「我は死なり、世界の破壊者」
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- 1 : 2024/07/01(月) 23:01:54 :
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「私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします。私は甘い 考えは持っていません。この目標は、すぐに達成されるものではありません。おそらく私の生きているうちには達成さ れないでしょう。この目標を達成するには、忍耐と粘り強さが必要です」
―米国大統領バラク・オバマ、2009年4月5日
1931 年、アルバート・アインシュタインは自らを「私は平和主義者であるだけでなく、戦闘的な平和主義者」であると表現した。その8 年後、アインシュタインはフランクリン・D・ルーズベルト大統領に手紙を書き、「大量のウランの中で核連鎖反応を起こすことが可能になり、それによって、 膨大な力と大量のラジウムのような元素が生み出されることになるでしょう……従って、新型の非常に強力な爆弾が作られることは、確実とは言えないにして も、想像できることです」と述べた。アインシュタインは大統領に、ナチスドイツはすでにウランの輸出を禁止したと警告し、米国政府は原子力研究を早めるべ きだと提言した。
ルーズベルトは、マンハッタン計画に着手した。米国、英国、カナダ3 国による極秘の応急的な取り組みだったが、これが世界最初の原子爆弾を生むことになった。この世界初の原爆が、1945 年7 月16 日、ニューメキシコ州アラモゴルド実験場で爆発した時、計画の科学ディレクターだったロバート・オッペンハイマーは、インドの聖典「バガバッド・ギー ター」の中の言葉を思い起こした。それは、「我は死なり、世界の破壊者なり」という言葉だった。オッペンハイマーは後になって、さらに恐ろしい水素爆弾の 開発に反対することになるが、彼の主張は受け入れられなかった。
バラク・オバマ大統領は、昨年のプラハ演説で、核兵器のない世界を追求する米国の決意を確認した。しかし、大統領は同時に、この目標は自分が生き ている間には達成されないかもしれないことを認めた。この目標はどうしたら達成されるのか、また、そこに到達するのがなぜそれほど難しいのか、それがE- ジャーナル本号のテーマである
本号の寄稿者はこの問題をさまざまな観点から論じている。ほとんどの寄稿者は、オバマ大統領が掲げる目標に賛同しているが、寄稿者のひとり、元国家 安全保障担当補佐官は、全廃したという約束よりも、少数の認知された核兵器がある方が、世界はおそらくより安全であろう、と主張している。特集論文では、 核拡散防止条約(NPT)について検証するとともに、核兵器を廃絶するための条約とはどのようなものかを考える。また、オバマ政権の政策、ロシアの視点、 および核不拡散を選択した諸国の立場から見た問題について考察し、過去の軍備管理努力―成果があったものも、そうでないものもあった―を概観する。なぜ、 一部の国は数千にも上る核兵器を製造したのか、という問題提起も行う。そして、すでに約1 万5000 発の核弾頭の廃棄が実施されたプログラムの輪郭を示す。
指導的な平和主義者が原子爆弾の開発を求め、原爆生産の最高責任者が原爆の破壊性の増大に反対する。そうした事実を通じて、私たちは、問題が複雑に 絡み合っていることを知る。アメリカ合衆国の最高指導者が目標を設定し、その直後の言葉で、この目標は自分が生きている間には達成されないかもしれないこ とを示唆する。この事実を通じて、私たちは、問題の難しさを知る。E-ジャーナルの読者が本号に目を通して、問題がいかに難しいかを理解し、読み終えた ら、どれほど時間がかかろうとも安全で平和な世界を築こうという決意を、オバマ大統領と共有することを希望する。
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