このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
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新訳鬼滅の刃 第1話「悲劇」
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- 1 : 2021/01/21(木) 21:24:43 :
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・・・・どうしてこんなことになった?
なんで、私の家族が殺されたの?
誰が、どういう理由で殺したの?
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- 2 : 2021/01/21(木) 21:42:18 :
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竈門家
季節は冬の真っ只中。山も山の下にある町も、あたり一面がきれいで真っ白な雪に包まれていた。
その山の中にある一軒屋では、少年が一人、釜から炭を取り出していた。
顔面が炭で真っ黒になりながらも、少年は手慣れた手付きで長短な炭を次々とカゴに入れていく。
女性「炭治郎どうしたのその顔、真っ黒じゃないの」
その少年を見た割烹着を着た女性が、持っていた手ぬぐいでその顔を吹いてあげた。
竈門葵枝「無理して行かなくていいのよ」
葵枝「雪も積もってるし、足を滑らせたら危ないよ?」
竈門炭治郎「わかってるよ母さん」
炭治郎「だけどもうすぐ正月だし、みんなに腹いっぱい食べさせてあげたいんだ」
炭治郎「だから少しでも炭を売らないと」
葵枝「・・・ありがとね炭治郎」
葵枝「気をつけてね」
炭治郎「わかってるよ」
竈門家の母「竈門葵枝 」は
竈門家の長男「竈門炭治郎 」を温かい目で見送る。
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- 3 : 2021/01/21(木) 21:57:10 :
- 期待です!
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- 4 : 2021/01/22(金) 09:11:31 :
- >>3
期待ありがとうございます!
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- 5 : 2021/01/22(金) 09:27:44 :
竈門茂「あ、兄ちゃんまた町行くの?」
竈門花子「お兄ちゃん、私も連れてって!」
山を降りようとする炭治郎を二人が彼の羽織を掴んでその足を止めた。
竈門家の次女「花子 と
三男の「茂 」だった。
竈門家は炭治郎を含め、子供は全員で六人いる。
炭治郎はその長男であり、彼らのまとめ役も担っている、
母親の葵枝から見れば彼はよくできている子なのだ。
葵枝「こらおやめ、花子、茂!」
葵枝「お兄ちゃんの邪魔しないの!」
葵枝「雪が積もってるから荷車も引いていけないし、乗せて休ませてもらえることもできないんだよ」
竈門竹雄「でも、だって今日一緒に木を切るって・・・!」
葵枝「帰ってからでも遅くないだろ」
葵枝「だから竹雄、できる範囲でいいから今のうちに何本か切っといて」
竹雄「・・・わかったよ」
炭治郎「ごめんな竹雄、帰ったら一緒にたくさん切ろうな」
竹雄「・・・今度こそちゃんとだぞ」
炭治郎は次男の「竹雄 」の
頭をポンと撫でて、弟たちと妹、母親に見送られながら下山していった。
花子「いってらっしゃ〜い」
茂「気をつけてね!」
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- 6 : 2021/01/22(金) 10:39:18 :
- 期待
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- 7 : 2021/01/22(金) 16:07:26 :
- >>6
期待ありがとうございます
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- 8 : 2021/01/22(金) 16:30:03 :
竈門禰豆子 「あ、お兄ちゃん」
炭治郎「禰豆子」
禰豆子「これから下山?」
炭治郎「ああ、炭を売りに行ってくる」
禰豆子「雪積もってるから、気をつけてね」
炭治郎「ああ、みんなを頼む」
長女「禰豆子」は
末っ子の「六太 」を背負いながら兄の背中を見送る。
禰豆子(お父さんが死んじゃって、みんなお兄ちゃんにくっついて回るようになっちゃって・・・)
禰豆子(みんな寂しいんだよね)
六太「んん・・・姉ちゃん?」
禰豆子「あぁ、ごめんね六太、起こしちゃった?」
六太「寒い・・・」
禰豆子「そうね、早く帰ろうか」
禰豆子は六太と一緒に家に向かった。
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竈門家
禰豆子「ただいま」
葵枝「お帰り禰豆子、六太」
竹雄「姉ちゃん、悪いけどこっち手伝ってくれ!」
禰豆子「ちょっと待ってて竹雄」
禰豆子「お母さん、六太ちょっとお願い」
葵枝「あまり遠く行くんじゃないよ」
禰豆子は薪割り用のナタを持ち、竹雄の元へ向かった。
禰豆子は竹雄の切った大木を片手で持てるほどの長さに切り分けていく。
長さは短くて30cmほど、長くて45cmほどの丸太に切り、さらにそれを四等分、薪 の形にする。
禰豆子(お兄ちゃんも頑張ってるんだから、こっちも頑張んないと!)
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- 9 : 2021/01/22(金) 16:55:31 :
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町
炭治郎はようやく山を降り、町へ到着した。
山と違って雪はあまり積もっていなかった。
理由は簡単、ここに住んでいる人たちが雪かきをしたからだ。
その証拠に、今もなおクワやほうきを使って、かいている人もあちこちにいる。
女性「おや炭治郎ちゃんじゃないか」
炭治郎「こんにちはおばさん」
女性「こんな時間まで仕事かい、よく働くねぇ」
炭治郎「ええ、もうすぐ正月なんで、たくさん稼いで、みんなにご馳走したいんです」
女性「そうかい、うちの息子と違ってホントいい子だね」
女性「じゃあさっそく、炭くださいな」
炭治郎「ありがとうございます!」
男性「おー炭治郎」
炭治郎「おじさん!」
男性「こっちもくれねえか、ちょうどたくさん欲しかったんだ!」
炭治郎「はい、すぐに!」
あちこちから炭の要求が炭治郎に届き、炭治郎は炭を売るとまた次へ、また次へと足を運んでいった。
男の子「おーい炭治郎!」
男の子「助けてくれ炭治郎!」
炭治郎「ど、どうしたの!?」
炭治郎が炭を売っている最中、炭治郎より少し年が上と思われる男の子が彼に泣きながらすがりよってきた。
男の子「俺皿割った犯人にされてんだよぉ!」
炭治郎「えぇ?」
女将「そいつが高級な皿を落として割ったんだよ!」
男の子「だから俺じゃねえよ、俺が帰ったときはいつの間にか割れてたんだよ!」
女将「じゃあ誰がやったってんだい!?」
男の子「なあ炭治郎頼む、この皿嗅いでくれ!」
男の子「いつもみてえに嗅いで犯人見つけてくれ!」
炭治郎「わ、わかったよ」
男の子は炭治郎に割れた皿の破片を差し出すと、炭治郎は顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
炭治郎「」クンクンクン
炭治郎「・・・猫だ」
炭治郎「猫の匂いがする」
女将「・・・・え、猫だったの?」
男の子「ほら見ろ、俺じゃなかっただろ!」
男の子「ありがとな炭治郎、助かったよ!」
炭治郎「どういたしまして」
炭治郎は事が収まると、再び炭を売りに戻った。
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- 10 : 2021/01/22(金) 17:53:22 :
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竈門家
家から少し離れた場所で、禰豆子と竹雄は未だに薪用の木を切っていた。
竹雄「姉ちゃん、次はあっち行こうぜ」
禰豆子「竹雄大丈夫?家から随分離れちゃったけど」
竹雄「大丈夫さ、それにあっちにはもっと長い木もあるしよ」
禰豆子「でも竹雄、暗くなったら鬼が出るって・・・」
竹雄「鬼なんかへっちゃらだよ」
竹雄「それに、これがあれば平気だろ?」
竹雄は懐から、紫色の小袋を取り出した。
竹雄「この藤の花の匂い袋を付けてれば、鬼はよってこないんだ!」
禰豆子「そ、そうだけど・・・」
竹雄「じゃあ早く行こうぜ姉ちゃん!」
禰豆子「・・・わかったわよ」ハァ
禰豆子はしぶしぶ竹雄についていった。
竹雄が持っている藤の花の匂い袋には鬼が嫌う匂いが出るようになっており、これが鬼除けとなる役目を持っている。
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町 夕方
日はすっかり落ち、辺りは夜になろうとしていた。
炭治郎は炭を全部売り終え、一息ついていた。
炭治郎「よし、こんだけあれば、みんなにうまいもの食わせられるぞ」
炭治郎「早く帰って、みんなを喜ばせてあげようっと」
炭治郎は袋にたくさん貯まった銭を見て笑みを浮かべ、家に帰ろうと立ち上がった。
女将「おーい炭治郎ちゃん」
帰ろうとする炭治郎を誰かが呼び止める。
先程皿の件で騒いでいた女将さんだった。
炭治郎「なんです?」
女将「アンタに会いたいって人がいるんだけど、時間空いてるかい?」
炭治郎「俺に?誰です?」
女将「こっちよ、ついてきて」
炭治郎は女将についていき、女将が経営している宿に向かった。
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宿
宿に入ると、炭治郎はわらじを脱ぎ、背負っていた炭を入れていたカゴをおろした。
女将「二階にまたしているんだ、私は仕事に戻らないといけないから」
炭治郎「わかりました」
炭治郎は階段を上り、二階へあがった。
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- 11 : 2021/01/22(金) 18:43:03 :
二階に上がると、そこには十とある部屋のドア、奥には景色が一望できるよう窓が一枚ついていた。
誰も停まっていないのか、物音はしていない。
炭治郎「俺を待ってる人、どこにいるんだろう?」
炭治郎「あのぉ、すいませーん!」
炭治郎は大きな声で呼んだが、返事はなかった。
誰もいないのか、そう考えた炭治郎は女将に訪ねようと階段を降り始めようとした。
「待ちなさい」
炭治郎「っ!?」ビクッ
突然後ろからした声に炭治郎はビクリとし、思わず飛び上がり、そのまま床に尻餅をついた。
「君が、竈門炭治郎くんだね?」
炭治郎「は、はい!」
炭治郎の目の前には見ず知らずの男性がいた。
白い帽子にネクタイ、ズボン、紺色で仕立てのいい背広に身を包んでいる、属で言う現代風な服装をした紳士のような雰囲気を感じさせていた。
その容姿は宿の風景には似つかわしくなく、それ故にその姿はたいそう目だって見えた。
炭治郎「あの、あなたは?」月彦 「私は浅草に住んでいる月彦という者だ」
炭治郎「月彦さん、ですか?」
月彦「よろしく炭治郎くん」
炭治郎(誰だこの人?)
炭治郎(なんで俺の名前を知ってるんだ?)
炭治郎は見知らぬ紳士「月彦」と握手を交わす。
月彦「炭治郎くん」
炭治郎「はい」
月彦「お父さんは元気ですか?」
炭治郎「え、父のことですか?」
月彦「私は君のお父さんとは古い付き合いでね、久々に会おうと思ってここに来たんだが」
炭治郎(この人、父さんの友人なのか?)
炭治郎(でも月彦なんて名前、父さんから聞いたことないけど・・・)
炭治郎「父は、亡くなりました・・・」
月彦「亡くなった?」
炭治郎「はい、少し前に病気で・・・」
月彦「そうでしたか・・・」
月彦「心からお悔やみを申し上げます」
月彦は深々と頭を下げた。
月彦「ということは、今はお母さんが生計をたてているのですか?」
炭治郎「いえ、俺も俺の弟と妹も頑張ってなんとか暮らしています」
炭治郎「今日だって、家で作った炭を売りに来たんです」
月彦「それは感心ですね、お父さんに似て素晴らしい」
炭治郎「い、いやぁ////」テレ
炭治郎は褒められると、わかりやすく顔を赤くして照れた。
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- 12 : 2021/01/22(金) 22:42:13 :
月彦「炭治郎くん、君に一つお願いがあるんだが」
炭治郎「はい、なんでしょう?」
月彦「君の家まで、案内してもらえないか?」
炭治郎「え、今からですか?」
月彦「せめて君のお母さんと弟と妹に挨拶していきたいんだが」
炭治郎「でも、もう暗くなって遅いですし、それに、俺の家は結構山を登らないといけませんよ!」
月彦「構いませんよ、私もそれなりの体力はあります」
月彦「それにこんな暗いなか、君みたいな子供一人帰るのは危険だ」
炭治郎「そう・・・ですか」
月彦「決まりですね、ではさっそく行きましょう」
炭治郎「ああ、待って月彦さん!」
月彦はスクッと立ち上がり、階段を降りていき、その背中を炭治郎は追いかけた。
月彦「女将さん、場所を貸してくれてありがとうございます」スッ
月彦は胸のポケットから二折にした紙幣の束を取り出し、女将に渡した。
女将「お、お客さん、こ、こんなに!」
月彦「構いません、私の気持ちとして受け取ってください」
月彦「さあ行こうか、炭治郎くん」
炭治郎「は、はい!」
炭治郎(あんなにたくさん渡すなんて、この人、すごい金持ちなのかな!?)
炭治郎は目を丸くしながら渡された代金を見つめる女将を見ながらそこを離れていく。
そして月彦と共に山を登っていった。
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山中
炭治郎「月彦さんは、なにかされているんですか?」
月彦「ん?」
炭治郎「だってさっき、あんなに一杯渡して・・・」
月彦「私は、とある商業を営んでいてね」
月彦「ずっと前からある古い会社の経営を任されてるんだ」
炭治郎「古いって、どれくらい前からあるんですか?」
月彦「そうだね、およそ・・・百年以上は経ってるかな」
炭治郎「ひ、ひゃく!?」
月彦「あくまで父から聞いた話・・・ですけどね」
炭治郎「す、すごいですね・・・!」
月彦「ええ、代々受け継がれてきた会社ですからね」
炭治郎は月彦と話し合いながら、山を登っていく。
すると道中にある「三郎」の家を通りすがった。
三郎(ん、ありゃ炭治郎か?)
三郎(一緒にあの男は誰だ?)
三郎(客か、珍しいな、あの家族に客がくるなんて)
三郎は不思議に思いながら、二人を家の中から見ていた。
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- 13 : 2021/01/23(土) 22:48:29 :
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竈門家前
登山から三十分、ようやく二人は家に到着した。
炭治郎「月彦さん、あそこが俺の家です」
月彦「やっと着きましたか」
炭治郎「お疲れさまでした」
月彦「ええ、久々にいい運動でしたよ」
炭治郎「待っててください、母を呼んできますから」
炭治郎は家に向かって駆けていく。
外には誰もおらず、窓も戸も全部閉まっている。
外には禰豆子と竹雄が割った薪の束が置いてあった。
炭治郎「竹雄頑張ったな、いい炭ができそうだ」
炭治郎は薪の山を見つめると、ボソリとつぶやく。
炭治郎は戸を笑顔で開けて、中に入った。
炭治郎「ただいま!!」
花子「あ、お兄ちゃんだ!」
茂「兄ちゃん帰ってきた!」
葵枝「お帰り炭治郎!」
炭治郎「母さん、会わせたい人がいるんだ!」
葵枝「え?」
炭治郎「うん、月彦さんって人なんだけど・・・」
ドスウウゥッ
炭治郎「・・・・・・え?」
葵枝「ガ、ガハッ!」
バタン
それは一瞬だった。そして一瞬だったために、その時何が起きたか分からなかった。
だが一つ見えたものがあった。
炭治郎の目の前で、葵枝が何者かに胸を長く、太いモノで刺され、大量の血を流し、吐き出しながら倒れた光景だった。
炭治郎「母さん!!!」
葵枝「たん・・・じろ・・・・」
花子「どうしたのお兄ちゃん?」
茂「何かあった?」
炭治郎「来るなぁ!!逃げろ!!」
兄の叫びを聞いて二人がこちらに来ようとするのを炭治郎はとっさに「逃げろ」と叫んだ。
「おや、どこに逃げようってんだい?」
炭治郎「っ!!?」
二人の後ろには、見知らぬ男がいつの間にか立っていた。
長い金髪にてっぺんには赤い染みのようなモノが色づいており、血のように濃くて赤い服を来ている。
そして手には黄金に輝く扇を両手に持っている。
「ねぇ二人とも、今日俺気分いいから一緒に遊ばない?」
花子「え、誰?」
月彦「童磨、何をしている!?」
炭治郎「え?」
炭治郎が振り向くと、そこには月彦が立っていた。
だがそれは、さっきまで一緒に歩いていた紳士と違い、
目は赤く光、牙をむき出しにし、恐ろしい形相で金髪の男を睨みつけていた。
月彦「そいつらには用はない、さっさと始末しろ」
童磨「・・・ごめんね、そういうわけだから」
月彦は男に命じるように言うと、男は扇を振りかざした。
炭治郎「やめろおおぉぉ!!」
ズバアアアァッ
男は扇を振り下ろした。
同時に二人の身体が肩から引き裂かれ、そのまま声をあげることなく、バタリバタリと倒れた。
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- 14 : 2021/01/23(土) 23:09:05 :
炭治郎「あ・・・・あぁ・・・・」
炭治郎は目の前で起きた悲劇に頭が真っ白になった。
これは現実なのか、夢に決まってる、
ただそう考え、信じたくない気持ちで一杯だった。
月彦「待て、二人足りないぞ」
炭治郎「え?」童磨 「え、これで全員じゃなかったんですか?」
月彦「こいつからは六人と聞いている、他にはいなかったか?」
童磨「いえ、一通り見ましたけど、人っ子一人・・・」
月彦「・・・まぁいい、目的のものは手に入った」
月彦「童磨、この小僧を連れて行く」
童磨「おやぁ随分可愛い顔してるねぇ」
童磨「これが魚壺 殿の言っていた子供ですか?」
月彦「ああ、丁重に持っていけ」
童磨「かしこまりました」
童磨と呼ばれる男は
炭治郎を担ぐように肩に乗せる。
炭治郎「・・・なんでだ」
童磨「ん?」
炭治郎「なんでみんなを殺したんだ!!?」
童磨「おいおい暴れるなよ」
炭治郎「答えろ!!!」
炭治郎は担がれながらも発狂しながら暴れまわるが、童磨の手は振りほどけなかった。
月彦「童磨、静かにさせろ」
童磨「は〜い」バサッ
童磨は扇を広げると、その扇で炭治郎の顔を仰いだ。
童磨「ほ〜ら眠りな〜、いい香りを嗅いで眠りな〜」
炭治郎「な、何を・・・!」
するとものの数秒で炭治郎はカクンと首を落とし、眠ってしまった。
月彦「よし、引き上げるぞ」
童磨「はっ」
べ べ ん
すると山から三味線を弾くような音が響き渡った。
その音が鳴ると同時に、二人はフッと消えた。
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- 15 : 2021/01/24(日) 20:52:18 :
竹雄「よし、こんだけ切れば来年まで持つだろう」
禰豆子「ちょっと切り過ぎじゃない?」
竹雄「なに言ってんだよ姉ちゃん、木は切るときは一杯切っとくもんだろ」
禰豆子と竹雄は木を切り終えて、たくさんの丸太を背負いながら帰路を歩いていた。
竹雄が張り切りすぎたせいで、二人は大量の薪を背負っていた。
禰豆子「お兄ちゃんもう帰ってきたかな?」
竹雄「多分な、俺たちも急ごうぜ」
急ごうにも大量の薪に加え、更には雪を踏んでいくため、二人は思うように早くは動けなかった。
白い息を吐きながら、二人は暗い山道を歩いていく。
すると遠くから、明かりが見えてきた。
竹雄「姉ちゃん、見えたぞ!」
禰豆子「ふぅ、やっと着いたぁ」
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- 16 : 2021/01/25(月) 20:38:21 :
禰豆子「まったく、今日はホントに疲れ・・・」
ツン
禰豆子「え?」
竹雄「どうした姉ちゃん」
何かを感じた禰豆子は足を止める。
彼女が感じたそれは感覚ではなく、匂いだった。
禰豆子も兄の炭治郎同様鼻がよく効く嗅覚の持ち主だった。
彼女が嗅いだ匂い、それは鼻をつんざくようなとても強く、不快な匂いだった。
禰豆子「何この匂い・・・・血?」
ドサッ
禰豆子は背負っていた薪を落とし、雪に足をとられながら家に駆け出していった。
竹雄「おい姉ちゃん、どうしたんだよ!?」
竹雄もその後を追う。
そして禰豆子は家にたどり着く。
明かりはついているが、誰もいないように物静かだった。
そして冬の時期もあって常に戸締まりしているはずの戸は開いたままだった。
禰豆子はそこから中を見ると・・・そこには・・・
葵枝「」
身体から大量の血を流して倒れた母葵枝、
その横には身体を引き裂かれた茂と花子の無惨な姿があった。
禰豆子「いやあああああああああぁぁぁぁっ!!」
その地獄絵図に禰豆子は絶叫した。
その声を聞いた竹雄も急いで駆けつけてくる。
竹雄「姉ちゃん、どうし・・・・」
竹雄「うわああぁぁっ!!」
竹雄はそばに駆け寄り、その身を揺すったが声は聞こえなかった。
茂も花子も、虚ろな目を開けたまま、既に息絶えていた。
竹雄「一体何があったんだ!?」
竹雄「熊に襲われたのか!?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・た・・・・け・・・・お」
かすかに誰かが竹雄を呼んでいた。それは葵枝だった。
弱々しい声で、最後の力を振り絞るように、葵枝はか細い声で竹雄を呼んだ。
竹雄「母さん!!」
禰豆子「お母さんしっかりして!!」
葵枝「た・・ん・・・じ・・・つれ・・・て・・・かれ」
禰豆子「たんじ・・・お兄ちゃんがどうしたの!?」
竹雄「連れてかれたって誰に!?」
葵枝「ぼ・・うし・・・おと・・・こ」
竹雄「帽子の男?」
禰豆子「その人がお兄ちゃんを連れてったの?」
葵枝「おね・・・がい・・・・あのこ・・・」
ゴフッ
葵枝は吐血し、そのまま首を静かに傾け、事切れた。
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- 17 : 2021/01/25(月) 21:11:30 :
禰豆子「母さん!!母さん!!」
竹雄「母さん!!母さん!!」
二人は母の死体にすがりつき、泣きじゃくった。
するとそこに・・・
「おい、大丈夫か!?」
後ろから男性の声がした。
二人が振り返ると、そこには「鬼殺隊」の制服を着た若い男がいた。
腰には刀をさし、左右違う柄をした羽織を着ている。
鬼殺隊士「これは・・・・」
鬼殺隊士「何があったんだ?誰にやられた?」
鬼殺隊士は二人に問いかけるが、二人は泣くばかりで話を聞ける状態ではなかった。
鬼殺隊士(状況からするに、この女性は二人の母親か)
鬼殺隊士は葵枝の死体に触れてみると、わずかに体温を感じた。
鬼殺隊士(まだかすかに体温がある)
鬼殺隊士(殺されてまだ間もない)
鬼殺隊士(・・・とにかく、今はここを何とかしないと)
鬼殺隊士は一旦家をでて空に向かって「寛三郎!」と叫ぶ。
すると彼のもとに一羽のカラスが降りてきて、彼の肩に止まった。
鬼殺隊士「近隣の隊士に招集をかけろ」
鬼殺隊士「町の警備を強化させるんだ」
寛三郎「了解・・・・」バサバサッ
カラスは飛び立ち、町の方へと飛んでいった。
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- 18 : 2021/01/25(月) 21:58:48 :
- 冷静に考える気取った紳士服であんな山奥に向かって家族1ダースだけ殺して帰ってくるとかあのマイケルジャクソンシュール過ぎる。
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- 19 : 2021/01/26(火) 18:46:24 :
- >>18
僕も見直してみると確かにそう思いましたww
でも多分原作の彼もほぼ近い設定ですよね・・・
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- 20 : 2021/01/26(火) 19:22:03 :
鬼殺隊士「よし、あとはこの二人を・・・」
鬼殺隊士は二人を保護しようと手を伸ばす。
だが、二人は冷たい手を握りしめたまま涙を流し続けていた。
鬼殺隊士「二人とも、母はもう死んでる」
鬼殺隊士「手伝ってやるから、三人を・・・」
禰豆子「なんで・・・・」
鬼殺隊士「?」
禰豆子「・・・・どうしてこんなことになった?」
禰豆子「なんで、私の家族が殺されたの?」
禰豆子「誰が、どういう理由で殺したの?」
禰豆子は隊士に顔を向ける。
泣いてぐしゃぐしゃになった顔を、隊士は表情を変えることなく見つめた。
鬼殺隊士「・・・恐らくこれは鬼の仕業だ」
竹雄「鬼・・・だと?」
鬼殺隊士「偶然この山をさまよっていた鬼が、偶然この家を見つけて・・・」
グッ
竹雄はその言葉を聞くと急に隊士の胸ぐらを掴んだ。
竹雄「じゃあ母さんは!花子は!六太は!」
竹雄「偶然殺されたっていうのかよ!!?」
鬼殺隊士「・・・そうなるな」
竹雄「ふざけんじゃねえぞ!!」
竹雄「コイツらが何をしたっていうんだ!?」
竹雄「人を殺したわけでもねえのに、物を盗んだわけでもねえのに!!」
禰豆子「やめて・・・竹雄・・・」
竹雄「アンタ鬼殺隊だろ!!なんで早く来てくれなかったんだ!!」
竹雄「アンタが早く鬼を退治してりゃ・・・!!」
禰豆子「竹雄!!」
パアァァン
禰豆子が叫んだと同時に、隊士は竹雄の頬に平手を打った。
竹雄は地面に倒れ、打たれた頬を庇いながらうずくまった。
禰豆子は駆け寄りながら、「大丈夫!?」と声をかけた。
鬼殺隊士「貴様はそれでも男か!?」
鬼殺隊士「確かに俺が一足早ければ鬼から母親と妹と弟を守れていたかもしれない」
鬼殺隊士「お前から責められてもしょうがないことだろう」
鬼殺隊士「だがそれは、さっきまで家を空けていた奴には言われる筋合いのない言葉だ」
竹雄「!?」
竹雄は「なぜわかった?」と表情をうかべる。
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- 21 : 2021/01/28(木) 09:14:06 :
鬼殺隊士「お前たちのその血で汚れてない服を見れば誰でもわかることだ」
鬼殺隊士「それにここにずっと続いていた足跡もあまり雪が積もっていなかった」
鬼殺隊士「お前たちがさっき帰ってきたのは、隠しようもない事実だ」
竹雄「・・・・・・」
禰豆子「・・・・・」
隊士の洞察力に、禰豆子も、さっきまでわめいていた竹雄も言葉がでなかった。
鬼殺隊士「なぜこんな夜まで外に出ていたんだ?」
鬼殺隊士「母親から鬼に気をつけるよう言われてなかったのか?」
鬼殺隊士「鬼は神出鬼没、どこにいても今やおかしくない存在だ」
鬼殺隊士「そんな危機感も持ち合わせていない、人を守ることもできなかった人間に罵倒されるなど・・・」
鬼殺隊士「笑止千万!!」
禰豆子「」ポロポロ
竹雄「」ポロポロ
隊士から容赦なく己の愚かさを突かれまくられた二人は
涙をこぼし始める。
鬼殺隊士「お前は憎いか?」
鬼殺隊士「家族を殺した鬼が憎いか?」
禰豆子「」ポロポロ
禰豆子はわずかに首を動かす。
鬼殺隊士「ならば泣くな、絶望するな」
鬼殺隊士「今はそんなことをしている場合じゃない」
鬼殺隊士「お前たちが打ちのめされているのはわかっている」
鬼殺隊士「家族を殺された気持ちは俺もわかる」
鬼殺隊士「だがもう時を戻すことはできない」
禰豆子「・・・だったら、だったら私は・・・どうすれば・・・」
鬼殺隊士「怒れ」
鬼殺隊士「そして強くなれ」
鬼殺隊士「怒りは、許せないという気持ちは、揺るぎない原動力となる」
禰豆子「・・・・・・」
鬼殺隊士「どうした?」
鬼殺隊士「お前たちの心意気はそんなものか?」
竹雄「・・・したい」
禰豆子「竹雄?」
竹雄「俺は復讐したい!」
竹雄「母さんを、茂を、花子を殺した鬼を、俺は殺したい!」
禰豆子「私も!」
禰豆子「そして、お兄ちゃんを連れ戻したい!」
二人は泣き声を交えながら、大声で叫んだ。
隊士はそれを見て、キッとしていた表情をかすかに和らげる。
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- 22 : 2021/01/28(木) 09:18:18 :
- 気体!
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- 23 : 2021/01/28(木) 09:27:46 :
- >>22
ありがとうございます!
-
- 24 : 2021/01/28(木) 10:17:08 :
鬼殺隊士(お兄ちゃんを連れ戻す?)
鬼殺隊士「お前、連れ戻すってどういう・・・」
その時だった。隊士の背後に大きな影が見えた。
禰豆子「危ない!!」
ガキイイイイン
隊士は瞬時に刀を抜き、振り下ろされた何かを受け止めた。
それは普通に金属のように光ると同時に刃の部分は青空のような薄い青に色づいている。
鬼殺隊士「隠れろ!」
隊士が命じると、二人は家の奥まで走った。
鬼殺隊士「鬼がこんなとこになんの用だ?」
鬼「邪魔をするな小僧!!」
それは今、人間たちから恐れられている、この世のものとは思えない存在
「鬼」だった。
姿は人間そのものだが、頭には二本の角が生え、目は大きく見開き、顔面や体中からは血管が浮き出て、歯は全てギザギザで尖っている。
そしてその鬼は身長が高く、目の前にいる隊士の倍以上はある。
それを物陰から見ていた禰豆子と竹雄は身震いしていた。
禰豆子「あれが・・・鬼?」
竹雄「あれが・・・」
竹雄はさっきまで「へっちゃら」と言っていた存在が想像以上のものだと思い知らされた。
鬼「俺はあの方からここにいるガキを始末するよう言われてんだ!」
鬼「今さっき逃げたやつがそうだろう?」
鬼「おとなしく差し出せば殺さないでおいてやるよ」
鬼殺隊士「・・・・そうか」
鬼殺隊士「少年を連れ去ったのはソイツの仕業か」
鬼殺隊士「残念だが、あの二人は渡せない」
鬼殺隊士「お前の方こそ、さっさと失せろ」
鬼はそれを聞くと、ビキッと眼を見開き
鬼「舐めるなよ小僧!!」
鬼「俺はな、テメエみてえな鬼殺隊を何人も食ってきてんだ!!」
鬼「気が変わった!」
鬼「お前を食ったあとは、じっくりあの二人を食ってやろう!}
鬼殺隊士「・・・・・」
隊士は無言で微動だにせず、鬼を見つめている。
鬼「フン、怖くて身動きできなくなったか!」
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- 25 : 2021/01/28(木) 10:44:11 :
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鬼「じゃあ遠慮なくいただくぜ!!」
鬼は大口を開け、隊士に向かって突進してきた。
すると隊士は眼を睨みつかせ、刀に手をかける。
「水の呼吸・・・」
「壱 の型・・・・」
「水面 切り!!」
隊士が抜刀したと同時に、刃から波のような文様が刃に宿るように絡み合った。
そして隊士は高く飛び、叫ぶと同時に、鬼の頸 を一瞬で切り落とした。
鬼「なっ」
鬼「ば、ばかな!!?」
鬼「この俺が一瞬で、あり得ない!あり得ない!!」
頸のない胴体は仰向けに倒れると、足から徐々に灰となっていった。
禰豆子「す、すごい!」
竹雄「あんなでっかいヤツを、一瞬で!?」
鬼「お前、普通の鬼殺隊じゃないな!!」
鬼「一体何者なんだ!?」
鬼殺隊士「俺は水柱・・・」
冨岡義勇 「冨岡義勇だ」パチン
つづく
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- 26 : 2021/01/28(木) 10:52:22 :
- あとがき
ようやく鬼滅を全巻揃えることができたので、僕なりに新訳版を執筆していこうと思い、書き始めたのが今作でございました。
主人公は禰豆子と竹雄、ストーリー展開は原作とほぼ同じという感じで書いていこうと思ってますので、こんなものでよろしければ、是非これからも見てください!
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