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ラブソング・フォー・ディストピアシティトーキョー

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  1. 1 : : 2020/02/06(木) 01:19:46
    どうも。
    今回Deさんと風邪は不治の病さん主催の企画『オリジナルコトダ祭り』に参加させていただきます。参加者と設けられたお題は以下の通りになります

    参加者(敬称略)
    ・De
    ・風邪は不治の病
    ・ししゃもん
    ・私
    ・カラミティ

    お題
    ・お風呂
    ・夕焼け
    ・光
    ・シール
    ・崖


  2. 2 : : 2020/02/06(木) 01:20:35
    「これも空なの?」

    「ああ、そうだよ。夕焼けって呼ばれてる」

    「これもユーヤケ?」

    「いや、それは朝焼けだな。というかほとんど朝だけど」

    「ヨアケとは違うの?」

    「うん。夜明けの後に朝焼けだ。夜明けは文字通り夜が明ける。朝焼けは……なんて言えばいいかな、言葉が出てこない」

    「みれないの?」

    「見たいか?」

    「みたい」

    「そうかぁ。お前は太陽知らないんだもんなぁ。いつか見られるといいな」

    「そと行く」

    「行くか?ちょっと待ってな。母さん、外出てもいいかい?」

    「あんまり遅くならないでね」

    「分かった。よし、行くか」


    アルバムを閉じて立ち上がる。
    ガスマスクを着けてレインコートを着る。
    重い扉を開けると、いつもの景色が視界に煩く映り込んだ。
    銃弾、あるいは流星のような雨。下手くそなギターの五重奏のように雨音が耳に障る。
    昼の二時だってのに、夜みたいに暗い。
    空を覆い尽くす分厚い雲が晴れるのはいつの日か。



    「あんまり遠くに行くなよ。泥にはまったら助けられない」

    「うん」


    泥でぬかるんだ道を転ばぬよう器用に走る。
    俺も弟と同じくらいの歳の頃はよく泥で遊んだものだ。


    「今日は空が明るいね」

    「ああ、そうだな。多分」



    空は重い灰色。
    確かにいつもより少し明るく見える。
    普段ならこの時間でも真っ暗でほとんど何も見えないのだ。おまけに毎日当たり前のように大雨と霧。外になんて出られるものではない。




    「もうすぐ戻ろう。あんまり外に長くいるのは身体に悪そうだ」

    「崖より上だよ」

    「上だからって影響がない訳じゃないよ。いくら対策したって風邪引くときは風邪引くだろ、それと同じさ」

    「んー、うん」

    「分かってないときの返事だろ、それ」

















    軍事大国だったこの国は敗けたのだ。
    俺が小学生のとき、トーキョーのすぐ近くにミサイルが落ちた。

    それはもう凄い技術だったらしい。着弾直前までそれがミサイルであることを気付かせなかったのだとか。
    毒ガスか細菌か、はたまた放射能なのか、ただの兵器ではなかったのだろう。ミサイルによる影響はすぐに現れた。
    海の魚は真っ白い横っ腹を見せてぷかぷかと浮き上がり、植物は老人のように枯れていき、人間も家畜も呼吸を許されずに事切れた。真っ黒な雲が青空を喰い殺し、少し熱のある濁った雨が降る。誰でもわかるだろう、『この雨、絶対身体に悪いな』って。
    それが七年も続いているのだ。

    脳みそがババロアになった政治家(ブタども)は戦争放棄という単語が読めなくなり、武力こそが全てだと、より強い力で復讐をと、よろしいならば戦争だと、唾液まみれの拡声器で叫んだ。
    ドヤ顔で背負っていた遺憾砲を本物の砲台に改修し、固定音声しか言えない喉から『外敵ノ殲滅ヲ許可スル』と言い放ち、銃を持つ人々の胸に『英雄(虐殺者)』の勲章(シール)を貼りつけた。
    人々は流行り物に群がるように敵に突っ込んでいく。そして散っていった。


    馬鹿みたいだろう。
    だがこれが現実に起きている。もしこれが映画なら、近年稀に見るクソ映画だ。コンテンツの私物化だ。監督(政治家)のオナニー以外の何物でもない。
    この国は調子に乗りすぎた。要するにそれだけのこと。











    そして今、世界の各地で同じことが起きている。父親が帰ってこないから詳しくは知らないが、この国もまた性懲りもなく片足を突っ込んでいるらしい。勝者として返り咲くのを狙っているのだろう。そんなことをしても国は良くなんてならない。何故ならその功績と報酬は全てブタどもが独占、そして消費するからだ。
    第三次世界大戦の大惨事から、たった七年でこれである。あれから一体何を学んだのだろうか。オナニーのやり方か?
  3. 3 : : 2020/02/06(木) 01:21:10




    「下の方また光ってるよ」

    「燃えているんだよ、家が」

    「どうして?」

    「誰かが暴動でも起こしたんだろう。今日は一段とデカい火だ」

    「なんであばれてるの?」

    馬鹿共(・・・)がゴミだと思って見向きもしないからだよ」




    崖下では今日も下層住民達が争い合って大火事だ。
    食料か金でも奪い合ったのだろう。彼らはそうしなければ生きていけないほどに苦しい生活を強いられているのだ。
    俺だって、そうだったかもしれない。
    たまたま父親が軍の偉いところだったから崖の上に移動できただけだ。

    分断された上層と下層。
    上は希望に潤い、下は絶望に焼かれる。

    上は彼らのことを人だと思っていない。
    リサイクルできる分まだゴミの方が価値があるとさえ思っていることだろう。
    震災も台風も洪水も今回も全く役立たずだったくせに必死に下層の人間を道具の如く利用することで自分の地位をアピールしているのだ。
    救えない、心から。


    「雨が強くなってきた、帰るぞ」

    「うん」

    こんなに雨が強く降っているのに崖下のスラム街はまだ燃えている。
    見下しはしない、かと言って同情もしない。
    ただ祈るだけだ。いつか彼らにも人並みの幸福を、希望の光をと。

    「晴れないかな」

    「晴れないなぁ、多分」


    廃棄物の街から目を背けて仮設住宅に戻る。

    相変わらずの雲、雨、泥、そして同じ形の無機質な建物の群れ。

    土砂のベルトコンベアで流れていけば本当に工業製品のように見えるだろう。


    「ただいま、母さん」

    「おう、大変なことになってるよ」

    「何だい」

    「チョンにミサイルが着弾だってさ」

    「何だって」

    「この前は中東の方だったねぇ、こっちに飛び火して来ないといいけど」


    呑気なことを。七年前この国で起きたことを忘れたのか。
    何も映さないテレビの音には耳も貸さず寝室に移動する。




    「それは?」

    「これはソラ」

    「上手く描けてるな」

    アルバムの空の写真を見ながら描いたのだろう、クレヨンの水色が画用紙いっぱいに走っている。
    自分の目で見たこともないのによく描けているものだ。
    前に教えた絵の描き方を覚えていたようで、下に行くにつれて少しずつ色が薄くなっている。

    「白いのは?」

    「これは、タイヨウ」

    「太陽か。そうか、まぁ白だよな」







    ─────チョンにミサイルが着弾だってさ。





    先ほどの母の言葉を思い出す。
    あんなにサラッと、毎日あることのように言い放った。

    七年前自分たちを苦しめたものが隣国に落ちたのだ。
    人はこうして忘れてしまうのだろうか。7年も経てば他人事になってしまうのか。
    少し海を跨いだらもう対岸の火事なのだろうか。
    今の暮らしだって、いつまで続くかわからないのに。



    「夕飯できたぞ。おいでらっしゃい」

    「ああ、今いくよ」


    弟と一緒に立ち上がったその時。
    ラジオから聴こえてきたキャスターの声に背筋が凍った。





    『速報をお伝えします。先ほど、ヒロシマにミサイルが着弾しました』
  4. 4 : : 2020/02/06(木) 01:22:27
    「えっ」

    母が驚く。
    先ほどまでとは打って変わって真っ白な顔で短く呟いた。




    「どうなってんだ。父さんとは連絡とれないのかい」

    「無理だよ。帰ってこないとわからんね」

    「こっちも対抗してないのかい」

    「どうなんかね。そもそも相手がどこなんだい」

    「そう、それなんだ。政治家は分かってるのか」

    「どうだろう。テレビでちゃんと伝えてくれりゃあいいんだがねぇ」





    この雨嵐だから7年間テレビが殆ど映らないのだ。
    電波が悪くて携帯も使えたものではない。
    テレビもラジオも、政治家の放送を聴くだけの機械と化している。お得意の電波ジャックでもしてるんだろうか。

    それ以外のチャンネルはほとんどノイズに近い。映像も砂嵐状態だ。このご時世、別に面白い番組が入ってるわけでもないからいいのだが。


    「どうしたの?」

    「ん、いや、何でもないさ。食べるよ」

    「うん」


    弟の声で冷静さを取り戻す。

    食卓に並べられた米、肉、野菜。
    毎週月曜に、約一週間分配給される。
    と言っても『生きていける』程度の量だ。上層でこの有様なのだから下層の人間は火の車だろう。


    「ごちそうさま。弟がさ、空の絵を描いたんだ」

    「へえ。見たこともないのにかい」

    「ああ。それがなかなか上手いんだよ。後で見てあげてくれないか」

    「うん、うん。皿洗ったらね。弟あがったら風呂入ってきな」

    「はいよ。父さんにも見てほしいだろうな」

    「ああ、どうだろうねぇ。物心つく前じゃなかったかね、父さんの顔見たのは」

    「あれ、もしかして存在も知らないかな」

    「どうかねぇ」




    どんな会話をしていてもさっきの速報が頭から離れない。
    ヒロシマか、今ごろ大慌てだろうな。
    死者は何人出たのだろう。負傷者はその倍はいるはず。
    それだって上の人間は何もできない。他人をこき使って問題解決を図るはず。

    いつまで国民は馬鹿どもの使い捨ての駒なのだ。
    上も下も平等でいいじゃないか。どれだけの権力を持っていたって銃で撃たれたら死ぬし、ミサイルで攻撃されたら塵になるだろう。権力はお前らの命を全く保証してくれないというのに。
    おい、いつになったら空を晴れにしてくれるんだ。もう雨なのかシャワーなのか分からなくなるだろうが。





    「やっぱ大変なことになってるね」

    風呂から上がるなりテレビを『聴いて』いた母が言う。

    「今度はなんだ」

    「民衆が政府に押しかけてるそうだよ」

    「ああ、まぁ予想通りだね」

    「うん、その通りだ」

    「で、彼らはどう対応してるんだい」

    「さっきから『調査中です』ばっかりだよ。本当にしてんのかい、調査」


    してはいるんだろうが、まあ遅くなるだろう。
    今はただ、自分たちに向けられたヘイトを少しでも違う方向にずらすことに必死のはず。

    『篭ってないで出てこい』
    『顔を出して自分の口で喋れ』
    『国民に土下座しろ』
    『辞職しろ役立たずめ』

    テレビから聴こえてくる様々な罵声雑言が耳に障る。

    そろそろ武装隊でも出してきて押し寄せてきた民衆を弾圧するのだろう。七年前のように。

    もうくだらん、眠い。寝よう。
    既に眠りについている弟の隣で静かに瞼を閉じた。












    「今日は雨ふってないね」

    「霧だな、完全に」

    翌日だ。
    弟と外に出る。昨日の雨が霧になったのだろう、辺りは不気味なほど静寂に包まれている。

    「あんま遠く行くなよ。探せないからな」

    「うん」

    「まぁ霧じゃなくても結局暗くて見えないんだけどな」

    「君は、124号棟の」
  5. 5 : : 2020/02/06(木) 01:30:40
    振り返ると青年が立っていた。
    妹と思われる少女を連れている。



    「ああ、お隣の」

    「うん、そうだよ。君も散歩かい」

    「散歩というか、まぁ、うん」

    「ずっと家の中に引きこもっていれば気がおかしくなりそうでね」

    「ええ、ええ。そうですよね。弟も本来なら外で元気に駆け回りたい歳ですので」

    「ああ、うちもさ。それより昨日の報道」

    「ヒロシマの?」

    「うん。どこでも政府に対してデモが行われているよ」

    「ヒロシマ以外もですか?」

    「ああ、そうさ。向こうは我々に何も教えちゃくれないからね」

    「何か、あれですかね。やっぱ隠蔽とかあるんですかね」

    「ああ、有るだろうね。知られたくないことは。此処も時期にデモのお知らせが来るだろう」

    「どうします」

    「やめておくよ。妹もいるし、何より父が向こうの人間だからちょっとなぁと思って」

    「政府の方ですか」

    「うん、まぁ。122号棟のばあさんにゃ毎日嫌味を言われてるよ。どうせ権力でねじ伏せて蓋をするんだろとね」

    「大変ですね。お父さんは何か言ってないんですか?」

    「政府ったって末端だしね。七年前から何を学んだのかと問いたくなるよ。あんなに進化した技術をまさか全て武力に投資するとは」

    「戦争放棄って言葉はどこに消えたのでしょうね」

    「ああ、ほんとそれだ。先進国だったこの国が今や文明の低下した大敗国。軍事帝国開発の夢の跡さ。ほんと何でこうなったのかなぁ。七年前までみんな普通に暮らしてたはずなのになぁ」





    青年は吐き出すように愚痴ると妹の手を引いてどこかへ消えた。


    「空、いつか晴れる?」

    「晴れるよ。きっともうすぐだ。太陽も月も青空も夕焼けも星空も毎日毎日、飽きるくらい見られる日がくるぞ」





    空なんて当たり前に見られた。太陽も当たり前に登って沈んで、月も当たり前にぼんやり明かりを照らす。
    願うほどにもない、当たり前のことだ。
    だが今はそれができない。それすらできない。

    弟はきっと、それができるようになるだけで、それだけで幸せなのだ。




    「さて、戻るか」

    「うん」

    「あ、いたいた、すみません、ちょっと」



    三人、四人、もっといる。全員中年の男女だ。




    「おたく、124号棟の」

    「ええ、はい。そうですが」

    「政府の方にですね、抗議に行くんです、今回の件でね」

    「はあ。昨日テレビで」

    「ええ、はい、これね、国全体の問題でしょう。日本国民がね、皆で声を上げないことには向こうだって何も変わらないですよ。まあその中でもですね、やはり十代、二十代の若い方に中心になっていただきたいのですよ」

    「気持ちはわかるんですけども、結局だんまり決め込んで押し返すじゃないですか。そうなると、もっと大きく動かないと駄目なんじゃ」

    「うん、うん。ですから、その力の一部になってほしいんですよ。日本国民としてね。近々やるんですけども、人をね、集めてほしいのですよ」




    安い紙で書かれたビラを渡される。





    「この雨も多少なり有害なわけですから、これの対策をね、七年ですよ、七年。そんな長い時間放ったらかしにしてるんですよ、奴らは」

    「まあ、問題ですよね」

    「ええ、そうでしょう?あれだけ戦争の道具に技術を詰め込んだんならね、この苦しい生活から国民を解放する技術のね、ひとつやふたつ、どうにかしてくれないと。国民はね、あの、奴隷やオモチャじゃあないんで、ちゃんと一人ひとり生きて営んでるのでね」

    「まあ、はい」

    「ですから、そういうのしっかり責任をね、追及しなきゃならんのですよ、我々は。兵士たちもね、命を賭して、散ったんですから。その尊い命をゴミにしたその責任をね、わかるでしょう?」

    「……はい」




    それだけ言って軽く会釈すると、次の人材を求めて霧の中に消えていった。



    「はぁ」

    「どうしたの?」

    「いや、なんでもないさ」











    「ただいま」

    「おかえり。あ、あんたそれやっぱり渡されたんだ」


    先ほど渡されたデモのお知らせと同じものを母も持っていた。まあそうだろうとは思っていたが。


    「母さん、行くの?」

    「そりゃあね、行くさ」

    「え、マジでか」

    「あんたも行くだろ?あんだけ愚痴愚痴言ってるんだから」

    「弟も連れて行くのか」

    「一人にしちゃならんからね」

    「はぁ」
  6. 6 : : 2020/02/06(木) 01:31:57

    そして数日が経つ。

    ぞろぞろと、蟻の行列のように人間の群れが国会に押し寄せる。
    元々トーキョーはこんなに人がいる場所だったんだよなぁ。


    「すげえ数だ」

    「そうだねぇ、ほんとにこんな来るなんて」



    戦争反対、戦争反対。

    国民の生活を返せ。


    いろんな言葉が政府に投げつけられる。

    大雨の中、傘も差さずに大集団が叫んでいる。

    デモ隊を押し戻さんとする警官の努力も虚しく、土砂崩れの如く人々は押しかけて行く。

    国民から搾り取った金で買った高級そうなスーツに身を包んだ政治家たちがついに国会から姿を現し、自らデモ隊に落ち着きなさい、落ち着きなさいと声をかけていた。
    それでも集まった集団は怒りのままに石や空き缶を投げつける。
    土下座した相手にも関係なく罵声雑言を浴びせる。








    ああ。








    平和って、なんだっけ。
    平等って、なんだっけ。




    これでもし俺たちが勝ったとて、本当にそれが平和なんだろうか。
    人を罵倒し、石やゴミを投げつけ、そうして手に入れた勝利で人々は平等になれるのだろうか。

    相手に恐怖を植え付けて自分たちの思い通りにさせるって、そのためにデモやってるんだっけ。なんか違うくないか。

    馬鹿馬鹿しくなってきたではないか。
    正義はどちらなのか分からなくなる。
    大切なものがなんなのか、分からなくなる。



    「なんか、疲れたな」

    「うん」

    「帰るか」

    「かえりたい」

    「そうだなそうだ。帰ろうか。家に帰って、絵を描こう」












    その時だった。





    「おい!!あれ!!」

    デモ隊の一人が叫ぶ。

    彼が指差したのは、空。
    皆が争いを止め、空を見上げる。

    真上を覆う真っ黒の中、その人が指差したのは─────











    「……光?」




    白。

    真っ黒の中に、一点の白。
    目立つことこの上なし。

    白はどんどん黒を割いて、裂いて、咲いて。





    「え?もしかして……」

    「まさか」


    雨は止み、雲が千切れ、消えていく。
    そして見えた水色と、一点の白。

    これは、紛れもなく────。







    「太陽だ!!!!」

    「やった、ついに!!!」

    「太陽だ、青空だ!!」「太陽だ!!」

    「雨の支配が終わるぞー!!!!」


    デモ隊、警官、政治家。
    もはや関係なかった。

    皆、青空を、太陽を、武器を捨てて腕をあげて喜んでいた。
    祈りを捧げる者もいる。

    まるで宗教だ。太陽の神を、青空の神を讃える人々の図だ。


    「太陽だ!!太陽だよお前!!」

    母が弟に肩車をして高い位置で太陽を見せる。母もかなり興奮しているようで、何かに取り憑かれたような目をしている。


    「太陽だ!!」「太陽だ!!」
    「太陽だ!!」「太陽だ!!」
    「太陽だ!!」「太陽だ!!」


    どこかの部族の祭のように人々は騒ぎ出す。
    泣きながら笑ってる人もいるし、さっきまで争い合ってた警官や政府の人間と一緒に肩を組んでいる者もいる。


    「兄ちゃん、あれがタイヨウ?」

    「あ、あぁ。そうさ。綺麗だろ?周り見てみろ、水色だろ。あれが空だよ」

    「ほんとだ!!写真とおんなじだ!!」

    「お前の描いた絵と同じ青ぞr……」










    なんだろう、なんかおかしいな。


    いつも暗いから感覚なかったけど、今早朝なんだよね。

    早朝に太陽があの位置にいるのか?結構上だぞ。


    「なあ、母さん」

    「おう、何だい!」

    「なんか太陽でかくない?太陽ってあんなんだった?」

    「何言ってんだい!太陽だよ、デカくて当たり前じゃあないか!昇るんだもの!!ああ、いい光だ!!七年振りの光だよ!!」

    「太陽!!」「太陽!!」「太陽!!」
    「太陽!!」「太陽!!」「太陽!!」

    人々は相変わらず感動のあまりお祭り騒ぎを止めない。

    「太陽!!」「もっと照らせ照らせ!!!」
    「いい光だ!!」「七年振りの太陽だぁ…!!」
    「昇れ昇れ!!もっと大きく!!」
    「青空!!青空だ!!ああ神様ありがとう!!」






    何か、おかしいな。






















    「なあ母さん」
    「おう、何だいさっきから!!」



    「あの、太陽さ、昇ってるっていうよりも、なんかこっちに近づいてきてるような────────」























































    凄まじい光と、轟音。


    そして、『平等』。





























    ただそれだけだった。














































    『速報をお伝えします。先ほど、トーキョーにミサイルが着弾しました』
  7. 7 : : 2020/02/06(木) 01:33:51
    終わりです。
    引き続き他の参加者方の作品をお楽しみください。

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著者情報
aimerpiyo

あげぴよ

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