    「は、はい!」

     心臓を捧げる敬礼と共に力強く返事をしたつもりだが、それが兵長に届いたかわからない。他の任務もあり多忙の中、わざわざ足を止め俺の訓練を見て頂いたことを目の当たりにして
    ただ自分の愚かさに気づかされたのは、まさにその時だった。

     その上、上官への口答えなど、比較的自由な気風の調査兵団であっても言語道断である。
    それだけでない、兵士長に対してそんな態度を取れば、ただで済むわけがなかった。

     兵長はそんな俺の無礼な言動に対しても、何も言わなかった。
     もともと尊敬していたが、同時に崇拝に近い感情に変る始まりでもあった。

     兵長は団長と何か早口で話した後、急いでどこかに走っていった。
    走ってどこかに行く位の予定があったはずなのに、俺の訓練に付き合ってくれた。
     上官二人の背中が見えなくなるまで、心臓にあてがう拳を崩せなかった。

    ―――
    ――

  5. 5 : : 2014/05/07(水) 10:04:38
    「う……ぐぅ………あっ………」

     噛まれる度に血が滲む唇から漏れる声が弱くなっていく。たやすく自分でもわかる。

     身体が何度も潰される痛み

     なぜ、この巨人は俺をすぐに喰わないのか、という疑問

     死がじわじわと寄ってくる、恐怖…それと同時にこの死線をくぐってきた先輩方への畏怖の念

     このまま…俺は何も出来ずに死ぬのか、という不安…

    ――陣形は…今、どうなっている? 限界点はまだまだ…先のはず…
    本来なら、もっと先まで進まなければいけない…

     こんなところで、悠長に巨人と戦闘している場合ではないはずなのに。

     見通しの悪い旧市街地を通過中、陣形全体が突然大量の奇行種に包囲され
    完全に足並みが乱されてしまった。
     俺の班も当然、善戦したが高い建物が少ない環境ではあまりにも不利すぎた。

    ――いや、違う…そんなのは言い訳だ

     班の仲間たちを見殺しにしたのは、誰でもないこの俺だ。出すぎた真似をしたばかりに…。
     回りの状況を考えず、俺一人で切り抜けようとして招いた結果だ。

    『仲間と協力しろ』

     兵長は…わざわざ前日に忠告して下さったのに…思い返すと冷たくても熱い声が
    身体中に圧し掛かる。

     頬を伝う熱い液体…その血だけではない。 ついさっき、紅い『木の実』が
    落ちてきたなんて、勘違いなんかしては…情けねーが…

    ――悔しいよ、みんな…

     命を落とした仲間たち、団長に…もちろん兵長に申し訳ない。

    ――だけど…このまま死んでたまるか…

    「最後に残るのは…俺たち人類だ!!」

     掠かすれる声と最後の力を振り絞って、折れた剣を振りぬく。次の瞬間、
    俺の身体を無駄に長い時間を掛けて咀嚼していた巨人の頬に刺さった。
     手ごたえはない。悲しいくらい剣から何も伝わらなかった。
  6. 6 : : 2014/05/07(水) 10:06:05
     俺の目の前で巨人はジロリと俺を見る。睨んでない。ただ気持ち悪く目が動くと
    巨大な顎に力を入れやがった。

    「ぐあああああああぁぁぁ!!」

     背骨が折れた気がした。気がした、というのは俺の体の真ん中部分から
    骨が砕ける音が身体中に響いたからだ。もう助からない――。
     医学的なことがわからなくても、もうわかってしまう。なんとなく……。

     言葉が通じるはずなんてない化け物に向かい、最後の強がりを浴びせる。

    「お前らなんか…きっと…リヴァイ兵長が……!!」

     巨人の聴覚が機能していらば、きっと戯言として聞こえただろうと、
    思えた俺の最後の言葉の直後、憎き背後を閃光のように通過する人影が見えた。
     
     死にゆくものへ手向けられた偶然から派生した光と感じた同時に、
    がくんと静かな衝撃を感じながら、目の前の巨人から生気が失われた。
      
     彼だ…待ち望んでいた…彼が俺の目の前に…いる。

     鋭い斬撃切り取られた巨人のうなじの肉片が地上目掛け落ちてゆくのを
    目で追っているはずなのに、目の前に地上が迫る。不本意だが巨人と共倒れとなり
    地面に叩きつけられた。

    「う……っ…」

     巨人の口の中に身体が飲み込まれていたおかげで、地面に落ちた衝撃が多少は
    和らげていたようだった。それでも痛みは身体に残りうめき声を上げる。

     薄っすら目を開くと、兵長が真上を通過した。相変わらず自由を謳歌するように
    立体機動を翼代わりに操作する姿に頬を緩めたいが、その力さえ残っていない。

    ――そういえば…あっちに巨人が二体いたはず…そうかあれを倒しにいくのか…

     ゆっくりとその考えが頭に過ぎると、傍らに誰かが降り立つ音が響く。

    「大丈夫!? 助けに来たわ!」

     明るく美しい茶髪の持ち主だけでない――
    その声の主は精鋭兵士であるペトラ・ラルだった。 
     彼女は全身の力を使い巨人の口から俺の身体を引きずり出すと、手際よく止血の
    処置を始める。

    「兵長は……あっちか……」

     俺はあっち、と言いながら目は宙に浮かせたまま…その方向へ視線を送る力もない。

    「ええ……兵長ならきっと大丈夫……」

     ペトラの唇が自信を持ち合わせ動いた瞬間、この身に地響きが伝わってきた。
    彼女が片頬を上げながら、やっぱり、と言いたげに視線をくれる。

    「1体倒したみたいね……あ、もう1体も――」

    「はは……すげぇ……な……」

     もし、負傷していなければ、ペトラと共に尊敬する気持ちを抱え俺も頬を上げていただろう。だが、蚊のなくような声を出すだけで俺は精一杯だった。 

    「気をしっかり持って……大丈夫、きっと」

     励ましながらペトラの手が傷口を力強く圧迫する。

    ――助かるにせよ…助からないにせよ…もう、ペトラに…全てを預けてしまおう
      
     巨人の口に挟まれていた時、心の中で渦巻いていた様々な感情から解放されて、 
    安心感だけが包むようだった。その同時に意識が遠のいていく――

    ――もういい…もうこれで… いや違う…良くなんかない…俺はまだ何も出来てない…

     悔しいよ…
     
     悔しい
  7. 7 : : 2014/05/07(水) 10:07:16
     巨人への憎悪が渦巻き悔しいと拳を握りたくても、そんな力はどこにもない。
    意識が遠く離れていきそうな最中、サク、サクと、地面を踏む音が耳が捕らえる。
     この足音は聞き逃してはいけない、本能的に感じると遠くへ行きそうな意識をどうにか
    連れ戻せた。

    「兵長……血が……止まりません……」

     ペトラの涙声で兵長が来てくださったとき気づく。俺なんかに構わずにまだ戦っている
    他の兵士の支援へ、と叫びたい自分と、最後までそばにいて欲しい自分が心の中で
    生涯で最後の戦いをしている。

    「兵長…」

     どちらが勝ったのか決まらぬまま、ただ尊敬するあなたを呼ぶ。静かな足音の後、
    兵長がそばにしゃがみ込んだ。

    「……何だ?」

    「お…俺は…人類の役に立てた…でしょうか…このまま…何の役にも…
    …立てずに…死ぬのでしょうか…」

    ――あぁ、俺は本当にダメな奴だ…情けない…兵長を困らせることをこの期に及んで…

     これなら、傍に居てくれと、泣きついたしまった方がまだよかったかもしれない。
    だけど、これはきっと、俺だけの言葉じゃないはずだ。死んでいった仲間たちも
    同じような思いを心のどこかに抱えていたはず…絶対にそうだ。

    ――どうか、受け取って…皆の想いを

      気がつけば、視線さえ動かせない俺の身体のはずが、空に向って手を伸ばす。
     血塗れの手――。こんな汚い手、潔癖症の兵長は…きっと見るのも嫌だろう。

    ――あぁ、また兵長を困らせてしまった…え…

     何事もなかったように手を降ろそうとしたその時、力強い手がそれを握る。

    「お前は…」

      まさか、という気持ちが過ぎっても確かに手の感触がそこにある。
     互いの手のひらの中に俺の血が滴る。頬に落ちたあの紅い実もこの中にあるのか…。
     人類最強に相応しい、力強い手の感触を俺は忘れたくない――。

    「お前は…十分に活躍した。
    そして……これからもだ。お前の残した意思が俺に『力』を与える」

     力強い声の兵長の目を見つめる。この人もこんな顔をするんだ。

     何て熱い眼だろう

     何て強い眼だろう

     それに引き換え俺は揺れる眼差しを返す。巨人からも死の恐怖からも
    ましてや自己嫌悪や無念の絶望からも、この人は俺を救い出す。

     本当の自由の翼が背中から生えたのか、
    身体がふわりと軽くなり、世界が色彩を取り戻してゆく。
     消えゆく俺を、氷の中でも燃え続ける炎のような力強い声が俺を包む。

    ――兵長…あなたの声は…仲間たちへの嬉しい土産になりました…

     天へ繋がる階段を駆け上がりながら、何度も何度もその言葉が俺の心の中で木魂する。
     
    「約束しよう……俺は必ず! 巨人を絶滅させる!!」

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作成者情報
tearscandy

泪飴

@tearscandy

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