このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
キャプテンアース
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- 1 : 2024/01/16(火) 23:11:10 :
- 最初は、思ってもいなかった。
だって皆のこと、信用していたから。
でも、現実は甘くなく、全てが上手く行っていたこともあって方舟派の奴らに足元を救われた。
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- 2 : 2024/01/16(火) 23:22:02 :
- 自分が、遊星歯車装置の奴らとつるんでいる、という噂が流れたのは、戦いが終わって3,4ヶ月過ぎたあとだった。初めは、ただの噂に過ぎなかった。自分の活躍を見て、嫉妬しているだけかと思っていた。テッペイもハナもアカリもおじさんもこんな噂信じなかったし、励ましてくれた。
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- 3 : 2024/01/16(火) 23:32:32 :
- でも、時間が立つにつれて、だんだんその噂も、現実味を帯び始めた。
噂が流れて2ヶ月過ぎたあたりから、映像や写真といった決定的な証拠が出始めたのだ。当然、僕は知らないし、やってもいないから、否定した。テッペイや、おじさんたちも、「合成に違いない」と、
最初の内は、僕のことを信用してくれた。でも、時が経つにつれてテッペイたちの僕を見る目は、信用の目から疑いの目に変っていった。
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- 4 : 2024/01/16(火) 23:38:41 :
- 結果、僕は司令室にも入れなくなりGlobe内でも孤立。いつしか、仲間たちといる時間よりも、一人でいる時間のほうがながくなった。ハナは最後まで信用してくれた。僕的にもそれが、凄く嬉しかったし、心の支えにもなった。だから、いつか、皆で笑い会える日が来るという希望を持つこともできた。
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- 5 : 2024/01/16(火) 23:50:39 :
- 決定証拠が流れてから1ヶ月後、何を信用していいか分からなくなった。ハナもついに、疑い始め、次第に距離を置くようになった。ここまで来るともう、本当は遊星歯車装置の奴らととつるんでいたのではないか、自分自身が怪しく思えてくる。
「これから、どうすればいいもんかねぇ」
ため息とともにそんな言葉が、自然と口から出てくる。もうテッペイ、ハナ、アカリの3人で笑い合うことも、おじさんの家に帰ることも無くなるのかもしれない。自然と涙が頬を流れた。
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- 6 : 2024/01/17(水) 00:00:43 :
- あれから1週間経ったあとだろうか、増えていく 自分が遊星歯車装置とつるんでいたという、嘘の事実が消えないまま、僕はこの世を去った。
方舟派の舞台化だろうか。一人で海を歩いていたところを後ろから撃たれた。太もも一発、心臓一発
腹部に二発、計四発の弾丸が、僕の身体を貫いた。
頭に当たらなかったのは、不幸中の幸いだろう。意識が途切れる前、「夢塔ハナの回収、急げ」という声が聞こえた。その言葉は、今までの噂や嘘の映像、写真を方舟派がやったということを証明するには、十分過ぎる言葉だった。
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- 7 : 2024/03/26(火) 01:46:45 :
- 体が光で包まれている。
ここは天国だろうか。
周りを見渡してみるが何も無い。ただ、ただ、同じ風景がずっと広がっている。
「やり直したい?」
突然後ろからそんな声が聞こえてきた。
振り返ってみるとそこには、いつかの青髪のショートボブで赤いランドセルを背負っ少女がいた。
「…………やり直したいって?」
「そのままの意味。このまま、死んじゃっていいの?」
「………別にいい。生き返る意味、ないから」
「そっか。」
沈黙が、空間を支配する。
「君は……優しいんだね」
不意に少女がそんなことをつぶやいた。
「優しいって?」
「仲間にも信じてもらえず、挙句の果てには、想いを寄せている人からも見放される。」
「………………」
「私が君だったら、『復習したい』とか、『後悔させてやりたい』とか思うけどね」
「…………たしかに、君が言ってるようなことをすれば少しはスッキリするかもしれない。でも、その後はどうするの?頼れる人もいない中でどうやって生活すればいいの?」
「………………」
「復習したらそれっきり。だったら、僕は、このまま死を受け入れるよ」
また、沈黙が空間を支配する、
「だったら………逆行するのはどう?」
「………逆行?」
「「真夏ダイチ』としてもう一度、人生をやり直すの」
「人生を……もう一度……」
僕がオウム返しに答える。
「具体的には、君が生きた世界の時間を巻き戻す。」
そんなすごいことができるのか……
「………今更だけど、君って神様かなにかかな?」
「ノーコメント」
意外とプライベートを気にするタイプの人間なんだろうか。いや、人間かすらも怪しい。
「分かった。要は、1からやり直すってことね。」
「そうゆうこと。1からやり直せるから、君には、選択の余地が生まれる。」
「………ハナやテッペイ、アカリと関わらない行き方ができるってこと?」
「そうゆうこと。でも、その場合、地球が危なくなるけどね」
「………………」
「何もせずに、このまま死ぬか、逆行して、明るい未来を手に入れるか。」
逆行しても、失敗するかもしれない。
でも、
でも、このまま何もせずに死ぬなんて嫌だ。
「………………決めたよ。僕は、逆行する」
「分かった。幸運を祈ってる」
すると、周りが眩い光りに包まれだす。
そして、僕の視界は、真っ白になった。
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- 8 : 2024/03/27(水) 00:54:32 :
- 「………ん」
光が晴れて目が見えるようになってくる。白い天井に、消毒液の匂い。
(ここは……病院?!)
時間を戻すといっても、僕は、生きていた17年間一度も入院するような怪我をしたことがない。
(ま、まさか……)
僕は、恐る恐る声を出してみる。
「アーアウ」
出たのは、まるで赤ちゃんが出すような声だった。
▼
人生で2度も赤ちゃんを経験するとは思わなかった。
最初の内は、苦労の連続だった。
耐え難い尿意、便意に、おむつの感触、
それらに晒される日々。
特に辛かったのは、授乳である。何が悲しくて高校生にもなって母の乳を飲まないでいけないのか。
今更、遅いと思うが、逆行したことをすごく後悔している。
▼
逆行して半年経った頃、親が離乳食を食べさせてきた。
乳以外の食事なんて久しぶりである。
あまりの美味しさと嬉しさに、ぼくは、無我夢中になって食べた。
飯にここまでの感動を抱いたのは、生まれて初めてだった。
▼
逆行して3〜4年が経った頃、母さんが、なくなった。
どうやら、重い病気を患っていたらしい。
逆行する前は母の記憶なんてほとんど残っていなかった。
でも今は、母さんの怒った顔、泣いた顔、笑った顔すべてが思い出として頭の中に残っている。
だから、すごく悲しかったし、涙が出なくなってもずっと泣いていた。
大切な人が亡くなるのってこんなに辛いんだな。
▼
そして8歳の時、種子島で、彼――――嵐 テッペイに出会った。
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- 11 : 2024/06/18(火) 23:26:14 :
- フェンスの向こう側にいる彼は、人の形をしていて人ではない。そんな雰囲気を醸し出していた。
「よッ!」
2〜3mはあるであろうフェンスを飛び越え、地面に着地する。
「ッ〜〜!」
足にくる衝撃は当然ながら痛い。
足の痛みに耐えながら、目の前方を見ると、嵐テッペイ少年は不思議なものをみるような目で僕を見ていた。
「君はどこから来たの?」
「この島の外から!
ねぇねぇ、そんなことよりさゲームをしようよ!」
「ゲーム?」
「うん!え〜と………」
ズボンのポケットをまさぐる。
確かここらへんに……………
「あ!あったあった!」
そう言って僕はテッペイの目の前に青いペンダントを差し出した。
-
- 12 : 2024/06/20(木) 23:39:33 :
- 「何?それ」
「ブルースターって言うんだ」
-
- 13 : 2024/06/20(木) 23:53:30 :
- 「僕を驚かす事ができたらコレあげるよ」
僕がそう言うとテッペイはコクリと頷いて納得の意を示した。
まだ、生きていた頃―――前世とでも言おうか――テッペイと初めて会ったときには同じ事をした。
確かテッペイが近くにあった錆びれた鉄骨階段から飛び降りて、それに驚いた僕は腰を抜かしたっけ。
「あそこから飛び降りたら驚く?」
前世と同じようにテッペイは地面から4〜5mの高さはあるであろう鉄骨階段の踊り場を指さした。
「げぇ、あそこから飛び降りるの?絶対無理だって……………」
人が飛び降りたら、確実に足がお陀仏するであろう高さなので一応忠告はしておく。
もちろん、前世の時も忠告はしたさ。結局、飛び降りてその上無傷だったけど……………。
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- 14 : 2024/06/21(金) 00:17:02 :
- テッペイは「フフッ」とだけ笑うと、鉄骨階段を登っていき、踊り場の柵に足を掛けるとそのまま飛び降りた。
『ザッ』という着地音と共に彼が地面に着地する。
「全然痛くないよ」
当然のように無傷だったテッペイは、こちらを向いてニコッと微笑んだ。
「んッ!」
どんなことをするのか知ってはいたが、驚かされたのもまた事実。
僕はそっぽを向いて、テッペイに向かってブルースターを突き出した。
「いいの?」
「いいよ。驚いたから」
僕の突き出したブルースターを受け取ったテッペイは、物珍しそうにソレを見ていた。
「じゃあ」
不意にテッペイが声をあげる。
「僕が驚くようなことをしたら、このペンダント、返してもいいよ」
テッペイは手の平に乗せたブルースターをこちらに見せながらそう言った。
「フッフッフ」
僕は背中に手を回し、腰辺りをまさぐる。
前世ではブーメランを投げた。
空高く舞い上がり、空中で旋回してこちらへ戻ってくるそれに驚いたテッペイは、僕からもらったばかりのブルースターをすぐにこちらへ返す羽目になった。
「じゃ〜ん!」
僕はズボンに挟んであったブーメランを抜き取った―――――はずだった。
「へ?」
「え?」
僕の手は何故か銃型の武器―――――ライブラスターを握っていた。
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- 15 : 2024/10/26(土) 22:14:12 :
- 「な、なんでッ?!」
手に持つライブラスターを見ながら声をあげる。
前世で、このライブラスターを手に入れるのは高校2年生の夏だったはず。
それに対して僕の今の年齢は8歳だ。
あまりにも時期尚早すぎる。
「その銃…………あの子が持つのと似てる………」
テッペイが呟く。
「あの子って…?」
大方、テッペイの言うあの子というのが、夢塔ハナであることは予想がつく。
それでも前世に準えて、知らない風を装っておく。
「ついて来て」
テッペイは僕に向かってそう言うと、施設脇の扉の方へ歩き出した。
僕もテッペイの背中を追ってついて行く。
前世であれば、もうしばらくテッペイと遊んでハナの元へ行くはずだ。
しかし、8歳の僕がライブラスターを既に所持しているという、予想外の事態によって前世とは大きく行動が変わってしまっている。
もはや、前世での経験は意味を成さないと考えたほうがいい。
「ここだよ」
不意に聞こえたテッペイの声。
僕は一旦考えるのをやめて、テッペイのほうを見た。
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- 18 : 2024/10/26(土) 23:07:42 :
- テッペイの指した方向にあるのは、塗装が剥げ所々の錆が目立つ鉄製の扉。
当然、防犯対策で手のひらサイズの南京錠が掛かっている。
「ここに、君の言うあの子がいるの?」
「そうだよ。ちょっと待ってね」
そう言うとテッペイは南京錠を両手で掴んだ。
瞬間、鍵の掛かっていた南京錠は『ガチャッ』という音と共に、いとも容易く解除される。
扉が錆の擦れる音をたてながらゆっくりと開く。
テッペイが空き巣をしたら怖いもの無しではないのだろうか。
怪奇現象とも言える摩訶不思議な力で南京錠を開けたテッペイを見ながら僕はそう思った。
「この中だよ」
扉の先の暗闇を指しながらテッペイは言う。
奥から僕たちの方へ流れてくる涼しい風が、嫌に恐怖感を引き立てた。
「ここ……入っていいの……?」
「多分………。ついて来て」
迷わず暗闇の方へ足を進めるテッペイ。
恐怖心と躊躇いをどこかへ置いてきてしまったのだろうか。
まぁ、その御蔭で命を助けられたことも少なくないけれど。
とりあえずついて行こう。
僕はスタスタと先を行くテッペイの背中を追った。
階段を降り、広い部屋を抜けて、狭い通路を通って、また階段を降りて、十字路を右に曲がって、今度は階段を登って。
もはや、自分が地上にいるのか地下にいるのか分からない。
「ねぇ、本当にこの道であってるの……?」
先程から無言のテッペイに向けて尋ねる。
「うん。だって、僕、分かるから」
自信げに返答するテッペイ。
テッペイが嘘を付く性格ではないことは、前世でよく分かっていたけど、やはり心配してしまう。
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- 19 : 2024/10/26(土) 23:10:04 :
- 僕は黙ってテッペイの後ろをついて行くことにした。
それからさらにしばらく歩き、足が棒になりかけていた頃。
歩いている通路の奥に、紫色の明るい光が見える。
「ここだよ」
たどり着いた場所はやはり、大きな球体の中にハナが眠る、僕とハナが初めて出会った部屋だった。
「この子は……?」
「この中でずっと眠ったままなんだ」
ハナを見ながらテッペイが答える。
やっぱり眠ったままなのか。
前世では、ハナは僕が目の前の球体に触ることで初めて目を覚ました。
僕が球体に触るまでに目を覚ましたことがあったのではないかと思ったけど、そんなことはなかったらしい。
まぁ、テッペイが「"ずっと"眠ったままなんだ」と言ってるから当然と言えば当然か。
僕は前世同様に球体に向けて手を伸ばした。
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- 20 : 2024/10/27(日) 21:07:41 :
球体と僕の手が触れる瞬間。
僕の中で渦巻く、ドス黒い感情が前世での記憶を呼び起こす。
前世、最期の最期で向けられた、ハナからの軽蔑、憎悪に満ちた目。
彼女の青い瞳に映る僕はもはや、キャプテンではなく、ただの裏切り者だったのだろう。
「ッ……………」
手が止まる。
僕は震えていた。
もう一度、ハナに会えると歓喜していた自分がいた。
でもその反面、どうして僕のことを信じてくれなかったのか、という復讐にも似た感情が湧き出てくる。
「どうしたの………?」
隣りにいるテッペイが不思議そうにこちらを見つめてくる。
まだ、幼く子供特有の可愛らしさを残した顔。
その顔が、前世のテッペイの顔と重なる。
その顔から放たれた罵詈雑言の数々。
脳内で、まるで今言われたかのように再生される。
誰も、誰も悪くない。
みんな方舟派の奴らに騙された被害者なのだ。
テッペイもハナも、そしてアカリも。
誰も悪くない。
なのに、なのにッ!
許せない。復讐してやる。信じていたのに。
僕の中のドス黒い感情が、無限の憎悪を生み出す。
テッペイやハナ、アカリへの憎悪。
あの日、キャプテンと呼んでくれたみんなはどこへ行ってしまったのか。
あの日、みんなひとつ屋根の下で過ごした思い出はどこへ行ってしまったのか。
もう、僕は、あの頃の、前世の僕へは戻れないのかもしれない。
この、前世での記憶が消えるまでは。
今の僕には、テッペイやハナ、アカリへの友情はこれっぽっちも無い。
あるのは、復習したいという憎悪のみ。
『あんたってそんな最低な奴だったんだ』
誰だか。
前世で言われた言葉を思い出す。
だが、その言葉もあながち間違いでは無いのかもしれない。
「…………」
僕は無言のまま、目の前の球体へ触る。
球体の中にいる、褐色の肌を持つ少女――――夢塔ハナが目を覚ます。
彼女は、目を開けるとこちらへ寄ってきて
「あなたがそうなの?」
と、呟く。
彼女の尋ねた言葉に対し、僕は目を背けることしかできなかった。
今の僕には、ハナもテッペイも、あの日僕をキャプテンと呼んでくれたハナやテッペイとは違って見えた。
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- 21 : 2024/10/27(日) 23:22:36 :
その後、球体から出てきたハナに自分が着ていた上着を着させた。
ハナは僕の着ていた上着を着ると、大事そうに裾を握っていた。
もう、心の中がぐちゃぐちゃだ。
もう一度、ハナたちとやり直せると思っている反面、許したくないと断固として拒絶の姿勢をとろうとしている自分がいる。
自分は、果たしてどうあるべきなのか。
中途半端なモヤッとした気持ちのまま。
梅雨の湿気のような気持ち悪さがずっと付いて離れない。
「ねぇ、大丈夫?」
僕が物思いにふけていると、ハナが心配そうに見つめてくる。
「……うん、行こっか……」
僕はハナと目を合わせずにそう答え、テッペイへ今いる施設から出ることを促す。
「うん」
テッペイは短く答えると、ハナを連れて元来た道の方へ歩きだす。
僕は重い足取りでそれに続いた。
テッペイ、ハナ、僕の順で狭い通路、階段をひたすら歩き続ける。
会って間もないからか、テッペイもハナも終始無言。
漂う気まずさを、時々、欠伸をしたり、咳をしたりして誤魔化す。
でも、長続きせず、ついに僕も諦めて、この気まずい空気に身を任せることにした。
計6本の足によって奏でられる足音のみが場を支配する。
「…そういえば…」
不意にテッペイが声をあげた。
「君たちの名前は何ていうの?」
そういえば、まだ言ってなかったか。
僕は2人の名前を知っているから気にしなかったけど、テッペイとハナは知らないもんな。
「………夢塔………ハナ」
ハナが小さく答える。
「えっと、僕は真夏ダイチ」
僕もそれに続いて答えた。
「夢塔ハナ、真夏ダイチ。僕の名前は嵐テッペイ」
テッペイは微笑みながらそう答える。
まるで、これからも仲良くしていこうというような微笑み。
その笑顔が、憎くて、憎くて、憎くて。
自分が喉笛に飛びつきそうになるのを既のところで抑えた。
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- 22 : 2024/10/27(日) 23:49:04 :
自分でも驚いた。
今、僕は何をしようとしたんだ……?
あと少し、冷静さを取り戻すのが遅ければ、今ごろ僕はテッペイを押し倒していただろう。
でも、それと同時に納得した。
今の自分の行動ではっきりした。
やっぱり僕は、テッペイやハナ、いや、こいつらが憎いんだ。
だから、テッペイの喉笛に飛び掛かろうとした。
だから、ハナを見たときに嫌な思い出が蘇った。
分かってしまえば全部単純なことだ。
きっと、夜祭アカリに会ってしまえば同じことが起こるだろう。
だから、もう、止めよう。
前世に準えて生きるのは終わりだ。
テッペイ、ハナ、アカリとの仲良しごっこも、全部全部、終わりにしてしまおう。
もう、僕はキャプテンじゃない。
せっかく生き返った今世、自分のために、自分を見つけるために生きよう。
一度決断すると、胸の内に掛かっていた雲がスゥッと晴れていくのが分かる。
「出口に着いたよ」
テッペイの声が聞こえた。
僕は入ってきた扉の近くいるテッペイに一瞥もくれず、外へ出たのだった。
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- 23 : 2024/10/28(月) 22:19:26 :
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前世に同様、外にはおじさん―――西久保ツトムと複数の武装した警備員という、子供3人を迎えるには大袈裟すぎる大人たちがいた。
当然、無断で施設に侵入した僕たちは連行。
事情聴取を受けたあと、おじさんのに引き連れられて、父さんの元へ戻された。
夜まで続いた事情聴取によって、半分眠りかけていた僕を、父さんは何も言うことなく迎い入れ家に帰宅したあと、僕を布団へ就かせた。
「怒らないの……?」
父さんに何か言われると覚悟していた僕は、結局何も言わなかった父さんに聞いた。
「息子の大冒険に首を突っ込めるほど、お父さんは若くないさ」
父さんは頭をかきながらそう答えた。
どうやら、施設への不法侵入などの出来事は、僕が行った"大冒険"ということで済ましてくれるらしい。
「……ありがと」
僕は小さくそう呟いた。
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