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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

壊れゆく世界の調べ

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  1. 1 : : 2024/08/22(木) 09:17:31
    ※短編のつもり。

    注意
    ・キャラ崩壊
    ・原作ネタバレ有
    ・グロテクスな描写有

    ではどうぞ。
  2. 2 : : 2024/08/22(木) 10:17:04
    初めは小さな違和感だった。


    赤いりんごが沢山入ったカゴの中に、一つだけ青りんごが入っているような。


    または、膨らんだプチプチの中に、一つだけ潰されたプチプチがあるような。


    あるいは…何も着ていないマネキンの中に、一つだけ着飾ったマネキンがある様な…。


    日常の中にそんな違和感を感じる様になったのはいつ頃だろう。


    まるで自分が世界に溶け込めていない様な。


    自分が世界から阻害されている様な。


    自分がこの世界のものではない様な。


    世界にとって、自分は青りんごで、潰れたぷちぷちで、着飾ったマネキンであるかの様な。


    ……………。


    そんな違和感を感じながら、


    “超高校級のピアニスト”、赤松楓は今日も学校へ向かう。


    ??「おはよー。赤松さん」

    赤松「…あ、おはよう。白銀さ…また徹夜?」

    白銀「あぁー…うん…イベント前だから…ちょっと気張っちゃって!…」

    赤松「徹夜はお肌に悪いよ…せっかく可愛い顔してるんだから…気をつけなきゃ!」

    白銀「はうぅぅ…!? このっ…天然人垂らしっ!」ダッ

    赤松「て、天然人垂らし!? ちょっ…どういう事ー!?」ダッ


    これが私の日常。

    クラスメイトと何気ない会話をして登校。


    赤松「おはようございます」

    先生「は〜い。おはようございま〜す」


    校門を抜けて、先生に挨拶。


    赤松「みんなおはよう」

    百田「よぉ赤松!」

    王馬「おはよう赤松ちゃん!」

    茶柱「おはようございます! 赤松さん!」

    オハヨー!  いい朝だネ… 

    おはようございます!    ひゃひゃひゃ!


    教室へ入り、クラスの皆んなに挨拶。


    先生「……だからこの式は…こうなるわけですね〜」


    午前の授業。


    茶柱「赤松さん! 一緒にお昼ご飯食べませんか!?」

    赤松「うん! 食べよう!」


    昼休みに集まって昼食。


    先生「…だから、この小説の作者はこう書き記したんですね〜」


    午後の授業。


    赤松「じゃあ皆んな、また明日!」

    うん!また明日!   また明日ね。

       ふん。じゃあな。    また明日っす。


    授業を終え、教室から出る。


    赤松「先生、さようなら。また明日」

    先生「は〜い。また明日〜」


    先生に別れの挨拶をし、校門を出る。


    白銀「赤松さん。一緒に帰らない?」

    赤松「あ、うん。いいよ」


    そして…クラスメイトと帰路に着く。


    これの繰り返し。

    毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日日毎毎まいいいいにちちいまにに…__ ̄ー

    毎日、同じ事を繰り返す。


    赤松「……?」

    白銀「…赤松さん?」

    赤松「…あっ…ごめん…なに?」

    白銀「いや…何か悩み事でもあるの?」

    赤松「え…」

    白銀「なんかそういう顔してたよ…思案顔ってやつ」

    赤松「………何でもないよ! 大丈夫!」

    白銀「そう……あ…私家こっちだから…また明日ね」

    赤松「うん…また明日」


    ……白銀さんと別れ、私も帰路に着いた。

    家に帰り、ソファにポスっと寝転ぶ。


    赤松「…はぁ…」


    家に帰っても、この違和感は拭えない。


    赤松「………………私……どうしちゃったんだろう……」


    こうして私は、憂鬱な気持ちを抱えたまま眠りにつく。


    これが…私の日常なのだ。
  3. 3 : : 2024/08/22(木) 13:55:25
    期待です!
  4. 4 : : 2024/08/25(日) 02:32:07
    >>3 ありがとうございます。





    ……………………。

    目が覚める。

    ソファーで寝ると、身体は休まらない事を学んだ。

    時刻は…午前4時。だいぶ寝ていた様だ…外は少しだけ明るかった。


    赤松「………はぁ…」


    私は洗面所へ向かい、一晩だけ寝巻きにした制服やら下着を脱いで洗濯カゴの中に入れる。

    そして、お風呂場でシャワーを浴びた。


    赤松「……………………」


    シャワーの水音をBGMに、シャワーから雨のように出るお湯を被りながら違和感について考える。

    私の周囲の物に対して「変だ」と思うことは…無い。

    しかし何か…「変だ」と感じる。

    この感じは……。


    赤松「…………足りない?」


    何が?

    どこが?


    赤松「………誰が…?」


    ズキッ


    赤松「うっ!!」


    急な頭痛に立ちくらみ…私はその場でしゃがみ込む。


    赤松「ううぅっ…うぐっ…っはぁっ…はぁっ……」


    頭痛の痛みに耐えかねていると、ある光景が脳裏に浮かんだ。


    …ここじゃないどこか。


    …知らない学校のような施設。


    …円卓のような丸い座席。


    赤松「……はぐっ…ぅううぅ…!」


    …しばらくすると頭痛は止んだ。

    違和感の更なる謎を残して。


    赤松「…はぁっ…はぁっ……あれは…どこ…?」

    赤松「いつもの学校じゃない……どういう事…?」


    …………………。

    考えても答えは浮かばなかった。


    赤松「………はぁ…」


    私はお風呂場から出て身体をバスタオルで拭くと、下着を身につけて普段着に着替えた。

    その後はソファーに腰掛け、テレビをつける。


    テレビ『今日の6時からのコーナーは「ネコ特集」! 可愛いこねこちゃんがピアノを弾いちゃった!? こっちの猫ちゃんは阿波踊りを踊っちゃった!? 乞うご期待!』


    テレビには猫が色々な事をしている映像が流れた。


    赤松「……かわいい」

    テレビ『…さて、最新のニュースです。今日の深夜0時ごろ、鉄塔に謎の人影が…』


    映像が切り替わり、神妙な面持ちをしたキャスター達が映った後、鉄塔に黒い人影が立っている様な映像が流れた。


    テレビ『この人影の正体は専門家によって回答が異なり…「未確認生物のシャドーピープルだ!」と発言する人や「鉄塔の管理会社の作業員でしょう」、「鉄塔に止まっている鳥が人に見えたのでは?」との声も…』

    赤松「……へぇ…なんか…怖いな…」


    私はテレビを消し、時計を見る。


    赤松「……まだ5時か…登校にはまだ早いし…眠くもないし…コンビニでも行こうかな」


    ソファーから立ち上がり、財布を持って家を出た。
  5. 5 : : 2024/08/27(火) 10:38:08
    家からコンビニはそう遠くなく、片道5分程で到着する。

    適当な商品を手に取り、会計を済ませてコンビニを後にした。


    赤松「…はぁ…」

    入間「お、赤松じゃねーか」

    赤松「あ…入間さん」


    帰路に着いていると、前方からまあ肌の露出の多い服を着たクラスメイトの入間さんが現れた。

    隣には…ゴツい褐色の男の人がいる。


    入間「こんな朝方にお散歩か? もしかして彼氏にゴムでも買ってこいって言われたか〜?」

    赤松「え…はぁ!? そ、そんな訳っ…てか彼氏…はぁ!? 何!? はぁ!?」

    入間「きゃきゃっ…狼狽えてる狼狽えてる…あ、こいつとは初めてだったか?」


    入間さんは男の人の胸に手を添える。


    入間「あ〜…こいつは…まぁ…俺様の彼氏…?」

    赤松「…なんでそこ曖昧なの? というか彼氏って…!? え!?」

    入間「そ、そんな驚くなよぅ…」

    彼氏「…」


    驚くのは無理もない。立てば下ネタ、座っても下ネタ、歩く姿は下ネタ製造機、と揶揄された入間さんに…まさか彼氏がいたなんて。


    赤松「…すごいよ入間さん…彼氏ができてたなんて…」

    入間「トーゼンだろうが! 俺様は美人天才発明家の入間美兎なんだからな!!」

    入間「昨日の夜から今まで…あーその…イチャイチャしててさ…気晴らしに散歩にでも行こうかって誘われて…」モジモジ

    赤松「……そ、そーなんだ…」

    彼氏「…」

    入間「おっと…そろそろ帰るんだったな。んじゃな赤松。また学校でな」

    赤松「あ、うん!…学校でさ、彼氏さんの事聞かせてよっ…」

    入間「ははっ…あ、あぁ…聞かせてやるよ…」


    入間さんは彼氏さんと肩を組み合い(入間さんは肩ではなく腰に手を回していたが)、朝方の街に消えていった…。


    赤松「……はぁー…いつか私も……」


    我ながら如何わしい妄想を繰り広げた後、恥ずかしくなったので走って家路についた。



     ̄__ー「……赤松…楓……」



    ……その姿を何者かに見られながら。
  6. 6 : : 2024/08/29(木) 21:47:52
    しばらく時間が経ち、

    その日も昨日と同じ様に学校へ行き、

    勉強し、クラスメイトと交流し、家に帰宅して就寝する。

    そんな日々を何日か過ごした。

    しかし、世界に対する違和感は消えない。

    それどころか、それは日に日に大きくなって行く。

    何が原因なのか。何がおかしいのか。

    何がダメなのか。何が気に食わないのか。


    先生「赤松さん? どうかしたの〜?」


    赤松「あぁ…先生…実は…」


    そんな折、先生に話しかけられた。


    私はその違和感を先生に全て吐き出す。


    先生は親身になって聞いてくれた。


    先生「…そうなの〜…少し疲れているんじゃない? 明日はおやすみする〜?」


    赤松「…大丈夫です! あと数日したら消えると思います!」


    先生「そうなの〜。良かったわ〜。それじゃあね」



    先生は教室から去る。



    赤松「相談に乗ってくれてありがとうございます!…えっと…」



    赤松「…………あれ…?」



    先生「? どうかした〜?」



    赤松「あ…いえ…ありがとうございました…!」






    ………それは……








    その違和感は…日に日に大きくなっていく。








    赤松「……先生の名前…なんだっけ…?」



  7. 7 : : 2024/08/29(木) 22:02:28
    夕日が照らす帰り道。


    私はぼーっと、その道を行く。


    何の為に?


    帰るために。


    どこに帰る?


    家に。


    家ってどこ?


    ……………。


    あなたの帰る場所はどこ?


    …私の帰る場所は……。


    王馬「赤松ちゃん!」

    赤松「ふぇ!? 王馬君!?」

    王馬「大丈夫? なんか心ここに在らず…な感じだったよー?」

    赤松「……王馬君はどうしてここにいるの?」

    王馬「いや、赤松ちゃんが気になってさ…最近元気ないでしょー? クラスのみんなも心配してたからさ…俺が代表して聞きにきたってわけ」

    赤松「…え…私、元気ないように見えるの…!?」

    王馬「むしろ元気あるつもりだったの?」

    赤松「……あははっ…そうか…そうだったんだ……多分、疲れてるんだと思う。でも大丈夫! 今日はガッツリ睡眠とるから!」

    王馬「…あっそ…何かあったら俺達を頼りなよ? 俺達は仲間なんだから…さ!」

    赤松「…うん!…ありがとう…!」

    赤松「よしっ!…家に帰るぞーー!!」ダダダダダッ

    王馬「うわ速っ…まぁ元気出たみたいで良かったよ…」



    王馬「………なぁ、いい加減隠れてないで姿を見せろよ」


    __ ̄「…」ヌッ…


    王馬「お前、巷で話題になってる人影って奴だろ? 俺達の事つけて…何が目的だよ?」


    __ ̄_「王馬…小吉」


    王馬「…名前まで割れてるってわけ?…なおさら誰だよお前」


    __ー「………」


    王馬「……なんか喋れよ」


     ̄ー_「……悪く思わないで」


    王馬「…はぁ?」



    グサッ…

  8. 8 : : 2024/08/29(木) 22:06:02
    >>5
    入間さんに彼氏……?
    嘘だろ……(入間推し)
  9. 9 : : 2024/08/29(木) 22:43:36
    >>8
    いたらいたで興奮しませんか? しない? 僕もです。
    僕が嫁にするまで一生独り身でいてくれ…。






    ………………………。


    目が覚める。


    ベッドで寝たからか、いくらか身体は休まっている…気がする。


    赤松「ふあぁ……6時か…着替えなくちゃ…」

    寝巻きを脱ぎ、シャワーを浴び、制服に着替える。

    朝ごはんを食べて、カバンに勉強道具を入れ、家を出る。

    今日も昨日となんら変わらない1日。

    の筈だった。


    先生「皆さんに残念なお知らせです〜。王馬君が亡くなりました〜」


    赤松「………え?」


    クラス中にどよめきが走る。


    百田「な…あいつが…?」

    入間「し、信じらんねー…な、なんで…どうして…?」

    夜長「小吉は嘘はつくけど…良い人だったよー…南無阿弥陀仏…」

    先生「明日に葬儀を行うそうなので〜…皆さんも参列をしましょう〜」


    …その日のクラスはとても沈んでいた。

    何も聞こえなかった。

    笑い声も、話し声も、環境音さえ。

    そんな状態が、終業の時まで続いた。


    先生「では…また明日〜」


    先生の別れの挨拶の後も、しばらく皆んなはその場に居た。

    しかし1人、また1人とその場を後にした…。


    百田「おい赤松…ちょっと来い」

    赤松「…え……うん…」

    そんな中、私は百田君に学校の屋上へと連れられた。

    屋上には私の他に、天海君、茶柱さん、星君、東条さん、獄原君が集められていた。

    百田「あー…まずは…集まってくれてありがとな」

    天海「っす。王馬君の件…ですよね?」

    百田「…まぁそうだ」

    東条「…ニュースによると、鋭利な刃物で心臓を一突き…これが致命傷。その後に腕、脚を滅多刺しにされていた…らしいわ」

    獄原「王馬君…どうして……誰がこんな事を…」

    百田「……俺は…あいつがやったんじゃねーかって思う」

    星「…例の…人影ってやつか…」

    茶柱「ニュースでも取り上げられてましたよね……あの人影が目撃されてから、街では殺人事件が多発しているって…」

    赤松「……」

    獄原「ねぇ赤松さん。赤松さんは…昨日王馬君と会ってたんだよね…?」

    赤松「え…どうしてそれを…」

    獄原「ゴン太の携帯に、王馬君からメールで着信があってさ…『俺に何かあったら、赤松ちゃんを頼って』って…」

    赤松「…私を…?」

    百田「…どうして王馬がおめーを頼れなんて行ったのか分かんねーけどな…何か心当たりがねーかと思って呼んだんだが…」

    赤松「心当たりも何も……うぐっ!?」

    百田「赤松!?」


    その時、激しい頭の痛みが私を襲う。


    赤松「はぁっ…はぁっ…うぐぅううううっ…!」


    脳裏にうっすらと浮かぶ光景。


    …クラスの皆んなが…遠くで私を見てる……。


    私は巨大なピアノの上にいて…。


    首が首輪で繋がれて…。


    ……そして………とてつもない苦痛。


    苦しみ。痛み。屈辱。後悔。


    それらが一気に私を襲う。


    赤松「うっ……うおぇっ…ごぼっ…!」

    百田「おい!! 速く保健室に運べ!!」

    東条「赤松さんしっかり!!」

    獄原「赤松さん!」


    ……そして……私は……気を失った。
  10. 10 : : 2024/09/01(日) 22:56:03
    …………………………。


    誰かが私に手を伸ばす。


    手を取ろうとするが、どうしても取れない。


    あと少しが届かない。この首輪が邪魔だ。


    必死にもがく。手を取ろうとする。


    あと少しで触れられる…!


    そこで…目が覚めた。


    保健室の天井が見える。


    …何してたんだっけ?


    確か屋上に…百田君に呼び出されて……。


    百田「…お、起きたか…心配させやがって」


    声のする方を向くと、百田君がいた。


    百田「急に倒れて…そんで吐き出して…一体どうしたんだ?」

    赤松「……分かんない」

    百田「分かんないって…他の奴らは帰らしたぜ? 明日は…王馬の葬式だからな…」

    赤松「……ねぇ」


    …私は、あの質問をしてみる。


    百田「あん?」

    赤松「この世界に…違和感を感じたことはない?」

    百田「……は?」

    赤松「……まるで…自分がこの世界のものじゃないみたいな……自分は別の世界のものなんじゃないかって…思った事は無い?」

    百田「なんだよ急に……別に俺は……」


    百田君は、何かに気づいたように固まった。


    百田「……まぁ…確かに…なんか…変だな?」

    百田「……どこが変かは…分かんねーけど……何か…足りねー様な…」


    私はベッドから跳ね起きた。

    やっとこの違和感に共感を得られた喜びに打ち震える。


    赤松「そ、そうだよね…!? 何か足りないっていうか…何が足りないかは分からないけど…!」


    しかし、話は唐突に終わりを告げた。


    先生「2人とも〜。大丈夫ですか〜?」

    百田「あ、先生! 赤松は大丈夫そ…うだ……」

    赤松「……百田君?」

    先生「あらそうですか〜…では早く帰宅しないとね。明日は王馬君のお葬式なので〜」

    百田「…あぁ…早く帰んねーと…な…」


    そう言うと百田君は、フラフラと保健室を出ていった。
    百田君の目には…生気が無かった。


    赤松「あ、百田君! まだ話を…!」

    先生「赤松さんも早く帰宅しましょうね〜?」

    赤松「……先生…さようならっ」


    私は窓から差し込む夕陽の光で影になった先生の顔に、得体の知れない恐怖を覚えて足早に保健室を後にした。
  11. 11 : : 2024/09/02(月) 01:03:18
    帰宅後、私はソファーに寝っ転がった。


    赤松「…せっかく分かり合えそうだったのにな…」

    赤松「……私、喪服持ってたかな…?」


    クローゼットを漁ろうとした時、携帯の着信音が部屋中に響いた。


    赤松「?……入間さん? はいもしもし?」

    入間『はぁっ…はぁっ……赤松。か…?』


    携帯の向こう側から、入間さんの声が聞こえる。


    赤松「入間さん? どうかした?」


    入間『ぐッ…はぁっ…いいか、これから俺様のっ…ふぅっ…言う事をぉっ…よく聞け…っ!』


    赤松「……入間さん? えっと…ナニしながら掛けてるの…? 冗談でもそれはしないほうが…」


    入間『……あたし…もう死ぬ…かもっ…』



    赤松「……え?」



    入間『はぁっ…ぐっ…痛いぃ…はぁっ…いいかっ…お前はっ…逃げろっ…すぐそこから…早くッ…ぶっ…ごほっ…』

    赤松「ちょっ…ちょっと…ふざけるにも限度ってものが…!」

    入間『ッッ…や、やだっ…死にたくないっ…アタシにはまだやる事がっ…ひっ…いやっ…!』

    赤松「い、入間…さん?」

    入間『あっ…………ごぽっ……ガシャッ…カツンッ……ヒューー…ヒューー……』

    赤松「は?…え?…入間さんっ? 入間さんっ!?」

    携帯『ガガッ…ツー…ツー……』


    携帯は切れてしまった。

    瞬間、私の中に恐怖が這い上がってきた。


    今のはなんだ? 何が起こった?

    入間さんは死んだ…?


    赤松「……っ!!」

    赤松「どうしよう…警察!…でも今の録音してた訳じゃないし…どうしよう…どうしよう!?」

    赤松「…こ、こんな時は冷静に…ならなきゃ……」


    …………………。


    冷静になんてなれる訳がなかった。

    気がついた時、私は外で入間さんを呼んでいた。


    赤松「入間さーん!! 入間さんどこー!?」

    赤松「はぁ…はぁ…入間さん…放課後は…街に行くのが…趣味の筈……入間さーん!!」


    街は既に夜の賑わいを持っていた。

    チャラチャラした男の人に店の勧誘を受けながら、入間さんを探す。


    赤松「…はぁっ…はぁっ……」


    通行人A「なんか…あそこ賑わってない?」

    通行人B「…なんか人倒れてたらしーよ。血まみれで…もう助かりそうに無いって」

    赤松「!?」


    通行人の視線の方を向いた。

    ビルとビルとの間の裏路地への入り口に、人だかりができていた。


    赤松「っ…はぁっ…はぁっ…」


    そこへ走って向かう。


    赤松「入間っ…さんっ…!」


    心臓の鼓動が速くなる。

    走ってるのもあるがそれだけじゃない。


    通行人C「__ ̄ー高校の制服着てるって」

    通行人D「顔綺麗だったよね…かわいそー」


    赤松「…っ…」


    やめてくれ。もうやめて。

    哀願しながら、人だかりに向かって走る。


    通行人「だいぶ酷かったな…」

    通行人「如何にも惨殺って感じだったねー」


    赤松「……」


    …死んでるわけない! そう自分に言い聞かせる。

    心臓の鼓動がまた速くなる。


    人「誰にやられたのかな…彼氏とか?」

    人「もしかして…例の…?」


    赤松「…」


    お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い違う人であってお願いお願いお願い違う人にお願いお願いお願いおねねががいいおがいいおねが ̄_ ̄ー__ ̄ー



    人だかりを押しのける。


    人「…もうダメだべ」

    人「まだ若そうなのに…」

    赤松「…すみません…通して…」




    …………………。





    ゴミ箱に横たわった、それを見た。





    見てしまった。





    ピンポンパンポーン♪


    死体が発見されました!




    学校の放送開始音と、どこか聞き覚えのある不快な声。




    それが聞こえたような…気がした。





    赤松「……………あぁ…」








    その瞬間。



























    私の心は絶望で満たされた。


  12. 12 : : 2024/09/05(木) 11:21:55
    ………………………………………。


    ………………………………………。


    ………………………………………。


    目が覚めた。


    ベッドから起き上がり、リビングに行く。


    ソファーに座り、テレビの電源を入れる。


    テしビ『今日ノ  ニュースでス。昨日、 [][]才の女子高生ガ何者かによ て「「殺害」」 されて レI るのが発見されまレた  。』

    〒レヒ"『警察[police]レよ -昨日の男了高 木交 生が殺害され ナこ 事件と関 え車 があるとみて 捜査を イ〒 っていまス』


    赤松「…………」


    夢じゃなかった。


    悪夢であってほしかった。


    あの後の記憶が無い。


    入間さんがどうなったのかも。

    自分がどの様にして家に帰ってきたのかも。

    分からない。


    …………私は。


    この悪夢からは永遠に覚めないのだと確信した。


    ぷるるるるるるる…


    携帯が鳴った。非通知だったけど…出た。


    ???『……………』

    赤松「……………だれ?」

    ???『……………僕だよ』

    赤松「……………誰なの?」

    ???『…………もう少しで…君を救える…こんな悪夢から…』

    赤松「…………救うって…何?」

    ???『…………』

    赤松「……あんたが殺したの…?…入間さんも…王馬君もッ…!?」

    ???『…………』

    赤松「…私の日常を…返してよ……」

    ???『………彼らも救われた。君も…救いだしてみせるから……』

    赤松「救うって…何言ってるの…? ふざけないでッ!」


    ブツッ…


    通話は切れ、聞こえるのはツー、ツーという音だけだった。


    赤松「ッッ……ぁぁぁああああアァァッッ!!!」


    私は怒りに任せ、携帯をテレビに向かって投げつけた。

    ガアンッ!と言う音と共にテレビの画面に亀裂が入った。

    画面に携帯がめり込み、テレビに入った亀裂からうっすらと煙が上がった。


    赤松「フーーッ…フーーーーッ……!」


    頭を掻きむしり、ぐちゃぐちゃな感情を開放して暴れた。

    気が付いた時には部屋の物は散乱し、窓ガラスは割れ、テレビから出た煙でスプリンクラーが作動し、自分の複数の指の爪と皮膚の間から血が出ている始末だった。


    赤松「…………………」

    赤松「……シャワー……浴びなきゃ…」


    私は部屋着を着たまま、バスルームへと入った。
  13. 13 : : 2024/09/06(金) 00:37:04
    シャワーの水を浴びて十数分が経過した。


    色々な事を考えた。


    世界の違和感、不可解な場所、受けた覚えのない苦痛。


    死んでしまったクラスメイト、先生への不信感。


    赤松「………………」

    赤松「………私…どうしたらいいんだろう…」

    …君なら…できるよね…?

    赤松「………え?…」


    頭の中で、誰かの声が聞こえた。


    知らない誰か。でも聞き覚えのある声。


    その瞬間、再び頭痛にみまわれた。


    赤松「うぅっ!?…またっ…!」


    そして引き起こされる映像…。


    自分は教室の様な場所にいて、椅子に腰掛けている。


    視線の先には、黒い帽子を被った…男の子。


    俯く男の子に、私はそっと手を握る。


    私は何故か震えていた。その男の子も震えている。


    名前も知らない男の子。その子はふっと立ち上がり…そして……。


    赤松「……………ハッ…!?」


    ……映像はそこで途切れた。頭痛も治った。


    赤松「………こんな事してる場合じゃない」


    私はバスルームから出て濡れた服を洗濯カゴに放り込むと、滅多に使わないドライヤーで髪を乾かした。

    制服に着替えると部屋で唯一無事だったソファーに座って思考を巡らせる。

    人影の目的は何か?

    人影は言った。私を悪魔から救い出すと。

    人影の狙いは…私を救い出す事。

    彼らの言う救うと言うのは…殺害する事。


    人影の目的は…私を殺す事…?


    なら私を直接殺せばいい。なぜ王馬君と入間さんを殺したのか。


    赤松「……もしかして……クラスの全員を…?」


    顔から血の気が引いていくのが分かった。


    人影の目的は…私達のクラス全員を殺す事。


    今日みんなは…王馬君のお葬式で…一ヶ所に集まる…!


    赤松「大変…みんなに知らせないと!…ってあぁ!? ケータイ壊れちゃってる!?」


    テレビに投げつけた携帯はもはやただの鉄屑と貸していた。


    赤松「ここに電話…は無い!…こ、公衆電話…!」


    私はカバンを持って急いで外に出ようとした。


    …出ようとしたと言う事は、出られなかったと言う事だ。


    ピンポーン♪


    赤松「あぁもう! こんな時にだ……れ…?」


    鳴ったインターホンのカメラの画面を見るとそこには…。


    ー__「…………」


    黒い、人の形をしたモヤモヤが映っていた。


    赤松「……人影…!」


     ̄____「おーい。いるんじゃろー? 開けとくれー」


    ピンポーン♪ ピンポンピンポンピンポーン♪


    人影はしきりにインターホンを鳴らしている。


    赤松「……どうしよう…これじゃ…正面から出れない…」


    ___ ̄「…しょうがないのぅ…10秒数えるまでに開けなければ、魔法の力で…ドアを開けさせてもらうぞ!…いーち…にー…」


    赤松「っ…」


    どうする…? この家には裏口なんて無いし…垣根を超えるしか…!


     ̄_ー「さーん…しー…ごー…ろーく…」


    私は庭へ続く冊子を開け、家から飛び出す。

    そして塀をなんとかしてよじ登った。


    __ー「……なーな…はーち…きゅう…じゅう!」


     ̄__「愚か者が…ではドアを開けさせてもらうぞ!」


    ドオオオオオオオンッ!!


    赤松「うわぁっ!?」


    塀の頂上に登った私を熱風が襲った。

    塀の上からバランスを崩し、私は背中から地面に落下した。


    赤松「あぐぅっ!?…いつつ…早く…みんなに知らせなきゃ!…」


    なんとか立ち上がると、私は近くの電話ボックスに向かって足を進めた。




    …数分後…赤松の家の跡地


    _ー ̄「…少しやりすぎたかの……」


    __ ̄_「家すっ飛んでんじゃん……はぁ…やっぱ私が行けば良かった」


     ̄__ー「な、何を言うか…これであやつが死んだなら…それはそれでいいじゃろ?」


    _ ̄__「あんたねぇ…」


     ̄___「…まぁまぁ…それより、皆んなは集まってそう?」


    _ ̄__「私が見た感じだと…殺した奴と」

     ̄__ ̄「赤松以外は全員揃っているよ」

    ___ー「…よし…ここで…決めようか…!」

     ̄__ ̄ ̄「…僕らで…彼らを救おう!」
  14. 14 : : 2024/09/08(日) 22:09:55
    赤松「はぁっ…はぁっ……着いた…」


    電話ボックスに中に入り、背中を刺さりながら受話器を取り、財布から10円を抜き取って投入口に入れた。


    赤松「えーと…誰にかけよう…先生は……番号知らないし…百田君でいいか…!」


    ボタンを押し、受話器からコール音が鳴る。

    しばらくすると…


    百田『もしもし? どちらさんだ?』

    赤松「あぁ…百田君!? 私! 赤松楓だよ!」

    百田『おー赤松…ってもうみんな集まってんぞ? どこにいんだ? てかケータイはどうしたんだ!?』

    赤松「詳しい事は後! とにかくみんなそこから逃げて!! 人影が…あの人影の目的は私達を殺す事!!」

    百田『お、おいおい…落ち着けって! 人影がなんだって?』

    赤松「早くそこから逃げて!! みんな人影に殺されちゃう!!」

    百田『人影に…殺される…? 何言って_- ̄ブツッ…ツー…ツー…』

    赤松「あぁ! もうっ…なんで公衆電話って時間切れがあるの!?」


    財布からもう一度10円を抜き取ろうとしたが…


    ぐいっ


    赤松「え?」


    誰かに電話ボックスから引き摺り出された。


    警官「君! 何やってるんだ!? 近くで爆発が起きたんだぞ!? 早くここから避難しなさい!!」

    赤松「いやあのっ…友達に電話を…!」

    警官「ほらはやくこっt」


    その瞬間、警察官が目の前から消えた。

    いや、目の前で倒れて、視界から消えた。


    赤松「…は…は?」


    下を見た。

    頭から血を流し、警察官が倒れている。

    虚な目が私を見つめている。


    赤松「…うっっ……おえっ…」


    私はその場でうずくまり、口から吐瀉物を吐く。

    見てしまった。人の死ぬ瞬間を。


    __-_「………赤松」


    声の主は、人影。


    赤松「……どうして…こんな事をするの……?」

     ̄_-「………」

    赤松「私を殺すんでしょ…なら……この人を…巻き込まないでよ…」

    __ ̄_「……こいつらは…あんたをここに縛りつけてる」

    赤松「………え?」


    人影は倒れた警察官の側でしゃがみ、持っていた銃で死体をツンツン弄る。


    -_ ̄_「だからこいつらは…何人死のうが構わない。だってこいつらには、中身が無いんだから」

    赤松「何…言ってるの…?」

    __ ̄_「…分かんなくていいよ。…てか何も知らない内に早く死んで」


    人影は銃口を私に向け…そして…。



    発砲した。


  15. 15 : : 2024/09/12(木) 21:44:26
    ……………………………。


    しかし、弾は私に当たる事はなかった。



    先生「あらあら〜赤松さん。遅刻する際は先生に連絡しないと〜」


    いつの間にか、私と人影の間には、先生が立っていた。


    赤松「先生…? どうしてここに!?」

    先生「電話越しに様子がおかしかったので〜…皆さんを斎場に待機させて貴女をお迎えに来たんですよ〜」

    __ ̄_「……チッ…よりにもよって厄介な奴に…赤松! そいつから離れて! そいつらはあんたらを騙してる」

    赤松「だ、騙してるって…そんな事…!」

    先生「赤松さん。彼らの言う事は信じないで〜」


    先生が人影の話を遮る。


    先生「彼らは世界の破壊者。私達の世界を壊そうとしています〜…さ、ここは先生に任せて…貴女は逃げて下さ〜い」

    _ ̄ー「……お前、こんな場所にあいつらを閉じ込めて…何が目的?」

    先生「早く逃げて〜」

    赤松「…………っ」ダッ


    私は走り出した。

    運動会の徒競走以上に必死に走った。

    後ろで金属音と破裂音が聞こえる。

    何が何だか分からなかった。

    先生が言うには、人影は世界の破壊者。私たちの世界を壊そうとしている。


    赤松「……はぁっ…そんな事…させないっ…はぁっ…」





















    先生「…あ……ら……あ……ら〜……」シュンッ…

    _ ̄_ ̄「チッ……本当にめんどくさい…アレが“大本命”か…他の奴らとはデキが違うって訳?」

    __ー ̄「……腕切り落とされても痛くないとか…本当にやな感じ」ジジッ…

    _ ̄-「………これ治るんでしょうね……[ZZZZ]。」
  16. 16 : : 2024/09/19(木) 22:24:39
    赤松「はぁっ…はぁっ……なんとかっ…着いた…っ」


    息を切らしながら斎場の門を潜り、王馬君の葬式を行う会場へ急ぐ。


    「赤松!!」


    前方から名前を呼ばれ前を向くと、百田君がいた。

    会場の前で手を振っている。


    百田「おい! あの電話どういう事だ!? 人影に殺されるって…」

    赤松「と、とりあえず…みんなを…!」


    ドオオオオォォォォォンンッ!!!


    赤百「「!!??」」


    突然の轟音。そして凄まじい風が吹き荒れた。


    百田「うおぉぉ!? か、会場が…爆発した!?」

    赤松「う……そ……」


    瓦礫が吹っ飛び、宙を舞う。


    赤松「み、みんな……!!」

     ̄__「……うむ。良い出来じゃが…」

    百田「ッ!!…出やがったな…」


    土煙の中から、人影が姿を表した。


    _ ̄_「むー…残ったのはお前たちだけか? まぁあの爆発で会場内の奴らは皆…死んだじゃろう…」

     ̄__-「こんな事ならうちも[ZZZZ]と同じ能力をつけて置くんじゃった」

    百田「てめぇ…ふざけんのも大概にしろよ!!」


    百田君が人影に殴りかかる。

    人影は咄嗟にジャンプし、それを避ける。


    _-_ ̄「うぉっ…危ないのう…」


    人影が着地したと同時に、


    ビュンッ!


     ̄__-「のわ!?」


    土煙を払いのけ、黄緑色の物体がとんでもない速度で人影に直撃した。


    星「ふん…後ろがガラ空きだぜ」


    テニスラケットを持った星君が煙の中から現れた。


    星「もう1発行くぜッ!」


    ビュンッと音を立て、テニスボールが人影に向かって行く。


     ̄_-「ぐぅっ…生きておったか…! ぐぎゃ!?」


    テニスボールは人影の頭に直撃し、人影は地面に倒れ込む。


    百田「今だ!! 取り押さえろ!!」


    百田君の掛け声で、東条さんと獄原君、茶柱さんが人影を取り押さえる。


    東条「逃げないように取り押さえるのよ!」

    獄原「うん!!」

    茶柱「観念しなさい!!」


    ジタバタ暴れる人影を3人がかりで取り押さえた後、真宮寺君と天海君が縄で人影を縛り上げた…。


     ̄__-_「んあーー! やめてくれーー!」

    真宮寺「…クク…その荒縄は簡単には解けないヨ…」

    天海「…さぁ、洗いざらい話してもらうっす。あなた達の目的、正体もね」

    夜長「ついでに生贄にもなってもらうよ。小吉と美兎を殺した罰だよ」


    赤松「…みんな…生きてた…」

    百田「あー…お前からの電話が不穏だったから…有り合わせのもんを使って人影をどうにか捕まえらんねーかって作戦立ててたんだよ…思いの外上手くいったな!」

    赤松「………良かった…」
  17. 17 : : 2024/09/27(金) 00:57:06
    天海「…あなた達の目的は?」

     ̄_-「………」


    人影は微動だにせず、ただ黙っていた。


    百田「おい!! 聞こえてんのか!?」

    __ ̄_「………」

    夜長「…どーして小吉と美兎を殺したのー?」

     ̄___「………」


    人影は黙っている。


    真宮寺「なんとか言ったらどうだい?」

     ̄___-「……」


    人影はうんともすんとも言わない。
  18. 18 : : 2024/10/03(木) 22:30:41
    …しばらくして、それはやっと口を開いた。


    __ ̄_「……正体なんぞ話しても…お前達は覚えてないじゃろ」

    天海「…覚えていない?」

     ̄___「…うちは…お前達と一度……」

    __ ̄_「…[ZZZZ]さん」


    クラスメイトではない声がして、そっちを振り向いた。

    瞬間、光線のような物が頬を掠めた。


    パァン


    …と乾いた音が響く。


    赤松「…………え?」


    天海「…?…あっ……真宮寺 パァン くッ…」


    再度後ろ、さっきを向いてきた方を向くと…。


    真宮寺君と天海君が額から血を流し、倒れていた。


    茶柱「へ?……はへ!?」

    星「っ!」


    すかさず星君がテニスボールを持つ…が。


    パァン


    星「ガッッ……」


    光線が星君を貫いた。


    夜長「あっ…竜 パァン ま"ッ」


    星君に駆け寄ろうとしたアンジーさんも、光線に頭を貫かれた。


    東条「皆んな逃げてッ!」


    東条さんが叫ぶ。


    その叫びに皆んな我に返り、散り散りになって走った。

    私も走った。


    _- ̄_「…君は…行かないのかい…?」

    東条「…行くわけないでしょう?…ここで貴方を食い止めるんだから…っ!!」

     ̄_-_「………そうだよね…君は…そう言う人だ」

     ̄_- ̄「……東条…」

    赤松「…!!…東条さん!!」


    私は戻ろうとした…が、阻まれた。


    百田「バカ!! お前が行っても殺されるだけだ!! 早く来い!!」


    百田君が私を担ぎ上げて走る。


    赤松「いや!! 離してッ!! 離してよッ!!」


    パァン……パァンパァン…


    パァン…


    …しばらくすると、その音は聞こえなくなった。



    赤松「うぅっ…ぁぁああああぁぁ…!」



    ……私は……今日何度経験したか分からない…。






    絶望を経験した。














     ̄_-「…すまん」

    _ ̄__「…大丈夫だよ……皆んなからの反撃は…予測済みだったし」

     ̄__-「…救ったのは5人…か…後は…うむ…面倒な奴らが残ったの…」

    ___-「……[ZZZZ]は…大丈夫……なのか…?」

     ̄_-_「……大丈夫な訳ないよ…だって…だって皆んなはッ……はぁ……僕は…」


    _ ̄-_「…本当に…彼女を…殺せるのだろうか…」
  19. 19 : : 2024/10/17(木) 22:33:41
    斎場からほど近いコンビニの駐車場で、1人の少女が膝に手を当て、息を切らしていた。


    茶柱「…はぁッ…はぁッ……うッ…おえっ…」


    その少女、茶柱転子は走った影響か…もしくはクラスメイトの無惨な死に様を見た影響でえずいた。


    …守れなかった。


    圧倒的力の前で、仲間を背にして逃げ出してしまった事に後悔する。


    茶柱「…東条さん…ごめんなさい……ごめんなさいっ…皆さん…! ごめんなさい……!」


    ポロポロと目から涙をこぼす。なぜこんな事になってしまったのかと自問する。


    茶柱「……あいつらの…所為だ…!」


    茶柱は胸の内で、何かが膨らんで行くのを感じとった。


    怒り…厭悪…憎しみ………殺意。


    胸の中で渦巻き、ぐちゅぐちゅと音を立ててそれが大きくなるのを感じる。


    抑えようとも抑えられない憎しみ。


    茶柱「殺してやる…殺してやる……ぐぅうううううあああああああッッ!!!」


    茶柱は人の目も気にせずに怒りに任せ叫んだ。


    先生「どうしたのですか〜?」

    茶柱「ああぁ…ッ!?」


    不意に話しかけられ、振り向くと…先生がいた。


    先生「何かあったんですか〜? 今は王馬君のお葬式の筈…」

    茶柱「せ、先生!…今までどこに…いえそれよりも!…皆さんが!!…う…うぅうううぅぅぅうううぅぅ…!!」

    先生「……よしよし…大丈夫ですよ〜…茶柱さん」


    茶柱は先生に抱き寄せられ、身体を震わせ泣きながら今までの事を話した。


    先生「そうなんですね〜…生き残っているのは誰ですか?」

    茶柱「…えっと…確か…転子と赤松さんと…百田さん…だけかと…」

    先生「……分かりました〜」


    先生は茶柱の目を見て、こう続ける。


    先生「茶柱さん。<チカラ> が欲しくないですか?」


    茶柱「……え……チカラ……?」


    先生「皆を守れる『力』…逃げずに立ち向かえる[ちから]……強い強い…{POWER(チカラ)}」


    先生「「悪党を容赦なく殺せる<チカラ>」」


    茶柱「……」


    先生「欲しくないですか?」


    茶柱「…せ、先生…? 何だか…様子が……どうしてしまったんですか…!?」


    先生「何も恐れる事はありませんよ〜。先生は先生なんですから〜」


    茶柱「…」


    茶柱はその先生の様子に若干の恐れを抱きの後ずさる。


    しかし…。


    先生「欲しいでしょ? 力が。ね?」ガシッ


    茶柱「ッ…!」


    先生はいつの間にか背後におり、茶柱の方を掴む。


    先生「さぁ…手に入れましょう?…皆んなを守れる…《チカラ》を」


    茶柱「………わかりました」


    茶柱「力が欲しいですっ!…赤松さんと百田さんを救える…2人を守れる力が!!」


    先生「……注文を承諾しました」


    茶柱「!?」


    その言葉を最後に、茶柱の視界は闇に染まった。


    地面が無くなり、どこまでも落ちていく感覚に襲われる。


    茶柱(…これで……みんなを……守れ……る……)


    声も出せないまま…茶柱は意識を手放した。








































    ーー POWER MODEの起動を検知しました。 ーー


      ーー PROJECT NEOを開始致します。 ーー
  20. 20 : : 2024/11/08(金) 00:31:11
    ー 街の裏路地 ー


    赤松「…」

    百田「…」


    2人はただ、地べたに座っていた。

    赤松は膝を抱え、顔をそこに埋めている。

    百田はただただ、上を見上げていた。

    2人とも、高校生の自分達には抱えきれない程の問題と絶望に押しつぶされそうになっていた。


    ???「ここにいたんだ」


    特徴的な声を聞き百田は我に帰る。

    裏路地の入り口に、それは立っていた。


     ̄__ー「……」

    百田「ッッ…てんめェ…!!」

    __ ̄_「大人しく、殺されて? それで…あんたらを救えるからさ」


    人影は手を鉄砲の形にし、2人に近づいていく。


    百田「ふざけんなッ!! よくもクラスの奴らを殺しやがってッ…テメェは死んでも殺す!!」

    赤松「…」

    _ ̄_ ̄「…でも…みんな救われてるんだよ…?」

    百田「どこがだよ!! あんな無惨に殺されて……あれのどこが救われてるってんだよッ!!」

    __ー_「…お願いだから…大人しく殺されてよ…」

    百田「黙れッ!! 赤松っ! こいつは俺が抑えてるからその内に逃げろッ!」

    赤松「……」


    赤松はスッと立ち、人影の方は歩み寄る。


    百田「あ…赤松…?」

     ̄__-「……」


    人影の前に立つと、人影の指先を自身の胸に押し当てる。


    百田「お、おい!…赤松!!」

     ̄__ ̄「…あんた、どういうつも……っ!?」


    人影は言葉を詰まらせる。

    自身の前に立つ赤松の目を見てしまったからだ。

    生気も正気も感じられないその目には…。

    酷く黒い、深く暗い闇。

    儚く白い、篤く眩い光。

    その両方が混在していた。


    赤松「……もう……いいよ……」



    赤松は指を胸に押し当てられてもなお人影に近づく。



    赤松「…………もう」
























    赤松「私を…殺して……?」























    パァン

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