ここは見ないで
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- 1 : 2015/12/07(月) 21:51:31 :
- 1人1人が自分の言うことを言えばいいだけ!
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- 149 : 2024/06/30(日) 15:45:05 :
- (`・ω・´)
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- 150 : 2024/07/01(月) 10:42:44 :
- 今夜もいつものように、リクオ様とふたり、縁側でお酒を嗜んでいます。
リクオ様がゆっくりと盃を傾けるのを、隣で見つめられるのは、側近頭としての役得です。
ごくりと喉が動くたびに、なぜか頬が熱くなります。
「……オレの顔に、何かついてるか?」
「い、いえ、何でもありません」
「何だよ、言えよ。さっきからずっと、オレのことじっと見てただろ」
「す、すみません……ただ、リクオ様はいつも美味しそうに召し上がるなぁと思って……」
慌ててぷいと顔を背けると、リクオ様が私の顔を覗き込もうとしてきました。
「……つーかお前、そんなに呑んでねぇくせに、顔が赤くねぇか?」
「そ、そんなことありません!」
「じゃあ、こっち向いて顔見せろよ」
「や、です」
なぜ、今、顔を見られるのがこんなにも恥ずかしいのか、分かりません。
分からないけれど、とにかく恥ずかしいのです。
「おい。こっち向け」
「いやです」
主の命令に逆らうなんて、下僕失格です。
分かっているのに、どうしてもリクオ様に顔を見られたくないのです。
すると、カタンと盃を盆に置く音がして、血の気が引きました。
もしかして、怒らせてしまったのでしょうか。
どくどくと心臓が脈打ちます。
やっぱり謝ろうと思った瞬間、後ろから肩を引かれて、ぐいと顎を掴まれて。
目の前に、紅玉の瞳。
どきどきと高鳴る心臓の音がうるさいです。
「やっぱり、顔赤いじゃねぇか。もう酔ったのか?」
「……そんなことありません」
恥ずかしすぎて、死にそうです。
たいして呑んではいないはずなのに、今宵は何だがおかしいです。
リクオ様の言うとおり、酔っているのかもしれません。
リクオ様が私の顎を掴んだまま離してくれないので、顔を背けることができません。
紅玉の瞳にじっと見つめられて、身体の奥が、じわりと熱くなりました。
何だろう、この感覚。
お腹の奥が熱い。
動悸が激しい。
風邪でも引いたのでしょうか。
「あの……そろそろ、離してください」
「ん、ああ」
すっと離れていったリクオ様の手が、再び盃を取ったので、私は慌ててお酒を注ぎました。
「なぁ、つらら」
「はい」
「お前、好きな男とか、いるか?」
「えっ? 好きな男、ですか……?」
「いるのか?」
「……リクオ様こそ、好きな方、いらっしゃるんですか?」
「まぁ、いるにはいるが……前途多難だな」
はぁ、とため息を吐かれるリクオ様のお姿に、ひりひりと胸が痛みました。
けれど、リクオ様ももう高校生。
好きな女性のひとりやふたり、いてもおかしくはありません。
ふと、脳裏を掠めた面影に、さらに胸が軋みました。
「もしかして……家長さん、ですか?」
「なんで、そう思うんだ?」
「昔から、特別というか……大切に思われていらっしゃるようなので」
「まぁ、確かにな」
「告白とか、されないんですか?」
痛い。
痛い。
どうしてこんなに痛いの。
どうしてこんなに苦しいの。
「告白ねぇ……。そいつにフラれちまって、今の関係が壊れるのが怖ぇな」
「リクオ様って、意外と意気地がないんですね」
胸が痛くて、何も考えずにぽろりと溢すと、リクオ様がげほげほと咽せました。
「……なら、お前は好きな男に告白できるのかよ」
「できますが、しません」
「何でだよ」
「ご迷惑になるので」
「お前の好意を迷惑がる男なんていねぇだろ」
「他に好きな女性がいらっしゃるそうです」
「ふぅん……」
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